2018年10月 8日 (月)

キネマ航空CEO 『ミゾーユー』内閣を考えた ついでに「時の流れに身を任せ」る日本人を考えるの巻(その 1 )

 2018年の夏休み明けには「3.11」のカテゴリーを拡充しようと資料を集めていたのだったが、その出鼻に二つの天災が襲い、時限爆弾として潜んでいた人災をも誘発し多くの犠牲者や被害者を出しました。

 亡くなられた犠牲者、ご家族の方々にご冥福とお悔やみを申し上げます。また被害に遭われた方々の日々の生活への復旧の早からんことをお祈りいたします。 

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 この一次、二次・・・この内閣になってから数々の天災が日本国を襲ったのだが、政府もほとんどの国民も犠牲者の数、失った資産の合計金額の大きさに囚われてしまって、本来の天災の意味を考える力を蓄える気力を失っているように見える。

 『大天災は忘れた(やっと立ち直れた)ころに、中・小の天災は忘れる間もなくやってくる』

 つまりは慣れてくるのだろう。

 人間の文明による「温暖化の時代」という言葉は、変わらぬ治世を誇(ほこ「」じゃなくてほこ「りたい」)政治家や一家言がある評論家には嫌われているようである。

 しかし、「気候変動の時代」であることは長寿命となった世代の日本人には実感できる。

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 さて、2018年9月6日の未明に起きた道央南部の地震の前後の空中写真を見比べた当CEO 愕然とした。 当CEO は広大な北海道は土地の使い方は違うはず、と漠然と思い込んでいたようだ。

 しかし、写真が示したのはまったく江戸時代と同じ土地利用の形態のままであった。 山際の住居、その前の道路、そして広げた農地・・・

 さらには地滑りの有様は地質の形態が全くことなることも示していた。

 また、2019年7月7日に入った深夜に岡山県倉敷市真備町に発生した高梁川の支流域の水害は河川改修計画があったようだが間に合わなかった。

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 まず、倉敷市で発生した浸水地域を含めた地形は高梁川とその支流が形成した三角州に近い扇状地の上にできた平地であった。 扇状地は峡谷を削った川の出口から始まり広範囲に造られたなだらかな平地である。

 ただし、扇状地や三角州が造られるのは土砂を運ぶ河川が自然の法則に従って高きより低きに流れる経路を選び低きを高きに変えて、ヒトが手を加えずとも平らにするからである。

 しかし、住み易いなだらかな傾斜地にヒトが住み着くと川は自然の法則に従って自由に流れてもらっては困るのである。

 そこで、堤防を造り川の流れを規制する。 しかし川は土砂を運び続けて川底に沈殿する。 相対的に低くなった堤防はかさ上げされる。 この繰り返しで川底は平地より高くなって天井川となる。

 こうした河川には氾濫時に遊水地や川となる放水路が設けられる。 治水である。 ただし、土地利用の効率を重視すると遊休地とされて多少の土地改良を加えて居住地となり旧に復することは難しくなる。

 多くの浸水可能性のある地域はこうした支流域に広がる。 支流は本流に流れ込む合流点では本流の水位より高くなければならない。 合流点が河口に近づいても支流の堤防は許容水位が低いままで整備は遅れているようだ。

 本流となる河川では発電や上水源としての生活圏から離れた上流域のダム、下流域の堅牢な堤防、そこにダムの予防放水、高潮による河口の潮位上昇のみならず水門の開閉という人為によっても支流の水位は影響を受ける。

 また、海岸では遠浅の海岸を埋め立てて同様の河川や用水路を通し農地に使われたが防波堤と水門の追加で工業用地や住宅地に転用したり、最初から帆の目的で造成を始める。

 ついには海面の上の空中に鋼管や鋼杭で補強されたコンクリートの桁で支えられた飛行場まで出現する。 しかも、完成後の初期歪の確認の余裕もなく、嵩上げの改修もできない状態で。

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 気候変動により今はどこにでも起こる気象変動の時代である。 日本が避けることなどできない台風が巨大化する。暴風を伴う大量の雨が短時間に集中的に襲い駆け抜けるのである。

 また、爆弾低気圧とも、マルチセルとも、スーパーセルとも呼ばれる局地的な豪雨や竜巻も発生する。

 こうした豪雨や強風が都会を襲い停電、断水、交通麻痺などの災害が起こればほとんどが人災のはずであるが、「ミゾーユー」の一言で人災は免罪される。

 もちろん、ヒトが生活のために手を加えて住み着いた、より自然に近い地形にも雨は降り、風も襲い、昔と変わらぬ自然の法則でヒトを襲う。

 大臣や官僚は「ミゾーユー」ですむが「みぞう または みぞお未曾有】」としてどう納得するのか。

 新明解国語辞典 第四版 み・ぞう)【未曾有】 それに類する事件が今までに一度もなかったこと。「古今 ― の出来事」(最近は歴史を忘れ ミ・ゾ・ウと音読みすることが多い「ミゾユウ」も誤り) 

 新装改訂 新潮国語辞典 ミ ゾウ未(曾有】 (「未だかつてあらず」の意) 一、今までに一度もないこと。空前。 二、(梵語 adbhuta)〔仏〕 めずらしいこと。めったにないこと。 以下の出典等省略

   先の大臣(おとど)はどちらの意味でつかったのやら。 そして下々はどう解釈するのやら。 被災者は解釈ではすまないはずだ。

 『気候変動の時代』 とは少なくとも文学系辞書「新潮」の梵語からの解釈が当てはまり、良きにつけ(本義)悪しきにつけ(転意)、【めったにない】 けれど【しかし、ある!】 ことに対応することを考える時代でもあるようだ。

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 さて、大気の自然変動は「気象」だが海洋の自然変動は「海象」となる。 その一つに津波もあるが、ここでは水温の変化について考える。

 水の重さは温度によって変わる。 最も重くなるのは摂氏で 4℃ であるとされるのだが、比重の定義は結構難しい。

  比重 = 物質の質量 / 同一の体積を有する水の質量
       質量比なので単位は無次元となる。 その基準となる以下の項目にはいろんな注釈が付くのだが詳細はウィキペディアに任せて・・・

  1. 基準となる物質は水のみである。
  2. 水の温度を指定するときと指定しないときがある。
    1. 温度を指定しないときは四セルシウス度におけるものである。
    2. 温度を指定したときはその指定の温度を比重と共に示すことになる。
  3. 水の体積は、101 325 Paの圧力下(標準気圧を意味する。)におけるものである。
  4. 物質と水の密度を比較するのではなく、物質の体積と同一の体積の水の質量を直接に比較する。

      常識では水は純水、また温度は 4 ℃ であるが厳密には間違い。

 純水の雨は海にも降る。 いや、海に降るほうがずっと多い。 そして雨水のほうが塩分などのミネラルの溶けこんだ海水よりずっと軽い。

 気候変動による多雨と海水の高温化は、日本が乗っかる大陸系のプレートが海洋系プレートに向かって張り出す大陸棚の上で重しとなっている海水の重さを軽くする。

 言うまでもなく海洋系プレートは大陸系プレートの下側に潜り込み、大陸系プレートの裾である大陸棚を巻き込みながら深い海溝を形成する。

 次回(その 2 )に続く・・・

プレート・テクトニクス理論の予習を少し。

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  比較的新しい理論である。 説自体は古くからあるが1912年の「大陸移動説」からの発展といえる。 工学上の機器の進歩に合わせて観察と傍証による理論化が大局的にはほぼ実証されており、その局地解析に近づける努力が始まっている。

  プレートとは融けた鉄が主体のマントルに浮かぶ外殻である。 ヒトの住めるのはその殻の上に盛り上がり海面から空中に出ている陸地や島であります。

  その殻はひび割れており、上にあるもので大陸系のプレートと海洋系のプレートに分けられる。 火山島は海洋系プレートの上にあって移動している。

  基本的に海洋系プレートが大陸系プレートの下側に潜り込む形で大陸系プレート押し上げている。 その端境が海溝となる。

  それに抗しているのが大陸側のプレートの端つまり大陸棚であり、現在では大陸棚の上の海水の重さも含めて陸地は一応は安定している・・・と思っている。

  現実には海洋プレートがマントルに触れて融け始めるあたりに火山帯ができ火山性地震が多発する。 また海溝付近では側面の崩壊により津波を誘発する地震が発生する。

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ひるがえって日本は・・・(つづく)

2018年8月24日 (金)

過去の記事のアップデートについて

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キネマ航空CEOからのお願い


当オフィスでは時事的な技術記事のアップデートを心がけています
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しかしながら、遡(さかのぼ)っての修正や加筆ができていない記事も多くあります

同じ「カテゴリー」の系統的な読込みをお願いいたします


では、ごゆるりとお楽しみください


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2018年7月20日 (金)

キネマ航空CEO 『GTF のまとめにかかる』の巻(その 2) と 夏季特集 2 題

公開校正および校閲中です。 キネマ航空CEO (2018/07/20)

 「キネマ航空CEO 『GTF のまとめにかかる』の巻(その 2)」 は、末尾に
 キネマ航空CEO 『GTF をまとめちゃった』の巻を挿入して全三巻で終わりとします。

 巻末に夏季特集として『Honda HF120 とそのライバルたち』 と 『ロールス・ロイスの高バイパス比化について』、 の 2 本を追加しました。後者に訂正加筆を行いました。2018.08.25

 ずいぶん長くなりましたのでクーラーを効かせた部屋でゆっくりとお読みください。

 当CEO は 上記の作業 を除き夏休みに入ります。なお、コメントはお受けいたします。
 皆様もご健勝でお過ごしくださいますよう。
 秋口に当オフィスでまたお会いいたしましょう。

 なお当オフィスが運営する KINEMA AIRLINS はオン・デマンドで終日運行しています。
 皆様の ご搭乗 をお待ちしております。

                                       キネマ航空 CEO  敬白

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(承前)
キネマ航空CEO 『GTF のまとめにかかる』の巻(その 2)

 ターボ・ファンの使命は亜音速の上限を効率よく運行する航空機に最適化または特化したエンジンであります。

 いくらバイパス比を大きくしても低速域ではプロペラの推進効率にはかなわない。

 そこに高速になるほどダクトの抵抗が大きくなるターボ・ファンほどの高速を求めなければターボ・プロップの出番がある・・・のであるが、それはまた別の機会に。

 まず、前回のようにファンとジェットの独立した効率の数値あるいはグラフがあれば、ターボ・ファンの効率の試算は四則演算(加減乗除)の法則で、できる。

 中でも主要なのは加算であります。 ジェット・ブラストの速度比 1 (効率のピーク)をファンの速度比 1 より小さくすることで低速側の効率を改善できそうです。

 下のグラフ上ではグリーンの点線がそれです。 (左クリックでポップアップします)

 どうせやるなら、ブルーの点線で示すファンの効率のピークとなる速度比にまでずらせばいいじゃないか、 と言われても、そうもできない理由もあるのです。

Turbofan_w_staggered_speed

 ターボ・ファンの性能はファンの性能で決まる。そのファンの限界速度はマッハM0.9 程度であります。 つまりファンの効率曲線の速度比 1M 0.9 と読み替えるのです。
 限界速度とはファン、プロペラ、ジェット・ブラストとそれを搭載した機体の速度が一致した状態を示す速度。 現実の最高速度は限界速度より(ちょっと)低く、機体の抵抗と推進力が釣り合う速度です。

 その限界速度を実際に出せるのか、となると重力による緩降下で、あとは機体強度次第の引き起しとなります。 ファンで出せる(地球に沿った)水平速度はせいぜい M 0.8 から M 0.9 の間となる。

 同様に効率のピークを使う巡航速度は M 0.72 あたりを中心にほぼフラットな部分が使え、パイロットは追い風、向かい風でのエンジンの運転状態で対地速度を選べます。 だめなら高度を変えて風の影響を加減することになります。

あっ! ファンの効率曲線はダクトの効果を見込んでいないプロペラの効率曲線です。 もちろんこのグラフのままでの解釈ですから前回に示した「脳内補正手順」を忖度してくださいね。

 となればコア・エンジンとなるジェットの限界速度比「1」をファンの限界速度比の「0.9」にずらせばよい。

 計算はグラフ上の Pure Turbo Jet で基準とした速度比にずらした後の速度比「0.9」をとって係数として乗じて効率はそのままに横にずらすだけです。

 これは 前々回 のターボ・ファンにある二種類の流れ速度の食い違い比(Staggered Speed Ratio 正式の用語じゃない)はファン側の流速を大きくとるので s = 1.1111(=1/0.9) に相当します。グラフでは同じ用語なのに定義が異なりますがご容赦ください。

 前々回の考察ではこの程度の s 値だとコア・エンジンに対する出力の影響はほとんど無視できる・・・詳しくは前々回へのリンクでジャンプしてご確認を。

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 上掲のグラフでは今回の計算結果を実線で、前回の計算結果は破線で示している。

 新しいジェットの効率曲線とファンの効率曲線の交点がずれて、その新しい交点を境に前回と同じ結果がでている。 なんてたって足し算だからね。

 特徴は低速側で改善されてはいるが「どれだけー!」といった程度であり、高速側ではまあね」といった程度の向上が見られる

 さて、グラフ上でターボ・ファンの速度比 0.9 (= M 0.81) を越えたジェット・ブラストはどうなるのか、気になりませんか。

 機体に反力を与えているので速度は維持できますが加速には寄与できません。 あとはファンの性能次第であります。

 さて、前回の結論、「ファンの流速を速くする食い違い速度比は高バイパス比がのほうが安定して作動する範囲が広くなるとはいえそうだ」だった。

 つまりこの程度の食い違い速度はコンベンショナルなターボ・ファンでも技術的に、あるいは機速の速度比によってはバイパス比 q の変動も含めて必然的に生じて、使われているかもしれない。

 ここで本題に立ち返ると、ここまでのニュートン物理の解析と検討は GTF とはまったく何の因果関係も意図的な関連性もない。

 あるのは高バイパス比化はコア・エンジンの高出力化を伴う・・・であります。

 以下、風が吹けば桶屋が儲かる論法で高出力化のための高圧縮・希薄燃焼(リーンバーン)の新世代ターボ・ファン・エンジンが 「GTF」 と 「Non-GTF」 へ分岐する展開を並べて今回のお題に決着をつける。

