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2015年12月24日 (木)

キネマ航空 CEO ジェット・エンジンの復習を続ける

(承前)

ジェット・エンジンを構成するブロックは圧縮機(コンプレッサー)、燃焼室(コンバッション・チャンバー)、それに適切な日本語がないタービンの三つである。それぞれのメカニズムのキーワードは次のようになる

1.二つの圧縮機
  遠心式:円盤に羽根の列があり、空気の流れが中央から入り半径方向に向かう。
       ジェット・エンジンの創成期に採用された。最近ではダイソン© の掃除機のカタログで外から見える。直径は次の軸流式に比べると大きくなるが全長は短くなる。性能は安定しており小型のターボ・ジェット・エンジンターボ・プロップ・エンジンでは現役である。一方では多段化はむつかしい。
  軸流式:軸に羽根があり空気の流れが軸方向に流れる。
       軸と一緒に回転する羽根列(ベーン:動翼)と圧縮機を包む外筒に固定された羽根列(ステーター:静翼)が一組になり圧縮時に捻じれた空気を次の回転する羽根に効率の良い角度で流れ込むようにこの組み合わせを幾つか並べて圧縮率を高めることができる。一般に動翼列の数を「」として数える(二段圧縮機、多段圧縮機など)

ジェット・エンジンの直径と性能を決める吸気口の直径と比較すると、遠心式>軸流式>吸気口直径、となる。とは言え、遠心式でも星形エンジンというより人間が乗る単座機の胴体より細い。全長を縮めるために軸流式の後ろに遠心式の圧縮機を組み合わせる例もある。

2.三つの燃焼室
  カン型:シャケ缶のカンである。キャン・タイプのほうが正しい。
      創成期の英国系のエンジンの写真で見られるエンジンの周囲に圧縮機からタービンへパイプでつながった円筒状のたくさんの筒である。それぞれに燃料噴射ノズルや始動点火プラグがついている。
      それぞれ独立しているので構造上の強度は大きく、整備もやりやすい長所と始動時の不具合、燃焼の不揃いなどの欠点がある。なお実際の設計では隣り合ったカンは連結パイプでつながれており完全に独立して燃焼しているのではない。
  アニュラー型:圧縮機の後ろ、タービンの前にほぼ同じ外径で配置できる回転軸を中心にしたドーナッツもしくはバームクーヘン状の中空円環形状の燃焼室。
      円環状の筒の中の空間に燃料噴射ノズルや始動点火プラグがある。空気は前後の蓋と底に相当する部分にたくさん(フルイのように)設けてある穴を通過する。
       燃焼室は一つとなり長所、欠点はカン型の逆となる。特徴は前後長を短くできるので圧力損失を低減できる。      
  カニュラー型:アニュラーの中にカンを入れた複合型。キャニュラー・タイプ
       長所、欠点は両者の中間となる。
  (リバース・フロー型
      通常、燃焼室は圧縮機とタービンの中間に置かれるが、エンジン全体の前後長を短くするため空気の流れを折りたたんでタービンを包む環状に置かれる設計に採用されることもある。主にターボ・プロップ・エンジンとして使われる例が多い。なお、燃焼室自体は上記の三タイプが使われる。

3.二つのタービン
  幅流式:形は遠心式圧縮機に似ているが空気は外周側から軸に向かって(遠心力に逆らって)流れる。そのため羽根の形状は異なる。
      幅は【ふく/や】と読み、車輪の輪【わ】(リム)から轂【こしき】(ハブ)に向かう幅(スポーク)の意味があるようだ。
       日本語では方向性の意味を含んでいる技術用語とするため、何らかの理由で「遠心」の対義語である「求心」は使えなかったためであろう。英語ではラジアル(放射状)と形状を表す用語が使われてラジアル・コンプレッサーとかラジアル・タービンとなる。
      幅流式タービンはドイツのジェット・エンジン開発者であるハンス・フォン・オハインの最初の試作品で使われた。
(余談ながら、自動車のエンジンで使われるターボ過給機は遠心式タービンで遠心式圧縮機を回している。空気の流れはジェット・エンジンと変わらない。どちらも熱サイクル機関で、高圧圧縮機と燃焼室はシリンダーとピストンであり、ピストンの上下動を軸に伝て回転力に変えているところが違う)       
  軸流式:構造は軸流式圧縮機と同じでベーンとステーターからなり、高温で膨張した空気を回転力に変えて軸でつながる圧縮機を駆動する。タービンの列の数を段と呼び、通常は 1 段のタービンで複数段の圧縮機を駆動できるが・・・

