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2012年10月18日 (木)

キネマ航空CEO 固定翼機のオスプレイはどうよ?について考える(その3)

(承前)

・アスペクト比=翼幅の二乗/翼面積(10月20日に一部加筆追記しました)
 
V22_osprey_flying_mode_kai  本題に入る前に飛行中のオスプレイの釣り合いについてクリックで拡大できる図で概観しておきます。

 なお日本では単に遷移モードと呼ぶモード変換を米国では回転翼機から固定翼機への移行をコンバージョン・モード、固定翼機から回転翼機へはトランシジョン・モードと呼び分けているようだ。

 アスペクト比は飛行機の性能に関係する計算式のなかでは推力(T)に釣り合う機体の全抵抗(D)の中に現れる。図では右端のFixed-wing mode を参照しながらお付き合い下さい。

 全抵抗は次のように表される。

D = 0.5ρV2S(CDp + CDi) = Dp + Di

 括弧内の係数Cの添え字 D は Drag(抵抗)から。p は parasite(寄生している)からくるが日本語では形状抵抗とよばれる。この形状をしていると(イヤでも)くっ付いて生じる抵抗という意味だが日本語では形状(profile)抵抗(drag)係数と読んでいる。日本人て真面目なのですね。

 その形状抵抗(Dp)は前面投影面積に比例する圧力抵抗と機体表面の面積に比例する摩擦抵抗の和である。それがなぜ翼面積(S)に比例するのかというと翼面積でそれぞれの実面積を割った値をそれぞれの抵抗係数に掛けることで換算修正しており、その機体固有の形状抵抗係数となっているからである。

 したがい実機と精密なプラモデルでは同じ形状抵抗係数となる。ただし空気の分子の大きさは変わらないため粘性の影響を補正するレイノルズ係数を一致させておかないと同じ扱いはできない。(閑話休題)

 もうひとつの Di や CDi の i は induce(誘導する)からきておりこれはそのまま誘導抵抗及び誘導抵抗係数と訳されている。現実の翼には長さ(翼幅)があり両端では上下の圧力差で渦ができる。この翼端に発生する渦をつくるための抵抗を揚力から誘導された抵抗とその係数を指している。

  CDi = CL2/πAe

 この式のAがアスペクト比。e は空力効率(efficiency factor)で翼の平面形によって決まる。楕円翼では1、スカイバンやシェルパの矩形翼では0.8ぐらいになる。グレイハウンドの先端の丸いテーパー翼はその間にある。またCLは次式のなかの揚力係数。

  L=0.5ρg CLS V2より

 一定速で水平飛行の全抵抗(D)は揚力の式で L(Lift)=W(Weight) となる縦方向の釣り合いを使って CL2を消去すると

  D=(0.5ρSCDp)V2+( W2/0.5ρSπAe)/V2 = Dp + Di

 模式的に書くと次の図のようになる。

Photo  形状抵抗は速度(V)の二乗に比例し速度とともに増加する。

誘導抵抗は速度の二乗に反比例しておリ低速ほど大きく速度とともに減少する。

 また機体重量(W)が大きいほど大きく、アスペクト比(A)や翼面積(S)が小さいほど大きい。

 アスペクト比は「翼幅の二乗÷翼面積」で計算される。その翼面積は「翼幅X平均翼弦長」である。

 アスペクト比を書き直すと「翼幅÷平均翼弦長」となる。

 すなわちアスペクト比が大きいほど、翼面積が同じでも翼が細長くなり、誘導抵抗は小さくなる。 

 その結果、全抵抗(D)は離陸時が最大になる。

 何しろ誘導抵抗は機速(V)自体が小さく、フラップを出すことで翼面積(S)は大きくなり(翼面荷重は減るが)実効アスペクト比は小さくなる。

 誘導抵抗の部分をA=b2/Sを使ってさらに書き直すと( W2/0.5ρb2πe)/V2となり翼の形状としては横幅(b)と平面形状の係数(e)のみが関係している。

 また形状抵抗はフラップを出すことで翼の抵抗が増え、おまけに車輪も下ろしており、辛うじて飛んでいるといえる。(閑話休題)

 いずれにせよオスプレイはジェット戦闘機並みのアスペクト比である。

 ここでオールド・フリークならP-80、T-33のシューティング・スター・シスターズ、L-1049Gスーパー・コンステレーションなどの一連のロッキード機を思い出すであろう。それなりのアスペクト比を持ちながらなぜ高速になれば形状抵抗にしかならない翼端燃料タンクを採用したのか?

・・・搭載燃料を増やすのもさることながら翼端板効果で翼端渦を緩和し誘導抵抗を減らし航続距離を伸ばすため・・・とすればオスプレイの翼端のナセルもその効果があるのでは・・・

 翼端板の効果はいくつかの実験式が提案されている。手元のあるのはアスペクト比に⊿Aを加えて補正する式である。

  ⊿A=1.9Ah/b
     hは翼端版の高さ、bは(翼端槽を含む)スパン

  ⊿A=1.1A(2Se/S)
     Seは翼端板の面積、Sは翼面積

 オスプレイのナセルの寸法を図面などから推測するとh=1.85m b=15.2m Se=8.3m2 S=35.49m2であり、アスペクト比(A=5.44)の増分はそれぞれ1.26と2.8程度となる。ただし通常の翼端板の形状では両者はほぼ近似するようなのでオスプレイのナセルのように大きいと適用はできないようだ。

