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2017年3月18日 (土)

キネマ航空CEO そこのあなた、MRJ を買ってみませんか ? の巻

航空機を買うのは航空会社ばかりではなくリース会社だって買うのです。買う方も大変だけど売る方はもっと大変なんですよ。

新規参入の三菱航空機MAC)は最大のライバルと目しているエンブラエルが抱えたレガシー製品のラインアップ・リニューアルの隙間を狙って開発を進めています。

リージョナル・ジェットという言葉に対する発想の結果は、いずれに吉と出るか凶と出るか・・・

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2016 年に廃止あるいは緩和されるはずだった希望的観測が外れてしまい、『スコープ・クローズ Scope Clause (範囲条項)』と呼ばれる協定が、アメリカの大手航空会社と所属するパイロット組合との間で再度で結ばれました。

『スコープ・クローズ』の目的は、大手航空会社のパイロット組合に所属しているパイロットが従事している業務への安全性の確保ですが、本質は航空会社が大型航空機を所有する LCC などのリージョナル(地方)航空会社へ運行を委託することで、組合員の職域の縮小や減給のスパイラルに陥る機会を予防することにあります。(大手と言えども組合とことを構えるのは安全性の企業イメージからも得策ではないようです)

このため大手航空会社や系列会社が運行する航空機の乗客数や機体の大きさを制限する条項を含む協定が結ばれました。

合意された概要は、シート数 76 席最大離陸重量 86,000 lb39 t)以下、となっています。

継続期間や条項の詳細は大手航空会社によって差はあるようですが、詳細は こちら で。

当然のことながら、佳境に入っている競合各社のリージョナル・ジェット・ライナーの開発と売り込みには影響が出てきます。

もちろん、MRJ-90 にも影響が及びます。三菱航空機MAC)はデリバリーを遅らせて米国の非関税障壁(?)に対抗する 600kg の軽量化を図っていると推測されます。

外人部隊を投入しながら始めた主な設計変更は電気配線(銅線)の見直しのようです。

MAC 社長のブリーフィングではかなり初歩的な設計上の問題のようでした。電線は通し方を変えて短くし、元になる細い銅線の直径をさらに細くしたり、撚線から一本抜くだけでもかなり軽くなります。

銅の密度は 8.92 g/cm3 で、鉄(同 7.87 g/cm3 )より重いんですよ。ついでに純アルミは 2.70 g/cm3 です。ざっと一辺 40.7 cm の立方体相当の銅をダイエットすればいいのですが電線だけでどうだろう ? か。
別途装備品にもティア1(総括仕入先)を通して減量要求が広がっているのだろうな。

もう一方のシート数の制限は運行会社のオプション(ファースト・クラス・シートを増やすとか、シート間隔を広げるとかの)選択の範疇に入り、製造会社が直接に決めることではありません。

しかし、先行して開発した機体のサイズと運行会社のニーズとの適合性では、製造会社は別機種の開発しか打つ手がありません。問題はチーズもといニーズ・パイのボリュームと切り分けた取り分です。

エンブラエルE175-E2 は今のところ仕様上では落伍したようですが協定の見直しを視野に 2020 年あたりをめどに検討は継続するつもりのようです。開発中断中の MRJ-70 は再開する理屈上の優位性はありそうだが・・・どんなものだか。

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下表は MRJ の売りのひとつである P&Wギヤード・ターボファンGTF)のピュアパワー・エンジンを採用している主要 3 機種を選び、ブラン・ニュー(白紙から始めた新設計)の三菱 MRJ-90、-70 を、既存の機体をブラッシュアップしてエンジンを換装したエアバス A320エンブラエル E190175 と比較してあります。(前回までの単位から馴染みやすい MKS 単位に換算してあります)

Performance_benchmark_geared_turbof

(4)のMOTW がその最大離陸重量で MRJ-90STD) は 600 kg ほど重い。軽自動車 1 台よりちょっと軽いぐらいに相当します。MRJ-70STD) はスコープ・クローズの対象外。

格上のA320neo は脇に置き、E190-E2E175-E2 は対象となります。ただし原型の E190 と E175 も対象となってる。

はっきりと言えば、エンブラエルは北米の市場では『スコープ・クローズ』の土俵をはじめから放棄して(MRJ フリークの心情からは「あきらめ」て)おり、三菱航空機とは異なる経営計画と開発方針で進めています。(本当に「あきらめ」たのかどうか)

このあたりから比較してみよう。

今回は概要から先に展開します。(上にある表をポップアップさせておくことをお勧めします)

