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2017年7月11日 (火)

キネマ航空CEO GTF はターボ・ファン・ジェットかダクテッド・ターボ・プロップか、を考えるの巻(その 2 )「プロペラで出せる最大速度の推定とその検証」

公開後の校閲、校正中です。ご意見をお寄せください。 キネマ航空CEO

ほんとにプロペラの先端が音速を超えてはいけないの?」について考える、の巻

プロペラで出せる最高速度、についての理論的な推測には次のようなものがあります。

『     プロペラの付け根から r の距離にある翼素に入ってくる空気の合成風速 q は、
q = √(V 2 + Ω2r 2) で与えられる。

     Ωは角速度で、Ω= 2πn (rad/s)、 n (1/s)は毎秒回転数。N (rpm)の毎分回転数を使えば、
Ω= πN/30 (rad/s=1/s)・・・q (m/s)、r (m)。 ・・・小文字の薄字は当CEO の補足を示す個所

     したがい、同一進行速度 V に対して qr = R = (D/2)、すなわちプロペラの翼端(tip)で最大になる。

     そして V が大きくなると翼端の合成風速 q も大きくなり、qV より先に音速に近づき、 空気の圧縮性の影響で揚力は小さくなって抵抗は増して揚抗比 L/D は小さくなる。
     したがって推力も小さくなることが想像できよう。

     つぎにプロペラ機の達しうる限界の速度 V を求めてみる。いろいろなプロペラの実験結果から V/nD = 2.6 で効率は最大になり、効率ηは 0.85 程度の値となることが得られた。

     つぎに先端速度(tip speed)を音速 340m/s の 0.9 倍と考えπnD = 340 x 0.9 ≒ 300m/s とすると、V = 2.6 x nD = 2.6 x (300/π) = 250m/s = 900km/h となる。

     ゆえにプロペラ機の達しうる最大の速度は、おおよそ900km/hである。     

以上は、「航空工学概論」田中幸正 地人書館 新訂2版 (1974) より。 同書の注記によると「プロペラ設計工作法」佐貫亦男 富士出版 (1934) からの引用のようだ・・・けど・・・

後年の佐貫亦男氏と比べると歯切れがわるい。前段で説明したせっかくの合成風速 q の式が使われていない。というより使いようがないのだが。

さて、最速のプロペラ機のタイトルはソビエトのツポレフ Tu-114 クリート で 1960 年 4 月に5000km の周回コースを高度 8000m で平均時速 870km/h の記録が現在も保持されている。

Kuznetsov_mk12左表は同機と同じ クズネツォフ NK-12 をベースにしたターボプロップ・エンジンを採用した代表的機種のプロペラと性能の一部を並べています。

数値では Tu-95 爆撃機のほうが高速が出るようですがウェブ上にはもっと低い値もあり、さらには速度(高度を含む)に併記されたマッハ数との整合性がないようです。

まず速度は対地速度なのか、対気速度なのか・・・など不明な点が多い。

ここでは測定方法が付記された Tu-114 の値を対地速度として採用することにします。

ということで、以下の計算は民間機の公証実験値としている Tu-114 を代表機種としておきます。
参考として Tu-95 も同一条件として( )で示します。

飛行速度をマッハ数に換算するための最高速度測定時の高度 8000m (7620m )における音速は 308.105m/s( 310.128m/s)です。なお海面高度(SL)の音速は 340.294m/s です。

まず、最高時速 V (km/h)を 3600/1000 で割って秒速(m/s)にしてそれぞれの音速で割るとそれぞれの高度におけるマッハ数は 0.785 (0.829)となる。

これらの数値からするとターボプロップ機の最高速度は現在のターボファンを採用したジェットライナーの運行高度より低いものの、ほぼ同等近くにまで到達できていた。

次にその状態のプロペラの先端速度を求めてみる。半径 r = 5.6/2 = 2.8m は共通する。

回転数 n は得られる資料のなかに最大連続Max. continuous回転数があれば迷うことはないのだが、入手できたのは 100%回転数最大許容Max. permissible回転数だった。

ここでは前者を最大連続回転数後者を時間制限のある離陸時許容最大回転数として進めることにします。

100%回転数を使って Ω= 3.14/30 x 800 = 83.78rad/s。Ωr = 234.6m/s。相当する高度のマッハ数に直すと 0.762 (0.756)となる。

