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2018年6月22日 (金)

キネマ航空CEO GTF はターボ・プロップではないがダクテッド・プロップファンに近づいているのかもしれないの巻

自力更生もとい校正中(できるのか?)及び一部工事中で公開しています。

まず、前置きから、

 2018年2月までに公表された欧州航空安全庁(EASA)から認証を受けているプラット・アンド・ホイットニー(P&W)のギヤード・ターボファン(GTF) の型式は次表となります。

 残念ながら三菱MRJ が採用する17Klbf と 15Klbfクラスは今のところありません。

  Class(klbf)   BOMBARDIER    EMBRAER  AIRBUS IRKT
19   PW1519G   PW1919G
21   PW1521G   PW1921G
  PW1521G-3
22   PW1922G   PW1122G-JM
23   PW1923G
24   PW1524G   PW1124G-JM
  PW1524G-3   PW1124G1-JM
25   PW1525G
  PW1525G-3
27   PW1127G-JM
  PW1127GA-JM 
  PW1127G1-JM
30   PW1130G-JM
31   PW1431G-JM   
33   PW1133G-JM
  PW1133GA-JM

   型式記号 PW●〇□□G-XY
    PW は新世代ターボファン・エンジンの民間用呼称(旧世代ではJT を使用していた)
    
G) はGTFを示す
    ● はエンジンのコンセプトを示す新しいブランドである「ピュアパワー」を「1」で示しているようだ。 
 
   〇 は仕向先コード・・・詳細は こちらこちら
    □□ はKlbf 単位の離昇推力値。ファン径やバイパス比にも関連・・・詳細は
こちらこちら
 
   -XY) は細分化された仕様のコード

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さて、ここから本題です。

 GTF はこれまで考察してきた(運動量理論で、ではありますが)ファンのモーメンタムフローとコアジェットのブラストの速度が等しい場合に推進効率が最大になるというターボファンの原則から離れているのではないか・・・の思考の始まりです。

 表では、三菱MRJ がライバルとする在来機とその延長上でブラッシュアップが行われた新型機の新旧エンジンの比較ができるエアバスエンブラエルから下位クラスを選び比較を行いました。
ボンバルディエ C シリーズもありますが GTF エンジンはエアバスエンブラエルと同じクラスなので手抜きします。

 注目する個所は生データとしてバイパス比、ファン直径、N1 回転数、N2 回転数、減速ギヤ比、計算結果としてファンのチップの周速の相対比較です。

 なお、三菱MRJ-90 MRJ-75エンブラエルE175-E2 が採用する予定の 17Klbf と 15Klbsクラスのエンジンは詳細なデータが公表されていません。このため回転数は一つ上の19Klbf クラスの値を使用しました。

 また減速ギヤ比はそのまま使用するとチップ周速がマッハ(以下 M ) 0.87 となるようですので当CEO が以前に写真から解析した 2.8230 を使い M 0.95 としました。

 理由は基本的にファンの揚力(推進力)は速度(回転数)の二乗に比例しているからです。

 これでも低すぎるようですのでファンを駆動する減速ギヤ・ボックスへの入力となる低圧段圧縮段の回転数 N1 はもっと高いのかもしれません。 では高圧圧縮段の N2 はどうでしょう。

 また、従来型に採用されていたエンジンの N1N2 との比較も興味をそそられます。

で、結論はどうした ! ですって?
まずはクリックで下表を別窓で開いて値の吟味から・・・。

New_generation_vs_conventional_turb まず、最下段の高度12,000mに於けるブレードのチップ・スピードは認証されている GTF では M 1.2~1.14 を示しています。

 これに対し既存のターボファンでは M 1.60~1.51 であります。GTF は明らかにチップ・スピードの低下を狙っている。

 さらに、新世代の LEAP でも GTF には及びませんが M 1.60 から M 1.37 に低下させています。

 その一方では仮定値を使い赤字で示した MRJ では M 0.95 ですが音速以下にする理由があるのでしょうか・・・疑問が生じます。

 チップ・スピードはファンの直径と回転数で決まる。その回転数は低圧段圧縮機の回転数 N1 で決まる。

 エアバス A320neo で見る GTFN1 は 10,047rpm でありギヤの減速比を換算したファンの回転数は 3,281rpm となります。

 従来型の A320ceo のエンジン CMF56 のファンに直結する低圧段圧縮段の回転数 N1 である  5,200rpm との比較では、 A320neo のファン回転数は減速機により 63% に低下しますが、低圧段圧縮機の回転数は193% にまで増加しています。

 次に A320neo の (GTF ではない) LEAP エンジンの N1 は 3,856rpm で、これがファンの回転数になります。その結果、ファン回転数と低圧圧縮段回転数は逆に 74% に低下しています。

 A320ceoCMF56) を 1 とした比率に直すと 1.93 、0.74、 1 となります。

 では、高圧圧縮段の回転数 N2 を比べてみましょう。A320neoGTF)、A320neo(LEAP)、A320ceo の順に、 22,300rpm、19,391rpm、15,183rpm と増加しています。

 A320ceoCMF56) を 1 とした比率に直すと 1.47 、1.23、 1 となります。この解釈は後に回して推力も比較してみましょう。

 まずその前に、推力をの単位をそろえるため CMF56 の [daN](デカニュートン) を [Klbf](キロポンド)に換算します。換算係数は 2.2481/1000で求まる。

 したがい、GTF の型式記号に使われる公称推力である離陸時推力(Take-Off Thrust )10,453daN は 23.499Klbf となります。
(すみません。表では力の単位 [Klbf] のはずが [Klb] となっています。読み替えてくださいね)

 A320neoA320ceo に対して 3.5Klbf (1,588kgf)の推力マージンを得たようです。 A320ceoCMF56) を 1 とした比率に直すと 1.15 、1.15、 1 となります。

 エンブラエル E190-E2GTF) と E190CMF56) との比較では推力を除き同様の結果がでます。計算してみてください。

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・ N1N2 回転数から想像される結論

 GTF では N1N2 共に、LEAP では N1 は低下しているが N2 は、増加している。 とりもなおさず圧縮機の駆動に噴流エネルギーを割いて圧縮性能を向上させている。言いかえればジェット・ブラストの速度エネルギーは落としている。

 見方を変えればファンのモーメンタム・フローとジェット・ブラストを等しくすることで得られる推進効率の最大化から離れて、エンジンのサイズをシュリンクさせて同等の出力を得る意図がある可能性がある。もっと言えば燃焼効率を含めて改善している。

 ほぼ同等の推力を持つ両エンジンの高低両圧縮機の段数の合計は GTF の 11 段に対し LEAP では13 段を必要とする。その差は高圧段側の 2 段であります。

 それらの圧縮段を駆動するタービンの段数の合計では各々 5 段と 9 段だが、低圧段に対しては 3 段と 7 段である。 その差の 4 段分が LEAP では GTF のギヤボックスの減速比に相当することになる。

 ちなみにファンを駆動する力はトルク(軸力)だが回転を伴っている。 したがい(駆)動力として時間を含んだ次式が成立する。
   P = 2πNT/60
     P:動力([W = kg・m/s3])、N:回転数([rpm = 1/s])、T:トルク([N・m = kg・m/s2])

 この式で示されるように、動力を一定とすると「回転数」と「軸力」の積は一定となる。

 GTF ではタービンの出力は高回転数で取り出し減速機で回転数を落としトルクを大きくする。 LEAP では低回転で取り出した高トルクをそのままファンに伝える。

 ファンの回転数は ファン・ブレードの容量N1 タービンの出力(動力)の関係で決まります。 いまのところプロペラのようにファン・ブレードのピッチ角は変えられないのでスロットル(正確にはパワー)レバーで N1 回転数を変えることになります。

 ただし、GTF では減速ギヤによる効率の低下を伴います。

 同等の出力を持つ GTFLEAP の比較ではバイパス比とチップスピードでは GTF のほうが優れているようだ。

 両エンジンとも公称値では従来型より優れていることは間違いなさそうだ。

 ただし、GTF では減速ギヤ・ボックスの信頼性やその減速ギヤで得られるコア・エンジンの、より高速となる N1N2 回転数による振動や潤滑の問題などは未知数と言えそうだ。

・ チップスピードから想像される結論

 GTF ではファンのチップ・スピードで限界のある N1 回転数を大きくしながらファンの回転数を落としてバイパス・レシオに直結するファン直径を大きくすることが可能になります。

 ファンの空気の進入角度はカウリング内のデヒューザー効果で低下することは既述(受売りだけど)済です。 いずれにせよ空気の合成進入速度は音速を超えており、後日追記するつもりです。

 MRJ に使用される 17Klbf および 15Klbf クラスに仮採用した 19Klbf クラスの N1 回転数と写真より計算した減速比の組み合わせのチップ・スピードは M 0.95 であり通常のファンの設計速度より低すぎるように思える。

 GTF のラインアップでは出力の低い、言いかえれば、ファン径の小さいタイプでは N1N2 回転数を大きくするようだ。 仮に19Klbf クラスの チップ・スピードより低い M 1.1 に合わせると 12,284rpm となる。

 この結論は、低圧段圧縮機が 1 段少ない 2 段で構成される最低位のクラスの諸元が発表されるのを待つしかない。

・ 以上からの総合所見

 基本的に GTF はダクテッド・プロップファンに向かっていると言えなくもなさそうだ。

 次のテーマはターボファンの効率優先の原則(バイパス比を大きくするとコアエンジンの出力も大きくする必要がある)を変えてもコア・エンジンの総エネルギーを低減できる可能性があるのかどうか・・・です。

 なお、EASATCDS には燃焼温度のデータもあります。熱力学のほうからの考察は機会があれば・・・ということで・・・。

2018年5月31日 (木)

キネマ航空CEO レシプロ・エンジンの BPR を考え、ついでに零戦の排気管も考えるの巻

 ターボファンでは高バイパス比化が進み、現在のバイパス比(BPR)は 8 :1 前後、 P&WGTF では エアバA320neo シリーズの中で 12.5 :1 がアナウンスされています。

 前回のウィキペディア(英文)の記事ではターボプロップ・エンジンの BPR50-100 :1 となっていました。

 ではレシプロ・エンジンの BPR は、というお遊びの回です。

 結論から言うと、機体はボーイング 377 ストラトクルーザー、エンジンは ワスプ・メイジャー R-4360 の組み合わせの BPR300 :1 程度に相当します。

 だからどうした、は終わりのほうに・・・過程を読んでから、考えてから、にしてくださいね。

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 レシプロの航空機用ですからシリンダー・ヘッド部とピストンに挟まれて燃焼する空気とプロペラで推力を出す空気がありますから以下の数字が分かれば計算はできます。
 まあ、当らずと言えども遠からずと言ったところですけど・・・

 まず、必要なのはエンジンの排気量、回転数(測定基準がいくつかある)それに過給機(ターボチャージャー)の性能。これで燃焼に関係する(つまりコアエンジンの)時間当たりの空気量すなわち流量がでる。

 次に、プロペラの直径と飛行速度(巡行時とか最高速時とか)でプロペラを通過する流量が出る。面倒なのはエンジン回転数と飛行速度との関係だがまあ後から常識的に判断することにして・・・

 首題の計算には関係ないがおまけでエンジンと一体のクランクシャフトとプロペラ軸の間にある減速機のギヤ比も上げておく。

 対象とするエンジンには正統派レシプロの究極形といえるエンジンを選びました。

 プロペラ メーカー/形式 ハミルトン・スタンダード/定速式
  直径/翅数 17ft(5.1816m)/ 4

 エンジン メーカー/型式 P&W / ワスプ・メイジャー R-4360-B6
      構成 空冷星型4列7気筒(28気筒)/過給/減速比 2.667
      排気量 4,362.5in3 71.489L(0.071489m3)
      公称回転数(100%) 3,990rpm
      許容最大回転数   4,300rpm
 過給機 メーカー/型式 ゼネラル・エレクトリック/CHM2(ターボチャージャー)
               n.a. / n.a. (遠心式スーパーチャージャー)
       総合加給圧 n.a.

