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2016年6月の4件の記事

2016年6月28日 (火)

キネマ航空CEO コレオプテール の環形翼に萌えるの巻

 まずお詫びから、

 コレオプテールの構想を立てたオーストリア人のヘルムート・ルードヴィッヒ・フォン・ツボロウスキー博士をはじめ環形翼については不明な点が多々あります。何かの知見が得られれば、追記していきます。          キネマ航空CEO

 申訳ありません。さっそくコックピット周りで訂正を行いました。2016.6.29
その他の訂正や追記箇所も赤字で示します。

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 当CEOは、ターボ・ファン・ジェットのファン・ダクトの考察を進めているのだけど、フランスの VTOL (垂直離着陸)機、スネクマ C450 コレオプテールSNECMA C450 Coléoptère )が頭から離れません。

C450_coloptre ご覧の通りの環形翼を採用したテール・シッターであります。

 軍用機を意図していたとは思えないがトラクター(農業用ではありません)で牽引されるトレーラー上のキャリアに搭載されて起き上がり自由に展開できるなかなかの優れものでした・・・見た目はね。

 VTOL としては、唯一の実用機であったハリヤーと同様にジェットの熱風でアスファルトが解けたり、コンクリートの中の気泡が膨張して吹き飛んだり、などの問題は解決しなきゃならない。

 おまけに前線への展開では重い(吹き飛ばない)鉄板を敷くなどで塵、枯れ草、小石などの吸い込みを防ぐ支援が必須になる。

 気になるのは環形翼の機能です。 ジェットの噴気孔は環形翼の内側に隠れており、ジェットポンプと呼ばれる噴流効果で環形翼内に空気流が作れます。ダイソンのクーラーの原理と同じですが、どれほどの推力効果があるのかは分かりません。

 それは、さておき・・・同じ翼型が輪になっているなら垂直に上昇しているときは矢羽根の効果で安定性が増すのだろうが・・・水平飛行に移行したらどうなるんだろう ?

 翼として揚力を出すなら上半分(一応、水平飛行時の機体の上下関係はコックピットで決まっている)は外側に凸のキャンバがつき、下半分には内側凸のキャンバを付けるのだろうな。

 左右はキャンバのない対象翼型となっており、円環の上下のキャンバが滑らかに変化してつながっているんだろうなー。それに環形翼と胴体を繋ぐ支柱は中で三角翼になってつながっているのかもなー。

 待てよ ! どちらにしても VTO(垂直離陸) の時は両方の翼の揚力で背面宙返りにならないか ? ここは 外から見える 十字尾翼が自動制御されていて・・・と夜も寝られません。

 ちなみにパイロット・シートは計器盤もろ共 55 度前へ回転して VTO 、特に VL(垂直着陸) 時に、パイロットは首を横にひねりながらうつむくように傾けて斜め後ろ下方に地上を見る着座姿勢になるようにしていました。確かに楽になります。やってみてね。

 で、これで成功したのか、と言えば、していません。しかし事前のテストは慎重に進めたんですよ。

 環形翼は無し、たぶんバネと油圧の緩衝機と車輪付きの四本の主脚の上に直立したスネクマ アター ターボ・ジェット・エンジンのまんまテストベッドとした C400P1 から、P2 と進み、天っ辺に射出座席付きという P 2 ではガントリー・クレーンの先端から下げた安全ロープを外した自由飛行で VTO 後の水平移動(水平飛行ではありません)と VL に成功し、機首をコレオプテールにした P 3 を作りプロトタイプへ向けた確認を続けました。

 機体の安定制御には分流された圧縮空気を吹き出すノズルで行ったようだ。下の P 2 の写真では左右の各1本しか見えないけどロールとヨーを受け持ち、ピッチの制御は環形翼に隠れた可変角度のジェット・ノズルで行っていたらしい。このあたりで何となく怪しげな構造に思えてくるのだが・・・

 P 3 は、機首やコックピット周りのモックアップと同時に VL 時のジェット・ブラストによる地上反射風がエンジンに与える影響を確認するため仰向けのままにセットされた台車を後退させ壁に近づきながらエンジン制御方法の確認をするなどの実験に使われました。結局下の写真のようにほとんど寝たきりで過ごしたようです。

 実際に反射風(酸素のない高温の排気)を吸い込む可能性は高い。ハリヤーではゆっくり前進しながらの下降を採用している(た)。

 空力的には環形翼の影響の方が大きいと思えるがこちらのテストはプロトタイプでやったのでしょう。むしろビヤ樽のような環形翼にあたる自然風の影響のほうが大きそうですがね。

C400p1_2_3

 右より C400P1 、P2 、P3P3 は実験のため背面状態でセットされています

 これらのミュール機の呼び名は「アター・ボラン (空飛ぶ アター)」ですって。機体じゃなくエンジンが飛ぶという、いまとなっては何となくシニカルな命名っぽいですね。でもアターの名を継ぐエンジンは、ダッソー ミラージュや同 エタンダール系の国産ジェット戦闘機に採用されており、成功したといえます。アターの語源は後でね。
 (ミュールは「驢馬」のこと、機能確認に供するのみで プロトタイプ 「駿馬」ではありません)

 なぜ、こんな機体をフランスが作ったのかと言えば、元のアイデアはドイツ第三帝国時代にハインケル社などのスケッチ画に残された構想にありました。

 フランスが開発を始めた当時はもちろん第二次大戦後でしたので、ドイツの主だったジェット、ロケット、航空工学の技術者はソビエトには強制連行で、アメリカやイギリスからは多少の自由を保障して優秀な人材(ロケット工学者の W .フォン・ブラウン博士や異端の空力学者、三角翼のA.リピッシュ博士ら)を釣り上げられており、西ドイツでは人材が払底していたようです。

