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2012年11月19日 (月)

キネマ航空CEO 回転翼機のオスプレイはどうなのよ?(その4) ・・・欠陥とまではいえないが・・・イカロスの翼に近づいているといえるかもしれない・・・について考える

ご来訪ありがとうございます。

2013/07/03、1018/09/01に赤字部を訂正および変更を行いました。論旨の変更はありません。筆者(当CEO)の不注意お詫びいたします。

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 ようやくオスプレイの検討に戻ります。今回は要点を太字で強調しました。

 オスプレイはベル・ボーイングに加えてNASAの技術者も加わって解析が加えられており基礎的なコンセプトに問題があるとは思えませんが、前回の分析を図でローター配置による操縦制御のモデルとして可視化をしてみました。

Inertia  前回はタンデム・ローター機ではロール制御が、サイド・バイ・サイド機ではピッチ制御が、パイロットの操縦の結果として成り行きできまることを説明しました。

 この差が機体に及ぼす相違を説明するには図中の I で示した慣性能率を理解する必要があります。

----慣性能率は義務教育や高校、大学の一般教養課程では教えないようです。後半の薄い灰色文字の部分で概観してみました。読んでから本文へ戻った方がいいかもしれません----

---------------以下本論----------------------

 オスプレイであれ人間であれあらゆる物体を構成する各パーツの質量にその物体の重心を通る三軸からパーツの重心までの最短距離の二乗を掛けた値が慣性能率 I = mr2 であり、一つのパーツには三つの異なった慣性能率がある。そのパーツを組み上げたオスプレイにも人間にも重心をとおる三軸の慣性能率がある。

 ちなみに、オスプレイの重心は側面図で見るとヘリコ・モードで直立したローターの回転軸上で、高さは燃料や貨物、人員の搭載量や位置によるが正面図でみるとキャビン高さの中央のやや下あたりと考えられる。

 物体を構成する全部品の慣性能率を各軸ごとに合計した値が機体や人体の慣性能率となる。その 慣性能率は大きくなるほど回転をはじめにくく、回転していると止めにくいという性質がある。

 この物体を回転させる力がトルク 「T」 であり力 「N」 とその力を加える腕の長さ 「r」 との積で表される。トルクと慣性能率との関係は慣性能率と角加速度(dω/dt)の積でも表される。(ωは角速度・・・詳細は上の薄い灰色文字の部分でご理解下さい)

    T = N・r = I・(dω/dt)

  さて、航空機の質量構成でもっとも重いのは機体である。全長にわたって構造は同じであり質量はほぼ均等に分布していると考えていい。

 次に重いのは図中では丸で示したエンジンやトランスミッションとローターなどの駆動系がある。そのほかにも車輪や脚などの降着装置、オスプレイの場合は主翼の中を通る左右のローターを連結するドライブ・シャフト、胴体の天井裏にはそのシャフトで駆動する油圧発生装置などの補機類があるが省略。

 チヌークの場合は天井裏に前後のローターを結ぶシャフト、前方のローターの下にはトランスミッションがある。

 貨物以外の搭載物で最も重くなるのは灰色で塗った部分におかれたタンクにつまれた燃料である。

 以上よりタンデム・ヘリコの三軸の慣性能率の大小は、
      Iy ≒ Iz >> Ix

 サイド・バイ・サイドのオスプレイは、
      Iz ≒ Ix > Iy  

 となるが、相対的には小さい慣性能率 Iy をもつと思われるヘリコ・モードのオスプレイはピッチ軸(y軸)に対する直接的な(偶力を使った)制御機構を持っていない。

 水平尾翼の機能が有効でない低速時にはオスプレイのピッチ操作は左右のプロップ・ローターを同ー方向に傾けるサイクリック・ピッチ操作かエンジン・ナセル全体を前後に倒すことで可能のようです。

 しかし、機体ピッチの制御に必要なローター推力とy軸までの距離(腕の長さ)との積でえられるトルクは、同じローター推力でロールやヨーの制御にはたらくトルクの大きさに比べると腕の長さの比較でずいぶん小さいことがわかります。

 ヘリコ・モードのオスプレイがエンジン・ナセルの傾斜でコントロールするのは、乗員や貨物の積載位置や移動で変わる機体重心の位置を補正するピッチ・トリムの機能として使われていると思われます。

