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2015年4月22日 (水)

『心情リベラルの文明論を考える(インターミッション)』(よく分かる A I I B のすべて、の巻)

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二回前の記事の、『心情リベラルの文明論を考える』 (地政学の巻) で言及したアジア・インフラ投資銀行(Asian Infrastructure Investment Bank、A I I B)の創立時の陣容が決まったようだ。

Aiibmap_from_wikipediaマップで見てみよう。国名はウィキペディア アジアインフラ投資銀行を参照。図は同ページの地図の表示を加工してあります。
(図は左クリックで拡大ポップアップできます)

珍しく北朝鮮が日本と共同歩調を取っている・・・のではなく中国から拒絶されたため。

台湾、香港は国じゃないと体よく創立メンバーから外された。

では中国は A I I B で何をしようとしているのか、のグランド・デザインが少しずつ開示されています。

One_belt_and_one_road
左は中国のTVもしくはWebからの図の二次か三次利用です。

いかがです、なにか思い出しませんか ?

そう、大東亜共栄圏です。

日本はまず北京を目指しますが膠着状態となり海を利用することでフィリピン、南洋、東南アジアを征し、インドを独立させ、スエズ運河の制圧を目指したようです。この過程で米国を布哇で封殺して太平洋を二分する計画が自分側の半分で真正面の海洋戦となりました。ただ現実の海洋戦は諸島の陸上戦を重ねる戦闘だった。

つまるところ日本も中国大陸の統治のもくろみに成功すれば八紘一宇のシルクロードの再建も考えたでありましょうがほぼ4分の3世紀を経て中国で実行プランが立てられることになりました。ちなみに「八紘一宇」は日本の専売特許ではなく中国の成語からの合成、すなわち和製漢語のようです。

この陸のシルクロードの再建は20世紀初頭ですでに考えられていました。中国ではなくドイツ帝国からでした。しかし第一次世界大戦で頓挫します。

第一次大戦は地政学的にドイツの海洋展開を阻み植民地利権を抱える列強連合と植民地争奪争いに出遅れたドイツからオーストリア=ハンガリー・ブルガリア・オスマン帝国とヨーロッパ大陸を東に延びる(パキスタンひいては中国、インドの喉もとに迫る)中央同盟とに分かれた戦いでもありました。

中国はこれらの近代歴史を十二分に研究しているはずです。なにしろ(特に日本からは第一次大戦では間接に、第二次世界大戦では大東亜戦争として直接に)対象とされていた国です。

歴史的推移をみると下手に戦争を起こせば条約を梃子にし、あるいは反古にして国々の思惑が動きだし、思わぬ変化が生ずる。第一次大戦では戦勝国になるはずのロシア帝国が崩壊し、第二次大戦では大日本帝国の自壊を待って共産国家を成立させて台頭してきた大陸中国としては、いまでは守りの側に立つことになる。(実際は血統に替わる一党による帝国主義だけどね)

結果として米国が出てこない偶発戦争の危険は織り込んで、軍事プレゼンス(周辺の自治区や海洋ではプレゼンスだけではない)の下(もと)での西側の外縁を囲い込む平和的経済システムを構築(いってみれば近攻)する・・・つまりは世界銀行(World Bank 以下 WB )を相手とする貸出し金利や延払い条件の自由主義経済の競争原理による金融経済競(戦)争を選択した。

さて、下表は「世界経済のネタ帳」から<世界の名目GDP(USドル)ランキング 2014版>のデータを加工整理した地域とGDPの関係です。国別GDPはこのサイトで確認ください。

AIIB参加国GDP 単位:10億US$
地域 参加国 地域GDP 参加GDP GDP地域比 参加GDP比
アジア 24 19 22,308.08 16,865.99 28.9% 75.6%
アフリカ 53 2 2,449.68 636.52 3.2% 26.0%
オセアニア 13 2 1,666.83 1,642.31 2.2% 98.5%
ヨーロッパ 50 24 22,336.98 20,010.27 28.9% 89.6%
中東 14 9 3,532.45 3,164.00 4.6% 89.6%
中南米 32 1 5,800.39 2,353.03 7.5% 40.6%
北米 2 0 19,207.65 0.00 24.8% 0.0%
合計 188 57 77,302.06 43,919.66 100.0% 56.8%

世界の富はアジア、ヨーロッパ、北米で80%を三分し、石油でリッチな国が多いはずの中東は5%にもとどかない。

統計に入っている国は188ヵ国で創設時参加国は57ヵ国。出資額はGDPベースと仮定すると地球上の全GDPの57%から集めることとなる。

地域別の出資比でみるとアフリカや中南米が低いのは融資対象地域ではなく投資もしくは中国との外交上の参加。(融資先は名前からアジア地域とされているが中国の指導下では将来には設立地域を示すことに読み替えられるかもしれないけど)

大口の出資を支えるヨーロッパやGDP出資比率の大きい中東は金融および将来市場への投資であろう。また同様だが自称イスラム国(以下 IS)への安全保障の意味もある。

投資を受けられるオセアニアで参加GDP比はオーストラリア、ニュージーランドの2国のみで99%を占めている。言いかえれば中国のねらい目でもあるもっとも脆(もろ)い地域に介入しておくためである。