 そこでヨーロッパ(生国のオーストリア)に留まっていたフォン・ツボロウスキー博士(ロケットの開発に関わっていたエンジニア)はジェット・エンジンを組み合わせた環形翼の構想を立てて西ドイツ政府とフランス政府に持ち込みました。

 一応の戦勝国だったフランスは仇敵のドイツとの相乗りではありましたがここは懐の深いところを見せて・・・と開発に踏み切ったのではなかろうか・・・1955 年のことでした。当時はテール・シッターの VTOL 機の開発計画が特にアメリカで咲き乱れていました。

 売り込んだかたちの西ドイツや乗ったフランスがどの程度この構想に確実性あるいは革新性を見ていたのか定かではありませんが コレオプテール (初飛行は 1959.5.5 または 6)の 7 (または 9 )回目の飛行で発生した事故(1959.7.25)の後に 両国政府はあっさり計画を撤回、残骸はスクラップにしています。

 主開発社となっていたスネクマは両国政府に(開発費目当てで)継続を希望したようでした。ちなみに、スネクマは戦後にノーム・エ・ロームが国有化されて再編されたエンジン・メーカーでした。

 で・・・、本当に開発費目当てだけだったのか、が今回の主題になっちゃいます。

 新生スネクマの源流すなわちアター・ジェットの最初の一滴は、軸流式の BMW 003 でした。開発者のヘルマン・エストリッヒ博士は 1945 年 2 月に、のちにソビエトの管轄となる地域に入ったアメリカ軍に確保されて多くの技術資料はプラット・アンド・ホイットニーの技術者に渡りました。

 BMW 003 と言えば工場を押さえたソビエトに現物や図面それに設備は鹵獲され、捕虜となった技術者と共にソビエトに持ち去られてコピー生産され、リバース・エンジニアリングで共産圏のジェット・エンジン技術の源流の一つとなり中国へも流れていきます。また、現物を運ぶ潜水艦が撃沈され、寄港地から空輸されていた図面や写真が日本のネ-20 のヒントになったことでも知られます。

 その後、エストリッヒ博士はドイツでの尋問を経てイギリスのブリストル・エンジンに移され、アメリカのターボプロップ・エンジンの設計に加わっていましたがアメリカ政府の要請によるアメリカ移住では家族の同行が許されませんでした。

 エストリッヒは 1945 年 9 月に、秘密裏に接触してきていたフランス政府のオファーを受けてドイツで(希望したミュンヘンではなくフランスの占領地だったリッケンバッハに)BMW出身者を含む技術者チームを編成してアター 101 の原設計を完成させました。

 ちなみにアターAtar)の語源は、アトリエ・テクニーク・アエロノーティック・ド・リッケンバッハ (Atelier technique aéronautique de Rickenbach ) の頭文字です。リッケンバッハ航空技術工房 かな。

 フランスは戦利品である技術をめぐる米英ソの熾烈な囲い込み工作に割り込めました。

 1946年4月には関係した技術者全員とその家族に対する保障とフランス国籍取得の可能性を含んだ契約延長を行い、その成果は技術者と共にスネクマに移されました。

 スネクマクレオプテールにこだわったのは、ドイツで実績を積んだ二人のエンジン技術者の出自が背景にあるのかもしれません。

 これに国家、特にフランス側の思惑が加わって、生まれたばかりのアター・エンジン本体の開発にそれなりの成果を残したのですが環形翼機自体は時代に咲いたあだ花(西ドイツに対する当て馬、あるいは米英に対する目くらましの偽装)だったのかもしれません。

 当時の西ドイツには、実験航空機を自主製作できる力はありませんでした。コレオプテールやそのミュール機の機体設計製造はフランスのノール・アヴィアシオンが担当しました。

 しかし、通例である機体メーカーが開発の主契約者にはならなかった。本当の理由は不明ですが上記の理由が妥当と考えられます。

 フランスにはかつて両手の指に余る航空機メーカーが生まれては統合を繰り返していました。

 その中に南東方(シュド・エスト)、南西方(シュド・ウエスト)、北方(ノール)と名付けた航空機メーカーが存在しておりノールは名門の一つです。いずれも航空創生期に名が残るブランドを集約してきた国営企業です。

 南東、南西が再統合でシュド(南方)・アヴィアシオンとなり「東」と「西」が消えて「南」はやっと単独名称となって、ノール(北方)・アヴィアシオンと並びました。1957年ですのでコレオプテールの開発着手はこれより前です。

 南北は再び統合します。しかし、セントル(中央)・アヴィアシオンにはならずアエロ・スパシャル(スーパー航空)となりました。1970年でした。さらに統合が繰り返されますが、いまではグループ・ダッソーの一つです。

 いっぽう、エンジンのスネクマは企業の吸収や合併を続け、現在では政府が株式の 30%を持つコングロマリットのサフラン・グループの中で航空機用途に限らずジェット・エンジンやロケット・エンジン、航空機の降着装置などを担当する中核企業ですが、ここで歴史閑話は休題。

 計画を持ち込んだフォン・ツボロウスキー博士がノール・アヴィアシオンで機体設計にどこまで関わっていたのか、はよくわかりません。

 もともとはフィーゼラー Fi 103V-1)やメッサーシュミット Me 163 コメット などのロケット技術者のようで、ラムジェットの構想の中で生まれた環形翼を組み合わせるアイデアを提供しただけなのかもしれません。

 いずれにしても、コレオプテールが水平飛行への転換できたのか、も定かではありません。一説では水平飛行に成功して、さらに姿勢を変えてホバーリングからの下降中に機体の搖動が始まり墜落したとなっています。

