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2016年2月19日 (金)

キネマ航空 CEO ターボファン・ジェットにたどり着く

承前

ターボプロップもターボファンもギヤード・ターボファンも起源は意外と古く、ターボ・ジェットとほぼ同時期に設計されている。

1940年代、戦時中のイギリスではホイットルが率いるパワージェッツ社の試作したターボファン・ジェット LR.1 は試験の直前に政府から中止命令をくらう。アイデアだけではロールス・ロイス社の息のかかった A.A.グリフィス博士の CR.1 はバイパス比 7 というAFT(アフト:後部)・ファンの構想をすでに立てていた。

ドイツは機体メーカーのハインケル社が HeS 8 をベースにギヤード・ファン・ジェットの Hes 10 の試作を完成させたが航空省の意向でエンジン自体の開発も製造も禁止された。航空省は気乗りしていないダイムラー・ベンツにターボジェットの HeS 11 をベースにターボファンやターボ・プロップの研究をさせたが設計が完了した年に戦争は終わった。

ターボプロップ・エンジンでは1940年前後にかけて試作から試運転まで行ったのはハンガリー人の機械技師ゲオルギー・ヤンドラシークによって設計されたヤンドラシーク Cs-1 だった。当時のハンガリーはナチス・ドイツの支配下にあってドイツの機体やエンジンを生産するために中止させられる憂き目にあっている。

つまり、同じころにターボジェットの開発に並行して、人間の使う範囲では、ジェット・エンジンで膨張した軽い質量の噴流を狭い面積から噴出させるよりも、冷たい(重い)空気を大量に送り出す動力源として使ったほうが効率が良いと考えられてはいたが、・・・

それと同時に(早く飛ぶほうが重要な)戦争遂行には際物技術としてパトロン(国家)からは開発の差し止めをくらっていた。

何ごとにつけても創世記の歴史はややこしいので同じ著者が書いた次の二冊を参考書として上げておきます。

英国人らしい言い回しと章立てなので通史としての理解は一読しただけではまずできない。何度も繰り返して読まねばならないが図や写真が豊富に掲載されています。

別冊航空情報 ジェット&ガスタービン・エンジン その技術と変遷 酣橙社 1997
ビル・ガンストン著 高井  岩男 監修・訳
  「現在開発中の最新技術」といわれるギヤード・ファンもフロント/アフトのアンダクテッド・ファンもプロップ・ファンもスキュード・ファンも機械構造としてはガンストンの原著が出版された1994年のはるか以前に考えられており、延々と開発が続けられていること、進捗は金属、非金属の新材料の開発とコンピュータによる数値計算と実物の実験結果との整合性の検証に時間がかかっていることがよくわかる。

世界の航空エンジン ② ガスタービン編 グランプリ出版 1996
ビル・ガンストン著 見森 昭 訳
  原著の出版は1995年。アルファベット順でエンジン・メーカー別に企業の沿革と技術史が記述されている。巻末の索引にはエンジン型式名も同様にまとめられており、上記の副読本として必須の参考書。なお翻訳では原著を分冊しており ① レシプロ編 があります。

  当CEO の私見ではどちらも日本がかかわる項目では訳者がかなり加筆もしくは改変をしているようで原著者のニュアンスとは違うような気もするが・・・いずれにせよ日本の類書の原典であります。


さて・・・現在の、

ターボプロップで最大最強のエンジンはロシアのツポレフ Tu-95 爆撃機や派生機種のTu-114 旅客機に使われる系列で四翅/四翅のオートフェザーリング可能な定速コントラ・プロペラ AV-60N (直径 5.6m )を 750 rpm で回しているクズネツォフ NK-12 となる。タービン駆動軸の構成は一軸(シングル・スプール)です。

また、アントノフ An-22 輸送機は同じエンジンでコントラ・プロペラ AV-90 (直径 6.2m)を採用している。

タービン回転数は正規出力時 11,836 ehp / 8,300rpm、離昇出力時 14,975shp/12,000rpm 乾燥重量 2900kg である。
ehp : equivalent horse power 余剰ジェット推力を含めて高度や速度など飛行条件に合わせて shp : 軸馬力に換算した等価馬力のこと

減速ギヤ比は 11 となり、離昇時のタービン回転数から計算するプロペラ回転数は1,090rpm となってしまうのだが・・・この辺りはあとで検証・・・??

