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2017年4月 2日 (日)

キネマ航空CEO 心情リベラルの憂鬱。「賞味期限」と「消費期限」を考える の巻

陽気に誘われて久しぶりになだらかな起伏の里山を歩きながら考えた。

「ひと」にとって生きていくうえで大切なものは何だろう。幸い当CEO は「衣」は綴れ、「住」は苫屋ながら不満はない。「食」も粗食とはいえ特に不自由はない。ないが、多くは加工食品に頼ることになる。

「加工」と言えども半生(ハンナマ)らしく「賞味期限」と「消費期限」があるようだ。その違いの最も簡単な説明は農林水産省の「こどもの食育」のページにある。

賞味期限」はともかくとして「消費期限」を過ぎても食べられなくはないが、「食べない」ようにしてください、と自己責任になっている。

確かに食べるものが無くなれば「消費期限」に関係なく食べることもあるだろうし、食べたこともある。「モッタイナイ」を流通段階で繰り返しており、「勿体無い」から横道へ、は過ぎれば犯罪とみなされる。

これに似た期限のある人間関係がひらめいた。選良と選挙人との関係である。

ここで、堪えていたくしゃみを繰り返し、鼻水をすするとそれぞれに違うことも気が付いた。

食べ物は食べたいものを買ってくる。でも、選良はそうでもない。大体の選挙人が他人の嗜好(志向だろうな)で決まる人数の方が多すぎると感じるようだ。

その他人を含め、選ばれる選良の『賞味期限』は選挙の開票時点までで、いったん選挙管理委員会の当選証書が発効されれば、選んだ選挙人にはそこで期限切れとなる。

その代議士となった先生の『賞味期限』は官僚、財界、学会、組合、政党といった大金を動かす組織、団体が決めることになる。もちろん、金はなくても先生の言動、行動をヒーロー、ヒロインとして憧れるネット・パトロンは賞味を続けられる。

(注)ネット・パトロン 《語源》 patron behind the computer network 【略】ネパト:対象に敬意や称賛を表すというより、その対象の相手を攻撃することが多い。対象自身に声なき声を聞くよりよりずっと心強い支持者と感じさせる、近い日本語では「贔屓の引き倒し」のご贔屓筋。《類似音声語》ネット・パトロール:正しくはサイバー・パトロール(cyber patrol)【略】サイパ。・・・(採録日2017年4月1日)

さて、多くの選挙人は選良を『賞味』するにもテーブルは最早遠く、メニューさえ読めない。

とは言え、法律でその『消費期限』は 4 年とか 6 年とかと決められている。理由は人事の刷新、初心に帰るためである。

しかし、効果があるのかないのか議院内閣制は政党内閣制でもある。

ある政党の総裁任期は 3 年のようだ。理由は分からぬがどうも選挙前の党内固めの猶予のようである。で、同時にスタートして順調に進めば最小公倍数の 12 年で一周する。

干支でもあるまいし、と内閣の首班となった総裁には法律で「国会解散権」が授けらる。いっぽう、「内閣総辞職」のカードもあるが、解散恐怖症の野党にも、地固めのできない与党派閥にも、行使させる力がない場合もある。

その結果、どちらにも挑戦者がいないと「『任期』は『人気』、『賞味期限』のおこぼれもある。こちらは法律じゃないから勝手に倍の 6 年にすればいいじゃないか」ついでに「一代特例ではなく恒久特例(党紀改変)も」となる。

人事権の集中が長くなると権力が集中し忖度された情報にまみれて驕りにつながる。驕りという「情」は権力者には焦りという別の概念で取り巻く小物の言葉に早く出る。

結局のところ選良の『消費期限』は選挙民が自ら自己責任で決めるしかない。これが『民主主義』である。選ぶだけが『民主主義』ではない。

ここで、心情リベラルの憂鬱が始まる。

米に(限らずだが)民主主義体制の下で民主主義の形式を手段とした指導者の行なう断絶を伴う変化(ある種の革命)が始まっている。

革命的思考の民主主義指導者に対する『消費期限』の宣告は民主主義でできるのであろうか。

その動きは少なくとも米国では見え隠れしているが背後で行われる取引は更なる混乱も引き起こす可能性もある。

日本のあなたなら指導者の『消費期限』はどのように宣告しますか ? 日本の草の根民主主義に対しての『消費期限』宣告は幸か不幸か鮮やかに行えたのだが。

ここから先の日本の行く末は、日本が国際政治のパワーゲームに登場してからの、いやそれ以前からの歴史の問題なのだが、リベラル新聞に登場するリベラル論者の論調はできもしない鎖国待望論のようである。(例えばTTPに反対し、それが叶うと二国間協定に反対するなどなど)

すなわち、(「見えないものは存在しない」に落ち着く)中国や北朝鮮の中に居れば幸せ論に近い。「見えているのか、見えすぎて見えていないのか」韓国は民主主義の最も進んだ国、論には驚いた。

歴史にまつわる思考は長くなる。機会があればいずれまた。

フェックション !! (《さんま氏の引き笑いに似た》息を引いた声を加えてあと3回繰り返す)ジュルルー
万朶の櫻の花粉症はつらい

2017年3月18日 (土)

キネマ航空CEO そこのあなた、MRJ を買ってみませんか ? の巻

航空機を買うのは航空会社ばかりではなくリース会社だって買うのです。買う方も大変だけど売る方はもっと大変なんですよ。

新規参入の三菱航空機MAC)は最大のライバルと目しているエンブラエルが抱えたレガシー製品のラインアップ・リニューアルの隙間を狙って開発を進めています。

リージョナル・ジェットという言葉に対する発想の結果は、いずれに吉と出るか凶と出るか・・・

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2016 年に廃止あるいは緩和されるはずだった希望的観測が外れてしまい、『スコープ・クローズ Scope Clause (範囲条項)』と呼ばれる協定が、アメリカの大手航空会社と所属するパイロット組合との間で再度で結ばれました。

『スコープ・クローズ』の目的は、大手航空会社のパイロット組合に所属しているパイロットが従事している業務への安全性の確保ですが、本質は航空会社が大型航空機を所有する LCC などのリージョナル(地方)航空会社へ運行を委託することで、組合員の職域の縮小や減給のスパイラルに陥る機会を予防することにあります。(大手と言えども組合とことを構えるのは安全性の企業イメージからも得策ではないようです)

このため大手航空会社や系列会社が運行する航空機の乗客数や機体の大きさを制限する条項を含む協定が結ばれました。

合意された概要は、シート数 76 席最大離陸重量 86,000 lb39 t)以下、となっています。

継続期間や条項の詳細は大手航空会社によって差はあるようですが、詳細は こちら で。

当然のことながら、佳境に入っている競合各社のリージョナル・ジェット・ライナーの開発と売り込みには影響が出てきます。

もちろん、MRJ-90 にも影響が及びます。三菱航空機MAC)はデリバリーを遅らせて米国の非関税障壁(?)に対抗する 600kg の軽量化を図っていると推測されます。

外人部隊を投入しながら始めた主な設計変更は電気配線(銅線)の見直しのようです。

MAC 社長のブリーフィングではかなり初歩的な設計上の問題のようでした。電線は通し方を変えて短くし、元になる細い銅線の直径をさらに細くしたり、撚線から一本抜くだけでもかなり軽くなります。

銅の密度は 8.92 g/cm3 で、鉄(同 7.87 g/cm3 )より重いんですよ。ついでに純アルミは 2.70 g/cm3 です。ざっと一辺 40.7 cm の立方体相当の銅をダイエットすればいいのですが電線だけでどうだろう ? か。
別途装備品にもティア1(総括仕入先)を通して減量要求が広がっているのだろうな。

もう一方のシート数の制限は運行会社のオプション(ファースト・クラス・シートを増やすとか、シート間隔を広げるとかの)選択の範疇に入り、製造会社が直接に決めることではありません。

しかし、先行して開発した機体のサイズと運行会社のニーズとの適合性では、製造会社は別機種の開発しか打つ手がありません。問題はチーズもといニーズ・パイのボリュームと切り分けた取り分です。

エンブラエルE175-E2 は今のところ仕様上では落伍したようですが協定の見直しを視野に 2020 年あたりをめどに検討は継続するつもりのようです。開発中断中の MRJ-70 は再開する理屈上の優位性はありそうだが・・・どんなものだか。

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下表は MRJ の売りのひとつである P&Wギヤード・ターボファンGTF)のピュアパワー・エンジンを採用している主要 3 機種を選び、ブラン・ニュー(白紙から始めた新設計)の三菱 MRJ-90、-70 を、既存の機体をブラッシュアップしてエンジンを換装したエアバス A320エンブラエル E190175 と比較してあります。(前回までの単位から馴染みやすい MKS 単位に換算してあります)

Performance_benchmark_geared_turbof

(4)のMOTW がその最大離陸重量で MRJ-90STD) は 600 kg ほど重い。軽自動車 1 台よりちょっと軽いぐらいに相当します。MRJ-70STD) はスコープ・クローズの対象外。

格上のA320neo は脇に置き、E190-E2E175-E2 は対象となります。ただし原型の E190 と E175 も対象となってる。

はっきりと言えば、エンブラエルは北米の市場では『スコープ・クローズ』の土俵をはじめから放棄して(MRJ フリークの心情からは「あきらめ」て)おり、三菱航空機とは異なる経営計画と開発方針で進めています。(本当に「あきらめ」たのかどうか)