 結果的にはかろうじて水平方向に射出されて脱出したパイロットの大けがで終わったことで良し、と言える機体のようです。

 フランスでなくても、いつか誰かがやってみようと思うような形態のコレオプテールは甲虫(こうちゅう)の意。でもカブト(甲)ムシ(虫)には似ていない。形からは銀灰色のカナブンかな。カナブンはしっかり飛べてたんだけど。

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 これがなぜターボ・ファンに関係するのかは、既にお分かりの通り、当CEOにはターボ・ファン・ジェットのダクトはまさしくこの環形翼の問題にもかかわっているように思えるからです。

 ちなみに環形翼ではありませんが、サンダーバード 1 号(いうまでもなく架空)はコレオプテールの発展型と言えなくもないかなー。

2016年6月22日 (水)

キネマ航空CEO 翼素理論と運動量理論の推進効率をグラフにする

これまで数回にわたって解析してきた ターボ・ジェットの運動量理論プロペラの翼素理論 による推進効率の計算結果を同一比率にしたグラフ上で重ねてみました。

 お断り: プロペラの推進効率のグラフ化においてピッチ角は前回に仮決めした 15°から 16.8°に変更して全体の整合を図りました。また速度比 1 では効率(揚力係数)が 0 となる微調整を行いました。

Efficiency_of_propulsion

 横軸の速度比はジェットでは機速 V0 とジェットの噴射速度 Vj の比、プロペラでは機速 V0 と限界速度 VLimit の比ですから、普通は Vj > VLimit です。その違いは頭の隅っこに入れて置く必要がある。

 いずれにせよ航空機の推進力は如何にして高速の空気を大量に機体の後方に送り出すかです。したがい、 V0 = VjV0 = VLimit となるところが限界速度となる。

 もちろん、速度差が 0 になれば推進力はないので現実の最高速度は速度比 1 のわずかに小さいところで成立している。すなわち、プロペラやジェットによる推進力と機体の抗力とがつり合う点となります。

 詳述はしなかったがプロペラの推進効率を運動量理論で解けばジェット・エンジンと同じ解法で同じ式になる

 くり返しになるが、プロペラの場合、どちらの理論からでも速度比が 0 の静止推力が得られる。ただし結果は異なることは言うまでもない。 また、推力と効率は定義が異なることをお忘れなく。
 運動量理論で求めるヘリコなどのホバリング時の静止推力は機体の総重量が要求する推力なのでローターの(プロペラ)効率で割ってエンジンの出力を求めることになるが、当オフィスでは離陸時などに時間を決めて(大抵は数分間)出せる運用上の限界出力でカバーできる前提で話を進めています。

 (固定ピッチ)プロペラの推進効率を翼素理論で解いたグラフの形状は、機速の変化でプロペラの翼型の迎え角が変わり、プロペラに働く力の変化を示す揚抗比( = 揚力係数÷抗力係数)をパラメーター(仲介)にして解くためであります。(揚力は推進力、抗力は推進力を出すために必要なエンジンの出力に相当します)

 ターボ・ジェットでもコンプレッサーやタービンの翼(ベーン)で同じようなことが起こっているのでしょうがジェット推進の推力には直接の関係がないので表に出ていない。

(以下は、ほとんど閑話につき、----------の破線までとばしてください)

 ジェット推進の推力は、エントロピー  vs エンタルピー の熱サイクル(ブレイトン・サイクル)の結果で表わされており、一方のプロペラの翼素理論による推力は熱サイクルの後の回転力を推力に変えた結果です。ちなみにレシプロ・エンジンの熱サイクルは(オットー・サイクル)となります。

 どちらのメカニズムでも、運動量理論では原理的に入ってきた空気の単位時間当たり重量は同じ単位時間当たり重量のままで出ていきます(当CEO 得意のストップ・ザ・フン詰まり理論です)。 したがい推進力は速度差による反力のみとなります。

 言ってしまえば、ターボ・ジェットであればRR だろうと P&W だろうと GE だろうと、よしんば IHI であっても、エンジンの大小にかかわらず同じ式、同じグラフになります。
(厳密には、ジェットの場合は出ていく重量には燃料の重量も加わります。それから与圧や空調に回す圧縮された空気の分岐抽出はありません・・・該当機にご搭乗の際は飛行機乗りの三割頭なぞに陥らないように ! くれぐれもご用心。エンジン・メーカーやエンジンの差を導く効率計算にはいろんな係数を導入し、加減乗除で複雑な式を使って計算すればできるとは思いますが・・・)

 さて当CEO の行なった翼素理論による効率計算では、ブレード半径75%位置の翼型性能がプロペラ・ユニットの性能と同じという仮定で進めている。

 加えて有限翼長による揚力勾配の減少、先端に顕著な、音速に近づくことによる圧縮性の影響、といった要素は含まれていない。たぶん実際の効率は速度比が 0.8 以上ではもっと早く丸みを持って低下して行くと思われます。

 それでも、そうした仮定の割には結果の効率が悪すぎるようです。

 実際のプロペラ専用の翼型は代用した翼型より翼厚は薄く、キャンバも大きく、ゼロ揚力係数の迎え角はさらにマイナス側に進み、揚抗比のピーク(すなわち推進効率)はさらに大きいと考えられます。

 そうだとすればこのプロペラの推進効率曲線は専用翼型の修正後と考えても大きな間違いではなさそうです。

 近似した可能性があるとすればプロペラの等価相当半径を 75 %とすることで専用翼型の性能の修正後に似てきたのかもしれません。

 参考書ではいろいろなプロペラの実験結果から V/n D = 2.6 で最大効率は 0.86 程度と記載されている。 当CEO の計算値も最大効率としては、ほぼ整合している・・・のは、たまたまだろうけどね。

