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2016年10月19日 (水)

キネマ航空CEO ターボ・ファン・ジェット・エンジンの効率を考える(グラフ編 + 下の方で、ギヤード・ターボ・ファンの疑問編の始まり)

 「数式編」とほぼ同時公開です。こちらにも目を通してからお読みください。
 また、例によって公開後の校正、校閲中です。ご意見等お寄せください。
                                              キネマ航空 CEO 拝

 前回、長々と続けた「数式編」も解析した数式が結論では全体像は見えてはきません。そこで見える化です。

 ターボ・ファン・エンジンの効率の変化を縦軸にエンジンが空気(質量)を送り出す速度とエンジン自体に進行速度の比を横軸にとり、バイパス比をパラメーターにして整理したグラフ化です。

 ただ、グラフの元にした数式は次の仮定に基づいています。定量的な解析ではなく定性的な解析です。ご留意ください。

     1.ファンとジェットの作り出す空気の速度は速度比に関係なく等しく、ファンとジェットが送り出す空気の質量流量比はバイパス比と同じ(最大効率を示す)値で一定とする。
     2.ファンには翼素理論ではなく運動量理論を適用している。これについてはプロペラ効率の成り立ちを検証した 1234 回を通読して想像で補ってください。
     3.ダクテッド・ファンは低速側ではプロペラの効率以上に膨らみを増し、高速側の効率のピークの伸びはブレード先端の誘導抵抗が抑えられてターボ・ジェットのそれに近づいていると考えられる。
     4.結果的に空気機械としての効率が1のダクテッド・ターボ・ファン・ジェットはターボ・ジェットの運動量理論と等価であると仮定している。

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 添付したグラフは二つありますグラフ上でダブル・クリックすると拡大ポップ・アップします

 いずれも、パラメーターとなるバイパス比は 0:1 のターボ・エンジンからギヤード・ターボ・ファンの PW1000 シリーズの最大値 12:1 までをグラフ化で比較してあります。

 使った数式は 式(10)。この式で q = 0 とすれば 式(1) になります。ただし、面倒くさいので式中の伝達効率やファンの駆動効率などの効率はψ = 1 として無視しています。

Vs_spd_ratio_with_same_max_spd Vs_spd_ratio_with_same_core_eng

 まず、左のグラフ・・・前回の式(10)をそのままグラフ化した悪い表示例
                                 
グラフ上でダブル・クリックすると拡大ポップ・アップします

 速度比 1 で効率が 1 を示す一番下のカーブがターボ・ジェットのエンジンです。

 確かに、一般的な説明のようにバイパス比が大きくなるほど効率が良くなっています。

 そしてバイパス比が大きくなるほど効率向上の割合は小さくなってゆきます。

 それはそれで良いのですが・・・

 あなたが、このグラフを以上のように言葉で要約してしまうと、誰かに向かって、グラフ化による目くらまし効果をそのまま表現して大きな誤解を与える発信をしてしまいます。

 まず、効率が 1 以上になるのは前回の数式編で説明したように(吐出速度に比例する)仕事を(速度の二乗に比例する)エネルギーで割った値です。

 エネルギーを分割して使用するターボ・ファン・エンジンでは吐出空気の質量流量は増加しますが引き換えに吐出速度は低下します。

 速度の低下は、「エネルギーを分割したあとのコア・エンジンとファンの推進力の合計は(それぞれに割り当てられた分割比の平方根に比例する)速度と(バイパス比に比例する)空気の質量との積の和に比例して増加している」という物理的な原理に従うためです。

 グラフの横軸は、コア・エンジンがターボ・ジェットとして吐出する空気の速度でエンジンの進行速度を割った値です。その値が 1 となる進行速度がそのエンジンが出せる理想の限界速度です。

 すなわちバイパス比が 1 以上のターボ・ファン・エンジンの吐出速度との比が 1 ではエネルギーを分割する前のコア・エンジンが単体で出せる速度は左のグラフ上では速度比 1 以上となります。

 すなわち、このグラフのコア・エンジンはバイパス比 0 のエンジンとは全く別物をそれぞれのコア・エンジンとして計算した値を誤った速度比の軸上に重ねています。

  高バイパス比化されたターボ・ファン・エンジンは、エンジンを構成する新材質の採用による回転部分の軽量化や耐熱性材質による燃焼室以後の高温部の改善でより完全燃焼に近づけてより高温の(高エネルギーの)空気を扱えるようなった結果で得られた向上部分が大きい。

 いっぽうでは、効率の分母となるエネルギー自体を大きくした結果(すなわち燃料投入量の増加の見返り)でもあります。

 したがい、高バイパス比の効率を、バイパス比 0 のエンジンと速度比の上で同列にしたグラフて比較するのはいかがなものかと言わざるをえません。 この辺りは、前回の式(9’)を参照してください。