  このエンジンを採用した航空機は軍/民、生産/試作のみを合わせると25機種以上あるがここでは量産された民間機から、と言ってもフランスのシュド・エスト SE.2010 アルマニャック はわずか 8 機のため・・・残ったのは、

 機体  メーカー/型式 ボーイング/モデル 377 ストラトクルーザー 就航期間1947-1961年(56機)
      最高速度/高度    326knots(603km/h)/25400ft(7620m)
      最大巡航速度/高度 295knots(547km/h)/n.a.
      巡航速度/高度    262knots(483km/h)/25400ft(7620m)

 なお、R-4360 系のエンジンを使う最大の機体はコンベア B-36 、プッシャー・タイプのプロペラ直径は 19ft(5.7912m) です。6基を装備しますがこれでも足らずアフターバーナー付ターボジェットのゼネラル・エレクトリック J79 を 4基を追加装備しました。お役目は戦略空軍の花形として写真や映画で活躍しました。
 中には空中発進戦闘偵察機の母機(これはやってみた)や、計画倒れの原子力推進化計画や、で就役期間は 1945-1959年(384機) の13 年間でした。

 また、B-29 を改設計した後継機の B-50R-4360 系に換装されます。プロペラ直径はモデル377 と同じ 17ft でした。就役は1947-1965年(371機)の17 年間ですが爆撃機としては 1955 年までの7 年間で余生は偵察機、空中給油機として過ごしました。
 モデル377 の兄貴分のモデル367C-97 スラストフレイター 輸送機で就役期間は1947-1978年(60機)30年間ですが、空中給油型の KC-97 などをふくめれば888機でした。この中からエアロスペースラインズ社で改造されたスーパーグッピーなどのグッピー・シリーズが生まれます・・・(閑話休題)

 さて、回転数の(とりあえずの)定義をしておきます。

 公称回転数(100%)は最大連続出力としてさしあたり最大巡航速度時の回転数。

 では巡行時の回転数はというと公称回転数の 90% の 3,590rpm としておきます。出力は、回転数 X 軸力(トルク)に比例しており、大まかに 100% 時の出力の 75% の出力で巡航していると思われます。トルクは 83.3% にまで低下しています。

 許容最大回転数は公称回転数の 108% に相当します。離昇出力時の使用時間を決められた回転数としてのなのか、最高速度時なのか、はたまた緩降下時などの過回転禁止の限界回転数なのかはっきりしません。とりあえず最高速時の回転数としておきます。
Tu-114 の回 と設定が違うが機速自体も違うので・・・気になれば再計算をお願いします)

 これらより排気量にエンジンの回転数を掛けて物理単位[m3/s]に直してエンジン( 1基)を通過する単位時間当たりの空気流量を計算する。

  最高速度 X 許容最大回転数(108%) 5.124m3/s
  最大巡航速度 X 公称回転数(100%) 4.754m3/s
  巡航速度 X 巡航回転数( 90%)     4.274m3/s

 次に、プロペラの回転面積に各速度を掛けて同様に物理単位[m3/s]に直してプロペラ( 1基)を通過する単位時間当たりの空気流量を計算する。   

  最高速度時    3,532m3/s
  最大巡航速度時 3,204m3/s
  巡航速度時    2,830m3/s

 これらより、

 レシプロエンジンのバイパス比 = (プロペラ通過空気量 / エンジン通過空気量) -

 となるが加給されたエンジンではそうは問屋が卸さない。

 バイパス比は重量比(理論的には質量比)なのでを通過する空気量に該当する高度での過給後の比重(密度)を体積に換算した係数を乗じてやる必要がある。

  さて、計算を始めますがバイパス比の定義からはかなりトリッキーな計算になります。眉に唾を付けて考えながら読んでくださいね。先ずその前に・・・

 細かく言えば断熱圧縮なのでポアソンの法則で高度の影響を補正して、となるが今回は物理や工学の便覧にある標準大気の表を使って地上(海面高度 SL)の大気密度(kg/m3)を 1 とした高度7,600mの密度の比 ρ76000 = 0.449631 が得られる。同様に圧力比 P7600/P0 = 0.372639 もある。
 (ついでに温度は地上の 15℃ に対して -34.341℃ となっている。気温差では絶対値で -50℃であります。各々に7,700m の値もあるので20mの差を比例配分で補正できるがそこまでしてもねー。 )

 過給機の性能は今でも大気圧との差圧をブースト圧として示されている。おそらく測定しやすいからだろう。

 しかしバイパス比は質量比を扱っているので密度比の逆比 = 1/0.449631 = 2.224 が海面高度で無過給エンジンが吸入する空気量に相当する充填比となる。
 (一般に航空エンジンの性能には測定した高度は付記されていません。巡航高度での充填空気量を無過給時の海面高度と同じにした理由は単に比較しやすいからです。ちなみに同機の上昇限度は9,800m です )

 したがい先の式は、次の式となる。

 レシプロのバイパス比 = プロペラ通過空気量 / (充填比 X エンジン通過空気量) -

 厳密には分子と分母に計算する高度の密度を乗じて質量にするが消去されている。
 (この式から燃焼系で圧縮される空気量が大きいほど BPR を小さくできる理屈が説明できる)

 高度がらみでは過給比も高度に関係する。高度7,600mでの充填比が2.224の場合、過給機による増加分は 1.774( = 2.224 - 0.4496) となる。

 過給機の性能は高度(気温と圧力)の変化でも変わらないとすると海面高度での充填比は 2.774( = 1.774 + 1.000) となり過充填でノッキングを発生させるなどでシリンダーなどエンジンの強度や寿命上では望ましくない。

 したがい、低空ではウェイスト・ゲート・バルブで排気をバイパスさせてタービンの性能を下げる機構が設けられる。せっかくある過給機だから地表付近でも多少の過給はされているはずだが詳細は不明。

 いっぽう、高高度では過給された空気の一部ははエンジンに入らず機内の与圧のために使われるのはジェットエンジンと同じであります。(もちろん計算では無視しています)

 さて、断熱圧縮と言いながら無視してきた圧縮されて体積を減らすことで派生した高熱の空気は高空の低温によって冷却器で冷やされて、酸素を含む質量の構成比は同じままでさらに体積を減じてシリンダー内の吸気容積空間に充填され、さらに圧縮されます。

 いっぽう高温の空気は機内与圧にも使われます。何しろ外気温は -35℃ ですからね

 これで空気が薄く氷点下の高空でもエンジンは地上と同様に多量の燃料を燃やせ、搭乗員も薄着で、乗客も私服のままで搭乗できることになりました。

 ということでボーイング 377 ストラトクルーザーBPR は、

  最高速度時    308.9 : 1
  最大巡航速度時 302.0 : 1
  巡航速度時    295.7 : 1

となります。どうです ? 結構大きいでしょう !

 ちなみに過給なし(自然吸気)で海面高度を最高速で飛びぬけた(現実にはあり得ませんが)とすると充填比は 1 となり計算上の BPR は 689.3 :1 となります。

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 結論として、

1. BPR (バイパス比)は飛行速度域が低いほうが大きい
  (コア・エンジンとなるレシプロの排気やターボ・ジェットのジェット・ブラストの貢献度の差を含めてです)
2.逆に言えば BPR は速度域が高いほど小さくなる
3.速度域を高くするには出力の大きいエンジンが必要になる
4.超音速機のエンジンはアフターバーナー兼用の低 BPR のターボファンである
5.亜音速上限域のターボファンの高 BPR 化は常用速度域の低下を内包している

 ・・・の五段論法が成立するとも言えそうだ。

 その五段論法の使い方は、
 当キネマエアラインズフライト 003 で上映中の 「キャッチ 22」で !! (コマーシャル)

 プロペラにしてもターボ・ファンにしても仕事は「質量」X「速度」であります。
「速度」を一定とする条件では「質量」の増加は本質的に回転部分の直径(すなわち面積)を大きくすることでしか増やせない。もちろんコア・エンジンの強化が必然となる。

 同じ飛行速度で BPR を大きくするターボファンの仕事効率の向上には燃焼効率の向上と機体とのマッチングが重要であることは何度も述べている。

(以下の零戦の排気管の追記で出稿完了です)

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 過去に栄光を求めるのか、何が何でも日本が一番なのか、一部の航空マニアはいろんな疑似科学や神懸かり理論を編み出すようです。 以下、軍用機編です。

 三菱零式 21型から 32型の集合排気管から 52型ではカウルから飛び出して真後ろに向かう単排気管に変えました。 この改良で排気のジェット推進効果により最高速が著しく向上したという説はいささか「贔屓の引き倒し」のようです。

 戦闘機で、(水平時で示す)最高速度が必要なのは逃げる相手を後ろから追撃する場合です。 本当に必要なのは進攻時や帰投時の通勤時間を短くするより速い巡航速度です。
(スロットルの最大開度は最高速度より上昇性能で必要です。 速度も上昇性能もスロットル開度で制御する出力に関係してはいるけれど、最高速度が速ければ上昇性能も優れているとは限らない・・・閑話休題)

 さて、プロペラの推進効率は最高速度に近づくと低下するにしても、レシプロエンジンの相当バイパス比から見て推進力にかかわるエンジン排気の質量はプロペラに比べてかなり小さい。 ここはぜひ零戦各型の BPR による推力と排気推力を計算してみてください。

 必要な追加データ項目は 2本の集合排気管と 14 本?? ある単排気管の①断面積と②排気温度から計算する排気の体積から得られる速度と機速の差です。 ②排気温度は類推値からお好きな温度を選びシャルルの法則で計算すればいいと思います。
 当CEOの掲げるエンジンは「フン詰まり No !」理論の展開です。 吸気と排気の温度は理想気体温度への統一が必須です。 排気速度が最高速より速ければ効果はともかく貢献はあると言えるかもしれません。

 単排気管の効果があるとしたら川崎キ‐100 五式戦のように星型エンジンのカウリングを通る冷却風の制御フラップと胴体の段差による気流の乱れ(剥離流)をまんべんなく整流する(実際には吹き飛す)ことで得られる胴体表面の摩擦抵抗を減らす効果でしょう。 しかし、星型エンジンではフォッケウルフ Fw190-A の先例があり日本の発明とはいえないコンセプトです。

 なお、偶数の多気筒エンジンの排気管 2本を一組として点火時期の位相差と長さを選んで集合させる設計では単排気管としての末端となる集合部で発生する反射波による排気圧の脈動がエンジン側の排気口に伝わりシリンダー内の排気の掃気効率や混合気の充填効率を高める効果があります。 4行程エンジンと言っても排気と吸気の行程はオーバーラップして筒抜けになる時間があるからです。

 14気筒の「」エンジンでは7本の集合排気管が外観上の単排気管を構成することになります。完全な単排気管なら 14本の排気管が必要だがそんなに多くはなさそう、しかも 7本以上はあるようだ。
(右6左5説があるが、写真や図面によって数が違うように見える)

 どうも排気干渉の積極的な利用はしてはいないようだ。 しかし管の取り回しのための集合排気管が数本あるようです。 (例えば外観の排気管が11本ならそのうち内の3本は集合排気管と言った具合に)

 まあ、戦闘機の機動中にはスロットルの開度を大きく急激に変化させるので全域に効果があるわけでもないのだろう。そのうえ複列14気筒星型エンジンの前後列のシリンダーの排気管をクランクの位相差25.7.....(=360÷14)度の倍数と4の倍数の点火時期を組み合わせてうまく慣性偶力の打消して脈動効果が出せるのかどうか、などの疑問もある。

 21型のような左右で 2本の集合排気管の場合、排気管(鉄ニッケル合金)の取り回しで重くなります。短い単排気管の採用は軽量化に確実に効果があった。

 ちなみにFw-190-A ではエンジン BMW 801 D-2 14気筒の排気管を機体の左右に 4本ずつを一列に並べて開口し、下方に 4本(は同様に) + 2本(は左右斜め後方に向けて)が並べられている完全な単排気管です。

 上側に開口していないのはコックピット内に排気が進入したり、消耗品の潤滑油が燃え残って煤や油が風防ガラスを汚すのを防いでいます。 (52型では一番上の排気管は左右とも斜め下方に向けている)

 外観上ではその排気管の列はきっちりと胴体に埋め込まれれている。その結果、52型より長くなる排気管もあるが技術原理に関しては真面目ですね。

  また、液冷V12エンジン(ロールス・ロイスマーリングリフォンの一部)の単排気管に見られる魚の尻鰭状に潰して拡張する排気管には噴射速度をマッハ1以上に大きくするラバール・ノズル効果(知っているだけでもすごいことだが)があるのかも知れない説もあった。 ただし、マッハ1を超えるには排気圧力が4気圧以上は必要だけど・・・これも計算してみてね。
(正確には前後の2気筒を連結した左右各3本の集合排気管。V12 のクランク軸が見つからなかったので一般的な点火順序からでは排気脈動効果を利用していないと思われる)

 これはノズルの最狭部で亜音速から超音速に変わる現象なのでベルヌーイの定理は使えないけど計算式はWeb上にあります。(ロケットでは実際に使われているけど・・・レシプロ・エンジンではどうだろう?)