・ 「GTF」の場合
 ▼バイパス比を大きくするにはファンの直径を大きくする
 ▼ファンの直径が大きくなればより多くのエネルギーの投入が必要
 ▼まず、ファンにつながる低圧段圧縮機を駆動する低圧段駆動タービンの回転数 N1 を大きくする
 ▼回転数を大きくすればより熱エネルギーを回収してより大きい回転エネルギーに変換できる
 ▼より大きな熱エネルギーが回収されるとジェット・ブラストの温度が下がる
 ▼温度が下がるとジェット・ブラストのエネルギーは減少する
 ▼エネルギーが減少すると推力となる流速が下がる。(音速以下にする)

 上記の流れは、▼で分岐される。

 ▼高回転になった N1の回転エネルギーはより高バイパス比のファンを駆動できる
 ▼高バイパス比のファンは直径が大きくなる
 ▼大きくなったファン直径は先端の速度がより超音速になる
 ▼せめて普通の遷音速レベルにするには減速機(Gear Box)を入れてファンの回転数を下げることになる。

 これが 「GTF」 の流れであります。

 ちなみにファンの回転数は何で決まるかというとエンジン側の軸駆動力とファンに掛かる回転抵抗のバランス(釣合い)で決まります。

 効率グラフの 1 未満での釣合いは、ファンはしっかり軸駆動力を受け止めて(吸収して)いますが (1 - 効率)の部分はファンが推進力に変換できていない状態になります。

 動力を吸収できないファンは入力容量が不足している状態で、抑えが利かないファンの回転は(もちろんコア・エンジンの回転も)暴走してしまいます。

 いずれにせよファンの直径がいくら大きくてもファンの諸容量、諸性能がターボ・ファンの性能を左右しています。

 GTFこの釣合いの整合性に関係するのが間に挿入したギヤボックスに設定された減速比 であります。その GTF のデメリットは重くなる、発熱損失が加わる(効率が落ちる)、故障の可能性が増える、騒音源が増える、などがあります。 ギヤボックスはなければないほうが良いのではありますが・・・

 さて、この流れの分岐点はもう一つあります。 むしろ、こちらの▼ほうが重要です。

 ▼ファンに分割したエネルギーである増加した低圧タービン回転数 N1 は上流の低圧段圧縮機の仕事にもつかえる
 ▼低圧段(N1)で圧縮を強化して高圧段(N2)でもさらに圧縮して燃焼効率の改善をする
 ▼燃焼効率の改善ためには高圧段(N2)の回転数も増加させている

 この条件から代替案を得ると・・・

・ 「Non-GTF」 の場合
 簡単に言えば高圧段タービンの回転数 N2 を速くして低圧段タービンの回転数 N1 を低くするバランスの中で燃焼効率を改善させる、のであります。

 ▼バイパス比を大きくするにはファンの直径を大きくする
 ▼そのエネルギーは高圧段圧縮機の駆動回転数となる高圧段タービンの回転数 N2 を速くして燃焼効率を改善する
 ▼改善された燃焼効率は N2 回転数にも使われ圧縮を強化する(これは GTF も同じ)
 ▼N2 回転数を速くすることで N1 回転数に渡す流速(温度)を下げる
 ▼ファンを駆動する N1 回転数はかなう限り小さくする。
 ▼ N1 回転数をかなう限り小さくしてもファン直径に制限ができバイパス比が制限されるその回転数とファン直径のバランスと限界に挑戦する

・ 新世代ターボ・ファン・エンジンで公表されている最大バイパス比は GTF の「P&W PurePower」で 12.5 :1Non-GTF の 「CMF LEAP」で 11 :1 であります。

・  CMF (GE-スネクマ) は「LEAP」で MRJ が採用する下位のクラスには参入する気配はない。そこでエンブラエルの新旧で比較すると GTF の「P&W PurePower」で 12 :1、と 9 :1、これに対する CMF の従来型では  5.4 :1、と 5.1 :1 であります。

・ ちなみに MRJ が採用する出力の異なる 2 種類の GTF はいずれも 9 :1であります。なお MRJ のエンジンの選び方にはエンブラエルとは異なる特徴があります。「MRJ」のカテゴリーの中に詳述してあります。

 ▼ ニュートン力学で機械効率を解析する限りではバイパス比が大きくなるとほとんど仕事効率は変わらない。
 少なくともバイパス比 8:112:1 とでは 1% の差があるかないかである。
 ▼ バイパス比 4:18:1 で比較するとかろうじて 1% あるかな、といったところであります。

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キネマ航空CEO 『GTF をまとめちゃった』 の巻

 『飛行速度を同じとすれば』高バイパス比化はファンを回す追加の燃料投入分だけ出力エネルギーの絶対値は増えている。

 ジェットライナーの『高バイパス比化は機体の重量を含む機体抵抗の絶対値に対応するため』、と考えたほうが理解しやすい。

 ・ 既存の機体によっては増えた分だけエンジンの構造自体をシュリンクさせて投入燃料を減らしエンジンの軽量化もできる。

 ・ エンジン・メーカーはそこまでの個別な忖度はしないが、航空業界の平均的な機体サイズ(クラス)に合わせた出力のラインアップをそろえたシリーズ化を実施せざるを得ない。

 ・ 機体の設計者から見ればシリーズの中のピンポイントでの企画を強いられることにもなる。
(両方やろうとしたのが ホンダ・エアクラフト・カンパニー。 成功してよかった。 エンジンは GE・ホンダ・エアロ・エンジンズ となったが、下記の夏季特集で・・・)

 ・ 新開発のエンジンの選定には機体メーカー側にエンジンに鑑識眼のあるチーフ・エンジニアの存在が必要になる。
(今のところ MRJ-90 で先陣を切る低圧段圧縮機が 3 段から 2 段構成となる 17l bs 以下の GTF については MAC から の具体的な飛行評価は発表されていない) 

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 新世代エンジンでアピールされる燃費性能の向上のポイントは圧縮機とタービンの燃焼系の更新による燃焼効率の改善とデフューザーやノズルと一体のファン効率の改善とを相乗した結果であります。

 PurePowerGTF) と LEAP の違いはファンを駆動する N1 回転数の考え方の差、高・低段圧縮機の回転数 N2N1 の使い分けの考え方の差です。

 GTF の効果については LEAP エンジンのコンセプトがリージョナル・ジェットの下位のクラスにまで影響力を持てるかどうかで見極めることになる。

 つまり、CMFP&W はリージョナル・ジェットの分野で重なる部分を持ちながら棲み分けを模索しているとも言えそうである。

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 では、なぜより小型のビジネス・ジェットで GTF が成功しているのかは簡単であります。

 小型のターボ・ジェットを効率よく安定して作動させるとジェット・ブラストは音速を大きく超える性能が得られる。

 そのエンジンを使うターボ・ファンはジェット・ブラストとファンのモーメンタム・フローの速度を音速以下で等しくさせる技術的である。

 ところがジェット・ブラストを音速以下に下げるにはかなりの高速で N1 回転数を取り出して軸出力に変えてファンにつなげる必要がある。

 そして必然的にファンの先端周速を下げるために減速ギヤ・ボックスを間に入れる必要がある。

 《初歩的な補足》 2018.08.01 追記
   ファンの駆動力として分岐する軸出力は P = 2π・n・T で表し回転数 n を含んでいる  ▼同じ軸出力 P のままでファンを回す軸力(トルク) T を大きくするには回転数 n を小さくすることで可能になる ▼ところが n を小さくするとターボ・エンジンの圧縮機の性能ひいてはエンジン自体の性能が悪化する ▼そこで n を適正に保つ為に間に入れるのがファンの回転数を小さくする減速機で GTF と呼ばれる。
   逆に見れば
▼ 減速機でファンを駆動する n を小さくすることで同じ P でも T を大きくできる ▼結果として大きなファンを回し高バイパス比化が可能になるのだが・・・そうは上手くいかないことを説明したのが当CEO の結論です ▼初期の GTF はこの理屈以前の問題のほうが大きいようです。

 簡単でしょ!減速(機)比は無きゃ無くていいんです。
 ファンが余剰出力を効率よく推力に変えてくれさえすれば。

 初期の GTF はターボ・ファンの創成期に小型のコア・ジェット・エンジンが作れなかったためです。

 現在の GTF 747A380 クラスを双発で飛ばすため ? (これはたぶん無理です)
  (推進力はファンの回転面積に比例するので現行のファン直径の1.41倍の直径が必要。)

 現在の GTF が掲げる旗印は中小型ジェット・ライナーの消費燃料削減と環境対応です。ところが・・・!

 バイパス比の増加は燃料消費の絶対量の増加を伴います。

 GTF は、コア・エンジンの小型化か、機体の大型化か、という二項問題の狭間でエンジン主導の機体を設計することになります。

 また、機体主導で GTF ではない新世代エンジンも選べるか?の問題でもあります。

  従来型を含めた三者択一で選ばざるを得ないのではありますが、この選択が機体の命運を分かつことにもなります。

 でも、先行試作機であっても、コンベンショナル・タイプと言いかえても、従来型は選べないよなぁ、圧力もあるのだろうなぁ。・・・と、当CEO の思う「ゼロの呪い」であります。

 日本だと民間主導とは言え経営陣はともかく、管轄省や外郭団体も口をだすだろうし、先決め丸投げ、だったりして・・・『チーフ・エンジニアはつらいよ』、でありましょうね。

 日本では「チーフ・エンジニア」という見識を問われる職責の権威はないようだ。 ましてや継続して研鑽を積める企業ではない業界ではね。

 一般紙で「チーフ・エンジニア 何某」 と報道されることはまずない。 社内においては重量配分、予算配分の調整役でしかないのかもしれない。

 本田技術研究所が航空機の開発具体化の初期にホンダ・エアクラフト・カンパニーをアメリカで立ち上げたのは経営者の慧眼、見識として、「チーフ・エンジニア」としてプロジェクトをけん引した藤野 道格氏と同格の敬意を払うべきと考えます。

 以上を結論として GTF の巻 の完結です。

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Honda HF120 とそのライバルたち 

  ちなみに Honda HF120 ターボ・ファン・ジェットは GTF ではなく、ファン・ブレードの前縁は新世代エンジンの定番である逆 S 字のワイドコード翼であります。

 バイパス比は 2.9 、ファン直径は公開されていないがエンジン本体の最大直径は 52.8cm となっている。 このバイパス比からは高速性能に優れていると想定できる。

 53cm弱の直径の中にターボ・プロップ・エンジンで採用されることが多い遠心式高圧段圧縮機と反転式の燃焼室を収めているコア・エンジンは極めて小さく、汎用性を目指すことなく自社開発の機体に特化したエンジンのようです。

 GTF 側のベンチマークとしてビジネス・ジェット向けで最も成功しているハネウェル TFE731 ではバイパス比は 2.28から2.8、エンジンの直径は 100cm となっています。
(大きい割にはバイパス比は低い二世代ほど古いコア・エンジン)

 このエンジンは1978年にリリースが開始され、HF120 と同様に高圧段に遠心式圧縮機を採用し反転式燃焼室など全長を詰める小型のジェット・エンジンのデファクトのレイアウトを採用しています。

  しかし、HF120 の事実上の筆頭ライバルは、やはり GTF ではないウィリアムズ FJ44 になる。 外形寸法は若干大きいがシリーズ化は進み 9 型式を数え(ファン直径で52.6cmから64cm、バイパス比 3,28: 1以上)、自家用軽量ジェットや無人機の動力源としてシェアを拡げている。
(バイパス比は 3: 1以上で現在の自家用機市場でのオルタナティブ(更新用)には使い勝手が良いエンジン。ホンダ・ジェットより大きいサイズの機体に合わせている)

 この下位シリーズには FJ33 (ファン直径 43.9cm、バイパス比 3.5: 1)もラインアップされているが採用は今のところ自家用軽量ジェットでは シーラス Vision SF50 の 1機種のみ。

 次に、このクラスで実績がある プラット・アンド・ホイットニー・カナダ PW600 (ファン直径 36.83cm から 44.7cm、バイパス比 1.83 から 2.8)が セスナ サイテーション・マスタング など小型機メーカーに喰い込んでいる。
(ほぼ HF120FJ33 と同等のサイズのエンジン。 三つ巴のライバルとなるか ?)

