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2016年10月18日 (火)

キネマ航空CEO ターボ・ファン・ジェット・エンジンの効率を考える(数式編)

 「グラフ編」は近日公開予定です。こちらにも目をお通しください。
 また、例によって公開後の校正、校閲中です。ご意見等お寄せください。
                                              キネマ航空 CEO 拝

 今回は数式ばかりですが、言葉の説明では舌足らずになるところに一歩踏み込みました。

 ターボ・ファンはバイパス比を大きくすることで得るところもあれば、失うところもある、ピン・ポイントで出力を選ぶ技術であることがわかります。

 この視点からは、P&W のギヤード・ターボ・ファン・ジェット・エンジンのブランド名であるピュアパワーの出力設定のライン・アップの多さも頷けます。

 ピュア・パワーは静止推力15klb(6.54 t) から 35klb(15.26 t) の間を 12 の型式でカバーしています。中には1klb(436kgf)刻みの設定もあります。

  では、お楽しみ、いや、たまには、お苦しみください。
 MAC がこだわった MRJ
エンジン選択が正しかったのかどうかの検証の過程です。

                                              キネマ航空 CEO 拝

0 . はじめに  --------------------------------------

 ターボ・ファン・ジェットのファンもデフューザーの中で断熱圧縮にかかわっている。ターボ・ファンを熱力学で説明するには専門家の専門書か解説を頼ることになる。

 それらはWEB上にあるので、ここではエネルギー保存則や力に仕事といった同じ物理学の中の運動力学で挑戦する。したがい、ターボ・ファン・エンジンの工学的な成り立ちは分かりやすいはずだ。

 ただ、ファンの項では翼素理論ではなく、運動量(モーメンタム)理論を使って行うので定量・定性的な現実とは少し外れた値を誘導することになる。

 空力機械であるファンは翼素理論でないと現実と整合しないことはプロペラ効率の成り立ちを検証した 123、特に 4 回を通して得た知見の通りだが、ダクテッド・ファンに応用できる手持ちの資料は概説しかない。

 次に、今回の計算では、いくつか使う係数、例えば動力分割比 k や バイパス比の係数 q は現実の翼素理論ではエンジンの進行速度に加えてファン設計仕様で変化するはずだが、計算に使用される対象の速度域で一定値とする。

 以下の本文はエンジン出力(エネルギー)の分割と合成を初歩的な説明の順序にそって展開しています。結論として示すターボ・ファン・ジェットの効率などの数式は(本文中にも出てくる)物理学の定義や法則による数式を使いこなせば分割比 k など使わずにもっとスマートに解けます。挑戦してみてください。

 1 . ターボ・ジェット ----------------------------------------(復習です)

 ターボ・ファン・ジェット・エンジンの中心にあるのはターボ・ジェット・エンジンでコア・エンジンと呼ばれる。

Turbo_jet_try4 コア・エンジンは、ツー・スプール形式で、1-2-C-1-1 ので構成です。 C は燃焼室の形式でキャン・タイプ。デフューザーもどきのインレットも付け足しました。

 ターボ・ジェットの働きは速度 V1 で進入してくる質量 m の空気を同じ質量のまま(実際には燃料の質量も加わる)、速度 Vj で噴射して推進力として利用できる有効運動エネルギー Kj を生み出す内燃機関です。
     Kj = (1/2)・m・(Vj2-V12) ・・・(a)

 書き直すと、
     Kj = (1/2)・m・Vj2 - (1/2)mV12 = KE - Kd

      KE = (1/2)・m・Vj2
         ターボ・ジェット・エンジンの燃焼で得られる燃焼エネルギーから圧縮機を駆動するタービンで使われるエネルギーを除いたエンジンとしての正味の運動エネルギー。
      (実用上はオイル・ポンプ、発電機、抽気などに使われるエネルギーも差し引いた後の推進力に使えるエネルギー)
      簡単にいえば KE V1 = 0 の状態です。 V1 ≠ 0 の場合でも気圧や気温が同一の運転状態では(多少強引ですがKE は一定とする。
      Kd = (1/2)・m・V12
         
