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2018年5月31日 (木)

キネマ航空CEO レシプロ・エンジンの BPR を考え、ついでに零戦の排気管も考えるの巻

 ターボファンでは高バイパス比化が進み、現在のバイパス比(BPR)は 8 :1 前後、 P&WGTF では エアバA320neo シリーズの中で 12.5 :1 がアナウンスされています。

 前回のウィキペディア(英文)の記事ではターボプロップ・エンジンの BPR50-100 :1 となっていました。

 ではレシプロ・エンジンの BPR は、というお遊びの回です。

 結論から言うと、機体はボーイング 377 ストラトクルーザー、エンジンは ワスプ・メイジャー R-4360 の組み合わせの BPR300 :1 程度に相当します。

 だからどうした、は終わりのほうに・・・過程を読んでから、考えてから、にしてくださいね。

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 レシプロの航空機用ですからシリンダー・ヘッド部とピストンに挟まれて燃焼する空気とプロペラで推力を出す空気がありますから以下の数字が分かれば計算はできます。
 まあ、当らずと言えども遠からずと言ったところですけど・・・

 まず、必要なのはエンジンの排気量、回転数(測定基準がいくつかある)それに過給機(ターボチャージャー)の性能。これで燃焼に関係する(つまりコアエンジンの)時間当たりの空気量すなわち流量がでる。

 次に、プロペラの直径と飛行速度(巡行時とか最高速時とか)でプロペラを通過する流量が出る。面倒なのはエンジン回転数と飛行速度との関係だがまあ後から常識的に判断することにして・・・

 首題の計算には関係ないがおまけでエンジンと一体のクランクシャフトとプロペラ軸の間にある減速機のギヤ比も上げておく。

 対象とするエンジンには正統派レシプロの究極形といえるエンジンを選びました。

 プロペラ メーカー/形式 ハミルトン・スタンダード/定速式
  直径/翅数 17ft(5.1816m)/ 4

 エンジン メーカー/型式 P&W / ワスプ・メイジャー R-4360-B6
      構成 空冷星型4列7気筒(28気筒)/過給/減速比 2.667
      排気量 4,362.5in3 71.489L(0.071489m3)
      公称回転数(100%) 3,990rpm
      許容最大回転数   4,300rpm
 過給機 メーカー/型式 ゼネラル・エレクトリック/CHM2(ターボチャージャー)
               n.a. / n.a. (遠心式スーパーチャージャー)
       総合加給圧 n.a.

  このエンジンを採用した航空機は軍/民、生産/試作のみを合わせると25機種以上あるがここでは量産された民間機から、と言ってもフランスのシュド・エスト SE.2010 アルマニャック はわずか 8 機のため・・・残ったのは、

 機体  メーカー/型式 ボーイング/モデル 377 ストラトクルーザー 就航期間1947-1961年(56機)
      最高速度/高度    326knots(603km/h)/25400ft(7620m)
      最大巡航速度/高度 295knots(547km/h)/n.a.
      巡航速度/高度    262knots(483km/h)/25400ft(7620m)

 なお、R-4360 系のエンジンを使う最大の機体はコンベア B-36 、プッシャー・タイプのプロペラ直径は 19ft(5.7912m) です。6基を装備しますがこれでも足らずアフターバーナー付ターボジェットのゼネラル・エレクトリック J79 を 4基を追加装備しました。お役目は戦略空軍の花形として写真や映画で活躍しました。
 中には空中発進戦闘偵察機の母機(これはやってみた)や、計画倒れの原子力推進化計画や、で就役期間は 1945-1959年(384機) の13 年間でした。

 また、B-29 を改設計した後継機の B-50R-4360 系に換装されます。プロペラ直径はモデル377 と同じ 17ft でした。就役は1947-1965年(371機)の17 年間ですが爆撃機としては 1955 年までの7 年間で余生は偵察機、空中給油機として過ごしました。
 モデル377 の兄貴分のモデル367C-97 スラストフレイター 輸送機で就役期間は1947-1978年(60機)30年間ですが、空中給油型の KC-97 などをふくめれば888機でした。この中からエアロスペースラインズ社で改造されたスーパーグッピーなどのグッピー・シリーズが生まれます・・・(閑話休題)