このあたりから比較してみよう。

今回は概要から先に展開します。(上にある表をポップアップさせておくことをお勧めします)

(15)で示す MRJ-90STD最大着陸重量MLW)(3)と最大離陸重量MTOW)(4)の比は競合機のエンブラエル E190-E2 の 0.87 に対し 0.96 と 0.09 ポイントほど大きい。 MRJ-70STD E175-E2 でも同様であります。

仮にこの比が 1 なら MTOW で離陸直後にそのまま着陸できる。比が 1 に近い MRJ は初発便から短距離運行を行うコンセプトだろうけど、どこの市場を目指したのだろう。
(初発便 : 燃料給油後に最初に離陸するフライトです・・・当CEO の定義です)

MRJ は簡単にいえばベンチマーク機に比べ相対的に重く(適正な設計なら = 頑丈に)できている。ただ、一般的には MLW/MTOW 比はクラスが下がるほど大きくなるようである。

細部の考察に入る前に旅客機を含む輸送機に重要な重量諸元の定義を見ておきましょう。

--------------航空機の主要な重量------------

(1)運航重量Operating Weight): 

入手できる航空機の資料から空虚重量Empty Weight)が消えているようです。その代わりになるのがこの値です。

運行重量
  = 離陸重量
-(乗客とその手荷物 + 乗客への提供品 + 貨物)の重量-(搭載燃料・滑油・作動油)の重量
  = 空虚重量 + (排出不能の燃料・滑油・作動油 + 緊急時対応等で常備の運航装備品 + 乗務員とその手荷物)の重量

軍用機の場合は重量と訳すらしい。式中で引くものでは乗客ではなく搭乗員、貨物ではなく爆弾、ミサイル、弾薬、(チャフやデコイも含まれるのかなー ? )などの消耗品といいかえることになる(閑話休題)

基準になる離陸重量を最大の MTOWMax. Take-off Weight)(4)とした場合の運行重量が 最大運行重量 MOW Max. Operating Weight)となる。ただし MOTW は滑走路長、気温、空港の高度などで変わりカタログ上の MOW は変わらないが運行上の MOW は連動して変えざるを得ない。

ここで飯の種の乗客や貨物に関係する重量と航続距離に直接影響する燃料重量とのトレード・オフ(どちらかを減らしいっぽうを増やすことだが大抵は乗客か貨物を減らすこと)になる。これには次の無燃料重量が関係してくる。

(2)無燃料重量Zero-fuel Weight):

ざっくり定義すると、(エンジン始動前の) 離陸重量 - 主翼内の燃料重量 となる。

航空機の構造は左右の主翼の中を通る数本の主桁と呼ばれる揚力を受け持つ強度部材が(特に旅客機では)胴体横にふくらむバルジの中にある頑丈な籠型の構造物に取り付けられている。この結合部分を翼根と呼びます。

もちろん胴体もこの籠型構造物に結合されている。

飛行中の航空機にかかる「主翼」に生じる「上向きの揚力」と「胴体」に働く「下向きの重量」は、翼根を介してつり合っている。

エンジン搭載のレイアウトではMRJ などの小型機以上になるとエンジンはポッド(覆い)に包まれてパイロン(支柱)に吊られて主翼の主桁に取り付けられます。これが錘となって揚力による主翼の撓み(曲げと捩じり)を押さえています。

-余談ながら、
加えて、レシプロ機では主翼に取り付けられていた主脚も胴体のバルジ内の構造物に取り付けられることになりました。着陸時の衝撃を主翼で分担しないようにして軽量化された撓み翼にするためです。

-また余談ながら、
これがデ・ハビランド コメット DH.106 のようなエンジンの胴体横の翼内埋め込み、その外側の主翼に主脚がある形式が輸送機で主流になれなかった理由です。

-またまた余談ながら、
こうしたエンジンや主脚のレイアウトの限界では、一クラス下のビジネス・ジェットではデファクト・スタンダードとなったリヤ・マウンテッド・エンジンのダグラス DC90-10 (全長31.82m 90人)をストレッチでマグダネル・ダグラス MD90 (46.50m 172人)にまで引き伸ばすと「なんだかなー」となるようで最終型 MD95 の構想はボーイング 717-200 (37.81m 117人)に引き継がれシュリンクされて生産の終焉を迎えました。
(閑話休題)


さて、ほとんどの燃料は主翼の桁(スパー)の間に設けられた燃料タンクに搭載されており、主翼を上に曲げようとする揚力は(エンジンを含む)主翼の重さと燃料の重さで減殺されて翼根に伝わる。 しかし飛行時間と共に燃料は消費されて主翼側の重さは軽くなる。

双発機では四発機に比べ片発停止時の推力バランスの崩れを抑えるため翼根側へ寄せており主翼内の燃料の影響がさらに大きくなります。

いっぽうの胴体側の重量は(胴体内燃料タンクがなければ)変化しない。主翼の曲げを打ち消していた翼内の燃料重量がなくなると翼根にかかる力(正確には曲げモーメント)が大きくなります。(無くなった燃料の重量分だけ揚力も減少するので言葉ほど単純ではないのだけれど)

限界を超えると、金属疲労が設計寿命より早く進み、さらに、突風に遭遇すると主翼の迎え角が大きく(すなわち揚力が大きく)なって主翼が付け根(翼根)で折れることもある。

このため、飛行前の重量確認では最大離陸重量MTOW)と同時に胴体に載せた重量によって決まる最大無燃料重量MZFW)の制限内にあることを確認しなければならない。

燃料タンクが空になる事故は、当キネマ航空 009便 で上映中の『フライト 236 "Piche, Entre Ciel et Terre"』で取り上げたエアバス330 の「アゾレス・グライダー」や『フリーフォール "FLIGHT 174"』 のボーイング767 で発生した「ギムリー・グライダー」に当たります。どちらも胴体内にも燃料タンクがある機体でした。いずれも実話がベースです。もちろん MZFW をオーバーしてはいませんでした。

(3)最大着陸重量MLW

基本は、主脚などの降着装置や翼根の構造が耐えられる衝撃荷重係数によって決まる機体の重量。

もう一つは、滑走時の制動能力、着陸や復航時の操縦性が保証できる運用上の機体重量。

最終的には滑走路長や標高、気温など空港の諸条件によって決まることになる。

(4)最大離陸重量MTOW

最大乗客重量(持ち込み荷物を含む) + 運行に必要な燃料や食事等の提供品の最大重量 + 所定の装備品重量 + 乗務員重量(持ち込み荷物を含む) + 機体空虚重量

もちろん最終的には滑走路長や標高、気温など空港の諸条件によって決まる。

MLW より大きいのは滑走路の一点に向かい収束させる着陸時に比べ、余裕のある旋回半径で加速と上昇ができる操縦性ですむからと考えられる。したがい、構造上は MOTW より大きい MLW で設計された機体も存在する。

(5)最大乗客数Mono-class Passengers

輸送機、特に旅客機においては持ち込み荷物を含めてペイ・ロード(有償重量)だがこの数字が機体の格(Class)を決めるといっていい。

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さて機種名称(記号)の構成は、一般的に最大乗客数と航続距離の組合せで示されます。

最大乗客数を増減するためには基準機種の胴体のストレッチ(延長)やシュリンク(短縮)で客室長の変更を伴うので機種の記号を変える。例) A318 - A319 - A320(基準機種) - A321A320 ファミリーE170 - E175 - E190 - E195E ジェット・ファミリーなど。

増設タンクの仕様等の変更は航続距離を示す記号を付ける。例) -STD (Standard Range 標準型)、 -ER (Extended Range 拡張型)、- LR (Long Range 長距離型)、- AR (Advanced Range 延長強化型)など。MRJ には -ER-LR がある。

A320neo シリーズや E2 シリーズでは航続距離の仕様を示す資料がないため、表では STD と判断して現行機種の(STD)タイプと並べている。

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ではもう一度、MLW/MTOW を並べなおすと、エアバスエンブラエル( )内は現行エンジン仕様、MRJ では STD(ER/LR)を示す。

A320neo E190-E2 E170-E2 MRJ-90STD MJR-70STD
0.850.85 0.870.90 0.890.91 0.960.93/0.88 0.980.93/0.90

MRJSTD タイプを直接のライバルとするエンブラエル-E2STD)は、現行エンジン仕様に対して 0.03 ないし 0.02 ポイントを小さくなっている。

直接 MRJ と比べると 0.09ポイント小さくしている。E2 と同じ値になるのは MRJ-90ER  MRJ-70LR だが(もちろん『スコープ・クローズ』の MTOW 制限には適合しません)、まだ 0.01 ポイント小さい。(具体的には航続距離はエンブラエルの方が長い)

そこで MTOW  を最大(モノクラス)乗客数で割ってみる(8)。この数字が乗客の払うチケット代金となり航空会社が存続を続ける回転資金の源となる。

エンブラエル E190-E2  の 493 kg/人に対しMRJ-90STD は 430 kg/人となる。(以下 STD 等の表示なき場合は MRJ-90STD

これ(8)を巡航飛行時間(7)で割って乗客 1 人を 1 時間 とばす(9)には E190-E2 の 78.8 kg/人・時間 に対し MRJ-90STD は 167.5 kg/人・時間 となります。で・・・この差は航続距離の差ですが、主たる要因は MTOW を構成する乗客数と搭載燃料の差であります。

