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2012年11月25日 (日)

キネマ航空CEO 回転翼機のオスプレイはどうなのよ?(その5)・・・オート・ローテーションができれば安全なの?について考える

ご来訪ありがとうございます。

 正確を期しているつもりではありますが今回も当CEOの技術上の推測、憶測部分があります。
 
したがいWeb上での校正中です。新しい知見が得られますと内容を変えるかもしれません。

 当キネマ航空CEO オフィスは「オープン・オフィス」であります。お客様お手製のコーヒー、紅茶をお手に後日のご来訪、ご確認もあわせてお願いいたします。

-----------------------前回の捕捉----------------------------------

 ヘリコのローターは倒立した円錐であり各ブレードは固定翼機の上反角と同じ効果が期待でき、傾斜した側のブレードの揚力が増え反対側は減り復元力が働き安定機能があるはずという質問がありました。

 オスプレイに限らずヘリコの安定はローターの下にぶら下がった機体も含めての問題となり静安定としての指摘では正しいのですが、ぶら下がった機体を含めた動安定としてみると大雑把には三軸三方向の6自由度が二つ重なったきわめて複雑な現象で、その復元力自体が不安定の原因になることもあるようです。

 当CEOの能力では解説不能とご理解下さり、専門書をお読みください。参考書籍は最終回に一括して掲載いたします。

-----------------------今回の本論です------------------------------
 オート・ローテーションについての一般的な常識は、次のようなものと思われます。

 「ヘリだとたとえ動力が切れても、落下時の風で自然に回るローターを利用して軟着陸ができるオート・ローテーションという機能があります」
・・・2012年9月1日朝日新聞Beの「いまさら聞けない・・・垂直離着陸機」からの抜粋。

 この記事(田中誠士氏)は朝日としては比較的まともにまとめられています。ただしオート・ローテーションの説明としては「オート」を「自然に」と言い換えることで誤解を招く表現も含まれています。

 ヘリコプターのローターが「自然に」回ることはなく、動力が切れる直前にローターに蓄えられていた回転エネルギーが残るあいだに、急降下から始まるパイロットの一連の操作という運用によっておこなわれます。 

 田中記者が読者に「セルフ・ローテーション」と誤解させた(かもしれない)現象は自然界では秋にカエデやモミジの種子の落下で見ることができます。こうした機能をもつ人工物は対潜哨戒機から投下するソノブイの減速装置兼方向安定装置として軍事技術に使われています。

 さて、そのオート・ローテーションは風車と同じ原理ではありますが大きな違いがあります。

 ヘリコと風車は、どちらもブレードの半径方向に周速が大きくなるのでいわゆる捻り下げ(上げ)と呼ぶ迎え角を変化させる設計がおこなわれてブレード全長にわたって揚力の大きさを均等に分布させています。しかしその最適化の前提が異なります。(画像付詳細はこちらで

Auto_rotationrev3  一つはローター・ブレードの設計では風車は正対する方向からくる風を効率よくローターの回転力(トルク)に変換できる揚力をえるように迎え角を変化させたブレードが採用されます。

 一方のヘリコではエンジンによる駆動を前提とした迎え角の変化を最適化することになります。

 二つ目は風車の基台は静止しています。そして風見効果で常に風に正対するように首ふりがおこなわれ、一応はどの回転位置でも均等に変化する風速に対してはブレードの回転位置に関係なく同じ角度の増減で迎え角を調整します。

 一方オート・ローテーション中のヘリコの機体は移動しています。このため機体の重力でローターの回転を維持するための揚力を作り出すローター・ブレードの迎え角は、ローターの半径によって異なる速度と降下率をともなう機速とが合成されて、回転位置によって異なるブレードの対気速度できまります。

 またヘリコではサイクリック・ピッチ・コントロールでブレードの回転位置によって迎え角を変えることができます。結果として、

・ 外周部は迎え角が小さく回転方向へ向かう揚力の分力が回転をとめようとする分力である抗力より小さく回転抵抗となっています。ただし機体を支える揚力は発生している。(図はローターが進行方向に向って回転して風速は大きく迎え角は小さくなっていますが反対側では小さくなり迎え角は大きくなります)

