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2016年9月の3件の記事

2016年9月20日 (火)

キネマ航空CEO 陰謀論は楽しい!上有対策、下有政策?の巻(全編閑話)

2016/09/25 公開校正と加筆を終了しました。とりあえず、これを以って決定稿とします。

 陰謀論と言えば「太平洋戦争はルーズベルトの陰謀」説がある。「チャーチルの陰謀」説もある。全般に海外のジャーナリストや歴史学者の本やその翻訳がベースのようだ。

 Webでは、ここから引用したり、パクったり、で自説を構築する若い人たちもいる。しかし、「陰謀に乗っかってしまった、その前に陰謀の元ネタを作っちまった、日本(人)の無能あるいは限界」説と併せた論考はしていないようだ。「それを自分で言ったらお終いよ」の究極の自虐史観の裏表なのだろう。

 史観と、重々しく他人の口から浴びせられるが、発音すれば「しかん」、言ってる本人の私感と大して変わらない。

 でも、陰謀論って楽しいんだろうな。で、当CEO もやってみようと思う。

 さて、最近の事例では、「せいふ」(以下、お上)に対する日本の自動車メーカーの燃費偽装申告による認証について・・・(以下、ご承知なら----までとばしてね)

 燃費の値そのものは実用上にはほとんど無意味なのだが、お上は技術上の認証制度と燃費値による分離課税率とを絡めて新車への更新政策をとっている。

  この事例でほとんどのジャーナリズムあるいは自動車評論家は珍しくも「けいざいしんぶん」以外の瓦版もこぞって「お上」に対する虚偽の申告は「りょうみん」に対する冒とくとして論陣をはった。

 概要は「みつびし」の申請値は会社組織による捏造値であるとの内部告発に始まり、「お上」から業界団体に対して行われたヒヤリングで「すずき」が申告値の基となった走行抵抗はお上のご指示と異なった個別実験データの積上げ値だったと報告し、この二社が瓦版の標的となった。

 「お上」はやりたくもない検証実験を行った結果、「みつびし」は申告された全機種にくわえて対象機種以外にも(会社ぐるみの)不正の存在を実証してしまった。

 いっぽう「すずき」には、全機種に申請値よりかなり優れた実験値のお墨付きをお上から下しおかれることになる。

 お上の振り上げた拳は、一応の無罪の通達だが、「お上のお触書通り」に行わなかった罪、という理由で今後の申請に当たっては(他社より)厳しい審査を実行する、という時代遅れの「大岡裁き」めいたお達しで幕が引かれた。

(ここまで前振りね・・・長いな)

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 さて、陰謀論はここから!

 発端は、「みつびし」からの内部告発であったらしい。こうした場合、お上は業界団体のまとめ役にまず腹の探り合いを持ちかける。

 相手は「とよた」である。T社などと書かないで平仮名を使うのは実録を書くつもりなど、はなからない、からである。

 自動車会社の技術部門と品質部門と購買部門の際(きわ)になる狭間(はざま)には、競合メーカーの競合車種を市場から調達して性能を徹底的に測定し分析し、さらに分解して部品の精密測定を行い、ものによってはさらに復元できないまでに切断して精度のレベル、さらには材質からコストまで推定する隠密部門もしくは組織を持っている。

 「とよた」はかなりの予算を使って、それこそ全世界の主要な大量生産車種を系統だって調査した情報の集積を持っている(持っていないとおかしいのですよ)。

 当然、「みつびし」車の公開情報と実性能の乖離は十分に承知していたと考えていい。

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 「とよた」は考える。省庁お大名に匹敵する業界の大名主、大庄屋として、これまでのようにお上と計らい穏便に収めるかどうかと。

