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2012年10月29日 (月)

キネマ航空CEO プロペラの勉強をする

プロペラと共に航空機の動力発生メカニズムであるジェット・エンジンのモーメンタム(運動量)理論による推進効率について 「MRJ」 のカテゴリーの中に連載を始めました。ご期待ください。(2012.12.05 追記) / 同カテゴリーにプロペラの翼素理論の入門編とセスナ172を対象とした翼素理論による推進効率の検証を行っています。(2016.06.22 追記) / 翼素理論と運動量理論 のグラフによる比較検証を行いました。(2016.08.29 追記)

Twisted_stream_2  プロペラで後方に送り出された空気はよじれながら、そしてプロペラの径よりも小さくなる収縮流となって後方に流れ去る。航空機は上昇気流に頼ることなくこの空気流によって水平に飛行したり上昇したりもできる。

 これまでの固定翼機のベンチマーク比較では力の釣り合いのみを考えていた。

 この場合に使った数値の単位はSI単位系(物理単位系)の質量(kg)、長さ(m)、時間(sまたはsec)と力(kN)に加えて重力単位系(工学単位系:カタログに使われるのはこちら)の重さ(kgf)や力(kgf)と整合させるための重力加速度(m/s2)を使うことでこと足りる。

 前回の「固定翼機のオスプレイはどうよ?について考える(その3)」のオスプレイのフライング・モードの図のように固定翼機では機体が浮いているにはプロペラに「十分な推力があれば」という仮定で話を進めることができる。さらに沈下を伴なう滑空ということを考えれば自重で「十分な推力」を得ることができる。

 ところが回転翼機の場合は先のモード図の中央のようにローターの推力(T)が揚力(L)と前進力(F)の両方を受け持つ。

 オスプレイのローター・ブレードの寸法は長さ4.90m、弦長は基部で0.871m、先端部で0.669mであり、ブレード一枚の面積は3.77m2なので、これがエンジン一基あたり3枚、それが二基ということで22.6m2となる。

 垂直離陸(VTO)時の最大離陸重量での翼面荷重に換算すると1055kgf/m2、空虚重量では665kgf/m2となる。固定翼機の1.44から1.67倍、ざっと1.5倍の翼面荷重は固定翼機の速度に相当するブレードの回転速度で得られる揚力で補償されている。

 つまりヘリコプターの釣り合いは前提としてオートローテーションを含めてローターが回転していることが必須である。

 言い換えるとローターやプロペラの推力(T)は力(kNまたはkgf)と同時に特に回転翼機では仕事率(kW=kNm/s)として時間を含めて考えなければならないことを示している。

 さて回転するローターやプロペラのブレードは翼型の断面形状であり固定翼機の主翼と同じ原理が適用できる。

 しかしブレードが切る対気速度が断面位置の半径で変わるということは長いブレードの全長にわたって一定のねじれ角の翼として設計するとブレードの外周に向けて速度(半径)の二乗に比例して揚力が増加する。

(正確にはプロペラの回転速度とともにプロペラの回転面が進む速度(速さと方向)が関係する。詳しくは後ほど数式で・・・)

 結果としてブレードにかかるモーメントは増加するので強度を増やし、ひいては重量を増してしまう。

(またまた余談ながら、ヘリコのローターのばあいは遠心力と揚力をバランスさせ、駆動軸とはヒンジ〈蝶番〉でつないで揚力による曲げモーメントを消している・・・この説明は別の日に掲載)

 さらには長ーくて速度の速いブレード端に生ずる大きな圧力差による誘導抵抗で効率は悪くなる。

 そこで速度の遅い付根寄りの迎え角を大きくして先端に向って迎え角を小さくするいわゆる捻り下げが行なわれて、ブレードの全長にわたって揚力の大きさを平均させるようにしている。

 これらを前提に推力を計算する方法が「翼素理論」と呼ばれる。いうまでもなくこの論理や理屈はCEOの手にあまる。ホントは頭が付いていかないだけ・・・だけどね。(興味のある方は ここ から始まる連続 4 回の連載をご参照ください)