・ 中央部で迎え角が大きくなり、揚力の分力が抗力より大きく、ローターを回転させるオート・ローテーションとなる。

・ 内側の回転軸の周りでは迎え角が大きくなりすぎてストール状態となりオート・ローテーションに対する抵抗でしかない。通常ヘリコではこの部分を翼型ではなく吹き抜けとなるように設計されている。(正常駆動時に胴体にかかるローターの風圧を減らす意図もある)

 要約すればオート・ローテーション中のヘリコはブレードの揚力を使ってではなく、翼型の揚抗比が大きい迎え角を有効に使えるブレード部の長さでローターの回転の維持ができている。

 なお、添付図をみるポイントとして、ブレードに生じる揚力は合成された風向に直角な方向、抗力は同じ方向に現れます。その風向は機体の速度、姿勢、ローター・ブレードの回転位置やフェザーリング角度などできまります。しかし、その結果の分布が図のようなきれいな円状になるとは限りません。図の回転方向は欧州系のヘリコの場合、もしくはオスプレイの左ローターで示してあります。

 オスプレイではヘリコより高速で回転させる必要のあるプロップ・ローターの(ヘリコではブレードとして使わない)根元部に、(ターボ・プロップの固定翼機のプロペラ・ブレードでは多く見られる)翼型をした「カフ」をつけてまでして、ローターの有効径を拡大している。

 その結果、ブレード翼型の捻り下げ角度は42度もあるようだ。オスプレイのオート・ローテーション時にはプロップ・ローターの内側のかなりの部分がオート・ローテーションを妨げる抵抗にしかならない失速域に入ると判定できる。

 オスプレイはローター径が小さいためオート・ローテーションができないヘリコプター、というより基本的にエンジンで飛ぶ航空機でありヘリコプターとも異なる定義の航空機といえる。

 この考え方は通常の民間航空機の運用定義(ETOPS)にも関わってくる(画像付詳細の下半分に記載)がその前にヘリコプターの設計と運用におけるオート・ローテーションを概観してみる。

F28_r22_hv_daiagram オート・ローテーションの実施にはローター・ブレードにあたる風の角度(迎え角)が重要であり、そのためには風の速さが必要であることを説明しました。

 その風速を維持するためには急降下をおこなうことになります。まず、エンジン出力を全て失ったときに、急降下で地表に激突する前に、所定のローター回転数が得られ、機体の降下率を安定させたのち、引き起こし(フレア)による減速ができ、その状態で軟着陸できる限界の高度と飛行速度の関係があります。

 高度-速度線図(Hight -Velocity Diaguram または H-V Curve)と呼ばれており縦軸は高度(フィート)、横軸は対気速度(KIAS:ノット)で表示されます。フィートは0.3倍でメートル、ノットは1.8倍でkm/hとなります。

 この線図で斜線がかぶさっている範囲はオート・ローテーションがおこなえない範囲を示して機体の(もちろん搭乗者も)致命的な損傷が避けられない高度と速度の関係を示しています。

 線図では低速-低高度に狭い空白があり、ヘリコは離着陸での加減速をおこなう(空港やヘリポートへの)進入回廊(Approach Corridor)とよぶこの空白を使って運行します。

 ヘリコが固定翼機と同じような角度で離発着する第二の理由であります。ヘリコのパイロットは機種ごとに、この線図による離着陸と出力喪失の訓練を受ける必要があります。

 さて、線図の左側はエンストローム F-28 右はロビンソン R-22 のH-V線図です。両機種とも米国で人気のある航空ガソリンを使う4気筒のピストン・エンジンで飛ぶ個人用小型ヘリコです。