 そういえば川崎 キ-61 飛燕はラジエータの熱交換によるジェット推進効果がある、という説もあった記憶が・・・それはまたいずれ。

 (以上、読者に丸投げの閑話休題)

2018年4月29日 (日)

キネマ航空CEO GTF はターボ・ファン・ジェットかダクテッド・ターボ・プロップか、を考えるの巻 (その 2) 」

2018.06.10 加筆終  キネマ航空CEO

 ターボファン・エンジンの可能性の復習から始めます。 前回の数式編 を少し整理してみました。

まず基本となる物理量は、下図を参考に、

Elements_of_turbo_fan_jet_propulusi  ・ターボジェット・エンジン(Turbo Jet Engine
   m  : 吸気と排気の流量単位質量 (kg)
   V1 : 吸気速度 (m/s)
   VJ : 排気速度 (m/s) VJ ≧ V1 
 ・ターボファン・ジェット・エンジン(Turbofan Jet Engine
   (q+1)m  : 吸気と排気の流量単位質量 (kg)
   q   : (ファン)バイパス比 (qm : mm = 1 とした質量比を表す無次元数) 
   V1 : 吸気速度 (m/s)
   VTF: 排気速度 (m/s)
  ・・コア・エンジン(Core Engine)             ・・ファン(Fan
   m  : 吸気と排気の流量質量 (kg)        qm  : ファン吸気と排気の流量質量 (kg)
   V1 : 吸気速度 (m/s)                         V1 : ファン吸気速度 (m/s)
   VC : 排気速度 (m/s)                         VF : ファン排気速度 (m/s)

 以上の物理量から運動量理論によるラム圧抵抗、エンジン発生エネルギー、実効エネルギー、機械仕事が求められる。

TURBO-JET TURBO-FAN
CORE FAN
Ram Pressure Drag KDJ = (1/2)mV12 KDTF = KDC+KDF = (1/2)(q+1)mV12
KDC = (1/2)mV12 KDF = (1/2)qmV12
Propulsion Energy
by Engine
KJ = (1/2)mVJ2 KTF = (1/2)(q+1)mVTF2 = KC+KF
KC = (1/2)mVC2
VC Detail below
KF = (1/2)qmVF2
VF Detail below
Available Propulsion
Energy
KJA = KJ-KDJ KTFA = KTF-KDTF
Mechanical Work WJ = mV1(VJ-V1) WTF = (q+1)mV1(VTF-V1)
= WC+WF
WC = mV1(VC-V1) WF = qmV1(VF-V1)

 ターボファンのコアエンジンは表のターボジェットと同じエネルギーを持つとする。そのエネルギーから k (0≦k≦1) をファンに分割する。
 ただし分割に伴う損失ψ0≦ψ≦1)が発生し実際に分割されるのは (k/ψ)となり、コアエンジンに残るエネルギーは{1-(k/ψ)}となる。したがい、KCKFKJ との比となり

 C = (1-k)KJ = (1/2){1-(k/ψ)}mVJ2 = (1/2)mVC2   より   VC/VJ = √{1-(k/ψ)} (1)
 KF = kKJ = (1/2)(k/ψ)mVJ = (1/2)qmVF2               より   VF/VJ = √{(k/ψ)/q}  (2)
    ψは分割による損失(効率)比

 ターボファン・ジェット・エンジンに求めるものは仕事 WTF の増加割合である。元の式にコアとファンの速度を埋め込むとコア単独での速度でまとめられる。

 WTF = (q+1)mV1(VTF-V1) = mV1 [ [ √{1-(k/ψ)}+ √{(k/ψ)q} ]VJ -(q+1)V1 ] ]
 これより、
 VTF = [ [ √{1-(k/ψ)}+ √{(k/ψ)q} ]/(q+1) ]VJ
 分割損失ψ厳密にはファンの回転や進行速度にかかわる翼素理論の効率も含まれるのだが以降の考察にはψ= 1 として運動量理論で話を進めます。
前回の誘導ではψの使い方が異なっていましたが最終的にはψ= 1 としており結果に差はありません。

 VTF = [{√(1-k)+ √(kq) }/(q+1)]VJ

 分子は 0≦k≦1q≧1 は平方根のため VJ≧VTF となる。VTFkq の関数であるが kq の関数でもある。
  A = {√(1-k)+ √(kq) }/(q+1) と置き dA/dk = 0 と微分して A の極値(最大値)を求めると VC = VF つまりコア・エンジンのジェット・ブラストとファンのモーメンタム・フローの速度が等しい場合となりファンが受け取るエネルギーの割合は k = q/(q+1) なのだが計算過程は省略します。ちなみにコアエンジンに残るエネルギーの割合は 1-k = 1/(q+1) であります(元の式ではk( k/ψ) と置き換える必要があります)

 したがい、ターボファン・ジェットのエネルギー速度 VTF とコア・エンジン単体のジェットブラスト VJ の比は、

 VTF/VJ = 1/√(q+1) (3)

 実際にはファンによる仕事は翼素理論でなければ厳密性を欠くが運動量理論で定性的な考察にとどめます
 機会があれば翼素理論とも組み合わせたい。これまでのプロペラの解析から最高効率を示す速度比は0.8辺りにあるようにコアジェットのブラストの限界速度比1をファンの最適効率速度比(巡行の 0.8 または最高速の 0.9 ?)の辺りに近づける? などで・・・。
 回転数で制御されているエンジンのエネルギーは、ジェットライナーでは差が小さい巡行時と最高速時の速度のおかげでエネルギーのギャップはファンブレードの設計で 吸収できる のではないか、との前提ですが・・・つまり kψの関係の見直しです。運用最高速を超える限界超過速度の余裕は頭打ちとなります。しかし緩降下すれば音速越えも・・・さて、どんなもんだか。

・少し「見える化」を

Vcvfparvj_by_k_rev(1)、(2)式を一つに重ねたグラフ。
(1)式を表す右下がりの VC/VJ はコアエンジンの出力が分割されでジェットブラストが 0 に近づいていく様子を示している。
(2)式は受取ったエネルギーをファンがモーメンタム・フローに変える場合のバイパス比(BPR)の影響を示す右上がりの VF/VJ
二つの交点が VC=VF となってターボファン・ジェットが最も効率よく運転できる点となる。

BPR 0.5(-0.9) は超音速機に使われるバイパス比だが、いざとなればここに燃料を吹き込みアフターバーナーとなる。
BPR 1(-4)は初期の第一、第二世代のターボファン・エンジンのバイパス比。実際は BPR 3-4 は一気飛び越えて、
BPR 5(-7)は第三、第四世代に相当する。ここでミッドスパンの廃止、ワイドコード化や材質と製法の変更が行われました。「MRJ」のカテゴリーの中で 3回に亘って掲載中です。
BPR 8 を超えると第五世代となる。GTF はこの辺りに含まれ、最大バイパス比となる BPR 12.5 が公表されている。

 エネルギーの分割比が釣り合うのはコアエンジンの性能もあるがファンの動力吸収性能できまる。バイパス比が大きくなるとコアエンジンのジェットブラスト(VC/VJ )側の変化が急になり安定性は悪くなりそうである。コンピュータの支援が必須となるだろう。

Q_vs_vtf_vj_ratio

(3)式のグラフ化。
或るターボ・ジェットのジェットブラストの速度と同じエネルギーを持つコア・エンジンです。

別の見方ではマッハ 1 で飛べるコア・エンジンを使ったターボファンのバイパス比を変えた場合の飛行速度の比として読むこともできます。
例えばバイパス比が 8 の場合の速度比は 0.33 であるからこのターボファンでマッハ 1 の飛行にはマッハ3で飛べるのコア・エンジンが必要になる。(もちろん機体の空気抵抗は変わらぬ仮定が前提です)

 仕事効率の最大化のためにジェットブラストとファンのモーメンタムフローを等しくする前提のターボファンでバイパス比 q を大きくしていくと VTF/VJ の変化は小さくなる。

 バイパス比 q の増加は √(q+1)に比例して増えるファン直径 D の増加(すなわちカウリングの直径)によって得られるのだが翼の下に吊り下げるにしても翼の上や胴体に載せるにしても実用上の限界があることは想像できる。

 この辺りがターボプロップとの境目かもしれない。航空機の技術史からは今でもファンの最大直径はプロペラの最大直径を越えられない。

・おまけ

  前回のグラフではコアエンジンに残るエネルギーの割合を k としていた。
しかし今回はファンが受け取る割合を k としています。

  したがい、コアエンジンから見た 前回のグラフ編 にある同様のグラフで示す横軸 q は今回のグラフでは縦軸 (1-k) として計算した結果と等価です。

  加えて、前回に示したターボファンのバイパス比による仕事効率の上限は限界速度(理論上の最高速)の低下とのトレード・オフで 100% 以上になる結果は変わりません。

  低下する限界速度の回復には、もちろんコアエンジンの強化が必要になります。

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 ここまでの結論としてGTF(ギヤード・ターボファン・ジェット)も以上の原則の中にあることは間違いない。つまり、亜音速域の上限を効率よく飛ぶための GTF はターボプロップではない。

 構造的に言えばターボファンでは先頭の(低圧段)コンプレッサー駆動軸と同じ(回転数の)タービンで駆動されている。

 バイパス比を増加拡大していくにはファンの直径の増加を伴いブレードの先端速度、根元にかかる遠心力、曲げモーメント等々で回転数に制限が出てくる。

 GTF ではコンプレッサーの回転数を変えずにギヤボックスでファンの回転数を減速することで、もろもろの空力的、構造的問題の解決を図ったと想像できる。

 しかし「コンプレッサーの回転数を変えずに・・・」と断定するのは間違いでむしろ早くするのだろう。この辺りからは次回以降にします。予習には この回 の後段をご参照ください。

 ギヤボックスを持つターボプロップのプロペラの駆動軸は現在ではコンプレッサーの駆動タービンと切り離されたフリーパワー・タービンで駆動されている。

 ターボプロップでもターボファンでも回転数はプロペラやファンの負荷とエンジンの出力でと釣り合っている。したがいエンジンの出力の調整で負荷をコントロールできる。

 いっぽうプロペラやファンからは、というとターボファンではまだ実現していないがブレードのピッチを可変とすることで負荷を制御してエンジンの最適回転数に合わせることができる。

 米国系の大型二軸二段のターボファンのコアエンジンでは軸流式コンプレッサーのステーター(静止ベーン)を可変式として圧縮性を制御している。英国のロールス・ロイスは三軸三段のコンプレッサーとして可変式静止ベーンを廃止している。(閑話休題)

 ではそのブレードが暴走したら、例えば吹っ飛んだら、負荷を失ったタービンは暴走を始める。燃料の自動シャットダウン・バルブがあるとは思うがどこにあるのだろう。

 ターボプロップの推力の大半はプロペラの回転力の負荷(ブレードの揚抗比)によるもので上記のような運動量理論で強引に説明するには無理があるので以下を・・・

 ここまでの考察ではファンにも運動量理論を適用している。しかし現実のファンを効率よく働かせる速度比は 0.6から0.9のあいだでピークは0.8あたり、最大効率は0.85ていどとなる。

  (アンダクテッド・)ターボプロップのTu-95 ではターボファンの最高速度であるこの辺りまで迫っているようだ。

 デフューザー効果によって空気のファンへの進入速度の低下を見込んでいる(ダクテッド・)ターボファンで得られる翼素理論を運動量理論に近づける効率改善の効果と、高バイパス比化が主眼のGTF のコアエンジンに現われるファンを駆動する回転数 N1 の増加にともない増加する背圧にともなうジェットブラスト速度の低下、燃焼効率の変化などとの関係となるのだが・・・

 高バイパス比にするにはファン直径の大径化かコアエンジンの小径化か、となる。しかし一般的には前者となる。したがい実用上の限界がある。

 高バイパス比の根底にあるのはブレードの形状からくる空気機械としての動力吸収性能の向上が初めにありき、として総括されるはずだ・・・と迷路に入り込んだようだ。

 超音速から亜音速への速度域の低下を伴ったターボジェットからターボプロップへの開発で見られた劇的な効率改善は、その中間(亜音速の上限)の速度域で固定されたターボファンでは見られないであろう。

 しいて言えるのは、固定ピッチから可変ピッチへ変わったプロペラの変化がダクテッド・ファンにも採用される。 つまりは構造的にはフリータービンでなくてもダクテッド・ターボプロップファンになる時がジェットエンジンの究極形と考えられる。

 そのあと、現在の延長となる大気圏を飛ぶ飛翔体ではターボジェットが動力源として使用されるであろうが、技術的には速度域の増加をともなう(目指す)別のブレークスルーに向かうであろう。そこまでの技術が人類に必要かどうかは疑問ではあるけれど。 

以下はご参考に・・・

ターボプロップについて日米ウィキペディアからの抜粋と比較

 排気口から噴出する際に生じる反動はエンジン全体が生む推力のおおよそ10%~25%を構成する。

 今日の多くのターボプロップエンジンは、圧縮機駆動用タービン軸とプロペラ駆動用タービン軸が別な2軸構成となっているため、圧縮機駆動用タービンの速度に影響されることなくプロペラを回転させることが可能となっている。
 それぞれのタービン軸が最適な回転数で回転できることにより、排気口のジェット噴射に残っているエネルギーはプロペラ推力を含めた総出力の10%以下にまで減少する。

ジェットやモーメンタム・フローでの「推力」は速度の関数、「出力」は速度の二乗の関数なので的外れではないようだが混乱を招く併記となりそうだ。

 Consequently, the exhaust jet typically produces around or less than 10% of the total thrust.
 A higher proportion of the thrust comes from the propeller at low speeds and less at higher speeds.
 Turboprops can have bypass ratios up to 50-100 although the propulsion airflow is less clearly defined for propellers than for fans.

 While the power turbine may be integral with the gas generator section, many turboprops today feature a free power turbine on a separate coaxial shaft.
 This enables the propeller to rotate freely, independent of compressor speed.
 Residual thrust on a turboshaft is avoided by further expansion in the turbine system and/or truncating and turning the exhaust 180 degrees, to produce two opposing jets.
 Apart from the above, there is very little difference between a turboprop and a turboshaft.

