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2018年6月22日 (金)

キネマ航空CEO 『GTF はターボ・プロップではないがダクテッド・プロップファンに近づいているのかもしれない』 の巻

RRの動向の所見を変更しました。(2018/07/18) キネマ航空CEO

まず、前置きから、

 2018年2月までに公表された欧州航空安全庁(EASA)から認証を受けているP&W(プラット・アンド・ホイットニー)の GTF (ギヤード・ターボファン)商品名は PurePower ® (だが以下 GTF で統一) の型式は次表となります。

 残念ながら三菱MRJ が採用する17Klbf と 15Klbfクラスは今のところ見当たりません。

  Class(klbf)   BOMBARDIER    EMBRAER  AIRBUS IRKT
19   PW1519G   PW1919G
21   PW1521G   PW1921G
  PW1521G-3
22   PW1922G   PW1122G-JM
23   PW1923G
24   PW1524G   PW1124G-JM
  PW1524G-3   PW1124G1-JM
25   PW1525G
  PW1525G-3
27   PW1127G-JM
  PW1127GA-JM 
  PW1127G1-JM
30   PW1130G-JM
31   PW1431G-JM   
33   PW1133G-JM
  PW1133GA-JM

   型式記号 PW●〇□□G-XY
    PW  新世代ターボファン・エンジンの民間用呼称(旧世代ではJT を使用していた)
    
G GTFを示す。エアバスの G1GA の詳細は不明
    ● エンジンのコンセプトを示す新しいブランドである「ピュアパワー」を「1」で示しているようだ。 
 
   〇 仕向先コード・・・表にない MITSUBISHI  は「2」 。詳細は こちらこちら
    □□ Klbf 単位の離昇推力値。ファン径やバイパス比にも関連・・・詳細は
こちらこちら
 
   -XY) 細分化された仕様のコード。エアバスはイルクートを仲間にいれて独自化しているようだ

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さて、ここから本題です。

 GTF はこれまで考察してきた(運動量理論で、ではありますが)ファンのモーメンタムフローとコアジェットのブラストの速度が等しい場合に推進効率が最大になるというターボファンの原則から離れているのではないか・・・の思考の始まりです。

 下表では、三菱MRJ がライバルとする新型機とその前身となった在来機に搭載された新旧エンジンの比較ができるエアバスエンブラエルからベンチマークを選び比較を行いました。
ボンバルディエ C シリーズもありますが GTF エンジンはエアバスエンブラエルと同じクラスなので手抜きします。

 注目する個所は生データとしてバイパス比、ファン直径、N1 回転数、N2 回転数、減速ギヤ比、計算結果としてファンのチップの周速の相対比較です。

 なお、三菱 MRJ-90 MRJ-75エンブラエルE175-E2 が採用する予定の 17Klbf と 15Klbsクラスのエンジンは詳細なデータが公表されていません。 このため表中で赤字で示した回転数等は一つ上の19Klbf クラスの値を使用しました。

 また減速ギヤ比をそのまま使用するとチップ周速がマッハ(以下 M ) 0.87 となるので当CEO が以前に 写真から解析 した 2.8230 を使い M 0.95 としました。

 ギヤ比を変えた理由は基本的にファンの推進力(揚力)は回転数(速度)の二乗に比例しているからです。

 これでも低すぎるようですのでファンを駆動する減速ギヤ・ボックスへの入力となる低圧段圧縮段の回転数 N1 はもっと高いのかもしれません。 では高圧圧縮段の N2 はどうでしょう。

 また、従来型に採用されていたエンジンの N1N2 との比較も興味をそそられます。

 で、結論はどうした ! ですって?

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 まずは下表を左クリックで別窓で開いて値の吟味から・・・。

 「結論だけを読んで理解できたと思えるのは思考力の劣化の始まりだ」・・・ある刀自(とじ)の言葉の端に・・・

 「ワンフレーズに共感したり、反発したり、で自分の意見をでっちあげるネット社会の落とし穴」ということらしい・・・

 では、始めます。

New_generation_vs_conventional_turb まず、最下段の高度12,000mに於けるブレードのチップ・スピードは認証されている GTF では M 1.2~1.14 を示しています。

 これに対し既存のターボファンでは M 1.60~1.51 であります。GTF は明らかにチップ・スピードの低下を狙っている。

 さらに、CMF インターナショナル の新世代エンジン LEAP ®  (Leading Edge Aviation Propulsion 先端航空機推進技術)でも GTF には及びませんが M 1.60 から M 1.37 に低下させています。