 決断は公(おおやけ)にする、を選んだ。結果、お上は予算があまってたのか、事後対策に奔走することになる。

 「みつびし」を叩くことは、お上の影の政策(Shadow politics)である日本の多すぎる自動車産業の統合(実際は整理の)政策に手を貸すことになる。

 かなでほん忠臣蔵なら「あさのけ」は見当違いの「きらさま」に報復できるが、今回ばかりは、とばっちりを受けた平侍、足軽、雑兵は(お家の存続など二の次の)雇われご主君様、ご家老様、お目付衆の重役方を恨むしかないのである。それでも納まらないのは抱えるものが多くて逃散もできない「あさのけ」に連なる農民町方衆である(逃散:江戸時代の農民の抵抗手段)。藩札を現銀化する「おおいしさま」は「みつびしけ」にいるのか。

 たとえば、「みつびし・じどうしゃ」とは何の関係もなくなったが、かつての親会社の「みつびし・じどうしゃ」より更なる悪名の残る「みつびし・ふそう」は今は外様の「だいむらーけ」の連結子会社である。ディーゼル・エンジンの商用車で「とよた」の連結子会社の「ひの」や資本関係のある「いすゞ」と競合している。

 そうなれば、実行できる力のある下(しも)の決断は早い。資本主義の中での私企業の本能でもある。上有政策が上有対策に走っている間に下有政策を実行しながら下有対策を装ってお上の政策をお手伝いする。

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 しかし、お上のヒヤリング(つまりご威光による丸投げ制の自己申告)で「すずき」が手を上げることを「とよた」が織り込んでいたのかどうかは定かではない。

 ただ、「すずき」は「とよた」や「よりあいしゅう(こうぎょうかい)」への仁義は尽くしてからお上に申告しているだろう。

 「とよた」が「すずき」の小型車はともかくとして、自社の隠密部門で軽自動車を頻繁に調査していたとは思えない。しかし、熾烈なシェア争いと燃費競争を行っている連結子会社だった「だいはつ」が同様の調査を実施していることは間違いない。

 では、なぜ「すずき」が自己申告に手を挙げたのか、「すずき」が「とよた」の高級車を調査することはないが、「だいはつ」の競合車は徹底的に調査して、そのお互いの手の内は分かっている。

 むしろ自己申告した背景となった事実を既にお上に知られていたのかもしれない。おそらく、ゲームの理論、中でも囚人のジレンマの中で「だいはつ」を同じ土俵に上げようとしたのであろう。

 お上も常に江戸にいるわけではない。役得もある関八州見回り役の監察(のまね)ぐらいはやる。今では新幹線も飛行機もある。「すずき」へだっていく。設備の説明も受ける。技術者とも会う。

 「すずき」が偽装に使ったとされた技術は既に公知のコンピュータ・エイディッド・エンジニアリング(CAE コンピューターに支援された開発技術/確立には膨大な時間の計算と実験による整合性の確認が必要になる)であり、「とよた」も熟知しており、間違いなく使っている。お上だってそんな技術の存在は先刻勉強をしている。

 「とよた」は「すずき」の技術レベルと市場に対してのデータ偽装にならないことを「だいはつ」を通して承知しながら、「すずき」に自己申告に隠れた業界の内部告発者となる因果を持ち掛けたのかもしれない。

 同時に、孤独な晒し者の「みつびし」には心理的な安堵と油断の呼び水を与えることにもなる。人間も組織も弱者に対しては異常な強者にもなれる。

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 認証に、一々の実測データをもって申請する時間と手間を含めたコストは多くのライン・アップを抱えるメーカーにとっては膨大な負担である。

 お上が身をもって実証した「すずき」の「CAE の使い方はお上のお定め書に対する違反」のみであり「お上の実験値は全車種で申請値より良好であった」という「技術上のモラルが業界に存在する」事実をメディアを介して下々へ公知させる、またとない機会となる。

 つまり、申請機種を代表する車種にのみに実測データを添付することでCAEのデータを申請資料に使用できることを法令化するディール(取引)である。

 もちろん、申請データに不審があれば(上納金は必要だろうが)今回のようにお上が実測する責任分担を付けて。

 そもそも、社会の中ではカタログとビッグデータの統計値の中にしかないメーカーとカスタマーとの間の暗黙知である燃費の値を課税額の対象にすることで生じるお上がとるべき責任のありようを迫った。