つまりは固定翼機の翼面荷重と回転翼機のブレード翼面荷重を比較するのは容易ではない。回転翼機のばあいはローター回転面(ローター・ディスク)面積荷重で考えることになる。

 そこで同じ事象を扱う結果オーライの強い味方「運動量モーメンタム理論」がある。

 こちらは(質量はあるが大きさがない)質点を扱う、
ニュートンの運動の第二法則
  「運動量(kg・m/s)の時間変化率は力に等しい」
ベルヌーイの定理
  
「非粘性・非圧縮性流体の定常な流れの流線上ではエネルギーが保存される」
の、二つの理論で定量的に解くことができる。

Momentum_theory_2 まず「ニュートンの運動の第二法則」から 「プロペラで作られる推力(kN = kg・m/s2) はプロペラを通る質量流量(kg/sec)に速度の変化量(m/sec)を掛けた値である」と定義される。

 m(kg/sec):流量質量
 ρ(kg/m3):空気密度
 A(m2):プロペラ回転面の面積
 V(m/sec):プロペラの進行速度
 ⊿v(m/sec):プロペラ回転面通過時の流速増分
 v'(m/sec):プロペラ後方での流速増分

 として、プロペラ回転面を通る質量流量は、
  m = ρA(V+⊿v)

 

 続いて推力Tは、質量流量と加えられた速度の積なので
  T = m(V+v'-V)=ρA(V+⊿v)v' ・・・(a)

 

 いっぽう、その推力はプロペラ前後の圧力差からも求められる。
 P0(kg/m2):大気圧
 P1:プロペラ回転面通過前の圧力
 P2:同通過後の圧力より
  T = (P2-P1)A

 つぎに、一連の流線は連続しており、プロペラの回転面をさかいにして、その前後で「ベルヌーイの定理」による二つの式が成立する。
  P0+ρV2/2 = P1+ρ(V+⊿v)2/2
  P2+ρ(V+⊿v)2/2 = P0+ρ(V+v')2/2
 より
  P2-P1 = ρv'(V+v'/2)

したがい、

  T = ρAv'(V+v'/2) ・・・(b

 (a)(b)両式より、
  v' =2 ⊿v

 よって、プロペラが作り出す推力は

  T = 2ρA⊿v(V+⊿v)

 この推力は重力(機体重量)や抵抗と釣り合っていますから⊿v を計算できます。しかも無風状態でホバリングしているヘリコなら機体重量だけです。

 さて、面積と速度の二乗に比例するのは固定翼機の揚力と同じだけど面積の中央部には推力には関係しないスピナーやヘリコでいえばただの棒の部分がかなりの面積を占めており、この公式はおかしいのでは、との疑問はもっともです。

 でも、それをいいだせば固定翼機の翼面積には翼型には似てもいない胴体部分の相当面積も含まれています。工学には「これでいいのだ」があるのです。

Hovering_4  つぎに回転翼機ではローターの回転面を水平にして揚力を得ています。

また回転面を少し傾けることで前後左右に移動します。

ホバリング時はV=0より
 Th = 2ρA⊿v2 = W

ここで示す W の単位は(N)です。
航空機のスペックなどで表記されている(Kg)ではありません。しかも、この場合の正確な単位の表記はキログラム・フォース(kgf)です。

N(ニュートン)換算には重力加速度 g (9.80665m/sec2)が用いられます。

ただ、同じ地球上でも両極と赤道、エベレスト山頂と日本海溝では重力加速度は異なります。

普通 9.8m/sec2 が使われます。
さて、 g を掛けるのか、割るのか、そして、質量の単位をもつρに対してか、力の単位である W に使うのか・・・ハムレットでなくても、工学では、それが問題です。