 Honda HF120 は正確には GE Honda HF120 で製造は GE Honda Aero Engines です。

 GE HF120 に手を伸ばしたのは P&W カナダウィリアムズ・インターナショナルには RR と大手のエンジン・メーカーの息がかかっていることによると考えられる。

 乗っ取るか、乗っ取られるか、それとも Win-Win の関係を築けるか、ホンダは唯一日本で真の航空ビジネスに参入を果たした企業といえるようです。

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ロールス・ロイスの高バイパス比化について

 基本はライバル各社と同じ高温高圧下のリーンバーン技術です。でもターゲットのバイパス比は 15:1 だそうです。

 共通するコンセプトはウルトラ・ファンと呼ぶブレードのチップ側から前進角、後退角・後退角といったいわゆる逆 S 字の前縁をもつ他社と共通する形状のファンを使用して・・・(形状は同じでも材料、工法、などに各社の特徴はあります)

1. 2軸のエンジンでは N1 で回る低圧段の新設計と燃焼系の高温高圧化の新技術を採用(大型のプライベート・ジェット向け)

2. 3軸のエンジン(圧縮段の回転数は前より低・中・高の N1N2N3)では低圧段 N1 を受け持つ軽量化材料の開発と燃焼系の高温高圧化の新技術(N1 回転数の高速化)

3. (2.)の3軸のエンジン(タービン回転数は後ろより低・中・高の N1N2N3)のうち中圧段回転数 N2 とファンの間にギヤ・ボックスを入れた GTF の採用と燃焼系の高温高圧化の新技術に加えて構造的にはよくわからないがファンが低圧段圧縮機回転数 N1 を受け持っているのかもしれない。 RR のサイトにカットアウェイ図のポスターがありダウンロードできます。

遊星ギヤボックスの構造は N1 を太陽歯車 N2 を遊星歯車キャリヤに入力し、リングギヤの合成出力回転数をファン駆動回転数 NF とする動力合成を行っていると思われる。

なお動力循環を避けるため N1N2 の回転方向は同じで NF も同じ方向となる。回転数は N2N1> NF

減速比は P&W より大きくとれるはずで、したがい歯車の負担も大きくなる。

ポスターの歯車は歯丈の低い歯型と特殊な形状の歯筋を採用しているようだ。

 2018.08.26 訂正加筆 

 RR は手堅く両方のコンセプトで段階的に開発を進めるようだ。

 これで、低(中かもしれない圧段圧縮機に可動式静止ベーンを追加すればジェット・ブラストの速度制御も可能になるのかも知れない。

 ここまでくれば既存のジェットエンジン技術のてんこ盛りになるのだが、 MMPMan Money Power:人金力 【ひとかねりょく】 企業評価に使えないかな・・・造語です)は大丈夫かな。

 なお、これらの評価にはエンジンの出口対入り口の圧力比である全圧比Overall Pressure Ratio)が使われるようだ。

 当CEO はとばしてきちゃったな。機会があればね・・・

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 RR に限らず新世代エンジンの課題は構造設計に加えて材料・素材の開発と見極めに掛かっている。

 逆に見れば他の業界(材料、素材、製法 等)の開発力と製造品質管理レベルに掛かっているリスクの多いコンセプトともとれる。

 「エンジン総合メーカーはつらいよ!」だけど、 いまは、蝶よ花よとおだてられているけれど、量産に移ると責任転嫁もされかねない「材料・部品メーカーもつらいよ!」です。

 少なくとも工学にかかわる官民の将来を預かるはずの若い学生諸子は「日本はすごい」のフェイクに近い文脈の報道に迷わされず「すごいのは自分だ」を世界の中で実証してくださるように祈っています。

2018年7月15日 (日)

キネマ航空CEO 『GTF のまとめにかかる』の巻(その 1)

 (承前)

 ターボ・ファンは、『工学的には、本質的に発生の原理が異なる「運動量理論」による流速と「翼素理論」の範疇にある空力機械としてのファンの流速を限りなく音速に近づけることで得られる亜音速の上限をカバーする空力推進技術の相互補完メカニズム』とまとめられる。

 GTF を考えてみると、結局のところ一段の減速比しか無い減速機の追加ではあるがエンジンの回転数を最適化することで燃焼状態を改善する自動車のマニュアル・トランスミッションと同じ機能が使われている。

 推進技術に限らないがエネルギーにかかわるメカニズムの評価には効率の良否(よしあし)が関係する。民生用ならなおさらである。

 当ブログでもターボ・ジェットの運動量理論とファン(プロペラ)の翼素理論の推進効率の解析から 比較の可視化 を行っている。

 その記事から左クリックでポップ・アップできる比較グラフを再掲する。

Efficiency_of_propulsion ターボ・ジェットではどんなエンジンでも同じ数式で同じ曲線になる。

 いっぽう、プロペラでは寸法からは直径、翼型からは揚抗比、エンジンからでは回転数、さらにエンジンの出力と機体で決まる機速等々で大きく変わる。

 グラフの曲線は中(あた)らずとも遠からずといったレベルではあるが一応はどちらも理論から誘導している。しかし、アンダクテッド・プロペラである。

 当CEO は残念ながらターボ・ファン・エンジンのダクトを理論的に解説をした参考書には出会えていない。

 出会っていても断熱圧縮を伴うため、まともな解説はできそうにないので、下の参考書からダクテッド・プロペラの概説を強引に引用して納得してもらうしかない。
(ただし参考書のダクトファンとターボ・ファンのダクトとは設計意図が異なっており、デフューザー効果を伴わないダクテッド・プロペラの範疇に入る) 

飛行機設計論」山名正夫、中口 博  養賢堂 (1968)  pp388 、(5) ダクトファンより引用

・・・筒がない場合に比べて
   (a) 同じ直径のとき静止推力および吸収馬力が大きい
   (b) プロペラ先端と円筒内面との隙間を小さくすると、先端渦による誘導馬力損失が
       少ない
   (c) v/nD の大きな変化に対しプロペラ効率の変化が少ないなどの利点がある。

(以下)理論計算式の展開のあと
・・・ 飛行速度とともに筒の効果が減少する。
・・・ 実際には筒の摩擦抵抗が加わるから v0 (飛行速度)が大きいときには筒の存在がかえって有害となってくる。
・・・ (筒の)前縁推力を出すためには・・・ v0 によって(筒の)最適の形、とくに前縁部の形が違(う)
・・・ もともと、低速時の推力を増すために曳船用の推進装置として考案された
・・・ 筒の形については(参考文献を列記)・・・と続く。
   ( )内は当CEO の加筆。 以上、参考書では V/STOL の章にあります。民生用ドローンの設計者必読かな ?

 以上の所見からは、当CEOが可視化したプロペラのグラフは、速度比 0 から 1 にかけて漸減して 1 になるような係数を乗じる補正が必要と考えられる。

 また、速度比 0 の場合の補正係数はいくつかの実験式や理論計算式で 1 以上であることは間違いない。

 ターボ・ファンのダクトでも同様の補正が必要と考えられるが参考書の数値はそのまま使えそうにない。

 したがいプロペラの効率のカーブは次のような想像力で、しかも読者にもカバーしていただくしかない。

  (イ) 二つの効率の曲線の交点より左側(速度比 0 の側)では速度比 0 の効率は 0 のままで膨らみ逆立ちした放物線が傾いた形になる。
  (ロ) 効率のピーク値はより 1 に近づくかもしれない
(でもダクトの形状抵抗で実装状態では相殺されるかも)。さらにピークは速度比の小さい側に僅かだろうが移動するかもしれない。

 以下、上記の予測される補正はしないで先に挙げたターボ・ファンの効率のグラフを元に下式を使って加工した結果に上記の所見を加味して考察する。いや、してもらう!

 なお、基にするグラフの設定条件は機体の抵抗も含めてファンのモーメンタム・フローとコア・ジェットのジェット・ブラストの速度とが等しいこと、かつ基準としたエネルギーも等しいという前提です。

 ターボ・ファンのバイパス比 q : 1 、推進効率 ηTF 、プロペラの推進効率 ηP 、コア・エンジンの推進効率 ηJ とする。

       ηTF = {q/(q + 1)}* ηP + { 1/(q + 1)}*ηJ = (ηP * q+ ηJ )/(q + 1)

 つまり、一つのエンジンを同じ最高速で飛べるファンとジェットの二つの独立したエンジンにして一つの機体に搭載し、それぞれのエンジンが分担する効率をバイパス比で分割してさらに合計した値です。

 ターボ・プロップとターボ・ジェットの組み合わせでは 川崎 P2-J がありました。
 モーメンタム・フローとのジェット・ブラストの速度とが等しいかどうかは分かりません。
 たしか緊急時加速用補助エンジンのはずでジェット・ブラストのほうが速いと思われる。
 効率は悪いだろうけど民生用ではないからなー。しかもパートタイマーだし。
 そんなにメジャーなブログでもないけど間違っていれば炎上するだろうなー。
Turbofan_w_samespeed

 当たり前のことながら、両効率曲線の交点より右側(高速)では ηJ > ηTF > ηPq が小さいほどターボ・ファンの効率は良い。

 逆に、交点より左側(低速)では ηP > ηTF > ηJ でバイパス比 q が大きいほどターボ・ファンの効率は良い。

 ただ、どちらの場合でも q が大きくなるほど ηTF の差がほとんどなくなる。

 ただし、プロペラのダクトとターボ・ファンのダクトは機能構造が異なりバイパス比  q の関数で効率がよくなる可能性はあるかも知れない。

 あったとしてもエネルギーの分配という面では差は小さいのではないかと思える。

 バイパス比  q といえば速度比によって変化するのではないかとの疑問は当CEO の中でも解消されていない。

 呼称値である q の定義自体は明確だが実態は定かではない。

 当CEO の当面の進行は、個別の型式間の呼称値としての q の影響は型式間の比較の上では類似または近似するとの前提であります。

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 さて、次回は モーメンタム・フロー > ジェット・ブラスト となる速度差の影響は、について考えるのココロだー!

2018年7月11日 (水)

キネマ航空CEO 「高バイパス比化に意味があるの ?」 について考えるの巻(再掲)

・ 式の表現方法を修正後の再掲です。(2018/07/11)
・ 修正についての説明は本件のお詫びの記事に追記いたします。
・ 細部の修正を含めて校正、校閲を継続中です。

キネマ航空CEO 『GTF はターボ・ファン・ジェットかダクテッド・ターボ・プロップか、を考える』 の巻 (その 2)  (2018.04.29)の回をご一読の上お進みください。

 なお、使用した図は こちら から。まず、今回必要な数式部分の復習から始めます。 今回も運動量理論での解析です。

 ターボファンはコアエンジンの持っているターボ・ジェットとしてのエネルギーから
k (0≦k1) の分割比でファンに分割する。

 ただし分割に伴う効率ψ0<ψ<1)が発生し実際に分割されるエネルギーは (k/ψ)となり、コアエンジンに残るエネルギーは分割された割合を除いた{1-(k/ψ)}となる。

 コア・エンジンに残ったエネルギー KC のジェット・ブラストの速度は VC 、質量は m
 ファンが受け取るエネルギー KF  が作るモーメンタム・フローの速度は VF、質量は q・mq はバイパス比)。
 コア・エンジンが単体のターボ・ジェットとして持つエネルギー KJ が発生させるジェット・ブラストは VJ 、質量は m のままでコア・ジェットと同じです。以上を数式に移すと・・・

 J = (1/2)・mVJ2   

 C = {1- (k/ψ)}・KJ = (1/2)・{1-(k/ψ)}・mVJ2 = (1/2)・mVC2  より

 VC/VJ = √{1-(k/ψ)} ・・・  (1)

 KF = (k/ψ)・KJ = (1/2)・(k/ψ)・mVJ2 = (1/2)・q・mVF2  より

 VF/VJ = √{(k/ψ)/q}} ・・・ (2)

 ターボファン・ジェット・エンジンに求めるものはピュア・ターボ・ジェットの出す一定のエネルギー KJ で得ることのできる仕事 WTF の増加であります。

 ターボファンとしての等価速度を VTF と置き、その速度を持つ質量は (q+1)・m となる。

 WTF = (q+1)・m・V1(VTF-V1) = m・V1 ・ (VC - V1 ) + q・m・V1 ・(VF - V1 )
                  = m・V1 ・[ [ √{1-(k/ψ)}+ q・√{(k/ψ)/q} ]・VJ -(q+1)V1 ] ]
より、

 VTF = [ [ √{1- (k/ψ)}+ q・√{(k/ψ)/q}]/(q+1) ]VJ ・・・  (3)

 分子は 0≦k/ψ)≦10 < q のため VJ≧VTF となる。VTFk/ψ)q の関数であるが k/ψ)q の関数でもある。

  [ √{1- (k/ψ)}+ q・√{(k/ψ)/q}]/(q+1)  = A と置き dA/dk = 0 と微分して A の極値(最大値)を求めると VC = VF つまりコア・エンジンのジェット・ブラストとファンのモーメンタム・フローの速度が等しい場合となりファンが受け取るエネルギーの割合は
(k/ψ) = q/(q+1) なのだが計算過程は省略します。

 したがい、ターボファン・ジェットのエネルギー速度 VTF とコア・エンジン単体のジェットブラスト VJ の比は、

 VTF/VJ = 1/√(q+1) ・・・ (a) 

--------------以上が復習--------------

 なお、(a)式は次のように逆比として書き直します。

 VJ/VTF = √(1+q ・・・ (4)

 理由はファンのモーメンタム・フローとコア・エンジンとしてのジェット・ブラストが合成されたターボ・ファンの推進噴流の等価速度 VTF は機体の出せる限界速度に相当します。

 このエンジンが採用された機種もしくはクラスの中ではほぼ一定値ですので既知の基準値として扱えるからです。

 さて、ここからは VCVF の場合の検討です。(2)式を(1)式で割るとファンのモーメンタム・フロー VF とコア・エンジンのジェット・ブラスト VC との速度比 s が求められる。

 s = VF / VC = √[{(k/ψ)/q} /{1- (k/ψ)} ]  より

 (k/ψ) = 1/{1/(qs2 )+ 1}

 を(3)式へ代入し整理すると

 VJ/VTF = (1+q)・√(1+q・s2)/(1+q・s) ・・・ (4'

 ここで、「見える化」をしてみる。

 (4')式は s=1 の場合に VC = VF すなわち速度と引き換えに最大の仕事を引き出せる、ひいてはコア・エンジン単体に要求される推力が最小となる(4)式と同じになります。

 この関係を s=1 でバイパス比 qVJ/VTF の関数としてグラフにしてみました。Vjvsvtf 値を表にすると

BPR 0 : 1 1 : 1 2 : 1 3 : 1 4 : 1 5 : 1 6 : 1 7 : 1 8 : 1 9: 1 10 : 1 11 : 1 12 : 1
VJ/VTF 1.00 1.41 1.73 2.00 2.24 2.45 2.65 2.83 3.00 3.16 3.32 3.46 3.61

     (BPR 0 : 1 はピュア・ターボ・ジェットを指しています。)

 BPR 0:1を除く表の値に一般的なジェットライナーの最高速 VTF = M 0.8 を掛けるとその エンジンの BPR でコア・エンジンに必要な単体エンジンに要求されるジェット・ブラストの速度が出ます。

 例えば BPR が 8:1の場合は M 2.4 となります。もちろん伝達効率 100% の運動量理論上で、の結果ですからファン側に翼素理論を適用すればもっと上回るはずです。
(「すりゃーいいじゃないか」、と言われても 当CEOには無理 なのよね)

 参考までに、 M 1.00 で飛べるターボ・エンジンをコア・ジェットにする BPR 12 : 1 のターボ・ファンの場合の VTF はこの表の逆比となり、 M 0.277 で飛ぶことになっちゃいます。

 本筋の(4')式に戻ってバイパス比 q をパラメータとして、ターボ・ファンのファンとコア・ジェットの流速比 s が変化する場合の VJ/VTF を計算してみます。

Incriment_of_vj_vs_vtf_table_rev1 ここでは計算結果の整理に、次式を用いて各 BPR ごとに VJ/VTFs = x の値から VJ/VTFs = 1(上記の表)を引いた差分を⊿VJ/VTF として表示します。