 さて、回転数の(とりあえずの)定義をしておきます。

 公称回転数(100%)は最大連続出力としてさしあたり最大巡航速度時の回転数。

 では巡行時の回転数はというと公称回転数の 90% の 3,590rpm としておきます。出力は、回転数 X 軸力(トルク)に比例しており、大まかに 100% 時の出力の 75% の出力で巡航していると思われます。トルクは 83.3% にまで低下しています。

 許容最大回転数は公称回転数の 108% に相当します。離昇出力時の使用時間を決められた回転数としてのなのか、最高速度時なのか、はたまた緩降下時などの過回転禁止の限界回転数なのかはっきりしません。とりあえず最高速時の回転数としておきます。
Tu-114 の回 と設定が違うが機速自体も違うので・・・気になれば再計算をお願いします)

 これらより排気量にエンジンの回転数を掛けて物理単位[m3/s]に直してエンジン( 1基)を通過する単位時間当たりの空気流量を計算する。

  最高速度 X 許容最大回転数(108%) 5.124m3/s
  最大巡航速度 X 公称回転数(100%) 4.754m3/s
  巡航速度 X 巡航回転数( 90%)     4.274m3/s

 次に、プロペラの回転面積に各速度を掛けて同様に物理単位[m3/s]に直してプロペラ( 1基)を通過する単位時間当たりの空気流量を計算する。   

  最高速度時    3,532m3/s
  最大巡航速度時 3,204m3/s
  巡航速度時    2,830m3/s

 これらより、

 レシプロエンジンのバイパス比 = (プロペラ通過空気量 / エンジン通過空気量) -

 となるが加給されたエンジンではそうは問屋が卸さない。

 バイパス比は重量比(理論的には質量比)なのでを通過する空気量に該当する高度での過給後の比重(密度)を体積に換算した係数を乗じてやる必要がある。

  さて、計算を始めますがバイパス比の定義からはかなりトリッキーな計算になります。眉に唾を付けて考えながら読んでくださいね。先ずその前に・・・

 細かく言えば断熱圧縮なのでポアソンの法則で高度の影響を補正して、となるが今回は物理や工学の便覧にある標準大気の表を使って地上(海面高度 SL)の大気密度(kg/m3)を 1 とした高度7,600mの密度の比 ρ76000 = 0.449631 が得られる。同様に圧力比 P7600/P0 = 0.372639 もある。
 (ついでに温度は地上の 15℃ に対して -34.341℃ となっている。気温差では絶対値で -50℃であります。各々に7,700m の値もあるので20mの差を比例配分で補正できるがそこまでしてもねー。 )

 過給機の性能は今でも大気圧との差圧をブースト圧として示されている。おそらく測定しやすいからだろう。

 しかしバイパス比は質量比を扱っているので密度比の逆比 = 1/0.449631 = 2.224 が海面高度で無過給エンジンが吸入する空気量に相当する充填比となる。
 (一般に航空エンジンの性能には測定した高度は付記されていません。巡航高度での充填空気量を無過給時の海面高度と同じにした理由は単に比較しやすいからです。ちなみに同機の上昇限度は9,800m です )

 したがい先の式は、次の式となる。

 レシプロのバイパス比 = プロペラ通過空気量 / (充填比 X エンジン通過空気量) -

 厳密には分子と分母に計算する高度の密度を乗じて質量にするが消去されている。
 (この式から燃焼系で圧縮される空気量が大きいほど BPR を小さくできる理屈が説明できる)

 高度がらみでは過給比も高度に関係する。高度7,600mでの充填比が2.224の場合、過給機による増加分は 1.774( = 2.224 - 0.4496) となる。

 過給機の性能は高度(気温と圧力)の変化でも変わらないとすると海面高度での充填比は 2.774( = 1.774 + 1.000) となり過充填でノッキングを発生させるなどでシリンダーなどエンジンの強度や寿命上では望ましくない。

