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2016年10月の3件の記事

2016年10月24日 (月)

キネマ航空 CEO GTF の GB(Gear Box)の減速比に迫ってみる。

2016/11/13 一部赤字にて修正しました。確認不十分をお詫びいたします。

一般に 3 と言われている減速比の検証です。合っているかどうかは終わりの方に・・・

ギヤード・ターボ・ファンのギヤ・ボックスの構造もオスプレイのプロップローターのヘッド並みに登場する機会が少ない。

これは、シアトル・タイムズの記事のイラストでギヤ・ボックスの構造が何となくわかる。

しかし、エンジン本体のカット・アウェイ・ドローイングは、ごく初期のP&W プレス・リリースらしく、スプールの構成は 1-G-3-6-1-3 で、現在公表されている 1-G-3-8-2-3 の配置とは異なっている。

Mainqimg9c768bb245a528c0b5a4b6a6746

P&W ピュアパワー・シリーズは三つのファン直径(56、73、81インチ)、三つのバイパス比(9:1、12:1、12.5:1)で構成されており、おそらく三つのコア・エンジンを持つと思われる。

                                            P&W PW1000ファミリー

 静止出力 klb   15●17●19●21、22、23、24、25●27、28●●31●33●35
 ファン直径 in 56 ○  ○ 
           73        ○  ○ ○ ○ ○ ○ 
           81                  ○     ○  ○    ○  ○  ○
 バイパス比  9:1 ○  ○
         12:1             ○  ○ ○ ○ ○ ○
        12.5:1                 ◎     ◎          ◎  ◎
                ●:欠番   ◎:エアバス発注仕様
      この疑似テーブルはファイアフォックスとサファリでは正常に表示されません
      RSSのフィードでも同様です

      スマホ、タブレットでの確認、致しません!

したがい、常識的には三種類ないし二種類のギヤ・ボックスが設定されていると考えられるのだが、そのあたりは定かではない。

それにしても、エアバスは主導するフランスの天邪鬼ぶりが表れている。これは次々回あたりのネタになりそう。

内部構造のわかるギヤボックスの画像はWEB 上にいくつもあるが使い回しのようだ。通覧した画像からはどの直径のファンを駆動するのかは判らない。

Pw1000gpurepower_enginepwgtffandriv

A ギア・ボックスを内側を見たところ

・中央にサン・ギヤ(太陽歯車)Zs : 34 枚
・外側にリング・ギヤ(内歯車)Zr : 96 枚
・中間にプラネタリー・ギヤ(遊星歯車)Zp : 31 枚
 軸を支えるキャリヤの反対側にも軸を共用して同じ歯数の遊星歯車があり歯車の歯に掛かる力を半分にする
 キャリアの両側に捩れの角度は同じだが方向が逆のハスバ歯車を採用して噛み合う歯数を増やして騒音を抑え、噛み合った歯に掛かる応力を減少させて強度や寿命を向上さている。併せて、ハスバ歯車で生じる軸方向の力の向きを対向させてケースに掛かる力を打ち消している
 歯車列の設計では噛み合う歯数の最小公倍数を最大にするのがポイント。遊星歯車に 31 という素数を使ってきちんと守ってますね

Pw_1000gpurepower_fan_drive_gear_sy

B

ACD と同じ型式サイズのギヤボックスかどうかは不明

内歯車の突び出し具合からすると上の写真の反対側から見たところ

5本の(うち1本は外されている)パイプはプラネタリー・ギヤの軸を支えているベアリングの潤滑油の配管だろう

細かい話は最後の「閑話は続くよどこまでも」で・・・

Pw1000gpurepower_enginepwgtffandr_2

C

WEB上では、他にもいくつかの写真があるのだがほとんどが同じ写真かそれに回転や反転、背景を消す処理を加えた画像だった

これと下の画像 D は、A と同じ展示モデルを別の機会に別の方向から写したようだ

D

C の鏡面対称だが歯車の位置や回転角度が微妙に違う

なお、ここに掲げた歯数を数えられる 3 枚の画像の歯数は同じでした

Mroeng_2014_gallery07_s

さて、遊星歯車列としては一番単純な形式である。機能させるためには三つある歯車の回転軸に入力軸、出力軸、固定軸を割り当てなければならない。

減速機として働かせるには次の二つの方法がある。
遊星歯車について詳しくは知るには こちら で)

・太陽歯車を入力軸にして、内歯車を固定軸に、遊星歯車のキャリヤを出力軸にして正回転を取り出す。
・太陽歯車を入力軸にして、遊星歯車のキャリヤを固定軸に、内歯車を出力軸にして逆回転を取り出す。

ほかにも、二軸を入力軸、一軸を出力軸にすることもできるが出力が減少する動力循環になることもある。イラストを見る限りではそれほど複雑な構造は採用していない。

余談となるが、入力軸を一軸、出力軸を二軸にする構造もある。自動車では傘歯車で構成される差動装置(デファレンシャル)として必須な構造です。これはコントラ・プロペラで採用される機構となります。ジェット・エンジンではもっと単純な構造もあります。ヒントは以下の説明のなかに・・・今のところ成功していないけど。

