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2017年7月19日 (水)

キネマ航空CEO GTF はターボ・ファン・ジェットかダクテッド・ターボ・プロップか、を考えるの巻(その 3 )「プロペラの容量を最大にするには」

または「民間航空機の製造が国力をけん引する時代は終わった ?!」 の巻

(承前)プロペラやファンなどの回転する空力機械の直径は装着する構造物から制限を受ける、というところで終わっていました。

今回は、「限られた直径」 で 「最大の仕事」をさせる には、「最大の効率」を引き出す には、の巻です。

まず、下記の二冊の教科書を組み合わせたほぼ丸写しから・・・
① 「航空工学概論」田中幸正 地人書館 新訂2版 (1974)
② 「飛行機設計論」山名正夫、中口 博  養賢堂 (1968)

プロペラの概要設計をするために二つの重要な数式があります。
     スラスト(推力)係数 CT = T/ρn2D4 、T (N:Kgm/s2
     パワー(入力)係数 CP = P/ρn3D5 、P = S (HP)/75 (Kgm2/s3
T 推力、P 入力、n プロペラ回転数、D プロペラ直径、S 入力(吸収)馬力、ρ空気密度

 これらの係数は実験値から計算される無次元数です。計画機に必要なプロペラの寸法あるいはエンジンの出力といった基本的な推進装置の諸元を決定するための検討を類似または相当するする翼型のプロペラでえられた係数を使っておこないます。

     もちろんこれらの係数や式だけではなにもできませんが重要なファクターになります。

     今回必要なのはパワー係数の式なのですがここで少し関連した余談を・・・
     これらの式はプロペラの回転で発生したスラストと、そのために必要だったパワーの実測値から求められます。

     したがい、実際のプロペラ効率式は ηP = T/P = (CT/CP)・(V/nD) となります。
     ηP はプロペラの指標となる (V/nD) の関数であり、先回のプロペラによる最大速度の推算に使った「 V/nD = 2.6ηP = 0.85 の最大値になる」 につながります。

     いっぽう当ブログでたびたび出てきた運動量理論による効率式 η= 2/( 1 + VJ/V1 は理論効率とよばれてその最大値はη= 1です。
     
具体的には、キネマ航空CEO 翼素理論と運動量理論の推進効率をグラフにする  (2016.06.22) を参照ください。言うまでもなく η>ηP です。

さて、プロペラが吸収できる(扱える)パワーはパワー係数の式から、 P = CPρn3D5 となる。式中の n はエンジンから、D は機体の構成から、と概念設計で決まってくる。

したがい、パワーを大きくするには CP を大きくすることになる。

  CPAF (activity factor)で表される作動係数に比例する。同様に、 CT CP と並行的に変化しており推進効率ηP AF に大きな差がなければ変化は少ない。AF は(プロペラでは) 80~150 程度が使われる。その AF は次式の積分で求められる。

AF = B・(105/16)0.21.0 (b/D)・(r/R)3d(r/R)
B
翼の枚数、r 直径 D 内の任意の半径、b 任意の半径 r の翼幅

 図はある AF において r が 20% から 100% まで変化する場合の最適になる翼幅 b を模式的に示している。すなわち b = f (r/R) の関数として解いた例。Paddle_shaped_blade_for_propeller_2

比喩では三味線か琵琶のバチ状が適切なのだがパドル型ブレードと呼ぶことにする。

航空機の創成期のライト・フライヤーにも見られ、現在に至るプロペラの変化の一つであり、パワー係数を大きくする必要に迫られる軍用機で理論化されターボ・プロップ機で定着した。

ただし、実用面では製造上あるいは強度上、先端の空力処理等々の理由でパドル(櫂)というより付け根の翼弦を大きくして並行部を長くとったオール(艪)状になっている。

さらに音速の影響を避けるためかプロップ・ファンと呼ぶブレードの先端に後退角を付けて尖らせた三角翼状になりつつある。

この形状は黎明期のブレリオなどのプロペラでも見られる。もちろん性能もあるのだろうがこちらは美的感覚から発生したのだろう。

より高速を狙うプロップ・ファンはブレード全体を回転方向と逆にさらに大きな後退角を付けて翼弦長を増やす(ブレード面積を稼ぐ)スキュードタイプと呼ばれブレード中央部の翼弦を大きく、ブレード枚数は 4枚より数を増している。

このタイプでは四発機の エアバス A400M では直径 5.3m の 8 翅で両翼の回転方向を変えている。巡航速度は最高速度と同じ 781km/h (9000mでM 0.71 に相当)を出せる。

同じく四発機の アントノフ AH-70 では直径 4.5m の 8 翅 X 6 翅 で構成されたコントラ・プロペラで最高速度は 780km/h で 750km/hの巡航ができるようだ。 (どちらも高度不明)

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本題に戻るとパドル・タイプのブレードはターボファン・ジェットのファンにも関係する。下はパドル・タイプのファン・ブレードの変化であります。画像上の左クリックで拡大します。

P&W JT-9
(1966)
GE Genx
(2006)
Jt9d

Jt9d_cutaway_high
Genx2benginewi


Genx

         JT9D-3A
最大推力    45.8klbf
バイパス比   5:1
ファン直径    92.3in

         GenX-2B         GenX-1B (ref)
        58.5kldf           66.5klbf
       8.6:1              9.6:1
        105in              111in