Air_flow_2 また回転翼機が一定速で水平飛行をしているときは、

TLF = 2ρA⊿v√{(Vsinβ)2+(Vcosβ+⊿v)2}

 β(deg):ローター回転面の傾斜角

 回転翼機ではローター回転面の傾斜角をローターの回転軸からの傾き、もしくは機体の傾斜を含めて鉛直線からの傾きとしています。

 しかし、ここではオスプレイは固定翼モード時のローター回転軸の姿勢である0度を基準として傾斜角を示しているようなのでそれにあわせました。

  なおオスプレイの回転翼機モードのナセルの傾斜角は機軸に対して85度以上とされています。なお回転翼モードでのナセル傾斜は後方の97.5度まで回転できるようです。

 したがいオスプレイの遷移モードは0度を越え85度未満となります。この分割で各モード間にまたがるグレー・ゾーンの処理を含めてフライ・バイ・ワイヤーのソフトウェア・プログラムのモードとパイロットが対応する操作マニュアルが変わると考えられます。

 その操作マニュアルにはパイロットが判断する速度や操縦操作の制限事項が細かに規制されているはずですが軍用機として実戦時のマニューバーを優先させるためコンピュータのソフトウェアによる補助は最小限になっていると思われます。

 日本政府の見解ではオスプレイは「機材としてのマン・マシン・システムについては概念的に完璧である」ということのようですが、パイロットが課せられる各モードの「ソフトウェアを含むマン・マシン・システムの信頼性」と「そのインター・フェースに適合できる人間」についてのヒューマン・エンジニアリングには手が出せないようです。

 軍用機の性格上ソフトウェアのソース・コードや詳細なマニュアルが公開されるはずもなく森本防衛大臣も苦しいですね。ただし、だから危険だ、と短絡するのもどうかと考えます。(閑話休題)

 さてこのプロペラの出力(P:kW = kN/sec)は空気の速度変化(⊿v:m/sec)と推力(T:kN)の積となります。
  Pi = T⊿v

 ここで添え字 i をつけたのは、これらの推力のもととなる⊿vはプロペラの翼面が作る誘導速度であるためです。誘導(Induce)と定義されますが翼の場合は吹きおろし(Blowdown)に相当し誘導抵抗とは異なります。

厳密にはエンジンの馬力がプロペラを介して推力という出力に変わるときにはプロペラ効率と呼ぶ係数が必要になります。この係数はプロペラの進む速さも関係します。プロペラの消費馬力が100%推力に変わるのではないことは頭にとどめておいてください。

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 ところでプロペラからずーっと離れた後流の端っこは大気圧であるのに関わらずその理論では2⊿vの速度増分をもっているのはなぜか?プロペラから離れた位置というとどれくらいなのか?など疑問に思われませんでしたか?

 答えはベルヌーイの定理の成立条件の定義(非XX、非○○)の中にあります。つまり、理論の前提となった空気は実際には存在しないからです。

 またプロペラ後流は収縮流だそうだがどのくらいプロペラから離れたあたりで最少径になるのか?それはどこまで続くのか?などなど考え出すととまりませんね。

 これはベルヌーイの定理で説明はできます。この定理は、目で見ることができるベンチュリー管と呼ばれるような断面積が変化するチューブのなかだけで流速が変化するだけではなく、プロペラ後流自身の速度による動圧が周囲の大気圧という静圧に押されて自ら流路面積を変えるのです。一般的には流管(あるいは流束)と呼ばれます。

 ちなみに風車の場合の後流は拡張流となります。風車の回転に使われて減少した運動量、すなわち速度が減ったためです。-⊿v として式を作れば解けますね。

 そういえば、ひところ戦闘機フリークのあいだで同じ系統のエンジンをつかった三菱「雷電」の紡錘形と中島「鍾馗」の直線的な後ろ向きの楔形の胴体形状について設計者のセンスの比較がされていたことがありました。

 つまり「三菱の設計はプロペラがなければ中島の設計より抵抗が少ない」と皮肉めいた揶揄で話題となりました。工学では飛行機(この場合は兵器)として有用であればどちらもありですが、いっぽうでは生産性や整備性、さらには調達費の問題が問われるのも工学です。

その前に「『理論は仮定で成り立っている理屈』、を学んでいる」と自覚しておくことも大切ですね。
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 それらはさておき、次回から以上の式を使ってオスプレイとそのベンチマークを順番に比較検証して行きましょう。交互機体(一発変換で出てきた)、もとい、乞うご期待。

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