排気の推力は10%前後もしくはそれより低い、となっている。
ターボプロップのバイパス比を50-100と表記しているなど写真を見ればなるほどねとなる。
同時にプロペラの推進力はファンに比べると明確な定義ではない、としている。

加えてプロペラとファンの性能の差やフリーパワー・タービンを採用するターボプロップとターボシャフトの構造上の微細な差を示唆するなど読者の興味の引き方をよく考えた文章といえそうだ。

 評論はいいから、お前はどうだ?!、と問われても困るけど・・・『他山の石』としておかしなところがあればご連絡ください。

 

2018年3月 9日 (金)

キネマ航空CEO 「MRJ のビジネス・アップテートを行う。と、同時に日本の航空機製造行政の失敗を考えて、『他山の石』も考えてみる」 の巻

 本文の中ほどで A320neoGTF エンジントラブルの記事に、その原因と対応を青字の追記で行いました。(2018 04 04)
また「他山の石」も考えてみる、を追々記しました。(2018 04 10)      キネマ航空CEO

 残念なニュースですが 2018/1/26 付けのロイター東京の発信によると

三菱航空機は、アメリカのスィフト航空が買収したニュー・イースタン航空との間で2014年に交わした MRJ90 の確定発注分20機と覚書による20機計40機の契約破棄交渉の結果を正式に合意した」と発表した。 
三菱航空機のコメントは、開発遅延や性能上の理由ではなく顧客側の事情によるものである」としている。

・・・ということで比較表を差し替えます。

 なお、以前から継続的に差し替えている表には香港のリース会社 ANIグループホールディングスとの間の MRJ-90 覚書契約 5機(2011)の破棄については掲載していません。 同様に当ブログに最初にアップした時点の前にキャンセルされていたエンブラレルボンバルディア分も掲載していません。

 で、ニュー・イースタン航空の解約では覚書分は違約対象にはならず、契約20機の先払い分は違約金といっても遅延見込み分の交渉で値切られたと思われます。

Mrj90_business_update_jan_2018rev2

 さて、三菱航空機の開発遅延のあとにさまざまなな逆風が MRJ に吹いている。

 曰く、米国の航空会社労使間のスコープ・クローズ協定の継続。
 曰く、ボンバルディアの資金繰りの破たんに続くエアバス傘下への系列化。同じくボンバルディアに対するボーイングのダンピング関税率強化の圧力(が却下された)。
 曰く、ボーイングエンブラエルに対する系列化交渉の開始。

 簡単に言えば小型機メーカーは米国と欧州の大型機メーカー二極のラインアップの一角に組み込まれてしまい三菱航空機が目指す小型機メーカーの三極化の夢は潰え去ろうとしている。

 既存の小型機メーカーの隙間を狙った三菱航空機の機体は存在意義を失うかもしれない。そうなれば、MRJ は、かつての MU-2MU-300 と同様に機体製造権の売却となるが、売却先は欧米ではなく中国、インドなどの国土面積と人口を抱えた航空新興国となるだろう。

 加えてギヤード・ターボファン・ジェット・エンジン(P&W ピュアパワー)自体にも影が差してきている情報もある。(下方に出典へのリンクあり)

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 つまりは日本の航空機製造行政の問題を検証する過程に入ったと考えられる。当オフィスのカテゴリー「MRJ」の記事から振り返ってみると、「新開発の機体と新開発のエンジンの組み合わせを並行して進める意味はあったのか?」に立ち返ることになります。

 MRJ の機体の空力設計は胴体の先端を通る軸線が客室胴体の軸線から著しく下がったコックピット周りの形状である。これは空力設計というよりむしろ全長に占める客室長の拡大といえる。あるいは全長の短縮、延いては軽量化のコンセプトと見たほうが良い。

 航空機で一番無駄な部位は操縦室いわゆるコックピットである。操縦席はパイロットの座高に合わせて上下にヒップポイントを調節できパイロットの目の高さをほぼ同じ位置に設定できるようになっており、足の長さに合わせてフットペダルを前後させる。

 その目の位置を基準に胴体を切り抜いた透明のウィンドシールドの窓枠を通した視野角度が規定されている。

 なかでも機軸に対して上下にはそれぞれ17°の視界が要求されている。下方視界には着陸時の誘導灯の視認性から侵入角度と機首上げの角度を加味して下方には20°が要求される。(中型機以上の側面に特徴の出る水平方向視界角度との関係もあるが別の機会に)

 次にウィンドシールドはバードストライクや雹や噴石などに対する強度から透明で厚みのある積層樹脂ガラスが使われる。

 したがいウィンドシールドを傾ければ空気抵抗を少なくできるがその厚みのために屈折によるひずみが出てくる。

 また明暗差による反射(映り込み)も大きくなる。 かつては前傾したウィンドシールドの航空機(ヴァルティ V-1Aボーイング モデル 247 など)もあり、現在では大型船のブリッジに採用されている。

 結局のところ現在の旅客機の機首の形状はウィンドシールドの傾斜角を決めるクリアな視界を確保するための材質や構成で決まる屈折率や反射を防ぐコーティングに関係する性能の進歩で決まるようだ。三菱 キ-46 のⅡ型、Ⅲ型の機首形状のすったもんだが思い起こされる)

 ウィンドシールドの傾斜角が決まれば胴体の先端はその延長線に沿って、機首に装着する小型化されたレーダー・アンテナを収容する軸の傾いた楕円錐が収束するまでの形状が決まる。

以上の設計思想は、デハビランド・コメットブリストル ブラバゾンなど第二次大戦後の英国系の大型機にも行き着ける。

 つまり、特に小型の中心線の明確な円筒状の胴体の輸送機、旅客機の機首の(それも尖った)先端は円筒から楕円円錐に絞られながら胴体の中心(水平)軸よりかなり下側で、胴体の円周下面とほぼ同じ高さで収束する理屈であり空力設計は二次的な要素になる。

 くどいようだが航空機の空力設計で最も邪魔なものは操縦席であります。上記の機首形状は高翼タイプのターボプロップではあるがデハビランド カナダダッシュ 8(開発開始1979)あたりから顕著になり、今では低翼の小型機のリージョナル・ジェットの標準となって中型機にも影響している。

 つまり現在の機体の空力設計や構造設計は外国メーカーではこの時代からの積み重ねがあり日本は YS-11 の幕引き(1971)と同時に並行して構想を固めて試作機の開発が必要だった。

 少なくとも同様(真似をしたとは言わないよ)の機首形状のコンセプトを使いながらシートの薄さと斜めの室内配置(日本では特許ではなく実用新案程度のアイデアもしくはギミック)に加えて飛行中のピッチトリムに(運行条件によっては良いほうにも)影響の出やすい後部胴体貨物室の採用で得られた胴体の細さに燃費と環境性能を賭ける現在のMRJ の形にはならなかったと思われる。

 さらに、MRJ の燃費と環境性能の重要な要素である新開発のエンジンでは、MRJ と同系統のギヤード・ファン(GTF)である P&W "ピュアパワー" PW1127 を採用していたエアバス A320 NEO シリーズでは、デリバリーをダブル・キャストであった GTF ではない CMF インターナショナル LEAP-1A26 を採用しているキャリヤーに当面は絞り、ビジネスでは手堅く従来のエンジンを採用した A320 CEO を継続していく方針を続ける。

 エンジンと機体の関係は GTF 用として完成している機体に LEAP を載せれば良いといったお手軽な問題ではない。エンジンなしの機体がずらりと並ぶことになる。

 まさか MRJ でそうなっても「我日本ではァ 川崎 キ‐61 三式戦 飛燕 からァ キ‐100 五式戦 へェ- エンジン換装のォー経験があーる ! 」なんて言い出すアナクロ・ファンはいないと思うが・・・(閑話休題)

 「EASA  GTF A320neo」 で検索すればいくつもの記事が出てくる。主な情報は以下の URLで確認できる。
Airbus stops accepting PW1100G engines for A320neo aircraft  atwonline.com Feb.10, 2018 (Mar.14,2018 現在、全文はログインが必要。検索ポータル・サイトのキャッシュでは読める。お早めに)
A320neo Pratt & Whitney GTF engine issue - Airbus airbus.com Feb. 9. 2018
Emergency Airworthiness Directive AD No.: 2018-0041-E European Aviation Safety Agency (EASA) Feb. 09, 2018

 P&W の見解は A320neo に採用されている暖気時間の長い P&W PW1127 エンジンのみのトラブルであって初期デリバリー後に設計変更して納入されたエンジンの高圧コンプレッサーにあるナイフエッジ・シールにクラックが入り飛行中の再始動ができなくなる現象であり旧仕様に戻した構造にすれば解決する。
 したがい、航空安全機関である EASA や FAA の査定では双発のエンジンの内の一基を旧構造エンジンに戻した(換装した)状態で洋上飛行を除いた運行は行える・・・としている。(ETOPS に関係します・・・ ご参考は こちら

 また、本件は、ボンバルディアエンブラエル三菱の機体に採用される出力では低位の P&W ピュアパワー  (GTF )エンジンには影響しない。・・・とのことであります。
 Pratt & Whitney’s Indian trouble Leeham News.com Mar. 14. 2018 の一部を要約して追記・・・2019 04 04
 この記事では上記の状態でも A320neo の運航を許可しない国もあるとのことです。多くのコメントがついています。ご一読を。
 ピュアパワーを採用した日本の某社の A320neo は旧仕様のエンジンで受領して飛んでいるのかもしれない。

 記事を読む限りではギヤボックスそのものに発生したのではないようだがエンジン全体の捩り振動系として見れば無関係とも言い切れないだろう。

 新エンジンの信頼性は水物であるジンクスは生きており、機体メーカーが信頼性を実証するリスクテイカーとなる。

 ターボファン・ジェットの型式は出力によってかなり細分化されており、同じ設計思想、同じ部品の共用のエンジンといっても機体と運行状況とのマッチングでは良くも悪くも 独立したエンジン型式 である。

 MRJ の一クラス上(PW**17クラスに対してPW**19クラス)の GTF を採用してすでに完成機のデリバリーを始めたボンバルディエ CS100エアバス傘下に入るのだがどうなるのだろう。LEAP エンジンはスネクマ(仏)とのG E インターナショナルの合弁企業)

 同じ系統(PW**19)の ピュアパワー ・エンジンを採用するデリバリー間近のエンブラエル E190-E2 シリーズは当面は先行するボンバルディエを注視となるが、関係が深くなるのは米国のボーイングP&W となる。

 さて,A320 NEO に発生した開発時から 顕在していた事象 の重症化らしき)エンジン・トラブルの原因はさておき、バイパス比を上げるための GTF にどれだけの効果があるのか、よくわからないということがある。(過去の当ブログの記事をご参照)

 GTF の理論的な可能性について諮問を受けたJAXA宇宙航空研究開発機構:内閣府・総務省・文部科学省・経済産業省が共同所管する国立研究開発法人)や METI(経済産業省)の技官やスタッフはどのような指針を出したのだろう。

 少なくとも亜音速輸送機のカテゴリーではアンダクテッド・ターボプロップファンはターボファン・ジェットに対抗できないようだ。

 ギヤの追加でダクテッド・プロップファンとして燃焼効率の改善が見込めるのか、見込めるならギヤはなくても良いのではないか、ギヤ・ボックスの重量で可変ピッチ・ファンにしたほうが空気機械として優れるのではないか、の案がクローズアップされる。

 簡単に言えば GTF のファンへのタービン出力回転数はターボファンのそれよりも高速で回っている。減速してトルクを大きくして負荷が大きいファンを駆動して高バイパス比のエンジンにするためです。

 つまりは高速回転のタービンでコアジェットの噴出速度は遅くなる。そのため燃料と空気が燃焼室を通過する時間が長くなる。結果として燃焼が改善される。

 ターボファン・ジェットでは原理的に、コアジェットの噴射速度(ジェット・ブラスト)とファン後流(モーメンタム・フロー)の速度が等しい時に推進効率は最大になる。

 と同時に 当オフィスで解析した ように ターボファン・ジェットのバイパス比を大きくすればコア・ジェットの出力(燃料消費)も大きくしなければならなくなる。

 いっぽう、ターボプロップではプロペラ後流(モーメンタム・フロー)の速度のほうがコア・エンジンの排気速度(ジェット・ブラスト)よりずっと速い。しかし、いまのところターボプロップではターボファンの速度域までカバーはできていない。

 この二律背反解決するために可変ピッチを採用する高バイパス比のダクテッド・プロップファンで巡航速度を亜音速(一応マッハ0.8以上)にまで向上させる案にロールスロイスが挑戦している。すなわち可変ピッチによってプロップファンの負荷を機速に合わせて調整できるエンジンにする。
 (ただし、現行のターボファンの設計ではカウリング内のデフューザー効果によりファンが処理する流速はほぼ一定でありプロペラのような幅広い進入流速の変化はない。・・・当ブログ内既述済、受売りだけどね。
 可変ピッチのダクテッド・ファンもしくはプロップファンの有効性にも疑問がある
とはいえ、二軸のターボ・ジェットの圧縮機の静止ベーンには可変ピッチが採用されている)

 果たして GTF でこの案に対抗可能なのかどうか、当CEO は、これらの検討をこれまでの解析と同様に力学だけで展開しようとしているのだが手こずっています。いずれそのうちになんとか・・・

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 とにもかくにもYS-11 の幕引きを図るために1971年に通産省が行った「次のない航空機産業」の指導方針で今日の開発遅延も含めて民間航空機参入の命運は決まったと言えそうだ。

 日本の、特に民間で開発した航空機の運命は国外に製造権の売却となるようだ。売るにしても、これさえあれば日本にも世界にも通用するFAA の型式証明を取ってからだろう。しかし残った売却先は中国かロシア、なるべくならインドとなるのだろうか。

 政府は開発を中止する権限も放棄した民間主導(つまり丸投げ)プロジェクトのようだがキャンセルが続かないような外交努力も必要だろう。

 通産省を引き継いだ経済産業省は2002年に海外から発信された需要予測に合わせた計画を急ぎ、具体化能力を蓄えさせていない航空機製造三菱に丸投げした結果として、世界情勢への裏張りを行わせた原子力発電東芝と同様に国の根幹企業の力を削ぐ頭の痛い問題が始まる。(後者は国内での再稼働に安全性を示す免罪符にしたかったのかもしれないが)

