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2016年12月12日 (月)

キネマ航空CEO 民主主義を映画から考える。『後出しトランプの巻』後編

前回『後出しトランプの巻』全二回の前編 を念頭に置いてお読みください。予告の副題、「かなりの事は映画から学べる」、です。

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さて、当キネマ航空 003便 にて上映中のある映画の終わりに次のような一節が挿入されます。

Don't rejoice in his defeat, you men.
For though the world stood up and stopped the bastard,
The bitch that bore him is in heat again.
                          Bertolt Brecht

ドイツの劇作家ベルトルト・ブレヒトのドイツ語詞の英語訳からの引用であります。字幕では・・・

諸君、あの男の敗北を喜ぶな。
世界は立ち上がり奴を阻止した。
だが奴を生んだメス犬がまた発情している。
               ベルトルト・ブレヒト

では、his defeat him の「=あの男=奴」とは誰なのか?
映画は1943年の欧州東部戦線南端のクリミア半島を敗走するナチス・ドイツ軍の小隊を描きます。したがいアドルフ・ヒットラーを指すのは自明の理ではありますが、元となった出典は・・・

Das da hätt einmal fast die Welt regiert,
Die Völker wurden seiner Herr. Jedoch ich wollte,
dass ihr nicht schon triumphiert:
Der Schoß ist fruchtbar noch aus dem das Kroch.
          Bertolt Brecht: Der aufhaltsame Aufstieg des Arturo Ui, 1941

で示されるように戯曲『アルトゥロ・ウイの興隆 それは抑えることもできる』の一節です。

創出された1941年は、ナチス・ドイツが奇襲でソビエトに侵攻(6/22)、日本では(4/13)の日露中立条約締結、つづいてパール・ハーバーをこれまた奇襲攻撃(12/8)によってとりあえずの宣戦布告をおこない、日独伊三国同盟(1940/9/27)により連動して独伊vs米の双方からの宣戦布告が行われて第二次世界大戦となった年になります。

作品は、もちろん戦後に日本でも何度か上演されているようですが当CEO は未見。

ただし、現在から見ると主題は him ではなく、『生んだ雌犬』は何のメタファー(隠喩)なのかになります。少なくともヒットラーの母親を指してはいない。

したがい同時にブレヒトが描かなった『生ませた雄犬』は何か、も考えなければならない。

仮にMr. Thim と仮定すると「彼」も、また「」も「民主政治」の手続きに乗っ取って選ばれた。

日本のリベラリストは、有権者の数を「彼」に「投票できる層」にまでに成長(衆愚と呼ぶからには増長)させたのは「資本主義」と決めつけるのであろう。(正確には「彼の選挙人に」だが、選挙人は彼に投票しなければならない義務ないし責任はない)

しかし、厳密には「資本主義」や「自由主義」ではなく「富の再分配の不平等」であり、「共産主義」でも「独裁政治」でも同様に存在する。後者では「投票権を持たない層」に過酷なまでに薄くなるだけである。

自由主義」をうたう国においては『雌犬』は「富の再分配の不平等)」であり、『雄犬』が「民主主義のシステム」として見ればどうでだろう。

どっちがどっちでもいいのだが、「共産主義」の国では『雌犬』も『雄犬』も、いるのかいないのかは、だんまりを決め込むほかのリベラリストやコミュニストにお任せして・・・

ポリティカル・コレクトネスからもジェンダー論者からも、当CEOは下品、と批判もしくは無視されるだろうが、これからを担う若い有権者には、W・チャーチルを引き合いに出すまでもなく「この程度のいかがわしさが『民主主義』である(その中で最良の方法でもある)」と勉強あるいは教育をし直した(己も含む)逃れられない定義が必要と考えられる。

コミュニストはいざ知らず、リベラリストの望む安定した政治システムは「論理・倫理・道徳に基づいた(地球規模の、もしかすると宇宙規模の)寡頭政治もしくは独裁政治」となるのであろうが、彼らが理想の指導者の範とするのであろう Mr. C の棺は蓋われ、 Ms. M の選挙は2017年に行われる。