 次に、右のグラフ・・・前回の式(10)を注記で補正してグラフ化した妥当な表示例
                                 
グラフ上でダブル・クリックすると拡大ポップ・アップします

  ターボ・ファン化されたエンジンのコア・エンジンはバイパス比 0 のターボ・ジェットと同じ運動エネルギーを出している場合のグラフです。

 左のグラフとの違いはターボ・ジェットの限界速度とバイパス比によって変わるターボ・ファンの限界速度との比をターボ・ジェットの速度比に反映して整理してあります。

 そして、各バイパス比の効率曲線上の点はターボ・ジェット(バイパス比 0 )の速度比の点に対応してプロットされています。

 ターボ・ファン・エンジンはターボ・プロップ・エンジンと違いジェット・ライナーに搭載する場合の仕様は巡航速度で M 0.8 、最高速度で M 0.9 辺りに設定されている。

 ターボ・ファンのバイパス比 12 は限界速度比が 0.3 を切っていますからベースとしたコア・エンジンの限界速度を M 1.0 とするとその 3.5 倍の速度、M 3.5 が出せるターボ・ジェット・エンジンをコア・エンジンに採用しなければならない。

 式(9’)に示すように、速度の二乗に比例するエネルギーに換算すると 12 倍の(バイパス比に相当する)エネルギーが必要となります。

 またグラフからは、バイパス比を 8:1 以上に大きくしても特別に効率が良くなるとも言えない。しかし、要求されるエネルギーの比は速度比の二乗ので割ることになるのだが、速度比が 0 に近づくほどエネルギーの絶対値は不利になる。

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 推進仕事効率の向上は余剰エネルギーがあって初めて可能になるのです。

 ターボ・ファン・エンジンの高バイパス化による推進効率の向上は亜音速域の上限での効率向上です。高バイパス比化によって燃料消費の絶対量が必ず大きく改善されるとは言い切れません。

 少なくとも高バイパス比のエンジンを採用する機体は亜音速の上限域で余剰エネルギーの大きいターボ・ジェットをコア・エンジンとして採用できる大きさや運行経済的な余裕がある仕様でないと成立は難しいと考えられる。

 最先端のターボ・ファン・エンジンの大きさは、耐熱材料や複合樹脂材料の進展でファンやタービン・ブレードの翼型の改良とコンピュータ制御による燃焼化学の面からも(出力/タービン直径の比を指標とする)小型化ができており、制限条件はバイパス比に直結するファンの直径のみになっている。

 機体の仕様からは最高速度や巡航速度を押さえた仕様も選択肢となるのだが MRJ は機体の形状抵抗を下げて速度低下をカバーするため細い胴体で対応しようとしている。

 高バイパス比エンジンの顧客がボーイングエアバスに限られる大型機向けでは機体に合わせてエンジンが開発されるオートクチュールで生産ができる。

 しかし、リージョナル・ジェット・ライナーのようにメーカー数がそれなりにあり計画される機体のバリエーションや生産数が多ければプレタポルテとして全メーカーのラインアップに合わせて細分化したコア・エンジンの仕様を並べておく必要がある。

 P&W は、これまでのエンジン・メーカー同士のエンジン型式別のコンソーシアムといったパイの分配から一歩抜け出すためにライカミングで開発されビジネス・ジェットで実績のあるプラネタリー・ギヤ・ボックス(遊星歯車箱)を一つ加えて、生産数の見込めるリージョナル・ジェット枠の総取りを狙っているともいえる。

 そう上手く行くのかどうか、ターボ・ファンの来し方行く末を概観すると、

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 ターボ・ファン・エンジンは、ターボ・ジェット・エンジンに有り余るエネルギーがありながら、音速を越える機体の設計技術が追いつかない(費用対効果を問われるジェット・ライナーや輸送機にとっては現在も続いている)時代に超音速機がふさわしいターボ機械を亜音速機に応用する用途で大きな飛躍を遂げました。

 現在は、その亜音速の上限の中で性能向上の技術革新競争が行われている時代です。言い換えれば論理的な限界に迫りつつある時代とも言えます。

 革新技術も突き詰めると、注ぎ込む技術の利害得失を経済的損得に置き変えてトレード・オフした結果で推測される数パーセントの向上率に、あてもなくコストを注ぎ込むことになる時代となったような感覚に襲われます。

 あとで述べるプロップ・ファンにしてもコントラ・ダクテッド・ファンにしてもバイパス比の束縛からは逃げられない。

 航空エンジンにはレシプロからジェットへのパラダイム変換がありました。

 その直前のレシプロ・エンジンの苦闘の時代も偲ばれます。ラジアル・エンジンの四列化、ターボ・コンバウンド化などのギミックの限界に挑んだ時代に重なるのかもしれません。

 今のところジェット・エンジンをベースにしたベターメントによる努力は続くでしょうがジェット・エンジンに代わるパラダイムの展望は見えていません。

 余談ながら、お時間がありましたら、また当オフィスにご来訪ください。次の記事をお勧めします。

 キネマ航空 011便拾遺 その3 『アビエイター』編 P&W ワスプ・メジャーとCWC ターボ・コンパウンドについて

 次回は、いよいよギヤード・ターボ・ファン・ジェットに取り掛かります。今年中には終わらせたいのだけど。

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 おまけのグラフ・・・エネルギーk=1を分割し分担するコア・エンジンk)とファン1-kをバイパス比qの関係で示してみた・・・ついでにターボ・ファン・ジェットの技術動向もまとめてみた。グラフ上でダブル・クリックすると拡大ポップ・アップします