(15)で示す MRJ-90STD最大着陸重量MLW)(3)と最大離陸重量MTOW)(4)の比は競合機のエンブラエル E190-E2 の 0.87 に対し 0.96 と 0.09 ポイントほど大きい。 MRJ-70STD E175-E2 でも同様であります。

仮にこの比が 1 なら MTOW で離陸直後にそのまま着陸できる。比が 1 に近い MRJ は初発便から短距離運行を行うコンセプトだろうけど、どこの市場を目指したのだろう。
(初発便 : 燃料給油後に最初に離陸するフライトです・・・当CEO の定義です)

MRJ は簡単にいえばベンチマーク機に比べ相対的に重く(適正な設計なら = 頑丈に)できている。ただ、一般的には MLW/MTOW 比はクラスが下がるほど大きくなるようである。

細部の考察に入る前に旅客機を含む輸送機に重要な重量諸元の定義を見ておきましょう。

--------------航空機の主要な重量------------

(1)運航重量Operating Weight): 

入手できる航空機の資料から空虚重量Empty Weight)が消えているようです。その代わりになるのがこの値です。

運行重量
  = 離陸重量
-(乗客とその手荷物 + 乗客への提供品 + 貨物)の重量-(搭載燃料・滑油・作動油)の重量
  = 空虚重量 + (排出不能の燃料・滑油・作動油 + 緊急時対応等で常備の運航装備品 + 乗務員とその手荷物)の重量

軍用機の場合は重量と訳すらしい。式中で引くものでは乗客ではなく搭乗員、貨物ではなく爆弾、ミサイル、弾薬、(チャフやデコイも含まれるのかなー ? )などの消耗品といいかえることになる(閑話休題)

基準になる離陸重量を最大の MTOWMax. Take-off Weight)(4)とした場合の運行重量が 最大運行重量 MOW Max. Operating Weight)となる。ただし MOTW は滑走路長、気温、空港の高度などで変わりカタログ上の MOW は変わらないが運行上の MOW は連動して変えざるを得ない。

ここで飯の種の乗客や貨物に関係する重量と航続距離に直接影響する燃料重量とのトレード・オフ(どちらかを減らしいっぽうを増やすことだが大抵は乗客か貨物を減らすこと)になる。これには次の無燃料重量が関係してくる。

(2)無燃料重量Zero-fuel Weight):

ざっくり定義すると、(エンジン始動前の) 離陸重量 - 主翼内の燃料重量 となる。

航空機の構造は左右の主翼の中を通る数本の主桁と呼ばれる揚力を受け持つ強度部材が(特に旅客機では)胴体横にふくらむバルジの中にある頑丈な籠型の構造物に取り付けられている。この結合部分を翼根と呼びます。

もちろん胴体もこの籠型構造物に結合されている。

飛行中の航空機にかかる「主翼」に生じる「上向きの揚力」と「胴体」に働く「下向きの重量」は、翼根を介してつり合っている。

エンジン搭載のレイアウトではMRJ などの小型機以上になるとエンジンはポッド(覆い)に包まれてパイロン(支柱)に吊られて主翼の主桁に取り付けられます。これが錘となって揚力による主翼の撓み(曲げと捩じり)を押さえています。

-余談ながら、
加えて、レシプロ機では主翼に取り付けられていた主脚も胴体のバルジ内の構造物に取り付けられることになりました。着陸時の衝撃を主翼で分担しないようにして軽量化された撓み翼にするためです。

-また余談ながら、
これがデ・ハビランド コメット DH.106 のようなエンジンの胴体横の翼内埋め込み、その外側の主翼に主脚がある形式が輸送機で主流になれなかった理由です。

-またまた余談ながら、
こうしたエンジンや主脚のレイアウトの限界では、一クラス下のビジネス・ジェットではデファクト・スタンダードとなったリヤ・マウンテッド・エンジンのダグラス DC90-10 (全長31.82m 90人)をストレッチでマグダネル・ダグラス MD90 (46.50m 172人)にまで引き伸ばすと「なんだかなー」となるようで最終型 MD95 の構想はボーイング 717-200 (37.81m 117人)に引き継がれシュリンクされて生産の終焉を迎えました。
(閑話休題)


さて、ほとんどの燃料は主翼の桁(スパー)の間に設けられた燃料タンクに搭載されており、主翼を上に曲げようとする揚力は(エンジンを含む)主翼の重さと燃料の重さで減殺されて翼根に伝わる。 しかし飛行時間と共に燃料は消費されて主翼側の重さは軽くなる。

