無料ブログはココログ

« キネマ航空 飛行機を作る映画で飛ぶ 011便の就航をアナウンス | トップページ | キネマ航空 011便拾遺 その2 『超音ジェット機』編・・・自動車の自動化について »

2014年7月20日 (日)

キネマ航空 011便拾遺 その3 『アビエイター』編 P&W ワスプ・メジャーとCWC ターボ・コンパウンドについて

2014/07/15 22:30 キネマ航空 011便 が就航いたしました
ご搭乗をお待ちしております

フライトプランは こちら

フライト011 で上映している『アビエーター』で囲みの原稿を書きながら平行してまとめていた文です。両方読んでくださいね。

ヒューズ・エアクラフト社がかかわった固定翼機の『XH-11』と『H-4 ハーキュリーズ』に使われたエンジンは空冷星型4列28気筒プラット・アンド・ホイットニー R-4360 ワスプ・メジャーの系列でした。

このエンジンがプラット・アンド・ホイットニー(以下P&W)社が生産した最後のレシプロ・エンジンでした。優れた軍用航空エンジンではありましたが民間機としては扱いにくいエンジンのようでした。

民間機として採用したのは、B-29 のカーチス・ライト R-3350 で手をやいていたボーイングがそのB-29 をベースにした旅客機ボーイング モデル 377 ストラト・クルーザー、この一機種だけでした。

ストラト・クルーザーすべてがエンジンに原因あったわけではありませんでしたが運航に支障をきたすインシデントに加えて事故率が高く、生産数も56機で終わり、運行する会社も減ってゆきました。

----------------------------------------

いずれの業界においても一、二を争うライバルと付かず離れず我が道を行く第三の競合社があってこそ進歩します。

この時代のP&W社に対抗するライバルはカーチス・ライト社でした。カーチス・ライトの最後のレシプロ・エンジンは空冷星形2列18気筒(直径1,413mm)R-3350 ターボ・コンパウンド・タイプでした。1 列あたり9気筒ですから日本は冷却問題で4列化を諦めた形式です。

ターボ」とはエンジンの排気のスピード(すなわちエネルギー)を回転力に変える装置です。この場合はその回転力を使って圧縮機を回して圧縮した空気をレシプロ・エンジンのシリンダーの中に送り込んで馬力を向上させるシステム(ターボ過給)を指しています。

コンパウンド」はターボ過給をしても、なお余る回転力をクランク軸(を含む出力軸)に戻して更なる馬力アップを図るメカニズムです。

ただし直接戻したら振動でどこかが壊れてしまうので流体継手(フルード・カップリング。自動車に使われているトルクコンバーターの原型でトルク増幅機能はない)を介してつなぎます。R-3350 では一基あたり6気筒をまとめるターボ・コンパウンド・システムが3つ付いていました。

ターボ・コンパウンド化 によって離昇出力は2,200hp/2,800rpmから3,200hp/2,900rpmと飛躍的な向上を遂げました。

ベースとなったR-3350ボーイングB-29 を頂点とする軍用機が主体(戦時中だから当たり前)だったが、一番燃えやすい金属であるマグネシウムの合金を多用したので飛び散った油が燃えるのではなくエンジン本体が燃えるという珍しい事故が頻発しておりました。

ということは、機体に取り付ける部分も燃えるということですからエンジンを落っことす事故もあったようです。『クワバラ、クワバラ』でも、雷じゃないから呪文も利かないな。

ターボ・コンパウンド化は戦後の民間機に当て込んだ馬力競争へ向けた改造でした。まずはベースとなった非ターボ・コンパウンド・システムR-3350を採用していたロッキード コンステレーションの更新機種であるスーパー・コンステレーションに採用されます。ちなみにコンステレーション・シリーズTWAのハワード・ヒューズ一押しの快速旅客機でありました。

旅客機製造に再参入を計るボーイングワスプ・メジャーで早々と脱落し、旅客機では一方の雄であるダグラス社はP&W R-2800 ダブル・ワスプを採用していたDC-6 の更新機種となるDC-7 からカーチス・ライト R-3350 ターボ・コンパウンドに乗り換えました。

いずれにせよ、民間のレシプロ旅客機の終焉をともにしたのは、気筒数は10本少ないけれど、ライバルと同じように整備性には問題の多いカーチス・ライト R-3350 ターボ・コンパウンドでありました。

カーチス・ライト社は民間機に採用されたエンジン・メーカーとしてはウィナーとなりましたが製品寿命は短いものでした。シンプルな構造のジェット・エンジンやターボ・プロップ・エンジンの登場がこの時期に重なっていました。ボーイングはこの機会をつかみ、やがては米国唯一の大型旅客機メーカーとなります)

