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2017年7月の3件の記事

2017年7月22日 (土)

キネマ航空CEO GTF はターボ・ファン・ジェットかダクテッド・ターボ・プロップか、を考えるの巻(その 4 )「プロペラだって奥は深い」

前回のプロペラの話を、② 「飛行機設計論」山名正夫、中口 博 著 から、もう少し・・・

プロペラの容量を導く作動係数 AF は 1 翅 2 翅と数えるブレードの数 B に比例していた。 1 翅のブレードで構成される航空機用プロペラはまずない。(自然界ではオートローテーションするカエデやモミジの種子がある・・・秋の林でご覧あれ。当CEO の前振り)

推進効率は同一翼型を使った  2 翅と 3 翅のプロペラの間ではほとんど差がない。4 翅と 6 翅では 2 翅のプロペラよりもそれぞれ 1~2%、3~4% 低くなる。

(当CEOの閑話開題)     日本では 2000馬力の ハ-43 に 6 翅プロペラを採用した海軍航空技術廠が主導した前翼型の震電(1945)がある。
 日本のウィキペディアでは執筆者が注記でおよそ二億年前に現れた前脚には小、後脚には大の幕翼を持った爬虫類シャロヴィプテリクスまで持ち出して震電の形態的な合理性を援護するなどで名機扱いであります。同じWEBのプラットフォームでもお国柄は出ますね。贔屓の引き倒しだけど。もちろん自然界の名機は自然淘汰されたようです。

     さて、震電は5 翅で計画したのだが冶具の手配ができず 3 翅の冶具を改造して間に合わせた、と何かで読んだ記憶がある。この時代の 2000馬力では 4 翅プロペラで十分だったようだが効率の低下などは考えなかったのかな。前出のウィキでは翼弦長を広げた 4 翅のプロペラに換装する計画があったそうだ。

     イギリスでは 4 翅プロペラで対応していた2000馬力の ロールス・ロイス マーリン に変えて2300馬力の グリフォン を導入したときに 5 翅のプロペラを装備した機体があった。
     簡単に製作できる 6 翅プロペラではなく 5 翅を採用したのは効率の低下をあいだを取った 2~3% に抑える意図があったのか、単に重量低減を図ったのか・・・

     後期から末期にかけてのスピットファイア/シーファイアで実験されたり採用されたりしたが最終的にはトルク反力を打ち消す前後 3 x 3 翅のコントラ・プロペラで最終量産型となった。

     トルク反力の増加に加えて外方引込式で間隔の狭い主輪とテール・ドラッガーによる地上で取り扱いの弊害もあったようだが、ジェット・エンジンと首輪式への転換の時代の入口までよく引っ張ったものだ。 (閑話休題)

コントラ・プロペラの場合は前後のプロペラに同じパワーを吸収させるため最大効率の付近では後方プロペラのピッチ角を前方より 1~2°大きくする必要がある。
     これは前方プロペラで加速された後流に合わせて後方のプロペラのピッチを大きくするという理屈と考えられる。
     いっぽうでは
効率が問われるプロペラの進行速度/後流速度の比 0~1 の間の任意の範囲の効率をふくらませて全体効率のかさ上げを図るために後方プロペラのピッチ角を(相対的にだろうが)小さくする場合もあるようだ。

     もちろんどちらの場合も前後のプロペラには可変ピッチが採用されるのだろう。   (以上当CEO 注記)

通常のプロペラとのパワー吸収能力の比較では最大効率付近ではほとんど差がない。しかし v/nD が小さいところでは双回転プロペラのほうが大きく、4 翅と 6 翅 ( 2 x 2 翅 、3 x 3 翅 だろう。当CEO注記) それぞれ 5~17%、10~27% 程度である。。

通常のプロペラとコントラ・プロペラとで一定のピッチ角についてプロペラ効率 ηP を比較するとコントラ・プロペラのほうが 0~6% 程度高く、その差はピッチ角が大きいほど(進行速度が速いほど? 当CEO 注記)大きくなる。

この辺りまでは第二次世界大戦の軍用機を眺める場合の基礎知識としてお役立てください。

当CEO の興味はプロペラで最も気になるのは先端速度と音速との関係です。

正確な意味は「速さ」ではなく、ベルヌーイの定理でもクッタ・ジューコフスキーの揚力や抵抗の式でも無視している「空気の圧縮性」の影響です。つまり、超音速機の主翼と同じ現象です。

