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2016年5月22日 (日)

キネマ航空CEO 航空エンジンのお仕事の効率を運動量理論で考える(ターボ・ジェットの巻)

どんな航空エンジンでも、

発生する運動エネルギー = 仕事 + 残留エネルギー

が成立します。この(ほっておけば損失エネルギーとなる)残留エネルギーの回収、すなわち効率の向上が今回からのテーマです。

いろいろな航空エンジンは、飛行する速度域で生じる残留エネルギーを仕事に振り変える工学上の理論から生まれた構造です。

航空エンジンは、時間的な出現の順序を無視すると、熱エネルギーから得られる運動エネルギーを直接に推力として利用する「ターボ・ジェット」と、熱エネルギーを回転力に変えてプロペラやローターにファンといった空気機械を介して推力に変える「レシプロ」、「ターボ・シャフト」、「ターボ・プロップ」、「ターボ・ファン」などのエンジンに分けられる。

このうち、ターボ・ジェット・エンジンの仕事と効率は意外と簡単に数式化できる。

まずニュートンの運動の第2法則から「物体の運動エネルギーの変化量は、その物体に加えられた仕事に等しい」が前提となる。すなわち、(以下質量の値を示す m と長さの単位を示す[ m ] がありますが混同しないでくださいね)

W = F・v1 = m・v1 (vj - v1
 W : 質量 m の物体を速度 v1 を維持しながら抵抗に逆らって移動させる(あるいは速度 v1 から vj へ増速する)ために必要な 仕事・・・定義では明示されていないが(慣性抵抗も含めて)抵抗がなければ仕事は発生しない。 [J = kg・m2・s-2 = N・m] J(ジュール): 1 N の力で、その力の方向に物体を 1 m 移動させる仕事の単位
 F : 質量に加速度 を生じさせる力 [N = kg・m・s-2 ]
    N (ニュートン):質量 1 kg の物体に 1 m・s-2加速度与える力の単位
 m : 物体の質量 [kg ]
 v1 : 移動中の物体の速度 [ m・s-1 ]
 vj - v1 : 物体に加えられた速度の変化 [ m・s-1 ]

ちなみに工学の基礎である物理学の数式では、運動エネルギーは K で、仕事は W で、あらわされる。その単位はどちらも [ kg・m・s-2 ] です。

つまり、どちらも「質量[ kg ]」と「速度[ m・s-1 ]の二乗」の積に比例している・・・のだが、

定義は違います。「 運動エネルギーは物体の速度を変化させる際』に必要な仕事」です。仕事の定義と並べても何となく微妙な違いのような定義なのですが・・・

その違いは運動エネルギー K のすべてが仕事 W に変わるのか、というと・・・そうでもないところにあります。

今回の「物体」とは、ジェット機の機体ではなく、ジェットエンジンに投入された燃料の混じった気体の質量 m で、「変化量」はエンジンに入る前と後の気体の速度(それぞれ v1 と vj )で運動エネルギーの変化を計算します。

ジェット機の機体はこの気体(物体)の反力で飛ぶことになります。ニュートンの運動の第1法則(慣性)の座標系にいるエンジン付き航空機はこの運動の第2法則と第3法則(作用反作用)で説明されます・・・(閑話休題)。

運動エネルギーは、質量に速度の二乗を掛けて 2 で割ってえられる馴染み深い運動エネルギーの差の式であらわされます、 vj ≧ v1 だから、

K = (1/2) m・(vj2 - v12
 m : ジェット・エンジンを通過する気体の質量 
 vj  : ジェット・エンジンによって加速された気体の速度
 v1ジェット・エンジンに流入する前の気体の速度。
        すなわちジェット・エンジン(機体)の進行速度。
厳密にいえば空気と燃料の質量については分離して、燃料の速度は燃料ポンプによって加速された速度を使って同様の式を付け加える必要があるが空燃比から計算すると数%の影響なのでここでは無視します。

(vj2 - v12 ) = (vj + v1 )(vj - v1 ) と因数分解できるが、これは後で使うことにして、
ここでは・・・
           = vj2 - 2vj1+ 12 + 2vj1 - 212 と差し引き 0 となる項を挿入し、 
括弧で括ると
           = (vj - v1 2 + 2v1(vj - v1
となります。

これを、元の運動エネルギー K の式に代入して順序を入れ替えると、

K = m・v1(vj - v1 + (1/2) m・(vj - v1 2

つまり「運動エネルギーの式」を書き換えたら、その式の前項はジェット機を速度 v1 で飛ばす冒頭の「仕事の式」と同じジェット・エンジンの仕事になります。

したがい、後項はターボ・ジェット・エンジンが推進仕事に寄与しない(捨てることになる)残留エネルギーとなります。

ここでジェット・エンジンの仕事効率 η は、必要とした仕事 W を投入した運動エネルギーの K で割って整理することで、

η= m・v1j - v1)/K =  2/( 1 + j /1

効率では質量 m と速度の変化量 (vj - v1 ) は消去されます。

この式をグラフであらわす場合には、縦軸に効率 η、横軸に 1 /j (数式とは逆の比になっていることに注意)をとります。 グラフ は こちら

ジェット機の機体が停止しておれば v1 = 0 で仕事効率も 0 、 v1 = vj (v1/vj= 1)で飛んでいれば効率は 1 。

機速とジェット・ブラストの(噴射)速度比 v1 /vj が 0 から 1 に変化すると、効率も 0 から 1 に変化する。そして、 v1 /vj = 0.5 の場合の効率は 0.5 ではなく 0.667 となっており直線変化ではない弓型のグラフがつくれます。