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 発端となった「みつびし」を対象とした内部告発があったのかどうかは問われない。内部告発者は最大限の保護を保障することがお上の矜持であり堅持されなければならない。

 同時にその中に陰謀を潜ませることもあり得る。追及された両社の対照的な差は業界内での正義や序列の問題も含んでいる。もちろん業界とお上の双方にとっても。

 したがい、お互いに開示し合ったかどうかは分からぬが、「墓穴を掘った生贄」の存在を共有する相互の暗黙の判断による個別的共同陰謀論は成立する。

 お上にも「すずき」と競合する「だいはつ」を比較対象車として調査対象に考えた技術職がいたかもしれない。

 しかし、お上の仕事は受理された文書の整合性の有無のみである、と上司に止められる。やろうとしても「とよた」の不同意に阻まれたであろう。

 「だいはつ」は2016年8月1日に「とよた」の完全子会社となり上場も廃止された。

 そのお上が認めた「すずき」の燃費性能はソフト・ハイブリッドなどの技術で成立している。いっぽうで、普通のしかも同じ排気量のエンジンの燃焼や駆動系の改善と、同じ規格内の車体軽量化で同等の燃費性能の申請値を実現できるのか、の問題がのこる。

 結局のところ、「すずき」の採用したギミック自体がその程度の技術なのかもしれないが、e-燃費と呼ばれるビッグ・データではかなりの差があるように見える。

 「とよた」がこの問題でお上に口を出したかどうかは分からないが「とよた」の本心は別にある。

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 「とよた」が「だいはつ」の株式を100%所有し自社の一部門にしたのは「すずき」の「いんど」の市場がほしい、の一言に尽きる。

 燃費偽装疑惑の公表とお上のお沙汰はマスコミ瓦版の高性能マッチと貧弱ポンプにより軽自動車の市場を冷え込ませるそれなりの効果があった。

 「とよた」とっては「すずき」の思惑の成否などに関係なく抑え込み、「すずき」は情報公開の手腕は拙(つたな)いが技術に関しては正直な会社であるとの信用を世間に残し、同時に新規認証車の投入が遅れるというボディ・ブローを与えて軽の市場の縮小を早める方向性を業界関係者に知らしめた。

 同時に、にっさんには、みつびしとの協業、特に軽自動車主体の国内事業の先行きに冷水を浴びせた。にっさんはOEMとの比較を再度せざるおえないだろう。

 次は「だいはつ」を通して直接コントロールできる軽市場の縮小整理に伴う「すずき」へ繰り出すパンチを隠して、いよいよ本丸である「すずき」を持ち株会社として進む「いんど」への道である。そんなに急ぐことはない。

 いまのところ、「とよた」にとっては、「すずき」はしっかりと独立した社会性のある会社、でなければならないのである。時は移ろうのだ、急ぐことはない・・・ただ、

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 陰謀論はいくらでも紡げる。

 にっさんみつびしの虚偽申告を知る同様の組織や機会などの背景はあるはずだが、 どこまで他社の品質を独自調査していたのか、るのーけ の傘下で技術情報の蓄積は機能していたのか、OEMの場合の自社確認はどうしていたのか。

 陰謀論の引き金となる内部告発には、みつびし のすべての情報を承知した にっさん、正確には、るのー の日本の国内市場など捨てた世界戦略が背景にあるともいえる。これにより みつびし 株の市中価格が落ち込むことは間違いない。

 上記は、それに対する とよた のカウンター・インテリジェンスともいえる。にっさん みつびし の海外シェアを手に入れる時には すずき いんど を確実に手に入れておかなければならない。

 それも、虎視眈々と狙う各社の追い上げに捕まる前に・・・

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 どうです?三菱自動車が市中に公開した(商品を含む)情報を分析する各社の能力を駆使した「真田丸」よりはるかに壮大な調略合戦の陰謀論ですが信憑性はどうでしょうね。

