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2013年3月16日 (土)

キネマ航空CEO 映画館に 「フライト」を見に行く

現実にはアルコール、ましてや薬物依存症の機長が操縦する航空会社なんて願い下げだが当キネマ航空では差別することなく現役採用しております。

ストーリィは当時サウス・ジェット航空(架空)にいたそのウィトカー機長(デンゼル・ワシントン)が乗務する227便がフロリダ州オートランドからジョージア州アトランタに向けて豪雨の中を飛び立ちます。

機長は強引に乱気流渦巻く雲海を抜けてポジティブ・クライムに入ったところでコ・パイロットに渡し、そのまま仮眠をしてしまいます。何しろ彼は同じフライト・クルーの一人であるフライト・アテンダントとの酒とバラの夜をすごしたあとでした。

ところがレベルオフに移ると突然に機体が急降下をはじめます。寝ぼけまなこながら事態を察知した機長は機体を立て直そうと奮闘しますがかなわず、原因をピッチ・トリムの制御不能と判断しました。

機体をロールさせ背面飛行にして急降下から脱出しそのまま低空飛行で市街地をかわそうとします。その状態で再びロールをうち機体を水平にしますがエンジンは停止してしまい、かろうじて教会(宗派は忘れちゃった)の横の草地にハード・ランディングを行います。

胴体後部を折りながらも奇跡的な危機対応能力を見せますが搭乗者120名のうち乗客4名乗員2名を失います。そして乗員の一人は昨夜のお相手でした。

もちろん彼は英雄となりますが入院中はパイロット・ユニオンの幹部と航空会社の顧問弁護士の監視下の生活となりNTSBの調査を受けることになります。

というメイン・ストーリィに彼の別れた妻や息子との軋轢、病院で出会ったこれまた薬物依存症の新しい恋人との生活、今は亡き父親への想いが航空会社、弁護士、ユニオン、マスコミそれぞれの思惑に絡み合いサブ・ストーリィ(本来はこちらがメインです)となりラストの国家運輸安全委員会(NTSB)の公聴会へなだれ込みます。

映画のほうは実際に見ていただくとして、まず、こんな事故の状況がありえるのか?

事故に関する脚本の骨子は2000年1月30日に起きたサンフランシスコからシアトルに向かうマグダネル・ダグラス MD-83 で運行されたアラスカ航空261便がロスアンゼルス沖で墜落した事故の調査結果を換骨奪胎したようです。この事故では全員(88名)が死亡しました。

映画ではウイングレットをつけるなどしていますが、ダグラス DC-9 からはじまる一連のシリーズと一目でわかるCGの機体が登場します。1996年には吸収されてボーイングのラインに加わりましたがいまは生産カタログからは落ちています。

上記の事故の原因は航空会社の不良整備と結論がだされており、ボーイングはこの映画にクレームはつけていないようです。いっぽう、アルコホリックの元凶とされたビール会社のバドワイザーは異議をだしたようですけど・・・

なお事故当時の機体(1992年製)には緊急時に重量を軽減する燃料放出の装備はなかったようですが映画では燃料投棄を行っていました。この装備に関する連邦航空局(FAA)の規則は DC-9 クラスでは一定の条件さえ満たせばなくてもいいオプションのようです。

現実にあった事故の原因はメインテナンス不良による水平尾翼の昇降舵(エレベータ)の固着でした。このために操作したと思われるピッチ・スタビライザー・トリムを駆動する中空のスクリュー・シャフトが変形し破損してしまい、周辺の構造物を突き破って水平尾翼の操舵面を機首下げ位置に動かしてしまったためでした。映画はこれを踏襲したようです。

映画に戻りますと、機体は雷雨と乱気流を抜ける上昇中に大きな衝撃を受けていました。このときの昇降舵は基本的には中立位置で固着したようです。この状態でレベル・オフするため昇降舵を下げ舵にしますが作動しないためスタビライザー・トリムを動かします。しかし、先の状況でエレベータが下げ位置で固定されてしまいました。

