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2016年6月22日 (水)

キネマ航空CEO 翼素理論と運動量理論の推進効率をグラフにする

これまで数回にわたって解析してきた ターボ・ジェットの運動量理論プロペラの翼素理論 による推進効率の計算結果を同一比率にしたグラフ上で重ねてみました。

 お断り: プロペラの推進効率のグラフ化においてピッチ角は前回に仮決めした 15°から 16.8°に変更して全体の整合を図りました。また速度比 1 では効率(揚力係数)が 0 となる微調整を行いました。

Efficiency_of_propulsion

 横軸の速度比はジェットでは機速 V0 とジェットの噴射速度 Vj の比、プロペラでは機速 V0 と限界速度 VLimit の比ですから、普通は Vj > VLimit です。その違いは頭の隅っこに入れて置く必要がある。

 いずれにせよ航空機の推進力は如何にして高速の空気を大量に機体の後方に送り出すかです。したがい、 V0 = VjV0 = VLimit となるところが限界速度となる。

 もちろん、速度差が 0 になれば推進力はないので現実の最高速度は速度比 1 のわずかに小さいところで成立している。すなわち、プロペラやジェットによる推進力と機体の抗力とがつり合う点となります。

 詳述はしなかったがプロペラの推進効率を運動量理論で解けばジェット・エンジンと同じ解法で同じ式になる

 くり返しになるが、プロペラの場合、どちらの理論からでも速度比が 0 の静止推力が得られる。ただし結果は異なることは言うまでもない。 また、推力と効率は定義が異なることをお忘れなく。
 運動量理論で求めるヘリコなどのホバリング時の静止推力は機体の総重量が要求する推力なのでローターの(プロペラ)効率で割ってエンジンの出力を求めることになるが、当オフィスでは離陸時などに時間を決めて(大抵は数分間)出せる運用上の限界出力でカバーできる前提で話を進めています。

 (固定ピッチ)プロペラの推進効率を翼素理論で解いたグラフの形状は、機速の変化でプロペラの翼型の迎え角が変わり、プロペラに働く力の変化を示す揚抗比( = 揚力係数÷抗力係数)をパラメーター(仲介)にして解くためであります。(揚力は推進力、抗力は推進力を出すために必要なエンジンの出力に相当します)

 ターボ・ジェットでもコンプレッサーやタービンの翼(ベーン)で同じようなことが起こっているのでしょうがジェット推進の推力には直接の関係がないので表に出ていない。

(以下は、ほとんど閑話につき、----------の破線までとばしてください)

 ジェット推進の推力は、エントロピー  vs エンタルピー の熱サイクル(ブレイトン・サイクル)の結果で表わされており、一方のプロペラの翼素理論による推力は熱サイクルの後の回転力を推力に変えた結果です。ちなみにレシプロ・エンジンの熱サイクルは(オットー・サイクル)となります。

 どちらのメカニズムでも、運動量理論では原理的に入ってきた空気の単位時間当たり重量は同じ単位時間当たり重量のままで出ていきます(当CEO 得意のストップ・ザ・フン詰まり理論です)。 したがい推進力は速度差による反力のみとなります。

 言ってしまえば、ターボ・ジェットであればRR だろうと P&W だろうと GE だろうと、よしんば IHI であっても、エンジンの大小にかかわらず同じ式、同じグラフになります。

(以上の説明には、排気の重量に加わる燃料の重量も、与圧や空調に回す圧縮された空気の分岐抽出の影響などの説明が抜けています・・・該当機にご搭乗の際は飛行機乗りの三割頭なぞに陥らないように ! くれぐれもご用心。エンジン・メーカーが自社エンジンの優位差を導く効率計算にはいろんな係数を導入し、加減乗除で複雑な式を使って計算すればできるとは思いますが・・・)

 さて当CEO の行なった翼素理論による効率計算では、ブレード半径75%位置の翼型性能がプロペラ・ユニットの性能と同じという仮定で進めている。

 加えて有限翼長による揚力勾配の減少、先端に顕著な、音速に近づくことによる圧縮性の影響、といった要素は含まれていない。たぶん実際の効率は速度比が 0.8 以上ではもっと早く丸みを持って低下して行くと思われます。

 それでも、そうした仮定の割には結果の効率が悪すぎるようです。

 実際のプロペラ専用の翼型は代用した翼型より翼厚は薄く、キャンバも大きく、ゼロ揚力係数の迎え角はさらにマイナス側に進み、揚抗比のピーク(すなわち推進効率)はさらに大きいと考えられます。

 そうだとすればこのプロペラの推進効率曲線は専用翼型の修正後と考えても大きな間違いではなさそうです。

 近似した可能性があるとすればプロペラの等価相当半径を 75 %とすることで専用翼型の性能の修正後に似てきたのかもしれません。

 参考書ではいろいろなプロペラの実験結果から V/n D = 2.6 で最大効率は 0.86 程度と記載されている。 当CEO の計算値も最大効率としては、ほぼ整合している・・・のは、たまたまだろうけどね。