   ⊿VJ/VTFs = x = VJ/VTFs = x - VJ/VTFs = 1

 目的はこれにより BPR の系列ごとに s の影響を分かりやすく相対化するためです。

 左のアイコン・レベルまで縮小した差分表は左ボタン(ワン)クリックでポップアップします。

 小数点以下の第 3 位を四捨五入してあります。 差が0.005未満で差分が 0 となる範囲は広い。 これではよく分からないのでグラフ化してみましょう。

Incriment_of_vj_vs_vtf_graph

 (すみません)グラフ内に書きそこなったけれど横軸が s = VF / VC )です。縦軸は s の増減で変化するコアとなるターボ・ジェットが単体で増減する⊿VJ/VTF の値です。

 s < 1VF < VCs = 1VF = VCs > 1VF > VC

 s = 1VJ/VTF が最低値となることはこのグラフからでも間違いない。
つまり採用したコア・エンジンがターボ・ファンとして働く最大の仕事の元となる速度 VTF が得られる比 [VTF/VJ ]のポイントです。(くどいようですがモーメンタム(運動量)理論で、です)

 s > 1 の側、つまりファンによる流速のほうがジェット・ブラストの流速より速い側ではバイパス比 q が大きくなるほど VJ/VTF の変化の傾斜が小さくなることが分かる。
BPR の増加によるベースとなる出力の増加に比べて s の変化による出力の増加が小さくなる範囲です)

 ついでに、s < 1 の側、つまりファンによる流速のほうがジェット・ブラストの流速より遅い側では q0:1で示したピュア・ターボの状態を除きバイパス比 q とは関係なく VJ/VTF は撚った縄の状態で急激に傾斜がきつくなっている。 

 比を変数として扱ったグラフの視覚的な理解には注意が必要です▼「1 」を挟んでグラフの左側では「0」に近づき、右では「∞」に及ぶ▼比は逆立ちできる▼逆立ちしたら左の「0.5」は右では「2」▼左の「0」は右の「∞」に相当している▼s' = 1/s として s' を横軸にすると別の様相が見えるはず▼やってみてね。(閑話休題)

 さて、ターボ・ファンやターボ・プロップにおいてはアイドリング時から 100%以上の過負荷運転時において常に一定のバイパス比 q を維持しているとも思えないのだが、これは後に回して、・・・

 相当バイパス比(Equiv. BPR)が  50-100:1 と言われるターボプロップでは VJ/VTF の増分の傾斜はもっと緩やかになり VF > VC となる速度差をつけることは効果が大きいのではないだろうか。

 では、現在の GTF で計画されているターボ・ファン最大の BPR 12.5:1で実施されば効果はどうか、と問われると、いささか心もとないのだが差分表からは s = 1.25 辺りまではコア・エンジンに対してほとんど影響なくファンの流速を早められそうなのだが・・・

 漠然とではありますが、亜音速の上限を棲み処(か)とするターボ・ファンの原理から言えばジェット・ブラストの流速を遅くすることでファンによる質量の多い冷気の流速を多少は速くすることができそうであります。

 バイパス比 qs に連動して変化することはないと仮定すれば仕事 WTF の向上も多少の期待が持てるのでは、とも思えてきます。

 つまり、ジェット・ブラストのエネルギーをファンにさらに分割し、ファンには空回りせずに仕事をしてくれる容量があるならばです。

 計算式を構成する複数の要因の関係は、現在の技術ではファンの推力係数および入力係数と燃料投入量で変わる出力(飛行速度)を介した成り行きで決まってしまうので特定の速度域ではすでに使われている既知の技術かもしれません。

 ターボ・プロップではプロペラに可変ピッチ機構が採用されてプロペラ側からでも係数を変える制御ができる。ターボ・エンジンでは低圧段圧縮機の静止翼の迎え角を可変にして出力を制御する技術もあるけど・・・こちらは微妙な制御に使えるのかな。

 まあ、このグラフも見方を変えれば二つの流速を常に等しくするようなピン・ポイントの制御をするほどのものではない、と消極的な見方もできそうですね。

 とは言え、条件付きではありますが高バイパス比になるほど僅かな燃料の持ち出しで仕事 WTF の向上の可能性があるのでは、と推測も可能です。

 もっともその前に、前回考察した N1N2 回転数の増加による燃焼効率の改善のほうが必須の条件と考えられます。

 それらをひっくるめてバイパス比は大きいほうが運用上の余裕度はありそうです。 まずはターボ・ファンの吐出する二つの流れの速度比 s はどれくらい大きくあるいは小さくできるのだろう。

 次回からは別の方向から考えることにしてみる・・・か。

キネマ航空CEO キネマ航空CEO 「高バイパス比化に意味があるの ?」 について考えるの巻

キネマ航空CEO オフィスからのご連絡

先の、修正記事の再掲に先立ち、主に数式表記の修正内容をお知らせいたします。これに伴う結果等の変更はございません。

当ブログのフォーマットで数式を表記する場合に加減乗除の記号にそれぞれ + 、- 、(・)、 / が使えます。なお、+、- はともかく ×、÷ を使うのはいささか躊躇します。

ただしこれまでは乗算の(・)は省略しておりました。
また変数や定数の定義や計算順序を示すためには限られた数しかない括弧 [ { ( ) } ] を多用せざるを得ません。

また、式によっては [ [ [ { ( ) } ] ] ] と同じ括弧を外側に重ねることになります。例えば、平方根の範囲のについては √[{(A/B)+ C}・(D - E)]などでは横線を伸ばし両端にある括弧を省略する教科書的な表記はできません。

その他の表示に必要なべき乗や添え字はHTMLで対応できます。
例えば・・・例えばエネルギーの表記では・・・

もっとも短くする表記は KJ = mVJ2/2 ですが、これまで KJ = (1/2) mVJ2 としていました。これを、今回より KJ = (1/2)・ m・VJ2 といたしました。

これより速度を求めると VJ = √[KJ /{(1/2)・m}]となります。 VJ = √(2・KJ /m)でもいいのですがこの辺りは当CEO のこだわりめいたもので余計に混乱させているのかもしれません。

この速度をつかって仕事の式に当てはめると・・・
WJ = m・ V1・( VJ - V1) = m・V1 ・[√[KJ /{(1/2)・m}] - V1] とより分かりにくくしている罠にはまっていしまいました。

加減乗除の記号の入力には全角、半角があり、乗除の記号は同じキーの使い分けで・・・と転記の間違いの言い訳は空しく、すべては当CEO の責任内で生じておりました。

以上を見直し、修正をしましたが表記基準はこれからも継続いたします。
ご迷惑をお掛けし申し訳ございませんでした。今後はより留意を心がけてまいります。

                                        キネマ航空CEO 拝

キネマ航空CEO オフィスからのお詫び

当キネマ航空CEOオフィスへのご訪問をいただきまして、誠にありがとうございます。

2018年7月4日に公開いたしました以下の記事中の誘導式に誤りがありましたので現在非公開としております。

キネマ航空CEO 「高バイパス比化に意味があるの ?」 について考えるの巻

いらっしゃらないとは思いますが、コピーアウト、もしくは ダウンロード されたお客様がおいででしたら、お客様にご迷惑をおかけすることになるかも知れません。
お手元に資料として保存の場合は必ず廃棄のほどお願いいたします。

校閲不行き届きの及ぼす事態に衷心よりよりお詫び申し上げます。

記事自体は近日中に改訂いたしますので今しばらくお待ちくださるようお願いいたします。

また、しばらくの間は検索エンジンからの キャッシュ 等では誤りの部分をご確認いただけると思いますが何卒ご寛容のほど、また当CEO の未熟な点をご指導を戴けますようお願いをいたします。

併せて、当オフィスの本業であります KINEMA AIRLINES へのご愛顧のほど、よろしくお願いいたします。

                                         キネマ航空 CEO 敬白

2018年6月22日 (金)

キネマ航空CEO 『GTF はターボ・プロップではないがダクテッド・プロップファンに近づいているのかもしれない』 の巻

RRの動向の所見を変更しました。(2018/07/18) キネマ航空CEO

まず、前置きから、

 2018年2月までに公表された欧州航空安全庁(EASA)から認証を受けているP&W(プラット・アンド・ホイットニー)の GTF (ギヤード・ターボファン)商品名は PurePower ® (だが以下 GTF で統一) の型式は次表となります。

 残念ながら三菱MRJ が採用する17Klbf と 15Klbfクラスは今のところ見当たりません。

  Class(klbf)   BOMBARDIER    EMBRAER  AIRBUS IRKT
19   PW1519G   PW1919G
21   PW1521G   PW1921G
  PW1521G-3
22   PW1922G   PW1122G-JM
23   PW1923G
24   PW1524G   PW1124G-JM
  PW1524G-3   PW1124G1-JM
25   PW1525G
  PW1525G-3
27   PW1127G-JM
  PW1127GA-JM 
  PW1127G1-JM
30   PW1130G-JM
31   PW1431G-JM   
33   PW1133G-JM
  PW1133GA-JM

   型式記号 PW●〇□□G-XY
    PW  新世代ターボファン・エンジンの民間用呼称(旧世代ではJT を使用していた)
    
G GTFを示す。エアバスの G1GA の詳細は不明
    ● エンジンのコンセプトを示す新しいブランドである「ピュアパワー」を「1」で示しているようだ。 
 
   〇 仕向先コード・・・表にない MITSUBISHI  は「2」 。詳細は こちらこちら
    □□ Klbf 単位の離昇推力値。ファン径やバイパス比にも関連・・・詳細は
こちらこちら
 
   -XY) 細分化された仕様のコード。エアバスはイルクートを仲間にいれて独自化しているようだ

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さて、ここから本題です。

 GTF はこれまで考察してきた(運動量理論で、ではありますが)ファンのモーメンタムフローとコアジェットのブラストの速度が等しい場合に推進効率が最大になるというターボファンの原則から離れているのではないか・・・の思考の始まりです。

 下表では、三菱MRJ がライバルとする新型機とその前身となった在来機に搭載された新旧エンジンの比較ができるエアバスエンブラエルからベンチマークを選び比較を行いました。
ボンバルディエ C シリーズもありますが GTF エンジンはエアバスエンブラエルと同じクラスなので手抜きします。

 注目する個所は生データとしてバイパス比、ファン直径、N1 回転数、N2 回転数、減速ギヤ比、計算結果としてファンのチップの周速の相対比較です。

 なお、三菱 MRJ-90 MRJ-75エンブラエルE175-E2 が採用する予定の 17Klbf と 15Klbsクラスのエンジンは詳細なデータが公表されていません。 このため表中で赤字で示した回転数等は一つ上の19Klbf クラスの値を使用しました。

 また減速ギヤ比をそのまま使用するとチップ周速がマッハ(以下 M ) 0.87 となるので当CEO が以前に 写真から解析 した 2.8230 を使い M 0.95 としました。

 ギヤ比を変えた理由は基本的にファンの推進力(揚力)は回転数(速度)の二乗に比例しているからです。

 これでも低すぎるようですのでファンを駆動する減速ギヤ・ボックスへの入力となる低圧段圧縮段の回転数 N1 はもっと高いのかもしれません。 では高圧圧縮段の N2 はどうでしょう。

 また、従来型に採用されていたエンジンの N1N2 との比較も興味をそそられます。

 で、結論はどうした ! ですって?

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 まずは下表を左クリックで別窓で開いて値の吟味から・・・。

 「結論だけを読んで理解できたと思えるのは思考力の劣化の始まりだ」・・・ある刀自(とじ)の言葉の端に・・・

 「ワンフレーズに共感したり、反発したり、で自分の意見をでっちあげるネット社会の落とし穴」ということらしい・・・

 では、始めます。

New_generation_vs_conventional_turb まず、最下段の高度12,000mに於けるブレードのチップ・スピードは認証されている GTF では M 1.2~1.14 を示しています。

 これに対し既存のターボファンでは M 1.60~1.51 であります。GTF は明らかにチップ・スピードの低下を狙っている。

 さらに、CMF インターナショナル の新世代エンジン LEAP ®  (Leading Edge Aviation Propulsion 先端航空機推進技術)でも GTF には及びませんが M 1.60 から M 1.37 に低下させています。

 その一方では仮定値を使い赤字で示した MRJ では M 0.95 ですが音速以下にする理由があるのでしょうか・・・疑問が生じます。

 プロペラの先端速度が音速を越えている例 キネマ航空CEO GTF はターボ・ファン・ジェットかダクテッド・ターボ・プロップか、を考えるの巻(その 2 )「プロペラで出せる最大速度の推定とその検証」 から始まる三回の連載をご参照ください。

 チップ・スピードはファンの直径と回転数で決まる。その回転数は低圧段圧縮機の回転数 N1 で決まる。

 エアバス A320neo で見る GTFN1 は 10,047rpm でありギヤの減速比を換算したファンの回転数は 3,281rpm となります。

 従来型の A320ceo のエンジン CMF56 のファンに直結する低圧段圧縮段の回転数 N1 である  5,200rpm との比較では、 A320neo のファン回転数は減速機により 63% に低下しますが、低圧段圧縮機の回転数は193% にまで増加しています。

 次に A320neo の (GTF ではない) LEAP エンジンの N1 は 3,856rpm で、これがファンの回転数になります。その結果、ファン回転数と低圧圧縮段回転数は 74% に低下しています。

 A320ceoCMF56) を 1 とした比率に直すと 1.93 、0.74、 1 となります。

 では、高圧圧縮段の回転数 N2 を比べてみましょう。A320neoGTF)、A320neo(LEAP)、A320ceoCMF56) の順に、 22,300rpm、19,391rpm、15,183rpm となっています。

 A320ceoCMF56) を 1 とした比率に直すと 1.47 、1.23、 1 となります。この解釈は後に回して推力も比較してみましょう。

 まずその前に、推力をの単位をそろえるため CMF56 で使われている [daN](デカニュートン) を [Klbf](キロポンド)に換算します。換算係数は 2.2481/1000で求まります。

 したがい、GTF の型式記号に使われる公称推力である離陸時推力(Take-Off Thrust )に相当する値 10,453daN は 23.499Klbf となります。
(すみません。表では力の単位 [Klbf] のはずが [Klb] となっています。読み替えてくださいね)

 A320neoA320ceo に対して 3.5Klbf (1,588kgf)の推力マージンを得たようです。 A320ceoCMF56) を 1 とした比率に直すと 1.15 、1.15、 1 となります。