ここで、MRJ エンブラエルが採用する二段の低圧圧縮段を持つ PWxx15PWxx17 タイプのカット・アウェイ図を参照する。スプールの構成は 1-G-2-8-2-3 です。

Pw12xx_sファンは正面から見て反時計回りです。(これは、実物の写真からも確定できる)

いっぽう、ファンを駆動する低圧タービンは時計回りであることよりギヤ・ボックスの機能は出力軸にあるファンが逆転する後者の構成であることがわかる。

(減速比は前者の設定の方が大きくできる。後者を選んだのは軸を支持する構造の簡便さからと考えられる)

ちなみに、高圧段は反時計回りなので、高低圧段の二軸で構成されたスプールは逆回転タイプです。
既出の 三段低圧圧縮段の図からも同様の結論になります。というより高圧段圧縮機以降は同じ画像の右半分は使い回しのようだ)

さて、このギヤード・ターボ・ファンのギヤ・ボックスの構造では、遊星歯車は遊び(中間)歯車としての逆転機能なので(遊星が公転する厳密な)遊星歯車機構ではありませんがパッケージとしては同軸でコンパクトにまとめることができます。

で、バディとなる三種類あるファンの径はどれだか、はっきりしないものの、
   減速比 = - (内歯車の歯数)/(太陽歯車の歯数) = - 96/34 = - 2.823

(-)は逆回転を示します。四捨五入で (-) 3 ですが技術情報としてはどうなんでしょうね ?

2017/02/17 追記 ファン径 81inch のギヤボックスの減速比は 3.0625 であることが確認できました。詳細は こちら

「閑話は続くよ、どこまでも」・・・

先の画像 B はギヤ・ボックスを後方から見ている。中ほどの穴の中に見える歯車状のスプライン(軸)は遊星キャリヤをコア・エンジンの筐体に固定された中空軸に勘合させる。
(スプライン:軸の回転を直線で伝える歯車状の軸と穴からなる軸接手)

その中空軸の中を低速タービンから伸びた駆動軸が貫通し太陽歯車を駆動する。

大きな内歯車状のスプライン(穴)は内歯車と一緒に回転するギヤ・ボックスの(多分潤滑)構造を構成する壁面の勘合部と思われる。

ファンの駆動は画像 CD で見られる外周にあるスプライン(軸)で勘合するケースが遊星歯車機構を外側から覆い、最上段のカット・アウェイ図に示されている「GEARBOX」と吹き出されたイラストのケース先端部にあるボスにファンのハブを取り付けておこなう。

結論から言えば、P&W が開発したギヤード・ターボファン・エンジンである ピュアパワー のギヤ・ボックスの構成は、1970 代から実績を重ねている静止推力が 7klbf 級の基本レイアウトを踏襲している。

そのロール・モデルは、小型ビジネス・ジェットに向けて ギャレット・エアリサーチ TFE731 として開発・量産化され成功し、ライカミング、アライドシグナルを経て現在はハネウェル ALF 502/LF507 と変遷しながら継続している。

実用化されたギヤード・ターボ・ファンの系譜は上記になるがギヤ・ボックスの変遷はいくつかあることが分かってきました。このため以下を見え消しとして詳しいことが分かり次第訂正いたします。ご迷惑をおかけして申し訳ありません。

 こちらの遊星歯車は捩じれ角の小さいハスバ歯車を 1 列 4 個で構成されているが、ピュアパワーは捩じれ角の大きい対抗するハスバ歯車を 5 x 2 列 10 個で高出力に対応している。

ごく初期のギヤード・ターボ・ファンの詳しい構造図は見つからなかったが技術史としてはターボ・ジェットの創生期から考えられており、遊星歯車を使った二種類の減速機にそれぞれ取り組んだ開発の先行例は数多くある。

(閑話休題・・・やっとね! )

次回はこのギヤ比がどう貢献するのについて考える。

2016年10月19日 (水)

キネマ航空CEO ターボ・ファン・ジェット・エンジンの効率を考える(グラフ編 + 下の方で、ギヤード・ターボ・ファンの疑問編の始まり)

 「数式編」とほぼ同時公開です。こちらにも目を通してからお読みください。
 また、例によって公開後の校正、校閲中です。ご意見等お寄せください。
                                              キネマ航空 CEO 拝

 前回、長々と続けた「数式編」も解析した数式が結論では全体像は見えてはきません。そこで見える化です。

 ターボ・ファン・エンジンの効率の変化を縦軸にエンジンが空気(質量)を送り出す速度とエンジン自体に進行速度の比を横軸にとり、バイパス比をパラメーターにして整理したグラフ化です。

 ただ、グラフの元にした数式は次の仮定に基づいています。定量的な解析ではなく定性的な解析です。ご留意ください。

     1.ファンとジェットの作り出す空気の速度は速度比に関係なく等しく、ファンとジェットが送り出す空気の質量流量比はバイパス比と同じ(最大効率を示す)値で一定とする。
     2.ファンには翼素理論ではなく運動量理論を適用している。これについてはプロペラ効率の成り立ちを検証した 1234 回を通読して想像で補ってください。
     3.ダクテッド・ファンは低速側ではプロペラの効率以上に膨らみを増し、高速側の効率のピークの伸びはブレード先端の誘導抵抗が抑えられてターボ・ジェットのそれに近づいていると考えられる。
     4.結果的に空気機械としての効率が1のダクテッド・ターボ・ファン・ジェットはターボ・ジェットの運動量理論と等価であると仮定している。