 VWのディーゼル車の排ガス燃費偽装もアメリカの大学の研究室が(輸入された)「市販」車から手がかりをつかんで暴かれている。

 それよりも、三菱自動車は、なぜ「偽装はばれない」 と信じていたのか、とマスコミに問うほうが先のように思えます。

 がそのマスコミも含めて、皆が皆、陰謀(論)とやらに巻き込まれる大日本帝国と同じ構造なのかもしれません。何とかムラの中にいるのでしょうかね。

 それにしても、VW に比べるといかにも幼稚な手法は、意外に手の込んだ戦略的(?)黙認の陰謀で、今更どうにもならぬ憂き身を日産に「ミツビシ」ブランドと一緒に一切合切の丸投げ身売りで花道を飾り退場するために、わざと・・・

 いやいや、お上の測定データ自体が政策的捏造だとする陰謀論だってあるかもしれない。

 ね!部外者にとって、陰謀論はアホらしくも楽しいでしょう。

2016年9月11日 (日)

キネマ航空CEO ギヤード・ターボ・ファンの前に亜音速ジェット・エンジンのデフューザーを考える、の巻

 ギヤード・ターボ・ファン・ジェット・エンジンはバイパス比を大きくしてエンジンを通過する空気の質量を増やすという目論みの一つです。

 大きなバイパス比は、ファンの直径をさらに大きくすれば得られます。しかし、ファンの直径を大きくするとブレードに生じる遠心力は大きくなります。

Ge90 右の写真 はニューヨーク近代美術館アーキテクチャー & デザインコレクションの展示品である炭素繊維複合材で作られた GE-90 のファンブレードです。

 前縁と後縁に白く見えるところは金属、黒い部分は金属より軽く金属より強い炭素繊維です。

 ライティングは、先端近くの瘤状の起伏や後縁部分の反り返りなどを浮きあがらせています。

 いずれにせよ、これまでのブレードの翼型とはかけ離れた極めて複雑な形状をしています。

 コンピュータを使った流体解析や構造解析の成果ですが、それですべてが可能になるわけではありません。

 製品化には材料開発や製造技術の革新を並行して進める工業力の存在が背後にあります。そこには携わるエンジニア達の冒険心も・・・推進させる経営者の功名心も・・・

 製品はそれぞれの技術の集積した試作品で設計意図を検証する膨大な実験に支えられている。そして製造に移ったあとにも、実験できなかった、あるいはしなかった、その結果も発生します。

 その結果を解明をする使命が技術者を待っていますし経営者とともに生じた責任を負うことになります。
(閑話休題)

 さて、ファンの直径をあまり変えずに通過する空気質量を増すには、コントラ(二重反転)・ファンを採用することで解決できます。追加する機械構造は普通は遊星歯車機構を使った逆転装置と回転方向を逆にしたファン一つです。

 P&W はコントラ・ファンと同じような歯車機構をつかうならシングル・ファンの減速機としてファン・ブレードの先端のスピードを落とした方が直径が大きくなってもエンジンのバランスとしては優れていると考えたようです。

 もちろん、通常のターボ・ファンとの比較を含めて遊星歯車による減速ギヤボックスで生じる弊害と比較した結果としての結論です。

 (閑話開題・・・)ただし、工学のつらいところは、その理論通りに作っても理論を設計に展開する思考の通りになるとは限らないこと・・・さらには問題を解決しても市場で受け入れられるかどうか、に全てがかかります。

 P&W の「ピュアパワー」シリーズが最初に量産されたGTF だったわけではありません。

 ジェットライナーに採用されたGTF として成功したのはライカミングで開発されアライド・シグナルハネウェル・エアロスペースと買収が重ねられて生産された ALF 502/507 (1980)です。

 この元をたどれば1972年のギャレット・エアリサーチ TFE731 で3.5 Klbf  クラスでした。こちらは買収先の製品としてビジネス・ジェットで大成功を収めることになります。