双発機では四発機に比べ片発停止時の推力バランスの崩れを抑えるため翼根側へ寄せており主翼内の燃料の影響がさらに大きくなります。

いっぽうの胴体側の重量は(胴体内燃料タンクがなければ)変化しない。主翼の曲げを打ち消していた翼内の燃料重量がなくなると翼根にかかる力(正確には曲げモーメント)が大きくなります。(無くなった燃料の重量分だけ揚力も減少するので言葉ほど単純ではないのだけれど)

限界を超えると、金属疲労が設計寿命より早く進み、さらに、突風に遭遇すると主翼の迎え角が大きく(すなわち揚力が大きく)なって主翼が付け根(翼根)で折れることもある。

このため、飛行前の重量確認では最大離陸重量MTOW)と同時に胴体に載せた重量によって決まる最大無燃料重量MZFW)の制限内にあることを確認しなければならない。

燃料タンクが空になる事故は、当キネマ航空 009便 で上映中の『フライト 236 "Piche, Entre Ciel et Terre"』で取り上げたエアバス330 の「アゾレス・グライダー」や『フリーフォール "FLIGHT 174"』 のボーイング767 で発生した「ギムリー・グライダー」に当たります。どちらも胴体内にも燃料タンクがある機体でした。いずれも実話がベースです。もちろん MZFW をオーバーしてはいませんでした。

(3)最大着陸重量MLW

基本は、主脚などの降着装置や翼根の構造が耐えられる衝撃荷重係数によって決まる機体の重量。

もう一つは、滑走時の制動能力、着陸や復航時の操縦性が保証できる運用上の機体重量。

最終的には滑走路長や標高、気温など空港の諸条件によって決まることになる。

(4)最大離陸重量MTOW

最大乗客重量(持ち込み荷物を含む) + 運行に必要な燃料や食事等の提供品の最大重量 + 所定の装備品重量 + 乗務員重量(持ち込み荷物を含む) + 機体空虚重量

もちろん最終的には滑走路長や標高、気温など空港の諸条件によって決まる。

MLW より大きいのは滑走路の一点に向かい収束させる着陸時に比べ、余裕のある旋回半径で加速と上昇ができる操縦性ですむからと考えられる。したがい、構造上は MOTW より大きい MLW で設計された機体も存在する。

(5)最大乗客数Mono-class Passengers

輸送機、特に旅客機においては持ち込み荷物を含めてペイ・ロード(有償重量)だがこの数字が機体の格(Class)を決めるといっていい。

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さて機種名称(記号)の構成は、一般的に最大乗客数と航続距離の組合せで示されます。

最大乗客数を増減するためには基準機種の胴体のストレッチ(延長)やシュリンク(短縮)で客室長の変更を伴うので機種の記号を変える。例) A318 - A319 - A320(基準機種) - A321A320 ファミリーE170 - E175 - E190 - E195E ジェット・ファミリーなど。

増設タンクの仕様等の変更は航続距離を示す記号を付ける。例) -STD (Standard Range 標準型)、 -ER (Extended Range 拡張型)、- LR (Long Range 長距離型)、- AR (Advanced Range 延長強化型)など。MRJ には -ER-LR がある。

A320neo シリーズや E2 シリーズでは航続距離の仕様を示す資料がないため、表では STD と判断して現行機種の(STD)タイプと並べている。

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ではもう一度、MLW/MTOW を並べなおすと、エアバスエンブラエル( )内は現行エンジン仕様、MRJ では STD(ER/LR)を示す。

A320neo E190-E2 E170-E2 MRJ-90STD MJR-70STD
0.850.85 0.870.90 0.890.91 0.960.93/0.88 0.980.93/0.90

MRJSTD タイプを直接のライバルとするエンブラエル-E2STD)は、現行エンジン仕様に対して 0.03 ないし 0.02 ポイントを小さくなっている。

直接 MRJ と比べると 0.09ポイント小さくしている。E2 と同じ値になるのは MRJ-90ER  MRJ-70LR だが(もちろん『スコープ・クローズ』の MTOW 制限には適合しません)、まだ 0.01 ポイント小さい。(具体的には航続距離はエンブラエルの方が長い)