同じ教科書で示された厚翼(クラーク Y )と大雑把には先端が鋭い薄翼(NACA 1 系)のグラフを読み比べてみます。

横軸は共通のプロペラ先端の速度を M (マッハ)、
縦軸はパワー係数の比 CP/(CP)M=0 とプロペラ効率の比 ηP/(ηP)M=0
の二種類のグラフです。
なお、縦軸の X/(X )M=0M = 0 時の、ではなく、空気の圧縮性がほとんどない低速での(X)で示すパワー係数またはプロペラ効率をそれぞれの値を基準とした比、と理解してください。推進効率のグラフで使った速度比ではありません。

まず、厚翼のクラークY 型で翼厚比(h/b.7R = 0.092 のグラフでは、容量係数比は M = 0.5 までは 1.0 ですが、ここより放物線状に増加を始めて M = 0.85 でデータはおわり 1.95~1.21 を示しています。

またプロペラ効率比では M = 0.65 辺りまで 1.0 ですがここより放物線状に下降を始めて M = 0.88 辺りでデータは切れて 0.95~0.83 を示しています。

次に、NACA 1 系 では翼厚比が二種類あげられていますが薄いほうの(h/b.7R = 0.026 のデータでは、容量係数比は M = 0.8 までは 1.0 ですがここより放物線状に増加を始めて M = 1.18 辺りでデータはおわり 1.25~1.18 を示しています。

またプロペラ効率比では M = 0.85 辺りまで 1.0 ですがここより M = 0.9 で 1.2 のピークを示して下降を始め M = 1.18 データは切れて 0.95~0.83 を示しています。

ということで、翼型を選べばプロペラの先端速度が音速を超えてもマッハ 1.2 辺りまではエンジンの出力さえあれば機能する、という先々回の、
キネマ航空CEO GTF はターボ・ファン・ジェットかダクテッド・ターボ・プロップか、を考えるの巻(その 2 )「プロペラで出せる最大速度の推定とその検証」
Tu-114Tu-95 のスペックを使った計算結果からの推測は正しいと言えます。

ところで Tu-95 が初飛行した 1956 年のほうがこの教科書の発行年の 1968 年より 早い。

とはいえ教科書のデータの出所はアメリカのようだ。しかし、アメリカはターボ・ジェットによる亜音速の大型戦略爆撃機(B-47 初飛行 1947 年、B-52 同 1952 年)の開発に専念したらしい。

米ソどちらも後退翼を採用し、と言ってもどちらもナチス・ドイツの基礎研究を有り難く(かどうか)いただいたのだが、亜音速の上限を狙うという機体の構成ではお互いに並べたけれど、航続距離の必要な機種には燃料消費が激しいピュア・ターボ・ジェットの技術では燃料消費の少ないターボ・プロップでしか対抗できなかったという技術競争の結果でありました。

とはいえ、1950年代後半から1960年代の前半にかけてのソビエトも、高速回転大容量の逆転差動機付き減速ギヤボックスの設計製造技術や低回転でのターボ燃焼技術では相応の技術を持っており、アメリカと対抗する戦力(外交プレゼンス)は持てたといっていいのだろう。

ターボ・ファン・ジェットの実用化により性能的には遅れを取ることになったが、B-52 (ターボ・ファン化 1960 年) と同じく、いわゆる枯れた信頼性のある総合技術として現役でありつづけ、偵察機型はときどき日本の周りを巡回だか徘徊だかをしている。

どこかで爆弾をばらまくよりはましかも、ね。

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参考にした「飛行機設計論」のプロペラの章はまだまだ続くがここで一旦終わり。

さあ、次回からファンの(プロペラよりは小さいが)直径は大きく、その回転数は(プロペラよりかなり)速い。

しかしダクトに包まれたデフューザー効果で機速よりはるかに小さい進行速度でファンに進入する空気を処理するターボ・ファンのファンのココロだー。

2017年7月19日 (水)

キネマ航空CEO GTF はターボ・ファン・ジェットかダクテッド・ターボ・プロップか、を考えるの巻(その 3 )「プロペラの容量を最大にするには」

または「民間航空機の製造が国力をけん引する時代は終わった ?!」 の巻

(承前)プロペラやファンなどの回転する空力機械の直径は装着する構造物から制限を受ける、というところで終わっていました。

今回は、「限られた直径」 で 「最大の仕事」をさせる には、「最大の効率」を引き出す には、の巻です。

まず、下記の二冊の教科書を組み合わせたほぼ丸写しから・・・
① 「航空工学概論」田中幸正 地人書館 新訂2版 (1974)
② 「飛行機設計論」山名正夫、中口 博  養賢堂 (1968)