 ALF 502/507 の出力は倍の 7 Klbf (31 kN)クラスでした。現在生産に移行しているP&W PW1000 シリーズの最下位となる仕様の出力が 17Klbf ですから、これはその半分以下の出力でした。

 採用した中型機は BAe 146 シリーズ(1978-2001 387 機)です。成功した機種と言っていいと思います。乗客数は 70-82、85-100、100-112 の三クラスありましたから現在のリージョナル・ジェットに相当し、また、そのように使用されています。

 ただし、そのためには四発機にする必要がありました。双発機のエンジンに換算すると一基あたり 14 Klbf となります。

 都市に囲まれた飛行場で運行するためのSTOL性と静粛性は極めて優れていましたが、出力の比較からも想像できるように巡航速度と飛行高度は現在開発されているリージョナル・ジェットよりかなり劣ります。

 当CEO も一度乗ったことがあります。高翼機ですので高空から見る都市の夜景はそれは素晴らしいものでした。当CEO にはこちらがリージョナル・ジェットの王道のように思えますけれど・・・(開題に戻って閑話を休題)

 さて、P&W のギヤード・ターボ・ファン・ジェットでも通常のターボ・ファン・ジェットのカウルの中に設けられたデフューザーを継承します。

 すなわち、デフューザーでファンに吸い込まれる空気の流れの速度を機速より低い速度に落として静圧を上げるメカニズムを多少の物理知識で解析して理解を深めて置く必要がありそうです。

Defuser_analysis_1

 上図はターボ・ファン・エンジンのつもりです。ターボ・ファンの面倒なところは、エンジンの最後部で推力として得られる、コア・ジェットの流速 vj とファンによる流速 vf が異なっているところです。

 とりあえずは vj >vf ですね。逆転して vj <vf となるとターボ・プロップ・エンジンの範疇に入ります。ギヤード・ターボ・ファンはターボ・ファンと同じコア・エンジンの出力のままで vj ≒ vf に近づけていく技術と考えられます。

 コア・エンジンの出口では燃焼による熱が加わるのでシャルルの法則が適用されて話が面倒くさくなります。

 ただ、(ギヤード・)ターボ・ファン・ジェットでも通過する質量流量は入口と出口で等しいと定義します。

 当CEOが得意なエンジンの「フン詰まり、No!」理論です。これも厳密には圧縮空気を空調システムに抽気したり、流れの中に噴射された燃料の質量と噴射のベクトルを無視した理論ですけどね。

 エンジンのコア部分とファン部分を通る空気の質量流量の比を、コア部分を 1 としたバイパス比( 1 : k )としてあらわします。したがい、エンジン入口の質量流量は( 1 + k )に比例しています。

 ターボ・ファン・ジェットは回転するファンやコンプレッサーが一定の質量流量だけを通す関所(壁)となって機体のスピードが速くなると空気が狭い入り口から広い断面積のデフューザーと呼ばれる空間に押し込まれます。

 この空間で気体の速度は下がり静圧が大きくなり、続々と押し込まれてくる空気で圧縮されて体積は小さく密度は大きくなります。いわゆる断熱圧縮です。自転車の空気入れで頑張ると空気入れの下側が熱くなります。(断熱圧縮による発熱については こちら

 頑張れば頑張るほど空気入れも使っている人間も熱くなります。人間に相当するのはジェット・エンジン自身です。機体の速度に変わったエンジンのエネルギーの一部がラム圧抵抗とつり合いジェット・エンジンの発生するエネルギーからこれを差っ引いた残りがジェット・エンジンの出力となるエネルギーです。

 圧縮による発熱は断熱圧縮と呼ばれ、ポアソンの法則で pVγ= c ( 一定 constante フランス語) 、p 圧力、V 体積、γ 比熱比、から計算されます。γ= 1 だとボイルの法則になります。比熱比γ は気体元素の構成比よって変わります。

 これにシャルルの法則 V/T = k (一定 konstante ドイツ語)で 、T 絶対温度 が加わって、二つの式を使って、温度()、圧力(p)、体積(V)という気体のあらゆる状態を公式で示すことができる。

