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2016年9月 2日 (金)

キネマ航空CEO ターボ・ファンのダクトを真面目に考える、の巻

承前、( 前回 からの続きです)

 今度は エンジンの実体断面図ではなく、模式図A )からはじめます。

Defuser_1

 まず、模式図で目につくところは、前回の断面図と同じく・・・

   1.*(注) ダクトの入口がファンの直径より小さい。
   2.**(注)カウリング(以下 カウル)の上下で断面の形が異なる。

があげられます。

  1.では入口の内側にある入口の面積より断面積が大きい空間は、動圧を静圧に変えるデフューザーと呼ばれる機能が想像できます。
  2.図 A は M (マッハ)数で断面が変わることを上下に描き分けてジェット・ライナーがカバーする広い飛行速度域のため***(注)亜音速域においても飛行速度によってエンジン全体を成形するカウルとしての最適形状が変わることが示されています。

 しかし前回の実体断面図でもカウル上下の断面形状は異なっています。これについて終わりから 7 つ目のセンテンス当たりから始まります

 ジェット・エンジンは吸気口から周辺の空気を吸い込みます。図中でカウルから伸びている破線の内側の空気がファンやコンプレッサーによって吸い込まれる、吸込み負圧の影響が及ぶ範囲を示しています。

 分離流管と呼ぶようです。管と呼ぶからには外側の限界を決める特定の(ゼロではない)吸込み速度の測定か計算の基準があるのでしょうが、詳細は不明です。

 当CEO は技術用語としては『分離流管』より「流れの場」、あるいは「ベクトル場の強さ」を示す『流束』または『流束管』の方が適当ではないかと思うのだが、それはさて置き・・・

 破線で示された各々の分離流管に付けられた M 0 (マッハ数)によってカウルの進行速度(機体の値と同じ)が変化すると吸い込む範囲である分離流管が狭まる変化を示しています。 

 M 0 = 0 といってもエンジンはアイドリング状態ではありません。
パイロットがブレーキを踏んでスラスト・レバーを押し、定格回転で安定した静止状態を指します。しかし、これではタイヤがずるずると滑ってしまうかも知れないので、むしろ地上の試験装置に固定されている状態といった方が適切ですね。

 以下、どこまで正確に表されているかわかりませんが、
 M 0 = 0.5 でほぼカウルの開口直径より大きくダクト内側の直径とほぼ同じ。
 M 0 = 0.8 ではカウルの開口径より小さくなっています。

 つまりターボ・ジェット・エンジンでは自分が持つコンプレッサーによる吸い込み能力(単位時間当たりの質量流量キャパシティ)に限界があるようです。

 結果として速度が遅ければ開口部の後ろから回り込みながら空気を吸い込み、飛行速度が速くなってラム圧が加わりコア・エンジンのコンプレッサーやファンが吸い込めなくなった空気はカウルの外側を流れることになる。

 そこで模式図A )から一歩踏み込んだ次の作動機能図B )に移りましょう。

Intake_effect
 この図では、左より順次機体速度が速くなっています。その場合にカウル(ひいては機体)に働く力の方向(ベクトル)を示しています。

 図中の「速い、遅い」の定義はカウルの周囲を流れる機速とエンジンの吸込み速度の相対比較です。

 物体の周りの流体に速度差があれば物体に揚力が働く原理が設計に使われています。

 カウルの形状と内外の速度差による揚力でエンジンの推力を助ける方向の分力が得られるようです。

 揚力の方向が変わっています。カウルの断面翼型に向かう相対的な迎え角によって揚力 0 の場合もあります。涙ぐましい努力の積み重ねですね。

 次の疑問はカウルの中の流速は、ほぼ一定の M 0.5 になっていることです。参考書によっては M 0.4~0.45 と記述してある例もあります。

 さて、そのため機速による押し込み(ラム圧)による単位時間当たり質量流量の増加分とのバランスをとる機能を受け持つ部品がカウルの内側にあるダクト(デフューザー)となります。

 いうまでもなく亜音速の場合です。
超音速ではカウリングの入り口や内部に発生するショック・ウェーブを減衰させる全く別の構造のカウルとダクト(デフュザー)が必要になります。