 ちなみに川崎重工業はライバルとなる エンブラエル E2-Jet シリーズの母体となる E-Jet シリーズの開発には(胴体ではないが)当初から協力をしていた。
 KRJ として担当しても、うまくいったかどうかは分からぬが、経産省は「永遠の」の三菱の名前が欲しかったのだろうかな・・・(百田 尚樹さんも罪なお人やねー、あっ!この当時は、まだ書いてなかったか)

 ちなみにエンブラエル E-Jet シリーズの直接の母体となった ERJ-145 シリーズは、ターボプロップの EMB120 (1974 開発着手、1985 就航、所要期間 11年) をベースにして 1989年に開発が着手された。

 デリバリーは1996年だった。試験飛行の 1年を含み、デリバリーまでに7年を費やした。
(初期の機首形状は旧態然なのだがシリーズの後半のモデルでは新しい形状に代わっている。また、これらのシリーズの生産は中国に移管されて、2017年にも生産がおこなわれているようです)

 E-Jet シリーズになると、1999年に開発着手、試験飛行2003年、デリバリーは2004年と、都合5年でビジネスに移った。

 E2-Jet シリーズでは、2013年に開発を公表、2016年に試験飛行開始、2018年にデリバリー開始予定。うまくいけば公称開発期間5年間となる。

 通産省、経済産業省は 他山の石」の意味 を知っていたのか、三菱はあるいは日本人は意味を誤解していないか、を考える機会にもなる。

 正確には「他山の石を以て玉を攻むべし」 は 「たざんのいしをもってたまをおさむべし」とも読む。
 「石」は取るに足らぬ「他人」のもの、「玉」は貴重な「己自身」のもの。下世話に言えば「人のふり見て我がふり直せ」だが・・・前半だけが知識で残っているのでは・・・?。

 特に官僚の無謬性を掲げるからには、他国の失敗例はもちろん、成功例ならなおさら、であります・・・

 まあ、国会に招致しても、当時は「エンブラエルごとき」が「名機ゼロ戦の三菱」を差し置いて成功するとは思ってもいなかった、と答弁するのであろうが・・・
 当時はまだ戦前の設計者が巾を利かせていたし、第ニ次「零戦」ブームの申し子たちが行政の内部にもいたのかもね・・・今でも、三次・四次・・・と続くブームの後継者はネット上に若者からいいお歳の評論家までいっぱいいるようだ。なお、物心のついた当CEO は第二次のちょっと後で古本を漁って経験しておりますですね。
 ちなみに第一次ブームは1940年半ばから1941年末にかけて日中戦争からパールハーバー奇襲にかけての海軍関係者の内輪の間で、ですね。

 WEBや書籍で、(何歳からかは分からぬが)いいお歳を召した航空ライターから(何歳までかも判らぬが)初々しい航空ファンまでが息巻いている「世界一の零戦を作った日本人(三菱)だから世界に通用するMRJができる(最近は、ねばならぬ!に変わってきたようだ)」、「(ここはひとつ外国の所為にして)零戦の復活を恐れたアメリカが日本の航空産業を潰した7年間のためだ。間違いない!」は間違いだと言い切れる。

  現実は、YS-11(誰もが認めざるを得ない)商業上の、(運用者から指摘されている)技術上の失敗も含めて即時に次の政策を決められなかった官僚機構(予算の獲得組織)が機能しなかったことが原因であります。

  つまり息巻いている人たちやその親や爺さん(この当時、婆さんは当該官僚にはなっていなかったはず)たちの世代の責任であります。

  既に十数年を掛けた MRJ の知見が「零戦」の呪縛から離れて生かされる機会が作られることを願ってやまない。

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 基本的に日本の民間企業は江戸時代の鎖国ように、プレイヤーが交代しても変化のない均質な仕組みが続き、躓いても不変の延長線上の見込みを、という思い込みの環境で営々と継続することでしか経営できないようだ。

 同時に国家経営においてもしかりといえそうだ。奇しくも 1971年で終わる一ドル360円だった時代のように・・・

 日本の心は素晴らしい、縄文時代はよかった、など、ほとんど形而上のややこしい本(多少は読んでますが)で心を慰めるより山本七平氏の広がった、しかも尖(と)んがった世界の中での日本人論を読み直す時代となったはずなのだが何人の政治家や経営者や教育者が読んでいるのだろう。

 何の力もない下々が読んで心を慰めることにはならないし、溜まった鬱憤を晴らしても世の中は変わらないのだがそれでも政治にかかわるヒントにはなる。

2017年12月31日 (日)

キネマ航空CEO GTF はターボ・ファン・ジェットかダクテッド・ターボ・プロップか、を考えるの巻(その 5 の 2 )「ファンだって奥は深いのだ !(その 1) 」

さて、ターボ・ファン・ジェットのファンは、ファンを覆うカウリングの中に仕込まれたデフューザーによる断熱圧縮による流入空気の速度の低下に加えてプロペラの理論解析の結果をファン・ブレードに反映させて発展していった、という論旨を進めていました。

ほかにかまけていた当CEO はまずその復習から。

考察のベースとしたプロペラの推力係数 AF の式 2017.07.19 の記事 では許容推力を大きくするにはブレードの数 B を増やすほかに翼弦長 b を大きくすることでも得られることが示されている。

 プロペラの実験結果からの研究 2017.07.19 の記事 ではブレード翅数が少ないほうがブレード間の相互の流れによる圧力干渉が減少する傾向が当てはまる可能性がある。

 ターボ・ファンにおいては空気の粘性を考慮してもチップの翼弦長を増すことでチップとダクトの隙間を通ってファンの後方(高圧部)から前方(低圧部)に漏れる空気を押さえるシール長さを伸ばす効果で翼端渦を減らせると考えられる。

 すなわち、誘導抵抗の低減には翼弦を狭くして得られるアスペクト比より、ファンの先端(チップ)とダクトの隙間を小さくすることとシール部の長さを大きくすることで翼端渦の発生は抑えられる。

 もちろんシール部に生じる空気の粘性抵抗とのトレード・オフではありますが翼端渦による誘導抵抗と比べればはるかに改善されると考えられる。

 既述 2017.08.6 の記事 のロールス・ロイスの画像の右半分にある幅広翼弦(Wide-chord fan)のブレードであります。この写真からはブレードの翅数は32枚から22枚に減少しています。この画像のキャプションではこれらにより +4% の効率向上があったと書かれています。

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     カウリングのないターボ・プロップのブレード先端の翼端渦による誘導抵抗については、ターボ・ファンを囲む結構な投影面積と奥行きの長さすなわち面積のあるカウリングの摩擦抵抗を含む形状抵抗に加えてファンの翼端とダクトの隙間に発生する粘性抵抗を合わせた比較となる。

    またカウリングの吸音、遮音による静粛性の効果がターボ・プロップからプロップ・ファンへの翼型や翼平面の形状変更で同等の効果が得られるかについては疑問がのこる。これらはカウリング内のダクトのデフューザー効果を含めて別の機会に考えてみる。

 同じ教科書 2017.7.22 の記事  からは通常の単回転プロペラとコントラ(二重反転)・プロペラの比較ではブレード数が多いほどパワー吸収能力は10~27%程度向上する。ただし、最大効率付近から速度比が小さくなると通常の単回転プロペラとの差はなくなる。(以上は単回転プロペラ 3 翅とコントラ・プロペラ 3x3 の 6 翅との比較だが同じプロペラ直径での比較かどうかの明記はない)

 理屈上はファン直径の縮小も考えられるコントラ・ターボ・ファン方式もあるが今のところ実現はしていない。駆動するギヤボックスの純構造的な問題の次に解決することになるファン同士の空力干渉やそれによる振動問題が解決されていないのだろう。

 構造からみればファンの可変ピッチ・ブレード化もある。
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 これらに着目してファン・ブレードのワイド・コード化に先行したのが英国で、先行した計画を統合して開発された ロールス・ロイス RB211 をベースに具現化されていくことになる。

 当初の RB211 は(当時としては高)バイパス比 5 を採用し、前より低高二段の圧縮段(コンプレッサーと駆動するタービンの2セット)からなる二軸と先頭のファンと駆動する最後尾のタービンをつなぐもう一軸の三軸式を採用していた。

 この時点では、高バイパス比化、つまりファン直径の増加によるブレードに掛かる遠心力の処理の問題があったはずである。

 遠心力は次式で表される。 F = mrω2
 F
: 遠心力(N) m : 回転する質量(ブレード)(kg) r : 回転軸から回転部の重心までの長さ(m)。「腕」の長さともいう ω: 回転速度(radian/sec または s-1

 バイパス比を大きくしたことにより r は必然的に大きくなる。材料が同じなら m も同様となる。遠心力は否応なく大きくなる。

 遠心力を受け持つ駆動軸( RB211 では第三の軸)に取り付けるブレードの基部はワイド・コード化で長く(強度を増すことが)できるのではあるが、これはブレード部の材料が同じなら質量 m が大きくなるので鼬(ネズミではなくイタチ)ごっこになる。

 もちろんファンの基本性能はブレードの面積に比例するのでワイド・ブレード化により面積は同じでもブレード数を減らしブレードの剛性を増やすことができ、ミッドスパン・ナスバーと呼ぶ制振補強の環も廃止はできる。 

 一方では、高バイパス比化でファン直径が大きくなった分だけは重くなり「腕」の長さは長くなる。

 ちなみに、二軸式の低圧段駆動タービン軸と同一ファン駆動タービン回転数より三軸式の低圧段タービンの後方にある三軸目のファン駆動タービンの回転数のほうが低い。また各軸の回転方向による相対回転数の関係などは別の機会に。

 それやこれやでロールスロイスは三軸化に加えてファン・ブレード材質の軽量化で一点突破を図る。チタンから炭素繊維への転換でありました。

 新材料は塵、霧、雨、霰、雹などの風食の試験に続く最終段階で行われる必須の項目である鳥の吸い込み(バード・ストライク)試験において、ファン・ブレードが致命的な飛散をしてしまう。(最大出力時にブレード一枚が根元で破損しても破片がカウリングで止められ運航を続けられる出力の確保が要求されている)

 開発費の膨張の結果、ロールスロイスは資金ショートしてしまい国有化の憂き目にあい税金の投入となる。

 いっぽう、この当時の米国の航空業界はボーイング、マクドネル・ダグラス、ロッキードの競争の頂点にありエンジンを採用するのは ロッキード L-1011 トライスター であった。

 米国議会はロッキードに対する梃入れとして資金の供与をおこなう背後支援を可決しロールス・ロイスはこれによって開発の命脈を保てた。

 つまりは国家の、しかも一国ではできない後見が必要な開発費の確保が必要となることを暗示させる。

 エンジン・メーカーは機種やサイズにより部品メーカーを含めたグローバルな買収と開発費を確保し国の保護政策を利用しやすくする合従連衡によって開発・製造の現地合弁メーカーを設立していくことになる。日本の部品メーカーもこの中に組み込まれて行くことになりました。

 高バイパス比、ワイド・コード化、ミッドスパン・ナスバーの廃止によるクリーンなブレード翼面のフロント・ファンの完成は1984年のロールス・ロイス製の RB211-K35E4 によってでした。

 そのブレードは炭素繊維ではなく、チタンによる前後の薄い外皮(翼面)を熱間鍛造で成形し、化学切削(ケミカルミーニング)により 空間を作りその中にさらに薄いチタンのリボンで作られたハニカム構造を包み込んで拡散溶接をする工法でした。

 このハニカム構造は後にウォーレン・ガーターと呼ばれるチタンの桁構造によりさらに軽量化された。

 炭素繊維によるブレードはGEによる GE90 に始まります。これは炭素繊維の前縁にチタンのカバーを接着補強する構造で、風食にはウレタン・コーティングを施しています。

 来年はボンバルディエのエアバス・グループ入り、MRJ のキャンセルの予測、エンブラエルのボーイング傘下入りなどの話と一緒に、次回はブレード前縁のクネクネのお話に入ります。先は長いなー。

2017年11月30日 (木)

キネマ航空CEO GTF はターボ・ファン・ジェットかダクテッド・ターボ・プロップか、を考えるの巻(その 5 の 1 の補足 )

Pw4084_4168_4000pw さて、前回より RRGE が進めたファン・ブレードのワイド・コード化の発展を見てきました。

 もちろん、右写真のようにプラット・アンド・ホイットニー(P&W )も同様の開発は行っていました。

 右から左へ進んだことは言うまでもありません

ベースとなったエンジンは右より PW4000 系で始まり、PW4166 を経て ボーイング 777 に採用された、PW4084 で完成します。


2017年10月25日 (水)

キネマ航空CEO 『女が引いて男が押して』?を考えるの巻

本稿は10月24日夜から25日零時を跨いでまとめました。したがい現時点では記述内容が実情と異なる個所がありますが当面、修正は行いません。悪しからずご了承ください。
                                    2017/10/30 キネマ航空CEO

2017年秋の分け(「訳」が正しい)の分からぬ衆議院の解散と総選挙が終わった。

でも面白かった。歴史はこんな具合に転ぶのだろうなと、レキジョ(歴女)やレキオ(歴男)が現在を歴史として見てくれれば良いのだが・・・

実力者を戴く集団が一枚岩の思考にはまることほど恐ろしいことはない。(ただし敵味方の明確な歴史ロマンならこれほど心躍るストーリーはないのだけど)