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 添付したグラフは二つありますグラフ上でダブル・クリックすると拡大ポップ・アップします

 いずれも、パラメーターとなるバイパス比は 0:1 のターボ・エンジンからギヤード・ターボ・ファンの PW1000 シリーズの最大値 12:1 までをグラフ化で比較してあります。

 使った数式は 式(10)。この式で q = 0 とすれば 式(1) になります。ただし、面倒くさいので式中の伝達効率やファンの駆動効率などの効率はψ = 1 として無視しています。

Vs_spd_ratio_with_same_max_spd Vs_spd_ratio_with_same_core_eng

 まず、左のグラフ・・・前回の式(10)をそのままグラフ化した悪い表示例
                                 
グラフ上でダブル・クリックすると拡大ポップ・アップします

 速度比 1 で効率が 1 を示す一番下のカーブがターボ・ジェットのエンジンです。

 確かに、一般的な説明のようにバイパス比が大きくなるほど効率が良くなっています。

 そしてバイパス比が大きくなるほど効率向上の割合は小さくなってゆきます。

 それはそれで良いのですが・・・

 あなたが、このグラフを以上のように言葉で要約してしまうと、誰かに向かって、グラフ化による目くらまし効果をそのまま表現して大きな誤解を与える発信をしてしまいます。

 まず、効率が 1 以上になるのは前回の数式編で説明したように(吐出速度に比例する)仕事を(速度の二乗に比例する)エネルギーで割った値です。

 エネルギーを分割して使用するターボ・ファン・エンジンでは吐出空気の質量流量は増加しますが引き換えに吐出速度は低下します。

 速度の低下は、「エネルギーを分割したあとのコア・エンジンとファンの推進力の合計は(それぞれに割り当てられた分割比の平方根に比例する)速度と(バイパス比に比例する)空気の質量との積の和に比例して増加している」という物理的な原理に従うためです。

 グラフの横軸は、コア・エンジンがターボ・ジェットとして吐出する空気の速度でエンジンの進行速度を割った値です。その値が 1 となる進行速度がそのエンジンが出せる理想の限界速度です。

 すなわちバイパス比が 1 以上のターボ・ファン・エンジンの吐出速度との比が 1 ではエネルギーを分割する前のコア・エンジンが単体で出せる速度は左のグラフ上では速度比 1 以上となります。

 すなわち、このグラフのコア・エンジンはバイパス比 0 のエンジンとは全く別物をそれぞれのコア・エンジンとして計算した値を誤った速度比の軸上に重ねています。

  高バイパス比化されたターボ・ファン・エンジンは、エンジンを構成する新材質の採用による回転部分の軽量化や耐熱性材質による燃焼室以後の高温部の改善でより完全燃焼に近づけてより高温の(高エネルギーの)空気を扱えるようなった結果で得られた向上部分が大きい。

 いっぽうでは、効率の分母となるエネルギー自体を大きくした結果(すなわち燃料投入量の増加の見返り)でもあります。

 したがい、高バイパス比の効率を、バイパス比 0 のエンジンと速度比の上で同列にしたグラフて比較するのはいかがなものかと言わざるをえません。 この辺りは、前回の式(9’)を参照してください。

 次に、右のグラフ・・・前回の式(10)を注記で補正してグラフ化した妥当な表示例
                                 
グラフ上でダブル・クリックすると拡大ポップ・アップします

  ターボ・ファン化されたエンジンのコア・エンジンはバイパス比 0 のターボ・ジェットと同じ運動エネルギーを出している場合のグラフです。

 左のグラフとの違いはターボ・ジェットの限界速度とバイパス比によって変わるターボ・ファンの限界速度との比をターボ・ジェットの速度比に反映して整理してあります。

 そして、各バイパス比の効率曲線上の点はターボ・ジェット(バイパス比 0 )の速度比の点に対応してプロットされています。

 ターボ・ファン・エンジンはターボ・プロップ・エンジンと違いジェット・ライナーに搭載する場合の仕様は巡航速度で M 0.8 、最高速度で M 0.9 辺りに設定されている。

 ターボ・ファンのバイパス比 12 は限界速度比が 0.3 を切っていますからベースとしたコア・エンジンの限界速度を M 1.0 とするとその 3.5 倍の速度、M 3.5 が出せるターボ・ジェット・エンジンをコア・エンジンに採用しなければならない。(あくまでイメージです。特定の飛行機に換算すると空気抵抗は速度の関数のためさらに大きくなる・・・追記)

 式(9’)に示すように、速度の二乗に比例するエネルギーに換算すると 12 倍の(バイパス比に相当する)エネルギーが必要となります。

 またグラフからは、バイパス比を 8:1 以上に大きくしても特別に効率が良くなるとも言えない。しかし、要求されるエネルギーの比は速度比の二乗ので割ることになるのだが、速度比が 0 に近づくほどエネルギーの絶対値は不利になる。