そこで MTOW  を最大(モノクラス)乗客数で割ってみる(8)。この数字が乗客の払うチケット代金となり航空会社が存続を続ける回転資金の源となる。

エンブラエル E190-E2  の 493 kg/人に対しMRJ-90STD は 430 kg/人となる。(以下 STD 等の表示なき場合は MRJ-90STD

これ(8)を巡航飛行時間(7)で割って乗客 1 人を 1 時間 とばす(9)には E190-E2 の 78.8 kg/人・時間 に対し MRJ-90STD は 167.5 kg/人・時間 となります。で・・・この差は航続距離の差ですが、主たる要因は MTOW を構成する乗客数と搭載燃料の差であります。

巡航飛行時間(7)は、各機種を問わず巡航速度は同列の M 0.78 として、巡航高度 40,000 ft (12,000m) の音速 295 m/s (1,062km/h)より算出した速度で標準巡航距離(6)を割った値。

では乗客数が近い E175-E2 はというと 110.6 kg/人・時間 となります。差は少し詰まったとはいえますが、MRJ-90STD との差は歴然です。もっと言えば機体重量の絡んだ数値は小型機になるほど不利になる原則に沿っています。

MRJ-90E190-E2 の航続距離の比は 1: 2.44、MRJ-70E175-E2 では 1 : 2.02 であります。

単純には MRJSTD) は -E2 の飛行時間の間に必要なアイドルタイム(後述)を無視すればざっと2~2.4倍の乗客の回転が見込める・・・とはならない。

乗客の回転では -E2 だって同じ飛行距離で着陸すればいいのであります。その上、燃料の補給回数は MRJ-90STD の半分でいい。・・・しかし、

ここで最初の MLW/MTOW の比の問題に返ります。この比が小さい -E2 は初発便の着陸空港が MRJ のそれより遠くなければ機体重量が MLW最大着陸重量)以下にならない。

したがい、-E2 の初発便は(特に日本の場合、新幹線との競合の影響が小さい)遠距離の空港に飛び、以降は自由に空港を選ぶホッピング・オペレーション(蛙飛び運行)を行うことができ、MRJ-90STD より多い無給油運行回数で乗客の回転が可能となる運用の柔軟性が期待できる。

そう上手くはいかないかもしれないが、初発便が常に満席の MTOW で離陸するわけでもないだろうから、次の給油空港のスケジュールに合わせて燃料搭載量を調整して無給油運行をおこなえばよい。

三菱航空機は標準仕様(STD)のほかに燃料タンクの容量を増やした航続距離延長型(ER)、長距離型(LR)も公表しておりシリーズでカバーしているとはいえる。しかし、最大乗客数の差は変わらない。

エアバスエンブラエルGTF に換装するにあたって MLW/MTOW を変えずに航続距離を拡大しており、明らかに三菱航空機とは異なる設計思想があることは間違いない。

エンブラエルは現行エンジンの E1xx の航続距離延長仕様を E1xx-E2STD として設定しているようだ。( MLW/MTOW 比はクラスの限界に近く見えるが、延長型は設定していると考えられる)

当然ながら両社の設計意図はエンジンのためだけで決めたのではない。もちろんエコロジーやエコノミーの ECO のためだけでもない。航空会社に使われる、ひいては売れる機体を作るためであります。

これまでに分かったことは、MRJ-90 のクラス上となる A320neoMRJ フリークがほぼ対等とする若干上位の機種 E190-E2 と下位機種となる E175-E2MRJ-70 とはほぼ同位)も標準仕様として原型機に対して航続距離の増加を与えています。

まず機体のコンセプトまたは構想を整理してまとめてみます。

MTOW は満席の乗客と最長航続距離にある空港までの飛行となる航空会社にとっては究極の(仮の)理想(着陸時の余裕燃料は 0 の極限の)運行重量と言えます。

航空会社が試算する航空券の価格は MOTW をベースに、乗客単価が決められて燃料などの変動費の支払いや、広義の固定費となる機体購入費や定期メインテナンス費などの金利等々を含む機材費用など負債の返済、従業員の給与に回り、最後の残りが航空ビジネスによる利潤の元となる指標になります。

機体購入費では新規機体開発メーカーには機体の重量に開発費の上乗せがあり、既存の機体を改良するメーカーは、より有利となる。

加えて小型機の機体価格が機体重量に比例して直線的に安くなることはないし、公称価格で買うこともない。同じ仕様でも購入価格はディール(交渉)によって変わる。

小型機ビジネスは作る方も運行する方も甘くないようです。

で、乗客が購入する航空券の価格(乗客単価)は各航空会社の予測や実績による決算期間の平均搭乗率で割られて高くなります。(空港使用料や離着陸料などの経費は航空券に上乗せとして取り合えず省略。 競争相手との値引き競争に対抗する事前上乗せ分も必要でしょうがこれも省略)