 すなわち、前回の 式(8)で示した、決まった大きさのエネルギーを使って 1 基のターボ・ファンとして最大の仕事をする、エネルギーの分割比(q)とバイパス比(k)の関係です。Pwr_split_ratio_vs_bypass_ratio ターボ・ファン・エンジンの高バイパス比 8-12 ではコア・エンジンのエネルギー分割比は 0.1 前後にまで下がる(ファンでは 0.9 前後まで上がる)。

 ちなみに、ターボ・プロップでは 0.2 前後だからバイパス比換算では 4.0 前後相当となる。

 ターボ・ファンではダクトのデフューザー効果ファンの径を使って高バイパス比に到達できる。その一面ではファンの径は大きくなり、ファンを収容するダクトなどを構成するカウリングの形状抵抗が増える。

 ターボ・プロップフリー・タービンターボ・シャフト・エンジンでエネルギー分割比を小さくするにはコントラ(二重反転式)・プロペラなど先端の周速を押さえた高い効率で動力転換(吸収)が可能な空気機械が必要になる。この場合のエンジンの形状抵抗となるカウリングコア・エンジンを包む径でたりる。

 その外径を小さくする空力機械であるファンの工学的アプローチが、コントラ・ターボ・プロップのブレード翼型を大きく変えたアンダクテッド・ファン・エンジンまたはプロップ・ファン・エンジンである。

 プロップ・ファンアンダクテッド・ファンのブレードは既に(ダクテッド・ターボ・ファンで使われている前進角と後退角を組合わせた幅広の翼弦長を持つ薄肉のブレードがベースになる。

 しかし、その先端形状はターボ・ファンの先端とダクトとの隙間を長く取ってラビリンス効果による翼端渦を押さえる逆テーパー型ではなく、誘導抵抗を減らすために先端が細く尖った、平面に展開すると三角翼型が場合によっては三日月翼が基本になると思われる。

 いっぽう、現実の問題では、ダクトの有無で周囲に発散させる高周波による騒音のレベルに大きな差がある。

 ターボ・ファンでは、さらにコントラ・ファンでファン径のひいてはカウリング径のサイズ・ダウンで形状抵抗の低減を図ることになる。

4 . ギヤード・ターボ・ファン・ジェットへの疑問 ----------------------------------

 我々が、なんにも疑わずにいるバイパス比の数値の持つ意味は、次のケースが考えられる。

 A.公称バイパス比は 8 : 1 であるが理論バイパス比では 9 : 1 なのかもしれない。
 B.公称バイパス比は理論値の 9 : 1 だが、実効バイパス比は 8 : 1 なのかもしれない。
 
 (B.は偽装ともいえるが狭い世界の中だからね)

   プラット & ホイットニーは、「いずれにせよ、実効バイパス比は理論値より小さい。したがってギヤード・ターボ・ファン・エンジンであるピュアパワー© によって、実効バイパス比を理論バイパス比に近づける技術成果である」と主張しているとも考えられる。

 では、そもそも、バイパス比とは何なのか ? となると、言葉の一人歩きのままです。したがい、当CEO の解析(ご託)も「群盲、象を撫でる」の域にとどまったままでの評論であることは自認しています。

 しかし、バイパス比が持っている物理量の原則は変わらない。

 コア・ジェットとファンの吐出速度を等しくしたターボ・ファン・エンジンの効率の 式        
     ηtf
= 2/[1+{Vj/√(q/ψ+ 1)}/V1 ]・・・(10)

を動力分割比 k で表せば、
     ηtf = 2/[1+{√(k)}・(Vj/V1)]・・・(10’)

 両式から推進効率を決めるのは動力分割メカニズムの伝達効率に加えてバイパス比とファンの効率であるという当たり前の結論です。

 燃費効率の改善のためにバイパス比の増加を図るギヤード・ターボ・ファン・エンジンに必要なギヤ・ボックスの伝達効率分は悪化することは明らかです。

 そして、結果として得られるファン回転数の低下とバイパス比の増加によるファン直径の拡大によって得られるファン効率との相殺はどうなるのか。

 公称バイパス比では理論値と実効値が使い分けられていたり、いっぽうを隠したりするなどの業界のダブル・スタンダードがあるのか。(P&Wピュアパワー・エンジンではファン径の拡大などしないでバイパス比の公称値を大きくしたのか)

 ターボ・ファン・エンジンを採用する機体の速度には亜音速の上限という天井がある。
 式(9’)に示すようにバイパス比の安易な拡大はコア・エンジンの出力の増加につながり推進効率の分母をかさ上げしてしまい、絶対値として燃料効率の向上につながるのか。

 つながるからエンジン・メーカーは製造し、機体メーカーや航空会社は採用するのだろうが、大出力を受け持つギヤ・ボックスの信頼性が確立するには時間がかかる・・・。

(続く)

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