 さらに、もう一つ重要な要素である質量(m)はそれぞれの定数の中に要素として含まれています。すなわち気体を構成する元素によって各定数の値が異なります。

 ジェット・エンジンの理屈はボイルシャルルの法則ではなくポアソンシャルルの法則で始まります。

 ここから始める熱力学は、エントロピーとエンタルピーを扱い、機械工学に比べるとかなり特殊な分野となります。 

 なので、頭の固くなった当CEO は、圧縮性があろうが、なかろうが、ジェット・エンジンが吸込み、吐き出す空気の単位時間当たりの通過質量は等しい、という例の「フン詰まり、ノー!」理論から、なぜジェット・エンジンは速度が大きくなるとエンジン前端の開口部の面積より狭い面積の空気しか吸い込めないのかを探ってみる。

 密度 ρ0(kg/m3 )の標準大気の中を速度 v0 (m/s)飛ぶ機体に装着された、ジェット・エンジンのデフューザーに入るはるか前方にある(のだけど)目には見えない分離流管の断面積  A0 (m2) を流れる空気の質量流量 m (kg/s)は m =ρ0 A0 v0 となります。

 質量流量 m はジェット・エンジンが処理できる能力なので気圧や温度が一定であれば一定である。したがい分離流管の面積は、A0 = m/(ρ0 v0 )となる。

 速度が v0 = 0 なら分離流管の面積は A0 = ∞、 v0 = ∞ なら A0 = 0 に変化します。  

 ジェット・エンジンの性能で決まる m が大きくなれば  A0 も大きくなる。 A0 が∞だと吸入口の真横より後ろからも吸っている。特に地上で全開運転中のターボ・ファン・ジェット・エンジンのそばには近よらないのが賢明です。

 どうやら、計算式では分離流管の断面積はデフューザーの有無とは関係なく速度に反比例して変化するようです。

 繰り返しになりますが、ここから先のデフューザーの中はポワソンの法則シャルルの法則を基に解析することになります。・・・で、当CEO はここでギブアップ(お手上げ)では悔しいのでホールドアップ(継続する、つまりほっておくことに)にします。

 なお、普通のプロペラ機の速度では分離流管がプロペラ直径より小さくなることはなさそうです。 v0 = 0 ではジェット・エンジンのような大量の質量を処理してはいません。つまりはエンジンが発生できるエネルギーの差で同じ計算式でも現象の見え方の範囲は違ってきます。

 ところで、回っているプロペラに近づきたくなりませんか? 回っているプロペラの隙間を通り抜けられると思っているわけでもないのですがね。

 当CEO はホームの横を特に貨物列車が駆け抜けていると飛び乗れそうな錯覚に陥ります。また視野いっぱいに広がる速い川の流れを見つめていると飛び込みたくなる衝動(引き込まれそうな誘惑)と戦っている自分を意識します。後者はその衝動か誘惑に負ける前に足腰腹筋が弱くなってるローカ現象を自覚して一層危険だな、と急流には近づかないようにしています(閑話休題)

 締まりのない回になりましたが、プロペラ後流の収縮流はこれで理解できるはずです。プロペラで加速された分離流管の初速増分の ⊿V は後方では 2⊿V になっています。

 次回は、「なぜターボ・ファン・ジェットは効率がいいのか?」に迫りたいのだが、「ファンで大量の冷気を送り出すから」としか書いていない参考書ばかり、で。

2016年9月 2日 (金)

キネマ航空CEO ターボ・ファンのダクトを真面目に考える、の巻

承前、( 前回 からの続きです)

 今度は エンジンの実体断面図ではなく、模式図A )からはじめます。

Defuser_1

 まず、模式図で目につくところは、前回の断面図と同じく・・・

   1.*(注) ダクトの入口がファンの直径より小さい。
   2.**(注)カウリング(以下 カウル)の上下で断面の形が異なる。

があげられます。

  1.では入口の内側にある入口の面積より断面積が大きい空間は、動圧を静圧に変えるデフューザーと呼ばれる機能が想像できます。
  2.図 A は M (マッハ)数で断面が変わることを上下に描き分けてジェット・ライナーがカバーする広い飛行速度域のため***(注)亜音速域においても飛行速度によってエンジン全体を成形するカウルとしての最適形状が変わることが示されています。