巡航飛行時間(7)は、各機種を問わず巡航速度は同列の M 0.78 として、巡航高度 40,000 ft (12,000m) の音速 295 m/s (1,062km/h)より算出した速度で標準巡航距離(6)を割った値。

では乗客数が近い E175-E2 はというと 110.6 kg/人・時間 となります。差は少し詰まったとはいえますが、MRJ-90STD との差は歴然です。もっと言えば機体重量の絡んだ数値は小型機になるほど不利になる原則に沿っています。

MRJ-90E190-E2 の航続距離の比は 1: 2.44、MRJ-70E175-E2 では 1 : 2.02 であります。

単純には MRJSTD) は -E2 の飛行時間の間に必要なアイドルタイム(後述)を無視すればざっと2~2.4倍の乗客の回転が見込める・・・とはならない。

乗客の回転では -E2 だって同じ飛行距離で着陸すればいいのであります。その上、燃料の補給回数は MRJ-90STD の半分でいい。・・・しかし、

ここで最初の MLW/MTOW の比の問題に返ります。この比が小さい -E2 は初発便の着陸空港が MRJ のそれより遠くなければ機体重量が MLW最大着陸重量)以下にならない。

したがい、-E2 の初発便は(特に日本の場合、新幹線との競合の影響が小さい)遠距離の空港に飛び、以降は自由に空港を選ぶホッピング・オペレーション(蛙飛び運行)を行うことができ、MRJ-90STD より多い無給油運行回数で乗客の回転が可能となる運用の柔軟性が期待できる。

そう上手くはいかないかもしれないが、初発便が常に満席の MTOW で離陸するわけでもないだろうから、次の給油空港のスケジュールに合わせて燃料搭載量を調整して無給油運行をおこなえばよい。

三菱航空機は標準仕様(STD)のほかに燃料タンクの容量を増やした航続距離延長型(ER)、長距離型(LR)も公表しておりシリーズでカバーしているとはいえる。しかし、最大乗客数の差は変わらない。

エアバスエンブラエルGTF に換装するにあたって MLW/MTOW を変えずに航続距離を拡大しており、明らかに三菱航空機とは異なる設計思想があることは間違いない。

エンブラエルは現行エンジンの E1xx の航続距離延長仕様を E1xx-E2STD として設定しているようだ。( MLW/MTOW 比はクラスの限界に近く見えるが、延長型は設定していると考えられる)

当然ながら両社の設計意図はエンジンのためだけで決めたのではない。もちろんエコロジーやエコノミーの ECO のためだけでもない。航空会社に使われる、ひいては売れる機体を作るためであります。

これまでに分かったことは、MRJ-90 のクラス上となる A320neoMRJ フリークがほぼ対等とする若干上位の機種 E190-E2 と下位機種となる E175-E2MRJ-70 とはほぼ同位)も標準仕様として原型機に対して航続距離の増加を与えています。

まず機体のコンセプトまたは構想を整理してまとめてみます。

MTOW は満席の乗客と最長航続距離にある空港までの飛行となる航空会社にとっては究極の(仮の)理想(着陸時の余裕燃料は 0 の極限の)運行重量と言えます。

航空会社が試算する航空券の価格は MOTW をベースに、乗客単価が決められて燃料などの変動費の支払いや、広義の固定費となる機体購入費や定期メインテナンス費などの金利等々を含む機材費用など負債の返済、従業員の給与に回り、最後の残りが航空ビジネスによる利潤の元となる指標になります。

機体購入費では新規機体開発メーカーには機体の重量に開発費の上乗せがあり、既存の機体を改良するメーカーは、より有利となる。

加えて小型機の機体価格が機体重量に比例して直線的に安くなることはないし、公称価格で買うこともない。同じ仕様でも購入価格はディール(交渉)によって変わる。

小型機ビジネスは作る方も運行する方も甘くないようです。

で、乗客が購入する航空券の価格(乗客単価)は各航空会社の予測や実績による決算期間の平均搭乗率で割られて高くなります。(空港使用料や離着陸料などの経費は航空券に上乗せとして取り合えず省略。 競争相手との値引き競争に対抗する事前上乗せ分も必要でしょうがこれも省略)

さて話を戻して、

(8)の一人運ぶための重さは工学的には単純で、小型機ほど重くなる。
小型機の場合は(9)で示す乗客一人を一時間飛行させるための重量ではさらに顕著になる。

ただし機種間で(8)を比較するには飛行時間が違うことを考えなければならない。
(10)は A-320neo の飛行時間を 1 とした比較機の比である。MRJ-90STDA320neo の 3 倍となる。

したがい MRJ-90STD では同じ時間に 3 倍の乗客を運ぶことができるので A320neo の 1 フライト 7.8 時間 の 195 人に対して MRJ-90STD では 3 フライトで 280 人の乗客が航空会社の経営を分担することになる。

もちろん、現実には乗客や貨物の入替、清掃などの時間が必要であり、そんなにうまくは回らないし常に満席でもないだろうが、差が詰まることは間違いない。LCC はいかにリージョナル・ジェット・ライナーでこれを活用するかにかかっている。

その一方では繰り返される離陸上昇区間の大きな燃料消費などの変動費はかさむことになる。

この表で目立つところは E190-E2E175-E2一人当たりの最大離陸重量(4)が  A320MRJ-90STD-70STD と比べると異様に大きくなっています。

特に E190-E2E190 で新旧として比べるとさらにはっきりします。

ところがマン・アワー当りの最大離陸重量(9)ではそれほど目立たない。

その理由は、エンブレアは機種の更新に当たって GTF を採用すると同時に航続距離を大幅に延ばして標準仕様としたようです。

言い換えれば燃料搭載量を増やして標準仕様としたことになります。

MRJ でも航続距離を伸ばした ER/LR 仕様がある、とはいっても最大乗客数は少ない。

ここから推測されるエンブレアの戦略はすでにお判りでしょう。

当CEOの考察ではエンブレアは(特に海外市場の)ユーザーの意向を採用しており燃費の改善は実燃費ではなく離着陸を繰り返す場合の運用上の利便性に振り向けたと考えられます。

エンブラエル三菱が開発を遅らせた『スコープ・クローズ』適合機の MRJ-70 に対抗するには E175-E2 の改造では不可能なことで次の見直し機会となる 2020 年までの時間に賭けました。

三菱が仕掛けた格下の新規参入機である MRJ90 に対しては航続距離、言い換えれば一給油で行う運行時間の延長で シート数の多い E190-E2 を計画してこれまでの実績を梃子にして『スコープ・クローズ』の対象外での競争で対抗しています。

最高速度や巡航速度は横並びで離陸上昇と下降着陸を繰り返すリージョナル・ジェットライナーにとっては巡航燃費のファクターは別の意味で利用できると考えているようです。

さらに言えばエアバスA318 で中型機から下りてこようとしていたが、今のところ成功していない小型機と中型機の隙間でボンバルディアが手掛けているクラスを狙っているとも言えます。

いずれにせよ GTF エンジンの応用には明らかに彼我に大きな差があります。いずれに吉と出るか凶と出るかの時間が今も経過していきます。

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なお、 MZFW/MTOW の比(14)(最大無燃料重量/最大離陸重量)も小型になるほど大きくなるようですが、MLW/MTOW の比(15)に対して一律で約 0.04 乃至 0.05 ポイントほどの差で小さくなるようです。
-E2 については MOWMZFL も公表されていないようですので現行エンジン機種の数値です)

MRJSTDタイプもこの値の 0.05 ポイント差に準じています(ERLR タイプも同様です)。

MOW/MTOW の比(13)(最大運行重量/最大離陸重量)の傾向は資料が少ないため明確ではありません。

以上は公表された数値から出てくる工学的な比較と類推であります。MRJ は適正に設計されておれば頑丈に、しかし相対的には重くできているようです。これが小型化の宿命、かもしれません。

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環境を頭に置いたリージョナル・ジェット・ライナーの企画のモチベーションは将来の原油価格の高騰と新興国(当時は BRICs)の短距離旅客輸送の需要が大きく拡大する海外の予測だった。

しかし、先に挙げた需要の大半を占める B も R も C もベンチマーク用に買ってくれるかもしれないが自前の航空機の導入を計ることは間違いない。

航空機ファンとして MRJ の成功を祈りたいが 20 世紀末に立てた予測も 20 年経っている。少なくとも二酸化炭素削減のエコロジーは原油価格のエコノミーと結びついていた。

経済産業省が丸投げした具体化事業を三菱航空機が民間企業として筋道をきちんと整理する時代が近づいてきている、とは言える。

2017年2月 7日 (火)

キネマ航空CEO GTFを あっさりまとめちゃうの巻(その 2)

さて、また同じ表です
(左クリックで別窓に拡大されます)

Comparison_of_geared_turbofan_jet_l

先回は上下に機体やエンジンの基本項目を並べました。今回は左右に並べたメーカー毎の新旧機種の比較をまとめて次回に続ける計画です。

まず左のグループから順に見ていきます。

エアバス

   A320neo-271NA320neo-252NA320 で比較を行います。
 neo ネオNew Engine Option (新エンジン選択)搭載機の頭文字。
選択できるエンジンは次の 2 種類です。
   P&W PW1127
 言わずと知れたプラット・アンド・ホイットニーの PurePower  ギヤード・ターボファン・エンジンで末尾の 27 は離昇時公称推力27Klb を示します。
   CMF インターナショナル LEAP-1A26
 型式名のリープ はアメリカの GE とフランスの国営コングロマリットのサフラン・グループの中核スネクマととの合弁(50:50)会社により、GEGE90 から開発された GEnX エンジン がベースの Leading Edge Aviation Propulsion (先端航空機推進)エンジンの頭文字です。