 ただ、この実験式の直径 D は外径なのか、 75%の等価相当半径からきているのか、が判然としない。当CEO の場合は後者での比較によると・・・の結果です。

 実験式だから外径なのだろうが、参考書では本式を使ってプロペラ機で可能な最高速度の上限の推定する過程が続くのだが疑問が残りました。

------------------(ここから本題)--------------------

 本題にもどり、グラフの二つの曲線をどう読むか、の例です。

1.ある速度、例えば M 1.0 の限界速度で飛べるプロペラ機とターボ・ジェット機があったとすると、プロペラ機は M 0.7 以下ではターボ・ジェット機よりより推進効率は高い。
 (ここで「同じ限界速度が出せるエンジンを比較すると・・・」と読み替えてくださいね)

2.プロペラ機が M 1.0 (1,200km/h SL)で飛べるはずもないので M 0.5 (600km/h 同)を限界速度に設定すると、グラフ上では限界速度を横軸上で 1.0 から 0.5 へ移動し、効率(縦軸)の値は変えずに全体を左に圧縮して重ねればよい。このプロペラ機は同じ速度域を飛ぶ M 1.0 で飛べるターボ・ジェット機より格段に高い推進効率を示します。

 ちなみにベースとしたセスナ172 の最高速度は 280 km/h SL ですから M 0.23 となり限界速度もほぼ等しいとして、グラフでは左の端っこにぴょこんと立ち上がった同じ高さの曲線になります。

 同じ速度で飛ぶターボ・ジェット機なんか比較する相手にもなりません。同じ限界速度で飛べるターボ・ジェット・エンジンを作っても実用にはなりません。

 このグラフはエンジン性能の優劣や燃費の良否を直接比較判定するものではありません。個々のエンジンの特性である噴出エネルギーや回転力として得られる出力を分母にして推進力へ変換できる効率を比較するだけです。

 参考までに、二段可変ピッチプロペラや定速プロペラの効率は各々の速度域を(二分割や三分割以上の複数に)分割してそれぞれに割り当てた限界速度に合わせたピッチ角を使って計算して重ねたり、後者の場合は包絡線をなぞれば作れます。すなわち上記のような一回の計算結果を使って横軸方向への圧縮や拡大による重ね合わせは使えません。

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 要するにプロペラ推進にもジェット推進にも得意とする飛行速度域があるのです。

 ターボ・プロップのコア・エンジンとして使われている圧縮機を駆動するタービンから分離された出力タービンでプロペラを回すフリー・タービン・エンジンはレシプロ・エンジンでは得られなかった高出力を、しかも軽量で達成できるプロペラ機に必須のエンジンになりました。

 ターボ・プロップ機より下の速度域を受け持つエンジンでは現在も空冷水平対向 4 ないし 6 気筒のレシプロ・エンジンが独占しています。

 同じ形式の自動車エンジンを持つポルシェも参入しようとしたが結局挫折、トヨタも水冷(V8 ?)エンジンの航空エンジン化を考えていたようだがあれやこれやで挫折。

 後者は上空でキャビンのヒーター暖房には有効だろうが、このクラスの航空エンジンは単純な構造でメンテナンスが簡単、減速ギヤなどもってのほか、(時間を掛けた)信頼性が確立し、生産設備の減価償却が終わった低コスト低プライスのエンジンが一番なので自動車産業からの参入は難しいようです。

 ほぼ一定速で使われるエンジン特性自体が低回転でフラットなトルクがもとめられており、自動車エンジンの性格とは全く異なった性能でまとめられていますしね。自動車のエンジン技術者の腕の振るいどころはないようです。

 考えられるのはマツダの航空用ディーゼル・エンジンかな ? 昔々にはディーゼル・エンジンの飛行機もあったんですよ。でも触媒および煤回収装置付き水平対向空冷化は難しいかな。

 ホンダはレシプロになびくことなく、本社のコントロールから遠く離れたアメリカの子会社で経験や実績のある現地の大学や研究所、技術者のリソースを活用して小型のターボ・ファン・エンジンを完成させた。

 さすがにメイド・イン・ジャパンとは呼べない・・・だからと言ってメイド・バイ・ジャパンなんて気取らず、シンプルにメイド・バイ・ホンダで大成させてほしいですね。それがブランドです。

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「分かった!」

何ですかいきなり。

「ぶふぉッ」

「このプロペラの推進効率のグラフを上手く圧縮して重ねたのがターボ・ファン・ジェットなのだ!」

そう言えば映画版金田一耕助シリーズに名優加藤武が演ずる警部がいましたね?

 まあ、大まかな理屈はそうなのだが、そのファンを囲む「シュラウド」、時には「カウル」、時には「ダクト」が大した曲者なのです。その曲者は次回から名前のなかに「デフューザー」も「ノズル」も加えて再登場します。

 「曲者のシュラウドを組み合わせることで、ファン・ブレードには、ある速度までは翼素理論で働き、それ以上の速度では運動量理論で働くような翼型と迎え角を持たせればよい・・・」と、金田一耕助は推理するのかもしれない。

 が・・・金田一先生も探偵としては先行推理ではなく後出し解説の謎解き専門なので依頼するには頼りないのですけどね・・・でも面白い。当CEOは嫌いじゃありません。

キネマ航空CEO ターボ・ファン・ジェット・エンジンの効率を考える(数式編)

キネマ航空CEO ターボ・ファン・ジェット・エンジンの効率を考える(グラフ編 + 下の方で、ギヤード・ターボ・ファンの疑問編の始まり)

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