ここで、航空の黎明期の両雄の名をとった カーチス・ライト社は航空機エンジンの生産から撤退して1950年代には部品事業に特化しました。

いっぽうのP&Wは、ターボ・コンパウンドなどのギミックには深入りせず、経験などなかったジェット・エンジンの技術導入に傾注しました。今ではゼネラル・エレクトリックGE)、ロールス・ロイスRR)と並ぶエンジンメーカーです。
GEは戦時中の軍需品の相互供与で政府が英国より入手したパワージェッツ社のパワー・ジェット W.1 の技術評価を受注していました。ちなみにP&Wは戦利品であるBMW 003の情報を入手します。ご参考は こちら

P&Wワスプ・メジャーは別の面で長生きでした。ボーイング377(含む軍用型C-97 ストラト・フレイター)をエアロ・スペース・ライン社で改造して、ロケットや飛行機の半完成部品を運ぶ西側の大物搬送用輸送機となった、プレグナント グッピー『ミニ・グッピー(一部はターボ・プロップに換装)のエンジンとしてそのまま使われました。(機体の大幅な改造を施したスーパー・グッピーは最初からアリソン・501-D22C ターボ・プロップ・エンジンに換装されました)

機体そのものは特殊用途の専用機であることで旅客機ほど酷使されることもなかったのか、最初からターボ・プロップに換装された機体はフランスでエアバスの生産に使われるなど長生きでした。いまでも予備機として保管されているそうです・・・P&Wはジェット・エンジンをどこかで買ってくれるなら・・・でも敵に塩を贈ることになったボーイングとしては、どうなんだろうなあ・・・

で、ワスプ・メジャーP&W)とターボ・コンパウンドカーチス・ライト)では、「結局、どちらが優れていたの?」 となると採用した軍用機の機種では最大出力の差もあるのでしょうがワスプ・メジャーが圧倒的に数が多い。

とはいっても時代が時代だから成功した機種はすくないのだが、プロペラの強度対策の後は完璧な整備と注意深いフライト・エンジニアがいればそれなりに信頼性は高かったと思える。

民間機でのワスプ・メジャーの失敗は先行して爆撃機ベースの機体にマッチングの悪いプロペラを組み合わせて採用されたのが不運だった、と言えそうだ。後から続くユーザーは何れを選ぶかではなく、同じものを採用するか別のライバルを採用するかの決断だから楽ではあります。

・・・が、飛行機だって早くつくって早く売らなきゃならない。エンジンと機体の需要と供給のバランスに加えて政治的な圧力もあるんだろうなー。

軍用機はというと、機体メーカーがエンジン・メーカーを決めるというより、国が他の機体メーカー分も含めて数をまとめてエンジン・メーカーと価格交渉して購入後に有償支給をする契約なので自由度は少ない。でも、今では民間機向けの数のほうが多いので、民生用エンジンの共用レベルでは少しは変わったかも。

--------------------------------------------------

技術史として見れば一つの分野の工業製品が頂点を迎えるとき、『なるほど』の技術の組み合わせで、性能上は誇れる数字を示しているが、どことなくあやしげな構造の蔭に問題が隠れているようだ。

ワスプ・メジャーの点火プラグなんて一気筒あたり2本、一基あたり56本。旅客機にするにはx4で224本と同数のコードに加え点火コイル、分配器などの補機が必要になる。理屈は既存の技術を連結しただけだが、数が増えれば整備コストもリスクも2倍かそれ以上になる。

いまの自動車で経験することはまずないが、冷気始動時にプラグ被りを起こして始動できないとカウリングを外し、エンジンのプラグをすべて抜いて乾かして再装着しなければならないのです。(ガソリンが気化せずプラグの先端が濡れてしまったら通電抵抗がなくなり点火のための火花が飛ばない)

--------------------------------------------------

飛行機を推進するレシプロ・エンジンはジェット・エンジンでいわゆるパラダイムの変換ができた。

しかし、人間の生活をけん引する原子力を含む発電のパラダイムはどう変わるのだろう。自民党政権はパラダイム変革の気はなさそうだが・・・。

« キネマ航空 飛行機を作る映画で飛ぶ 011便の就航をアナウンス | トップページ | キネマ航空 011便拾遺 その2 『超音ジェット機』編・・・自動車の自動化について »

おすすめフライト」カテゴリの記事

フライト011」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/570012/59999784

この記事へのトラックバック一覧です: キネマ航空 011便拾遺 その3 『アビエイター』編 P&W ワスプ・メジャーとCWC ターボ・コンパウンドについて:

« キネマ航空 飛行機を作る映画で飛ぶ 011便の就航をアナウンス | トップページ | キネマ航空 011便拾遺 その2 『超音ジェット機』編・・・自動車の自動化について »

2017年11月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30