 その一方では仮定値を使い赤字で示した MRJ では M 0.95 ですが音速以下にする理由があるのでしょうか・・・疑問が生じます。

 プロペラの先端速度が音速を越えている例 キネマ航空CEO GTF はターボ・ファン・ジェットかダクテッド・ターボ・プロップか、を考えるの巻(その 2 )「プロペラで出せる最大速度の推定とその検証」 から始まる三回の連載をご参照ください。

 チップ・スピードはファンの直径と回転数で決まる。その回転数は低圧段圧縮機の回転数 N1 で決まる。

 エアバス A320neo で見る GTFN1 は 10,047rpm でありギヤの減速比を換算したファンの回転数は 3,281rpm となります。

 従来型の A320ceo のエンジン CMF56 のファンに直結する低圧段圧縮段の回転数 N1 である  5,200rpm との比較では、 A320neo のファン回転数は減速機により 63% に低下しますが、低圧段圧縮機の回転数は193% にまで増加しています。

 次に A320neo の (GTF ではない) LEAP エンジンの N1 は 3,856rpm で、これがファンの回転数になります。その結果、ファン回転数と低圧圧縮段回転数は 74% に低下しています。

 A320ceoCMF56) を 1 とした比率に直すと 1.93 、0.74、 1 となります。

 では、高圧圧縮段の回転数 N2 を比べてみましょう。A320neoGTF)、A320neo(LEAP)、A320ceoCMF56) の順に、 22,300rpm、19,391rpm、15,183rpm となっています。

 A320ceoCMF56) を 1 とした比率に直すと 1.47 、1.23、 1 となります。この解釈は後に回して推力も比較してみましょう。

 まずその前に、推力をの単位をそろえるため CMF56 で使われている [daN](デカニュートン) を [Klbf](キロポンド)に換算します。換算係数は 2.2481/1000で求まります。

 したがい、GTF の型式記号に使われる公称推力である離陸時推力(Take-Off Thrust )に相当する値 10,453daN は 23.499Klbf となります。
(すみません。表では力の単位 [Klbf] のはずが [Klb] となっています。読み替えてくださいね)

 A320neoA320ceo に対して 3.5Klbf (1,588kgf)の推力マージンを得たようです。 A320ceoCMF56) を 1 とした比率に直すと 1.15 、1.15、 1 となります。

 エンブラエル E190-E2GTF) と E190CF34-10) との比較では推力を除き同様の結果がでます。計算してみてください。

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・ N1N2 回転数から想像される結論

 GTF では N1N2 共に、LEAP では N1 は低下しているが N2 は、増加している。 とりもなおさず圧縮機の駆動に噴流エネルギーを割いて圧縮性能を向上させている。言いかえればジェット・ブラストの速度エネルギーを落としている。

 見方を変えればファンのモーメンタム・フローとジェット・ブラストを等しくすることで得られる推進効率の最大化から離れて、エンジンのサイズをシュリンクさせて同等の出力を得る意図がある可能性がある。もっと言えば高圧縮比による燃焼効率を含めて改善している。

 ほぼ同等の推力を持つ両エンジンの高低両圧縮機の段数の合計は GTF の 11 段に対し LEAP では13 段を必要とする。その差は高圧段側の 2 段であります。

 それらの圧縮段を駆動するタービンの段数の合計では各々 5 段と 9 段だが、低圧段に対しては 3 段と 7 段である。 その差の 4 段分が LEAP では GTF のギヤボックスの減速比に相当することになる。

 ちなみにファンを駆動する力はトルク(軸力)だが回転を伴っている。 したがい(駆)動力として時間を含んだ次式が成立する。
   P = 2πNT/60
     P:動力([W = kg・m/s3])、N:回転数([rpm = 1/s])、T:トルク([N・m = kg・m/s2])

 この式で示されるように、動力を一定とすると「回転数」と「軸力」の積は一定となる。

 GTF ではタービンの出力は高回転数で取り出し減速機で回転数を落としトルクを大きくする。 LEAP では低回転で取り出した高トルクをそのままファンに伝える。

 ファンの回転数は ファン・ブレードの容量N1 タービンの出力(動力)の関係で決まります。 いまのところプロペラのようにファン・ブレードのピッチ角は変えられないのでスロットル(正確にはパワー)レバーで N1 回転数を変えることになります。

