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2013年7月 3日 (水)

キネマ航空CEO 回転翼機のオスプレイはどうなのよ?(その6)・・ホバリングを考える前に考える

ずいぶん間を置きましたがオスプレイの記事を再開します。

さて、毎度の前置きですが、オスプレイのカテゴリーは現在、公開して校正中です。したがい記述を変更する場合もあります。

既出のオスプレイ(その4)の記述の中で、オスプレイの三軸慣性能率を比較した式の不等号の位置を間違えていました。これに伴う記述を一部変更しましたが論旨の変更はありません。ややこしい記述となっていたことをお詫びいたします。

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 今回はヘリコプター特有の性向を探ってみます。ただ、先の回で延べたようにヘリコプターの動的な安定などは当CEOの手にあまります。(・・・そーです! 「手」じゃなくて「頭」ですけど・・・)

 したがい、今回も知っている人は知っている話です。・・・が、少しは突っ込んでみようと考えています。

 固定翼機の危険な飛行域は離着陸、特に重量が最大となっている離陸時に低速で揚力をコントロールしている状況となります。

 回転翼機の場合では前進飛行中の超過速度域と固定翼機の離着陸に相当するホバリングを含む下降中の揚力のコントロールについての二つの状況があります。

 まず一般的な前進飛行中の揚力つまり、ブレードが空気を切る速度の話です。

Relative_velocity  今回も欧州系ヘリコの回転方向で話を進めます。オスプレイでは左側のローターに相当します。

 ローター・ブレードで得られる揚力はブレードの翼型に直角に接触する空気の速度で決まります。正確には、これに加えて接触する個所の迎え角によって決まります。

 ブレードの回転による揚力にかかわる速度は、半径×角速度( rω )となります。同時に機体の速度が合成されますので回転するブレードの位置で変化します。(図はローターを上から見た場合です)

合成された相対速度を VR とすると、

Problem_caused_by_relative_verocity   VR = rω - V sinφ

ブレード上の任意の半径 r
ブレードの回転速度 ω
機体の進行速度 V
時計回りのブレード回転位置 φ

 ローターの回転位置 φ0°→ 90°→ 180°→ 270°→ 360°( =0°)と回転する間に sinφ 0 → 1 → 0 → -1 → 0 と周期(サイクリック)変化します。

 つまりブレードが後退している区間(右側)の相対速度 VR はブレード回転速度より遅く、前進区間(左側)は速くなる。

 このためサイクリック・ピッチ・コントロール・レバーでブレードの迎え角(ピッチ)を右は大きく、左を小さくして左右の揚力をバランスさせますます。

 この結果、迎え角を大きくした右のブレードは失速角に近づきます。

 理屈上はサイド・バイ・サイドのオスプレイでは左右の鏡面対称なのでサイクリック・ピッチでバランスをとる必要がないのでは、

・・・とも言えますが、機械的に左右のローターが連動しているとはいえ肝心の大気の状態までもが、常に左右同じとは言えません。

 むしろシングル・ローター機では重心の真上にローターがありますがサイド・バイ・サイドのローターでは重心から離れており片側のローターにかかる気流の変化は機体の姿勢に大きく影響します。

 次に、ブレード半径が小さい内側では相対速度が 0 に近くなり、たとえ、迎え角があっても揚力はえられない範囲もあります。 

すなわち、先の式を VR = 0 として変形すると

  r =  V sinφ/ω

 V が大きくなると計算上の速度0域の中心は外側に移動していきます。さらに言えばその内側ではローターの翼型は逆向きに空気を切っている状態になっています。

 多くのヘリコのローターの付け根が翼型ではなく棒状であるのは、これで生じる左右の揚力のアンバランスを小さくするためと思われます。

 そして、オスプレイはこの部分を、(その5)で述べたようにオートローテーションの障害になるカフスで翼型に成形しています。つまり固定翼機のプロペラとしての機能を採用してバランスもしくは妥協させています。

 そしてもう一つ、ヘリコではブレードが前進している区間ではブレードの回転速度に機速が加わり音速に接近していく区間も生じます。このために先端に後退角を持たせる場合もあるようです。

