無料ブログはココログ

« 【番外編】キネマ航空CEOのパジェット癌闘病記(2)軍事的に見たばあい | トップページ | キネマ航空CEO まずオスプレイの輸送機としてのベンチマークを考える »

2012年9月14日 (金)

【番外編】キネマ航空CEOのパジェット癌闘病記(3)患者の正しい?病室の過ごしかた

さて、入院闘病は多くのスタッフに支えられて生活することになります

当CEOの場合は皮膚ガンからはじまっており形成外科病棟に入院することになります。形成外科は PLASTIC SURGERY(可塑性部外科)であり、いくら人間の尊厳は内面であるとはいえフツーの人間にとっては外観は人間のプライドの始まりとなります

その点では形成外科は人間にもっとも近いところにいる外科といえそうです。病棟の看護師さんの言では形成外科の先生の手術痕は他の外科に比べると繊細に処理されているそうです

かくして当CEOは主治医のM先生、F形成外科長、N先生、M先生、I先生、Y先生のチーム、それ以上にY看護師長以下の(人数は正確には分かりませんが)看護師、看護助手数十名の中で随時編成される、三勤+当直のチームが交替しながら24時間サポートしてくれます。

それにこの病棟フロアはあまり関連のなさそうな医科のベットが混在しており、看護スタッフを束ねるY師長に「この病棟は雑居房で大変ですね。救急患者の受け入れはさしずめ未決房だ」といささか失礼な問いかけをしたところY師長は「そーなの、雑居房なの。大変なのよ。それに今日は救急担当(病院)の日なの。もう一人運ばれてきてる」と応えてくれました。救急処置の終わった患者を受け入れる病棟ベットのやりくり差配は師長の重要な仕事のようです。

大病院の医師や看護師のみなさんの勤務は開業医院の優雅な診療とはかけ離れたハードな日常が垣間見えます。ドクターとして持たねばならぬ職業的非情さ、看護師としての知識・教養に加えての忍耐力。一患者としては言葉にならぬあらゆる形容詞をつけて、ただ「感謝」というのみです。

それにしても患者というものは退屈なものです。その時間をどう過ごすか?が患者の大命題となります。そこで思い出すのが英国の小説家サマーセット・モームの「アシェンデン」ものと呼ばれるあまり有名ではない連作短編スパイ小説です。

舞台は第一次大戦中のスイスのサナトリュウム。この結核隔離療養所がドイツ帝国側の諜報組織の情報中継所となっている疑惑を調べる目的で英国情報部は売れない作家のアシェンデン(作家のモーム自身)をスパイとして送り込む。

アシェンデンは患者(間者?)として潜入して当時としては不治の入院患者とその訪問者や見舞客、医師、看護婦等の病院のスタッフや経営者などの人物を観察することでスパイの仕事を進めます。しかしスパイは気は張り詰めていても現実には退屈な仕事です。これを実行できるのが英国人のようです。

アシェンデンは諜報の仕事にはなんの関係のないそれぞれの人物の人生を絡めたエピソードを重ねながら以外な人物をあぶりだします。事前に読むか病室に持ち込めば「退屈も我がもの」にできるかもしれません

まことに失礼ながら日々入れ替わる患者さんや見舞い客を観察しながらそれぞれの来し方行く末の人生を想像することでかなりの時間はつぶせます。とはいえ病院の患者ですから決してすべてが楽しくなるものではありませんがどこかの岐路の選択でそうなっていたかもしれない。あるいはこれからそうなるかもしれない人生を脇から見るわけですから自分を映す鏡といえます。

ただモームほどの文才、筆力のない当CEOがブログに書くと見当違いの人生をつくりだしてプライバシーの侵害になることは間違いなく厳に自粛いたします。

さて最後に入院中にこころに浮かび留まった言葉をいくつか紹介しておきます。

頑張る(れ)』・・・「トイワレテモ」

色んなところでかけられます。鎌田實先生は「がんばらなくていいんだよ」といってくれますが具体的にどうすればいいのかよくわかりません。特に全身麻酔の手術前に言われても当人はどうしようもありません。たぶんスポーツをはじめとするどんな場面でも「頑張れ」と声をかけられる人に対してよりも声をかける本人が自分のために発しているようですね。

当CEOの語源の解釈でもっとも気に入っているのは「我を張る」からの音の変移であります。「我侭」と「我慢」の間に揺れる自分の意識を弓の弦(つる)のように張って行動することと解釈しているのですが・・・我流ですかね。まあ弦も切れることがありますけれど・・・ただ一流と呼ばれる人たちは切れた弦の張替えが巧み・・・と言っていいように思えます。

なるようになる』・・・「ケ・セ・ラ・セラ」?