 デフューザーの構造は簡単にいえば、カウルの入口直径より中の(ダクトの)直径の方を大きく設計します。

 ここでベルヌーイの定理を定性的に当てはめると単位時間当たりの質量(流量)はカウルの内側(ダクト)の断面積が入口より大きくなると流速が遅くなり静圧が大きくなることがわかる。 

 デフューザーの効果で流速が遅くなれば プロペラの翼素理論の展開 で考察したプロペラ(加えてファンやコンプレッサーのブレード)の先端速度と音速の関係を緩和する効果があります。

 その効果に付随して、ジェットエンジンが持つ本来の機能としての回転機械が要求する回転軸に対して点対称として空気を均等なベクトルでファンやコンプレッサーのブレードやベーンに進入させる機能が要求されます。

 例えば。地上滑走時にはダクト開口部のすぐ下に地面があり、離着陸の進入時には機首の方向と進行方向が大きく異なる、などなど分離流管が非対称になることは避けられ状態で、吸い込んだ空気の圧や速度の変動によって渦や振動が発生しファンやコンプレッサーに悪影響を与えないようにする機能です。

 航空マニアは 1984 年にボーイング 737 のエンジンが P&W JT8D-9 からファンの直径がより大きい CFMインターナショナル CFM56-3B へ変更されたときに、その解決法としてコンピューターの数値計算(もちろん膨大な実験結果を伴う)による形状決定を目の当たりにします。

 手っ取り速くは、当キネマ航空の 空港ツアー で見られるキャプチャー画像をご参照ください。ほぼ正面からの絵面ですので、できれば Web で側面からの写真も参照してください。変更によりエンジンは前方に伸びています。このあたりも見どころです。

CFMインターナショナルGEスネクマの米仏合弁事業。前回の IAE と同様に特定のエンジンを生産販売に特化した企業)

 ちなみに 図 A では、下側のカウルに「負圧による自動吸込み扉をつけることもある」と書かれています。実際に、ごく初期のボーイング 707、747 に採用された写真があります。カウル下側ではなくほぼ全周に渡っていますが作動時の乱れた流れがファンの騒音を増加させることが分かり廃止されたようです。

 軍用機ファンですとご存じのはずですが、M = 0 での浮揚が必須のホーカー・シードレー ハリヤーから始まる一連の VTOL 機のカウルには必須の構造として存在します。

 代替機となるロッキード・マーチン F-35B ではM 1.6 クラスの超音速を得るためにシャフト・ドライブの独立したリフト・ファン方式に変わり、VTOL 時にファンの上下に大きくドアが開く方式に変わりました。

 低速時の補助吸込口はリフト・ファンの背後に観音開きの扉が開きます。ガンダムのファンには見慣れた構造かもしれませんが何となくあやしげにも見えてきます。(閑話休題)

 さて、物理学は回転機械に対しては原理的な点対称性を要求しますが、工学は対称性の実現のために高速かつ高度化した数値計算を駆使した非対称で要求に応え始めます。

 当CEO は数値計算などできません。そこで次回は、初歩的な工学として考えてみようかと思っていますが・・・どうなることか。

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 *(注)ダクト
形状は中空のチューブやパイプの親玉だが四角な形状も含み、部品名というより内部の機能や構造を示す名称。
導(・)管または送(・)管と訳されて(・)内に流体の「水」とか「風」などの名詞を入れることが多い。中には流体以外の長いもの、電線や通信線を這わせる「ケーブル・ダクト」もある。

 **(注)カウリング
航空機の空冷エンジンに見られるエンジンを囲む取り外しのできる覆い(カバー)を指すことが多い。流体の整流など、囲む対象の内と外に必要な機能を併せ持つ部品名。

 シュラウド
カウリングと同じような形状になることもあるが、元の意味では対象を覆い隠すもの。工学的には内からの飛散、外からの飛び込みを防ぐ安全機能を持たせた構造物。防音機能にも使われる。固体に限定せず霧や霞などでもこう呼ばれることがある。

 ***(注)ジェットライナーの亜音速域と言えば M 0~0.85 当たりの範囲となります。機速がそれを越えると機体や翼のどこかが音速を越えた遷音速になって商用機として効率の悪い飛行状態を避けるためと考えられます。
 超音速で起こる現象については、当キネマ航空 011便 にご搭乗いただき上映中の『アロー』、『超音ジェット機』をご鑑賞ください。

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