                          エンストローム F-28    ロビンソン R-22
   --------------------------------------------------------
    運用開始年度        1965                1975
    最大離陸重量       1,179kg             635kg
    ローター径                  9.75m                           7.70m
    ローター面積               74.7m2                          46.2m2
    ローター面積荷重        15.8kg/m2                     13.7kg/m2
    エンジン  メーカー      ライカミング         ライカミング
          型式       HIO-360FIAD                O-320-A2B
          出力       225hp(168kw)                124hp(93kw)
    重量/出力比     5.24kg/hp(7.02kg/kw)      5.12kg/hp(6.83kg/kw)
    巡航速度       89knots(164km/h)      96knots(177km/h)
    上昇率        1,450ft/min(7.37m/s)    1,200ft/min(6.1m/s)
    乗員               2                  2

 この仕様と性能で比較するとH-V線図では、本来ならば開発年次が10年早くオート・ローテーション可能範囲が狭そうなエンストローム F-28の方がずいぶんと広い安全飛行域を確保しています。

 また進入回廊の制限長さもずいぶん短い。これは、エンストロームF-28 のブレードは長さも含めて重く作られており、正確には慣性能率が大きくフライホイール効果によってエンジン停止直前までにローターに蓄えられた回転エネルギーで長く回転数の維持が続くことによるようです。

 日本人の感覚では時代とともに進むであろう加工技術や材料の発達は安全な方向には向かっていないように見える例でもありそうです。また、設計思想そのものも時代とともに変わることもある。またそれが工学の本質でもあります。

 たとえばロビンソンR-22 の巡航速度はエンジンの出力が小さいのにエンストロームF-28 より勝っています。唯一の理由で、とはいえませんがブレードの設計思想が変わっていると考えられます。             

 次にあげるのは50年以上昔、エンストローム F-28の進空より前の1962年に運用が始まった双発・ツイン・ローターの代表機種で航空雑誌や新聞ではオスプレイと比較されていますが、なぜかH-V線図は日本では公開されていません。

 航空雑誌では軍事機密並みの自己規制(タブー)になっているのかもしれませんが外国のサイトから入手可能な情報です。

 機種は日本の陸上自衛隊、航空自衛隊で保有している機種と同じ系統の米陸軍のCH-47D(チヌーク)が、囲みの注記にあるように二基のエンジン出力の全てを喪失した場合のオート・ローテーションのおこなえる高度と速度を示しています。

Ch47_hv_curve  この図で見る限りCH-47のオート・ローテーションによる軟着陸は、ヘリコプターに要求されている機能であるホバリングを含む低速域では1200ft(360m)以上の高度でも不可、戦闘行動時の高速飛行では600ft(180m)以下でも不可となります。

 この図をポンと出されると、特定の人からはこの機種の存在理由も否定されそうですね。

 ロビンソンR-22の線図のように積載重量や気圧、気温にも左右されますが、地表から180mの飛行でもオート・ローテーションができないとなれば、政府間の約束であるオスプレイの訓練飛行高度150mはどうなのよ、と物議を引き起こす資料にもなりそうです。

 しかし、この機が起きてしまった災害への初動による被災者の救助と脱出、物資の輸送にどれほど活躍したのか、また、現実的な効果の評価は別にして原子炉への冷却水投下などの命令を確実に実行できたのか、をパイロットや搭乗員、整備員、運行要員とともに機体そのものを評価しなければなりません。

 ただしオート・ローテーション機能でオスプレイを欠陥機とする人の目には現状では全面真っ黒なオスプレイのH-V線図と同列にしか映らないのかもしれませんが・・・コマーシャル・チヌークインターナショナル・チヌークの名で民間型モデル234414の型式で認証されています。

 工学という面からは、双発以上のヘリコプターの設計基準は「エンジンが一基故障した段階で飛行計画を中断して残ったエンジンで緊急着陸もしくは引き替えす運用が可能であれば・・・」から導かれる設計仕様で開発されているオート・ローテーション機能を考察する必要がありそうです。

 すなわち機体としては、要求条件が調った双発ヘリコプターのオート・ローテーション機能はなくても良い、となります。その根底には固定翼機の設計仕様とも関わってきます。また、ヘリコ・モードでオート・ローテーション中の固定翼はどう機能するのか・・・などなど、は次回に

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