無料ブログはココログ

« キネマ航空CEO 航空エンジンのお仕事の効率を翼素理論で考える(プロペラの巻 その 1 ) | トップページ | キネマ航空CEO 翼素理論によるプロペラの推進効率を検証する(プロペラの巻 その 3 ) »

2016年6月 3日 (金)

キネマ航空CEO 航空エンジンのお仕事の効率を翼素理論で考える(プロペラの巻 その 2 )

公開校正中です。訂正があるかもしれません。
また、お気づきの点がございましたらご連絡ください。

キネマ航空CEO

・・・ところが、プロペラなどの推進効率を運動量理論で求めると、ジェットのそれと同じになってしまいます。
このためプロペラの推進仕事効率は翼素理論で解く必要がありますが、これは、少し(当CEO にはかなり)面倒なので・・・の前々回を受け、前回の基礎を経て続きます。

--------------------------------------------

今回のプロペラ推進効率の解析に必要な前回の 図 A図 B はタブ表示で、 こちら (前回)のページからは画像のクリックで別窓を開けます。

広げた 図 B をチラ見して理解できるようにプロペラ推力を翼素理論で解析(初歩的な概念だけですが)する手法は速度や力のベクトルの合成と分解とをそれぞれの基準となる座標軸を跨いでおこなう作業であります。

このベクトルの変換作業は、一つの直交座標の上に重ねたもう一つ(以上)の回転した直交座標のグラフ上でも整合性を持たせて幾何学的に実行します。

これを「長さ」と「角度」で数値化して代数幾何学として計算できる数学として扱います。これで過去に証明された、すなわち数式化された理論式の結果をグラフ上でベクトルとして書き込むことから始めます。(代数幾何・・・大好きか・・・と問われてもねー)

角度を扱うため三角関数とベクトルについての合成や分解の知識はある程度必要です。

扱う対象と手順は・・・

   1.プロペラの中心軸と回転面を軸とした直交座標上にベクトルを持った風速の合成で迎え角を決定することから始まります。

   2.次に迎え角の基準とした座標の上に翼型に生じる揚力や抗力の式を用いて得られる値をベクトルとして視覚化します。

   3.揚力と抗力のベクトルを合成し、再び中心軸と回転面を軸とした直交座標上に推(進)力と回転力のベクトルとして変換することでやっと推進効率の計算が可能になります。

まず、図 B を開いて参照しながらお付き合いください。

1.迎え角の決定
   基準となる直交座標はプロペラの回転中心と回転面で作られます。

   プロペラのブレード長のある半径における回転方向の速度 p は図にはないけれど、計算で、
   vp = 2π・n・r
   n は単位時間の回転数 [ s-1]。 r はその、ある半径 [m]
ちなみに 2π・n は角速度と呼ばれ単位は [rad (ラジアン)・ s-1 ] または単に [ s-1]。
換算係数で分かるように( 2πr )で括れば半径 r の円周の長さ。これに n を掛ければ単位時間に円周上をどれくらい進んだか(周速)が計算できる。

では回転(円)運動しているならば 図 A⊿R で示した直線で並行する翼幅はおかしかないか・・・ 図 B の速度も(円周上に一部である)円弧を横から見て直線だ!と言っているのではないか・・・といった疑問が湧きませんか。

そこで、当CEO が敬愛するバカボンのパパが登場します。
極々短い時間で考えると速度は半径に直角の方向(接線方向)に向かっている長さである。そこからまた極々々短い時間がたっても半径に対する進行方向や長さは変わらない。その時間の積み重ねで半径は一周する円を描くのだ。すなわち円運動も直線運動なのだ・・・これでいいのだ。
           

   これに先回と同様に進行方向の速度  v0 [ m・s-1 ] が絡みます。(その 1 )では、すったもんだのあげく、プロペラの吸入負圧による増速は無視して、翼型に向かう空気の速度ベクトルを求めることにしました。

 U2 = v02 + ( 2πn ・r )2 
 tanΦ = v0 / ( 2πn ・r)

より、迎え角は

 α= β-Φ

2.座標の変換による揚力と抗力の計算
   迎え角を使う揚力と抗力の計算にはΦ だけ傾いた速度 U のベクトルをいっぽうの軸とする直交座標が基準になります。

   この速度 U と迎え角 α により、 図 A に示した翼素の面積 ⊿S = ⊿R・c [ m2 ]に働く、速度 U のベクトルに直交するベクトル値である揚力 ⊿L [ N ] と並行するベクトルである抗力 ⊿D [ N ] の計算をします。
翼素の迎え角と翼型の性能から求められる CLCD はそれぞれ揚力係数と抗力係数 [ 1 ]。ρ は空気の密度 [ kg・m-3 ]