「なるようにしかならない」と考えはじめる年齢もあるようです。しかし生き物にとっては年齢に関係なくいつでも「なるようにしかならない」ことを迎える可能性があります。そうなるまでに「なるようになる」毎日毎時毎分毎秒の連続があります。その過程を楽しむのが大切です。

ひとそれぞれの運命は「自由意志説」か「予定説」か、と大上段に振りかぶって考える機会にもなります。突き詰めて宗教にまで行きつくか、占いに頼るか、それこそ「ひとそれぞれ」ではありますが。

人間は考える管(くだ)である』・・・「人生ハイガイトタンジュンダ」

もちろんパスカルの「人間は考える葦(あし)である」のもじりであるが、どこで記憶したのか定かではありません。人間は「食べて」「排泄」する「管」と「何かしら」を考える「脳」があると定義しています。たしかに人間は入院していると食事の心配はなく「動物」のようにえさを獲る必要はない。

看護師さんは毎朝の検温のとき「食事はどれくらい食べられましたか?」「お小水とお通じは何回ありましたか?」「痛いところはありませんか、気になるところありませんか?」とたずねてくれます。この人間の定義を確認してくれているのですね。

何事も片手伸ばして四畳半

一週間もすると小さなベット・ブースのテーブルの上に日常必要な小物を並べて(整理ではありません)生活できるようになります。いざとなれば片手で届くナース・コールのボタンを押して看護師さんの助けをかりることができます。

松葉杖四本(よんほん)足をもてあまし

右ソケイ部をかばうのであるが前進、後退、方向転換と、どの足から出すのか意外と難しい。

病院食腹八分目の日暮れかな

季節も移り夕食が終わるころには日が落ち、窓のそとの民家には灯りがともり始めています。

天使にも鬼にも看られる患者かな」・・・字余り

自分を変えない患者。世間を持ち込む患者。患者もさまざまです。その患者のために最善の処置に看護、院内生活指導をしていても患者にとっては鬼に見えるときもあるようです。かれらも退院するときには天使の皆さんに感謝して去っていくのでしょうけれど...

ストレスの溜まる職業であることは疑いようもありません。家庭に持ち込むことのないように感情をコントロールする教育課程があるのでしょうか?ぜひ履修させたい人が一人いるのだが...

水枕三鬼の脳を支えけり

西東三鬼の句、「水枕ガバリと寒い海がある」より。

病院の枕はビーズ入りで頭になじみ過ぎて苦痛である。術後の発熱時の氷枕を思い出し看護師さんに水枕をお願いしてビーズ枕に重ねている。

水と空気の配分でまさに「ガバリ」となって以降、看護師さんの「替えましょうか?」のご好意に首を横に振って「ガバリ」と音を立てながらお断りしているが気づいていただけたかどうか・・・

Y師長さんに「ウォーター・ベットはないのですかねー?」と尋ねたところ「部分アクアならうちにもあるわよ。本格的なのはICUに一台。ここには回ってこないわよー」とのこと。どうやら三鬼の句を越える名句はできそうにない。予定句はつぎのようなものだったのだが。

水の床(とこ)海月(くらげ)は毒を抱え居り

くらげは潮に流されたのか自分の意思で漂っているのか。ただ生きてきた時間に比例した毒を心をもっている。観察句なのだが自分にはないとも言い切れない。

天国(びょうしつ)の硝子越しなる芝生かな

読む句になってしまった。天国は暑くもなく寒くもなく快適なところだそうだ。病院も同様に過ごし易くなっている。しかし天国と同様に簡単には外に出ることは叶わない。天国からも下界の芝生が緑に見えるのだろうか?

現実には病室にも差があり、とくに大部屋では窓側、廊下側では飛行機のシート以上に差がある。季節にもよるがなるべく高い階の北側にある見晴しのよい病室の窓側がよさそうだ。

---------------------------------------------------------------

参考になる闘病記にはなりませんでしたね。しかし、闘病とは他人から見ると下らぬこと、つまらぬことにいかに熱中できるかということのようです。

またこの闘病記では意識して家族のことは書きませんでした。節目の決断においては家族のことを考えていることはあたりまえですが、こと闘病に関する限りは自分が明るく闘病していることを示すことが何よりと考えます。

一旦 了

起筆 2012年8月24日

擱筆 2012年9月 5日 入院2ヶ月目のメモリアルとして

« 【番外編】キネマ航空CEOのパジェット癌闘病記(2)軍事的に見たばあい | トップページ | キネマ航空CEO まずオスプレイの輸送機としてのベンチマークを考える »

心と体」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/570012/55656553

この記事へのトラックバック一覧です: 【番外編】キネマ航空CEOのパジェット癌闘病記(3)患者の正しい?病室の過ごしかた:

« 【番外編】キネマ航空CEOのパジェット癌闘病記(2)軍事的に見たばあい | トップページ | キネマ航空CEO まずオスプレイの輸送機としてのベンチマークを考える »

2017年4月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30