 ただ、この実験式の直径 D は外径なのか、 75%の等価相当半径からきているのか、が判然としない。当CEO の場合は後者での比較によると・・・の結果です。

 実験式だから外径なのだろうが、参考書では本式を使ってプロペラ機で可能な最高速度の上限の推定する過程が続くのだが疑問が残りました。

------------------(ここから本題)--------------------

 本題にもどり、グラフの二つの曲線をどう読むか、の例です。

1.ある速度、例えば M 1.0 の限界速度で飛べるプロペラ機とターボ・ジェット機があったとすると、プロペラ機は M 0.7 以下ではターボ・ジェット機よりより推進効率は高い。
 (ここで「同じ限界速度が出せるエンジンを比較すると・・・」と読み替えてくださいね)

2.プロペラ機が M 1.0 (1,200km/h SL)で飛べるはずもないので M 0.5 (600km/h 同)を限界速度に設定すると、グラフ上では限界速度を横軸上で 1.0 から 0.5 へ移動し、効率(縦軸)の値は変えずに全体を左に圧縮して重ねればよい。このプロペラ機は同じ速度域を飛ぶ M 1.0 で飛べるターボ・ジェット機より格段に高い推進効率を示します。

 ちなみにベースとしたセスナ172 の限界速度は時速 280 km/h SL ですから M 0.23 となりグラフでは左の端っこにぴょこんと立ち上がった同じ高さの曲線になります。

 同じ速度で飛ぶターボ・ジェット機なんか比較する相手にもなりません。同じ限界速度で飛べるターボ・ジェット・エンジンを作っても実用にはなりません。

 このグラフはエンジン性能の優劣や燃費の良否を直接比較判定するものではありません。個々のエンジンの特性である噴出エネルギーや回転力として得られる出力を分母にして推進力へ変換できる効率を比較するだけです。

 参考までに、二段可変ピッチプロペラや定速プロペラの効率は各々の速度域を(二分割や三分割以上の複数に)分割してそれぞれに割り当てた限界速度に合わせたピッチ角を使って計算して重ねたり、後者の場合は包絡線をなぞれば作れます。すなわち上記のような一回の計算結果を使って横軸方向への圧縮や拡大による重ね合わせは使えません。

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 要するにプロペラ推進にもジェット推進にも得意とする飛行速度域があるのです。

 ターボ・プロップのコア・エンジンとして使われている圧縮機を駆動するタービンから分離された出力タービンでプロペラを回すフリー・タービン・エンジンはレシプロ・エンジンでは得られなかった高出力を、しかも軽量で達成できるプロペラ機に必須のエンジンになりました。

 ターボ・プロップ機より下の速度域を受け持つエンジンでは現在も空冷水平対向 4 ないし 6 気筒のレシプロ・エンジンが独占しています。

 同じ形式の自動車エンジンを持つポルシェも参入しようとしたが結局挫折、トヨタも水冷(V8 ?)エンジンの航空エンジン化を考えていたようだがあれやこれやで挫折。

 後者は上空でキャビンのヒーター暖房には有効だろうが、このクラスの航空エンジンは単純な構造でメンテナンスが簡単、減速ギヤなどもってのほか、(時間を掛けた)信頼性が確立し、生産設備の減価償却が終わった低コスト低プライスのエンジンが一番なので自動車産業からの参入は難しいようです。

 ほぼ一定速で使われるエンジン特性自体が低回転でフラットなトルクがもとめられており、自動車エンジンの性格とは全く異なった性能でまとめられていますしね。自動車のエンジン技術者の腕の振るいどころはないようです。

 考えられるのはマツダの航空用ディーゼル・エンジンかな ? 昔々にはディーゼル・エンジンの飛行機もあったんですよ。でも水平対向空冷化は難しいかな。

 ホンダはレシプロになびくことなく、本社のコントロールから遠く離れたアメリカの子会社で経験や実績のある現地の大学や研究所、技術者のリソースを活用して小型のターボ・ファン・エンジンを完成させた。

 さすがにメイド・イン・ジャパンとは呼べない・・・だからと言ってメイド・バイ・ジャパンなんて気取らず、シンプルにメイド・バイ・ホンダで大成させてほしいですね。それがブランドです。

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「分かった!」

何ですかいきなり。

「ぶふぉッ」

「このプロペラの推進効率のグラフを上手く圧縮して重ねたのがターボ・ファン・ジェットなのだ!」

そう言えば映画版金田一耕助シリーズに名優加藤武が演ずる警部がいましたね?

 まあ、大まかな理屈はそうなのだが、そのファンを囲む「シュラウド」、時には「カウル」、時には「ダクト」が大した曲者なのです。その曲者は次回から名前のなかに「デフューザー」も「ノズル」も加えて再登場します。

 「曲者のシュラウドを組み合わせることで、ファン・ブレードには、ある速度までは翼素理論で働き、それ以上の速度では運動量理論で働くような翼型と迎え角を持たせればよい・・・」と、金田一耕助は推理するのかもしれない。

 が・・・金田一先生も探偵としては先行推理ではなく後出し解説の謎解き専門なので依頼するには頼りないのですけどね・・・でも面白い。当CEOは嫌いじゃありません。

キネマ航空CEO ターボ・ファン・ジェット・エンジンの効率を考える(数式編)

キネマ航空CEO ターボ・ファン・ジェット・エンジンの効率を考える(グラフ編 + 下の方で、ギヤード・ターボ・ファンの疑問編の始まり)

2016年6月19日 (日)

キネマ航空CEO 翼素理論によるプロペラの推進効率を検証する(プロペラの巻 その 3 )