北米で特にアメリカが入らぬのは中国の戦略(天下三分の計ならぬ太平洋二分の計)の真の敵であることを自覚していることで、主導するWBを使った融資条件のチキンレースを選んだことになる。

(三分の計:一般に人事を含め組織を3分して管理するのが常識であり、中国としては北米、ヨーロッパ、中国+アジアの3分の計がベースにあるのは間違いない。やっていることは往時の日本に比べればいろんな意味でのスマートさはある)

ちなみにWBは世界の金融市場でWB債券を発行して調達しているがAIIBは参加国の国家予算からの出資のようだ。

WBは設立後70年近く経過して制度改革を迫られてもアメリカの抵抗で実施できていない。中国はそこを衝いてきた。つまりは市場金融経済のチェックとは距離を置く中国の政治判断での融資が可能になるシステムの構築が受け入れられる時代になった。

ひるがえってアジアの出資は、というと主要地域が軒並みGDP比の90%以上からの出資が見込めるなかで15ポイントも低い。これが銀行の支店なら支店長の首が飛ぶところだが本店地域なのでそれはない。

ひとえに日本が参加しないためである。日本が参加すれば出資GDP比は96%に増える。逆に中国の出資がないとインドや韓国があっても29%に過ぎない。

いかにアジアの富が偏在しており、フィリッピンやベトナムのように中国からの政治リスクを抱えていても融資を期待しているかがわかる。もちろん日本やアメリカとの天秤を考えながら。

余談ながら日本のGDPは中国の50%。日本と中国を合わせてもアメリカの86%である。しかしAIIBは市中金融に直接には関わらないでアメリカの4.4倍のGDPベースの資金を中国が手にいれられる可能性を確保したことになります。これが戦争を手段としない国力でありますね。

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では日本の戦略はというと、今のところ出資カードを温存したことになるが「バス乗り遅れ論」が出てくる。(たぶん政府には常に反対もしくは政争の立場からの反対と思えるけど)

いっぽう、AIIBの投資リスクは、というと第一次大戦の勃発に見るように民族や宗教といった地政学の要因による失敗や遅延の可能性が大いにある。

現時点では中国独自のシルクロード基金からの融資でパキスタンを目指す計画が動き出す。始点は武力を使って民族・宗教といった人権を封殺した新疆ウィグル地区であり終点は米軍のプレゼンスの低下が予測されるイスラム地域を通した海洋への回廊である。

ある意味ではイスラム文化圏を通り、あるいはかすめる西のシルクロードへの試行となる。具体的に西に向かって実行するとなると、IS の潮流との戦争をおこなわないで経済活動を実行するための裏金をマネーロンダリングする機関に、にもなりえる。

逆に観れば自由主義圏からは中国の膨張をつかってISとの暗闘をおこなわせる選択肢もでてくる。(閑話休題)

AIIBを機構とすればいまのところ不透明この上ない状態でありますね。イギリスが先頭を切って参加したのは歴史の(Mi2いやMi6?だったかインテリジェンスによる遠交の)血が騒いだのでしょう。(じゃあ、近攻は、って言わずもがなですよ・・・ヨーロッパにとってはね)

とはいえ、アメリカとは公表されない意思の交換があったと思われます。自由陣営の仕掛ける地雷にもなれますからね。こうしたことは中国も外交の基本として百も承知でしょう。

あとは西欧からの参加意思の表明に先頭を切ったことでどんな固有の条件で参加できるかです。こうした組織が全員一律の条件ということは表にあっても裏ではありません。どんな金であれ利益があればそれにこしたことはありません。

現実に中国の戦略として成功する可能性が高いのはアメリカと豪州などの経済圏のバランスで実行できる南太平洋であるが、この地域であれば日本もプレゼンスを示せるはずです。

つまり日本はカードを使うため、あるいは使わないため、またその奥ではISに対して、日本の不得手なインテリジェンスが問われているのですね。

AIIBに対抗する低GDP国を対象とした公的融資機関は「世界銀行」のほかにも、日本を含めて各国、各地域に独自の政策銀行として存在しますが融資側の個別案件審査が諸事情で上手く回っていないというのが実情のようです。

中国はこの案件審査条件緩和カードと金利や延払いの条件のカードを組み合わせたり、トレードオフしたりと使い分けて市場に打って出ることになります。

ある意味では中国は世界経済では強力なリーダーシップが望まれていることを承知し、低GDP国はリスクがあってもそちらを選ぶという・・・日本国内では安倍政権が同様のポジションを持つという、かつて心情的リベラルを自認する団塊の世代が安住していた時代が終わりつつあることを考える時に立ち会っているようです。

「花に雨 亜米利加(メリケン)は遠く なりにけり」。いや、「・・・弱く なりにけり」 ・・・中七字余り。
メリケン:一般にメリケン粉のように舶来(輸入)品を指す。元は リケン(American)より。アクセントは昔のほうが正しかったようだ。戦争は風、平和は雨、と花の散らしかたは違えど、過ぎ行く今は昔を偲ぶ雨です。

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