 したがい、低空ではウェイスト・ゲート・バルブで排気をバイパスさせてタービンの性能を下げる機構が設けられる。せっかくある過給機だから地表付近でも多少の過給はされているはずだが詳細は不明。

 いっぽう、高高度では過給された空気の一部ははエンジンに入らず機内の与圧のために使われるのはジェットエンジンと同じであります。(もちろん計算では無視しています)

 さて、断熱圧縮と言いながら無視してきた圧縮されて体積を減らすことで派生した高熱の空気は高空の低温によって冷却器で冷やされて、酸素を含む質量の構成比は同じままでさらに体積を減じてシリンダー内の吸気容積空間に充填され、さらに圧縮されます。

 いっぽう高温の空気は機内与圧にも使われます。何しろ外気温は -35℃ ですからね

 これで空気が薄く氷点下の高空でもエンジンは地上と同様に多量の燃料を燃やせ、搭乗員も薄着で、乗客も私服のままで搭乗できることになりました。

 ということでボーイング 377 ストラトクルーザーBPR は、

  最高速度時    308.9 : 1
  最大巡航速度時 302.0 : 1
  巡航速度時    295.7 : 1

となります。どうです ? 結構大きいでしょう !

 ちなみに過給なし(自然吸気)で海面高度を最高速で飛びぬけた(現実にはあり得ませんが)とすると充填比は 1 となり計算上の BPR は 689.3 :1 となります。

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 結論として、

1. BPR (バイパス比)は飛行速度域が低いほうが大きい
  (コア・エンジンとなるレシプロの排気やターボ・ジェットのジェット・ブラストの貢献度の差を含めてです)
2.逆に言えば BPR は速度域が高いほど小さくなる
3.速度域を高くするには出力の大きいエンジンが必要になる
4.超音速機のエンジンはアフターバーナー兼用の低 BPR のターボファンである
5.亜音速上限域のターボファンの高 BPR 化は常用速度域の低下を内包している

 ・・・の五段論法が成立するとも言えそうだ。

 その五段論法の使い方は、
 当キネマエアラインズフライト 003 で上映中の 「キャッチ 22」で !! (コマーシャル)

 プロペラにしてもターボ・ファンにしても仕事は「質量」X「速度」であります。
「速度」を一定とする条件では「質量」の増加は本質的に回転部分の直径(すなわち面積)を大きくすることでしか増やせない。もちろんコア・エンジンの強化が必然となる。

 同じ飛行速度で BPR を大きくするターボファンの仕事効率の向上には燃焼効率の向上と機体とのマッチングが重要であることは何度も述べている。

(以下の零戦の排気管の追記で出稿完了です)

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 過去に栄光を求めるのか、何が何でも日本が一番なのか、一部の航空マニアはいろんな疑似科学や神懸かり理論を編み出すようです。 以下、軍用機編です。

 三菱零式 21型から 32型の集合排気管から 52型ではカウルから飛び出して真後ろに向かう単排気管に変えました。 この改良で排気のジェット推進効果により最高速が著しく向上したという説はいささか「贔屓の引き倒し」のようです。

 戦闘機で、(水平時で示す)最高速度が必要なのは逃げる相手を後ろから追撃する場合です。 本当に必要なのは進攻時や帰投時の通勤時間を短くするより速い巡航速度です。
(スロットルの最大開度は最高速度より上昇性能で必要です。 速度も上昇性能もスロットル開度で制御する出力に関係してはいるけれど、最高速度が速ければ上昇性能も優れているとは限らない・・・閑話休題)

 さて、プロペラの推進効率は最高速度に近づくと低下するにしても、レシプロエンジンの相当バイパス比から見て推進力にかかわるエンジン排気の質量はプロペラに比べてかなり小さい。 ここはぜひ零戦各型の BPR による推力と排気推力を計算してみてください。