公開校正中です。訂正があるかもしれません。
また、お気づきの点がございましたらご連絡ください。

キネマ航空CEO

   航空機の諸元をあつかう注意点は、まず速度に出てくる単位マイルであります。

   陸のマイルか、海のマイル( nm :ノーチカル・マイル)か。基本的に日本語の資料は換算されており(間違いもたまにある)、英語の資料を複数あたって決めるしかない。日本語の記事や文献では何 km/h と換算されていても(- nm)などときちんと補足されていればまず信用できます。

   次に用語の定義があげられる。物理速度だけでも対気速度、真速度、対地速度がある。パイロットが真速度を知るには気圧の補正を行わなければならない。対地速度を知るには偏流測定が欠かせない。

   地球規模で飛行機は飛んでいるのだけれど、浮いてもいるのでパイロットの意思以外の力が簡単に働くのです。

   カタログに載る値では高度が併記してあれば、まず信用できる。ただしほとんどが標準大気を使った計算値(正確には換算値)と思われる。

   航続距離に至っては計算値以外には考えられない。
まあ誰も具体的な検証をしようなどとは思わない数字でありますね。限界まで直行しようなんて思わずに、余裕を残して途中で着陸し必要な燃料を補給すればいいのですから。

 でも、特別攻撃隊の整備士官は気にしていたのでしょうね・・・もしも会敵できなかった場合の帰投分の燃料を乗せていたのかな・・・ 余分(情)を積めば作戦は成功しても、失敗しても(精神論には失敗などなく悲壮の美学に転化か転嫁をして浄化できるようだけど)、明日からの出撃機数は確実に漸減していく・・・その結果、飛行機があっても燃料がなくなれば戦争は終わる・・・日本人はオペレーターが扱う兵器がある限り続ける戦争を、特化した兵器を作り出してまで精神論でやってしまった。・・・などと総括すると、これから近づくかもしれぬ世が世になれば、「さー(また)やるぞ!」となるのかなァー(閑話休題)

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 さて、プロペラの翼素理論による効率ではピークを持つと仮定した。その式では v0 = 0 の条件は明らかに存在する。もう一つの { CL/CD - v0 / ( 2πn ・r)} = 0 の関係が本当に成立するのかどうかを考えていく。

 まず基礎データを抜き出す機種の選定では、「直結の固定ピッチ・プロペラ」を採用し必要な用件を満たす資料のそろう機種となると相当古い機種から探すことになる。

 機体 セスナ 172-F (1965)
  最高速度    138 MPH 海面
   巡航速度 (75% 出力)    130 MPH 7,000 Ft
        公称    130 MPH 9,000 Ft
               最大航続距離    102 MPH 10,000 Ft
 常用上限速度    140 MPH 海面(推定)
 超過禁止速度    174 MPH 海面(推定)
エンジン コンチネンタル O-300
  回転数   (参考)
  連続定格    2,700 rpm (145 BPH)
  巡航時標準 (75% 出力)    2,450 rpm(推定) (109 BPH)
  常用上限速度    2,700 rpm
  超過禁止速度    2.900 rpm(推定)
プロペラ(直結) マコーレイ
  直径    76 in (金属製 2 翅)

 本機は陸のマイルが使われている。この当時、(特に民生用の)飛行機は感覚的には自動車の延長にあったと思われる。
(現在では nm :ノーチカル・マイルと表示されている。したがい現在の速度は数字としては小さくなっている)

 これらより tanΦ= v0 / ( 2πn ・r) = CL/CD というケースがあるのか、ないのか、を考えることになります。Φ は進行角でプロペラ翼素の(周)速度と進行速度がなすベクトルの角度。

 まずは、換算の係数から、 1 mph 0.44703722 m/s 、1 in = 0.0254 m 、1 ft = 0.3048 m 、1 rpm = 1/60 1/s 、π= 3.14159265359

 高度を併記したカタログの速度はピトー管を使った差圧高度計による対気速度として進めるので、プロペラに対する実効速度をそれぞれの高度の音速値 M (マッハ)数に変換する。

 換算値は標準大気表による。

  高度      音速
海面(S.L.)    340.294 m/s
7,000 ft    312.306 m/s
9,000 ft    303.848 m/s
10,000 ft    299.532 m/s

 これらの表よりプロペラの 75 % 位置と 100 % 位置である先端(チップ)の周速度を M (マッハ)を単位として計算する。次にそれぞれの進行角 Φ を算出する。(本来なら物理単位の m/s にすべきだがどのみちタンジェントは無次元の値ですから単位が同じなら、問題はない

対気速度   プ ロ ペ ラ 周 速 tanΦ= v0 / v75,100     進 行 角度
速度条件 v0 (Mach) v75 (Mach) v100 (Mach) tanΦ75 tanΦ100 Φ75 (deg) Φ100 (deg)
  最高速度 0.1813 0.6015 0.8020 0.3014 0.2261 16.77 12.74
  巡航速度* 0.1861 0.5947 0.7929 0.3129 0.2347 17.38 13.21
  公称値 0.1913 0.6112 0.8150 0.3129 0.2347 17.38 13.21
  最長距離 0.1522 0.6201 0.8267 0.2455 0.1814 13.79 10.43
  常用上限* 0.1839 0.6015 0.8020 0.3058 0.2293 17.00 12.92
  超過禁止* 0.2286 0.6460 0.8614 0.3538 0.2654 19.49 14.86

* には当CEO の推定した数値が使われています。
詳細はセスナ 172 の性能表に(推定)と付した数値をご確認ください

 マッハ数にしてみたのは直径わずか 2 m 弱のプロペラの先端は、地上で 2,700 rpm で回転させると、また回転数を下げた巡航時でも高度を上げると、亜音速ではありますがジェット・ライナーの最高速に匹敵するスピードで空気を切っていることを確認するためであります。
 ちなみに巡航速度の公称値(2,750m: 9,000ft)でプロペラに作用する合成された気流の速度は M 0.8372 となります(閑話休題)