いずれも ボーイング 747 に搭載された代表的なエンジンです。左列は初期型 -100 型に向けて開発された プラットアンドホイットニー JT90D-3A 系、右列は多分最終型となる -8 型に搭載された ゼネラルエレクトリック GenX-2 系の写真とカッタウェイ図です。
蛇足ですが当CEOは写真を眺めるよりテクニカル・ドローイングを味わうのが好きなのであります。

ここで目立つファンの形状や直径の変化が性能の向上に役立ったのは確かですが根本は燃焼、冷却、潤滑、振動、材料、製造等々、要するに関係する技術者の努力の積み重ねの結果が総合されてファンが設計されたのであります。

さて、ヤード・ポンドからのキログラム・メートルへ換算が面倒なので GenX-2B の向上率で比較すると、ファン直径 14% の拡大でバイパス比 69%、最大推力 28% の向上を見ております。

もちろん燃料消費、騒音、環境物質排出量の比較も必要ですが、数値の向上と合わせて現在の基準は満たしているとしてここでは省略します。

注目すべきは四発機の 747-8 に使われた GenX-2B 系列は双発機の ボーイング 787 に搭載された GenX-1B 系列、より下位の仕様であります。(なお、掲示した画像は -1B-2B のどちらなのか分かりません。悪しからず !)

言いかえれば、一時代を作った栄光の 747 は、もはや時代の最上位のエンジンを必要としなくなった。

あるいは上位のエンジンを採用した双発で最大の容量を持たせた機体での運航コストに利点がある時代になった、といえます。

現在の最上位のエンジンと言えば双発の ボーイング 777-200 が採用した GE90-110B であります。ファン直径は 128 in で、GenX-1B 比で 15% も大きい。ちなみにバイパス比 9:1(-6%)、最大推力 115.5klbf(74%)であります。

747 の傾向と同様に、四発機の エアバス A380 では、例えば ロールスロイス Trent 970 は、ファン直径 116in で GE90-110B 比では -9%、バイパス比 8.7:1(-3%)、最大推力 84.2klbf(-27%)と 1 ランク下であります。

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強いて言えば、エンジンの出力(推力)が小さければ騒音レベルも小さくなる。また、騒音源が二倍になると騒音レベルも二倍になる、というわけではない。したがい、四発機にメリットがないわけではない、とも言えます。

いっぽうでは、亜音速上限でほぼ同じ速度で飛ぶ四発機の乗客数から始まる機体サイズで積算される運航重量のベースは双発機のそれより大きくなる。(もちろん機体の前面投影面積や全表面面積に比例する抵抗の絶対値も大きくなる)

したがい、四発機の燃料消費は双発機より出力の小さいエンジン一基の消費は小さくても合計では双発機より大きくなることは避けられない。

おまけに搭乗客数が増えれば持ち込み荷物も燃料も増える。もちろん実売座席価格で決まるのだが、通常は乗客が少ない場合にある損益均衡点が乗客が少ない場合に加えて多すぎる場合の 2 点がありそうな気もしてくる。

当CEO としては ANA は原価償却費を抑えるイニシャルコストの買いたたきで A380 を 3 機導入すると信じたい。株は持ってないけどね。    (閑話休題)

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こうした現在のバイパス比競争の延長線上に設計される最上位の、さらに上位となる将来のエンジンを採用して乗客数を増加させる双発のジェット・ライナーが生まれるのかどうかの興味があります。

また現在の最上位のエンジンでパッセンジャー数の更なる記録を目指す四発機の企画があらわれるのか、こちらは疑問がありながらも興味はのこる。

少なくとも「より早く、より遠く、より多く」を目指した航空機は、単純で軽量な構造で始まったターボジェット・エンジンにファンを追加することで「より早く」が加速されました。

しかし、最高速度をマッハ 0.9 を限界にする民間機では、「より遠く、より多く」が要求する機体サイズと機種選択の主導権を握った航空輸送業界が望む「運行採算性(より安くより安全に)」の両方をバランスさせた性能がほぼ限界に達しており、新規の材料を使いこなすエンジン細部のブラッシュ・アップや構造の複雑化という膨大な開発経費で競う時代になったようだ。
(エンジン・ビジネスは機体数より製造数が二倍、四倍と多くても機体メーカーから買いたたかれる立場となった)

加えて、さらには国家の面子(メンツ)が絡む航空機製造ビジネスでは完成機の性能で技術力を競った国際市場産業のありようは曲がり角に来ており、まず小型民間機のカテゴリーから人口と国土を抱える国の地場産業化による参入が始まる。

日本が 20世紀に描いていた完成機で示す栄光の時代の(と言っても栄光のシンボルは零戦しかなく、アメリカへの恨み節で描かれた)再現の夢は過ぎ去っていくようだ。

ただ、部品産業のオンリー・ワンの夢が残されている。この地味だがリスクのある事業に国の政策が起動するのかどうか・・・

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さて、肝心のダクテッド・ファンのブレードの話がおろそかになった。例えばブレードの枚数が減ったのはなぜか? などは次回のココロだー。

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