ジェット・エンジンに寄生するラム圧抵抗です。速度 V1 でデフューザー内に侵入してくる空気により発生するラム圧抵抗を押し返すために使われるエンジンの運動エネルギーとなる。(エンジンのカウリングなどの外側に生じる形状抵抗は機体の形状抵抗の一部となります)

 結果として、ターボ・ジェット・エンジンで利用できるエネルギーは、KE から Kd を差し引いた 式(a) となる。

  そして、ターボ・ジェット・エンジンの推進力 Fj は、
     Fj = m・ (Vj - V1) ・・・(b)

 ターボ・ジェット・エンジンの仕事 Wj は、
     Wj = V1・ Fj
       = m・
V1 ・(Vj-V1) ・・・(c)

 繰り返しになるが式中にある Vj は熱力学を使わなければ求まりません。エンジンのスペックには静止時の流量質量が掲載されている場合もあります。

 KjWj いずれの式からも、このエンジンが出せる理論上の限界速度は Vj - V1 = 0 となる V1 V1jmax です。

 ここでいう限界速度 V1jmax は水平飛行(地球は丸いので正確には等高度飛行です。)による機体の最高速度 Vmax ではありません。

 機体の Vmax は、V1jmax より小さくなります。 Vmax は、機体の全抵抗とエンジンの全推進力がつり合う速度です。

 で、ターボ・ジェット・エンジンの運動量理論による効率は、
     η= Wj / Kj = 2/(1 + V1/Vj)・・・(1)

 でした。計算過程は2016年5月22日の記事を参照ください。

2 .ターボ・ファン・ジェット ----------------------------------------

  1.ターボ・ジェットコア・エンジンとしたターボ・ファン・ジェットでは、Turbo_fan_jet_try4 ツー・スプール・エンジンですが構成は 1- (G) -1-2-C-1-2 です。ファンを駆動するため低圧段タービンを 1 段増やしました。

 ファンの後ろの (G) はギヤード・ファンの場合のギヤ・ボックスです。模式図ではスピナーか低圧段コンプレッサーのハブの中にある(はず)。

 以下の解析ではエネルギー保存則が成立し、一部の損失は無視し、表現可能な効率(例えば、ファンの効率やギヤ・ボックスの伝達損失など)は式に組み込むことにします。

 なお、ギヤード・ターボ・ファンに必要なギヤ・ボックスの減速比は、運動量理論では性能に直接に関係することはありません。

 2-1 コア・ジェット ----------------------------------------

 モデルとなったターボ・ファン・ジェット・エンジンでは、コア・エンジン本体の出力エネルギー KE はベースとなったターボ・ジェット・エンジンと変わらない前提です。

 したがい、KE = (1/2)mVj2 の一部がターボ・ファンを駆動するエネルギー KE となり、残りがターボ・ジェットとして使用できるコア・エンジンの出力エネルギー KEc となる。
    KE = KEc + KEf =λ・(1/2)・mVj2

 最適に設計してあるベースのコア・エンジンに低圧段を 1 段追加するなどで、出力分割に伴う効率λ(≦ 1)の低下があるのだがここではλ≒ 1 として無視します。
    KE = (1/2)・m・Vj2 

 コア・エンジンの推力となるエネルギー KEc は、エネルギー分割比を k= KEc/KE 0 ≦ k ≦ 1)とすると、
    KEc = k・KE = (1/2)・k・m・Vj2 = (1/2)・m・Vc2 ・・・(2)
      Vcターボ・ジェットとして働くコア・エンジンの噴流速度

 ファンの性能もプロペラの推進力と駆動力の関係があり、ファンの翼型と迎え角により推進力も駆動するトルク抵抗も変わるので厳密には k = (一定) とは言えない(先々回のプロペラの翼素理論の初歩の回を参照)。しかし、これも無視して一定とします。

 式(2)
より、
     Vc/Vj = √(k)・・・(3)

【重要】
 
例えば、k = 0.5 、すなわち、コア・エンジンはエネルギーの50%( Kc /KE = 0.5を分割してファンを駆動してもコア・ジェット・エンジンが噴出するジェットの速度は Vc/Vj = √(0.5)= 0.707Vc は30%の低下で済む。
 分割されたエネルギーでファンを駆動して同じ質量の空気を同じ速度を送り出せば、同じ推進力が得られる。
 したがい、ターボ・ファンでは二倍してエネルギーを分割する前のコア・エンジンの1.414倍の推進力が得られることになる。 この状態は、ファンなどの効率を無視したある条件下で理屈上のバイパス比  1 : 1 に相当することを後ほど証明します。