 続く -1 は最初の生産仕様、A はエアバス(したがい B はボーイング 737 )向けとなる。

 次に続く 26 は連続最大公称推力の 26Klb を示します。推力の定義を揃えると同じ(カタログ)値になっています。CMF の方が P&W より奥ゆかしい表現ですかね。

 LEAP はこれまでに書いてきたように構成部品の材質や構造の変更による燃焼効率の改善とファンの形状の大幅な変更による推進効率の向上などの PurePower と同等の改良を注ぎ込んで達成できる、減速機なしで可能な、限界を追求したエンジンと言えます。

 いっぽう、これまでのエンジン搭載機は A320ceoCurrent Engine Option セオ (現行、正確には旧来)エンジン選択型と定義するようです。

   A320ceo に限って言えば、
 CMF56-5 系と IAE V2500 及び V2527 系を採用していました。
 IAE は、P&W(米32.5%)、RR(英 32.5)、MTU(独12)、JAEC(日26)の4ヶ国4社の合弁企業です。(メーカーの選別で日本はどうなるのかが気になりますが主要な部品レベルではどのエンジン・メーカーであっても食い込んでいます。生産量の増減の影響はありそうですがね)

 さて neo では P&W を採用しますから IAE は外されることになります。いっぽうでは自国フランスの資本の入る CMF で前記のように対抗できそうなエンジンを開発することになりました。これが航空機産業を育成する国策でしょうかね。

 で、LEAP-1A を採用した A320neo のデリバリーは始まったのですが、ライバルとなるボーイング737MAX 向けのバイパス比が 2 ポイント小さく、低圧段タービンが 2列少ないが推力設定は 1 ランク高い LEAP-1B28 の燃費は目標未達となっているようです。

  基本的には低圧タービン段数を増やしてファン径を大きくすれば良いのでしょうが 737MAX では地上高が足りるのだろうか ・・・

 CMF56 系エンジンを一社選定している今でも外形をオムスビ型にしたカウリングで横揺れ接地角(機体が傾いてどちらかの車輪が接地したときに傾いた側のエンジンが接地するまでの余裕角度)を稼いでいるのに・・・PurePower に変更したところでファン径は必然的に大きくなる。

 短足のボーイング 737 はついに雪隠詰めになるのか ?? ・・・ エンジン仕様策定時に仕掛けたフランス側の遠望深慮(正しくは深謀遠慮らしい)の経済政策かも ・・・ ?

 従来の航空機メーカーのエンジン選定方式は複数(と言っても大体は2社)の競合関係を用意するが、ライバル関係にあるエンジン・メーカーの間でも増え続ける開発費の捻出にコンソーシアムを組み始めた。

 少し遅れて機体メーカーもエンジン開発費の一部負担と引き換えにリスクを抱えながらもエンジンを一社に限定をして対抗を始めた。

 そこで、エアバスは逆張りに出て一機種に(自国資本の入る新規の一社を加えた)二社のエンジン選択制を採用し、併せてライバル機のエンジンのシェアも自国の企業で頂くか、あわよくば宿敵の機体構造の限界を露呈させるか、・・・のゲームに出たとも言えなくはない・・・

 遠く先のエンジン技術の動向を見据え(遠望し)、航空機の製造では(深慮の上の)生き残りを賭けたビジネス世界を垣間見せているのかもしれません。

 一社限定とはいえ大きな航空機メーカーでは抱えているクラスの異なる機種のラインごとに分けて設定し、二社以上のエンジンメーカーとの緊張した関係を築ける。 航空機メーカーだってエンジンメーカーが潰れては困るのです。

 日本の機体メーカーには絶対に真似のできない、ビジネス展開ができます。日本の航空機産業の生きる道は完成品ではなく部品で同様の関係を作り上げることにに尽きるように思えます。 

エンブラエル

 機体の新旧の関係は、
   E190-E2 には E190-100
   E175-E2 には E175-200
 エンジンはそれぞれに、
   P&W PW1919GE CF34-10E
   P&W PW1715GE CF34-8E
 エンブラエルは GE から離れる決断をしたようです。もっとも GELEAP エンジンのラインアップはベースのエンジンが示すように小型のリージョナル・ジェットには向いていないようです。

 エンブラエルは当然のことながらエアバスの ceo に相当する型式は用意するでしょうね。安いリビルト・エンジンにレトロ・フィットができる新設計(新から旧への互換性を保った設計手法)の機体を組合せて、という商売も可能かもしれません。

三菱航空機 (MAC)

 機体はブランニューで比較するベースはありません。
   MRJ-90 はパッセンジャー・レベルでは、ほぼ E175-E2 と同格
   MRJ-70 は実現すれば世界最小の新鋭リージョナル・ジェット・ライナーに !
 エンジンには特徴があります。機体の順に並べてエンブラエルと比較
   P&W PW1917 はエンブラエルでは E190-E2E175-E2 の中間の出力
   P&W PW1715 はエンブラエルでは E175-E2 と同じ出力

併せて当オフィスの関連記事をご参照ください。
 キネマ航空 CEO GTF の GB(Gear Box)の減速比に迫ってみる。 
 
キネマ航空CEO MRJが採用したP&Wのギヤード・ターボファン・ジェットを読み解くの巻   

次回(その3)では、(その1)の横軸と今回(その2)の縦軸のマトリックスにある数字を読み解こうと考えています。

えっ、見えてきた ? 急がなきゃ

2017年1月31日 (火)

キネマ航空CEO GTFを あっさりまとめちゃうの巻(その 1) と、年頭のご挨拶 2017

「明けまして何がめでたい初日の出、明日の日の出とどこが違うぞ」
と言いながらも、世の中の移り変わりが様変わりとなる、もう 4 年は見届けたい年の明けですね。

キネマ航空はいつもと変わらず瞑想だか迷走だか分からぬ飛行で運行を継続いたします。

2017年1月のタイム・スタンプを押すために出筆のまま無校正、無校閲での公開になります。後日修正があればごめんなさい。(出筆者が一人でやってます)

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さて下表(左クリックで別窓に拡大されます)は、新機体、新エンジンの組合せで計画された MAC MRJ と 既存の機体の改造とプラット&ホイットニーのピュアパワーエンジン(いわゆるギヤードターボファンジェット)を組み合わせた機種とを比較した表です。

Comparison_of_geared_turbofan_jet_l

本来なら MRJ と同じく新機体、新エンジンの組合せであるボンバルディア C シリーズイルクート MS-21 シリーズも加えるところだがおなじクラスの エアバス A320neo にて代表させる。また表では標準的な機種を用いている。

使用した数値は、
機種においては Wikipedia(英語版)、
エンジンでは、EASA TYPE CERTIFICATE DATA SHEET (EASA European Aviation Safety Agency)
から抽出した。

表は上下方向に三つに分けられています。

上段:旅客機としての機体の代表値
    乗員乗客数と最大離陸荷重(Wiki から)

下段:ターボファンジェットライナーの性能(Wikiから)
    機種に関係なく巡航速度 0.78、最高速度 0.82、上昇限度は 40,000±1,000フィート。
    (この中で団栗の背競べ的な差はあるのかもしれないが)

中段:エンジンの特性値(EASAから)
    エンジンの構成 左より 
       ファン - (G ギヤボックス) - 低圧圧縮機 - 高圧圧縮機 -
         (A)アニュラー型燃焼室 - 高圧タービン-低圧タービン 
    (ファンは低圧圧縮段の一部でもあるが中には低圧圧縮機のない型式もある)
    の段数を示す。

    バイパス比、
    ファン直径
    最大離陸時推力、
    N1 (低圧タービン回転数)
    N2 (高圧タービン回転数)
    ギヤ比
    ファン回転数= N1 回転数 × ギヤ比、ギヤがなければ N1 回転数

    まずエアバスA320neo に使われる公称27Klbクラスのピュアパワーエンジンのギア比は、以前に当ブログで写真から計算した 96/34 = 2.8235 ではなく 3.0625 (= 98/32または 49/16 の倍数) となっていました。
(歯数は推定。歯厚は厚くなっているはず)

キネマ航空 CEO GTF の GB(Gear Box)の減速比に迫ってみる。

    減速比を大きくするのはファンの直径に直結するファン先端の速度と関係して回転数を押さえるためと推定されます。

    次の問題は、EASA のデータシートにはエンブラエルMRJ が採用する 15、17、19 Klb クラスの資料はまだ登録されていないようです。他の資料も探したのですが見当たりません。

    そこで、当CEO の独断(赤字のイタリック体 )で回転数は 27klb クラスと同じ値、ギヤ比は写真からのギヤ比を採用しています。

    なぜなら N2 回転数の増加に見られるようにターボエンジンの性能向上は、より希薄な混合気をより圧縮して高速で燃やすことにつきます。

    燃焼による運動エネルギーが高速になった分だけ高回転、低トルクを取り出し減速機で低回転、高トルクに変換してファンの先端が高速にならないように回すことで効率を稼ぐのが目的になります。
(このあたりは、自動車の変速機と同じで、車速に合わせて燃焼効率の良いエンジン回転数をなるべく一定に保つ機能と同じですね)

キネマ航空CEO 航空エンジンのお仕事の効率を運動量理論で考える(ターボ・ジェットの巻)

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余談ながら、なぜ A320neo に搭載された PW1127 の減速比は P&W の公表したギヤボックス写真の歯数と整合しないのか?