理由はいろいろあるのだろうが、後世から現在を見ると、幅のある権力集団に極端に(今回は「右」に)振れた実力者が出現して率いる集団に向かって(あわよくば乗っ取ろうと)対抗する女傑が振った旗に(相手の仕掛けに乗りやすい過去ありの)単純猛者が率いる弱小(弱中ぐらいとは思っているらしい)対立軸となるはずの集団が民主的な議決で乗ってみた。

だけど女傑は権力集団に挑むには、敵のミニコピーのようだが重心のずれた幅を抱えた戦力を率いては戦えない、と、どこかのキャッチコピーのお株を奪って「仕分け」を実行してみた。

やっては見たものの、この辺りで早々と見切りを付けたのではなかろうか。女傑は居城を変えることなく御座なりの出陣で籠城に踏み切る前に国際外交セレモニーにしっかりと向かった。

こうして女傑は「自民党」大勝の最大の立役者、功労者となった。これが最初から権力者との駆け引き(ディール)から始まっているなら歴史ロマンはもっと面白い。これからも続く歴史での女傑の去就に注目したいものですね。

一方では日本流の「二大政党制の欺瞞を暴いたともいえる。

最初から「仕掛け」乗らなかった智勇(持ち上げすぎだけど)の士は所属していた旧集団名を名乗らず(久し振りにリベラルらしい)新政党名の『立憲民主党』を立ち上げた。

でも通称またはマスコミ名では『立民党』となるようで当CEOには疑問が残るんだけど。「民(タ)(ヨ)ッテ」のか「民ノ為ニ」のか・・・それとも隠したほうの「ポウヲ(ムネ)トスル」なのか真意のほどはよく分からない。

さて、一般的に民主主義の中では「リベラル」からは、敵対する相手(つまり「コンサバ」)が強ければ強いほど「ポピュリズム」の称号を与えることになる。

しかし、当CEO は今回の「立民党」の健闘善戦の「野党」第一党も結局は「ポピュリズム」であると考える。

ほー、あの人がという人が党首のブレなさ、とか男気とか、真っ当さ、とかで持ち上げていることからもわかる。主義とか主張とか理論でじゃないのですね。

リベラリズム」の思想だけが(民ヲシテ)立民党」を支持しているとは当CEO には思えない。錯覚である。一年後に解散総選挙があれば「希望の党」と同様に数は減る。

幸いにもか、少なくともか、今後につづく歴史を考えると相手が一強だけに、平和であれば、当分、長ければ四年は現状の体制が続き、ミッドウェイ・ポイントは2019年夏の「参議院改選」時となる。

党首自身は「現実主義者」だ、といっている。憲法についても「オールド・リベラリスト」の思う「現実」ではないことが必要だろう。

・ ここまでにヒト、カネ、つまりは連合などの組織を取り込む体制の確立とサポーター支援組織を立ち上げ機能させる。
・ 安易な議席党員の受け入れ、政党の統合、個別はともかく包括的政策協定の締結などしない。(しても貸し借りはドライに行う。相手によっては踏み倒す)
・ TV受けする国会議論や発言はしない。「ソーリ、ソーリ、ソーリ(当CEO ならイエス?アイム ソーリー、アイアム 「ザ」 ソーリと答える)」、「一番でなければならないんですか(これは国会で、じゃなかったか。まあ野党魂が染みついているのよ。野党第一党とは名乗るんだけど)」、「強くなければ生きていけない。優しくなれなければ生きている資格がない(現代文学にある出典ぐらい調べろョ !
・ 国会議事録に残る名質問をして発言を引き出せ。そのための質問方法やレトリックの勉強をしっかりやれ。・・・WEB も文字で成り立っている、つまり活きた字に残せ。
・ ヤジは飛ばすな別の方法を考えろ。
・ 現在の国会法でできるのかどうか知らないが二人の質問者を並べ質問時間が足らなくなったら後の質問者が時間を譲るなどのチームプレーぐらいできる集団になれ。
・ 目指すのは中選挙区制の復活の議論である。得票率と当選比の不整合の修正である。
これをなさずして民主主義国家といえるのか。
これを憲法違反と言わざるして何が憲法改正か・・・

もし謙虚な「政権首班指名政党」と名乗るなら、まず質問時間は得票比以上に反対党に厚く配分せよ。

日本に「二大政党制」が成り立たないことはもうはっきりしている・・・ン ? 誰だ ? 相手は。論旨が飛びすぎたか・・・

つまり、日本に「多党制連立内閣」ができる国民性があるかどうかの決め手となる日本の「リベラリズム」の実態がはっきりしない。少なくとも「社民党」にはなかった。

池上(無双)氏の隠し玉『政界悪魔の辞典』では、
『【リベラル】 左翼と呼ばれたくない人たちの自称』 が、秀逸である。惜しむらくは、
『また「リベラリスト」とも呼ばれたくない個人の自称』 を付け加えればもっと明確になる。
いや、もっと本質の曖昧さに広がる。
『【希望】 失望までのつかの間の喜び』 も良い。確かに【】は【まれ】と読むもんね。

希望の党」は小池百合子氏がゴッド・マザー(名付け親)なのかな。英語ほど日本語は得意ではないのかもしれない。しかし、「民進党」を解体してフフフと笑っている顔も浮かんでくる。

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いずれにしてもジェンダー・フリーやポリティカル・コレクトネスで炎上しそう ? だけど)・・・
小池氏には以下の箴言で敬意を表する当CEO であります。

「女、賢しゅうして牛売りそこなう」・・・ひょっとすれば自分(だけ)は売り込めているかも
日ノ本ハ女ナラデハ夜モ明ケヌ国」・・・これは枝野幸男氏次第

と書いてる最中に「立民党」では「ソーリ、ソーリ」の辻本清美氏の政調会長兼国対委員長が決まったようだ。

パワーはあるのだろうが「昔の名前で出てます」では「立民党」はどうなんだろう。いやどうなるんだろう。この方にも同じ箴言で敬意を表しておきたい。

それにしても山尾志桜里氏は惜しいことをした。

「生まれた国が悪いのか、                 ・・・「生まれた時が悪いのか 
    それともあなたが悪いのか」                  それとも俺が悪いのか」  
「何かを成そうと生きて行くなら、             ・・・「何もしないで生きて行くなら
    それは容易(たやす)いこと、じゃない、けど」         それは容易いことだけど」
何とか歌えるぞ、「平成ブルース」。しかし、古いなー!「昭和ブルース」。( YouTube へ ) 

頑張ってね ! もし「民進党」にいたらどちらを選んだんだろう。

待てよ「民進党」のフルネームは何だっけ ? 「民ノホウガンデイル」だったかな。

あッ ! 忘れていた。

思いもかけず「民進党」出身者が大勢を占めた「希望の党」はいずれは分裂するか消えるはずである。

しかし、議員経験者は多い。あちこちに散らばった大物達?に抑えられていて芽の出なかった人材が(本物の風見鶏にも予測の能力はないけれど合わせることはできているもんね鶏頭となって頭角を現すかもしれない。

加えて民主的な党内意思決定で「」も、仕分けで「希望」もなくなって「参議院民進党党内派閥所属衆議院院内会派無所属所属衆議院議員」の元閣僚や元党役員の古株もいる。

そのうえ「立民党」には過去の自任自称の大物たちが居残っている。

お仲間と数合わせの画策をしたりせずに、議会に皆勤してじっとしていてくれるだけにしてほしいものだが。

いくらお金や票を持ってきてくれてもね。ねえ枝野さん。

2017年9月30日 (土)

キネマ航空CEO 「『心情リベラルの終焉』の時代」について考える

山里の篤学の士のブログに、主題の映画批評から続けて、いまの世相を多少の諦観をにじませ次のように喝破している。

「民進党も社会党と同じ運命になりそうだが、要するに自民党が二つできたということだ。
小池さんらの『白紙の手紙』にどんな設計図を描けられるか、そこに日本の未来がかかっている。」

当CEO もそう思う。「心情リベラルの終焉」である。

国を擬人化したあとの「世相の気分」はある期間を経れば刷新されなければ「世相の気分」が作る国の歴史は停滞し、あるいは暴走する。

そこで選挙による「二大政党による政権の交代」という民主主義の大(か、どうかは分らぬが)前提が必要とされる。つまりは政権が代わっても大きく変わらぬ社会的構造があるという原則で成立している。
 小さく変わることを期待するリベラルもコンサバも大勢いるということだ。しかし変わった方向でほとんど変わらないと思う側もあればいっぽう大きく変わりすぎたと思う側もある。人間の知や理を越えて情は面倒である。

そして、日本国憲法下で始まった自由主義陣営の生活物資に支えられながらの戦後生活は苦しいがその中ではぐくまれた自由は心情リベラルの平等思想となり、音楽や小説、新聞や雑誌の論調や評論を通して順に北朝鮮、中国、ソビエト、キューバへと反対の陣営に理想卿を求める。

その中での日本で実現した二大政党は一つの政党の中にある二大派閥が担当していた。大政翼賛の時代よりは良いのだろうが当時の心情リベラルが支えていると信じていた野党は決して二大政党の一方を務めていたわけではない。

簡単に言えば一党二派閥の政党に軍備再構築を制限(憲法9条戦争放棄)し産業再生(異論はあろうが憲法13条幸福の追求)に予算執行を集中させる結果を求める表裏一体の自称野党に過ぎなかった。

つまり内閣首班を送れなかった政権党内派閥が真の野党であった。(言うまでもなく自由民主党は自由党と日本民主党の保守合同です。一党二系内の集団が離合集散しながら二大派閥を形成する時代でした―純正リベラルからはこの要約に大いに異論はあるでしょうが)

本来なら時代の変遷を心情リベラルが託した海外の理想郷の軍事備蓄と産業の変遷の考察で併記概観すべきだが別の機会に譲る。

時代は移り日本の国力の向上と先行していた自由陣営諸国の衰退に合わせて一党二派閥の中で分裂が起こり、離党した保守政治家を取り込んだ自称野党間の連々(「々」がいくつあるのかわからぬ)連立内閣や幾度かの保革連立ののち自民党・公明党との連立が始まる。

ちなみに公明党は内閣首班になるつもりがない。かつての自民党派閥のような連立内野党を演じる意図はない。連立相手の自民党にとっては意外と使い勝手の良い集票政党でありますね。

この混乱の時代に心情リベラルは時代の変化を予感したがさしたる成果もないまま途中で投げ出される時代であった。

続いて二回目の自称野党の連(々々・・・?)立政権は外交の継続破棄の模索や国民の不安を増幅させる近隣外交を実行しながら旧憲法の陸軍顔負けの閣内不一致を行い自称野党に戻る閣僚が出たりと政権の態をなさなくなる。

成果と言えば、税金は上げられる、ことを示したことぐらいだろう。

この辺りが心情リベラルの限界だったのかもしれない。つまり日本にできる二大政党は幻想に過ぎなかった。

さすがに三度目ともなると基本となる所属条件の線引きと排除を始める。男にできなかった女の力である。

これが篤学の士の憂うるいずれは自民党の党内派閥となって溶解するのか、二大政党の野党となって(使い勝手が良いままかどうかは分らぬが)公明党との連立を図れるまでに成長するか、の時代の幕開けの分岐点ができる選挙ともいえる。

そうなった後の旧心情リベラルの憂鬱が始まる、いや続く。要は反対党ではなく影の内閣としての野党としてのチェック機能の有無である。

1.官僚のコントロールができるのか?(その前に党員の品格のほう・・・かもしれないが)
  官僚は議員の手足ではなく忖度の指示に持てる頭脳を最大限に発揮してくれる顔のない組織となっている。
  米国のロールモデルは官僚のトップとなる閣僚制は首班となる大統領を含め議員内閣ではない。上級官僚も準じて入れ替える。英国は議員内閣制を採用している。上級官僚は民間からの公募制や随時の人事異動などが採用されている。
  どちらも日本の官僚制とは違うが癒着などそれなりの弊害はあるようだ。
  その前に困ったことに両国とも二大政党そのものがあやしくなりつつある。

2.国民として最悪の事態である交戦状態に至るまでの外交能力があるのか?
  現在でも宣戦布告はできないが自衛戦争は認められるという憲法解釈は認められていると考えられる。宣戦布告を受ける以前の段階での回避能力はあるのか。
  それ以上に紛争停止の仲介能力はあるのか。こればかりは国力より官僚より政治家の人的資質である。
  言葉に含みもない、また実行力もない「イエス・オア・ノー」の安倍首相の国連総会の演説は加盟国それぞれの外交の本音に日本国はどう伝わったのだろう。某大統領のレプリカか?それでも国内に向けて強固な同盟関係の見せかけのアピールか?
  先を見ていくとサッチャー首相がロールモデルの小池首相(仮)は抑止力になるのかフォローワーになるのか。サッチャー首相が紛争で相手にしたのは戦線を拡大する力も同盟国を引っ張り込む力も外交的に抑え込める国だった。