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 推進仕事効率の向上は余剰エネルギーがあって初めて可能になるのです。

 ターボ・ファン・エンジンの高バイパス化による推進効率の向上は亜音速域の上限での効率向上です。高バイパス比化によって燃料消費の絶対量が必ず大きく改善されるとは言い切れません。

 少なくとも高バイパス比のエンジンを採用する機体は亜音速の上限域で余剰エネルギーの大きいターボ・ジェットをコア・エンジンとして採用できる大きさや運行経済的な余裕がある仕様でないと成立は難しいと考えられる。

 最先端のターボ・ファン・エンジンの大きさは、耐熱材料や複合樹脂材料の進展でファンやタービン・ブレードの翼型の改良とコンピュータ制御による燃焼化学の面からも(出力/タービン直径の比を指標とする)小型化ができており、制限条件はバイパス比に直結するファンの直径のみになっている。

 機体の仕様からは最高速度や巡航速度を押さえた仕様も選択肢となるのだが MRJ は機体の形状抵抗を下げて速度低下をカバーするため細い胴体で対応しようとしている。

 高バイパス比エンジンの顧客がボーイングエアバスに限られる大型機向けでは機体に合わせてエンジンが開発されるオートクチュールで生産ができる。

 しかし、リージョナル・ジェット・ライナーのようにメーカー数がそれなりにあり計画される機体のバリエーションや生産数が多ければプレタポルテとして全メーカーのラインアップに合わせて細分化したコア・エンジンの仕様を並べておく必要がある。

 P&W は、これまでのエンジン・メーカー同士のエンジン型式別のコンソーシアムといったパイの分配から一歩抜け出すためにライカミングで開発されビジネス・ジェットで実績のあるプラネタリー・ギヤ・ボックス(遊星歯車箱)を一つ加えて、生産数の見込めるリージョナル・ジェット枠の総取りを狙っているともいえる。

 そう上手く行くのかどうか、ターボ・ファンの来し方行く末を概観すると、

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 ターボ・ファン・エンジンは、ターボ・ジェット・エンジンに有り余るエネルギーがありながら、音速を越える機体の設計技術が追いつかない(費用対効果を問われるジェット・ライナーや輸送機にとっては現在も続いている)時代に超音速機がふさわしいターボ機械を亜音速機に応用する用途で大きな飛躍を遂げました。

 現在は、その亜音速の上限の中で性能向上の技術革新競争が行われている時代です。言い換えれば論理的な限界に迫りつつある時代とも言えます。

 革新技術も突き詰めると、注ぎ込む技術の利害得失を経済的損得に置き変えてトレード・オフした結果で推測される数パーセントの向上率に、あてもなくコストを注ぎ込むことになる時代となったような感覚に襲われます。

 あとで述べるプロップ・ファンにしてもコントラ・ダクテッド・ファンにしてもバイパス比の束縛からは逃げられない。

 航空エンジンにはレシプロからジェットへのパラダイム変換がありました。

 その直前のレシプロ・エンジンの苦闘の時代も偲ばれます。ラジアル・エンジンの四列化、ターボ・コンバウンド化などのギミックの限界に挑んだ時代に重なるのかもしれません。

 今のところジェット・エンジンをベースにしたベターメントによる努力は続くでしょうがジェット・エンジンに代わるパラダイムの展望は見えていません。

 余談ながら、お時間がありましたら、また当オフィスにご来訪ください。次の記事をお勧めします。

 キネマ航空 011便拾遺 その3 『アビエイター』編 P&W ワスプ・メジャーとCWC ターボ・コンパウンドについて

 次回は、いよいよギヤード・ターボ・ファン・ジェットに取り掛かります。今年中には終わらせたいのだけど。

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 おまけのグラフ・・・エネルギーk=1を分割し分担するコア・エンジンk)とファン1-kをバイパス比qの関係で示してみた・・・ついでにターボ・ファン・ジェットの技術動向もまとめてみた。グラフ上でダブル・クリックすると拡大ポップ・アップします

 すなわち、前回の 式(8)で示した、決まった大きさのエネルギーを使って 1 基のターボ・ファンとして最大の仕事をする、エネルギーの分割比(q)とバイパス比(k)の関係です。Pwr_split_ratio_vs_bypass_ratio ターボ・ファン・エンジンの高バイパス比 8-12 ではコア・エンジンのエネルギー分割比は 0.1 前後にまで下がる(ファンでは 0.9 前後まで上がる)。

 ちなみに、ターボ・プロップでは 0.2 前後だからバイパス比換算では 4.0 前後相当となる。

 ターボ・ファンではダクトのデフューザー効果ファンの径を使って高バイパス比に到達できる。その一面ではファンの径は大きくなり、ファンを収容するダクトなどを構成するカウリングの形状抵抗が増える。

 ターボ・プロップフリー・タービンターボ・シャフト・エンジンでエネルギー分割比を小さくするにはコントラ(二重反転式)・プロペラなど先端の周速を押さえた高い効率で動力転換(吸収)が可能な空気機械が必要になる。この場合のエンジンの形状抵抗となるカウリングコア・エンジンを包む径でたりる。