 エンブラエル E190-E2GTF) と E190CF34-10) との比較では推力を除き同様の結果がでます。計算してみてください。

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・ N1N2 回転数から想像される結論

 GTF では N1N2 共に、LEAP では N1 は低下しているが N2 は、増加している。 とりもなおさず圧縮機の駆動に噴流エネルギーを割いて圧縮性能を向上させている。言いかえればジェット・ブラストの速度エネルギーを落としている。

 見方を変えればファンのモーメンタム・フローとジェット・ブラストを等しくすることで得られる推進効率の最大化から離れて、エンジンのサイズをシュリンクさせて同等の出力を得る意図がある可能性がある。もっと言えば高圧縮比による燃焼効率を含めて改善している。

 ほぼ同等の推力を持つ両エンジンの高低両圧縮機の段数の合計は GTF の 11 段に対し LEAP では13 段を必要とする。その差は高圧段側の 2 段であります。

 それらの圧縮段を駆動するタービンの段数の合計では各々 5 段と 9 段だが、低圧段に対しては 3 段と 7 段である。 その差の 4 段分が LEAP では GTF のギヤボックスの減速比に相当することになる。

 ちなみにファンを駆動する力はトルク(軸力)だが回転を伴っている。 したがい(駆)動力として時間を含んだ次式が成立する。
   P = 2πNT/60
     P:動力([W = kg・m/s3])、N:回転数([rpm = 1/s])、T:トルク([N・m = kg・m/s2])

 この式で示されるように、動力を一定とすると「回転数」と「軸力」の積は一定となる。

 GTF ではタービンの出力は高回転数で取り出し減速機で回転数を落としトルクを大きくする。 LEAP では低回転で取り出した高トルクをそのままファンに伝える。

 ファンの回転数は ファン・ブレードの容量N1 タービンの出力(動力)の関係で決まります。 いまのところプロペラのようにファン・ブレードのピッチ角は変えられないのでスロットル(正確にはパワー)レバーで N1 回転数を変えることになります。

 ただし、GTF では減速ギヤによる効率の低下(動力の損失)を伴います。

 同等の出力を持つ GTFLEAP の比較ではバイパス比とチップスピードでは GTF のほうが優れているようだ。

 とはいえ、両エンジンとも公称値では従来型より優れていることは間違いなさそうだ。

 ただし、GTF では減速ギヤ・ボックスの信頼性やその減速ギヤで得られるコア・エンジン自体の、より高速となる N1N2 回転数による振動や潤滑の問題などは未知数と言えそうだ。

・ チップスピードから想像される結論

 GTF ではファンのチップ・スピードで限界のある N1 回転数を大きくしながらファンの回転数を落としてバイパス・レシオに直結するファン直径を大きくすることが可能になります。

 補足すると N1N2 の回転数が大きくなることは噴流のエネルギーが回転動力として回収されることで噴流の質量流量は同じでも温度が下がり体積は減り、ひいてはジェット・ブラストとして推力になる速度は低下します。

 なお、ファンに向かう空気はカウリング内のデフューザー効果で低下することは (受売りで)既述 です。 いずれにせよ空気の進入速度とファン回転数の合成速度は音速を超えており、後日追記するつもりです。

 MRJ に使用される 17Klbf および 15Klbf クラスに仮採用した 19Klbf クラスの N1 回転数と写真より計算した減速比の組み合わせのチップ・スピードは M 0.95 であり通常のファンの設計速度より低すぎるように思える。

 GTF のラインアップでは出力の低い、言いかえれば、ファン径の小さいタイプでは N1N2 回転数を大きくするようだ。 仮に19Klbf クラスの チップ・スピードより低い M 1.1 に合わせると 12,284rpm となる。

 この結論は、低圧段圧縮機が 1 段少ない 2 段で構成される最低位のクラスの諸元が発表されるのを待つしかない。

・ 以上からの総合所見

 基本的に GTF はダクテッド・プロップファンに向かっていると言えなくもなさそうだ。

 次のテーマはターボファンの効率優先の原則(バイパス比を大きくするとコアエンジンの出力も大きくする必要がある)を変えてもコア・エンジンの総エネルギーを低減できる可能性があるのかどうか・・・です。

 どちらのエンジンも圧縮性能を向上することでコア・エンジン自体をコンパクトに設計することと燃焼性能を向上を両立させることを目指している。

 それには材料の開発を含めた部品の構成と設計が要求され、コンピュータ支援設計が進んでいるとはいえ、膨大な実験での裏付けが必要になる。

 ターボファンとプロップファンの違いは主にブレードの形状であり、プロペラ容量係数などの性能面ではダクトと一体のダーボファンのブレード形状(ワイドコード化)のほうが優れている。

 アンダクテッド・プロップファン(UPF)ではダクトで得られていた騒音や速度などの利点は越えられなかった。

 現在の境目は常用速度域の守備範囲といえます。 とはいえ、ターボ・ファンの巡航速度とターボ・プロップ・ファンの最高速度は近接しています。

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 なお、バイパス比を増加させる LEAPGTF の関係では LEAPN1 ひいてはファンの回転数を下げる限界がある。GTF はギヤボックスによる損失や構造上のリスクがある。

 コア・エンジンのジェット・ブラストの速度を下げること、と、ファンの回転数(本質はチップ速度)を小さくすること、は騒音には効果がでると考えられる。この面では GTF は構造上有利である。

 対抗するロールスロイス トレント XWB ではスリー・スプール(3 軸)構成の低-中‐高圧段で 3 段階の圧縮が可能であり、ファンを回す先頭の低圧段は低回転で回せるはずたが・・・ UrtoraFan ® と呼ぶ 3 軸 + ギヤ・ボックス という構成までを視野に入れている。
 毒を食らわば皿まで、ならぬ、ギヤで重くなるなら可変ピッチまで、かも知れない。

 現実には現行の構造のファンを可変ピッチにするのは難しい。
 加えて、ダクテッド・プロップ・ファン(ターボ・プロップの進化系)ではダクトと二重反転プロップファンとの総合効果の検証など何らかのブレーク・スルーが必要と考えられている。

 BPR を増加させるには 全圧力比OPR)の増加による 圧縮性能の向上希薄燃焼Lean Burn  にあるようだ。

 この二点セットは GTFLEAP でも然り、であります。

 以上、閑話だが重大かな ??

 EASA TCDS には燃焼温度関連のデータもあります。熱力学のほうからの考察は機会があれば・・・ということで・・・。

2018年5月31日 (木)

キネマ航空CEO 『レシプロ・エンジンの BPR を考え、ついでに零戦の排気管も考える』 の巻

 「ついで」 じゃなく、先に 「零戦の排気管を考え」 たい方は こちら へジャンプ。

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 ターボファンでは高バイパス比化が進み、現在のバイパス比(BPR)は 8 :1 前後、 P&WGTF では エアバA320neo シリーズの中で 12.5 :1 がアナウンスされています。

 前回のウィキペディア(英文)の記事ではターボプロップ・エンジンの BPR50-100 :1 となっていました。

 ではレシプロ・エンジンの BPR は、というお遊びの回です。

 結論から言うと、機体はボーイング 377 ストラトクルーザー、エンジンは ワスプ・メイジャー R-4360 の組み合わせの BPR300 :1 程度に相当します。

 だからどうした、は終わりのほうに・・・過程を読んでから、考えてから、にしてくださいね。

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 レシプロの航空機用ですからシリンダー・ヘッド部とピストンに挟まれて燃焼する空気とプロペラで推力を出す空気がありますから以下の数字が分かれば計算はできます。
 まあ、当らずと言えども遠からずと言ったところですけど・・・

 まず、必要なのはエンジンの排気量、回転数(測定基準がいくつかある)それに過給機(ターボチャージャー)の性能。これで燃焼に関係する(つまりコアエンジンの)時間当たりの空気量すなわち流量がでる。

 次に、プロペラの直径と飛行速度(巡行時とか最高速時とか)でプロペラを通過する流量が出る。面倒なのはエンジン回転数と飛行速度との関係だがまあ後から常識的に判断することにして・・・

 首題の計算には関係ないがおまけでエンジンと一体のクランクシャフトとプロペラ軸の間にある減速機のギヤ比も上げておく。

 対象とするエンジンには正統派レシプロの究極形といえるエンジンを選びました。

 プロペラ メーカー/形式 ハミルトン・スタンダード/定速式
  直径/翅数 17ft(5.1816m)/ 4

 エンジン メーカー/型式 P&W / ワスプ・メイジャー R-4360-B6
      構成 空冷星型4列7気筒(28気筒)/過給/減速比 2.667
      排気量 4,362.5in3 71.489L(0.071489m3)
      公称回転数(100%) 3,990rpm
      許容最大回転数   4,300rpm
 過給機 メーカー/型式 ゼネラル・エレクトリック/CHM2(ターボチャージャー)
               n.a. / n.a. (遠心式スーパーチャージャー)
       総合加給圧 n.a.

  このエンジンを採用した航空機は軍/民、生産/試作のみを合わせると25機種以上あるがここでは量産された民間機から、と言ってもフランスのシュド・エスト SE.2010 アルマニャック はわずか 8 機のため・・・残ったのは、

 機体  メーカー/型式 ボーイング/モデル 377 ストラトクルーザー 就航期間1947-1961年(56機)
      最高速度/高度    326knots(603km/h)/25400ft(7620m)
      最大巡航速度/高度 295knots(547km/h)/n.a.
      巡航速度/高度    262knots(483km/h)/25400ft(7620m)

 なお、R-4360 系のエンジンを使う最大の機体はコンベア B-36 、プッシャー・タイプのプロペラ直径は 19ft(5.7912m) です。6基を装備しますがこれでも足らずアフターバーナー付ターボジェットのゼネラル・エレクトリック J79 を 4基を追加装備しました。お役目は戦略空軍の花形として写真や映画で活躍しました。
 中には空中発進戦闘偵察機の母機(これはやってみた)や、計画倒れの原子力推進化計画や、で就役期間は 1945-1959年(384機) の13 年間でした。

 また、B-29 を改設計した後継機の B-50R-4360 系に換装されます。プロペラ直径はモデル377 と同じ 17ft でした。就役は1947-1965年(371機)の17 年間ですが爆撃機としては 1955 年までの7 年間で余生は偵察機、空中給油機として過ごしました。
 モデル377 の兄貴分のモデル367C-97 スラストフレイター 輸送機で就役期間は1947-1978年(60機)30年間ですが、空中給油型の KC-97 などをふくめれば888機でした。この中からエアロスペースラインズ社で改造されたスーパーグッピーなどのグッピー・シリーズが生まれます・・・(閑話休題)

 さて、回転数の(とりあえずの)定義をしておきます。

 公称回転数(100%)は最大連続出力としてさしあたり最大巡航速度時の回転数。

 では巡行時の回転数はというと公称回転数の 90% の 3,590rpm としておきます。出力は、回転数 X 軸力(トルク)に比例しており、大まかに 100% 時の出力の 75% の出力で巡航していると思われます。トルクは 83.3% にまで低下しています。

 許容最大回転数は公称回転数の 108% に相当します。離昇出力時の使用時間を決められた回転数としてのなのか、最高速度時なのか、はたまた緩降下時などの過回転禁止の限界回転数なのかはっきりしません。とりあえず最高速時の回転数としておきます。
Tu-114 の回 と設定が違うが機速自体も違うので・・・気になれば再計算をお願いします)

 これらより排気量にエンジンの回転数を掛けて物理単位[m3/s]に直してエンジン( 1基)を通過する単位時間当たりの空気流量を計算する。

  最高速度 X 許容最大回転数(108%) 5.124m3/s
  最大巡航速度 X 公称回転数(100%) 4.754m3/s
  巡航速度 X 巡航回転数( 90%)     4.274m3/s

 次に、プロペラの回転面積に各速度を掛けて同様に物理単位[m3/s]に直してプロペラ( 1基)を通過する単位時間当たりの空気流量を計算する。   

  最高速度時    3,532m3/s
  最大巡航速度時 3,204m3/s
  巡航速度時    2,830m3/s

 これらより、

 レシプロエンジンのバイパス比 = (プロペラ通過空気量 / エンジン通過空気量) -

 となるが加給されたエンジンではそうは問屋が卸さない。

 バイパス比は重量比(理論的には質量比)なのでを通過する空気量に該当する高度での過給後の比重(密度)を体積に換算した係数を乗じてやる必要がある。

  さて、計算を始めますがバイパス比の定義からはかなりトリッキーな計算になります。眉に唾を付けて考えながら読んでくださいね。先ずその前に・・・

 細かく言えば断熱圧縮なのでポアソンの法則で高度の影響を補正して、となるが今回は物理や工学の便覧にある標準大気の表を使って地上(海面高度 SL)の大気密度(kg/m3)を 1 とした高度7,600mの密度の比 ρ76000 = 0.449631 が得られる。同様に圧力比 P7600/P0 = 0.372639 もある。
 (ついでに温度は地上の 15℃ に対して -34.341℃ となっている。気温差では絶対値で -50℃であります。各々に7,700m の値もあるので20mの差を比例配分で補正できるがそこまでしてもねー。 )

 過給機の性能は今でも大気圧との差圧をブースト圧として示されている。おそらく測定しやすいからだろう。

 しかしバイパス比は質量比を扱っているので密度比の逆比 = 1/0.449631 = 2.224 が海面高度で無過給エンジンが吸入する空気量に相当する充填比となる。
 (一般に航空エンジンの性能には測定した高度は付記されていません。巡航高度での充填空気量を無過給時の海面高度と同じにした理由は単に比較しやすいからです。ちなみに同機の上昇限度は9,800m です )

 したがい先の式は、次の式となる。

 レシプロのバイパス比 = プロペラ通過空気量 / (充填比 X エンジン通過空気量) -

 厳密には分子と分母に計算する高度の密度を乗じて質量にするが消去されている。
 (この式から燃焼系で圧縮される空気量が大きいほど BPR を小さくできる理屈が説明できる)

 高度がらみでは過給比も高度に関係する。高度7,600mでの充填比が2.224の場合、過給機による増加分は 1.774( = 2.224 - 0.4496) となる。

 過給機の性能は高度(気温と圧力)の変化でも変わらないとすると海面高度での充填比は 2.774( = 1.774 + 1.000) となり過充填でノッキングを発生させるなどでシリンダーなどエンジンの強度や寿命上では望ましくない。

 したがい、低空ではウェイスト・ゲート・バルブで排気をバイパスさせてタービンの性能を下げる機構が設けられる。せっかくある過給機だから地表付近でも多少の過給はされているはずだが詳細は不明。

 いっぽう、高高度では過給された空気の一部はエンジンに入らず機内の与圧のために使われるのはジェットエンジンと同じであります。(もちろん計算では無視しています)

 さて、断熱圧縮と言いながら無視してきた圧縮されて体積を減らすことで派生した高熱の空気は高空の外気の低温によって冷却器で冷やされて、酸素を含む質量の構成比は同じままで体積を減じてシリンダー内の吸気容積空間に充填され、さらに燃料と一緒に圧縮されます。

 いっぽう抽気された高温の空気は適当に、もとい「適切」に、冷却されて機内の与圧にも使われます。何しろ外気温は -35℃ ですからね

 これで空気が薄く氷点下の高空でもエンジンは地上と同様に多量の燃料を燃やせ、搭乗員も薄着で、乗客も私服のままで搭乗できることになりました。

 ということでボーイング 377 ストラトクルーザーBPR は、

  最高速度時    308.9 : 1
  最大巡航速度時 302.0 : 1
  巡航速度時    295.7 : 1

となります。どうです ? 結構大きいでしょう !

