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2018年4月29日 (日)

キネマ航空CEO 『GTF はターボ・ファン・ジェットかダクテッド・ターボ・プロップか、を考える』 の巻 (その 2)

 ターボファン・エンジンの可能性の復習から始めます。 前回の数式編 を少し整理してみました。

 なお、ターボファン・ジェット・エンジンの存在理由をモーメンタム理論で説明したグラフは上記の数式編に続く グラフ編 にあります。 こちらを必ずご参照ください。

 同グラフはターボ・ファンの効果を効率としてターボ・ジェットの推進効率を基準に η> 1 として示しています。 同時にターボ・ジェットが失った速度は速度比として VTF/VJ < 1 として表しています。

  すなわちターボ・ファンもターボ・ジェットも運動エネルギーが等しい前提です。 ややこしいかもしれませんがエネルギー保存則でご理解いただけると思います。2018.08.25              (キネマ航空 CEO)

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まず基本となる物理量は、下図を参考に、

Elements_of_turbo_fan_jet_propulusi  ・ターボジェット・エンジン(Turbo Jet Engine
   m  : 吸気と排気の流量単位質量 (kg)
   V1 : 吸気速度 (m/s)
   VJ : 排気速度 (m/s) VJ ≧ V1 
 ・ターボファン・ジェット・エンジン(Turbofan Jet Engine
   (q+1)m  : 吸気と排気の流量単位質量 (kg)
   q   : (ファン)バイパス比 (qm : mm = 1 とした質量比を表す無次元数) 
   V1 : 吸気速度 (m/s)
   VTF: 排気速度 (m/s)
  ・・コア・エンジン(Core Engine)             ・・ファン(Fan
   m  : 吸気と排気の流量質量 (kg)        qm  : ファン吸気と排気の流量質量 (kg)
   V1 : 吸気速度 (m/s)                         V1 : ファン吸気速度 (m/s)
   VC : 排気速度 (m/s)                         VF : ファン排気速度 (m/s)

 以上の物理量から運動量理論によるラム圧抵抗、エンジン発生エネルギー、実効エネルギー、機械仕事が求められる。

TURBO-JET TURBO-FAN
CORE FAN
  Ram Pressure Drag  KDJ = (1/2)mV12 KDTF = KDC+KDF = (1/2)(q+1)mV12
  KDC = (1/2)mV12   KDF = (1/2)qmV12
  Propulsion Energy
  by Engine
KJ = (1/2)mVJ2 KTF = (1/2)(q+1)mVTF2 = KC+KF
  KC = (1/2)mVC2
  VC Detail below
  KF = (1/2)qmVF2
  VF Detail below
  Available Propulsion 
  Energy
KJA = KJ-KDJ KTFA = KTF-KDTF
  Mechanical Work WJ = mV1(VJ-V1) WTF = (q+1)mV1(VTF-V1)
= WC+WF
  WC = mV1(VC-V1   WF = qmV1(VF-V1

 ターボファンのコアエンジンは表のターボジェットと同じエネルギーを持つとする。そのエネルギーから k (0≦k≦1) をファンに分割する。
 ただし分割に伴う伝達効率ψ0≦ψ≦1)が発生し実際に分割されるのは (k/ψ)となり、コアエンジンに残るエネルギーは{1-(k/ψ)}となる。したがい、KCKFKJ との比となり

C = (1-k)KJ = (1/2)・{1-(k/ψ)}・m・VJ2 = (1/2)・m・VC2 より VC/VJ = √{1-(k/ψ)} (1)
KF = k・KJ = (1/2)・(k/ψ)・m・VJ2 = (1/2)・q・m・VF2  より     VF/VJ = √{(k/ψ)/q}  (2)
    ψは分割による損失(効率)比