 ヘリコプターの速度性能の限界がこれら三つの現象によって決まります。オスプレイはこれらの現象に対する妥協とバランスをティルト・ローターによるベクター・スラストという方式で解決しようという工学的な回答ということになります。

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 さて、次回のホバリングの考察にもかかわる回転翼を持つヘリコプターの運用の問題として、ローター・ブレードの外端に生じる現象を固定翼機の翼端渦後方乱気流の関係と同じような揚力に寄生する現象として理解する必要があります。

 ヘリコのローター・ブレード端の渦は、当キネマ航空 007便 の「テルマ&ルイーズ」の ベル206 (キャプチャー写真付き)、006便 の「アルマゲドン・コード」で ユーロコプター・ガゼル 、邦画では「戦国自衛隊(1979)」の シコルスキー S-62 などスモークが焚かれるアクション映画のなかで観察することができます。

 これらの映画で見られるように、前進しているヘリコのローターが起こす空気の流れ(吹き降ろし)は真下に向っているわけではなく斜め下方に進みます。詳しくは、キネマ航空CEO プロペラの勉強をする を読んでいただくとして、米軍からは次の図が公表されています。Natopswaketurbulencechart_png135050

 オスプレイが軍用機として必須な機動である編隊飛行をおこなう場合にヘリコ・モードの編隊間隔を指示した図面です。飛行速度90km/hです。

 後続機は先行機を前方30°の方向(リード角)に見ながら75m離れ、7.5m上方に定位する必要があります。

 編隊で旋回する場合、旋回の内側にいる後続機は自動車の内輪差のように速度を落とすとか、間隔を広げるなどの操作をしなければ先行機の乱気流に巻き込まれる可能性も生じます。

 通常のヘリコでは後方の乱気流は一本となりますからリード角は小さくできます。

 図の赤い部分はよじれて流れる「吹き降ろし」でオレンジからグリーンのグラデーションの部分はその周囲の静止した大気を巻き込んで乱れた渦状の流れがある範囲を示しています。

 ブレード端渦(以下、翼端渦)はこのグラデーションの部分に存在します。

 高速飛行中のヘリコの「吹き降ろし」は固定翼機のウェーク・タービュランス(後方乱気流)と同じ状況をつくります。

 重いヘリコのほうが後方乱気流が大きくなるのは固定翼機と同じです。だからといって、オスプレイは危険ということにはなりません。

 これは民間の(もちろん報道機関を含む)ヘリコも同じで、適切な編隊フォーメーションの訓練を守らないパイロットのほうが危険といえます。

 軍事的な優劣は分かりませんがオスプレイは、タンデムやシングル・ローターの通常のヘリコに比べて横に(少なくとも翼幅の半分7.5m以上)広く散開した編隊で飛行することになります。

 また密集した隊形での着陸はむつかしく、広く散開して行うか、時間差を設けて密な陣形を構築するか、を選択することになります。TVで移される沖縄基地での運用訓練は固定翼機と同様な滑走路を使った時間差着陸のようです。

 垂直離陸機といえども大量に人員、貨物と燃料を搭載した離陸では滑走離陸が必須ですが、この場合は短い時間で編隊のエア・ボーンを行うために長い滑走路を使って離陸位置を分けて先頭から順番に離陸することでそれぞれが前方機の後方乱気流の上を専位することで可能のようです。また、3機を一編隊として順番に離陸後、一番機は右旋回、二番機左旋回、三番機直進で上昇して編隊を組み直すなども考えられます。

 ただし風上に向かっての離陸ではその風で後方乱気流が流され、風向や風速によっては後続機の片側のローターだけがその中に突っ込むことも考えられる。ベース・ウォッチングでは風向、風速とともに編隊の離着陸の間隔やパターンなどの運用方式を比較観察してみれば高速性や航続距離ばかりが強調されている運用上の利点に隠れた弱点がわかるかもしれません。

(こうしたデータを集めるのも沖縄にひそんでいるという、どこかの国のヒューミントの仕事の一部となりますが退屈な仕事ですね・・・閑話休題)