P&Wは考えた(多分ですよ・・・)

伝達するトルクが大きくなり強度上歯厚も厚くしなければならない。歯厚を厚くすると歯車の直径が大きくなる。歯車箱も大きくなり重そうに見える・・・

展示するにはちょっと・・・格好が悪いなー。ここはシリーズの中の小さい方を・・・

(P&Wの広報担当者様・・・間違っていたらごめんなさい・・・閑話休題)

この問題は次回からの乱暴な考察で突っ込んでみます。

2016年12月30日 (金)

キネマ航空 CEO 2016CY 業務の終了のご挨拶

当キネマ航空は事業からの収入はなんらありません。したがい通例のFY(ファイナンシャル・イヤー)ではなくCY(カレンダー・イヤー)を区切りとしています。それは、さておき・・・

去りゆく2016年にご搭乗いただきましたお客様に心より感謝を申し上げます。
また当オフィスにご来訪の皆さま、ありがとうございました。
当オフィスの記事のみにご関心を持ってご来訪の皆さまは、ぜひとも KINEMA AIRLINES のフライトにもご注目ください。

と、書いたところで愕然としました。
何としたことか、本業のキネマ航空では本年度は一便も新規就航ができていませんでした。

時代の変わり目に立ち会っている興奮で不覚にも 「経済・政治・国際」 のカテゴリーの記事に集中してしまった醜態でありました。(でも結構なワークロードではあるんですよ)

その中で当CEO のお勧めは キネマ航空CEO 陰謀論は楽しい!上有対策、下有政策?の巻(全編閑話) であります。

オスプレイ」の記事でも進展がありませんでしたが某(マイルド?)ネトウヨと括られると思われるサイトに当オフィスの記事がリンクされ、キュレーター・サイトにも登場しました。

その当オフィスの記事は該サイト筆者の視点とは全く違うのですが都合の「良いとこ取り」だけで時間を掛けた記事も一文を通しては読まれていないんだろうなー。

MRJ」につきましては考えるほどに膨らんでしまい予定を大幅に超過しております。

いずれのカテゴリーも結論らしきものは見えてきたのですが(ということは皆さまにも見えてきただろうということで)、そうなると書くのが面倒くさくなる「当CEOの悪い癖」、が出てきています。
しかしながら来年中にはどちらも何とか収束させることをお約束します。

その前に準備だけは進めていた「キネマ航空 013便」を第一四半期(CY)に就航させるべく取り組んで行きます。ご期待ください。

「それでは皆様も良いお歳を重ねられますよう。またのご来訪をお待ちしております」 を当キネマ航空よりのご挨拶といたします。

                                  キネマ航空 CEO 拝

追記

映画に関連した2016年度の当オフィスの記事は以下であります。

キネマ航空CEO 民主主義を映画から考える。『後出しトランプの巻』後編

キネマ航空CEO 映画『ハドソン川の奇跡』を見る前、見た後のお勧めの一冊

キネマ航空CEO 映画館に『ハドソン川の奇跡』を観にゆく

2016年12月12日 (月)

キネマ航空CEO 民主主義を映画から考える。『後出しトランプの巻』後編

前回『後出しトランプの巻』全二回の前編 を念頭に置いてお読みください。予告の副題、「かなりの事は映画から学べる」、です。

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さて、当キネマ航空 003便 にて上映中のある映画の終わりに次のような一節が挿入されます。

Don't rejoice in his defeat, you men.
For though the world stood up and stopped the bastard,
The bitch that bore him is in heat again.
                          Bertolt Brecht

ドイツの劇作家ベルトルト・ブレヒトのドイツ語詞の英語訳からの引用であります。字幕では・・・

諸君、あの男の敗北を喜ぶな。
世界は立ち上がり奴を阻止した。
だが奴を生んだメス犬がまた発情している。
               ベルトルト・ブレヒト

では、his defeat him の「=あの男=奴」とは誰なのか?
映画は1943年の欧州東部戦線南端のクリミア半島を敗走するナチス・ドイツ軍の小隊を描きます。したがいアドルフ・ヒットラーを指すのは自明の理ではありますが、元となった出典は・・・

Das da hätt einmal fast die Welt regiert,
Die Völker wurden seiner Herr. Jedoch ich wollte,
dass ihr nicht schon triumphiert:
Der Schoß ist fruchtbar noch aus dem das Kroch.
          Bertolt Brecht: Der aufhaltsame Aufstieg des Arturo Ui, 1941

で示されるように戯曲『アルトゥロ・ウイの興隆 それは抑えることもできる』の一節です。

創出された1941年は、ナチス・ドイツが奇襲でソビエトに侵攻(6/22)、日本では(4/13)の日露中立条約締結、つづいてパール・ハーバーをこれまた奇襲攻撃(12/8)によってとりあえずの宣戦布告をおこない、日独伊三国同盟(1940/9/27)により連動して独伊vs米の双方からの宣戦布告が行われて第二次世界大戦となった年になります。

作品は、もちろん戦後に日本でも何度か上演されているようですが当CEO は未見。

ただし、現在から見ると主題は him ではなく、『生んだ雌犬』は何のメタファー(隠喩)なのかになります。少なくともヒットラーの母親を指してはいない。

したがい同時にブレヒトが描かなった『生ませた雄犬』は何か、も考えなければならない。

仮にMr. Thim と仮定すると「彼」も、また「」も「民主政治」の手続きに乗っ取って選ばれた。

日本のリベラリストは、有権者の数を「彼」に「投票できる層」にまでに成長(衆愚と呼ぶからには増長)させたのは「資本主義」と決めつけるのであろう。(正確には「彼の選挙人に」だが、選挙人は彼に投票しなければならない義務ないし責任はない)

しかし、厳密には「資本主義」や「自由主義」ではなく「富の再分配の不平等」であり、「共産主義」でも「独裁政治」でも同様に存在する。後者では「投票権を持たない層」に過酷なまでに薄くなるだけである。

自由主義」をうたう国においては『雌犬』は「富の再分配の不平等)」であり、『雄犬』が「民主主義のシステム」として見ればどうでだろう。

どっちがどっちでもいいのだが、「共産主義」の国では『雌犬』も『雄犬』も、いるのかいないのかは、だんまりを決め込むほかのリベラリストやコミュニストにお任せして・・・

ポリティカル・コレクトネスからもジェンダー論者からも、当CEOは下品、と批判もしくは無視されるだろうが、これからを担う若い有権者には、W・チャーチルを引き合いに出すまでもなく「この程度のいかがわしさが『民主主義』である(その中で最良の方法でもある)」と勉強あるいは教育をし直した(己も含む)逃れられない定義が必要と考えられる。

コミュニストはいざ知らず、リベラリストの望む安定した政治システムは「論理・倫理・道徳に基づいた(地球規模の、もしかすると宇宙規模の)寡頭政治もしくは独裁政治」となるのであろうが、彼らが理想の指導者の範とするのであろう Mr. C の棺は蓋われ、 Ms. M の選挙は2017年に行われる。

鎖国政治が行われた(を行わされた、か)C国は「富の再分配」が破たんし、D国は原発を廃止しても、自らが主導するE連合の中の隣国のF国から原子力発電の買電をおこない、弱者を無制限に受け入れ、E連合に押し付けもした結末はどうなるのだろう。
(言わずもがなのA国とB国は省略)

そして許容し納得できる民主政治が行え、民主主義が浸透できる社会の規模や範囲はJ国ではどれくらいなのだろう。

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ベルトルト・ブレヒト(1898-1956)
ドイツ(第二)帝国(バイエルン王国)に生まれ東ドイツで没した。

16歳(1914)の詩作が残り、21歳(1919)で劇評や舞台劇の執筆を始める。28歳(1926)ごろから資本論に傾倒しマルクス主義者となる。(以下年齢は西暦下二桁 + 2 )

1933年に著作は発禁・焚書となりナチス政権による第三帝国(1933/1 - 1945/5)のドイツ市民権をはく奪され、欧州を転々としたのちソビエト経由でアメリカに亡命(1941)。

戦後アメリカでは非米査問委員会の審問(いわゆる赤狩り)を受けた直後(1947)に出国。フランス経由での西ドイツ入国は拒否されて、スイスを経てオーストリアに移り国籍を取得(1948)。

同年にチェコ・スロバキア経由で東ベルリンに入り劇作家、詩人として西側からも評価を受ける。

映画に一節を引用された『アルトゥロ・ウイの・・・』はナチスの勃興をアメリカのギャングの抗争に置き変えた舞台演劇。
(映画は西ドイツの小説からの脚色であり、こちらに引用されていたのかもしれない)

彼、マルクス主義者のブレヒトが宗教を認めない共産主義の原理派だったかどうかは分からないが、『雌犬』を処女懐胎の聖母マリヤに掛けた「キリスト教の文化」と読めないこともなさそうだが・・・どんなもんだか。