 さて、ブレードのピッチ角は β=α+Φ で表されます。Φ は主にプロペラ(すなわち機体)の進行速度とプロペラの周速により変化する。したがい、特定の速度条件での迎え角 αΦ に加えればよい。

 このためにはブレードの翼型と性能曲線が必要なのだが、そう都合よく見つからない。そこで、前々回のプロペラの断面図に比べると翼厚が若干厚いようだけど、たびたび登場する翼型に代行してもらう。

Naca4412 固定ピッチ・プロペラを採用した既存の機体のリバース・エンジニアリングなので、最長航続距離の巡航速度は最大揚抗比(22)で得られていると考えられる・・・で、・・・

 75% 位置での進行角 Φ は 14°。このときの迎え角 α の 1°を加えてピッチ角 βは 15°となる。ちなみに揚力係数は( 0.35)。

 これが静止時の迎え角 α となり揚力係数は( 1.3)、揚抗比は( 11) 程度。

 最高速度での迎え角 α は -2°となるので揚力係数( 0.15)、揚抗比は( 14) となる。

  tanΦ が揚抗比と等しく(すなわちプロペラの推進効率 η= 0 )なるのは超過禁止速度付近の迎え角である -4°あたりとなる。

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    なお、上記のピッチ角と迎え角の整合性の確認の記述なかで(数字)で示した揚抗比と揚力係数は、N.A C A  4412 翼型性能表から拾った無限翼幅の数値です。

    現実の有限翼幅のプロペラ・ブレードの性能では、揚力係数が 0 の迎え角は変わらないが揚力勾配(ほぼ直線の部分の傾斜)は緩やかになり、抗力係数も増加するので揚抗比と揚力係数には 1 以下の修正係数が必要です。(閑話じゃないけど休題)

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 N.A.C.A. 4412 翼型はセスナ 172 型のプロペラにほとんど整合しており、この翼型で正式化もできそうだが、細かいチューニングをするのが技術であり、マコーレイ(汎用プロペラ・メーカー)が存在する理由であります。

 ついでに同じ翼型ならブレード先端の捩じり下げは 4°、すなわち先端のピッチ角 β は 11° となる。

 中心側への捩じり上げも半径を 50%、25%と 変えながら、進行角から始める計算を繰り返せば求めることができる。

 だだし、ブレード先端速度は先に示したように、セスナ 172 でも空気の圧縮性の影響が出てくる M 0.8 を超えており、先端部の翼型は揚力も必要だが誘導抵抗を抑えるためにアスペクト比を稼ぐ目的で先細の翼弦長と薄い翼型が採用されているようだ。

 つまり、プロペラ・ブレードは全長にわたって同一翼型で統一する理由はなく、滑らかに変化する翼型で中心部の丸棒につながっておればよいのです。

 さらに、ここで上げた資料を使っていろいろな、例えばピッチ角を 15°より小さくし、飛行速度を遅くした状態で、揚抗曲線のピークを有効に使うための「二段階可変ピッチプロペラ」や機速、スロットル開度に合わせてピッチ角を変えて回転数を一定に保つ「定速(無段階可変ピッチ・)プロペラ」などの初歩的な設定方法のシミュレーションができる・・・けど、当CEOはここでギブアップ。

 ということで、当CEO のプロペラでは運動量理論と翼素理論の推進効率は異なるという仮説(ではなく、すでに証明されているのだけど・・・ね)はどうやら正しいようだ。

 次回は 「ターボ・ジェットとプロペラの推進効率のグラフの比較 」 に挑戦してみることにして、今回はここでおしまい。

2016年6月 3日 (金)

キネマ航空CEO 航空エンジンのお仕事の効率を翼素理論で考える(プロペラの巻 その 2 )

公開校正中です。訂正があるかもしれません。
また、お気づきの点がございましたらご連絡ください。

キネマ航空CEO

・・・ところが、プロペラなどの推進効率を運動量理論で求めると、ジェットのそれと同じになってしまいます。
このためプロペラの推進仕事効率は翼素理論で解く必要がありますが、これは、少し(当CEO にはかなり)面倒なので・・・の前々回を受け、前回の基礎を経て続きます。

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今回のプロペラ推進効率の解析に必要な前回の 図 A図 B はタブ表示で、 こちら (前回)のページからは画像のクリックで別窓を開けます。

広げた 図 B をチラ見して理解できるようにプロペラ推力を翼素理論で解析(初歩的な概念だけですが)する手法は速度や力のベクトルの合成と分解とをそれぞれの基準となる座標軸を跨いでおこなう作業であります。

このベクトルの変換作業は、一つの直交座標の上に重ねたもう一つ(以上)の回転した直交座標のグラフ上でも整合性を持たせて幾何学的に実行します。

これを「長さ」と「角度」で数値化して代数幾何学として計算できる数学として扱います。これで過去に証明された、すなわち数式化された理論式の結果をグラフ上でベクトルとして書き込むことから始めます。(代数幾何・・・大好きか・・・と問われてもねー)