4.圧縮機とタービンをつなぐ「」(シャフト)と「動翼列」(ベーン):
 現行のジェット・エンジンは上記の機構の組合せで構造が決まるので、都合12通りの案をベースにして圧縮機とタービンの構成を勘案して設計することになる。      
      タービンと圧縮機の動翼列は同じに固定されているがその相方の外殻に取り付けられる静翼列(ステーター)には角度を変えられる可動式もあり運転中の流速に合わせて角度を調整して性能の向上を図る方法もある。
      圧縮効率を上げるために圧縮機のを二分割(前方から低圧圧縮段と高圧圧縮段の順に)して駆動するためにタービンの段を二分割しそれぞれを(前方を高圧圧縮段、後方を低圧圧縮段に)連結するために同心多軸にする(例えば高圧段をつなぐ軸を中空にし、低圧段の軸を通す)場合もある。現在のターボ・ジェットでは 2 軸が使われる。ターボ・ファン・ジェットでは 3 軸も使われる。

      同心多軸はターボ・シャフト・エンジンターボ・ファン・ジェットなど回転力を圧縮機以外で利用する形式でも使われる。

 排気圧力がほとんどない、ターボシャフト・エンジンターボプロップ・エンジンでは中空軸とせずに圧縮機燃焼室圧縮機用タービンの後ろで軸を分割してそのまま取り出す出力用タービン軸とすることもある。(圧縮機と同軸で駆動されていないのでフリー・タービン式ともいう)

      ターボプロップ・エンジンの場合、吸気口は前方にあっても吸気ダクトを折りたたんで後方より前方に向かって圧縮機から順に並べることもできる。もちろん排気口も 90 度折り曲げることになる。

      特異な例ではハリヤーに使われた前後にそれぞれ二つの連動する角度可変排気口を持つロールスロイス・ペガサス(ファンの冷気は前方、ジェットの熱気は後方のノズルから噴出される)では、ホバリングを含む低速時に影響の出る圧縮機に生じるトルク反力を打ち消すため前方のファンを駆動するタービン軸を独立させて圧縮機とは逆回転させている。

      また低圧と高圧の順に配列される圧縮機の場合に各々の回転方向を逆にする例もある。

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以上の構造で達成できるジェット・エンジンの熱サイクルはブレイトン・サイクルと呼ばれます。

さらに身近な熱サイクル機関であるピストンとシリンダーで(燃料)混合気を圧縮し火花点火で燃焼させるガソリン・エンジンはオットー・サイクル、断熱圧縮による高温で自己着火させて燃焼するディーゼル・エンジンはディーゼル・サイクルと人名がついている。

しかし、いずれも理論を解析した人物ではなく実際に作動するメカニズムを作った人たちですね。工学が理論より優先されていた古き良き時代の名残でもあります。

ブレイトンの作った機械はピストンとシリンダー(とバルブ)を使った圧縮機と膨張機の間に蓄圧機を置き、蓄圧機から圧縮された空気が膨張機に入る直前に燃料の噴射と点火を行い膨張機のピストンの直線運動をクランクで回転運動に変える構造でした。もちろん膨張機による回転で圧縮機を駆動していました。熱サイクルとしては後年のジェット・エンジンと等価の理論が成立します。(閑話休題)

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さて、上記に太字で示したキーワードに加えて各部の構造には金属のみならず合成樹脂、セラミックさらには潤滑油や燃料といった材質が大きくかかわることは言うまでもない。

また、ジェット・エンジンが性能を発揮する上での空気機械として必須である(絶対)温度に比例し体積に反比例する圧力を滑らかに加圧、減圧(動圧から静圧へ、またはその逆の)変換をする流路構造などを述べなかった。

ジェット・エンジンが機械として機能できる本質は、(化学反応としての)燃焼、材料、潤滑、冷却、(共振)振動に対する知見を統合した細部構造であるが、これも多くは述べなかった。

ジェットには(高速で顕著になる)空気自体の慣性を利用したラムジェットやスクラムジェットがあるがこれはまた別の話。

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