通常ですとこのまま背面宙返りとなるはずですが急降下で機速が増加し主翼の揚力によるピッチ・アップでエレベータのピッチ・ダウンが相殺されて急降下状態でつりあったようです。

機長はこの状態から背面飛行にうつることで、下げ舵に固定されているエレベータを上げ舵として使い、急降下からの引き起こしとそれに続く背面による水平飛行を図ります。そして再度ロールをして正常な姿勢に戻して胴体着陸をおこないます。

DC-9 シリーズの翼型断面形状は知らないがダグラスは先行した DC-8 からスーパークリティカル翼型を採用していました。逆キャンバー翼型ともよばれており、普通にイメージする翼型の上下がひっくり返った形状で遷音速域の性能を向上させています。

この翼型では低速の背面飛行での大きな機首上げ姿勢を取らなくても(翼型に対してはマイナスの迎え角でも)適当な揚効比が得られたのかもしれない。

さて、正常姿勢に戻したあとの進入時には低速で揚力を得るためかなりの機首上げによる迎え角をとりエレベータの影響を抑えているようです。

エレベータが動かぬままフレアができたのはT字尾翼の水平尾翼失速にも関係するのですかね?

この結果、左り翼から接地して、ちぎれた後部胴体は出火し、恋人だったフライト・アテンダントを失います。

そしてNTSBが実施したフライトレコーダーの解析データに沿って 10 人のベテラン・パイロットによるシュミレータを使った検証では誰も成功できなかった。かくして機長の英雄ぶりを際立たせます。

ここでタイムラインを少しさかのぼります。あの背面のままでの引き起こしでは、遠心力によって機体にかかる加速度はマイナスGとなります。機体の持つ設計強度はマイナスGに対してはプラスGより小さく(約半分に)設計されています。はたして、こんな芸当が実際にできるのかどうか?

また、機長は機速と迎え角の制御のためフラップ、スポイラー、ランディング・ギヤの操作を繰り返します。どのような具体的効果になったのか気になります。

いまの映画館では気に入ったプログラムでも居座ることができません。肝心の急降下の角度、スピード、引き起こし高度などの手がかりをメモしそこないました。これらは現役の機長さんから見たコメントがほしいところです。

次にミステリー・マニアの興味が残ります。

最後のNTSBの公聴会に召喚された機長が前夜にとまるホテルのスィート・ルームは誰がリザーブしたのか?

あまりにあざといシークェンスですが感動の結末に持ち込むための監督か脚本家の作劇術か?はたまたクールな弁護士の社会正義か?航空会社の自己保身か?NTSBの策謀か?

汚れた英雄を引きずりおろす動機はいずれにもあります。ふつうこのような片手落ちのルーム・チェックはありえないだろうと言いたくなりますがごらんになった皆さんはいかがでしょうか。

・・・この映画の脚本自体はある意味では深く怖いお話です、

映画を鑑賞するうえでは個人、組織、社会における宗教の位置を知ろうとしないと日本人の目には単なる竜頭蛇尾の感動作で終わります。日本人とアメリカ人が同じ感覚で同じ映画を観ていると思ってはなりません。

物理的、工学的にはおよそ考えられない機体の挙動も、フライト・レコーダーの記録どおりにフライト・シミュレータで行っても誰も成功しなかったウィトカー機長の行動も、ミステリィじみたスィート・ルームの逸話も、「神」が機長(=アメリカの現状を背景に持つ観客)に与えた試練だったとしてラスト・シーンをみればつじつまは合います。

そのために傷ついたり、死んでしまった 5 名はなんだったんだと考えると「神」は気まぐれで残酷なものです。これを納得できるかどうかはひとそれぞれでありますが仏教にも似たような一面があるのですけれど・・・えっ?亡くなったのは 6 名じゃなかったかって?6 人目はさまざまな形で復活する神の御子イエス・キリストですね。

さて、当CEOは個人的にCGによる航空映画にはあまり・・・むしろ実機といわないまでも、模型を使った特撮のほうに萌えます。余談ながら機長の父親が残した納屋の中の セスナ172 は実機で登場します。

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