ちなみに共和党は、キリスト教色の強い保守政党とされています。

なお、同映画のドイツ語版では以下のようになっていました。英語ではわずかに脚韻の名残があるようだが、こちらではしっかりと頭韻、脚韻を踏んでいる。

Die Völker wurden seiner Herr,jedoch
Dass keiner uns zu früh da triumphiert-
Der Schoss ist fruchtbar noch, aus dem das kroch.
                                          Bertolt Brecht

ただ、原文からはかなりの省略があるようだ。

日本語訳は英語訳からであるがドイツ語ではどうなのか(少し違うようだ)、が解ればいずれ校正するつもりです。

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ここで紹介した映画は、技法も含めて従来の「劇的演劇」を否定したブレヒトが主張する「叙事的演劇」に近いと思うのですが一部の戦争映画フリークの間で「劇的演劇」的にしか評価されていないのが残念。

リベラル層の再評価を期待して、『後出しトランプの巻』 全二回 完

2016年12月11日 (日)

キネマ航空CEO 心情リベラルの憂鬱。 『後出しトランプの巻』全二回の前編

このタイトルも気が引けるが投票結果を受けての情報や論評で思ったこと徒然であります。

副題は「かなりの事は映画から学べる」(キネマ航空のコマーシャル)、として次回になります。

当CEO も、Ms.ヒラリー・クリントン(Ms.C)が僅差で「制」すると思っていた。しかし「征する」はあり得ない。

当CEO は Ms.C が大統領になったら、そうなったあとが恐ろしいと思っていました。アメリカの政治は Mr.O 以上に停滞したことは間違いない。

Ms.C が落選した理由は「ガラスの天井」とすり替えられつつあるが現実にはアメリカ人のリベラルの間にも厳然として残る愛国心である。

個人のアドレスをメール端末として国家機密を扱っていた政治家が、例えポピュリストと呼ばれ、シロート同然の政治家気取りを野(や)に置いたままで政治ができる時代なのか、はリベラル支持でもインテリならば十分に承知しているだろう。

日本のインテリの多数が脳裏に秘めている『マッチ擦る つかのま海に 霧ふかし 身捨つるほどの 祖国はありや』(寺山修司)は米国のリベラルの想う祖国ではないことは事実である。

FBI が選挙投票日の直前になって、僅かながらも Ms.C の優勢と伝えられた時点で 疑惑の再調査を行ったのも、個人のか、集団のかは、さておいて民主党の思惑ひいては政府の意思が働いたと考えていい。

かくかくにの思惑でジョーカーとして Mr.ドナルド・トランプ(Mr.T)を登場させた。1946年6月生まれだから70歳であり2期務められるかどうかは定かではない。

70歳を越えて就任した大統領はいない。もっとも近いのが69歳12か月の Mr.ロナルド・レーガンで、1期目の暗殺未遂を経験し再選、2期を全うして77歳12か月で退任した。

この後は政権与党となった共和党が自由主義の党としてのチェック機能を行使できるだろうか、または Mr.T をしてレーガン大統領の轍の上を歩ませるのか、が今後のアメリカの注目点になるだろう。

以上を前置き、として・・・

どうも日本のリベラリストの論評はアメリカに反発しながらもかつての映画、加えてテレビのホーム・ドラマで描かれたアメリカ社会を前提とした画面の外には存在しない民主主義の原理をリベラリズムとしているようだ。

日本のリベラリストからは民主主義(デモクラシー)の対義語として衆愚政治(ポピュリズム)というキーワードで語られる。

Mr.T の発言のうち TPP の未承認は日本のリベラリストからは歓迎されるはずだがそうでもない。

核の傘からの自立」は日本のリベラリストとしても望んでいたはずだがこちらもそうではない。アメリカとは自分から縁を切るのは良いが切られるのは嫌なようだ。

日本のリベラリストがよって立つ「民主主義」も、暗黙の、したがい個々にとってはそれぞれの定義、でしかない。

日本でもそろそろ「民主主義の定義」を実態に合った「身も蓋もないもの」に定義し直して再構築する時代に入ったと考えられる。

民主主義」の最小要素は個人の自由な生活である。だが、ただの主義だけでは生きていけない個人の生活を支えるのが「民主政治」となる。

したがい、「民主政治」の本質的定義は、「自分の思い通りにしてくれる代理政治」と言える。

有権者を煽動したのがジョーカー(Mr. T)であると定義しても(特に日本人の)リベラリストが選挙結果を衆愚政治と呼ぶのはいかがなものか。

選挙結果は、『選挙権のある生活(弱)者』の行動結果であることは「民主政治を実行する構造」そのものといえる。

選挙権のない日本人が投票した彼ら(衆)をおろか(愚)として蔑み貶める(さげすみおとしめる)ことが日本人のいう東洋の思想なのかを問い直さなければならない。

むしろ、ディベートの場に国家機密保持のルールに背いた政治家しか送り出せなかった政党の方を「大衆愚弄の衆愚政治」と呼ぶ方が正しいとも思える。

(実行されるべき)「民主政治」には、理想からもたらされる論理的、倫理的な補足の定義を多数存在させることでようやく(実行は保証されない)「民主主義」として成立している。

その定義自体の意義はともかく、実効性を失いつつある。

唯一の抑えは与党上下院議員の理性の数(多数決が民主主義を支える制度だからね)であろう。さもなくば・・・Mr. Jorker が書き換えた旋風予想天気図には吹く風、吹かぬ風があるはずだ。

吹かせられぬ風が、あるいは吹かせた風が、アメリカに時々起こる事件を引き起こさないと言えなくはないことはないのかあるのか。

多重否定の悪文だなー?どっちなんだ!
書いてる本人も分からなくなってきた。あとは読者の読み解きにお任せします。

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翻って「党議拘束」という知性を放棄した議員で支えられている「議院内閣制」の我が国ではどうなのだろう。我が国の「民主主義」は、はるかに高度な「大衆愚弄政治家」を選んでいる「民主政治」と言えそうだが・・・

『後出しトランプの巻』 後編に続く

2016年11月 9日 (水)

キネマ航空CEO 映画『ハドソン川の奇跡』を見る前、見た後のお勧めの一冊

前回 は映画『ハドソン川の奇跡』としての感想ですが、今回はイーストウッド監督の頭の中にはあったが映画では明確には表現できなかった、あるいは上映時間の中に描き切れなかったと思われるある事例を挙げた本を紹介しておきます。

墜落か生還か-緊急事態発生』(1992) S・スチュワート 著/十亀 洋 訳 講談社刊(2000)

墜落を分析した映画や本は数多くあり翻訳もされているが、本書は重大事故から生還したクルーたちの記録であります。我々はこのことを信じて航空機に乗ることができるのであります。

その中から、TWA841便の事例はイーストウッド監督に多大なインスピレーションを与えたと思われます。

1979年4月4日午後8時25分、JFKよりミネアポリス・セントポール・インターナショナルに向けて離陸した同便ボーイング727-100 は強い向かい風のため高度を 35,000フィートから39,000フィートに上昇した直後にオート・パイロットによる操縦桿が左に20度から30度に振れていることを同9時47分に視認してオート・パイロットを解除したと同時に右のスパイラル・ダイブ入った。

コックピット・クルー(スリー・メン・クルー)の回復作業により8,000フィートで制御を取り戻し3,000フィートで急降下から回復したが、今度は強い機首上げのまま上昇に移りストール・スピードに近づいてゆく・・・もちろん近くのデトロイト・メトロポリタン空港に緊急着陸したのだが・・・著者は英国航空の機長を定年退職し自ら起こした航空会社で機長を務める現役のパイロットであり下手な航空パニック映画より緊迫した空気を伝えている。

原因は右主翼にあるNo.7スラットの予期せぬ展開であった。当然NTSBの監察事案となりクルー全員に厳しい目が向けられる。コックピット・クルーによって意図的なフラップの操作が行われたとしてである。

727-100はジェットライナーとしては第2世代というより1.5世代であったようだ。つまりパイロットの技量で飛ぶ時代であった。

このため次のようなパイロットが使う裏技の噂(うわさ)があった。

727では(当然禁止されていたが)高速時にフラップを2度下げると高速飛行に適した翼型に近くなり巡航速度や燃料消費が良くなる。このためには前縁スラットの展開を止めるためスラット制御回路のブレーカーを人為的に遮断することが行われていた。

これが実行され、航空機関士がコックピットから出たときに残ったクルーがブレーカーを切りフラップを下げた。このあと戻ってきた機関士がブレーカーが落ちていることに気づき入れなおしたためスラットが出た人為的な事故である。

NTSBは航空機関士が直前にコックピットから出たという乗客の目撃証言を頼りにストーリーの肉付けを始める。・・・常識的に考えれば機関士もブレーカーが外されている理由は知っているはずであり二時間ドラマでは嫌疑を疑う探偵か刑事がいるはずなんだけど、ボイス・レコーダーの音声が消されているなどの状況証拠でさらに疑惑を深めていく。

もちろん並行して構造的な調査も行われたがスラットの不時作動が考えられる一連の構造の問題は過去にNSTBボーイングが実施した対策が完了していることから深く追及はされなかった。

唯一残る技術的な可能性であるNo.7スラットの作動ピストンとロッドがシリンダーから外れたケースは引き起こし時にNo.7スラットの飛散とともに部品は機体から外れて回収できなかったのでボーイングの部品試験のデータから否定されて可能性で終わった。No.7スラットの飛散で操縦を回復したのだけど)