 コア・ジェットの有効運動エネルギー Kc はターボ・ジェットと同じラム圧抵抗エネルギー Kdc を差し引いた、
     Kc =  KEc - Kdc = (1/2)・m・(Vc2 - V12 )
         = (1/2)・m・(k・Vj2 - V12)・・・(d)

 仕事の式は、
     Wc = m・V1・(Vc-V1) = m・V1・(√(k)・Vj - V1) ・・・(e)  

 2-2 ファン ----------------------------------------

 ファンを駆動するため、コア・ジェットから分割された運動エネルギーは、
     KEf = (1 - k)・KE = (1/2)・(1-k)・m・Vj2

 ファンが後流に与える運動エネルギーは、
     Kf =ψKEf = (1/2)ψ・(1-k)・m・Vj2 = (1/2) q・m Vf2・・・(4)
      
     ψ:
ファンの効率(ギヤード・ターボ・ファンではギヤ・ボックスの効率も含む) 
      q :
バイパス・レシオq : 1) q
     Vf
ファンの後流の速度 

 したがい、
     V/Vj = √{(ψ/q)・(1-k)} ・・・(5)

 ファンの有効運動エネルギーは、
     Kf = q・m・( Vf2-V12)/2 = (1/2)・q・m・[{(ψ/q)・(1-k)}・Vj2 - V12]・・・(f)

 ファンが実行できる仕事は、
     W = q・m・V1 (Vf -V1) = q・m・V1 [√{(ψ/q)・(1-k)}・Vj - V1]・・・(g)

 以上のようにターボ・ファンの運動エネルギーも推進仕事もファンのないコア・ジェットを単体で作動させた噴流速度 Vj をパラメーターとして表記できる。

 2-3 ターボ・ファン ----------------------------------------

 ターボ・ファン・ジェット・エンジンとしての仕事は、
     Wtf = Wc + W
        = m・V1 (Vc - V1) + q・mV1 (V -V1)
        = m・V1{( Vc + qVf ) - (1+q) V1}
        = m・V1・ [(√k + √{(ψ/q)・(1-k) })・Vj - (q+1)・V1] ・・・(h)

 この式で、 Wtf = 0 にする[ ] 内の V1 が、コア・エンジンを純ターボ・ジェット・エンジンとして作動させた場合の限界速度 V1jmax に対して、同じエンジンでバイパス比を q : 1 、エネルギー分配比 k で構成されたターボ・ファン・ジェットの限界速度は V1tfmax となる。
 したがい、 V1 = V1tfmax と書き換えられて

     V1tfmax/Vj1max = [ √k + √{ψ・q・ (1-k) }] / (q+1)・・・(6)

-------------------------------------------

 ターボ・ファン・ジェットの qk の関係を設定する方法として、コア・エンジンのジェットの限界速度 Vc とファン後流の限界速度 Vf を等しくさせる方法を例にとる。

 Vf Vc は、Vj をパラメーターにした式(3)(5)から、

     Vf/Vc = (Vf/Vj )/(Vc/Vj) =  √{(ψ/q)・(1-k)} / √k = √{(ψ/q)・(1/k - 1)}

     Vf/Vc = 1 あるいは Vf = Vc = Vtf より、
     k = 1/(q/ψ+ 1)・・・(8)

 この方法は d(Wtf)/dk = 0 で得られる極値(この場合はWtf  の最大値)を示す qk の関係式と同じになります。
 すなわち 式(8) はターボ・ファン・エンジンの仕事の最大値を得るバイパス比 q と動力分割比 k の関係式になります。

    したがい、
     Vtf/Vj = [ 1/√{ (q/ψ+ 1)} +q/√{(q /ψ+ 1) } ]/ (1+q)
          = 1/(q/ψ+ 1) ・・・(9)

 2-4 ターボ・ファン・ジェットの運動量理論による物理量 -----------------------

 さて、Vf = Vc = Vtf としたので、ターボ・ジェット・エンジンの有効推進力 Fj は、
     Fj = (q+1)・m・(Vtf -V1)
       =
 (q+1)・m・[ {Vj /√(q/ψ+ 1)} - V1]

