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2016年1月 7日 (木)

キネマ航空 CEO ダクティッド・ファンを振り返る

(承前 2015.12.14 の続きです)

飛行機が好きな人間は夢が尽きないようで、ターボ・プロップより「より速く」と考え始めました。その前に、まずはプロペラの効率を上げるには・・・というわけで

プロペラ(推進機)というよりファン(送風扇)の周囲を囲む覆い(シュラウド)を思い出します。工事現場やトンネルなどで見かけるアレでありますが、らせん状の針金で補強された曲げられる導風管(ダクト)がマンホールに風を送っています。(時系列の事実ではテキトーです。鍛冶屋のふいご方式だったかも)

そのシュラウドはダクトを取り付けるためにだけあるのではなく、ファンの翼(ブレード)とシュラウドの隙間を狭くして翼端にできる翼端渦を抑えることで減らした誘導抵抗に相当するエネルギーを送風量にふり向けることで効率を向上させています。

プロペラとファン、ダクトとシュラウド。ブロアとどう違うの ?! 厳密にはそれぞれ違うと言えば違いますが外観、大きさ、取付個所などの概念をクロスさせながら時代の中で適当に使われているようです。プロペラとスクリューなんかもそうですね。


飛行機に使おうということでは、イタリアのスティパ〈設計者〉カプロニ〈製作会社〉(1932)がとりあえず飛んで見せ、戦争が終わって28年後に西ドイツで RFB ファンライナー(1973、1976)、RFB ファントレーナー(1978)、イギリスでエジレイ・オプティカ EA-7(1979)などが続々と現れる。

スティパ・カプロニ(YouTube)は、倒立直列のデ・ハビランド ジプシー・エンジンとプロペラが付いたデ・ハビランド タイガーモスの機首部(後側は丸く整形してあります)だけを筒抜けの樽(木製)の口元に押し込んで、ただ飛んだだけ(でも立派なの)ですが・・・見た目はかなりのデフォルメを伴ったスケール・モデルのラジコン・ジェットの原型かな ?

スティパ・カプロニの前に似たような形でとんだ機体もあるのだがプロペラがダクトの前にあり、プロペラの直径がダクトの内径より大きい。機能上はそれなりの効果はあるのだろうが現行の形状や形態とは異なっている。

次のファンライナー は、RFB (Rhein Flugzeugbau GmbH:ライン航空機製造)製です。開発推進者はハンノ・フィッシャーで、コックピットの後方に NSU(現アウディ) 製の舶用エンジンを転用した)航空用水冷式バンケル・ロータリー・エンジンを置き、テイル・ユニット(水平・垂直尾翼を取り付けた胴体構造)の前にダクテッド・ファンと呼ばれるシュラウドで囲まれたプロペラを配置した機体です。

グラマンの子会社で小型機を扱うグラマン・アメリカン社がひと口噛み、主翼などの部品供給を受けて二種類の試作機を作りました。したがい正式名称は RFB/グラマン・アメリカン ファンライナー

Fanl一型(左)は自動車でいうボンネット・フードの上にラジエーター用の通気口がある。高度を上げれば閉じてヒーターになるのかもね。

二型は、イタリアっぽい名前だがドイツ人で工業デザイナーの(曲面の魔術師)ルイジ・コラーニがデザインしました。

なかなかに見栄えの良いこちらのコラーニ・ファンライナーCFLのほうが一般には知られている(はず)

上のリンク先にあるコラージュ・スケッチでは主翼の上反角をなくすなど、細部にコラーニの美意識がうかがえます。

流用した主翼はグラマン AA-1A トレーナー(1968)から AA-5 トラベラー(1970)へと変更されて翼端形状も変わり、一型より翼幅、全長、全高の寸法が(当然、翼面積も、自重も)少し大きくなり、エンジンも NSU バンケル Ro 135からKM871 と出力を上げています。

もちろん、こちらもちゃんと飛びました(もう一つ上のリンクで見る飛んでいる写真では上反角は復活しているようだ)。そして、この機体は何回目かの着陸時に損傷して廃棄となりました。

結局、グラマンは、ふた口の味見をしただけでスプーンを置きました。何を掬ったのか?どんな味だったのか?