NSTBの公聴会にクルーが呼ばれたのはボイス・レコーダーの消去を含む発生前のクルーの行動についての査問の一回だけでありクルーらが要求したすべて状況についての発言は拒否された

飛行試験は行われたがパイロットからは飛行特性が変わったと言われている727‐200が使われた。シミュレータによる実験では機長の対応が遅れたため回復の機会が失われたと報告書に結論付けられた。もちろん上記の想定化においてのシミュレートである。

ALPAAir Line Pilot Association 米国定期航空操縦士協会)から反論が出され、報告書には査問委員会を構成する三人の委員のうちパイロットでもあった一人からも付帯意見がつけられた。

発生から二年以上経った後に、疑惑を残したままクルーの三人は嫌疑不十分とされた。正副操縦士は業務に復帰したが疑惑の中心となった機関士は職を辞した。

その後ボイス・レコーダーの音声消去もスラットの不時作動も合理的な理由や関連するインシデントが実際に発生し部品や構造に疲労や腐食による機能不全が立証されている。

この本の発行された時点ではクルーの名誉回復はなされていない。

以上、航空機フリークなら興味のある細部もすっ飛ばしたので実際に本をお読みください(例えば、右主翼のスラットが開いたのにオート・パイロットは左翼を下げようとしたのか。なぜボイス・レコーダーの音声が消えたのか。NTSBが結論を変えるべき事例の数々とは)。図書館にあるはずです。

映画「ハドソン川の奇跡」の中でもサレンバーガー機長ALPAの担当者にNTSBの情報を入手するよう強く求めている場面があります。

NTSBが進めたTWA841便の調査のなかで最初にクルーを聴取した調査官が言ったとされる「もしクルーが過ちをしていないのなら727の耐空証明に疑いがかかる」という発言にすべてがかかっている。(著者は操縦士ですから事実認定は読者の判断にかかってもいます)

USエアウェイズ1549便はフランス製だけど、映画の中でもこのインシデントについてサレンバーガー機長ALPAの担当者が話をしているようだったが当CEOは聞き取れなかった。昔なら居残れたのだけどね。いずれDVDになったら確認してみます。

2016年11月 1日 (火)

キネマ航空CEO 映画館に『ハドソン川の奇跡』を観にゆく

2016.11.3 以降に校正と加筆(青字)を行いました。よろしければ再読を。

イーストウッド監督が脚本の下敷きにしたと考えられる1979.4.4 に TWA841便で発生したインシデントで最初は称賛されながらNSTBに追及されたクルーがありました。疑惑は残されたまま嫌疑不十分とされましたが後日判明した事例によっても再調査は行われず名誉回復もなされませんでした。 こちら をご参照ください。(2016.11.9に追記)

原題は“Sully”だったが邦題は航空機ファンを当て込んでいるようなので実話の背景詳細は省略。

サリー」は、バード・ストライクによるUSエアウェイズ1549便の不時着水事故時(2000/1/15)の機長のファミリー・ネーム「サレンバーガー」を短縮した愛称。

本人の気持ちとは裏腹に「ハドソン川の奇跡」の英雄と祭り上げられた機長がNTSB(国家運輸安全委員会)より事故原因追求の過程で機長としての判断や行動を検証され追求されることになります。

主題は、追求される側の「サリー」がハドソン川への着水を選んだ自分の判断は本当に正しかったのかどうか苛まれることに焦点を当てて進みます。

ここではNTSBは典型的な悪役(ヒール)を割り当てられています。アメリカ映画には必須の憎たらしければ憎たらしいほど正義を際立たせる、役者としては美味しい役回りですけどね。

まあ「サリー」や観客の視点からはそうでしょうが、航空機に限らず事故のヒューマン・ファクターの要素は必ず検証されなければなりません。この点では日本は直接運航に携わる個人に甘すぎるようです。

では以下、映画としての感想のみ。

冒頭、実写によるニューヨーク・ラガーディア空港からの離陸に続いて、キャビンに視点が変わりバード・ストライクの瞬間(飛蚊症のようですが実際にこんなものかもしれない)からいかにもCG感いっぱいでエンジン二基の出力を喪失したエアバス A320-214 が黒煙を引きながらニューヨークの市街地上空を滑空する場面から始まります。

しかし、もう少し陰影のあるというか被写体との間にある空気を感じられる映像にならないかと、なんともチープな印象に感覚的に落ち込んでしまうイントロです。

いっぽう作劇術としてはクライマックスとなる事故の公聴会へ収束していくのですが、これが実話か、と疑いたくなる構成です。

公聴会でのNTSBの論旨はエンジンが作動していたかどうかのミッシング・リングとなるNo.2 エンジンが回収される前の予測に基づき、幾つかの空港への緊急着陸の可能性を示唆するシミュレーションの結果と着水によって生じる乗客への危機誘導という二者択一の選択が必要な1分21秒間にコクピット・クルーに生じたコンフリクトを追求したものでした。(『クルーの間』のコンフリクトではないのが救いです)

NTSBの聴聞の要旨は、緊急時のマニュアルの手順を飛び越えてAPU を作動させた機長の処置の前まではNo.2 エンジンによって油圧と電力を供給できていたため操舵が可能だったと判断した。このためNo.2 に僅かに残っていた推力で空港に緊急着陸ができた可能性が存在したという推測が成立することの検証であった)

追求するNTSB の委員に対して本当に「サリー」自身の弁舌で自分の判断の正当性を論証してボードとなる委員に認めさせていたのか、またその直後その席で追求していた委員の口からNo.2 エンジンの回収と確認結果が公表されるなどNTSB 側は聴聞時に事実を隠した論理の展開を映画のような手口で行っていたのかどうか、たった一回の公聴会の中ですべてが一連の謎解きにショーアップされて行なわれたのか、など実話をうたう脚本としては破たんに近い劇的構成が目立ちます。

まあ、アメリカは国家や組織が事実を隠して押しつける個人の責任というスケープ・ゴートを必要としているという国なのかもしれませんが・・・監督がこの映画でそれを見せたかった、のかな?・・・までは想像はできますがこの描き方ではよくわかりません。(丹念にアメリカの批評を読まなければなりませんが当CEO はパスします)

現実の事故の結果ではサレンバーガー機長がマニュアルの手順を踏まずにAPU を起動するなどの一連の判断と処置は正しかったのですが、それにしても、映画としては「サリー」を演じた名優の名のあるトム・ハンクスによって成立する個人対多数の裁判劇としてのアメリカの正義に焦点を当てたC・イーストウッドらしい愛国映画のよう(な実話のようなフィクションの娯楽映画)に見えてしまいました。

(機長が遵守しなければならないマニュアルは高高度での全出力の喪失を想定しており、停止したエンジンの再始動が優先されAPU の始動は一番最後に書かれていた。NTSB がエンジンの一つは動いていた可能性と機長の判断にこだわる理由の一つ。ただ事故は離陸直後の極低高度で起こったことは言うまでもありません)

トム・ハンクスと言えば当キネマ航空 900便で上映中の『プライベート・ソルジャー』の中で比較している『プライベート・ライアン』にも出演していますがスピルバーグ監督も同じようなアメリカを象徴する男を演じさせています。(昔のようなハンサムなスターではないところが新しいといえますかね)

これまでの名優で描かれた対立を主軸にした映画では、(ハンサムとは言いづらいが)密室での個人対多数の関係を丹念に描いたヘンリー・フォンダの『十二人の怒れる男たち』(1957、初出は1954のTVドラマですがこちらは未見)。

個人対集団の対決とそれを取り巻く群衆を冷徹に(個人を支持していた群衆も次第に消極的になり背を向けていくなかで)孤立した個人を描いた、かつてはハンサムだった初老のゲーリー・クーパーとグレース・ケリーの『真昼の決闘』(1952)。

・・・などに比べると、本作『ハドソン川の奇跡』こと“Sully” (2016) は、個人vs国家 の対決でありながら、そこに描かれた大衆は、いとも軽く(能天気に)個人を支持して喜んでいるという英雄待望のフィクションとしての政治映画ともいえます。

このあたりにイーストウッド監督のシニカルな面が少しは出ているのでしょうか。そういえばストーリー上では不要なTVレポーターの正義派ぶった発言のシーンも挿入していました。

もちろんエンド・ロールの前に「サリー」本人の実写映像を流してアメリカ映画らしくハッピーに終わってはいるのですが、映画を透かしてみるアメリカの本当の現実はどうなんでしょうね。

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実話を売り物にした(特に戦争)映画やCGものがあまり好きではない当CEO の運営する航空会社で航空事故の映画を上映するのもいかがなものかとは思いますが、

キネマ航空 009便では、『フライト236』、『フライト』、前者は実話ベース、後者は実在の事故の原因を換骨奪胎したフィクションを扱っています。

また、アーカイブスの中では『ジェット274』があります。こちらは事故機の機長の妻の話で、パン・アメリカン機の爆破テロがモデルのようですがフィクションです。

お時間がありましたらご搭乗、ご来訪ください。

当CEO は、こちらのほうが時代とともに変わる映画としての正統のように思えます。

なお、サレンバーガー機長は、実話とかフィクションとかにかかわらず前二者の映画のようなパーソナリティではない、真摯な人柄であることは、ゴースト・ライターの作かもしれませんが自伝とされる、