 その外径を小さくする空力機械であるファンの工学的アプローチが、コントラ・ターボ・プロップのブレード翼型を大きく変えたアンダクテッド・ファン・エンジンまたはプロップ・ファン・エンジンである。

 プロップ・ファンアンダクテッド・ファンのブレードは既に(ダクテッド・ターボ・ファンで使われている前進角と後退角を組合わせた幅広の翼弦長を持つ薄肉のブレードがベースになる。

 しかし、その先端形状はターボ・ファンの先端とダクトとの隙間を長く取ってラビリンス効果による翼端渦を押さえる逆テーパー型ではなく、誘導抵抗を減らすために先端が細く尖った、平面に展開すると三角翼型が場合によっては三日月翼が基本になると思われる。

 いっぽう、現実の問題では、ダクトの有無で周囲に発散させる高周波による騒音のレベルに大きな差がある。

 ターボ・ファンでは、さらにコントラ・ファンでファン径のひいてはカウリング径のサイズ・ダウンで形状抵抗の低減を図ることになる。

4 . ギヤード・ターボ・ファン・ジェットへの疑問 ----------------------------------

 我々が、なんにも疑わずにいるバイパス比の数値の持つ意味は、次のケースが考えられる。

 A.公称バイパス比は 8 : 1 であるが理論バイパス比では 9 : 1 なのかもしれない。
 B.公称バイパス比は理論値の 9 : 1 だが、実効バイパス比は 8 : 1 なのかもしれない。
 
 (B.は偽装ともいえるが狭い世界の中だからね)

   プラット & ホイットニーは、「いずれにせよ、実効バイパス比は理論値より小さい。したがってギヤード・ターボ・ファン・エンジンであるピュアパワー© によって、実効バイパス比を理論バイパス比に近づける技術成果である」と主張しているとも考えられる。

 では、そもそも、バイパス比とは何なのか ? となると、言葉の一人歩きのままです。したがい、当CEO の解析(ご託)も「群盲、象を撫でる」の域にとどまったままでの評論であることは自認しています。

 しかし、バイパス比が持っている物理量の原則は変わらない。

 コア・ジェットとファンの吐出速度を等しくしたターボ・ファン・エンジンの効率の 式        
     ηtf
= 2/[1+{Vj/√(q/ψ+ 1)}/V1 ]・・・(10)

を動力分割比 k で表せば、
     ηtf = 2/[1+{√(k)}・(Vj/V1)]・・・(10’)

 両式から推進効率を決めるのは動力分割メカニズムの伝達効率に加えてバイパス比とファンの効率であるという当たり前の結論です。

 燃費効率の改善のためにバイパス比の増加を図るギヤード・ターボ・ファン・エンジンに必要なギヤ・ボックスの伝達効率分は悪化することは明らかです。

 そして、結果として得られるファン回転数の低下とバイパス比の増加によるファン直径の拡大によって得られるファン効率との相殺はどうなるのか。

 公称バイパス比では理論値と実効値が使い分けられていたり、いっぽうを隠したりするなどの業界のダブル・スタンダードがあるのか。(P&Wピュアパワー・エンジンではファン径の拡大などしないでバイパス比の公称値を大きくしたのか)

 ターボ・ファン・エンジンを採用する機体の速度には亜音速の上限という天井がある。
 式(9’)に示すようにバイパス比の安易な拡大はコア・エンジンの出力の増加につながり推進効率の分母をかさ上げしてしまい、絶対値として燃料効率の向上につながるのか。

 つながるからエンジン・メーカーは製造し、機体メーカーや航空会社は採用するのだろうが、大出力を受け持つギヤ・ボックスの信頼性が確立するには時間がかかる・・・。

(続く)

2016年10月18日 (火)

キネマ航空CEO ターボ・ファン・ジェット・エンジンの効率を考える(数式編)

 「グラフ編」は近日公開予定です。こちらにも目をお通しください。
 また、例によって公開後の校正、校閲中です。ご意見等お寄せください。
                                              キネマ航空 CEO 拝

 今回は数式ばかりですが、言葉の説明では舌足らずになるところに一歩踏み込みました。

 ターボ・ファンはバイパス比を大きくすることで得るところもあれば、失うところもある、ピン・ポイントで出力を選ぶ技術であることがわかります。

 この視点からは、P&W のギヤード・ターボ・ファン・ジェット・エンジンのブランド名であるピュアパワーの出力設定のライン・アップの多さも頷けます。

 ピュア・パワーは静止推力15klb(6.54 t) から 35klb(15.26 t) の間を 12 の型式でカバーしています。中には1klb(436kgf)刻みの設定もあります。

  では、お楽しみ、いや、たまには、お苦しみください。
 MAC がこだわった MRJ
エンジン選択が正しかったのかどうかの検証の過程です。

                                              キネマ航空 CEO 拝

0 . はじめに  --------------------------------------

 ターボ・ファン・ジェットのファンもデフューザーの中で断熱圧縮にかかわっている。ターボ・ファンを熱力学で説明するには専門家の専門書か解説を頼ることになる。

 それらはWEB上にあるので、ここではエネルギー保存則や力に仕事といった同じ物理学の中の運動力学で挑戦する。したがい、ターボ・ファン・エンジンの工学的な成り立ちは分かりやすいはずだ。