 ターボファン・ジェット・エンジンに求めるものは仕事 WTF の増加割合である。元の式にコアとファンの速度を埋め込むとコア単独での速度でまとめられる。

  WTF = (q+1)・m・V1(VTF-V1) = m・V1 ・ (VC - V1 ) + q・m・V1 ・(VF - V1 )
                  = m・V1 ・[ [ √{1-(k/ψ)}+ q・√{(k/ψ)/q} ]・VJ -(q+1)V1 ] ]
 これより、
 VTF = [ [ √{1- (k/ψ)}+ q・√{(k/ψ)/q}]/(q+1) ]VJ
 分割損失ψ厳密にはファンの回転や進行速度にかかわる翼素理論の効率も含まれるのだが以降の考察にはψ= 1 として運動量理論で話を進めます。
前回の誘導ではψの使い方が異なっていましたが最終的にはψ= 1 としており結果に差はありません。

 VTF = [{√(1-k)+ q・√(k/q) }/(q+1)]・VJ

 分子は 0≦k≦1q≧1 は平方根のため VJ≧VTF となる。VTFkq の関数であるが kq の関数でもある。
  A = {√(1-k)+ q・√(k/q) }/(q+1) と置き dA/dk = 0 と微分して A の極値(最大値)となる k を求めると VC = VF つまりコア・エンジンのジェット・ブラストとファンのモーメンタム・フローの速度が等しい場合となりファンが受け取るエネルギーの割合は k = q/(q+1) なのだが計算過程は省略します。ちなみにコアエンジンに残るエネルギーの割合は 1-k = 1/(q+1) であります(元の式ではk( k/ψ) と置き換える必要があります)

 したがい、ターボファン・ジェットのエネルギー速度 VTF とコア・エンジン単体のジェットブラスト VJ の比は、

 VTF/VJ = 1/√(q+1) (3)

 実際にはファンによる仕事は翼素理論でなければ厳密性を欠くが運動量理論で定性的な考察にとどめます
 機会があれば翼素理論とも組み合わせたい。これまでのプロペラの解析から最高効率を示す速度比は0.8辺りにあるようにコアジェットのブラストの限界速度比1をファンの最適効率速度比(巡行の 0.8 または最高速の 0.9 ?)の辺りに近づける? などで・・・。
 回転数で制御されているエンジンのエネルギーは、ジェットライナーでは差が小さい巡行時と最高速時の速度のおかげでエネルギーのギャップはファンブレードの設計で 吸収できる のではないか、との前提ですが・・・つまり kψの関係の見直しです。運用最高速を超える限界超過速度の余裕は頭打ちとなります。しかし緩降下すれば音速越えも・・・さて、どんなもんだか。

・少し「見える化」を

Vcvfparvj_by_k_rev(1)、(2)式を一つに重ねたグラフ。

(1)式を表す右下がりの VC/VJ はコアエンジンの出力が分割されでジェットブラストが 0 に近づいていく様子を示している。

(2)式は受取ったエネルギーをファンがモーメンタム・フローに変える場合のバイパス比(BPR)の影響を示す右上がりの VF/VJ

二つの交わる点が VC = VF となって各々の BPR でターボファン・ジェットが最も効率よく運転できる点となる。

BPR 0.5(-0.9) は超音速機に使われるバイパス比だが、いざとなればここに燃料を吹き込みアフターバーナーとなる。

BPR 1(-4)は初期の第一、第二世代のターボファン・エンジンのバイパス比。実際は BPR 3-4 は一気飛び越えて、

BPR 5(-7)は第三、第四世代に相当する。ここでミッドスパンの廃止、ワイドコード化や材質と製法の変更が行われました。「MRJ」のカテゴリーの中で 3回に亘って掲載中です。

BPR 8 を超えると第五世代となる。GTF はこの辺りに含まれ、最大バイパス比となる BPR 12.5 が公表されている。

 エネルギーの分割比が釣り合うのはコアエンジンの性能もあるがファンの動力吸収性能できまる。バイパス比が大きくなるとコアエンジンのジェットブラスト(VC/VJ )側の変化が急になり安定性は悪くなりそうである。コンピュータの支援が必須となるだろう。