-搭載時性能-
最高速度 Tu-114: 870km/h (@8,000m) Tu-95: 920km/h Tu-142: 925km/h An-22: 740km/h
巡行速度 Tu-114: 770km/h Tu-142: 711km/h

実用上昇限度 Tu-114: 12,000m
なお、Tu-142
Tu-95: から派生した洋上哨戒機

これに対する・・・

ターボファンではエアバス A380 に使われる三軸(スリー・スプール)構成のトレント900系では 24 枚のファン直径は 2.95 m (116 in )、バイパス比 8.7-8.5 最大推力 344–357 kN 、乾燥重量 6246 kg となっている。
別資料から(多分)公称 N1 (ロープレッシャー・タービン=フロント・ファン・ブレード)回転数 3,000rpm、N2(ミディアムプレッシャー・タービン)回転数 7,500rpm ? 、N3 (ハイプレッシャー・タービン)回転数 12,500 rpm 。

もう一つの選択肢で二軸(ツー・スプール)構成のエンジンアライアンス EA GP7000 ファン直径2.95m116in)、バイパス比 8.8 もほぼ同等だが公称推力が 363 kN 、乾燥重量 6,712 ㎏ と若干大きい。
同じく別資料から、こちらは最大 N1 回転数 2,738(2,467) rpm 同 N2 回転数 13,060(10,998) rpm ( )内は100%で運転時の公称値。

-搭載時性能-
最大運航速度(巡航高度にて): 945km/h (Mach 0.89)
最大設計速度(巡航高度での降下時点): 1,020km/h (Mach 0.96)
巡行速度: Mach 0.85 (903km/h)
巡航高度: 13,137m

おまけで・・・

最強のレシプロ・エンジンはボーイングB-50 爆撃機 モデル 377 ストラトクルーザー 旅客輸送機などで使われたプラット&ホイットニー ワスプ・メイジャー R-4360 系列でありました。当オフィスの コラムても取り上げております。お立ち寄りください。

最大馬力は 3,800hp とされるが実質では 3,500hp 辺りが公称馬力のようだ。回転数は 3,990-4,300rpm 、出力軸減速機の減速比は 2.667 だった。プロペラ回転数は 1,496-1,612rpm となる。

これに組み合わされたのはハミルトン・スタンダード社の 鋼製溶接中空ブレード四翅、フル・フェザーリング可能な油圧式定速プロペラで、その 直径 は 5.18m(17ft) ? ・・・
リンクは B-29 のプロペラの写真。その直径は 5.05m(16ft 7in)。  B-50 は17フィートとしているが数値を丸めたのかブレードを新造したのか詳細は不明だが、エンジンの換装でプロペラ軸線は B-29 より高くなっており直径の 5インチ増は可能なのでこちらを採用した。

-搭載時性能-(ストラトクルーザー // B-50
最大速度: 604km/h(7,620m) // 634km/h
巡行速度: 547km/h(7,620m) // 393km/h
巡航高度: 7,620m // 9,159m
実用上昇限度: 9,755m // 11,247m


レシプロ・エンジンで同じエンジン、同じ機体メーカーの姉妹機種である B-50 爆撃機モデル 377 旅客機 の最大速度や実用上昇限度が違うのは何となくわかるが、巡航速度が大きく違うのはなぜか、とか・・・

ターボプロップでは An-22 の最高速度が Tu-114 より劣るのはプロペラの直径の増加や胴体の太さによる差と推定していいのかな、とか・・・

レシプロの B-50 とターボプロップの Tu-144 の速度差は馬力出力のせいかもしれぬがプロペラ先端の周速からはどうなんだろう、とか・・・

では Tu-142A380 の最高速度がほとんど同じなのはおかしかないか、とか・・・

などと考えながら、MRJ のギヤードファン・ジェットについて考えるのだが、エンジンの格からは牛刀割鶏(鶏を割くにいずくんぞ牛刀を用いんや)になりそうな気もしてきたな。

その前に「乞う、次回ご期待」

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