プロペラの概要設計をするために二つの重要な数式があります。
     スラスト(推力)係数 CT = T/ρn2D4 、T (N:Kgm/s2
     パワー(入力)係数 CP = P/ρn3D5 、P = S (HP)/75 (Kgm2/s3
T 推力、P 入力、n プロペラ回転数、D プロペラ直径、S 入力(吸収)馬力、ρ空気密度

 これらの係数は実験値から計算される無次元数です。計画機に必要なプロペラの寸法あるいはエンジンの出力といった基本的な推進装置の諸元を決定するための検討を類似または相当するする翼型のプロペラでえられた係数を使っておこないます。

     もちろんこれらの係数や式だけではなにもできませんが重要なファクターになります。

     今回必要なのはパワー係数の式なのですがここで少し関連した余談を・・・
     これらの式はプロペラの回転で発生したスラストと、そのために必要だったパワーの実測値から求められます。

     したがい、実際のプロペラ効率式は ηP = T/P = (CT/CP)・(V/nD) となります。
     ηP はプロペラの指標となる (V/nD) の関数であり、先回のプロペラによる最大速度の推算に使った「 V/nD = 2.6ηP = 0.85 の最大値になる」 につながります。

     いっぽう当ブログでたびたび出てきた運動量理論による効率式 η= 2/( 1 + VJ/V1 は理論効率とよばれてその最大値はη= 1です。
     
具体的には、キネマ航空CEO 翼素理論と運動量理論の推進効率をグラフにする  (2016.06.22) を参照ください。言うまでもなく η>ηP です。

さて、プロペラが吸収できる(扱える)パワーはパワー係数の式から、 P = CPρn3D5 となる。式中の n はエンジンから、D は機体の構成から、と概念設計で決まってくる。

したがい、パワーを大きくするには CP を大きくすることになる。

  CPAF (activity factor)で表される作動係数に比例する。同様に、 CT CP と並行的に変化しており推進効率ηP AF に大きな差がなければ変化は少ない。AF は(プロペラでは) 80~150 程度が使われる。その AF は次式の積分で求められる。

AF = B・(105/16)0.21.0 (b/D)・(r/R)3d(r/R)
B
翼の枚数、r 直径 D 内の任意の半径、b 任意の半径 r の翼幅

 図はある AF において r が 20% から 100% まで変化する場合の翼幅 b を模式的に示している。Paddle_shaped_blade_for_propeller_2

比喩では三味線か琵琶のバチ状が適切なのだがパドル型ブレードと呼ぶことにする。

航空機の創成期のライト・フライヤーにも見られ、現在に至るプロペラの変化の一つであり、パワー係数を大きくする必要に迫られる軍用機で理論化されターボ・プロップ機で定着した。

ただし、現在では製造上あるいは強度上、先端の空力処理等々の理由でパドル(櫂)というより付け根の翼弦を大きくして並行部を長くとったオール(艪)状になっている。

さらに音速の影響を避けるためかプロップ・ファンと呼ぶブレードの先端に後退角を付けて尖らせた三角翼状になりつつある。

この形状は黎明期のブレリオなどのプロペラでも見られる。もちろん性能もあるのだろうが美的感覚から発生したのだろう。

より高速を狙うプロップ・ファンはブレード全体を回転方向と逆に大きな後退角を付けて翼弦長を増やす(ブレード面積を稼ぐ)スキュードタイプと呼ばれブレード中央部の翼弦を大きく、ブレード枚数は 4枚より数を増している。

このタイプでは四発機の エアバス A400M では直径 5.3m の 8 翅で両翼の回転方向を変えている。巡航速度は最高速度と同じ 781km/h (9000mでM 0.71 に相当)を出せる。

同じく四発機の アントノフ AH-70 では直径 4.5m の 8 翅 X 6 翅 で構成されたコントラ・プロペラで最高速度は 780km/h で 750km/hの巡航ができるようだ。 (どちらも高度不明)

