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2012年6月 6日 (水)

キネマ航空CEO 葉桜の候にさらに物思う

承前 ・・・ キネマ航空CEO 葉桜の候に物思い、俳句をひねる

臼淵大尉の「進歩」とは何を指すのだろうか?
作中では戦艦対航空機の戦闘における対空兵器の劣勢のようにも読める。「新生日本」については具体的な憶測もできず永久に知ることはできない。

臼淵大尉は後部副砲指揮所で爆弾の直撃を受け血の一滴、一片の肉片も残さずその精神、心情と共にこの世から消えている。
しかし彼のことばは経済成長と共に勝ち得た精神的な心情が直面する「日本」の停滞と既得権の蔓延と、その行く手を憂べき世情に痛切な響となって重なってくる。

「進歩」については「兵器」とは離れて「新生日本人」と考えれば今と十分に重なる。
「新生日本」は「日の丸」や「君が代」を否定するものではなかったろう。 いったいどのようなものであろうか?

これまでの勝ち戦といえども戦場の惨禍を経験した海軍軍人が非戦の思想を持った例はあった。 しかし、ここから憲法九条に敷衍するには無理がある。

臼淵大尉(戦死により中佐)は当然のことながら二度にわたる原子爆弾の惨禍やソ連の参戦さらには大陸における日本軍の行為など知る由もない。いまとなっては同じ戦場から生き残った吉田満の著作「臼淵大尉の場合」から慮(おもんばか)ることになる。

二人の相違は同年の生まれであったが吉田満は早生まれの22歳、臼淵巌は21歳であり、そして中等学校卒業後の進路の差であった。

随筆や論評と括(くく)るには重い吉田満の著作は「戦艦大和ノ最後」、「祖国と敵国の間」と共に次に収められている。

「鎮魂戦艦大和」 吉田 満 1974 講談社

吉田満の著作は戦勝国アメリカに加えて、左からは好戦文学として、右からは特に初稿の末文を改稿したことで精神的な転向として、生還者からは(意図的な)風聞の寄せ集めとして批判の対象になっている。詳細は次の著作が参考になる。

大和の最後、それから 吉田満 戦後の航跡 千早耿一郎 2004 講談社

臼淵大尉の言う「進歩」については、はたして出撃前夜の臼淵大尉の発言かどうか、さらには吉田満の創作ではないか、との疑義もある。

しかし、その「進歩」は次のようにも読める。臼淵大尉の父君、臼淵清忠中佐は海軍機関学校出身で艦船から航空機を発進させるカタパルトの権威であった。そして「大和」の構想が始まる時期に航空優位の論文を外部に公表したことで記録として残る軍法会議を避けた退役の処分を受けている。

そしてその子息は航空優勢が明確となった時点で「大艦巨砲」の象徴である「大和」乗り組むことになった。あまりにも皮相な解釈かも知れないがその胸中を横切った父君への想いを重ねた苦渋ともとれる。

戦争で死ぬということ(1923.8.22-1945.4.7)、生き残るということ(1923.1.6-1979.9.17)、とはそういうものである。そのことを書物でいいから一度は経験すべきである。

そして、読んだからといって結局は何も分からない。読んだもの自身の生き方が結論となるのであろう。

ただ一つ学べたことは「戦争の終わらせかた」である。

太平洋戦線の政治的終結は鈴木首相、米内海相などの海軍のラインによる工作で昭和天皇の聖断に持ち込んだ。 このためか陸軍に比べ海軍に対する世評は高い。「スマート・ネイヴィ」と呼ばれることもあるようだが形容詞の「スマート」には「要領のよい(小ずるい)」の意味もある。

海軍は兵器オペレーターの集団である。海軍は役にたたないと分かっていてもオペレーターの扱う兵器がある限り戦争の終結を言い出すことはできない。
この点では臼淵大尉は冷徹に戦争そのものを見通していたと思える。

海軍は多くのオペレーターを兵器と同時に失う作戦を行い、そのために空中、海上、海中の多くの簡易兵器を製造し実戦に投入した。

陸軍は竹やぶがあればオペレーターにも武器が作れる、あるいは作らせることができる。しかし海軍では武器を作るためには、用兵者とオペレーターの中間に設計者、製造者が必ず存在する。

もともとは「櫻花(おうか)」という航空機について稿を続けるつもりであったがその季節を逸したようだ。いずれ稿を改めたい。

一旦 了

P.S.

原子力村に限らず、何々村と呼ばれる現代の閉鎖社会の核となるのが「官僚の無謬性」と「工学技術者の無名性」なのではなかろうか?

もちろんその周囲をユーザーと呼ばれる受益者が包みこんで成立していることは間違いないのであるが、その社会構造と心理構造をブログで書くには時間がかかる。

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