でも、西ドイツ空軍が技術評価機として試作予算を付け、タイ王国空軍で使われた練習機 RFB ファントレーナー(YouTube)となりました。

コックピットはサイド・バイ・サイドからタンデムへ、脚は固定式から格納式へ、矩形翼だった主翼は前縁に前進角を付けたテーパー翼へと変更、試作一号機ではロータリーだったエンジンはターボシャフトへ換装して、完全に再設計されています。

当時の主力戦闘機であった F-5E への転換訓練で、ジェット機の操縦感覚が手軽に習得できるということで、エンジンを(アリソン  250-C20B から 250-C20 へ)換装するなど出力を向上させ、型式名をファントレーナー 400600 と変えながら1984年から1988年にかけて45機がタイへデリバリーされましたが生産はそこで終了。

タイ王国空軍も受領後に主翼をグラスファイバー強化樹脂から兵装用のハード・ポイント付とした国産のアルミ合金製に交換するなどがんばったんですが1996年を最後に酣燈社の年鑑からも消えています。

最終的には評価したドイツ空軍も興味を示していたルフトハンザも発注することはありませんでした。(航空機製造ビジネスの世界は厳しいですね。日本はどうなんだろう・・・まず変人がいないか ! )

次の変人がイギリスに現れる。開発者はジョン・エジレイ。太目のナスビ状のキャビンのヘタのあたりに空冷水平対向のテキストロン・ライカミング IO-540-V4A5D で駆動する五枚ブレードのダクテッド・ファンのユニットをくっつけ、主翼から伸びた双ビームの後ろに垂直尾翼を高く掲げて水平尾翼を渡したエジレイ・オプティカ EA-7(YouTube)であります。

コラーニのストリーム・ラインより野暮ったいが英国風の人を喰った野暮粋で当CEOは嫌いじゃありませんが、外観で「バグ・アイ」(虫の眼:ヘリコ並みの視界)とも呼ばれました。窓枠の切り方で昆虫にも亀にも爬虫類にも見立てられるデザインですね。

100km/h 未満の極低速で飛び交通警察用途や送電線の監視などヘリコの観測業務を、よりお手軽なお値段で横からいただく目論見でした。これも、いろいろ(墜落、放火、破産、再起、倒産 etc.)あって 21 機生産したところでとりあえず終り。

ヘリコの場合はメイン・ローターの下降風で送電線に付いた氷を吹き落とすことができると聞いたことがあるが、「バグアイ」ではどうなんだろう)

こうしたユニークな機体のエクステリア・デザインを含めたアイデアを実現させたのはこの時代に実用可能になったグラスファイバー強化などの新しい樹脂による造形の自由度でした。

まあ、同じころ開発されていたバート・ルータンの前翼機と同様に変わった技術や形態は一部の好き者(マニア)を除けばだれも興味は持たない典型の分野でした(その点ではユニークな自作機の設計製作者の系譜は脈々と続いている)

ただこの造形機能に優れたコンポジットと呼ばれる(複合強化)樹脂材料は紫外線や熱(赤外線)、要するに日光に弱く耐久性には難がありました。

(閑話開題=飛ばして頂戴)・・・
ダクテッド・ファンではないがグラスファイバー強化樹脂で造られた前翼式のルータン バリ・EZイージィ)(1975)やロング・EZ(1979)も屋外駐機時には光線を遮るカバーで機体を保護している。

ホーム・ビルト・キットとしてはかなりの成功(700機以上)をおさめたEZ・シリーズの集大成となるビーチクラフト スターシップでも航空機ビジネスの上では「奇抜な形態」と「コンポジット材料」を組み合わせた商品イメージの束縛からは(FAAの認証をえた炭素繊維強化樹脂であっても)逃れられなかった。53機製造したがほとんど売れず・・・

ビーチクラフト社はリース市場から買いもどして在庫機と共に全機切断廃棄処分(金属のように胴体の溶解リサイクルはできない)をする羽目になった。でも一部のオーナーは買い戻しを拒み所有を続けているそうな・・・