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本題に戻るとパドル・タイプのブレードはターボファン・ジェットのファンにも関係する。下はパドル・タイプのファン・ブレードの変化であります。画像上の左クリックで拡大します。

P&W JT-9
(1966)
GE Genx
(2006)
Jt9d

Jt9d_cutaway_high
Genx2benginewi


Genx

         JT9D-3A
最大推力    45.8klbf
バイパス比   5:1
ファン直径    92.3in

         GenX-2B         GenX-1B (ref)
        58.5kldf           66.5klbf
       8.6:1              9.6:1
        105in              111in

いずれも ボーイング 747 に搭載された代表的なエンジンです。左列は初期型 -100 型に向けて開発された プラットアンドホイットニー JT90D-3A 系、右列は多分最終型となる -8 型に搭載された ゼネラルエレクトリック GenX-2 系の写真とカッタウェイ図です。
蛇足ですが当CEOは写真を眺めるよりテクニカル・ドローイングを味わうのが好きなのであります。

ここで目立つファンの形状や直径の変化が性能の向上に役立ったのは確かですが根本は燃焼、冷却、潤滑、振動、材料、製造等々、要するに関係する技術者の努力の積み重ねの結果が総合されてファンが設計されたのであります。

さて、ヤード・ポンドからのキログラム・メートルへ換算が面倒なので GenX-2B の向上率で比較すると、ファン直径 14% の拡大でバイパス比 69%、最大推力 28% の向上を見ております。

もちろん燃料消費、騒音、環境物質排出量の比較も必要ですが、数値の向上と合わせて現在の基準は満たしているとしてここでは省略します。

注目すべきは四発機の 747-8 に使われた GenX-2B 系列は双発機の ボーイング 787 に搭載された GenX-1B 系列、より下位の仕様であります。(なお、掲示した画像は -1B-2B のどちらなのか分かりません。悪しからず !)

言いかえれば、一時代を作った栄光の 747 は、もはや時代の最上位のエンジンを必要としなくなった。

あるいは上位のエンジンを採用した双発で最大の容量を持たせた機体での運航コストに利点がある時代になった、といえます。

現在の最上位のエンジンと言えば双発の ボーイング 777-200 が採用した GE90-110B であります。ファン直径は 128 in で、GenX-1B 比で 15% も大きい。ちなみにバイパス比 9:1(-6%)、最大推力 115.5klbf(74%)であります。

747 の傾向と同様に、四発機の エアバス A380 では、例えば ロールスロイス Trent 970 は、ファン直径 116in で GE90-110B 比では -9%、バイパス比 8.7:1(-3%)、最大推力 84.2klbf(-27%)と 1 ランク下であります。

強いて言えば、エンジンの出力(推力)が小さければ騒音レベルも小さくなる。また、騒音源が二倍になると騒音レベルも二倍になる、というわけではない。したがい、四発機にメリットがないわけではない、とも言えます。

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こうした現在のバイパス比競争の延長線上に設計される最上位の、さらに上位となる将来のエンジンを採用して乗客数を増加させる双発のジェット・ライナーが生まれるのかどうかの興味があります。

また現在の最上位のエンジンでパッセンジャー数の更なる記録を目指す四発機の企画があらわれるのか、こちらは疑問がありながらも興味はのこる。

少なくとも「より早く、より遠く、より多く」を目指した航空機は、単純で軽量な構造で始まったターボジェット・エンジンにファンを追加することで「より早く」が加速されました。

しかし、最高速度をマッハ 0.9 を限界にする民間機では、「より遠く、より多く」が要求する機体サイズと機種選択の主導権を握った航空輸送業界が望む「運行採算性(より安くより安全に)」の両方をバランスさせた性能がほぼ限界に達しており、新規の材料を使いこなすエンジン細部のブラッシュ・アップや構造の複雑化という膨大な開発経費で競う時代になったようだ。
(エンジン・ビジネスは機体数より製造数が二倍、四倍と多くても機体メーカーから買いたたかれる立場となった)

加えて、さらには国家の面子(メンツ)が絡む航空機製造ビジネスでは完成機の性能で技術力を競った国際市場産業のありようは曲がり角に来ており、まず小型民間機のカテゴリーから人口と国土を抱える国の地場産業化による参入が始まる。