3.停戦を行える能力はあるのか?
  侵略を宣言して宣戦布告をしてくる国はない。しかし戦争放棄(交戦能力のない)国に戦闘状態を仕掛ける国がないとは言えない。
  始めた戦闘状態を『単独で』終結させることが可能なのか。
  近代日本の戦争では仲介国を介しての戦勝による終戦や勝ち馬に乗る参戦という成功体験で始まったが、現代戦では立憲君主制議会が開始した戦争は内閣による終結工作においては仲介国を誤って事態を悪化させ天皇の存在で終戦という敗戦を迎えられた。
  今後の戦争では勝っても負けてもこの終戦のスキームはあり得ない。
  端的に言えば集団安全保障が発動されても集団安全保障国は国連ではない。緒戦でお茶を濁して「いち抜けた ! に抜けた !! さん、よん抜けた!!」と前面に立たされることもある。極東の紛争を脅威と感じない国は多い。193ヵ国193票で構成される国連に戦争調停力(法的拘束力)はない(世界のというより加盟国政府に期待する民意や道徳の指標に過ぎない)ことははっきりしている。そして分断状態の戦勝倶楽部の常任理事国が一致した場合においておや、である。

 4.そもそも日本に二大政党制が根付くのか?
  米国では共和党と民主党、カソリック、プロテスタントという宗教の規律基盤が根底にある。英国の保守党と労働党、根本は身分制度に基づくと考えられるが英国国協会の影響下にあると言える。ただし小政党は多く発生しており連立に加わる勢力も出てきている。

  現在の日本はというと無宗教、多宗教乱立の信教の二股三股は自由の時代とは言え、・・・

  自民党の神道、公明党の仏教という神仏合従内閣であり宗教としては江戸時代分権というより、・・・(一応の分権により大政奉還という政治儀式が可能だった)

  神主仏従というポスト江戸時代である明治時代を経てレトロ・アヴァンの昭和時代の幕開けにならなければいい時代、・・・

  明治維新の帰結である敗戦維新をやり過ごし大正モダンもどきを謳歌したアプレ昭和を通り過ぎて再びレトロ昭和に回帰するかもしれないポスト昭和平成時代であり、・・・

  まだ元号の決まらぬネオもしくはノヴァ昭和の始まりかもしれない分岐点でもあります。

モダン/ポスト/レトロ/アヴァン・アプレゲールを省略。つまり戦前・戦後)/ネオ/ノヴァ・・・当CEO の世代には懐かしい響きの単語です。多様な解釈ができますがご自由に・・・

  この東洋思想の輪廻もどきの流れは壊滅的な人的被災を政治的にはすべてを天災にしてしまう大正の関東大震災から始まる、昭和の空襲に原爆、平成の阪神淡路大震災、東日本大震災と福島第一メルト・ダウンなどを抱合しながら進んでいる。

  その(輪廻)もどきに表出する事象の本質は明らかに変質している。歴史は単純に繰り返すのではない。

そして一方で取り巻く環境では、心情リベラルが存在できる自由主義は独裁主義、加えて恐怖主義の挑発を超えた挑戦を受けている。少なくとも心情リベラルの根底にあった国はなくなっていることは間違いないであろう。

独裁主義が自由主義を生んだのだが、自由主義にいるリベラルから現在を見れば、日本では純正(標準的)リベラルから、外国では先鋭リベラルからだろうが、豊かな自由主義が貧富の差の大きい独裁主義や恐怖主義を作った、と言えなくはないだろう。

しかし、普遍的な科学工学の力で独裁主義や恐怖主義の存在は様変わりしているともいえる。

また、そもそも論でいえば二大政党が成立している国は少ないことも知っておく必要がある。これはまた別の機会に。

2017年8月14日 (月)

キネマ航空CEO 梅原猛の原点に挑むが・・・横溝正史の作品に思いをはせるの巻

 古代史の先達から先回の論文『水底の歌-柿本人麻呂論 (初出1973)』に続いて梅原猛氏の原点となる「『 (上、下)』 1980 集英社文庫」を貸していただいた

___2初出は1970.1 から 1971.12にかけて芸術新潮に24回連載された「エッセイ」をそのまままとめた作品であります。(同名単行本 1975 集英社)

この連載から深化した作品が「『隠された十字架  法隆寺論』 1972 新潮社」となるようですが当CEO は未読。

 さて、本書は古代日本仏教の勃興史であります。

水底・』のような言語上の思考ではなく、塔、仏像、壁画、寺、神社、奉納歌舞などの具象を分析した芸術論的古代史論である

 しかし、これでは、そんなに読みたくなる「帯」(腰巻きとも言う)にはならない。むしろ、・・・

聖徳太子」の血脈の抹殺に始まる太子の祟りを縦糸に、
新興仏教と古来神道との狭間に勃発した人間の欲望の覇権争いを横糸に、
兄弟間譲位と女性天皇の擁立が織りなす時代の皇室をめぐる姻戚と相関の(性的関係を含めた)関係を解き明かし現代につづく、
水底・』に先行した壮大な 論文 ! ではなく エッセイ ! ! です

・・・であります。さて、下巻の巻末に西暦239年から1697年までの1559年間に及ぶ年表がありますが実質は、次の200年を掛けた国家仏教から仏教国家への萌芽完成まで、の足かけ3世紀です。(その仏教国家完成から崩壊までには1100年が必要でした・・・とは書いてないけど)

552(538説もあり) 仏教(仏像、経論の)公式伝来
574 厩戸皇子(うまやどのみこ)のちの聖徳太子生まれる
585 2月蘇我馬子仏塔を立て斎会を説く
      3月物部守屋中臣勝海ら仏像仏殿を焼く
587 聖徳太子(没後の尊称だが便宜上)四天王寺建立の発願、馬子法興寺建立発願
591 法興寺起工
593 聖徳太子摂政となる。四天王寺起工
622 2月聖徳太子薨ず
643 11月蘇我入鹿聖徳太子の子山背大兄王(やましろのおおえのかみ)一族の殺害
      参画氏族の中に中臣塩屋連牧夫(なかとみのしおやのむらじまきふ)
      のちの藤原氏の始祖
645 6月乙巳の変蘇我氏滅亡、「大化の改新」
 ・
 ・
712 古事記成る
720 日本書紀成る
737 藤原氏四兄弟相次いで天然痘で死去
739 (別資料では737)聖徳太子一族の住居址に救世観音像を安置する夢殿建つ
743 大仏建立発願
752 大仏開眼供養
(なお、表示の月は太陽歴なのか陰暦なのか当時の中国暦なのかは不明です。)

 この間、 562年に半島では任那の日本府が新羅に滅ぼされ589年大陸では隋王朝の成立600年遣隋使の初回派遣603年新羅への征討出兵中止618年隋に代わり唐王朝の成立630年遣唐使初回派遣663年半島の白村江で唐・新羅連合軍に敗北668年唐・新羅により高句麗滅亡、新羅による半島の統一・・・。

     と対外関係も忙しい時代で、公の遣隋・遣唐使に加えて技能難民や労働力難民の流入、帰化人による技術、芸術など大陸文化の系統的な吸収ができた時代でもあったようです。(大化改新後に防人(さきもり)などの九州沿岸への徴兵動員がおこなわれた。それ以前の半島進出については倭(やまと)朝廷が長(おさ)を派遣する在外組織なのか両岸の部族間の関係なのかは判然としないが物資や文化の交易をおこなう倭朝廷寄りの部族の保護のようだ)

     幸いに後半の100年弱は半島からの撤収に加えて大陸情勢も唐王朝が安定しており、半島の新羅との両睨みの北九州海岸線防衛ラインの構築の中で奈良文化も大陸的から日本的なものへの咀嚼が落ち着いて行えた時代と思われます。(この時代に記紀が成り、万葉集の編纂が始まる。先の(任那)「日本府」の固有名詞は日本書紀にて初出。いくつかの暗殺や武力抗争があった。658から660年にかけて東北の蝦夷などの部族への侵攻が始まる。決着は平安遷都後の、坂上田村麻呂、阿弖流為(あてるい)伝説に・・・)

     内政は、といえば、国家統治の規範を仏教に置こうとする有力氏族蘇我氏と皇位継承血脈にいる皇族である聖徳太子の仏教推進派と対立する他の皇族を擁したその他大勢派の氏族との政争を制した聖徳太子没後の天皇の座をめぐる抗争で、中臣氏はまず、かつての親の代では同盟関係であった蘇我馬子の子入鹿太子の子である山背大兄王の離反を図り聖徳太子の(いわゆる皇統の)血脈を断絶させ、その2年後の大化改新に先立つ乙巳の変入鹿らを殺害して太子以前の時代からの旧勢力の筆頭だった蘇我氏の権勢を一気に没落させます。

 年表の585年を確認ください。中臣藤原)氏のこころの内に分け入ると、氏族間の憎悪なのか義憤なのか、対象は仏教なのか政(まつりごと)なのかよくわからぬが(権益であることは間違いない)長年の諜略と一瞬の暗殺で政権の奪取に成功した時代でもあったのであります。

おおっ!梅原師見てきたように語り出し・・・がのり移ってきたゾ

 そして、藤原氏はその後の後宮との姻戚関係、不遜不倫関係を巧み(といっても蘇我氏だってやっていた)に構築し政(まつりごと)を手中に収めるのですが、その中で一族を襲った不幸を、殺したわけでもない(殺したんじゃないのかな ? 説もある )聖徳太子の「祟り」として仏教を利用した鎮めをするために西洋にはない日本美学』の建立を続けた・・・という論旨の展開と読めました。

 ただ直近では、協力したのちに殺された蘇我入鹿も恨んでいるはずなのだけどね・・・でも黒幕中臣氏聖徳太子を含めて山背大兄王一族の殺害“実行者”に対しておこなった口封じを兼ねた直接実行氏族への復讐の処罰だったら『祟り』はないよねー・・・と数代下がった子孫の藤原氏になっても感じられるということのようです。

 「祟り」も、「祟る」側と「祟られる」側の地位身分、あるいは人望の相対関係で「祟られる」側の勝者としての感じ方次第なのでしょーね。これぞ日本 ! ?

 梅原説はさらには塔の内部に施された壁画、仏像の装飾がおどろおどろしい世界を再現してくれます。さすがに地霊、怨霊には敵わないらしく年表の続きとしておまけの42年で
 ・
 ・
(783 万葉集の編纂終わる。開始年不明、600年代後半)
(794 平安京遷都)
   ・・・と(正確には難波宮などを含み)呪いや祟りで転々とした都の総称としての奈良盆地から長岡京を経て地形の似た平安京への恒久避難となったのでしょうね。藤原氏はこれから400年近く政権の中枢に留まります。この間の祟りはどうなったのかは当CEO 浅学につき分かりません。

 さて今回は形ある物体からの梅原氏の思考の展開ですが具体的なこの時代の『』の建設となると為政者ひいては施工者の思惑がどこまで反映できるのかはよくわからない。

 少なくとも、切妻、寄棟、高床といった旧来工法では、施工者がこれくらいの大きさでといえば棟梁の差配に従って材木の調達から現場での加工組立ができる。

しかし、この時代に始まった大陸起源の複雑な仏教建築となると工程の分化が必須となる。

 外観内観の意匠と構造決定の工程はおそらく同時並行で行われ、そこから個々の構造部品を作るには多くの部品図面や指図書に起こす設計集団が必要となる。

 加えて部品の加工、組立の人工と工数とその工程順序の管理といった施工集団が存在する。この二つの集団は運搬労働力を除き多分一体の集団であったと思われる。この中に渡来人の集団と旧来(倭)工法の集団があったはずだがそのあたりははっきりしない。
余談ながら木材の伐採、輸送、集積、仮加工、寝かし(エイジング)といった木材ビジネスもこの時代に生まれたんだろうな。

 もちろん建築全体を構成する木工や石工のほかに木彫、金物といった現在では装飾品と分類される技能集団も独立して存在していたのだろう。

 この時代の「」が梅原氏や多くの有名無名の人々のこころをとらえるその『』は『外観内観の構造の意匠』で決められているのであり、施工主となる中臣・藤原氏の意識に外観内観の細部に対する梅原説が提示する意図がそのままに入っているかには疑問がある。

 そのため梅原氏は高さとして指示できる「」に着目したのだろう。しかし、これだけで梅原氏の施工者意志説で提示された細部の意匠(具象)の証明になるのかどうか。

 もちろん細部の具象コンセプトについてもまだ発見されない文書や絵で詳細な中臣・藤原コンセプトの要求が行われたのかもしれないが、その再現のすべては構造で決まる。

 むしろその時々の塔建築を請け負う集団がその時々の工夫を凝らして無二の「」を設計し、建て上げて、施工主が気に入らなければ壊されついでに殺されて、といったところではなかろうか。たぶん彼らの身分では施工主を祟ることもないだろう。

 施工主は気に入れば内装に金を掛けて己の世界の構築はできる。またその意向も建築よりは伝わりやすいかもしれない。梅原氏の筆はここでは怪談めいた鬼気迫る筆致で畳みかける。

 737年以降に法隆寺夢殿に封印されたという聖徳太子を写したとされる救世観音菩薩(木造観音菩薩立像)は、正面のみの空洞(要するに最中の皮の表側の片割れ)で動き回るための足もなく、御仏を示す光背は釘で直接頭部に打ちつけられて「人間でなく怨霊」の聖徳太子を呪詛する目的である、と。

 怨霊も足で移動するのか ? 足をなくすれば出る場所が決まっている(はずの)地縛霊に貶めたのか・・・この説では時代考証の錯誤感もあるけど新説にはなりそう。

 さらに浅学のCEO ではあるが、釘打ちの呪詛は『生きている相手』を模した藁人形や人型に打ち込まれ、イエス・キリストも生きているうちに釘で十字架に磔にされた。ドラキュラ伯爵は呼吸していないようだが眠っているところに釘の代わりに杭を打ち込まれているんじゃなかったっけ。そもそも既に死した者の怨霊に「釘」の効果があるのかね・・・となる。