Q_vs_vtf_vj_ratio

(3)式のグラフ化。
或るターボ・ジェットのジェットブラストの速度と同じエネルギーを持つコア・エンジンです。

別の見方ではマッハ 1 で飛べるコア・エンジンを使ったターボファンのバイパス比を変えた場合の飛行速度の比として読むこともできます。
例えばバイパス比が 8 の場合の速度比は 0.33 であるからこのターボファンでマッハ 1 の飛行にはマッハ3で飛べるのコア・エンジンが必要になる。(もちろん機体の空気抵抗は変わらぬ仮定が前提です)

 仕事効率の最大化のためにジェットブラストとファンのモーメンタムフローを等しくする前提のターボファンでバイパス比 q を大きくしていくと VTF/VJ の変化は小さくなる。

 バイパス比 q の増加は √(q+1)に比例して増えるファン直径 D の増加(すなわちカウリングの直径)によって得られるのだが翼の下に吊り下げるにしても翼の上や胴体に載せるにしても実用上の限界があることは想像できる。

 この辺りがターボプロップとの境目かもしれない。航空機の技術史からは今でもファンの最大直径はプロペラの最大直径を越えられない。

・おまけ

  前回のグラフではコアエンジンに残るエネルギーの割合を k としていた。
しかし今回はファンが受け取る割合を k としています。

  したがい、コアエンジンから見た 前回のグラフ編 にある同様のグラフで示す横軸 q は今回のグラフでは縦軸 (1-k) として計算した結果と等価です。

  加えて、前回に示したターボファンのバイパス比による仕事効率の上限は限界速度(理論上の最高速)の低下とのトレード・オフで 100% 以上になる結果は変わりません。

  低下する限界速度の回復には、もちろんコアエンジンの強化が必要になります。

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 ここまでの結論としてGTF(ギヤード・ターボファン・ジェット)も以上の原則の中にあることは間違いない。つまり、亜音速域の上限を効率よく飛ぶための GTF はターボプロップではない。

 構造的に言えばターボファンでは先頭の(低圧段)コンプレッサー駆動軸と同じ(回転数の)タービンで駆動されている。

 バイパス比を増加拡大していくにはファンの直径の増加を伴いブレードの先端速度、根元にかかる遠心力、曲げモーメント等々で回転数に制限が出てくる。

 GTF ではコンプレッサーの回転数を変えずにギヤボックスでファンの回転数を減速することで、もろもろの空力的、構造的問題の解決を図ったと想像できる。

 しかし「コンプレッサーの回転数を変えずに・・・」と断定するのは間違いでむしろ早くするのだろう。この辺りからは次回以降にします。予習には この回 の後段をご参照ください。

 ギヤボックスを持つターボプロップのプロペラの駆動軸は現在ではコンプレッサーの駆動タービンと切り離されたフリーパワー・タービンで駆動されている。

 ターボプロップでもターボファンでも回転数はプロペラやファンの負荷とエンジンの出力でと釣り合っている。したがいエンジンの出力の調整で負荷をコントロールできる。

 いっぽうプロペラやファンからは、というとターボファンではまだ実現していないがブレードのピッチを可変とすることで負荷を制御してエンジンの最適回転数に合わせることができる。

 米国系の大型二軸二段のターボファンのコアエンジンでは軸流式コンプレッサーのステーター(静止ベーン)を可変式として圧縮性を制御している。英国のロールス・ロイスは三軸三段のコンプレッサーとして可変式静止ベーンを廃止している。(閑話休題)

 ではそのブレードが暴走したら、例えば吹っ飛んだら、負荷を失ったタービンは暴走を始める。燃料の自動シャットダウン・バルブがあるとは思うがどこにあるのだろう。

 ターボプロップの推力の大半はプロペラの回転力の負荷(ブレードの揚抗比)によるもので上記のような運動量理論で強引に説明するには無理があるので以下を・・・

 ここまでの考察ではファンにも運動量理論を適用している。しかし現実のファンを効率よく働かせる速度比は 0.6から0.9のあいだでピークは0.8あたり、最大効率は0.85程度となる。