 ヘリコ・モードでホバリングや低速移動をしている場合はフラッペロンを最大角度に下げており、ローターの吹き降ろしと外乱となる側方風を合成した流れによる力のつりあいに左右差が発生してロールを乱したり、胴体や垂直尾翼が受ける側方の風による風見鶏効果によるヨーの制御の間でコンフリクトが生じてローターでは直接制御できないピッチに対する反応に遅延がおこる可能性がありそうです。

 一方の慣性能率がもっとも小さいロール軸が成り行きの安定となっているタンデム・ヘリコに生じる操縦によるロールの反応はオスプレイのようなサイド・バイ・サイド機のピッチの反応よりは速いと考えられます。

 さて、VTOLが可能なベクター・スラスト機の先駆者といってよいハリヤーは一基のターボ・ファン・ジェットのファンとジェットの噴流を重心を挟んで胴体横に四本のノズルを設けて、ノズルを90度曲げることでホバリング時の揚力、水平にすることで推力を実現しています。

 同時にロール方向にでるエンジンのトルク反力を打ち消すために反転させている先頭のファンの噴流を抽出して、重心からもっとも離れている機首と機尾、左右両翼端に分流し下方に向けて噴出させることでおこなうピッチとロールの制御、機尾の側方の左右を選択して噴出させるヨーの制御と三軸の回転方向をコントロールする操縦装置を持っています。

 オスプレイの弱点はヘリコプターの制御で得た経験を過信してこの噴流による三軸制御をおこなわなかったことにあるように思えます。特にタンデム・ローターのヘリコは電子制御の飛行安定装置で飛んでいるので必要はないと考えたのかもしれません。

 噴流による制御自体は宇宙船の制御で十分な知見があると思えるのですが、採用しなかったのはこの制御装置の装備で増加する重さのために最大積載重量を減らし、完全武装の兵士2、3人を減らすか航続距離を減らすかのトレード・オフの結果のように思えます。

 オスプレイの場合は両翼端でティルトするエンジンからの抽気ができないため専用のエンジン(APU)もしくは左右のローターを連結するシャフトで駆動する大量の空気を圧縮する圧縮ポンプを設ける必要があります。

 ビルの屋上に設けたヘリポートで運行する民間機としてティルト・ローター機を熟成するにはこの機構が必要と考えられます。しかし、そうなると商業機として成立するかどうかは疑問ではあります。

 技術的な弱点の考察とは別に、当CEOが「オスプレイはイカロスの翼か?」と問うたのは次の写真が発端でした。・・・と写真を挿入したいのですが著作権の問題もあり各位の画像検索で以下の機種の機首の周辺、特にコックピットの前のあたりをご確認下さい。

 まず、ホーカー・シードレー・ハリヤーは高速機でありながらコックピットの前にはホバリング時にヨーの偏流を観察する小さな風見針が設けられています。この風見針はオスプレイにはありません。

 次に、わが新明和・PS-1から始まるUS-1Aまでは、やはりコクピット前の高いマストのてっぺんに低速時の横滑りの風見針がつけられていました。

 ただしUS-2では左傾左転の傾向をフライ・バイ・ワイヤーで押さえ込んだのか川西・二式大艇から続く水平線を基準に迎え角6.5度を確認するための照準用の横棒、通称「かんざし」を残して風見針は廃止されたようです。

 さらにはグライダー・パイロットは必ず風防の正面に貼り付けてある毛糸の偏りで偏流を目視しています。

 これまで人間は先人が切り開いた高速で空を飛ぶ技術を基礎として飛行機を発展させてきました。しかし、空を飛ぶこと、しかも低速で飛ぶことは人間が最初に空を飛んだ時代とさして変わるところはありません。

 少なくともホバリングや極低速飛行で風に正対し、また大気の流れの変動を感知するにはこうした初歩的で幼稚ともいえる装備がパイロットに一番必要ではないかと思われます。

 個人的には、オスプレイは(アメリカの設計者が開発した)ヘリコプターから派生したフライ・バイ・ワイヤーによるスラスト・ベクター機の機体制御技術とそれを実現するためのコンピュータによるパイロット支援システムのソフトウェアを構築する発想の原点が「イカロスの翼」に近づいているように思えます。日本のUS-2も同様の思考に近づいているのかもしれません。

 (オート・ローテーションについて書くスペースがなくなりました。下記も含めて次回に回します)