角度を扱うため三角関数とベクトルについての合成や分解の知識はある程度必要です。

扱う対象と手順は・・・

   1.プロペラの中心軸と回転面を軸とした直交座標上にベクトルを持った風速の合成で迎え角を決定することから始まります。

   2.次に迎え角の基準とした座標の上に翼型に生じる揚力や抗力の式を用いて得られる値をベクトルとして視覚化します。

   3.揚力と抗力のベクトルを合成し、再び中心軸と回転面を軸とした直交座標上に推(進)力と回転力のベクトルとして変換することでやっと推進効率の計算が可能になります。

まず、図 B を開いて参照しながらお付き合いください。

1.迎え角の決定
   基準となる直交座標はプロペラの回転中心と回転面で作られます。

   プロペラのブレード長のある半径における回転方向の速度 p は図にはないけれど、計算で、
   vp = 2π・n・r
   n は単位時間の回転数 [ s-1]。 r はその、ある半径 [m]
ちなみに 2π・n は角速度と呼ばれ単位は [rad (ラジアン)・ s-1 ] または単に [ s-1]。
換算係数で分かるように( 2πr )で括れば半径 r の円周の長さ。これに n を掛ければ単位時間に円周上をどれくらい進んだか(周速)が計算できる。

では回転(円)運動しているならば 図 A⊿R で示した直線で並行する翼幅はおかしかないか・・・ 図 B の速度も(円周上に一部である)円弧を横から見て直線だ!と言っているのではないか・・・といった疑問が湧きませんか。

そこで、当CEO が敬愛するバカボンのパパが登場します。
極々短い時間で考えると速度は半径に直角の方向(接線方向)に向かっている長さである。そこからまた極々々短い時間がたっても半径に対する進行方向や長さは変わらない。その時間の積み重ねで半径は一周する円を描くのだ。すなわち円運動も直線運動なのだ・・・これでいいのだ。
           

   これに先回と同様に進行方向の速度  v0 [ m・s-1 ] が絡みます。(その 1 )では、すったもんだのあげく、プロペラの吸入負圧による増速は無視して、翼型に向かう空気の速度ベクトルを求めることにしました。

 U2 = v02 + ( 2πn ・r )2 
 tanΦ = v0 / ( 2πn ・r)

より、迎え角は

 α= β-Φ

2.座標の変換による揚力と抗力の計算
   迎え角を使う揚力と抗力の計算にはΦ だけ傾いた速度 U のベクトルをいっぽうの軸とする直交座標が基準になります。

   この速度 U と迎え角 α により、 図 A に示した翼素の面積 ⊿S = ⊿R・c [ m2 ]に働く、速度 U のベクトルに直交するベクトル値である揚力 ⊿L [ N ] と並行するベクトルである抗力 ⊿D [ N ] の計算をします。
翼素の迎え角と翼型の性能から求められる CLCD はそれぞれ揚力係数と抗力係数 [ 1 ]。ρ は空気の密度 [ kg・m-3 ]

 ⊿L = ρ・CL・U2 ・⊿S / 2
 ⊿D = ρ・CD・U2 ・⊿S / 2

   翼に働く力として一本のベクトル ⊿R [ N ] に合成すると

 ⊿R2 = ⊿L2 + ⊿D2 
 tan γ = ⊿D / ⊿L = CD / CL 
 1 / tan γ= CL / CD を揚抗比と呼びます。CD で割る理由は、CL には 0 となる迎え角があり、CD にはないからです。

3.推進力と抗力の算出
   そして揚力と抗力のベクトルを、プロペラの回転軸と回転面の直交座標に戻します。

   翼にかかる力 ⊿R = (⊿L2 + ⊿D2 )1/2  と角度(Φ + γ)から直接に推力 ⊿T  [ N ] と回転(抗)力 ⊿F  [ N ] に分解する方法もあるが・・・

   ここでは揚力 ⊿L 、と抗力 ⊿D に角度 Φ を使った分解と合成で求める(式中の ± の使い方にご留意)。またプロペラのブレード枚数 N を面積に掛けることでプロペラ一基分の力となる。

 ⊿T = ⊿L・cosΦ - ⊿D・sinΦ = ρ・U2N ⊿S・(CL・cosΦ - CD・sinΦ )/ 2
 ⊿F = ⊿L・sinΦ + ⊿D・cosΦ = ρ・U2N ⊿S・(CL・sinΦ + CD・cosΦ)/ 2

 これらの式は次のように変形できます。ここでは sinΦ / cosΦ = tanΦ =  v0 / ( 2πn ・r) の式を使います。

 ⊿T = ρ・U2N ・⊿S・cosΦ・CD ・{ CL/CD - v0 / ( 2πn ・r)} /2
 ⊿F = ρ・U2N ⊿S・cosΦ・CD ・{ CL/CD・v0 / ( 2πn ・r) + 1} /2

4.プロペラ効率の計算
   ここまで半径 r の翼素に生じた力には(微小の意)を付与していましたがプロペラ・ブレード全体にかかる力は次のような集積(積分の基礎的概念)を行います。

   仮にブレード全長を100 等分して i 番目の翼素では密度 ρ とブレード枚数 N それに前進速度 v0 を除き、他はすべて半径 ri によって決定される変数となる値です。したがい、それらに添え字 iを付けておきます。 
  ⊿Ti = ρ・Ui2N ⊿Si・cosΦi・CDi ・{ CLi/CDi - v0 / ( 2πn ・ri)} /2 より

   T = Σ( i = 1→ 100)[⊿Ti ] 

   で、表されます。プロペラは回転しているのでこの力はプロペラの回転中心に働いているとみなせます。

   なお、( )内の記述は正式の数学表記ではありません。Σと併せることで、100 分割した各翼素で計算した推進力の全てを合計するための積算範囲を(当CEOが勝手に)示してしています。この分割数を無限に増やして行なった合計が積分です。

同様に、
  ⊿Fi = ρ・Ui2N ・⊿Si・cosΦi・CDi ・{ CLi/CDi・v0 / ( 2πn ・ri) + 1} /2 より

  F = Σ( i = 1→ 100)[⊿Fi ] 同じく( )内の記述は正式の数学表記ではありません。 

   いっぽう、抗力⊿F は、回転力(トルク)⊿Q [kg・m]に変換しなければなりません。
  ⊿Q =⊿F・r より、同様に ⊿Qi =⊿Fi・ri となり

   Q = Σ( i = 1→ 100)[⊿Fi・ri ] =  Rm・Σ( i = 1→ 100)[⊿Fi ]