最大許容回転数を使うと Ω= 3.14/30 x 1091 = 114.2rad/s。Ωr = 319.7m/s。相当高度のマッハ数に直すと 1.04 (1.03)となる。まあ ≒ マッハ 1 であります。
同じ速度でも海面高度では、0.94 (0.94)になります。プロペラ先端速度をマッハ 1 ととして機速 V を計算するとマッハ 0.34(115.6m/s = 416km/h)となります。もちろんこの速度を出すエネルギーは機体を加速させ高度を得るために使われます。

さらに先端速度をマッハ 1 に保って機体を加速させるにはプロペラのブレードのピッチ角を大きくするのもさることながらエンジンの回転数を速度の二乗に比例する抵抗による負荷で自動的に、あるいは人為的に低下させることになります。

元に戻って、100%出力回転数で最大速度を出している場合のプロペラ先端の合成風速は
q = √(0.7852 + 0.7622)= 1.10、 ( 1.12 )。
この場合の臨界マッハ数 1 に到達するのはプロペラ半径の 80% 辺りとなります。

参考までに、最大許容回転数による最高速度でのプロペラ先端の合成風速は q = √(0.782 + 1.042)= 1.30、( 1.32 )となります。同様に臨界マッハ数になるのはプロペラ半径の 60% 付近となります。

付け加えると、 クズネツォフ NK-12 のプロペラはコントラ・プロペラなので後方のプロペラには上記に用いた前方のプロペラより速い合成風速になりますがこの解析は省略。

Tu-114 の最高速度からの計算ではプロペラの先端速度はマッハ 1 を超える 1.10 だが、何かの数字の丸め誤差範囲とするには微妙なところで、考察としてつぎのケースが考えられる。
  1.使用した資料があやしい。
  2.最高速などの数値にいわゆる「盛り」があった。
  3.運用上ではこの程度の音速超過は可能である。

さて余談ながら、冒頭のプロペラの効率による推測式となった V/nD = 2.6 説からの補足を試みると V/nD = 308/(13.3x5.6)= 4.45 となる。

むしろ最大許容回転数による V/nD = 242/(18.2x5.6)= 2.37 のほうが佐貫説に近い。しかし、先に計算したようにプロペラ半径の 60% 以上で遷音速域となるようではプロペラとしてはさすがに成立しないだろう。

後出しだが佐貫氏の予測は、結果はオーライ、論理的には間違いと言っていいようだ。

なお、プロペラの無次元係数は次式のようにリード角φとして書き直せる。
tanφ= V/2πnD = (1/2π)・(V/nD) と組み合わせると別の視界が開くかもしれないが今後必要が生じたらその時に・・・

-------------------------------------------------

この程度の解析はすでに先人が行っているかもしれないが、今回の結論として、

考察 3.を採用し、プロペラの先端速度はマッハ 1 を10 % 程度超えても、プロペラとして機能するようだ、としておきます。

例えば先端部の翼型(エア・フォイル)の厚さは薄く空気を切り裂くことで揚力ではなくパドル抗力に釣り合う反力による推進機械として機能するなどが考えられる。
ロッキード F-104 は地上では安全のためにサックをつけなければならないほどに尖った前縁の薄い翼厚のカミソリ翼で超音速飛行をしていました。もちろん亜音速では前縁と後縁を折り曲げてキャンバーを付けていました。

この場合、負圧が抑えられて翼型の周りにあり揚力の元となるという循環流(ほんとにあるのかいな)に起因するとされる翼端渦による誘導抵抗も低減できそうだが・・・

工学史としては、グレン・カーチスがライト兄弟の執拗な機体の形状に対するパテント侵害の攻撃を受けて「強力なエンジンがあればテーブルだって空を飛ぶ」と言い放った黎明期の名言が成立する限界にソビエトの技術者が挑んでそれなりの成果を出したようだ。

もちろん、亜音速域ではターボ・プロップと(ダクテッド・)ターボ・ファンの棲み分けがなされるのだが・・・

さて、次回はプロペラ(は主脚の長さで決まるし)やファン(だってダクトの中だもの)が、限られた直径で吸収できる仕事を最大にするには、のこころだー!

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