 そして、ターボ・ファン・エンジンで得られる有効仕事は、
     Wtf = Wc + W
        = m・V1 ・(Vc - V1) + q・mV1 (V -V1)

        = (q+1)・m・V1・(Vtf -V1)
        =
(q+1)・m・V1・[ {Vj /√(q/ψ+ 1)}- V1] ・・・(i)

 ターボ・ファン・ジェットのコア・ジェットで得られる有効エネルギーの総量は、ターボ・ジェットと同じ Kj = (1/2)・m・(Vj2-V12) なのだが、ここでは
     Ktf = (1/2)・(q+1)・m・(Vtf2-V12 )
        = (1/2)・(q+1)・m・[ {Vj /√(q/ψ+ 1) }2-V12 ]・・・( j )

とする。

 2-5 ターボ・ファン・ジェットの運動量理論による効率 -------------------------

 したがい、ターボ・ファン・エンジンの推進効率は、
     ηtf = Wtf/Ktf
        =2・V1・(Vtf - V1)/(Vtf2-V12

        =2/(1+Vtf/V1)
        =2/[1+
{Vj/√(q/ψ+ 1)}/V1 ]・・・(10)

 この運動量理論による推進効率の式の誘導は、同じ出力エネルギーを出せるコア・エンジンでのバイパス比をパラメーターにしています。

 したがい、この式で使われる Vj /√(q/ψ+ 1) は速度エネルギーとしての値であり、コア・エンジンの噴流とファンの後流を合わせた(定義は先述の)排気速度の Vtf に相当します。

 すなわち、式(10)では V1/Vj = 1 のときのηtf の値は V1/Vtf = 1 のときに相当ししています。

したがい、式(10)は、式(9)Vtf/Vj  = 1/√(q/ψ+ 1) より 0 ≦ V1/Vj ≦1/(q/ψ+ 1)} の範囲に限定されます。

---------------------------------------

 さて、 式(9) を変形すると、
      Vj = {√(q/ψ+ 1)}・Vtf 

 エンジンの出力となるエネルギー(E)は速度の二乗に比例するので、
     EVj2 = (q/ψ+ 1)Vtf2 ・・・(9’)

【重要】
 ターボ・ファン・ジェット・ライナーの巡航速度は M 0.8 前後でほぼ一定の値に設定される。したがい、バイパス比を大きくすると (q/ψ+ 1) に比例してコア・エンジンの出力も 大きくならざるを得ない。当然、必要燃料消費も増える。

 では、なぜバイパス比を大きくするのか、「亜音速域の推進効率を向上させるため」、に尽きるのだが・・・

---------------------------------------

 ながながと「数式編」にお付き合いいただきありがとうございました。

 「ターボ・ファンのバイパス比を大きくすればジェット・ライナーの性能が向上する」という説明を鵜呑みにするのは工学知識上は危険です。

 繰り返すと、仕事や力の元になるエネルギーは速度の二乗に比例するが力は速度に比例するという物理法則では、エネルギーを 2 等分に分割しても速度は√(1/2) = 0.707 も残っている。

 したがい、力や仕事になる速度として実質上は 2 x 0.707 = 1.414 倍の力や仕事として使えることになります。もちろん、いっぽうでは 2 x (1/√2)2 = 1 というエネルギー保存則は不変です。

 「ジェット噴射の空気の温度(すなわち速度)の低下と引き換えにファンで大量の(低温で重い)空気を吐出して推進力を大きくする」という、熱力学と空気力学の工学的応用で(推進)力が増加し結果として(仕事と運動エネルギーの比である)効率が向上するのです。

 次回は ターボ・ジェットの効率の式(1) とターボ・ファンの効率の 式(10) をバイパス比をパラメーターにしてグラフ上に重ねて見える化を試みます。

 そのなかで、上限速度が決まっているターボ・ファン・ジェット・ライナーではバイパス比を増加させるための見返りをコア・エンジンに要求してきます。 せっかくですから、式(9’) も記憶しておいてください。

 次回はの予定はそのあたりに注目した「グラフ編」です。ご期待ください。

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