 光背と頭部を結ぶ構造も釘の形状も説明されていない。どんな釘なんだ?むしろ光背と観音像をつなぎ一体となる構造の意味もある・・・観音像を動かしたら光背がとり残されて御仏の慈愛が消えちゃったってこともあるんじゃないか・・・

 まあ、呪詛の方法の諮問を受けた取り巻き文化人のブレーンが困り果てて出した案を、藤原氏には「やってみる」ことは「やってやる」と進取の勇気があるのでやってみた。

 しかし、ご利益がないもんで白布にまかれて人目を避けて隠ぺい放置されていた・・・と、梅原説につながるのかもしれないが・・・、

 肝心の観音像を包んだ白布の汚れや埃を含めた科学的分析はなされていない。梅原氏は西欧の「聖骸布」のようにあからさまにはしない。これもまた日本、なのかもね。

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 こうした呪詛は怨霊の祟りに対する女性の恐怖心が深くかかわっていると梅原説では強調される。

 どうやって祟りから呪詛への過程が進むのだろう。そもそも100年近く後の女性が祟りの言われをどのように知るのだろう。記紀を奉ずる公家、神職からか、かじった僧侶からか・・・
神仏習合と反発もこの時代から延々と始まった。そして、明治元年(1872)の神仏判然令で公式に神仏分離とされて、仏教《が特に庶諸民に対して権威もしくは拘束力を持った》国家の末期期に入った/閑話休題)

 予算が必要な呪詛建築の施工には男性の分担と考えられるのだが、下品な当CEO はさらに考える。こうした謀(はかりごと)の発端はどこで行われたのだろう。

 昼なのか夜なのか、広間か寝室か、家政婦は見たのか、宮中や公家の屋敷の間取りや奉公人の数は、上下の食糧献立事情は、人口や職業、都市や村の構成や経済は、行政機関の構成は、租税の徴収は、予算の案や執行は、芸術家集団の存在は、といった時代背景があってこその梅原説と思うのだが古代史の背景解明に梅原氏は古代史の著作の印税を使って影の貢献をされたのであろうな ・・・と、つい余計なお世話を思ってしまう。

 せめて「」を一基建てる費用の収支出納ぐらいは氏の下で解明してほしいものです。ただ働きで古代日本の文化を作るのが日本人なのか ? 帰化人もよく我慢したものだなー。

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 さて、描かれる「家系図」と「時系列人物行動表」とくるとこれらを駆使した横溝正史の名探偵金田一耕助を思い浮かべる当CEO であります。《迷》探偵のようでもありますが人間の始めた行為を押しとどめることもなく最後まで見届ける仏のまなざしのようでもあります。

 「犬神家の一族」では戦後の財閥解体、「悪魔が来りて笛を吹く」では華族制度の崩壊、「獄門島」や「八つ墓村」、「悪魔の手毬歌」では村社会の戦後史とも家族史とも、戦前が背景となる「本陣殺人事件」では格式のある家族の中の男尊女卑に潜む屈曲した潔癖倫理など、当CEO の世代にはフィクションでそれぞれの時代を映し出していると感じられる。しかし、残念なことに今では「オワった コンてんつ」と片づけられるのだろう。

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 繰り返すが梅原説はなまじ学際的なアカデミズムをまとっているだけに個々別々の分野の古代史を総合した中での再評価が必要と思われる。 梅原説の解説本が待たれます。

 まあ、当CEO も多感なころに梅原説に接しておれば古代史の迷路に紛れ込もうとしたかもしれない梅原氏の情熱は強く感じますが、今が当CEO にとっての読み時と思えます。

 『聖徳太子の祟り』と『藤原氏の呪詛』の相克が日本国の骨格形のない精神をつくり、時代時代の肉付けがされてきたという梅原説を否定するつもりは更々ない。

 が、先に挙げた二点の論考の視点であり始点となる美学的解釈部分を外すとエッセイ自体は『一般人読者が感じる権威感(パンピー・アカデミズム)』は消える。

 特に後者の具象の説明自体は資料読み解きの誤解であると、専門分野からは否定されているようだ。しかし、梅原氏はこのエッセイや関連著作での修正もしくは注記の付与をされるつもりはない(完全黙秘の)ようです。

 そして今なぜ、この本が当CEO の手元に現われたのか、と考えると、

『前振りの間違いぐらいで挫折するな!』
『間違った前振りで提起した論旨の先の真実が必ず出現して過去の前振りをかすませる!!』・・・
日本人論的精神論のなかでは「初志貫徹」 >>かなり大なり君子豹変」の価値感の間で振れる一つの解を日本人らしく行動で示してくれているのかも知れぬ・・・なー。

 と、思いながらも当CEO は若き日、日本国自体を含めた若き時代の心情的リベラリズムの限界をプチ豹変させる模索をしている最中です。

 紹介してくださった先達さんありがとうございます。これからもご指導よろしくお願いいたします。

2017年8月 6日 (日)

キネマ航空CEO GTF はターボ・ファン・ジェットかダクテッド・ターボ・プロップか、を考えるの巻(その 5 の 1 )「ファンの奥は深いのか ? 」

おことわり

冷房のない部屋で書いています。校正と校閲の不完全で後日訂正があるかもしれませんがとりあえず公開します。ご指摘をいただければ優先的に対処いたします・・・暑い !

ファンの外観は先々回 2017/7/19 の当オフィスの記事で ボーイング 747 の初期と現在のエンジンの写真とカッタウェイ図で並べている。ほかにないかと探していたらエアバス A350 XWB に採用されている ロールス・ロイス トレント XWB 84k を分析した次のサイトを見つけた。

参考)  ロールス・ロイス トレント XWB 84k とは、

Rollstrentxwb
      画像は https://3dprint.com/45820/rolls-royce-largest-3d-printed/ より。
      左画像の
手前が エアバス A350XWB-1000。このほかに 900 , 800 が設定され、それぞれに RR Torrent XRB 97k , 84k , 75k - 79k が対応する。なお -800 の計画は中止された。
      
型番の k は離昇推力の単位 1000lbf。ファン直径 3m、 ブレード枚数 22、バイパス比 9.6 : 1。
      A350XWBeXtra Wide Body のイメージ・キャッチだがエンジンでは同機専用ということ。

さて、今回の本題の参考にしたサイトは、

LEEHAM NEWS AND COMMENT に連載された、Bjorn's corner; Turbofan engine challenges; Part  2 
     このコーナーでは Part 1 ~7 で、当CEO が意識して避けている新しい燃焼技術についても突っ込んで解説している。英文だが技術用語を頼りにぜひご一読を!

同記事から借用した左下図は、 トレント XWB 84k (2010)を含む ロールス・ロイス トレント 600 (1988)から始まる トレント シリーズ の基礎となった RB211 (1969)のファンとブレードの変遷であります。

まず、左右に分割合成された画像のエンジンの型式は、
  左がたぶん ボーイング 747 向けの トレント RB211-524 (1973)
  右は ボーイング 757 クラス向けに開発された トレント RB211-535 (1984)。

     なお、『トレント』の名は RB211 で三代目だが、初代の トレント RB.50 (1945) は技術的に完成した最初のターボプロップ・エンジンで、のちのロールス・ロイス ダート (1947)となる。日本航空機製造 YS-11 (1962)にも採用された。
     二代目の RB.203 トレント (1967)はスリー・スプール(3軸)形式を最初に採用した低バイパス比の軍用ターボ・ファンで 3軸構成では RB211 に多少の関連がある。こちらは三菱 T-2 / F-1 (1971/1975)にも双発として採用された。 (閑話休題)

RrfanbladeevolutionCfmblades

次に右(上)の画像は CMF インターナショナル
ブレードの変遷が並べられています。

右から ・・・
  CMF56-5B (1991)で エアバス A320 系へ、
  CMF56-7B (1995)で ボーイング 737-600 以降へ。そして、
  CMF LEAP (2013)は エアバス A320neo ボーイング 737MAX
                
中国商用飛機有限公司 C919 へ向けられます。

実年代ではなく技術世代の比較とすれば、
  RB211-524 vs CMF56-5B
  RB211-535 vs CMF56-7B
  RR トレント XWB (最上部の右側画像参照)vs CMF LEAP (-56)
となります。

Ge90ちなみに CMF インターナショナルGE アビエーション(米) と サフラン エアクラフト エンジンズ(仏)傘下のスネクマ との合弁会社です。

エアバス A320ボーイング 737 向けエンジンの開発と生産に特化して設立されたました。

GE アビエーション 本体の最新エンジンは ボーイング 787 向けの GEnx ですがファン・ブレードは ボーイング 777 向けの GE90 を継承しているようです。

右上は以前に掲載していた GE90 の画像の再掲です。 CMF LEAP (-56) とのビミョーな違いは次回に回します。

-------------ここから本題----------------

これらの画像から分かる形状の変遷は次のようにまとめられる。

 新旧いずれのファン・ブレードもレシプロ・エンジンのプロペラのブレード間のような隙間はない。

 初期のファン・ブレードは翼弦が狭く枚数が多い。

 ブレード長さの中央部に “Clappered”「鼻付き」と説明される突起がある。
これは正面写真の左半分の中央付近に見えるリング状のミッドスパン・スナバー(Mid span snubber)と呼ばれる中央部制止環もしくは連結部材を取り付ける個所であります。

     なぜ必要か?というとブレードに発生する振動対策であります。
     特にジェット・エンジン本体や取り付けられた補機などの回転や振動に加えてブレードに働く揚力と抗力で発生する空力振動に誘発される共振という現象です。
     この共振という現象は理論上は無限大のピークを持ち構造を破壊する元凶であります。
     もちろん共振周波数を避けるブレードの材質や形状で工夫を凝らした緩衝メカニズムを機能させてピークの減衰を図りますが、皆無にはできません。
     まして近接するブレードの数々が勝手に振動や共振を始めたら収拾がつかなくなります。
     このため、ブレードの中央部にミッドスパン・スナバーを取り付けてブレードを一つの振動体にまとめる構造であります。
     ミッドスパン・スナバーを二つ使った例は P&W JT-9 (1966) を先々回の画像でご覧いただきました。

 そしてこの時代、ブレードが細くその枚数は多い。その理由は、・・・

 空力的な知見から 2017.07.19 の記事 のプロペラの推力係数 AF の式で示されたようにファンが許容できる(念のため構造の強度ではありません)推力を示す係数はブレードの数 B に比例して大きくなる。

     前出の教科書ではブレード翅数 B を増やすと空力干渉を起こしプロペラ効率が落ちる指摘がある。
     しかし、ジェット・エンジンでは効率以前の問題として、できれば干渉さえ利用して、ファンの正面面積をブレードで覆うことでその高出力を許容吸収することになります。
     初期のターボ・プロップのコア・エンジンの出力はレシプロの少し上となる程度に設定されてプロペラもレシプロの経験の延長上となるパドル・タイプに設計されていた。
     
しかし、現在ではブレードの形状を洗練させて翅数を増やし、さらにはプロップ・ファンと称してコア・エンジンの高出力化を図っている。

 (承前)さらに誘導抵抗の低減には翼弦を狭くしてアスペクト比を大きくとることも考えたのかもしれない。(当CEO としては後者のアスペクト比との関連には多少の疑問がありますけど・・・)

 別の視点からは、ターボ・ファンの回転数は低圧圧縮段の回転数 N1 と同じでレシプロに比べると格段に大きいことによる構造の強度限界があります。

 すなわちファン・ブレードの質量に比例し、回転数の二乗に比例する遠心力の影響であります。 加えて、レシプロの出力より格段に大きいジェット・エンジンの駆動力をファンで変換した推力も加わります。

 これらを総合すると、この当時にあったファン・ブレードの形状の決め手は材質の質量(正確には密度)に原因があると考察できます。

 遠心力は N1 で回転するシャフトに結合(嵌合)されるブレードの基部に引っ張りの力として、もう一つの推力は前方に向かう曲げモーメントとして働きます。

     曲げモーメントは中立点から前縁に向かって圧縮、後縁に向かっては引張として作用します。前縁では遠心力を緩和し後縁では加重されます。これらの力を合成すると材料強度としては最も弱い剪断方向の力となります。
     
これらのブレード基部にかかる力(kg)は基部の面積(m2)で割られて負荷応力(kg/m2)となり材料の許容応力(kg/m2)と比較され安全率を加味した基部嵌合部の面積(m2)ひいては長さ(m)が求められます。

 いずれが、卵か、ニワトリか、になりますが、上記の理由をバランスさせた基部の長さか、ブレード基部の構造上の寸法制限か、あるいはその両方か、で基部の寸法が決まります。

 ブレードの形状や構造の一義的な目的はブレード1 枚の質量をいかに軽くするかになります。この時代にはブレードの幅を細くして枚数を増やす案が採用されました。

 この当時のブレードの材質は無垢のチタンの板から削りだされていました。これから先は軽く強い材料の開発がファンの形状の変化を伴う技術競争となります。

あー暑い

画像の多用でスペースをとりました。次回(その 5 の 2 )「ファンだって奥は深いのだ ! 」 につづきます。

«キネマ航空CEO GTF はターボ・ファン・ジェットかダクテッド・ターボ・プロップか、を考えるの巻(その 4 )「プロペラだって奥は深い」

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