 ただ、ファンの項では翼素理論ではなく、運動量(モーメンタム)理論を使って行うので定量・定性的な現実とは少し外れた値を誘導することになる。

 空力機械であるファンは翼素理論でないと現実と整合しないことはプロペラ効率の成り立ちを検証した 123、特に 4 回を通して得た知見の通りだが、ダクテッド・ファンに応用できる手持ちの資料は概説しかない。

 次に、今回の計算では、いくつか使う係数、例えば動力分割比 k や バイパス比の係数 q は現実の翼素理論ではエンジンの進行速度に加えてファン設計仕様で変化するはずだが、計算に使用される対象の速度域で一定値とする。

 以下の本文はエンジン出力(エネルギー)の分割と合成を初歩的な説明の順序にそって展開しています。結論として示すターボ・ファン・ジェットの効率などの数式は(本文中にも出てくる)物理学の定義や法則による数式を使いこなせば分割比 k など使わずにもっとスマートに解けます。挑戦してみてください。

 1 . ターボ・ジェット ----------------------------------------(復習です)

 ターボ・ファン・ジェット・エンジンの中心にあるのはターボ・ジェット・エンジンでコア・エンジンと呼ばれる。

Turbo_jet_try4 コア・エンジンは、ツー・スプール形式で、1-2-C-1-1 ので構成です。 C は燃焼室の形式でキャン・タイプ。デフューザーもどきのインレットも付け足しました。

 ターボ・ジェットの働きは速度 V1 で進入してくる質量 m の空気を同じ質量のまま(実際には燃料の質量も加わる)、速度 Vj で噴射して推進力として利用できる有効運動エネルギー Kj を生み出す内燃機関です。
     Kj = (1/2)・m・(Vj2-V12) ・・・(a)

 書き直すと、
     Kj = (1/2)・m・Vj2 - (1/2)mV12 = KE - Kd

      KE = (1/2)・m・Vj2
         ターボ・ジェット・エンジンの燃焼で得られる燃焼エネルギーから圧縮機を駆動するタービンで使われるエネルギーを除いたエンジンとしての正味の運動エネルギー。
      (実用上はオイル・ポンプ、発電機、抽気などに使われるエネルギーも差し引いた後の推進力に使えるエネルギー)
      簡単にいえば KE V1 = 0 の状態です。 V1 ≠ 0 の場合でも気圧や気温が同一の運転状態では(多少強引ですがKE は一定とする。
      Kd = (1/2)・m・V12
         
ジェット・エンジンに寄生するラム圧抵抗です。速度 V1 でデフューザー内に侵入してくる空気により発生するラム圧抵抗を押し返すために使われるエンジンの運動エネルギーとなる。(エンジンのカウリングなどの外側に生じる形状抵抗は機体の形状抵抗の一部となります)

 結果として、ターボ・ジェット・エンジンで利用できるエネルギーは、KE から Kd を差し引いた 式(a) となる。

  そして、ターボ・ジェット・エンジンの推進力 Fj は、
     Fj = m・ (Vj - V1) ・・・(b)

 ターボ・ジェット・エンジンの仕事 Wj は、
     Wj = V1・ Fj
       = m・
V1 ・(Vj-V1) ・・・(c)

 繰り返しになるが式中にある Vj は熱力学を使わなければ求まりません。エンジンのスペックには静止時の流量質量が掲載されている場合もあります。

 KjWj いずれの式からも、このエンジンが出せる理論上の限界速度は Vj - V1 = 0 となる V1 V1jmax です。

 ここでいう限界速度 V1jmax は水平飛行(地球は丸いので正確には等高度飛行です。)による機体の最高速度 Vmax ではありません。

 機体の Vmax は、V1jmax より小さくなります。 Vmax は、機体の全抵抗とエンジンの全推進力がつり合う速度です。

 で、ターボ・ジェット・エンジンの運動量理論による効率は、
     η= Wj / Kj = 2/(1 + V1/Vj)・・・(1)

 でした。計算過程は2016年5月22日の記事を参照ください。

2 .ターボ・ファン・ジェット ----------------------------------------

  1.ターボ・ジェットコア・エンジンとしたターボ・ファン・ジェットでは、Turbo_fan_jet_try4 ツー・スプール・エンジンですが構成は 1- (G) -1-2-C-1-2 です。ファンを駆動するため低圧段タービンを 1 段増やしました。

 ファンの後ろの (G) はギヤード・ファンの場合のギヤ・ボックスです。模式図ではスピナーか低圧段コンプレッサーのハブの中にある(はず)。

 以下の解析ではエネルギー保存則が成立し、一部の損失は無視し、表現可能な効率(例えば、ファンの効率やギヤ・ボックスの伝達損失など)は式に組み込むことにします。

 ギヤード・ターボ・ファンに必要なギヤ・ボックスには歯車の噛み合いによる伝達損失があります。しかし、ここで使う運動量理論レベルの議論では減速比自体が性能に直接に関係することはありません。