 ちなみに過給なし(自然吸気)で海面高度を最高速で飛びぬけたとすると充填比は 1 となり計算上の BPR は 689.3 :1 となります。

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 結論として、

1. BPR (バイパス比)は飛行速度域が低いほうが大きい
  (コア・エンジンとなるレシプロの排気やターボ・ジェットのジェット・ブラストの貢献度の差を含めてです)
2.逆に言えば BPR は速度域が高いほど小さくなる
3.速度域を高くするには出力の大きいエンジンが必要になる
4.超音速機のエンジンはアフターバーナー兼用の低 BPR のターボファンである
5.亜音速上限域のターボファンの高 BPR 化は常用速度域の低下を内包している

 ・・・の五段論法が成立するとも言えそうだ。

 その五段論法の使い方は、
 当キネマエアラインズフライト 003 で上映中の 「キャッチ 22」で !!
                              ・・・(当キネマ航空のコマーシャル)

 プロペラにしてもターボ・ファンにしても仕事は「質量」X「速度」であります。
「速度」を一定とする条件では「質量」の増加は本質的に回転部分の直径(すなわち面積)を大きくすることでしか増やせない。もちろんコア・エンジンの強化が必然となる。

 同じ飛行速度で BPR を大きくするターボファンの仕事効率の向上には燃焼効率の向上と機体とのマッチングが重要であることは何度も述べている。

 ところで、眉に唾を付けた効果はありましたか ?

 当カテゴリーの「プロペラを考える」の回でベルヌーイの定理を満たすためにはプロペラによる通過する質量流量の加速によりプロペラ直径より大きい範囲の空気を扱っていることを提起してあります。

 したがい計算式の分子の値も大きくなります。

 とは言え、巡行時を含む高速時の流量としては無視できると割り切って計算しています。

(さて、以下の零戦の排気管の追記で出稿完了です・・・閑話休題の類ですが)

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ついでに零戦の排気管も考える

 過去に栄光を求めるのか、何が何でも日本が一番なのか、一部の航空マニアはいろんな疑似科学や神懸かり理論を編み出すようです。 以下、軍用機編です。

 三菱零式 21型から 32型の集合排気管から 52型ではカウルから飛び出して真後ろに向かう単排気管に変えました。 この改良で排気のジェット推進効果により最高速が著しく向上したという説はいささか「贔屓の引き倒し」のようです。

 戦闘機で、(水平時で示す)最高速度が必要なのは逃げる相手を後ろから追撃する場合です。 本当に必要なのは進攻時や帰投時の通勤時間を短くするより速い巡航速度です。
(スロットルの最大開度は最高速度より上昇性能で必要です。 速度も上昇性能もスロットル開度で制御する出力に関係してはいるけれど、最高速度が速ければ上昇性能も優れているとは限らない・・・閑話休題)

 さて、プロペラの推進効率は最高速度に近づくと低下するにしても、レシプロエンジンの相当バイパス比から見て推進力にかかわるエンジン排気の質量はプロペラに比べてかなり小さい。 ここはぜひ零戦各型の BPR による推力と排気推力を計算してみてください。

 必要な追加データ項目は 2本の集合排気管と 14 本?? ある単排気管の①断面積と②排気出口温度から計算する排気の体積から得られる速度と機速の差です。 ②排気温度は類推値からお好きな温度を選びシャルルの法則で計算すればいいと思います。

 当CEOの掲げるエンジンは「フン詰まり No !」理論の展開です。 吸気と排気の温度は理想気体温度への統一が必須です。 排気速度が最高速より速ければ「仕事」の効果の程度はともかく貢献はあると言えるかもしれません。

 ジェット推進効果の「仕事」は、m・V1(VEX-V1) です。m 排気の質量、VEX 排気の速度、V1 零戦の最高速度 です。 この仕事量で零戦の質量 M と 抵抗 Dr を押すことになります。 ここはせめて計算値でも最高速度の単位である 1㎞/h 以上の向上を期待したいところです。 ぜひやってみてください。 教科書の設問よりずっと面白いでしょう ?

 単排気管の効果があるとしたら川崎キ‐100 五式戦のように星型エンジンのカウリングを通る冷却風の制御フラップと胴体の段差による気流の乱れ(剥離流)をまんべんなく整流する(実際には吹き飛す)ことで得られる胴体表面の摩擦抵抗を減らす効果でしょう。 しかし、星型エンジンではフォッケウルフ Fw190-A の先例があり日本の発明とはいえないコンセプトです。

 なお、偶数の多気筒エンジンの排気管 2本を一組として点火時期の位相差と長さを選んで集合させる設計では単排気管としての末端となる集合部で発生する反射波による排気圧の脈動がエンジン側の排気口に伝わりシリンダー内の排気の掃気効率や混合気の充填効率を高める効果があります。 4行程エンジンと言っても排気と吸気の行程はオーバーラップして筒抜けになる時間があるからです。

 14気筒の「」エンジンでは7本の集合排気管が外観上の単排気管を構成することになります。完全な単排気管なら 14本の排気管が必要だがそんなに多くはなさそう、しかも 7本以上はあるようだ。
(右6左5説があるが、写真や図面によって数が違うように見える)

 どうも排気干渉の積極的な利用はしてはいないようだ。 しかし管の取り回しのための集合排気管が数本あるようです。 (例えば外観の排気管が11本ならそのうち内の3本は集合排気管と言った具合に)

 まあ、戦闘機の機動中にはスロットルの開度を大きく急激に変化させるので全域に効果があるわけでもないのだろう。

 そのうえ複列14気筒星型エンジンの前後列のシリンダーの排気管をクランクの位相差25.7.....(=360÷14)度の倍数と4の倍数の点火時期を組み合わせてうまく慣性偶力の打消して脈動効果が出せるのかどうか、などの疑問もある。

 21型のような左右で 2本の集合排気管の場合、排気管(鉄ニッケル合金)の取り回しで重くなります。短い単排気管の採用は軽量化に確実に効果があった。

 ちなみにFw-190-A ではエンジン BMW 801 D-2 14気筒の排気管を機体の左右に 4本ずつを一列に並べて開口し、下方に 4本(は同様に) + 2本(は左右斜め後方に向けて)が並べられている完全な単排気管です。

 上側に開口していないのはコックピット内に排気が進入したり、消耗品の潤滑油が燃え残って煤や油が風防ガラスを汚すのを防いでいます。 (52型では一番上の排気管は左右とも斜め下方に向けている)

 外観上ではその排気管の列はきっちりと胴体に埋め込まれれている。その結果、52型より長くなる排気管もあるが技術原理に関しては真面目ですね。

  また、液冷V12エンジン(ロールス・ロイスマーリングリフォンの一部)の単排気管に見られる魚の尻鰭状に潰して拡張する排気管には噴射速度をマッハ1以上に大きくするラバール・ノズル効果(知っているだけでもすごいことだが)があるのかも知れない説もあった。 ただし、マッハ1を超えるには排気圧力が4気圧以上は必要だけど・・・これも計算してみてね。
(外観上では正確には前後の2気筒を連結した左右各3本の集合排気管。V12 のクランク軸の構造図が見つからなかったので一般的な点火順序からの推測では排気脈動効果を利用していないと思われる)

 ラバール・ノズル効果はノズルの最狭部で亜音速から超音速に変わる現象なのでベルヌーイの定理は使えないけど計算式はWeb上にあります。(ロケットでは実際に使われているけど・・・レシプロ・エンジンではどうだろう?)

 そういえばほかにも川崎 キ-61 飛燕はラジエータの熱交換によるジェット推進効果がある、という珍説もあった記憶が・・・それはまたいずれ。

 (以上、読者に丸投げの閑話休題)

2018年4月29日 (日)

キネマ航空CEO 『GTF はターボ・ファン・ジェットかダクテッド・ターボ・プロップか、を考える』 の巻 (その 2)

 ターボファン・エンジンの可能性の復習から始めます。 前回の数式編 を少し整理してみました。

 なお、ターボファン・ジェット・エンジンの存在理由をモーメンタム理論で説明したグラフは上記の数式編に続く グラフ編 にあります。 こちらを必ずご参照ください。

 同グラフはターボ・ファンの効果を効率としてターボ・ジェットの推進効率を基準に η> 1 として示しています。 同時にターボ・ジェットが失った速度は速度比として VTF/VJ < 1 として表しています。

  すなわちターボ・ファンもターボ・ジェットも運動エネルギーが等しい前提です。 ややこしいかもしれませんがエネルギー保存則でご理解いただけると思います。2018.08.25              (キネマ航空 CEO)

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まず基本となる物理量は、下図を参考に、

Elements_of_turbo_fan_jet_propulusi  ・ターボジェット・エンジン(Turbo Jet Engine
   m  : 吸気と排気の流量単位質量 (kg)
   V1 : 吸気速度 (m/s)
   VJ : 排気速度 (m/s) VJ ≧ V1 
 ・ターボファン・ジェット・エンジン(Turbofan Jet Engine
   (q+1)m  : 吸気と排気の流量単位質量 (kg)
   q   : (ファン)バイパス比 (qm : mm = 1 とした質量比を表す無次元数) 
   V1 : 吸気速度 (m/s)
   VTF: 排気速度 (m/s)
  ・・コア・エンジン(Core Engine)             ・・ファン(Fan
   m  : 吸気と排気の流量質量 (kg)        qm  : ファン吸気と排気の流量質量 (kg)
   V1 : 吸気速度 (m/s)                         V1 : ファン吸気速度 (m/s)
   VC : 排気速度 (m/s)                         VF : ファン排気速度 (m/s)

 以上の物理量から運動量理論によるラム圧抵抗、エンジン発生エネルギー、実効エネルギー、機械仕事が求められる。

TURBO-JET TURBO-FAN
CORE FAN
  Ram Pressure Drag  KDJ = (1/2)mV12 KDTF = KDC+KDF = (1/2)(q+1)mV12
  KDC = (1/2)mV12   KDF = (1/2)qmV12
  Propulsion Energy
  by Engine
KJ = (1/2)mVJ2 KTF = (1/2)(q+1)mVTF2 = KC+KF
  KC = (1/2)mVC2
  VC Detail below
  KF = (1/2)qmVF2
  VF Detail below
  Available Propulsion 
  Energy
KJA = KJ-KDJ KTFA = KTF-KDTF
  Mechanical Work WJ = mV1(VJ-V1) WTF = (q+1)mV1(VTF-V1)
= WC+WF
  WC = mV1(VC-V1   WF = qmV1(VF-V1

 ターボファンのコアエンジンは表のターボジェットと同じエネルギーを持つとする。そのエネルギーから k (0≦k≦1) をファンに分割する。
 ただし分割に伴う伝達効率ψ0≦ψ≦1)が発生し実際に分割されるのは (k/ψ)となり、コアエンジンに残るエネルギーは{1-(k/ψ)}となる。したがい、KCKFKJ との比となり

C = (1-k)KJ = (1/2)・{1-(k/ψ)}・m・VJ2 = (1/2)・m・VC2 より VC/VJ = √{1-(k/ψ)} (1)
KF = k・KJ = (1/2)・(k/ψ)・m・VJ2 = (1/2)・q・m・VF2  より     VF/VJ = √{(k/ψ)/q}  (2)
    ψは分割による損失(効率)比

 ターボファン・ジェット・エンジンに求めるものは仕事 WTF の増加割合である。元の式にコアとファンの速度を埋め込むとコア単独での速度でまとめられる。

  WTF = (q+1)・m・V1(VTF-V1) = m・V1 ・ (VC - V1 ) + q・m・V1 ・(VF - V1 )
                  = m・V1 ・[ [ √{1-(k/ψ)}+ q・√{(k/ψ)/q} ]・VJ -(q+1)V1 ] ]
 これより、
 VTF = [ [ √{1- (k/ψ)}+ q・√{(k/ψ)/q}]/(q+1) ]VJ
 分割損失ψ厳密にはファンの回転や進行速度にかかわる翼素理論の効率も含まれるのだが以降の考察にはψ= 1 として運動量理論で話を進めます。
前回の誘導ではψの使い方が異なっていましたが最終的にはψ= 1 としており結果に差はありません。

 VTF = [{√(1-k)+ q・√(k/q) }/(q+1)]・VJ

 分子は 0≦k≦1q≧1 は平方根のため VJ≧VTF となる。VTFkq の関数であるが kq の関数でもある。
  A = {√(1-k)+ q・√(k/q) }/(q+1) と置き dA/dk = 0 と微分して A の極値(最大値)となる k を求めると VC = VF つまりコア・エンジンのジェット・ブラストとファンのモーメンタム・フローの速度が等しい場合となりファンが受け取るエネルギーの割合は k = q/(q+1) なのだが計算過程は省略します。ちなみにコアエンジンに残るエネルギーの割合は 1-k = 1/(q+1) であります(元の式ではk( k/ψ) と置き換える必要があります)

 したがい、ターボファン・ジェットのエネルギー速度 VTF とコア・エンジン単体のジェットブラスト VJ の比は、

 VTF/VJ = 1/√(q+1) (3)