ちなみにホーム・ビルド機とはいえEZ・シリーズの事故率はかなり高い。ジョン・デンバーの死亡事故はロング・EZのほう。

前翼機は失速から自動的に回復できると言われてるが操縦は(通常の機体に慣れたパイロットには)むつかしかったらしく、原因の多くは操縦ミスとされているようだ ・・・(ピッチ方向の矢羽根効果は全く期待できない。むしろ三角翼を含む全翼機のほうが整合性のある設計ができるかもしれない)(閑話休題)


本題に戻り、推力の向上に付随するダクテッド・ファンの最大の長所は騒音を著しく減少させる効果でありました。

Brittennorman_islander_ducted_fan

同じころ、英国のプロペラ製造メーカーの老舗ダウティ・ロートル(現GEのプロペラと関連機器部門)によってブリテン・ノーマン アイランダーに”ダクテッド・プロパルサー”と呼ぶシステムを二基搭載したデモ機(1977)がつくられた。キャッチ・コピーは "The Power to Kill Noise"  でした。(エンジンは水平対向 ライカミング 10-540 。詳細は、こちらの G-FANS のサイトで)

プロペラというより七翅の可変ピッチ・ファン・ブレードとレシプロ・エンジンで構成されて、アンビリーバブルなほど静かだった(らしい)。

ファントレーナーのほうはといえば、三翅のダウティ・ロートルからドイツのホフマン社製に変更され五翅の可変ピッチ・ブレードに後退角や翼端の曲げを加える(1981)などで静粛性を改善している。

でも、先のリンクの動画で聞こえるファントレーナーの飛行音はけっこううるさい。ダクトがないとターボシャフト・エンジンやブレード端の過流で発生する高周波音がもっと鋭くなるのだろうな。

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そのいっぽうで、ダクテッド・ファンの最大の欠点は速度の二乗に比例するダクトの形状抵抗であります(もちろんダクトその他の自重増加もあります)。当然、のことに”ダクテッド・プロパルサー”システムを採用する機体メーカーは現れませんでした。

この形状抵抗や自重を賄い、内燃機関として効率の良い運転ができる飛行速度がターボプロップ・エンジンより高速でつり合うのがターボファン・ジェット・エンジンとなります。

(次回やっとターボファン・ジェットの章に入れます)

ダクテッド・ファンが空気中で活躍する範囲は、固定して使われる送風機は別にして200km/h前後までのようです。上記の高速側の飛行機以外の具体例には飛行船やホバー・クラフトのプロパルサー(推進器:普通名詞です)、ヘリコプターのテール・ローターに代わるフェネストロン などがあります。

機能としてはダクトの効果による推力の向上や静粛性とともにシュラウドとしての安全装置となっている。なかでも飛行船ではプロペラ前縁につく結氷が遠心力で飛散してヘリウムガスを入れたエンベロープを破る事故を防止する目的があります。

ダクテッド・ファンの将来像はWIG(地面効果翼:実際は海面すれすれに飛び、高度が低くバンクがほとんどできないため旋回性能が極端に悪いので前方の障害物は飛び越えるという、その前方の普通の船には、まことにはた迷惑な飛翔体 ? )やVTOL機など、いささか怪しげな計画、もとい夢にでてくる。そのお仲間に入るロッキード・マーチン F-35B はどうなんだろうか。

なお、エアバス社は Airbus E-fan と名付けた電動ダクテッド・ファンによる双発複座のデモンストレーター機を製作し英仏海峡を横断したようである。さすがフランス、ハイブリット動力機にはしなかった。

船ではヘリコのフェネストロンのように船体の前後に組み込まれてメイン・スクリューに直角の推力を出すスラスターとして接岸時の横向きの動きや定置水面旋回に使われている。

水中では深海潜水艇などの主推進装置にも使われている。静粛性への寄与はわからないが、こちらは薄い輪っかなので形状抵抗も少ないのだろう・・・レイノルズ係数を計算すればわかるけど、水の密度は大きいが速度は極端に遅いからね。

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