 2-1 コア・ジェット ----------------------------------------

 モデルとなったターボ・ファン・ジェット・エンジンでは、コア・エンジン本体の出力エネルギー KE はベースとなったターボ・ジェット・エンジンと変わらない前提です。

 したがい、KE = (1/2)mVj2 の一部がターボ・ファンを駆動するエネルギー KE となり、残りがターボ・ジェットとして使用できるコア・エンジンの出力エネルギー KEc となる。
    KE = KEc + KEf =λ・(1/2)・mVj2

 最適に設計してあるベースのコア・エンジンに低圧段を 1 段追加するなどで、出力分割に伴う効率λ(≦ 1)の低下があるのだがここではλ≒ 1 として無視します。
    KE = (1/2)・m・Vj2 

 コア・エンジンの推力となるエネルギー KEc は、エネルギー分割比を k= KEc/KE 0 ≦ k ≦ 1)とすると、
    KEc = k・KE = (1/2)・k・m・Vj2 = (1/2)・m・Vc2 ・・・(2)
      Vcターボ・ジェットとして働くコア・エンジンの噴流速度

 ファンの性能もプロペラの推進力と駆動力の関係があり、ファンの翼型と迎え角により推進力も駆動するトルク抵抗も変わるので厳密には k = (一定) とは言えない(先々回のプロペラの翼素理論の初歩の回を参照)。しかし、これも無視して一定とします。

 式(2)
より、
     Vc/Vj = √(k)・・・(3)

【重要】
 
例えば、k = 0.5 、すなわち、コア・エンジンはエネルギーの50%( Kc /KE = 0.5を分割してファンを駆動してもコア・ジェット・エンジンが噴出するジェットの速度は Vc/Vj = √(0.5)= 0.707Vc は30%の低下で済む。
 分割されたエネルギーでファンを駆動して同じ質量の空気を同じ速度を送り出せば、同じ推進力が得られる。
 したがい、ターボ・ファンでは二倍してエネルギーを分割する前のコア・エンジンの1.414倍の推進力が得られることになる。 この状態は、ファンなどの効率を無視したある条件下で理屈上のバイパス比  1 : 1 に相当することを後ほど証明します。

 コア・ジェットの有効運動エネルギー Kc はターボ・ジェットと同じラム圧抵抗エネルギー Kdc を差し引いた、
     Kc =  KEc - Kdc = (1/2)・m・(Vc2 - V12 )
         = (1/2)・m・(k・Vj2 - V12)・・・(d)

 仕事の式は、
     Wc = m・V1・(Vc-V1) = m・V1・(√(k)・Vj - V1) ・・・(e)  

 2-2 ファン ----------------------------------------

 ファンを駆動するため、コア・ジェットから分割された運動エネルギーは、
     KEf = (1 - k)・KE = (1/2)・(1-k)・m・Vj2

 ファンが後流に与える運動エネルギーは、
     Kf =ψKEf = (1/2)ψ・(1-k)・m・Vj2 = (1/2) q・m Vf2・・・(4)
      
     ψ:
ファンの効率(ギヤード・ターボ・ファンではギヤ・ボックスの効率も含む) 
      q :
バイパス・レシオq : 1) q
     Vf
ファンの後流の速度 

 したがい、
     V/Vj = √{(ψ/q)・(1-k)} ・・・(5)

 ファンの有効運動エネルギーは、
     Kf = q・m・( Vf2-V12)/2 = (1/2)・q・m・[{(ψ/q)・(1-k)}・Vj2 - V12]・・・(f)

 ファンが実行できる仕事は、
     W = q・m・V1 (Vf -V1) = q・m・V1 [√{(ψ/q)・(1-k)}・Vj - V1]・・・(g)

 以上のようにターボ・ファンの運動エネルギーも推進仕事もファンのないコア・ジェットを単体で作動させた噴流速度 Vj をパラメーターとして表記できる。

 2-3 ターボ・ファン ----------------------------------------

 ターボ・ファン・ジェット・エンジンとしての仕事は、
     Wtf = Wc + W
        = m・V1 (Vc - V1) + q・mV1 (V -V1)
        = m・V1{( Vc + qVf ) - (1+q) V1}
        = m・V1・ [(√k + √{(ψ/q)・(1-k) })・Vj - (q+1)・V1] ・・・(h)

 この式で、 Wtf = 0 にする[ ] 内の V1 が、コア・エンジンを純ターボ・ジェット・エンジンとして作動させた場合の限界速度 V1jmax に対して、同じエンジンでバイパス比を q : 1 、エネルギー分配比 k で構成されたターボ・ファン・ジェットの限界速度は V1tfmax となる。
 したがい、 V1 = V1tfmax と書き換えられて

     V1tfmax/Vj1max = [ √k + √{ψ・q・ (1-k) }] / (q+1)・・・(6)

-------------------------------------------

 ターボ・ファン・ジェットの qk の関係を設定する方法として、コア・エンジンのジェットの限界速度 Vc とファン後流の限界速度 Vf を等しくさせる方法を例にとる。