 かりに適用したとしても6.7から8.2の平均値で7.45程度であり、かろうじてセスナあたりの軽飛行機並みの値にはなる。

 ちなみにセスナ182のアスペクト比は7.5でほぼ同じだが最大離陸重量での翼面荷重は82.6kg/m2でオスプレイの11%程度である。

 とはいいながら、オスプレイにも工夫はある。回転翼機のローターを兼ねる直径の大きなプロペラはティルト・ローター機ということで最大径の制限を受けているけれど効率は良い。

 これはプロペラも翼型をしており同様に誘導抵抗が存在する。アスペクト比が大きい、すなわち直径が大きいほうが小さくなる。しかしヘリコのローターよりは径が小さいことに着目しておく必要がある。

 そのプロペラとしての回転面の内側半分は主翼のほぼ全長をカバーしており機速より速いプロペラ後流が主翼の揚力に寄与している。

 また

Mv22_osprey_proprotor_rotation  また回転翼機としてローターの反力を打ち消すために互いに逆回転をしている。具体的には固定翼機モードでは(後方より見て)左のプロペラは反時計回り、右は時計回りとしている。

 参考までにヘリコプター・モードでは上方から見て左のローターは反時計回り、左は時計回りと同じ回転方向となる。

 そのプロペラもしくはローターは回転しながら空気を後方に押し出すために後流は回転方向と同じ方向に捩れている。

その結果、両翼端の翼端渦を打ち消す効果で誘導抗力の低下が期待できる。

 また主翼の全長に亘って下面を押し上げる流れとなり揚力にも寄与していると考えられる。

 正確に言えば迎え角を増加させる効果があり遷移モードでの影響を考察することになる

 結論として固定翼機のオスプレイはその形態や機能からくる工夫は凝らされているがエンジンまかせ、力まかせの固定翼機であることは否めない。

 エンジンの信頼性にも関係するがアスペクト比や翼面荷重からは滑空性能は低く、その分緊急時の対応時間に余裕が少ないようで、あまり低空を飛びまわってもらいたくない機体ではあるようだ。

 固定翼機モードのオスプレイが行なうエンジン出力喪失時の最悪の運用では駆動系の損傷でなければいずれかいっぽうのエンジンで両翼のプロップ・ローターを駆動できる。

 すなわち、停止したエンジン側のプロップ・ローターのフェザーリングによる重力滑空ではなく、確率上では一方は残るはずのエンジンで動力滑空(自力で高度を上げることはできないが水平飛行はかろうじてできる状態)をして滑空比もしくは飛行可能時間を稼ぐ数世代前の民間の双発機の安全基準で設計された仕様ではなかろうか。

 いまのところ民間機と軍用機の要求仕様には違いがあるという政治や行政上の次元に踏込んだ技術論評はされていないようだ。少なくとも固定翼機モードから回転翼機モードに変換してオート・ローテーションがどうのという問題ではない。

 滑空比の比較もできるが妥当な形状抵抗係数などのデータを設定できれば、いずれ機会があれば、とします。(詳細検討は遷移モードの項でやってみます)

 構造的には両翼端に逆回転をする同じ機能のパワー・ユニット・ナセルが必須となる。タービンが逆回転する(少なくとも鏡面対称形のタービン・ブレードが必要な)エンジンを載せているのか、どちらかのトランスミッションに逆転用歯車を入れているのか定かではないが整備保守の工数や部品の管理が複雑になる。

 第二次大戦のころに大馬力のレシプロ・エンジンのトルク反力を嫌ってわざわざ逆回転するエンジンを作って開発された軍用双発機があったが生産型は標準のエンジンを装備して垂直尾翼を僅かにひねって取り付けることで解決していた。(閑話休題)

 民間機としては基本的に市街地で行なうティルト・ローター機のVTOL運用が前提であろうが少なくとも固定翼機の運用コストで考えると過大な期待をしないほうがよさそうだ。

 安定性、操縦性といった部分は外から判断するのは難しい。機体のピッチ変化や地面効果、さらにはフラップの開閉により主翼を通過した気流の吹き降ろし角の変化が水平尾翼に影響し安定性を損なうことがある。

 オスプレイやグレイハウンドは水平尾翼を主翼より上に配置しており影響は小さそう。シェルパは主翼より下方にあるが主翼から離れている。スカイバンが限界なのかもしれない。

 その他、回転翼機として要求される構造が固定翼機にどのような影響を与えるかについてはいずれ回転翼機の項で比較してみたい。

 おまけとして軍用については次のような漫画的な妄想が消えない。

 対空防御兵装をもたないオスプレイ自慢の高速侵攻に随伴してエスコートする米軍の航空機はどれだろう。防衛する側は小型ビジネス・ジェット相当の機体に太目の鋼製ワイヤーかチェーンの末端に翼をつけて吹き流しながらフラップを下げて速度を調整してオスプレイの編隊の上空を追い抜けば小火器の弾丸の貫通には強いが衝撃には弱いあの大きなプロップ・ローターを簡単に粉砕してしまうのでは・・・

 え?引っ掛けたビジネス・ジェットはどうなるのかって?・・・ショックがあった瞬間に大きなハサミでワイヤーを切っちゃうのです。なんならワイヤーの巻き取りウィンチごと投棄してもいい。一機70億円のオスプレイと比べれば安いものです。

 最新鋭の兵器には意外とプリミティブ(幼稚)な弱点がある。ベル・ボーイングのエンジニアはともかく、米軍の評価チームではこんなことも考えているとは思うのだが、長いもののなかにいたら言えないかもね。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

固定翼機の項(その3)で終わり。
回転翼機に入る前にプロペラ/ローターの理屈をもう少し勉強する必要がありそうだ。

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