 ⊿L = ρ・CL・U2 ・⊿S / 2
 ⊿D = ρ・CD・U2 ・⊿S / 2

   翼に働く力として一本のベクトル ⊿R [ N ] に合成すると

 ⊿R2 = ⊿L2 + ⊿D2 
 tan γ = ⊿D / ⊿L = CD / CL 
 1 / tan γ= CL / CD を揚抗比と呼びます。CD で割る理由は、CL には 0 となる迎え角があり、CD にはないからです。

3.推進力と抗力の算出
   そして揚力と抗力のベクトルを、プロペラの回転軸と回転面の直交座標に戻します。

   翼にかかる力 ⊿R = (⊿L2 + ⊿D2 )1/2  と角度(Φ + γ)から直接に推力 ⊿T  [ N ] と回転(抗)力 ⊿F  [ N ] に分解する方法もあるが・・・

   ここでは揚力 ⊿L 、と抗力 ⊿D に角度 Φ を使った分解と合成で求める(式中の ± の使い方にご留意)。またプロペラのブレード枚数 N を面積に掛けることでプロペラ一基分の力となる。

 ⊿T = ⊿L・cosΦ - ⊿D・sinΦ = ρ・U2N ⊿S・(CL・cosΦ - CD・sinΦ )/ 2
 ⊿F = ⊿L・sinΦ + ⊿D・cosΦ = ρ・U2N ⊿S・(CL・sinΦ + CD・cosΦ)/ 2

 これらの式は次のように変形できます。ここでは sinΦ / cosΦ = tanΦ =  v0 / ( 2πn ・r) の式を使います。

 ⊿T = ρ・U2N ・⊿S・cosΦ・CD ・{ CL/CD - v0 / ( 2πn ・r)} /2
 ⊿F = ρ・U2N ⊿S・cosΦ・CD ・{ CL/CD・v0 / ( 2πn ・r) + 1} /2

4.プロペラ効率の計算
   ここまで半径 r の翼素に生じた力には(微小の意)を付与していましたがプロペラ・ブレード全体にかかる力は次のような集積(積分の基礎的概念)を行います。

   仮にブレード全長を100 等分して i 番目の翼素では密度 ρ とブレード枚数 N それに前進速度 v0 を除き、他はすべて半径 ri によって決定される変数となる値です。したがい、それらに添え字 iを付けておきます。 
  ⊿Ti = ρ・Ui2N ⊿Si・cosΦi・CDi ・{ CLi/CDi - v0 / ( 2πn ・ri)} /2 より

   T = Σ( i = 1→ 100)[⊿Ti ] 

   で、表されます。プロペラは回転しているのでこの力はプロペラの回転中心に働いているとみなせます。

   なお、( )内の記述は正式の数学表記ではありません。Σと併せることで、100 分割した各翼素で計算した推進力の全てを合計するための積算範囲を(当CEOが勝手に)示してしています。この分割数を無限に増やして行なった合計が積分です。

同様に、
  ⊿Fi = ρ・Ui2N ・⊿Si・cosΦi・CDi ・{ CLi/CDi・v0 / ( 2πn ・ri) + 1} /2 より

  F = Σ( i = 1→ 100)[⊿Fi ] 同じく( )内の記述は正式の数学表記ではありません。 

   いっぽう、抗力⊿F は、回転力(トルク)⊿Q [kg・m]に変換しなければなりません。
  ⊿Q =⊿F・r より、同様に ⊿Qi =⊿Fi・ri となり

   Q = Σ( i = 1→ 100)[⊿Fi・ri ] =  Rm・Σ( i = 1→ 100)[⊿Fi ]

等価相当半径 Rm [m] はモーメントのつり合いから、

  Rm = Σ( i = 1→ 100)[⊿Fi・ri ] / Σ( i = 1→ 100)[⊿Fi ]

   なのですが、 Q も Rm も解くことはできません。

   いずれの式も半径 ri に関係する数値がなければ具体的な計算はできず、解析はここで行きどまりです。

--------------------------------------------

   しかし、プロペラ・ブレードの設計をするわけではないので、ある半径 r が等価相当半径 Rm に等しく、ブレードにかかる力のすべてがその半径上にある翼素面積⊿S に集中しているとみなせば効率 η は計算できる。

   このみなしでは⊿S を除く も、翼素の位置の定義 i もチャラにして 、揚抗比 CL/CD はプロペラ全体として整合する値とします。

  T = ρ・U2N ・⊿S・cosΦ・CD ・{ CL/CD - v0 / ( 2πn ・r)} /2
  Q = F・r = ρ・U2N ・⊿S・cosΦ・CD ・{ CL/CD・v0 / ( 2πn ・r) + 1} ・ r /2
  tanΦ = v
0/2π・n・r

   推進効率 η は『推力[ N ] X 速度[ m・s-1 ] 』と『トルク[ N・m ] X 回転速度[ s-1] 』で表される、プロペラが行う仕事[ N・m・s-1 ] とプロペラにつぎ込まれる仕事[ N・m・s-1 ] の比となる。

