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2015年7月29日 (水)

キネマ航空CEOの 「シングルとタンデムのあいだに」 の巻 その 2

(承前)
シングルとタンデムの相違は(その 1 )の6番目の図の説明のように許容重心位置の範囲にあります。

H54e_work_space1abホバーリング状態で考えると考えやすい。

ローター・ブレードの先端が描く円をピッチ・パス・プレーンと呼びその円の面積(ローター・デスク・エリア)が固定翼機の主翼面積と飛行速度にあたる。

このときブレードは機体の重さで下からあおられた番傘のように反り返っている。

無風状態のホバーリングではローター・デスク・エリアが水平となった状態であり、成り行きでその中心軸の真下に機体部分の重心がくる。

このときの中心軸はローターの機械的な駆動軸と必ずしも一致はしない。

この辺りはローターを制御するスウォッシュ・プレートとコレクティング・ピッチ・コントロールの回をご参考に・・・(ずいぶん前になるなあ)

シングル・ローターの機体の静止姿勢は重心位置による成り行きで一義的に決まるのですね。上図はCH-53A-D 以前のタイプに相当します。(テール・ローターはメイン・ロ-ターに直交しておりトルク反力を打消して正常に機能している状態です。)

そこでシコルスキー社は考えました。(閃いたのかな) Ch53_hovering_balance

メイン・ローターのトルク反力を打消すテール・ローターの推力を上向きにしてやれば、力は小さくても梃子の原理でメイン・ローターの揚力をカバーして重心位置の許容範囲も広げられるのではないか !

それを実行に移したのが CH-53E でした。

シコルスキーのエンジニアが選んだのは20°でありました。三角関数(tan 20°)からはメイン・ローターのトルク反力に対抗する力の36.4%の力を揚力に回せそうです。

もちろん、増加するテール・ローターの仕事量はエンジンから供給してもらいます。いっぽうメイン・ローターの仕事量はその分減少します。機体の重さは同じですからね。

これらの力の釣合いを求めるには二つのアプローチがあります。

ひとつはエンジン出力から始まる二つのローターの推力からはじめる方法。これにはローター(プロペラ)効率という係数が独立して必要となる。

もうひとつは、とにかく自重に釣合ってホバーリングしているのだからメイン・ローターのトルク反力と釣合うテール・ローターに働く力の影響を中心に進める方法がある。

後者は発電機、油圧ポンプ、冷却ファン駆動、などなどプロペラ効率を含めてすべてをひとつの仮定で(まあ常識的な値に)収めることができるので今回はこちらで進めます。

まず、図中の用語から、( )内は単位

・ 動力回り
 PM
:メイン・ローター出力、PT:テール・ローター出力 (PS)
 NM:メイン・ローター回転数、:テール・ローター回転数 (rpm)
 RM:メイン・ローター・トルク反力、RT:テール・ローター・トルク反力 (kgf )
 (添字の M はメイン、T はテール)

・ 力と自重
 J:メイン・ローター・トルク反力(テール・ローターで釣合う) (kgf)
 K:テール・ローター・トルク反力(メイン・ローター・ローターで釣合う) (kgf)
 LM:メイン・ローター揚力、LMV:メイン・ローター垂直分力、LMH:同水平分力 (kgf)
 LT:テール・ローター揚力、LTV:テール・ローター垂直分力、LTH:同水平分力 (kgf)
 (添字の M はメイン、T はテール、V は垂直方向、H は水平方向)
 W:機体重量 (kgf)

・ 寸法関係
 C: ローター軸間距離 (m)
 E: メイン・ローター中心から重心までの距離 (m)
  θ: テール・ローター傾斜角 (deg)

各ローターのトルク反力は次式で計算できる。
 T=75P/(n) (kgf ‐m)・・・(a)
   P=(1/75)(2πn) T (PS) :仏式馬力の覚え方は角速度(1/s)にトルク(kgf-m)を掛けて75で割る。
 n = N/60 (1/s) 分単位を秒単位に換算
 P = (1/1.04) x shp 英国馬力(Hp)を仏式馬力(PS)にする換算式
 (アメリカの公称馬力は英国馬力を採用して軸馬力shaft horse power(shp)で記載し国際標準(ISO)単位のKwを併記するようだ。ちなみに日本は仏式馬力がJIS化されている)

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ここから前半に述べた仮定の話になります。

まず、上図にはないエンジン出力 PE と図にある二つのローターに分岐された出力 PMPT との関係です。

PE は、まず補機類を駆動する PACC が差っ引かれてローターの回転数に合わせるギヤ・ボックスに入ります。ここで歯車の噛合損失などでさらに低下します。ここでは伝達効率ηGB という考え方を使います。つまり、二つのローターに利用可能な出力は P( M+T ) =ηGB ( PE - PACCと乗じて使います。

PACC といえども PE の一部なので kE = PACC/PE として P( M+T ) =ηGB ( 1 - kE )PE としておきます。

さらにここでテール・ローターに分岐され PT となるのですが、ギヤボックスからの伝達には等速ジョイントを備えたドライブ・シャフトを経てテール・ローターの向きに方向を変えるトランスファ・ギヤ・ボックスを通るためここでも伝達効率ηTF が生じます。

ここで γ= PT / PM テール・ローターの動力分担比を導入しておきます。ただ、ηTF がこの分担比の中に含まれているかどうかははっきりしません。しかし参考書の文意からすると含まれているようで、テール・ローターの実質馬力を PT とすると γ= (1/ηTF)PT / PM となります。

以上を整理しておくと

P( M+T ) =ηGB ( 1 - kE )PE = { PM + PT /ηTF } = (1 + γ) PM より
PM = ηGB( 1 - kE )PE /  (1 +γ)
PT = ηTF・γ/ (1 +γ)ηGB( 1 - kE )PE   

推定もしくは仮定が必要なとなるηGB ηTF γ についてはこのカテゴリーで何度かそれらしい数値を上げてきています。

補機類 PACC の消費動力は不明ですがどこかの文献から探してなんとかすることにして、PE から図の釣合式の計算に必要な PM  と PT が推定できます。

つまり必要なローター推力からローター効率を介してでなくても「浮いて釣合っているという条件だけ」でホバーリングに必要な馬力は推定できます。

次回は図の釣合式を整理して重心許容範囲となる e もしくはを E 計算して前回のチヌークと比べてみましょう。

ローター推力を計算せずに最大馬力で本当に浮くのか、ですって ? ・・・エンジンには、時間制限はあるけど最大馬力よりさらに大きい離昇馬力という強い味方があります。まずは信じましょ !

プロペラ(ローター)効率といってもエンジンが賄っていることには変わりはありません。

以下月跨ぎの(その3)に続くのココロだー(by 小沢昭一 & 読まずに死ねるか! by 内藤陳)

 

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