 ただし、軍用機が民間機と同じ基準でなければならないか、や、新しい技術の開発をどう進めるかは運用を含めてきわめて政治的な問題であります。

----------------------慣性能率について----------------------

 まず分かりやすいところから中学物理で習った直線運動の基本式 F = m・α を思い出してください。

 斜体太字の文字はベクトルを表します。ベクトルは大きさとともに方向をもった値を示します。たとえば先の式は一つで Fx = mαx 、Fy = mαy 、Fz = mαz 三つの式の概念を表しています。

 F は力で単位は[N](ニュートン)、m は質量で[kg](念のため店頭表示の「1キログラム 1,000円」の「キログラム」は重力加速度 g を介した別物です)、α は加速度で[m/s2]です。s は時間で「秒」のことです。加速度は速度の単位時間当たりの変化ですのでベクトルは速度   「m/s]が持っています。

 このあたりから微分が持ち込まれてややこしくなりますが単位を見ていけば何となく理解できます。

 細かいことは抜きにして、加速度は α = dv /dt と微分式で現されます。 t は時間で単位は[s]です。つまりは単位時間[s]で速度 v  [m/s]がどれくらい変わるかをしめす変化量(加速度)ですから単位が[m/s]÷[s] = [m/s2]となるのです。

 つまり直線運動は F = m・(dv /dt) と現すことができます。

 回転運動にも同様の物理現象がおこります。T = I ・(dω/dt) となります。T  はトルクで単位は[Nm](ニュートン・メーター)です。

 これまでに推力でも T が出てきましたがこれは「Thrust」(推力:単位N)から、今回は軸を回転させたり止めたりする力「Torque」(トルク:単位[Nm])からきています。トルクには回転方向、推力にも向う方向がありますからどちらもベクトル量となります。

 トルクのベクトル量は Tx = Ix ・(dωx /dt)、 Ty = Iy・( dωy /dt)、 Tz = Iz・(dωz /dt) の三式で表されます。

 次に dω/dt は角加速度ですが直線運動の加速度α に相当する記号がありません。ω は(回転)角速度です。角速度には回転方向があるのでベクトル量です。

 ただし角度の単位は一回転の360度を 2π とするラジアンで表記されます。ω の単位は [1/s]となります。で、角加速度は dω/dt となり単位は [1/s2]となります。

 ラジアンは円周率で表されているように単位をもっていません。ラジアンで現した角速度ω に半径 r [m]を掛ければその半径の単位時間当たりの長さ、すなわち周速 v  [m/s]となって大変都合の良い単位なのです。

 I は慣性能率と呼ばれ直線運動の質量に相当しています。慣性能率 I の単位は[kg・m2]です。 

 ところが、T = I ・(dω/dt) を変形して  I =T /(dω/dt)  として I の単位を逆算すると
[kg・m2]のはずの I の単位は[ Nm・s2]です。
 物理の等式では左右両辺の単位は等しくなるはずです。

 ここでは物理式の誘導を勉強しているのではないので逆説で見ていきましょう。トルク T の単位は[Nm]でした。  

 [ Nm・s2]を{[N]=[kg]・[m/s2]}・[m]/[1/s2]と書きなおすと分かりやすいですね。この式より時間の単位[1/s2]が消えてしまうので[kg・m2]となります。

 つまり1[m]先にある1[kg]の質量を回転させる、あるいは止める「回転力T 」を「角加速度(dω/dt)」で割った値と等価な単位となります。

 つまり、物理学の補助単位である力の単位ニュートン[N]を質量[kg]、長さ[m]、時間[s]の基礎単位に戻した結果です。

 さて、重心をとおり互いに直角で交差する三軸は各軸の慣性能率が最小になる「慣性主軸」という決め方があります。

 しかし、進行方向がきまっていて左右対称な物体においては、重力の反対方向に向ってz軸を正(+)、水平な面にx軸とy軸を置き、x軸の正(+)を物体の主な進行方向にする。

 つぎに水平面を上から見てx軸の進行方向の右側に向ってy軸の正(+)とし、三軸上の回転方向は各軸の正(+)の側から見て時計回りを正(+)とするようです。

 料亭の魚料理で尾頭付の魚が出てくる場合は頭は左向きに置いてx軸となり、お皿の上側に向ってz軸となる。y軸は魚を突き抜けて畳のほうに向っています。配膳の基本でありますね。(閑話休題)

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