等価相当半径 Rm [m] はモーメントのつり合いから、

  Rm = Σ( i = 1→ 100)[⊿Fi・ri ] / Σ( i = 1→ 100)[⊿Fi ]

   なのですが、 Q も Rm も解くことはできません。

   いずれの式も半径 ri に関係する数値がなければ具体的な計算はできず、解析はここで行きどまりです。

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   しかし、プロペラ・ブレードの設計をするわけではないので、ある半径 r が等価相当半径 Rm に等しく、ブレードにかかる力のすべてがその半径上にある翼素面積⊿S に集中しているとみなせば効率 η は計算できる。

   このみなしでは⊿S を除く も、翼素の位置の定義 i もチャラにして 、揚抗比 CL/CD はプロペラ全体として整合する値とします。

  T = ρ・U2N ・⊿S・cosΦ・CD ・{ CL/CD - v0 / ( 2πn ・r)} /2
  Q = F・r = ρ・U2N ・⊿S・cosΦ・CD ・{ CL/CD・v0 / ( 2πn ・r) + 1} ・ r /2
  tanΦ = v
0/2π・n・r

   推進効率 η は『推力[ N ] X 速度[ m・s-1 ] 』と『トルク[ N・m ] X 回転速度[ s-1] 』で表される、プロペラが行う仕事[ N・m・s-1 ] とプロペラにつぎ込まれる仕事[ N・m・s-1 ] の比となる。

  η = T・v0/Q・2πn

TQ に共通するのはρ・U2N ・⊿S・cosΦ・CD /2 ですからこれらは消去されて、

  η = { v0 /( 2πn ・ r ) }・{ CL/CD - v0 / ( 2πn ・r)} /{ CL/CD・v0 / ( 2πn ・r) + 1}

   プロペラの効率は「前進速度と等価相当半径の円周速度の比」と「等価相当揚抗比」に関係する。そして、この式の影には「等価」とか「相当」などの言葉では言い表せない迎え角 α が隠れています。それは、また後の話・・・

   ちなみに、この効率は 前進角 v0 / ( 2πn ・r) = tanΦ と 揚抗比 CL/CD =  1 /tanγ より、
  η = tanΦ・( 1 /tanγ - tanΦ) /( tanΦ /tanγ + 1)  と角度で示せる。

   元の式で読み解くと、揚抗比のうち、揚力係数は 0 やマイナスの値になることもあるが通常の使用範囲ではプラスの値であり、{ CL/CD・v0 / ( 2πn ・r) + 1} > 0 である。

   したがい、プロペラ推進効率 ηv0 = 0 の場合と v0 / ( 2πn ・r) =  CL/CD の場合の二か所で 0 になる。ただし実際にそうなるのかについては次回に検証予定です。

   つまり、機速 v0 = 0  ( 2πn ・r)・ CL/CD の間にピークを持っている。

   プロペラの設計では、揚抗比 CL/CD v0 / ( 2πn ・r) の値によって迎え角 α = β - Φ) が変わることで変化する。したがって特定の機速に合わせて(たぶんプロペラ半径の 75% で)基準となる翼型(揚抗比)を選び、基準となるピッチ角 β を設定する。

   ピッチ角が固定されておれば、プロペラ先端に向かって周速が速くなり進行角 Φ が小さくなる。したがい、 図 A のように先端に向かってピッチ角 β のねじり下げが行なわれる。
   (中心にむかっては捩じり上げになるが、20%以内ではかなりテキトーに・・・古い木製プロペラを見ていると先端から中心まで美しい曲線で構成されている。翼素理論は積分なぞ使わずにシンプルに(前回の参考図で想像するに)5断面ぐらいを計算したんだろうなー。先端を細くして丸めるなんて誘導抵抗も知っていたんだろうか。中には後退角の付いたのもあったなー!)

   今回のみなし計算で使用した「等価相当半径」は機速によって移動し、「等価相当揚抗比」も変化する。

   加えてプロペラ先端では誘導抵抗による損失、音速に接近することで生じる空気の圧縮による揚抗比の低下などで、現実のプロペラ効率はプロペラ推進効率より低くなる。

   実際のプロペラ効率のピークは実験では 0.8 強といったところです。もちろん、エンジンが消費する熱損失を含めた総合効率ではありません。

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   結論として、これ以上に素人がプロペラの翼素理論に深入りしても得るところは少ない。

   とは言え、プロペラのような空力推進機械の効率は、(ターボ・ファンなら特に)固定されたピッチ角を持つ翼素に対する迎え角 α は機速 v0 によって変化するので、その迎え角 α の関数である揚抗比曲線に支配された(翼端の損失を含めて実験や経験からη = 0.8 ぐらいの)ピークを持っている。

   このピークをターボ・ジェットの効率の低い(速度の遅い)部分に組み込めば全体の効率をかさ上げできる。

   プロペラの設計の考え方を繰り返すと、ブレード全長に亘って翼型形状を滑らかに変化させて、各部分の翼素の揚抗比と翼弦長を適切な(一般に捩じり下げと呼ぶ)ピッチ角でつなげて、推進効率を向上させる作業となる。(もちろん中心部は揚力、抗力による曲げモーメントで折れないように翼型はとりあえずは、置いといて・・・)

   合わせて、広い速度域に対応するにはプロペラ本体のほかに可変ピッチ機構が必須となる。

 

   その辺りは、次回次々回 でこのテーマをまとめます。

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