 さて、山岳地の峡谷を縫った編隊飛行では、先頭から階段状に上に散開した編隊を組むことは通常のヘリコと同じですが二倍近くある横幅からして、あまり得意な作戦空域とはいえなさそうです。

 どうも、オスプレイは障害物のない、あるいは、少ない、砂漠や平原、森林、海岸線などの平坦な地域へ、ヘリコプター並み、もしくはそれより良い気象条件で離着陸できるスポットの間を高速展開をする作戦計画に特化した要求仕様で設計されたと考えられます。

 気象条件といえば、飛行機とこれにかかわる自然の風を、飛行機では「km毎時」、風速では「m毎秒」で表します。同じ単位で比較すると風速10mは時速では36km/hで、しかも平均値です。

 風は呼吸するように瞬間風速として吹いています。瞬間、瞬間の風速は46-26km/hの間で変化しているのかもしれません。たとえば時速90km/hで飛ぶヘリコにとっても極低速ではフラッペロンを最大に下げて飛ぶオスプレイにとっても一定ではない自然の風の影響は無視できません。

 現実は、ここで当CEOが行っているような教科書的な検証では手の届かないところにあります。

 日本国内の山岳地でのヘリコ・モードの低空訓練については上記の原則から推定される運用論もさることながら、山岳風(都市では高層建築風)による突風がサイド・バイ・サイドヘリコのローターや機体に時間差を持って与える空力外乱が飛行姿勢にどのように影響するのか、などの技術的な予測を、反対派が一本調子で欠陥と主張する機械要素の信頼性からは離れて、将来の航空機ビジネスにつながるかもしれない垂直離着陸機の概念設計として工学的な検討をNASA(アメリカ航空宇宙局)をモデルにした日本の政府機関はやっているのかな

 それとも科学立国日本の専門家や政府の技術関連機関は長い時間で積み上げたタンデム・ローターの実績と同じと考えてNTSB(アメリカ国家運輸安全委員会)の結論が出るまで三猿を決め込むのかな

 どーも、いしいひさいち=ハーバーマス効果が抜けてないな

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 余談ながらシーナイトやチヌークなどのタンデム・ツインのヘリコの後部ローターが前部ローターより高いのはエンジンやギヤ・ボックスの配置もさることながら、前部ローターの「吹き降ろし」を避けるためです。

 しかし前後のローターの回転面が重なっている範囲では干渉が発生しており振動やローター効率低下などの問題もあります。いっぽうのオスプレイでは左右のローターの「吹き降ろし」の干渉は基本的にはありません。

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しばらく中断していたため前回に上手くつながっていませんが、次回からホバリングなどの話に入る予定です。

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コメント

CEO、こんにちは。
記事を拝見しましたが、正直なところ計算だとかそういうのがさっぱりわからずで、
9割は理解できませんでした。もしかしたら、1割もわかってないのかも…。
でもその1割で全部読めた気になっちゃっいました(今日に限らず私の読書はいつもこんな感じですが)。
オスプレイが話題になったとき、この100年の進歩の第2幕を迎えるかもしれない、などと勝手に想像しながら、旅客機がオスプレイ型になったら空港はいずれ小さくなっちゃうなぁ、だとか、でもたくさん空港が出来るよね、などと考えておりました。
ホバリングの話、楽しみにしています!

こんにちは、竜子さん

ご来訪ありがとうございます。
書いている当CEOもヘリコプターのことはよくわかりません。
なにぶんにも当CEOがヘリコに乗ったのは航空自衛隊のシコルスキーS-55(星形エンジンですよ!)に体験搭乗した数分間だけです。!

一つ言えることはヘリコの飛行にはパイロットの技量のウェイトが大きくかかわっているようです。

オスプレイで一般にも知られることになったオート・ローテーションは実際には体験したくないですが、アメリカ映画「ブルー・サンダー(1983)」で疑似体験ができますよ。
(当キネマ航空006便のコマーシャルです)

ホバリングの話、進めてはいますがヘリコプターの日本語の専門書って少ない上に書いていること自体がよくわからない。なにか肝心なところが書かれていないようです。

そこをどういった切り口で切り込むか、「ご期待ください!!」、と大見得を切っていいのかな?

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