 ただし、GTF では減速ギヤによる効率の低下(動力の損失)を伴います。

 同等の出力を持つ GTFLEAP の比較ではバイパス比とチップスピードでは GTF のほうが優れているようだ。

 とはいえ、両エンジンとも公称値では従来型より優れていることは間違いなさそうだ。

 ただし、GTF では減速ギヤ・ボックスの信頼性やその減速ギヤで得られるコア・エンジン自体の、より高速となる N1N2 回転数による振動や潤滑の問題などは未知数と言えそうだ。

・ チップスピードから想像される結論

 GTF ではファンのチップ・スピードで限界のある N1 回転数を大きくしながらファンの回転数を落としてバイパス・レシオに直結するファン直径を大きくすることが可能になります。

 補足すると N1N2 の回転数が大きくなることは噴流のエネルギーが回転動力として回収されることで噴流の質量流量は同じでも温度が下がり体積は減り、ひいてはジェット・ブラストとして推力になる速度は低下します。

 なお、ファンに向かう空気はカウリング内のデフューザー効果で低下することは (受売りで)既述 です。 いずれにせよ空気の進入速度とファン回転数の合成速度は音速を超えており、後日追記するつもりです。

 MRJ に使用される 17Klbf および 15Klbf クラスに仮採用した 19Klbf クラスの N1 回転数と写真より計算した減速比の組み合わせのチップ・スピードは M 0.95 であり通常のファンの設計速度より低すぎるように思える。

 GTF のラインアップでは出力の低い、言いかえれば、ファン径の小さいタイプでは N1N2 回転数を大きくするようだ。 仮に19Klbf クラスの チップ・スピードより低い M 1.1 に合わせると 12,284rpm となる。

 この結論は、低圧段圧縮機が 1 段少ない 2 段で構成される最低位のクラスの諸元が発表されるのを待つしかない。

・ 以上からの総合所見

 基本的に GTF はダクテッド・プロップファンに向かっていると言えなくもなさそうだ。

 次のテーマはターボファンの効率優先の原則(バイパス比を大きくするとコアエンジンの出力も大きくする必要がある)を変えてもコア・エンジンの総エネルギーを低減できる可能性があるのかどうか・・・です。

 どちらのエンジンも圧縮性能を向上することでコア・エンジン自体をコンパクトに設計することと燃焼性能を向上を両立させることを目指している。

 それには材料の開発を含めた部品の構成と設計が要求され、コンピュータ支援設計が進んでいるとはいえ、膨大な実験での裏付けが必要になる。

 ターボファンとプロップファンの違いは主にブレードの形状であり、プロペラ容量係数などの性能面ではダクトと一体のダーボファンのブレード形状(ワイドコード化)のほうが優れている。

 アンダクテッド・プロップファン(UPF)ではダクトで得られていた騒音や速度などの利点は越えられなかった。

 現在の境目は常用速度域の守備範囲といえます。 とはいえ、ターボ・ファンの巡航速度とターボ・プロップ・ファンの最高速度は近接しています。

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 なお、バイパス比を増加させる LEAPGTF の関係では LEAPN1 ひいてはファンの回転数を下げる限界がある。GTF はギヤボックスによる損失や構造上のリスクがある。

 コア・エンジンのジェット・ブラストの速度を下げること、と、ファンの回転数(本質はチップ速度)を小さくすること、は騒音には効果がでると考えられる。この面では GTF は構造上有利である。

 対抗するロールスロイス トレント XWB ではスリー・スプール(3 軸)構成の低-中‐高圧段で 3 段階の圧縮が可能であり、ファンを回す先頭の低圧段は低回転で回せるはずたが・・・ UrtoraFan ® と呼ぶ 3 軸 + ギヤ・ボックス という構成までを視野に入れている。
 毒を食らわば皿まで、ならぬ、ギヤで重くなるなら可変ピッチまで、かも知れない。

 現実には現行の構造のファンを可変ピッチにするのは難しい。
 加えて、ダクテッド・プロップ・ファン(ターボ・プロップの進化系)ではダクトと二重反転プロップファンとの総合効果の検証など何らかのブレーク・スルーが必要と考えられている。

 BPR を増加させるには 全圧力比OPR)の増加による 圧縮性能の向上希薄燃焼Lean Burn  にあるようだ。

 この二点セットは GTFLEAP でも然り、であります。

 以上、閑話だが重大かな ??

 EASA TCDS には燃焼温度関連のデータもあります。熱力学のほうからの考察は機会があれば・・・ということで・・・。

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