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2017年12月31日 (日)

キネマ航空CEO GTF はターボ・ファン・ジェットかダクテッド・ターボ・プロップか、を考えるの巻(その 5 の 2 )「ファンだって奥は深いのだ !(その 1) 」

さて、ターボ・ファン・ジェットのファンは、ファンを覆うカウリングの中に仕込まれたデフューザーによる断熱圧縮による流入空気の速度の低下に加えてプロペラの理論解析の結果をファン・ブレードに反映させて発展していった、という論旨を進めていました。

ほかにかまけていた当CEO はまずその復習から。

考察のベースとしたプロペラの推力係数 AF の式 2017.07.19 の記事 では許容推力を大きくするにはブレードの数 B を増やすほかに翼弦長 b を大きくすることでも得られることが示されている。

 プロペラの実験結果からの研究 2017.07.19 の記事 ではブレード翅数が少ないほうがブレード間の相互の流れによる圧力干渉が減少する傾向が当てはまる可能性がある。

 ターボ・ファンにおいては空気の粘性を考慮してもチップの翼弦長を増すことでチップとダクトの隙間を通ってファンの後方(高圧部)から前方(低圧部)に漏れる空気を押さえるシール長さを伸ばす効果で翼端渦を減らせると考えられる。

 すなわち、誘導抵抗の低減には翼弦を狭くして得られるアスペクト比より、ファンの先端(チップ)とダクトの隙間を小さくすることとシール部の長さを大きくすることで翼端渦の発生は抑えられる。

 もちろんシール部に生じる空気の粘性抵抗とのトレード・オフではありますが翼端渦による誘導抵抗と比べればはるかに改善されると考えられる。

 既述 2017.08.6 の記事 のロールス・ロイスの画像の右半分にある幅広翼弦(Wide-chord fan)のブレードであります。この写真からはブレードの翅数は32枚から22枚に減少しています。この画像のキャプションではこれらにより +4% の効率向上があったと書かれています。

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     カウリングのないターボ・プロップのブレード先端の翼端渦による誘導抵抗については、ターボ・ファンを囲む結構な投影面積と奥行きの長さすなわち面積のあるカウリングの摩擦抵抗を含む形状抵抗に加えてファンの翼端とダクトの隙間に発生する粘性抵抗を合わせた比較となる。

    またカウリングの吸音、遮音による静粛性の効果がターボ・プロップからプロップ・ファンへの翼型や翼平面の形状変更で同等の効果が得られるかについては疑問がのこる。これらはカウリング内のダクトのデフューザー効果を含めて別の機会に考えてみる。

 同じ教科書 2017.7.22 の記事  からは通常の単回転プロペラとコントラ(二重反転)・プロペラの比較ではブレード数が多いほどパワー吸収能力は10~27%程度向上する。ただし、最大効率付近から速度比が小さくなると通常の単回転プロペラとの差はなくなる。(以上は単回転プロペラ 3 翅とコントラ・プロペラ 3x3 の 6 翅との比較だが同じプロペラ直径での比較かどうかの明記はない)

 理屈上はファン直径の縮小も考えられるコントラ・ターボ・ファン方式もあるが今のところ実現はしていない。駆動するギヤボックスの純構造的な問題の次に解決することになるファン同士の空力干渉やそれによる振動問題が解決されていないのだろう。

 構造からみればファンの可変ピッチ・ブレード化もある。
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 これらに着目してファン・ブレードのワイド・コード化に先行したのが英国で、先行した計画を統合して開発された ロールス・ロイス RB211 をベースに具現化されていくことになる。

 当初の RB211 は(当時としては高)バイパス比 5 を採用し、前より低高二段の圧縮段(コンプレッサーと駆動するタービンの2セット)からなる二軸と先頭のファンと駆動する最後尾のタービンをつなぐもう一軸の三軸式を採用していた。