 実際にはファンによる仕事は翼素理論でなければ厳密性を欠くが運動量理論で定性的な考察にとどめます
 機会があれば翼素理論とも組み合わせたい。これまでのプロペラの解析から最高効率を示す速度比は0.8辺りにあるようにコアジェットのブラストの限界速度比1をファンの最適効率速度比(巡行の 0.8 または最高速の 0.9 ?)の辺りに近づける? などで・・・。
 回転数で制御されているエンジンのエネルギーは、ジェットライナーでは差が小さい巡行時と最高速時の速度のおかげでエネルギーのギャップはファンブレードの設計で 吸収できる のではないか、との前提ですが・・・つまり kψの関係の見直しです。運用最高速を超える限界超過速度の余裕は頭打ちとなります。しかし緩降下すれば音速越えも・・・さて、どんなもんだか。

・少し「見える化」を

Vcvfparvj_by_k_rev(1)、(2)式を一つに重ねたグラフ。

(1)式を表す右下がりの VC/VJ はコアエンジンの出力が分割されでジェットブラストが 0 に近づいていく様子を示している。

(2)式は受取ったエネルギーをファンがモーメンタム・フローに変える場合のバイパス比(BPR)の影響を示す右上がりの VF/VJ

二つの交わる点が VC = VF となって各々の BPR でターボファン・ジェットが最も効率よく運転できる点となる。

BPR 0.5(-0.9) は超音速機に使われるバイパス比だが、いざとなればここに燃料を吹き込みアフターバーナーとなる。

BPR 1(-4)は初期の第一、第二世代のターボファン・エンジンのバイパス比。実際は BPR 3-4 は一気飛び越えて、

BPR 5(-7)は第三、第四世代に相当する。ここでミッドスパンの廃止、ワイドコード化や材質と製法の変更が行われました。「MRJ」のカテゴリーの中で 3回に亘って掲載中です。

BPR 8 を超えると第五世代となる。GTF はこの辺りに含まれ、最大バイパス比となる BPR 12.5 が公表されている。

 エネルギーの分割比が釣り合うのはコアエンジンの性能もあるがファンの動力吸収性能できまる。バイパス比が大きくなるとコアエンジンのジェットブラスト(VC/VJ )側の変化が急になり安定性は悪くなりそうである。コンピュータの支援が必須となるだろう。

Q_vs_vtf_vj_ratio

(3)式のグラフ化。
或るターボ・ジェットのジェットブラストの速度と同じエネルギーを持つコア・エンジンです。

別の見方ではマッハ 1 で飛べるコア・エンジンを使ったターボファンのバイパス比を変えた場合の飛行速度の比として読むこともできます。
例えばバイパス比が 8 の場合の速度比は 0.33 であるからこのターボファンでマッハ 1 の飛行にはマッハ3で飛べるのコア・エンジンが必要になる。(もちろん機体の空気抵抗は変わらぬ仮定が前提です)

 仕事効率の最大化のためにジェットブラストとファンのモーメンタムフローを等しくする前提のターボファンでバイパス比 q を大きくしていくと VTF/VJ の変化は小さくなる。

 バイパス比 q の増加は √(q+1)に比例して増えるファン直径 D の増加(すなわちカウリングの直径)によって得られるのだが翼の下に吊り下げるにしても翼の上や胴体に載せるにしても実用上の限界があることは想像できる。

 この辺りがターボプロップとの境目かもしれない。航空機の技術史からは今でもファンの最大直径はプロペラの最大直径を越えられない。

・おまけ

  前回のグラフではコアエンジンに残るエネルギーの割合を k としていた。
しかし今回はファンが受け取る割合を k としています。

  したがい、コアエンジンから見た 前回のグラフ編 にある同様のグラフで示す横軸 q は今回のグラフでは縦軸 (1-k) として計算した結果と等価です。

  加えて、前回に示したターボファンのバイパス比による仕事効率の上限は限界速度(理論上の最高速)の低下とのトレード・オフで 100% 以上になる結果は変わりません。

  低下する限界速度の回復には、もちろんコアエンジンの強化が必要になります。

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 ここまでの結論としてGTF(ギヤード・ターボファン・ジェット)も以上の原則の中にあることは間違いない。つまり、亜音速域の上限を効率よく飛ぶための GTF はターボプロップではない。

 構造的に言えばターボファンでは先頭の(低圧段)コンプレッサー駆動軸と同じ(回転数の)タービンで駆動されている。

 バイパス比を増加拡大していくにはファンの直径の増加を伴いブレードの先端速度、根元にかかる遠心力、曲げモーメント等々で回転数に制限が出てくる。

 GTF ではコンプレッサーの回転数を変えずにギヤボックスでファンの回転数を減速することで、もろもろの空力的、構造的問題の解決を図ったと想像できる。

 しかし「コンプレッサーの回転数を変えずに・・・」と断定するのは間違いでむしろ早くするのだろう。この辺りからは次回以降にします。予習には この回 の後段をご参照ください。

 ギヤボックスを持つターボプロップのプロペラの駆動軸は現在ではコンプレッサーの駆動タービンと切り離されたフリーパワー・タービンで駆動されている。

 ターボプロップでもターボファンでも回転数はプロペラやファンの負荷とエンジンの出力でと釣り合っている。したがいエンジンの出力の調整で負荷をコントロールできる。

 いっぽうプロペラやファンからは、というとターボファンではまだ実現していないがブレードのピッチを可変とすることで負荷を制御してエンジンの最適回転数に合わせることができる。

 米国系の大型二軸二段のターボファンのコアエンジンでは軸流式コンプレッサーのステーター(静止ベーン)を可変式として圧縮性を制御している。英国のロールス・ロイスは三軸三段のコンプレッサーとして可変式静止ベーンを廃止している。(閑話休題)

 ではそのブレードが暴走したら、例えば吹っ飛んだら、負荷を失ったタービンは暴走を始める。燃料の自動シャットダウン・バルブがあるとは思うがどこにあるのだろう。

 ターボプロップの推力の大半はプロペラの回転力の負荷(ブレードの揚抗比)によるもので上記のような運動量理論で強引に説明するには無理があるので以下を・・・

 ここまでの考察ではファンにも運動量理論を適用している。しかし現実のファンを効率よく働かせる速度比は 0.6から0.9のあいだでピークは0.8あたり、最大効率は0.85程度となる。

  (アンダクテッド・)ターボプロップのTu-95 ではターボファンの最高速度であるこの辺りまで迫っているようだ。

 デフューザー効果によって空気のファンへの進入速度の低下を見込んでいる(ダクテッド・)ターボファンで得られる翼素理論を運動量理論に近づける効率改善の効果と、高バイパス比化が主眼のGTF のコアエンジンに現われるファンを駆動する回転数 N1 の増加にともない増加する背圧にともなうジェットブラスト速度の低下、燃焼効率の変化などとの関係となるのだが・・・

 高バイパス比にするにはファン直径の大径化かコアエンジンの小径化か、となる。しかし一般的には前者となる。したがい実用上の限界がある。

 高バイパス比の根底にあるのはブレードの形状からくる空気機械としての動力吸収性能の向上が初めにありき、として総括されるはずだ・・・と迷路に入り込んだようだ。

 超音速から亜音速への速度域の低下を伴ったターボジェットからターボプロップへの開発で見られた劇的な効率改善は、その中間(亜音速の上限)の速度域で固定されたターボファンでは見られないであろう。

 しいて言えるのは、固定ピッチから可変ピッチへ変わったプロペラの変化がダクテッド・ファンにも採用される。 つまりは構造的にはフリータービンでなくてもダクテッド・ターボプロップファンになる時がジェットエンジンの究極形と考えられる。

 そのあと、現在の延長となる大気圏を飛ぶ飛翔体ではターボジェットが動力源として使用されるであろうが、技術的には速度域の増加をともなう(目指す)別のブレークスルーに向かうであろう。そこまでの技術が人類に必要かどうかは疑問ではあるけれど。 

以下はご参考に・・・

ターボプロップについて日米ウィキペディアからの抜粋と比較

 排気口から噴出する際に生じる反動はエンジン全体が生む推力のおおよそ10%~25%を構成する。

 今日の多くのターボプロップエンジンは、圧縮機駆動用タービン軸とプロペラ駆動用タービン軸が別な2軸構成となっているため、圧縮機駆動用タービンの速度に影響されることなくプロペラを回転させることが可能となっている。
 それぞれのタービン軸が最適な回転数で回転できることにより、排気口のジェット噴射に残っているエネルギーはプロペラ推力を含めた総出力の10%以下にまで減少する。

ジェットやモーメンタム・フローでの「推力」は速度の関数、「出力」は速度の二乗の関数なので的外れではないようだが混乱を招く併記となりそうだ。

 Consequently, the exhaust jet typically produces around or less than 10% of the total thrust.
 A higher proportion of the thrust comes from the propeller at low speeds and less at higher speeds.
 Turboprops can have bypass ratios up to 50-100 although the propulsion airflow is less clearly defined for propellers than for fans.

 While the power turbine may be integral with the gas generator section, many turboprops today feature a free power turbine on a separate coaxial shaft.
 This enables the propeller to rotate freely, independent of compressor speed.
 Residual thrust on a turboshaft is avoided by further expansion in the turbine system and/or truncating and turning the exhaust 180 degrees, to produce two opposing jets.
 Apart from the above, there is very little difference between a turboprop and a turboshaft.

排気の推力は10%前後もしくはそれより低い、となっている。
ターボプロップのバイパス比を50-100と表記しているなど写真を見ればなるほどねとなる。
同時にプロペラの推進力はファンに比べると明確な定義ではない、としている。

加えてプロペラとファンの性能の差やフリーパワー・タービンを採用するターボプロップとターボシャフトの構造上の微細な差を示唆するなど読者の興味の引き方をよく考えた文章といえそうだ。

 評論はいいから、お前はどうだ?!、と問われても困るけど・・・『他山の石』としておかしなところがあればご連絡ください。

2018.06.10 加筆終  キネマ航空CEO

 

2018年3月 9日 (金)

キネマ航空CEO 「MRJ のビジネス・アップテートを行う。と、同時に日本の航空機製造行政の失敗を考えて、『他山の石』も考えてみる」 の巻

 本文の中ほどで A320neoGTF エンジントラブルの記事に、その原因と対応を青字の追記で行いました。(2018 04 04)
また「他山の石」も考えてみる、を追々記しました。(2018 04 10)

 本文の後半に記した GTF の疑問点を 2018/06/22 以降の出稿する 「MRJ」 のカテゴリーで解析を含めてカバーを始めました。(2018/07/04)
                                         
      キネマ航空CEO

 残念なニュースですが 2018/1/26 付けのロイター東京の発信によると

三菱航空機は、アメリカのスィフト航空が買収したニュー・イースタン航空との間で2014年に交わした MRJ90 の確定発注分20機と覚書による20機計40機の契約破棄交渉の結果を正式に合意した」と発表した。 
三菱航空機のコメントは、開発遅延や性能上の理由ではなく顧客側の事情によるものである」としている。

・・・ということで比較表を差し替えます。

 なお、以前から継続的に差し替えている表には香港のリース会社 ANIグループホールディングスとの間の MRJ-90 覚書契約 5機(2011)の破棄については掲載していません。 同様に当ブログに最初にアップした時点の前にキャンセルされていたエンブラレルボンバルディア分も掲載していません。

 で、ニュー・イースタン航空の解約では覚書分は違約対象にはならず、契約20機の先払い分は違約金といっても遅延見込み分の交渉で値切られたと思われます。

Mrj90_business_update_jan_2018rev2

 さて、三菱航空機の開発遅延のあとにさまざまなな逆風が MRJ に吹いている。

 曰く、米国の航空会社労使間のスコープ・クローズ協定の継続。
 曰く、ボンバルディアの資金繰りの破たんに続くエアバス傘下への系列化。同じくボンバルディアに対するボーイングのダンピング関税率強化の圧力(が却下された)。
 曰く、ボーイングエンブラエルに対する系列化交渉の開始。

 簡単に言えば小型機メーカーは米国と欧州の大型機メーカー二極のラインアップの一角に組み込まれてしまい三菱航空機が目指す小型機メーカーの三極化の夢は潰え去ろうとしている。

 既存の小型機メーカーの隙間を狙った三菱航空機の機体は存在意義を失うかもしれない。そうなれば、MRJ は、かつての MU-2MU-300 と同様に機体製造権の売却となるが、売却先は欧米ではなく中国、インドなどの国土面積と人口を抱えた航空新興国となるだろう。

 加えてギヤード・ターボファン・ジェット・エンジン(P&W ピュアパワー)自体にも影が差してきている情報もある。(下方に出典へのリンクあり)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 つまりは日本の航空機製造行政の問題を検証する過程に入ったと考えられる。当オフィスのカテゴリー「MRJ」の記事から振り返ってみると、「新開発の機体と新開発のエンジンの組み合わせを並行して進める意味はあったのか?」に立ち返ることになります。

 MRJ の機体の空力設計は胴体の先端を通る軸線が客室胴体の軸線から著しく下がったコックピット周りの形状である。これは空力設計というよりむしろ全長に占める客室長の拡大といえる。あるいは全長の短縮、延いては軽量化のコンセプトと見たほうが良い。

 航空機で一番無駄な部位は操縦室いわゆるコックピットである。操縦席はパイロットの座高に合わせて上下にヒップポイントを調節できパイロットの目の高さをほぼ同じ位置に設定できるようになっており、足の長さに合わせてフットペダルを前後させる。

 その目の位置を基準に胴体を切り抜いた透明のウィンドシールドの窓枠を通した視野角度が規定されている。

 なかでも機軸に対して上下にはそれぞれ17°の視界が要求されている。下方視界には着陸時の誘導灯の視認性から侵入角度と機首上げの角度を加味して下方には20°が要求される。(中型機以上の側面に特徴の出る水平方向視界角度との関係もあるが別の機会に)

 次にウィンドシールドはバードストライクや雹や噴石などに対する強度から透明で厚みのある積層樹脂ガラスが使われる。

 したがいウィンドシールドを傾ければ空気抵抗を少なくできるがその厚みのために屈折によるひずみが出てくる。

 また明暗差による反射(映り込み)も大きくなる。 かつては前傾したウィンドシールドの航空機(ヴァルティ V-1Aボーイング モデル 247 など)もあり、現在では大型船のブリッジに採用されている。