機長、究極の決断 「ハドソン川」の奇跡 “Highest Duty”』(2011)C・B・サレンバーガー著、十亀 洋訳 青山社文庫刊

にてご確認ください。どちらに優劣をつけるのでは決してない、映像と活字の情報を受容する訓練と実践です。

なお、この本ではAPU の起動は記載されていません。

NTSB の報告書もあるはずですが未見。機会があれば補足します。本当は読んでから批評すべき、と思うのですが。

2016年10月24日 (月)

キネマ航空 CEO GTF の GB(Gear Box)の減速比に迫ってみる。

2016/11/13 一部赤字にて修正しました。確認不十分をお詫びいたします。

一般に 3 と言われている減速比の検証です。合っているかどうかは終わりの方に・・・

ギヤード・ターボ・ファンのギヤ・ボックスの構造もオスプレイのプロップローターのヘッド並みに登場する機会が少ない。

これは、シアトル・タイムズの記事のイラストでギヤ・ボックスの構造が何となくわかる。

しかし、エンジン本体のカット・アウェイ・ドローイングは、ごく初期のP&W プレス・リリースらしく、スプールの構成は 1-G-3-6-1-3 で、現在公表されている 1-G-3-8-2-3 の配置とは異なっている。

Mainqimg9c768bb245a528c0b5a4b6a6746

P&W ピュアパワー・シリーズは三つのファン直径(56、73、81インチ)、三つのバイパス比(9:1、12:1、12.5:1)で構成されており、おそらく三つのコア・エンジンを持つと思われる。

                                            P&W PW1000ファミリー

 静止出力 klb   15●17●19●21、22、23、24、25●27、28●●31●33●35
 ファン直径 in 56 ○  ○ 
           73        ○  ○ ○ ○ ○ ○ 
           81                  ○     ○  ○    ○  ○  ○
 バイパス比  9:1 ○  ○
         12:1             ○  ○ ○ ○ ○ ○
        12.5:1                 ◎     ◎          ◎  ◎
                ●:欠番   ◎:エアバス発注仕様
      この疑似テーブルはファイアフォックスとサファリでは正常に表示されません
      RSSのフィードでも同様です

      スマホ、タブレットでの確認、致しません!

したがい、常識的には三種類ないし二種類のギヤ・ボックスが設定されていると考えられるのだが、そのあたりは定かではない。

それにしても、エアバスは主導するフランスの天邪鬼ぶりが表れている。これは次々回あたりのネタになりそう。

内部構造のわかるギヤボックスの画像はWEB 上にいくつもあるが使い回しのようだ。通覧した画像からはどの直径のファンを駆動するのかは判らない。

Pw1000gpurepower_enginepwgtffandriv

A ギア・ボックスを内側を見たところ

・中央にサン・ギヤ(太陽歯車)Zs : 34 枚
・外側にリング・ギヤ(内歯車)Zr : 96 枚
・中間にプラネタリー・ギヤ(遊星歯車)Zp : 31 枚
 軸を支えるキャリヤの反対側にも軸を共用して同じ歯数の遊星歯車があり歯車の歯に掛かる力を半分にする
 キャリアの両側に捩れの角度は同じだが方向が逆のハスバ歯車を採用して噛み合う歯数を増やして騒音を抑え、噛み合った歯に掛かる応力を減少させて強度や寿命を向上さている。併せて、ハスバ歯車で生じる軸方向の力の向きを対向させてケースに掛かる力を打ち消している
 歯車列の設計では噛み合う歯数の最小公倍数を最大にするのがポイント。遊星歯車に 31 という素数を使ってきちんと守ってますね

Pw_1000gpurepower_fan_drive_gear_sy

B

ACD と同じ型式サイズのギヤボックスかどうかは不明

内歯車の突び出し具合からすると上の写真の反対側から見たところ

5本の(うち1本は外されている)パイプはプラネタリー・ギヤの軸を支えているベアリングの潤滑油の配管だろう

細かい話は最後の「閑話は続くよどこまでも」で・・・

Pw1000gpurepower_enginepwgtffandr_2

C

WEB上では、他にもいくつかの写真があるのだがほとんどが同じ写真かそれに回転や反転、背景を消す処理を加えた画像だった

これと下の画像 D は、A と同じ展示モデルを別の機会に別の方向から写したようだ

D

C の鏡面対称だが歯車の位置や回転角度が微妙に違う

なお、ここに掲げた歯数を数えられる 3 枚の画像の歯数は同じでした

Mroeng_2014_gallery07_s

さて、遊星歯車列としては一番単純な形式である。機能させるためには三つある歯車の回転軸に入力軸、出力軸、固定軸を割り当てなければならない。

減速機として働かせるには次の二つの方法がある。
遊星歯車について詳しくは知るには こちら で)

・太陽歯車を入力軸にして、内歯車を固定軸に、遊星歯車のキャリヤを出力軸にして正回転を取り出す。
・太陽歯車を入力軸にして、遊星歯車のキャリヤを固定軸に、内歯車を出力軸にして逆回転を取り出す。

ほかにも、二軸を入力軸、一軸を出力軸にすることもできるが出力が減少する動力循環になることもある。イラストを見る限りではそれほど複雑な構造は採用していない。

余談となるが、入力軸を一軸、出力軸を二軸にする構造もある。自動車では傘歯車で構成される差動装置(デファレンシャル)として必須な構造です。これはコントラ・プロペラで採用される機構となります。ジェット・エンジンではもっと単純な構造もあります。ヒントは以下の説明のなかに・・・今のところ成功していないけど。

ここで、MRJ エンブラエルが採用する二段の低圧圧縮段を持つ PWxx15PWxx17 タイプのカット・アウェイ図を参照する。スプールの構成は 1-G-2-8-2-3 です。

Pw12xx_sファンは正面から見て反時計回りです。(これは、実物の写真からも確定できる)

いっぽう、ファンを駆動する低圧タービンは時計回りであることよりギヤ・ボックスの機能は出力軸にあるファンが逆転する後者の構成であることがわかる。

(減速比は前者の設定の方が大きくできる。後者を選んだのは軸を支持する構造の簡便さからと考えられる)

ちなみに、高圧段は反時計回りなので、高低圧段の二軸で構成されたスプールは逆回転タイプです。
既出の 三段低圧圧縮段の図からも同様の結論になります。というより高圧段圧縮機以降は同じ画像の右半分は使い回しのようだ)

さて、このギヤード・ターボ・ファンのギヤ・ボックスの構造では、遊星歯車は遊び(中間)歯車としての逆転機能なので(遊星が公転する厳密な)遊星歯車機構ではありませんがパッケージとしては同軸でコンパクトにまとめることができます。

で、バディとなる三種類あるファンの径はどれだか、はっきりしないものの、
   減速比 = - (内歯車の歯数)/(太陽歯車の歯数) = - 96/34 = - 2.823

(-)は逆回転を示します。四捨五入で (-) 3 ですが技術情報としてはどうなんでしょうね ?

2017/02/17 追記 ファン径 81inch のギヤボックスの減速比は 3.0625 であることが確認できました。詳細は こちら

「閑話は続くよ、どこまでも」・・・

先の画像 B はギヤ・ボックスを後方から見ている。中ほどの穴の中に見える歯車状のスプライン(軸)は遊星キャリヤをコア・エンジンの筐体に固定された中空軸に勘合させる。
(スプライン:軸の回転を直線で伝える歯車状の軸と穴からなる軸接手)

その中空軸の中を低速タービンから伸びた駆動軸が貫通し太陽歯車を駆動する。

大きな内歯車状のスプライン(穴)は内歯車と一緒に回転するギヤ・ボックスの(多分潤滑)構造を構成する壁面の勘合部と思われる。

ファンの駆動は画像 CD で見られる外周にあるスプライン(軸)で勘合するケースが遊星歯車機構を外側から覆い、最上段のカット・アウェイ図に示されている「GEARBOX」と吹き出されたイラストのケース先端部にあるボスにファンのハブを取り付けておこなう。

結論から言えば、P&W が開発したギヤード・ターボファン・エンジンである ピュアパワー のギヤ・ボックスの構成は、1970 代から実績を重ねている静止推力が 7klbf 級の基本レイアウトを踏襲している。

そのロール・モデルは、小型ビジネス・ジェットに向けて ギャレット・エアリサーチ TFE731 として開発・量産化され成功し、ライカミング、アライドシグナルを経て現在はハネウェル ALF 502/LF507 と変遷しながら継続している。

実用化されたギヤード・ターボ・ファンの系譜は上記になるがギヤ・ボックスの変遷はいくつかあることが分かってきました。このため以下を見え消しとして詳しいことが分かり次第訂正いたします。ご迷惑をおかけして申し訳ありません。

 こちらの遊星歯車は捩じれ角の小さいハスバ歯車を 1 列 4 個で構成されているが、ピュアパワーは捩じれ角の大きい対抗するハスバ歯車を 5 x 2 列 10 個で高出力に対応している。

ごく初期のギヤード・ターボ・ファンの詳しい構造図は見つからなかったが技術史としてはターボ・ジェットの創生期から考えられており、遊星歯車を使った二種類の減速機にそれぞれ取り組んだ開発の先行例は数多くある。

(閑話休題・・・やっとね! )

次回はこのギヤ比がどう貢献するのについて考える。

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