  (アンダクテッド・)ターボプロップのTu-95 ではターボファンの最高速度であるこの辺りまで迫っているようだ。

 デフューザー効果によって空気のファンへの進入速度の低下を見込んでいる(ダクテッド・)ターボファンで得られる翼素理論を運動量理論に近づける効率改善の効果と、高バイパス比化が主眼のGTF のコアエンジンに現われるファンを駆動する回転数 N1 の増加にともない増加する背圧にともなうジェットブラスト速度の低下、燃焼効率の変化などとの関係となるのだが・・・

 高バイパス比にするにはファン直径の大径化かコアエンジンの小径化か、となる。しかし一般的には前者となる。したがい実用上の限界がある。

 高バイパス比の根底にあるのはブレードの形状からくる空気機械としての動力吸収性能の向上が初めにありき、として総括されるはずだ・・・と迷路に入り込んだようだ。

 超音速から亜音速への速度域の低下を伴ったターボジェットからターボプロップへの開発で見られた劇的な効率改善は、その中間(亜音速の上限)の速度域で固定されたターボファンでは見られないであろう。

 しいて言えるのは、固定ピッチから可変ピッチへ変わったプロペラの変化がダクテッド・ファンにも採用される。 つまりは構造的にはフリータービンでなくてもダクテッド・ターボプロップファンになる時がジェットエンジンの究極形と考えられる。

 そのあと、現在の延長となる大気圏を飛ぶ飛翔体ではターボジェットが動力源として使用されるであろうが、技術的には速度域の増加をともなう(目指す)別のブレークスルーに向かうであろう。そこまでの技術が人類に必要かどうかは疑問ではあるけれど。 

以下はご参考に・・・

ターボプロップについて日米ウィキペディアからの抜粋と比較

 排気口から噴出する際に生じる反動はエンジン全体が生む推力のおおよそ10%~25%を構成する。

 今日の多くのターボプロップエンジンは、圧縮機駆動用タービン軸とプロペラ駆動用タービン軸が別な2軸構成となっているため、圧縮機駆動用タービンの速度に影響されることなくプロペラを回転させることが可能となっている。
 それぞれのタービン軸が最適な回転数で回転できることにより、排気口のジェット噴射に残っているエネルギーはプロペラ推力を含めた総出力の10%以下にまで減少する。

ジェットやモーメンタム・フローでの「推力」は速度の関数、「出力」は速度の二乗の関数なので的外れではないようだが混乱を招く併記となりそうだ。

 Consequently, the exhaust jet typically produces around or less than 10% of the total thrust.
 A higher proportion of the thrust comes from the propeller at low speeds and less at higher speeds.
 Turboprops can have bypass ratios up to 50-100 although the propulsion airflow is less clearly defined for propellers than for fans.

 While the power turbine may be integral with the gas generator section, many turboprops today feature a free power turbine on a separate coaxial shaft.
 This enables the propeller to rotate freely, independent of compressor speed.
 Residual thrust on a turboshaft is avoided by further expansion in the turbine system and/or truncating and turning the exhaust 180 degrees, to produce two opposing jets.
 Apart from the above, there is very little difference between a turboprop and a turboshaft.

排気の推力は10%前後もしくはそれより低い、となっている。
ターボプロップのバイパス比を50-100と表記しているなど写真を見ればなるほどねとなる。
同時にプロペラの推進力はファンに比べると明確な定義ではない、としている。

加えてプロペラとファンの性能の差やフリーパワー・タービンを採用するターボプロップとターボシャフトの構造上の微細な差を示唆するなど読者の興味の引き方をよく考えた文章といえそうだ。

 評論はいいから、お前はどうだ?!、と問われても困るけど・・・『他山の石』としておかしなところがあればご連絡ください。

2018.06.10 加筆終  キネマ航空CEO

 

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