  η = T・v0/Q・2πn

TQ に共通するのはρ・U2N ・⊿S・cosΦ・CD /2 ですからこれらは消去されて、

  η = { v0 /( 2πn ・ r ) }・{ CL/CD - v0 / ( 2πn ・r)} /{ CL/CD・v0 / ( 2πn ・r) + 1}

   プロペラの効率は「前進速度と等価相当半径の円周速度の比」と「等価相当揚抗比」に関係する。そして、この式の影には「等価」とか「相当」などの言葉では言い表せない迎え角 α が隠れています。それは、また後の話・・・

   ちなみに、この効率は 前進角 v0 / ( 2πn ・r) = tanΦ と 揚抗比 CL/CD =  1 /tanγ より、
  η = tanΦ・( 1 /tanγ - tanΦ) /( tanΦ /tanγ + 1)  と角度で示せる。

   元の式で読み解くと、揚抗比のうち、揚力係数は 0 やマイナスの値になることもあるが通常の使用範囲ではプラスの値であり、{ CL/CD・v0 / ( 2πn ・r) + 1} > 0 である。

   したがい、プロペラ推進効率 ηv0 = 0 の場合と v0 / ( 2πn ・r) =  CL/CD の場合の二か所で 0 になる。ただし実際にそうなるのかについては次回に検証予定です。

   つまり、機速 v0 = 0  ( 2πn ・r)・ CL/CD の間にピークを持っている。

   プロペラの設計では、揚抗比 CL/CD v0 / ( 2πn ・r) の値によって迎え角 α = β - Φ) が変わることで変化する。したがって特定の機速に合わせて(たぶんプロペラ半径の 75% で)基準となる翼型(揚抗比)を選び、基準となるピッチ角 β を設定する。

   ピッチ角が固定されておれば、プロペラ先端に向かって周速が速くなり進行角 Φ が小さくなる。したがい、 図 A のように先端に向かってピッチ角 β のねじり下げが行なわれる。
   (中心にむかっては捩じり上げになるが、20%以内ではかなりテキトーに・・・古い木製プロペラを見ていると先端から中心まで美しい曲線で構成されている。翼素理論は積分なぞ使わずにシンプルに(前回の参考図で想像するに)5断面ぐらいを計算したんだろうなー。先端を細くして丸めるなんて誘導抵抗も知っていたんだろうか。中には後退角の付いたのもあったなー!)

   今回のみなし計算で使用した「等価相当半径」は機速によって移動し、「等価相当揚抗比」も変化する。

   加えてプロペラ先端では誘導抵抗による損失、音速に接近することで生じる空気の圧縮による揚抗比の低下などで、現実のプロペラ効率はプロペラ推進効率より低くなる。

   実際のプロペラ効率のピークは実験では 0.8 強といったところです。もちろん、エンジンが消費する熱損失を含めた総合効率ではありません。

--------------------------------------------

   結論として、これ以上に素人がプロペラの翼素理論に深入りしても得るところは少ない。

   とは言え、プロペラのような空力推進機械の効率は、(ターボ・ファンなら特に)固定されたピッチ角を持つ翼素に対する迎え角 α は機速 v0 によって変化するので、その迎え角 α の関数である揚抗比曲線に支配された(翼端の損失を含めて実験や経験からη = 0.8 ぐらいの)ピークを持っている。

   このピークをターボ・ジェットの効率の低い(速度の遅い)部分に組み込めば全体の効率をかさ上げできる。

   プロペラの設計の考え方を繰り返すと、ブレード全長に亘って翼型形状を滑らかに変化させて、各部分の翼素の揚抗比と翼弦長を適切な(一般に捩じり下げと呼ぶ)ピッチ角でつなげて、推進効率を向上させる作業となる。(もちろん中心部は揚力、抗力による曲げモーメントで折れないように翼型はとりあえずは、置いといて・・・)

   合わせて、広い速度域に対応するにはプロペラ本体のほかに可変ピッチ機構が必須となる。

 

   その辺りは、次回次々回 でこのテーマをまとめます。

« キネマ航空CEO 航空エンジンのお仕事の効率を翼素理論で考える(プロペラの巻 その 1 ) | トップページ | キネマ航空CEO 翼素理論によるプロペラの推進効率を検証する(プロペラの巻 その 3 ) »

MRJ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/570012/63694101

この記事へのトラックバック一覧です: キネマ航空CEO 航空エンジンのお仕事の効率を翼素理論で考える(プロペラの巻 その 2 ):

« キネマ航空CEO 航空エンジンのお仕事の効率を翼素理論で考える(プロペラの巻 その 1 ) | トップページ | キネマ航空CEO 翼素理論によるプロペラの推進効率を検証する(プロペラの巻 その 3 ) »

2017年6月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30