ところで、機速が 0 で仕事効率が 0 といっても静止推力は出ています。したがい仕事効率が 0 であっても仕事は開始できます。仕事効率とは対象となる機体が(ジェットが噴射した物体の反力で)動いているときにナンボの値です。
厳密には圧縮機の吸い込み速度がありますから、その⊿v が v1 に相当します。工学の数式には省略や拡張によって真理ではなくても本質を表す「これでいいのだ」があるのです。・・・飛行機が停止していてはエンジンがいくら頑張っていても仕事はしていません。…ブレーキを踏んだトルコン付き自動車のアイドリングと同じで100%の残留エネルギー損失にお金を払っています。

効率って何だろう? 「空吹かし」なんてもってのほかですね…えっ ?! エアコンを利かせている…俺の金だ文句があるのか ! ・・・まあ、大型旅客機では飛行中は停止して推力に寄与しない空調兼発電用の小型タービン・エンジンをお尻に搭載している理由でしょうか。ジェット・エンジンと似て否なるタービン・エンジンは後段で(閑話休題)

いっぽう、機速 v1 と 噴射速度 vj  が等しいと効率は 1 、つまり運動エネルギーは 100% が仕事として使われることを示しているのですが、どっこい、元の仕事の式に戻ると仕事 W は 0 です。したがい、現実の仕事効率は 0 です。

つまり水平飛行で最高速を出しているジェット機はジェット・エンジンの出力を 100%使った仕事で飛べるているわけではありません。 その一歩手前で飛んているのです。

とはいえ、ジェット・エンジンでは速く飛ぶ方が効率が良い。逆に言えば離陸時を含め最高速に達するまでの避けられない速度域での効率が悪いと言えます。

以上の計算式は、ジェット・エンジンに必須の圧縮機や潤滑油ポンプを駆動するタービンのなど必然的にエンジン内部で発生する仕事(正確には回転力)を除いて、エンジンから外部にとり出しているエネルギーと仕事の関係を示す効率です。

運動エネルギーを作るために投入した燃料の持つ熱エネルギーを分母とした(総合)効率ではありません。

また、最高速度より遅い巡航速度ではターボ・ジェットの効率は悪いのか、というと別の問題が絡んできます。

投入する燃料を減らせば排気温度は下がり噴出する空気の速度 vj も小さくなりますから仕事効率は 1 に近づきます。そのいっぽうでは、エンジンの中での圧縮機の仕事では回転数の低下範囲が制限されておりエンジン自体の総合効率や機体との適合性が問われることになります。

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さて、機速としてはゼロで発電などに使用される定置式のタービン・エンジンは運動エネルギーを回転力に変えて出力としていますから、推力として使うジェット・エンジンとは仕事の考え方そのものが違います。

回転力は軸出力と呼ばれています。これをもっとも簡単な式で表すと
P = 2π・n・T
 P : 軸出力[ W (ワット) = N・m ・ s-1 = kg・m2・s-3 ] 
   つまり「単位時間当たりの仕事」です
 T : トルク [ N・m = kg・m2・s-2 ]
   ではトルクは仕事のことか? と問われても、
それは違います。
   あくまで、力 [ N = kg・m・s-2 ] x 腕の長さ [ m ] です
 n : 回転速度。
単位時間あたりの回転数 [ s-1 ]、
 2π: 回転速度を回転角速度へ換算する無次元の係数

定置式のタービン・エンジンではヘリコプターのホバリングと同じで、エンジンに流入する気体の速度はゼロではなく、ローターの場合と同じく吸い込みによる速度の増分が ⊿v がクロース・アップされてきます。

回転力は(体積や圧力など)熱に関わる推力に比例する関係があることは間違いない。
したがいタービン・エンジンは吸入口と排気口の温度を同じにすることで途中で燃料の燃焼で得られた熱エネルギーを回収ができ、最大の効率で回転力を取り出せる。

つまり時間当たりの空気の通過体積を(必然的に通過質量も)同じにする構造で回転力を取り出す設計を目指します。(現実では不可能ですけど)

よく似た構造のジェット・エンジンでは、通過後の空気の速度を叶う限り増加させるために、時間当たりの空気の通過質量を同じ(だけど必然的に体積は増加)となる構造に設計されています。(現実では高温の空気が流れる燃焼室、タービン、噴射口などの構造や材質からくる耐高温性能の制限があります)

また、既にお気づきのように実際の排気には燃料が気体となった体積や質量の増分があります。しかし無視して工学上の「これでいいのだ」の言い回しを使っています。

・・・これにて、ストップ・ザ・フン詰まり、もとい快通エンジン工学の基礎の閑話を休題・・・バカボンのパパはえらいのだ!!

タービン・エンジンで取り出した回転力の単位は「単位時間当たりの仕事」であることからわかるように、「仕事」と「運動エネルギー」を用いた効率とは別物です。回転力すなわち軸出力の効率は「単位時間当たりの熱エネルギー」との比になります。

と、いうことで燃焼速度など、当CEOの苦手とする燃焼化学が基礎理論となりますので以降はパスします。

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さて、レシプロやターボ・シャフトのエンジンでは回転力によるプロペラやローターの仕事として推力に変えています。

ターボ・プロップやターボ・ファンは、というと、エンジンの仕事の一部を、というより大半を軸出力の仕事としてプロペラやファンに受け持たせて、推進力を直接使ったターボ・ジェットの速度比の中間部分の推進効率の向上を図ります。

ところが、プロペラなどの推進効率を運動量理論で求めると、ジェットのそれと同じになってしまいます。

このためプロペラの仕事(推進)効率は翼素理論で解く必要がありますが、これは、少し(当CEO にはかなり)面倒なので項を改めて出直します。

さて、先回の予告した初期のターボファン・ジェットすなわちバイパス・ジェットは回を改めてごく小さくまとめるつもりです。

修正はあるかもしれませんが今回はこれにて終わり、です。

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