日本が 20世紀に描いていた完成機で示す栄光の時代の(と言っても栄光のシンボルは零戦しかなく、アメリカへの恨み節で描かれた)再現の夢は過ぎ去っていくようだ。

ただ、部品産業のオンリー・ワンの夢が残されている。この地味だがリスクのある事業に国の政策が起動するのかどうか・・・

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さて、肝心のダクテッド・ファンのブレードの話がおろそかになった。例えばブレードの枚数が減ったのはなぜか? などは次回のココロだー。

2017年7月11日 (火)

キネマ航空CEO GTF はターボ・ファン・ジェットかダクテッド・ターボ・プロップか、を考えるの巻(その 2 )「プロペラで出せる最大速度の推定とその検証」

公開後の校閲、校正中です。ご意見をお寄せください。 キネマ航空CEO

ほんとにプロペラの先端が音速を超えてはいけないの?」について考える、の巻

プロペラで出せる最高速度、についての理論的な推測には次のようなものがあります。

『     プロペラの付け根から r の距離にある翼素に入ってくる空気の合成風速 q は、
q = √(V 2 + Ω2r 2) で与えられる。

     Ωは角速度で、Ω= 2πn (rad/s)、 n (1/s)は毎秒回転数。N (rpm)の毎分回転数を使えば、
Ω= πN/30 (rad/s=1/s)・・・q (m/s)、r (m)。 ・・・小文字の薄字は当CEO の補足を示す個所

     したがい、同一進行速度 V に対して qr = R = (D/2)、すなわちプロペラの翼端(tip)で最大になる。

     そして V が大きくなると翼端の合成風速 q も大きくなり、qV より先に音速に近づき、 空気の圧縮性の影響で揚力は小さくなって抵抗は増して揚抗比 L/D は小さくなる。
     したがって推力も小さくなることが想像できよう。

     つぎにプロペラ機の達しうる限界の速度 V を求めてみる。いろいろなプロペラの実験結果から V/nD = 2.6 で効率は最大になり、効率ηは 0.85 程度の値となることが得られた。

     つぎに先端速度(tip speed)を音速 340m/s の 0.9 倍と考えπnD = 340 x 0.9 ≒ 300m/s とすると、V = 2.6 x nD = 2.6 x (300/π) = 250m/s = 900km/h となる。

     ゆえにプロペラ機の達しうる最大の速度は、おおよそ900km/hである。     

以上は、「航空工学概論」田中幸正 地人書館 新訂2版 (1974) より。 同書の注記によると「プロペラ設計工作法」佐貫亦男 富士出版 (1934) からの引用のようだ・・・けど・・・

後年の佐貫亦男氏と比べると歯切れがわるい。前段で説明したせっかくの合成風速 q の式が使われていない。というより使いようがないのだが。

さて、最速のプロペラ機のタイトルはソビエトのツポレフ Tu-114 クリート で 1960 年 4 月に5000km の周回コースを高度 8000m で平均時速 870km/h の記録が現在も保持されている。

Kuznetsov_mk12左表は同機と同じ クズネツォフ NK-12 をベースにしたターボプロップ・エンジンを採用した代表的機種のプロペラと性能の一部を並べています。

数値では Tu-95 爆撃機のほうが高速が出るようですがウェブ上にはもっと低い値もあり、さらには速度(高度を含む)に併記されたマッハ数との整合性がないようです。

まず速度は対地速度なのか、対気速度なのか・・・など不明な点が多い。

ここでは測定方法が付記された Tu-114 の値を対地速度として採用することにします。

ということで、以下の計算は民間機の公証実験値としている Tu-114 を代表機種としておきます。
参考として Tu-95 も同一条件として( )で示します。

飛行速度をマッハ数に換算するための最高速度測定時の高度 8000m (7620m )における音速は 308.105m/s( 310.128m/s)です。なお海面高度(SL)の音速は 340.294m/s です。

まず、最高時速 V (km/h)を 3600/1000 で割って秒速(m/s)にしてそれぞれの音速で割るとそれぞれの高度におけるマッハ数は 0.785 (0.829)となる。

これらの数値からするとターボプロップ機の最高速度は現在のターボファンを採用したジェットライナーの運行高度より低いものの、ほぼ同等近くにまで到達できていた。

次にその状態のプロペラの先端速度を求めてみる。半径 r = 5.6/2 = 2.8m は共通する。

回転数 n は得られる資料のなかに最大連続Max. continuous回転数があれば迷うことはないのだが、入手できたのは 100%回転数最大許容Max. permissible回転数だった。