鎖国政治が行われた(を行わされた、か)C国は「富の再分配」が破たんし、D国は原発を廃止しても、自らが主導するE連合の中の隣国のF国から原子力発電の買電をおこない、弱者を無制限に受け入れ、E連合に押し付けもした結末はどうなるのだろう。
(言わずもがなのA国とB国は省略)

そして許容し納得できる民主政治が行え、民主主義が浸透できる社会の規模や範囲はJ国ではどれくらいなのだろう。

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ベルトルト・ブレヒト(1898-1956)
ドイツ(第二)帝国(バイエルン王国)に生まれ東ドイツで没した。

16歳(1914)の詩作が残り、21歳(1919)で劇評や舞台劇の執筆を始める。28歳(1926)ごろから資本論に傾倒しマルクス主義者となる。(以下年齢は西暦下二桁 + 2 )

1933年に著作は発禁・焚書となりナチス政権による第三帝国(1933/1 - 1945/5)のドイツ市民権をはく奪され、欧州を転々としたのちソビエト経由でアメリカに亡命(1941)。

戦後アメリカでは非米査問委員会の審問(いわゆる赤狩り)を受けた直後(1947)に出国。フランス経由での西ドイツ入国は拒否されて、スイスを経てオーストリアに移り国籍を取得(1948)。

同年にチェコ・スロバキア経由で東ベルリンに入り劇作家、詩人として西側からも評価を受ける。

映画に一節を引用された『アルトゥロ・ウイの・・・』はナチスの勃興をアメリカのギャングの抗争に置き変えた舞台演劇。
(映画は西ドイツの小説からの脚色であり、こちらに引用されていたのかもしれない)

彼、マルクス主義者のブレヒトが宗教を認めない共産主義の原理派だったかどうかは分からないが、『雌犬』を処女懐胎の聖母マリヤに掛けた「キリスト教の文化」と読めないこともなさそうだが・・・どんなもんだか。

ちなみに共和党は、キリスト教色の強い保守政党とされています。

なお、同映画のドイツ語版では以下のようになっていました。英語ではわずかに脚韻の名残があるようだが、こちらではしっかりと頭韻、脚韻を踏んでいる。

Die Völker wurden seiner Herr,jedoch
Dass keiner uns zu früh da triumphiert-
Der Schoss ist fruchtbar noch, aus dem das kroch.
                                          Bertolt Brecht

ただ、原文からはかなりの省略があるようだ。

日本語訳は英語訳からであるがドイツ語ではどうなのか(少し違うようだ)、が解ればいずれ校正するつもりです。

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ここで紹介した映画は、技法も含めて従来の「劇的演劇」を否定したブレヒトが主張する「叙事的演劇」に近いと思うのですが一部の戦争映画フリークの間で「劇的演劇」的にしか評価されていないのが残念。

リベラル層の再評価を期待して、『後出しトランプの巻』 全二回 完

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コメント

とても興味深い話に出会えてよかったです。
私の悩みを解決する手掛かりがこのサイトには多くありました。
有り難うございます。

時々はネットサーフィンするのもいいものですね。:)

ご来訪ありがとうございます。

コメントを頂いた記事は国家自治における民主主義下の民主政治の形態の単純化にすぎません。
差し当たりの個人が享受する民主生活のための民主政治は国家の下にある地方自治のほうに重きはあるはずです。

当CEOの関心は国家が深い関心を寄せる沖縄と国家の関心が及ばない自治体が存続できなくなった末の合併により生じた閉塞化が進む地域の民主主義の在り様です。

いずれにおいても、そこに「住む」人間、そこから離れて「関心のある」人間、「ない」人間、それぞれの「知」「情」「理」の在り様にこそ関心があります。

公にされる「知」は偏り「情」は浮いて「理」は硬直している世の中ですね。

なお、本業の KINEMA AIRLINES へのご搭乗もお待ちしております。


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