 Vf Vc は、Vj をパラメーターにした式(3)(5)から、

     Vf/Vc = (Vf/Vj )/(Vc/Vj) =  √{(ψ/q)・(1-k)} / √k = √{(ψ/q)・(1/k - 1)}

     Vf/Vc = 1 あるいは Vf = Vc = Vtf より、
     k = 1/(q/ψ+ 1)・・・(8)

 この方法は d(Wtf)/dk = 0 で得られる極値(この場合はWtf  の最大値)を示す qk の関係式と同じになります。
 すなわち 式(8) はターボ・ファン・エンジンの仕事の最大値を得るバイパス比 q と動力分割比 k の関係式になります。

    したがい、
     Vtf/Vj = [ 1/√{ (q/ψ+ 1)} +q/√{(q /ψ+ 1) } ]/ (1+q)
          = 1/(q/ψ+ 1) ・・・(9)

 2-4 ターボ・ファン・ジェットの運動量理論による物理量 -----------------------

 さて、Vf = Vc = Vtf としたので、ターボ・ジェット・エンジンの有効推進力 Fj は、
     Fj = (q+1)・m・(Vtf -V1)
       =
 (q+1)・m・[ {Vj /√(q/ψ+ 1)} - V1]

 そして、ターボ・ファン・エンジンで得られる有効仕事は、
     Wtf = Wc + W
        = m・V1 ・(Vc - V1) + q・mV1 (V -V1)

        = (q+1)・m・V1・(Vtf -V1)
        =
(q+1)・m・V1・[ {Vj /√(q/ψ+ 1)}- V1] ・・・(i)

 ターボ・ファン・ジェットのコア・ジェットで得られる有効エネルギーの総量は、ターボ・ジェットと同じ Kj = (1/2)・m・(Vj2-V12) なのだが、ここでは
     Ktf = (1/2)・(q+1)・m・(Vtf2-V12 )
        = (1/2)・(q+1)・m・[ {Vj /√(q/ψ+ 1) }2-V12 ]・・・( j )

とする。

 2-5 ターボ・ファン・ジェットの運動量理論による効率 -------------------------

 したがい、ターボ・ファン・エンジンの推進効率は、
     ηtf = Wtf/Ktf
        =2・V1・(Vtf - V1)/(Vtf2-V12

        =2/(1+Vtf/V1)
        =2/[1+
{Vj/√(q/ψ+ 1)}/V1 ]・・・(10)

 この運動量理論による推進効率の式の誘導は、同じ出力エネルギーを出せるコア・エンジンでのバイパス比をパラメーターにしています。

 したがい、この式で使われる Vj /√(q/ψ+ 1) は速度エネルギーとしての値であり、コア・エンジンの噴流とファンの後流を合わせた(定義は先述の)排気速度の Vtf に相当します。

 すなわち、式(10)では V1/Vj = 1 のときのηtf の値は V1/Vtf = 1 のときに相当ししています。

したがい、式(10)は、式(9)Vtf/Vj  = 1/√(q/ψ+ 1) より 0 ≦ V1/Vj ≦1/(q/ψ+ 1)} の範囲に限定されます。

---------------------------------------

 さて、 式(9) を変形すると、
      Vj = {√(q/ψ+ 1)}・Vtf 

 エンジンの出力となるエネルギー(E)は速度の二乗に比例するので、
     EVj2 = (q/ψ+ 1)Vtf2 ・・・(9’)

【重要】
 ターボ・ファン・ジェット・ライナーの巡航速度は M 0.8 前後でほぼ一定の値に設定される。したがい、バイパス比を大きくすると、速度を維持するためには (q/ψ+ 1) に比例してコア・エンジンの出力も 大きくならざるを得ない。当然、必要燃料消費も増える。

 では、なぜバイパス比を大きくするのか、「亜音速域の推進効率を向上させるため」、に尽きるのだが・・・

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 ながながと「数式編」にお付き合いいただきありがとうございました。

 「ターボ・ファンのバイパス比を大きくすればジェット・ライナーの性能が向上する」という説明を鵜呑みにするのは工学知識上は危険です。

 繰り返すと、仕事や力の元になるエネルギーは速度の二乗に比例するが力は速度に比例するという物理法則では、エネルギーを 2 等分に分割しても速度は√(1/2) = 0.707 も残っている。

 したがい、力や仕事になる速度として実質上は 2 x 0.707 = 1.414 倍の力や仕事として使えることになります。もちろん、いっぽうでは 2 x (1/√2)2 = 1 というエネルギー保存則は不変です。

 「ジェット噴射の空気の温度(すなわち速度)の低下と引き換えにファンで大量の(低温で重い)空気を吐出して推進力を大きくする」という、熱力学と空気力学の工学的応用で(推進)力が増加し結果として(仕事と運動エネルギーの比である)効率が向上するのです。

 次回は ターボ・ジェットの効率の式(1) とターボ・ファンの効率の 式(10) をバイパス比をパラメーターにしてグラフ上に重ねて見える化を試みます。

 そのなかで、上限速度が決まっているターボ・ファン・ジェット・ライナーではバイパス比を増加させるための見返りをコア・エンジンに要求してきます。 せっかくですから、式(9’) も記憶しておいてください。

 次回はの予定はそのあたりに注目した「グラフ編」です。ご期待ください。

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