 結局のところ現在の旅客機の機首の形状はウィンドシールドの傾斜角を決めるクリアな視界を確保するための材質や構成で決まる屈折率や反射を防ぐコーティングに関係する性能の進歩で決まるようだ。三菱 キ-46 のⅡ型、Ⅲ型の機首形状のすったもんだが思い起こされる)

 ウィンドシールドの傾斜角が決まれば胴体の先端はその延長線に沿って、機首に装着する小型化されたレーダー・アンテナを収容する軸の傾いた楕円錐が収束するまでの形状が決まる。

以上の設計思想は、デハビランド・コメットブリストル ブラバゾンなど第二次大戦後の英国系の大型機にも行き着ける。

 つまり、特に小型の中心線の明確な円筒状の胴体の輸送機、旅客機の機首の(それも尖った)先端は円筒から楕円円錐に絞られながら胴体の中心(水平)軸よりかなり下側で、胴体の円周下面とほぼ同じ高さで収束する理屈であり空力設計は二次的な要素になる。

 くどいようだが航空機の空力設計で最も邪魔なものは操縦席であります。上記の機首形状は高翼タイプのターボプロップではあるがデハビランド カナダダッシュ 8(開発開始1979)あたりから顕著になり、今では低翼の小型機のリージョナル・ジェットの標準となって中型機にも影響している。

 つまり現在の機体の空力設計や構造設計は外国メーカーではこの時代からの積み重ねがあり日本は YS-11 の幕引き(1971)と同時に並行して構想を固めて試作機の開発が必要だった。

 少なくとも同様(真似をしたとは言わないよ)の機首形状のコンセプトを使いながらシートの薄さと斜めの室内配置(日本では特許ではなく実用新案程度のアイデアもしくはギミック)に加えて飛行中のピッチトリムに(運行条件によっては良いほうにも)影響の出やすい後部胴体貨物室の採用で得られた胴体の細さに燃費と環境性能を賭ける現在のMRJ の形にはならなかったと思われる。

 さらに、MRJ の燃費と環境性能の重要な要素である新開発のエンジンでは、MRJ と同系統のギヤード・ファン(GTF)である P&W "ピュアパワー" PW1127 を採用していたエアバス A320 NEO シリーズでは、デリバリーをダブル・キャストであった GTF ではない CMF インターナショナル LEAP-1A26 を採用しているキャリヤーに当面は絞り、ビジネスでは手堅く従来のエンジンを採用した A320 CEO を継続していく方針を続ける。

 エンジンと機体の関係は GTF 用として完成している機体に LEAP を載せれば良いといったお手軽な問題ではない。エンジンなしの機体がずらりと並ぶことになる。

 まさか MRJ でそうなっても「我日本ではァ 川崎 キ‐61 三式戦 飛燕 からァ キ‐100 五式戦 へェ- エンジン換装のォー経験があーる ! 」なんて言い出すアナクロ・ファンはいないと思うが・・・(閑話休題)

 「EASA  GTF A320neo」 で検索すればいくつもの記事が出てくる。主な情報は以下の URLで確認できる。
Airbus stops accepting PW1100G engines for A320neo aircraft  atwonline.com Feb.10, 2018 (Mar.14,2018 現在、全文はログインが必要。検索ポータル・サイトのキャッシュでは読める。お早めに)
A320neo Pratt & Whitney GTF engine issue - Airbus airbus.com Feb. 9. 2018
Emergency Airworthiness Directive AD No.: 2018-0041-E European Aviation Safety Agency (EASA) Feb. 09, 2018

 P&W の見解は A320neo に採用されている暖気時間の長い P&W PW1127 エンジンのみのトラブルであって初期デリバリー後に設計変更して納入されたエンジンの高圧コンプレッサーにあるナイフエッジ・シールにクラックが入り飛行中の再始動ができなくなる現象であり旧仕様に戻した構造にすれば解決する。
 したがい、航空安全機関である EASA や FAA の査定では双発のエンジンの内の一基を旧構造エンジンに戻した(換装した)状態で洋上飛行を除いた運行は行える・・・としている。(ETOPS に関係します・・・ ご参考は こちら

 また、本件は、ボンバルディアエンブラエル三菱の機体に採用される出力では低位の P&W ピュアパワー  (GTF )エンジンには影響しない。・・・とのことであります。
 Pratt & Whitney’s Indian trouble Leeham News.com Mar. 14. 2018 の一部を要約して追記・・・2019 04 04
 この記事では上記の状態でも A320neo の運航を許可しない国もあるとのことです。多くのコメントがついています。ご一読を。
 ピュアパワーを採用した日本の某社の A320neo は旧仕様のエンジンで受領して飛んでいるのかもしれない。

 記事を読む限りではギヤボックスそのものに発生したのではないようだがエンジン全体の捩り振動系として見れば無関係とも言い切れないだろう。

 新エンジンの信頼性は水物であるジンクスは生きており、機体メーカーが信頼性を実証するリスクテイカーとなる。

 ターボファン・ジェットの型式は出力によってかなり細分化されており、同じ設計思想、同じ部品の共用のエンジンといっても機体と運行状況とのマッチングでは良くも悪くも 独立したエンジン型式 である。

 MRJ の一クラス上(PW**17クラスに対してPW**19クラス)の GTF を採用してすでに完成機のデリバリーを始めたボンバルディエ CS100エアバス傘下に入るのだがどうなるのだろう。LEAP エンジンはスネクマ(仏)とのG E インターナショナルの合弁企業)

 同じ系統(PW**19)の ピュアパワー ・エンジンを採用するデリバリー間近のエンブラエル E190-E2 シリーズは当面は先行するボンバルディエを注視となるが、関係が深くなるのは米国のボーイングP&W となる。

 さて,A320 NEO に発生した開発時から 顕在していた事象 の重症化らしき)エンジン・トラブルの原因はさておき、バイパス比を上げるための GTF にどれだけの効果があるのか、よくわからないということがある。(過去の当ブログの記事をご参照)

 GTF の理論的な可能性について諮問を受けたJAXA宇宙航空研究開発機構:内閣府・総務省・文部科学省・経済産業省が共同所管する国立研究開発法人)や METI(経済産業省)の技官やスタッフはどのような指針を出したのだろう。

 少なくとも亜音速輸送機のカテゴリーではアンダクテッド・ターボプロップファンはターボファン・ジェットに対抗できないようだ。

 ギヤの追加でダクテッド・プロップファンとして燃焼効率の改善が見込めるのか、見込めるならギヤはなくても良いのではないか、ギヤ・ボックスの重量で可変ピッチ・ファンにしたほうが空気機械として優れるのではないか、の案がクローズアップされる。

 簡単に言えば GTF のファンへのタービン出力回転数はターボファンのそれよりも高速で回っている。減速してトルクを大きくして負荷が大きいファンを駆動して高バイパス比のエンジンにするためです。

 つまりは高速回転のタービンでコアジェットの噴出速度は遅くなる。そのため燃料と空気が燃焼室を通過する時間が長くなる。結果として燃焼が改善される。

 ターボファン・ジェットでは原理的に、コアジェットの噴射速度(ジェット・ブラスト)とファン後流(モーメンタム・フロー)の速度が等しい時に推進効率は最大になる。

 と同時に 当オフィスで解析した ように ターボファン・ジェットのバイパス比を大きくすればコア・ジェットの出力(燃料消費)も大きくしなければならなくなる。

 いっぽう、ターボプロップではプロペラ後流(モーメンタム・フロー)の速度のほうがコア・エンジンの排気速度(ジェット・ブラスト)よりずっと速い。しかし、いまのところターボプロップではターボファンの速度域までカバーはできていない。

 この二律背反解決するために可変ピッチを採用する高バイパス比のダクテッド・プロップファンで巡航速度を亜音速(一応マッハ0.8以上)にまで向上させる案にロールスロイスが挑戦している。すなわち可変ピッチによってプロップファンの負荷を機速に合わせて調整できるエンジンにする。
 (ただし、現行のターボファンの設計ではカウリング内のデフューザー効果によりファンが処理する流速はほぼ一定でありプロペラのような幅広い進入流速の変化はない。・・・当ブログ内既述済、受売りだけどね。
 可変ピッチのダクテッド・ファンもしくはプロップファンの有効性にも疑問がある
とはいえ、二軸のターボ・ジェットの圧縮機の静止ベーンには可変ピッチが採用されている)

 果たして GTF でこの案に対抗可能なのかどうか、当CEO は、これらの検討をこれまでの解析と同様に力学だけで展開しようとしているのだが手こずっています。いずれそのうちになんとか・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 とにもかくにもYS-11 の幕引きを図るために1971年に通産省が行った「次のない航空機産業」の指導方針で今日の開発遅延も含めて民間航空機参入の命運は決まったと言えそうだ。

 日本の、特に民間で開発した航空機の運命は国外に製造権の売却となるようだ。売るにしても、これさえあれば日本にも世界にも通用するFAA の型式証明を取ってからだろう。しかし残った売却先は中国かロシア、なるべくならインドとなるのだろうか。

 政府は開発を中止する権限も放棄した民間主導(つまり丸投げ)プロジェクトのようだがキャンセルが続かないような外交努力も必要だろう。

 通産省を引き継いだ経済産業省は2002年に海外から発信された需要予測に合わせた計画を急ぎ、具体化能力を蓄えさせていない航空機製造三菱に丸投げした結果として、世界情勢への裏張りを行わせた原子力発電東芝と同様に国の根幹企業の力を削ぐ頭の痛い問題が始まる。(後者は国内での再稼働に安全性を示す免罪符にしたかったのかもしれないが)

 ちなみに川崎重工業はライバルとなる エンブラエル E2-Jet シリーズの母体となる E-Jet シリーズの開発には(胴体ではないが)当初から協力をしていた。
 KRJ として担当しても、うまくいったかどうかは分からぬが、経産省は「永遠の」の三菱の名前が欲しかったのだろうかな・・・(百田 尚樹さんも罪なお人やねー、あっ!この当時は、まだ書いてなかったか)

 ちなみにエンブラエル E-Jet シリーズの直接の母体となった ERJ-145 シリーズは、ターボプロップの EMB120 (1974 開発着手、1985 就航、所要期間 11年) をベースにして 1989年に開発が着手された。

 デリバリーは1996年だった。試験飛行の 1年を含み、デリバリーまでに7年を費やした。
(初期の機首形状は旧態然なのだがシリーズの後半のモデルでは新しい形状に代わっている。また、これらのシリーズの生産は中国に移管されて、2017年にも生産がおこなわれているようです)

 E-Jet シリーズになると、1999年に開発着手、試験飛行2003年、デリバリーは2004年と、都合5年でビジネスに移った。

 E2-Jet シリーズでは、2013年に開発を公表、2016年に試験飛行開始、2018年にデリバリー開始予定。うまくいけば公称開発期間5年間となる。

 通産省、経済産業省は 他山の石」の意味 を知っていたのか、三菱はあるいは日本人は意味を誤解していないか、を考える機会にもなる。

 正確には「他山の石を以て玉を攻むべし」 は 「たざんのいしをもってたまをおさむべし」とも読む。
 「石」は取るに足らぬ「他人」のもの、「玉」は貴重な「己自身」のもの。下世話に言えば「人のふり見て我がふり直せ」だが・・・前半だけが知識で残っているのでは・・・?。

 特に官僚の無謬性を掲げるからには、他国の失敗例はもちろん、成功例ならなおさら、であります・・・

 まあ、国会に招致しても、当時は「エンブラエルごとき」が「名機ゼロ戦の三菱」を差し置いて成功するとは思ってもいなかった、と答弁するのであろうが・・・
 当時はまだ戦前の設計者が巾を利かせていたし、第ニ次「零戦」ブームの申し子たちが行政の内部にもいたのかもね・・・今でも、三次・四次・・・と続くブームの後継者はネット上に若者からいいお歳の評論家までいっぱいいるようだ。なお、物心のついた当CEO は第二次のちょっと後で古本を漁って経験しておりますですね。
 ちなみに第一次ブームは1940年半ばから1941年末にかけて日中戦争からパールハーバー奇襲にかけての海軍関係者の内輪の間で、ですね。

 WEBや書籍で、(何歳からかは分からぬが)いいお歳を召した航空ライターから(何歳までかも判らぬが)初々しい航空ファンまでが息巻いている「世界一の零戦を作った日本人(三菱)だから世界に通用するMRJができる(最近は、ねばならぬ!に変わってきたようだ)」、「(ここはひとつ外国の所為にして)零戦の復活を恐れたアメリカが日本の航空産業を潰した7年間のためだ。間違いない!」は間違いだと言い切れる。

  現実は、YS-11(誰もが認めざるを得ない)商業上の、(運用者から指摘されている)技術上の失敗も含めて即時に次の政策を決められなかった官僚機構(予算の獲得組織)が機能しなかったことが原因であります。

  つまり息巻いている人たちやその親や爺さん(この当時、婆さんは当該官僚にはなっていなかったはず)たちの世代の責任であります。

  既に十数年を掛けた MRJ の知見が「零戦」の呪縛から離れて生かされる機会が作られることを願ってやまない。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 基本的に日本の民間企業は江戸時代の鎖国ように、プレイヤーが交代しても変化のない均質な仕組みが続き、躓いても不変の延長線上の見込みを、という思い込みの環境で営々と継続することでしか経営できないようだ。

 同時に国家経営においてもしかりといえそうだ。奇しくも 1971年で終わる一ドル360円だった時代のように・・・

 日本の心は素晴らしい、縄文時代はよかった、など、ほとんど形而上のややこしい本(多少は読んでますが)で心を慰めるより山本七平氏の広がった、しかも尖(と)んがった世界の中での日本人論を読み直す時代となったはずなのだが何人の政治家や経営者や教育者が読んでいるのだろう。

 何の力もない下々が読んで心を慰めることにはならないし、溜まった鬱憤を晴らしても世の中は変わらないのだがそれでも政治にかかわるヒントにはなる。

«キネマ航空CEO GTF はターボ・ファン・ジェットかダクテッド・ターボ・プロップか、を考えるの巻(その 5 の 2 )「ファンだって奥は深いのだ !(その 1) 」

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