さて話を戻して、

(8)の一人運ぶための重さは工学的には単純で、小型機ほど重くなる。
小型機の場合は(9)で示す乗客一人を一時間飛行させるための重量ではさらに顕著になる。

ただし機種間で(8)を比較するには飛行時間が違うことを考えなければならない。
(10)は A-320neo の飛行時間を 1 とした比較機の比である。MRJ-90STDA320neo の 3 倍となる。

したがい MRJ-90STD では同じ時間に 3 倍の乗客を運ぶことができるので A320neo の 1 フライト 7.8 時間 の 195 人に対して MRJ-90STD では 3 フライトで 280 人の乗客が航空会社の経営を分担することになる。

もちろん、現実には乗客や貨物の入替、清掃などの時間が必要であり、そんなにうまくは回らないし常に満席でもないだろうが、差が詰まることは間違いない。LCC はいかにリージョナル・ジェット・ライナーでこれを活用するかにかかっている。

その一方では繰り返される離陸上昇区間の大きな燃料消費などの変動費はかさむことになる。

この表で目立つところは E190-E2E175-E2一人当たりの最大離陸重量(4)が  A320MRJ-90STD-70STD と比べると異様に大きくなっています。

特に E190-E2E190 で新旧として比べるとさらにはっきりします。

ところがマン・アワー当りの最大離陸重量(9)ではそれほど目立たない。

その理由は、エンブレアは機種の更新に当たって GTF を採用すると同時に航続距離を大幅に延ばして標準仕様としたようです。

言い換えれば燃料搭載量を増やして標準仕様としたことになります。

MRJ でも航続距離を伸ばした ER/LR 仕様がある、とはいっても最大乗客数は少ない。

ここから推測されるエンブレアの戦略はすでにお判りでしょう。

当CEOの考察ではエンブレアは(特に海外市場の)ユーザーの意向を採用しており燃費の改善は実燃費ではなく離着陸を繰り返す場合の運用上の利便性に振り向けたと考えられます。

エンブラエル三菱が開発を遅らせた『スコープ・クローズ』適合機の MRJ-70 に対抗するには E175-E2 の改造では不可能なことで次の見直し機会となる 2020 年までの時間に賭けました。

三菱が仕掛けた格下の新規参入機である MRJ90 に対しては航続距離、言い換えれば一給油で行う運行時間の延長で シート数の多い E190-E2 を計画してこれまでの実績を梃子にして『スコープ・クローズ』の対象外での競争で対抗しています。

最高速度や巡航速度は横並びで離陸上昇と下降着陸を繰り返すリージョナル・ジェットライナーにとっては巡航燃費のファクターは別の意味で利用できると考えているようです。

さらに言えばエアバスA318 で中型機から下りてこようとしていたが、今のところ成功していない小型機と中型機の隙間でボンバルディアが手掛けているクラスを狙っているとも言えます。

いずれにせよ GTF エンジンの応用には明らかに彼我に大きな差があります。いずれに吉と出るか凶と出るかの時間が今も経過していきます。

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なお、 MZFW/MTOW の比(14)(最大無燃料重量/最大離陸重量)も小型になるほど大きくなるようですが、MLW/MTOW の比(15)に対して一律で約 0.04 乃至 0.05 ポイントほどの差で小さくなるようです。
-E2 については MOWMZFL も公表されていないようですので現行エンジン機種の数値です)

MRJSTDタイプもこの値の 0.05 ポイント差に準じています(ERLR タイプも同様です)。

MOW/MTOW の比(13)(最大運行重量/最大離陸重量)の傾向は資料が少ないため明確ではありません。

以上は公表された数値から出てくる工学的な比較と類推であります。MRJ は適正に設計されておれば頑丈に、しかし相対的には重くできているようです。これが小型化の宿命、かもしれません。

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環境を頭に置いたリージョナル・ジェット・ライナーの企画のモチベーションは将来の原油価格の高騰と新興国(当時は BRICs)の短距離旅客輸送の需要が大きく拡大する海外の予測だった。

しかし、先に挙げた需要の大半を占める B も R も C もベンチマーク用に買ってくれるかもしれないが自前の航空機の導入を計ることは間違いない。

航空機ファンとして MRJ の成功を祈りたいが 20 世紀末に立てた予測も 20 年経っている。少なくとも二酸化炭素削減のエコロジーは原油価格のエコノミーと結びついていた。

経済産業省が丸投げした具体化事業を三菱航空機が民間企業として筋道をきちんと整理する時代が近づいてきている、とは言える。

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