 この時点では、高バイパス比化、つまりファン直径の増加によるブレードに掛かる遠心力の処理の問題があったはずである。

 遠心力は次式で表される。 F = mrω2
 F
: 遠心力(N) m : 回転する質量(ブレード)(kg) r : 回転軸から回転部の重心までの長さ(m)。「腕」の長さともいう ω: 回転速度(radian/sec または s-1

 バイパス比を大きくしたことにより r は必然的に大きくなる。材料が同じなら m も同様となる。遠心力は否応なく大きくなる。

 遠心力を受け持つ駆動軸( RB211 では第三の軸)に取り付けるブレードの基部はワイド・コード化で長く(強度を増すことが)できるのではあるが、これはブレード部の材料が同じなら質量 m が大きくなるので鼬(ネズミではなくイタチ)ごっこになる。

 もちろんファンの基本性能はブレードの面積に比例するのでワイド・ブレード化により面積は同じでもブレード数を減らしブレードの剛性を増やすことができ、ミッドスパン・ナスバーと呼ぶ制振補強の環も廃止はできる。 

 一方では、高バイパス比化でファン直径が大きくなった分だけは重くなり「腕」の長さは長くなる。

 ちなみに、二軸式の低圧段駆動タービン軸と同一ファン駆動タービン回転数より三軸式の低圧段タービンの後方にある三軸目のファン駆動タービンの回転数のほうが低い。また各軸の回転方向による相対回転数の関係などは別の機会に。

 それやこれやでロールスロイスは三軸化に加えてファン・ブレード材質の軽量化で一点突破を図る。チタンから炭素繊維への転換でありました。

 新材料は塵、霧、雨、霰、雹などの風食の試験に続く最終段階で行われる必須の項目である鳥の吸い込み(バード・ストライク)試験において、ファン・ブレードが致命的な飛散をしてしまう。(最大出力時にブレード一枚が根元で破損しても破片がカウリングで止められ運航を続けられる出力の確保が要求されている)

 開発費の膨張の結果、ロールスロイスは資金ショートしてしまい国有化の憂き目にあい税金の投入となる。

 いっぽう、この当時の米国の航空業界はボーイング、マクドネル・ダグラス、ロッキードの競争の頂点にありエンジンを採用するのは ロッキード L-1011 トライスター であった。

 米国議会はロッキードに対する梃入れとして資金の供与をおこなう背後支援を可決しロールス・ロイスはこれによって開発の命脈を保てた。

 つまりは国家の、しかも一国ではできない後見が必要な開発費の確保が必要となることを暗示させる。

 エンジン・メーカーは機種やサイズにより部品メーカーを含めたグローバルな買収と開発費を確保し国の保護政策を利用しやすくする合従連衡によって開発・製造の現地合弁メーカーを設立していくことになる。日本の部品メーカーもこの中に組み込まれて行くことになりました。

 高バイパス比、ワイド・コード化、ミッドスパン・ナスバーの廃止によるクリーンなブレード翼面のフロント・ファンの完成は1984年のロールス・ロイス製の RB211-K35E4 によってでした。

 そのブレードは炭素繊維ではなく、チタンによる前後の薄い外皮(翼面)を熱間鍛造で成形し、化学切削(ケミカルミーニング)により 空間を作りその中にさらに薄いチタンのリボンで作られたハニカム構造を包み込んで拡散溶接をする工法でした。

 このハニカム構造は後にウォーレン・ガーターと呼ばれるチタンの桁構造によりさらに軽量化された。

 炭素繊維によるブレードはGEによる GE90 に始まります。これは炭素繊維の前縁にチタンのカバーを接着補強する構造で、風食にはウレタン・コーティングを施しています。

 来年はボンバルディエのエアバス・グループ入り、MRJ のキャンセルの予測、エンブラエルのボーイング傘下入りなどの話と一緒に、次回はブレード前縁のクネクネのお話に入ります。先は長いなー。

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