 しかし前回の実体断面図でもカウル上下の断面形状は異なっています。これについて終わりから 7 つ目のセンテンス当たりから始まります

 ジェット・エンジンは吸気口から周辺の空気を吸い込みます。図中でカウルから伸びている破線の内側の空気がファンやコンプレッサーによって吸い込まれる、吸込み負圧の影響が及ぶ範囲を示しています。

 分離流管と呼ぶようです。管と呼ぶからには外側の限界を決める特定の(ゼロではない)吸込み速度の測定か計算の基準があるのでしょうが、詳細は不明です。

 当CEO は技術用語としては『分離流管』より「流れの場」、あるいは「ベクトル場の強さ」を示す『流束』または『流束管』の方が適当ではないかと思うのだが、それはさて置き・・・

 破線で示された各々の分離流管に付けられた M 0 (マッハ数)によってカウルの進行速度(機体の値と同じ)が変化すると吸い込む範囲である分離流管が狭まる変化を示しています。 

 M 0 = 0 といってもエンジンはアイドリング状態ではありません。
パイロットがブレーキを踏んでスラスト・レバーを押し、定格回転で安定した静止状態を指します。しかし、これではタイヤがずるずると滑ってしまうかも知れないので、むしろ地上の試験装置に固定されている状態といった方が適切ですね。

 以下、どこまで正確に表されているかわかりませんが、
 M 0 = 0.5 でほぼカウルの開口直径より大きくダクト内側の直径とほぼ同じ。
 M 0 = 0.8 ではカウルの開口径より小さくなっています。

 つまりターボ・ジェット・エンジンでは自分が持つコンプレッサーによる吸い込み能力(単位時間当たりの質量流量キャパシティ)に限界があるようです。

 結果として速度が遅ければ開口部の後ろから回り込みながら空気を吸い込み、飛行速度が速くなってラム圧が加わりコア・エンジンのコンプレッサーやファンが吸い込めなくなった空気はカウルの外側を流れることになる。

 そこで模式図A )から一歩踏み込んだ次の作動機能図B )に移りましょう。

Intake_effect
 この図では、左より順次機体速度が速くなっています。その場合にカウル(ひいては機体)に働く力の方向(ベクトル)を示しています。

 図中の「速い、遅い」の定義はカウルの周囲を流れる機速とエンジンの吸込み速度の相対比較です。

 物体の周りの流体に速度差があれば物体に揚力が働く原理が設計に使われています。

 カウルの形状と内外の速度差による揚力でエンジンの推力を助ける方向の分力が得られるようです。

 揚力の方向が変わっています。カウルの断面翼型に向かう相対的な迎え角によって揚力 0 の場合もあります。涙ぐましい努力の積み重ねですね。

 次の疑問はカウルの中の流速は、ほぼ一定の M 0.5 になっていることです。参考書によっては M 0.4~0.45 と記述してある例もあります。

 さて、そのため機速による押し込み(ラム圧)による単位時間当たり質量流量の増加分とのバランスをとる機能を受け持つ部品がカウルの内側にあるダクト(デフューザー)となります。

 いうまでもなく亜音速の場合です。
超音速ではカウリングの入り口や内部に発生するショック・ウェーブを減衰させる全く別の構造のカウルとダクト(デフュザー)が必要になります。

 デフューザーの構造は簡単にいえば、カウルの入口直径より中の(ダクトの)直径の方を大きく設計します。

 ここでベルヌーイの定理を定性的に当てはめると単位時間当たりの質量(流量)はカウルの内側(ダクト)の断面積が入口より大きくなると流速が遅くなり静圧が大きくなることがわかる。 