ここでは前者を最大連続回転数後者を時間制限のある離陸時許容最大回転数として進めることにします。

100%回転数を使って Ω= 3.14/30 x 800 = 83.78rad/s。Ωr = 234.6m/s。相当する高度のマッハ数に直すと 0.762 (0.756)となる。

最大許容回転数を使うと Ω= 3.14/30 x 1091 = 114.2rad/s。Ωr = 319.7m/s。相当高度のマッハ数に直すと 1.04 (1.03)となる。まあ ≒ マッハ 1 であります。
同じ速度でも海面高度では、0.94 (0.94)になります。プロペラ先端速度をマッハ 1 ととして機速 V を計算するとマッハ 0.34(115.6m/s = 416km/h)となります。もちろんこの速度を出すエネルギーは機体を加速させ高度を得るために使われます。

さらに先端速度をマッハ 1 に保って機体を加速させるにはプロペラのブレードのピッチ角を大きくするのもさることながらエンジンの回転数を速度の二乗に比例する抵抗による負荷で自動的に、あるいは人為的に低下させることになります。

元に戻って、100%出力回転数で最大速度を出している場合のプロペラ先端の合成風速は
q = √(0.7852 + 0.7622)= 1.10、 ( 1.12 )。
この場合の臨界マッハ数 1 に到達するのはプロペラ半径の 80% 辺りとなります。

参考までに、最大許容回転数による最高速度でのプロペラ先端の合成風速は q = √(0.782 + 1.042)= 1.30、( 1.32 )となります。同様に臨界マッハ数になるのはプロペラ半径の 60% 付近となります。

付け加えると、 クズネツォフ NK-12 のプロペラはコントラ・プロペラなので後方のプロペラには上記に用いた前方のプロペラより速い合成風速になりますがこの解析は省略。

Tu-114 の最高速度からの計算ではプロペラの先端速度はマッハ 1 を超える 1.10 だが、何かの数字の丸め誤差範囲とするには微妙なところで、考察としてつぎのケースが考えられる。
  1.使用した資料があやしい。
  2.最高速などの数値にいわゆる「盛り」があった。
  3.運用上ではこの程度の音速超過は可能である。

さて余談ながら、冒頭のプロペラの効率による推測式となった V/nD = 2.6 説からの補足を試みると V/nD = 308/(13.3x5.6)= 4.45 となる。

むしろ最大許容回転数による V/nD = 242/(18.2x5.6)= 2.37 のほうが佐貫説に近い。しかし、先に計算したようにプロペラ半径の 60% 以上で遷音速域となるようではプロペラとしてはさすがに成立しないだろう。

後出しだが佐貫亦男氏の予測は結果はオーライ、論理的には間違いと言っていいようだ。

なお、プロペラの無次元係数は次式のようにリード角φとして書き直せる。
tanφ= V/2πnD と組み合わせると別の視界が開くかもしれないが今後必要が生じたらその時に・・・

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この程度の解析はすでに先人がいるかもしれないが、今回の結論として、

考察 3.を採用し、プロペラの先端速度はマッハ 1 を10 % 程度超えてもプロペラとして機能するようだ、としておく。

例えば先端部の翼型(エア・フォイル)の厚さは薄く空気を切り裂くことで揚力ではなくパドル抗力に釣り合う反力による推進機械として機能するなどが考えられる。
ロッキード F-104 は地上では安全のためにサックをつけなければならないほどに尖った前縁の薄い翼厚のカミソリ翼で超音速飛行をしていました。もちろん亜音速では前縁と後縁を折り曲げてキャンバーを付けていました。

この場合、負圧が抑えられて翼型の周りにあり揚力の元となるという循環流(ほんとにあるのかいな)に起因するとされる翼端渦による誘導抵抗も低減できそうだが・・・

工学史としては、グレン・カーチスがライト兄弟の執拗な機体の形状に対するパテント侵害の攻撃を受けて「強力なエンジンがあればテーブルだって空を飛ぶ」と言い放った黎明期の名言が成立する限界にソビエトの技術者が挑んでそれなりの成果を出したようだ。

もちろん、亜音速域ではターボ・プロップと(ダクテッド・)ターボ・ファンの棲み分けがなされるのだが・・・

さて、次回はプロペラ(は主脚の長さで決まるし)やファン(だってダクトの中だもの)が、限られた直径で吸収できる仕事を最大にするには、のこころだー!

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