 必要な追加データ項目は 2本の集合排気管と 14 本?? ある単排気管の①断面積と②排気温度から計算する排気の体積から得られる速度と機速の差です。 ②排気温度は類推値からお好きな温度を選びシャルルの法則で計算すればいいと思います。
 当CEOの掲げるエンジンは「フン詰まり No !」理論の展開です。 吸気と排気の温度は理想気体温度への統一が必須です。 排気速度が最高速より速ければ効果はともかく貢献はあると言えるかもしれません。

 単排気管の効果があるとしたら川崎キ‐100 五式戦のように星型エンジンのカウリングを通る冷却風の制御フラップと胴体の段差による気流の乱れ(剥離流)をまんべんなく整流する(実際には吹き飛す)ことで得られる胴体表面の摩擦抵抗を減らす効果でしょう。 しかし、星型エンジンではフォッケウルフ Fw190-A の先例があり日本の発明とはいえないコンセプトです。

 なお、偶数の多気筒エンジンの排気管 2本を一組として点火時期の位相差と長さを選んで集合させる設計では単排気管としての末端となる集合部で発生する反射波による排気圧の脈動がエンジン側の排気口に伝わりシリンダー内の排気の掃気効率や混合気の充填効率を高める効果があります。 4行程エンジンと言っても排気と吸気の行程はオーバーラップして筒抜けになる時間があるからです。

 14気筒の「」エンジンでは7本の集合排気管が外観上の単排気管を構成することになります。完全な単排気管なら 14本の排気管が必要だがそんなに多くはなさそう、しかも 7本以上はあるようだ。
(右6左5説があるが、写真や図面によって数が違うように見える)

 どうも排気干渉の積極的な利用はしてはいないようだ。 しかし管の取り回しのための集合排気管が数本あるようです。 (例えば外観の排気管が11本ならそのうち内の3本は集合排気管と言った具合に)

 まあ、戦闘機の機動中にはスロットルの開度を大きく急激に変化させるので全域に効果があるわけでもないのだろう。そのうえ複列14気筒星型エンジンの前後列のシリンダーの排気管をクランクの位相差25.7.....(=360÷14)度の倍数と4の倍数の点火時期を組み合わせてうまく慣性偶力の打消して脈動効果が出せるのかどうか、などの疑問もある。

 21型のような左右で 2本の集合排気管の場合、排気管(鉄ニッケル合金)の取り回しで重くなります。短い単排気管の採用は軽量化に確実に効果があった。

 ちなみにFw-190-A ではエンジン BMW 801 D-2 14気筒の排気管を機体の左右に 4本ずつを一列に並べて開口し、下方に 4本(は同様に) + 2本(は左右斜め後方に向けて)が並べられている完全な単排気管です。

 上側に開口していないのはコックピット内に排気が進入したり、消耗品の潤滑油が燃え残って煤や油が風防ガラスを汚すのを防いでいます。 (52型では一番上の排気管は左右とも斜め下方に向けている)

 外観上ではその排気管の列はきっちりと胴体に埋め込まれれている。その結果、52型より長くなる排気管もあるが技術原理に関しては真面目ですね。

  また、液冷V12エンジン(ロールス・ロイスマーリングリフォンの一部)の単排気管に見られる魚の尻鰭状に潰して拡張する排気管には噴射速度をマッハ1以上に大きくするラバール・ノズル効果(知っているだけでもすごいことだが)があるのかも知れない説もあった。 ただし、マッハ1を超えるには排気圧力が4気圧以上は必要だけど・・・これも計算してみてね。
(正確には前後の2気筒を連結した左右各3本の集合排気管。V12 のクランク軸が見つからなかったので一般的な点火順序からでは排気脈動効果を利用していないと思われる)

 これはノズルの最狭部で亜音速から超音速に変わる現象なのでベルヌーイの定理は使えないけど計算式はWeb上にあります。(ロケットでは実際に使われているけど・・・レシプロ・エンジンではどうだろう?)

 そういえば川崎 キ-61 飛燕はラジエータの熱交換によるジェット推進効果がある、という説もあった記憶が・・・それはまたいずれ。

 (以上、読者に丸投げの閑話休題)

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