 デフューザーの効果で流速が遅くなれば プロペラの翼素理論の展開 で考察したプロペラ(加えてファンやコンプレッサーのブレード)の先端速度と音速の関係を緩和する効果があります。

 その効果に付随して、ジェットエンジンが持つ本来の機能としての回転機械が要求する回転軸に対して点対称として空気を均等なベクトルでファンやコンプレッサーのブレードやベーンに進入させる機能が要求されます。

 例えば。地上滑走時にはダクト開口部のすぐ下に地面があり、離着陸の進入時には機首の方向と進行方向が大きく異なる、などなど分離流管が非対称になることは避けられ状態で、吸い込んだ空気の圧や速度の変動によって渦や振動が発生しファンやコンプレッサーに悪影響を与えないようにする機能です。

 航空マニアは 1984 年にボーイング 737 のエンジンが P&W JT8D-9 からファンの直径がより大きい CFMインターナショナル CFM56-3B へ変更されたときに、その解決法としてコンピューターの数値計算(もちろん膨大な実験結果を伴う)による形状決定を目の当たりにします。

 手っ取り速くは、当キネマ航空の 空港ツアー で見られるキャプチャー画像をご参照ください。ほぼ正面からの絵面ですので、できれば Web で側面からの写真も参照してください。変更によりエンジンは前方に伸びています。このあたりも見どころです。

CFMインターナショナルGEスネクマの米仏合弁事業。前回の IAE と同様に特定のエンジンを生産販売に特化した企業)

 ちなみに 図 A では、下側のカウルに「負圧による自動吸込み扉をつけることもある」と書かれています。実際に、ごく初期のボーイング 707、747 に採用された写真があります。カウル下側ではなくほぼ全周に渡っていますが作動時の乱れた流れがファンの騒音を増加させることが分かり廃止されたようです。

 軍用機ファンですとご存じのはずですが、M = 0 での浮揚が必須のホーカー・シードレー ハリヤーから始まる一連の VTOL 機のカウルには必須の構造として存在します。

 代替機となるロッキード・マーチン F-35B ではM 1.6 クラスの超音速を得るためにシャフト・ドライブの独立したリフト・ファン方式に変わり、VTOL 時にファンの上下に大きくドアが開く方式に変わりました。

 低速時の補助吸込口はリフト・ファンの背後に観音開きの扉が開きます。ガンダムのファンには見慣れた構造かもしれませんが何となくあやしげにも見えてきます。(閑話休題)

 さて、物理学は回転機械に対しては原理的な点対称性を要求しますが、工学は対称性の実現のために高速かつ高度化した数値計算を駆使した非対称で要求に応え始めます。

 当CEO は数値計算などできません。そこで次回は、初歩的な工学として考えてみようかと思っていますが・・・どうなることか。

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 *(注)ダクト
形状は中空のチューブやパイプの親玉だが四角な形状も含み、部品名というより内部の機能や構造を示す名称。
導(・)管または送(・)管と訳されて(・)内に流体の「水」とか「風」などの名詞を入れることが多い。中には流体以外の長いもの、電線や通信線を這わせる「ケーブル・ダクト」もある。

 **(注)カウリング
航空機の空冷エンジンに見られるエンジンを囲む取り外しのできる覆い(カバー)を指すことが多い。流体の整流など、囲む対象の内と外に必要な機能を併せ持つ部品名。

 シュラウド
カウリングと同じような形状になることもあるが、元の意味では対象を覆い隠すもの。工学的には内からの飛散、外からの飛び込みを防ぐ安全機能を持たせた構造物。防音機能にも使われる。固体に限定せず霧や霞などでもこう呼ばれることがある。

 ***(注)ジェットライナーの亜音速域と言えば M 0~0.85 当たりの範囲となります。機速がそれを越えると機体や翼のどこかが音速を越えた遷音速になって商用機として効率の悪い飛行状態を避けるためと考えられます。
 超音速で起こる現象については、当キネマ航空 011便 にご搭乗いただき上映中の『アロー』、『超音ジェット機』をご鑑賞ください。

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