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2018年7月11日 (水)

キネマ航空CEO 「高バイパス比化に意味があるの ?」 について考えるの巻(再掲)

・ 式の表現方法を修正後の再掲です。(2018/07/11)
・ 修正についての説明は本件のお詫びの記事に追記いたします。
・ 細部の修正を含めて校正、校閲を継続中です。

キネマ航空CEO 『GTF はターボ・ファン・ジェットかダクテッド・ターボ・プロップか、を考える』 の巻 (その 2)  (2018.04.29)の回をご一読の上お進みください。

 なお、使用した図は こちら から。まず、今回必要な数式部分の復習から始めます。 今回も運動量理論での解析です。

 ターボファンはコアエンジンの持っているターボ・ジェットとしてのエネルギーから
k (0≦k1) の分割比でファンに分割する。

 ただし分割に伴う効率ψ0<ψ<1)が発生し実際に分割されるエネルギーは (k/ψ)となり、コアエンジンに残るエネルギーは分割された割合を除いた{1-(k/ψ)}となる。

 コア・エンジンに残ったエネルギー KC のジェット・ブラストの速度は VC 、質量は m
 ファンが受け取るエネルギー KF  が作るモーメンタム・フローの速度は VF、質量は q・mq はバイパス比)。
 コア・エンジンが単体のターボ・ジェットとして持つエネルギー KJ が発生させるジェット・ブラストは VJ 、質量は m のままでコア・ジェットと同じです。以上を数式に移すと・・・

 J = (1/2)・mVJ2   

 C = {1- (k/ψ)}・KJ = (1/2)・{1-(k/ψ)}・mVJ2 = (1/2)・mVC2  より

 VC/VJ = √{1-(k/ψ)} ・・・  (1)

 KF = (k/ψ)・KJ = (1/2)・(k/ψ)・mVJ2 = (1/2)・q・mVF2  より

 VF/VJ = √{(k/ψ)/q}} ・・・ (2)

 ターボファン・ジェット・エンジンに求めるものはピュア・ターボ・ジェットの出す一定のエネルギー KJ で得ることのできる仕事 WTF の増加であります。

 ターボファンとしての等価速度を VTF と置き、その速度を持つ質量は (q+1)・m となる。

 WTF = (q+1)・m・V1(VTF-V1) = m・V1 ・ (VC - V1 ) + q・m・V1 ・(VF - V1 )
                  = m・V1 ・[ [ √{1-(k/ψ)}+ q・√{(k/ψ)/q} ]・VJ -(q+1)V1 ] ]
より、

 VTF = [ [ √{1- (k/ψ)}+ q・√{(k/ψ)/q}]/(q+1) ]VJ ・・・  (3)

 分子は 0≦k/ψ)≦10 < q のため VJ≧VTF となる。VTFk/ψ)q の関数であるが k/ψ)q の関数でもある。

  [ √{1- (k/ψ)}+ q・√{(k/ψ)/q}]/(q+1)  = A と置き dA/dk = 0 と微分して A の極値(最大値)を求めると VC = VF つまりコア・エンジンのジェット・ブラストとファンのモーメンタム・フローの速度が等しい場合となりファンが受け取るエネルギーの割合は
(k/ψ) = q/(q+1) なのだが計算過程は省略します。

 したがい、ターボファン・ジェットのエネルギー速度 VTF とコア・エンジン単体のジェットブラスト VJ の比は、

 VTF/VJ = 1/√(q+1) ・・・ (a) 

--------------以上が復習--------------

 なお、(a)式は次のように逆比として書き直します。

 VJ/VTF = √(1+q ・・・ (4)

 理由はファンのモーメンタム・フローとコア・エンジンとしてのジェット・ブラストが合成されたターボ・ファンの推進噴流の等価速度 VTF は機体の出せる限界速度に相当します。

 このエンジンが採用された機種もしくはクラスの中ではほぼ一定値ですので既知の基準値として扱えるからです。

 さて、ここからは VCVF の場合の検討です。(2)式を(1)式で割るとファンのモーメンタム・フロー VF とコア・エンジンのジェット・ブラスト VC との速度比 s が求められる。

 s = VF / VC = √[{(k/ψ)/q} /{1- (k/ψ)} ]  より

 (k/ψ) = 1/{1/(qs2 )+ 1}

 を(3)式へ代入し整理すると

 VJ/VTF = (1+q)・√(1+q・s2)/(1+q・s) ・・・ (4'

 ここで、「見える化」をしてみる。

 (4')式は s=1 の場合に VC = VF すなわち速度と引き換えに最大の仕事を引き出せる、ひいてはコア・エンジン単体に要求される推力が最小となる(4)式と同じになります。

 この関係を s=1 でバイパス比 qVJ/VTF の関数としてグラフにしてみました。Vjvsvtf 値を表にすると

BPR 0 : 1 1 : 1 2 : 1 3 : 1 4 : 1 5 : 1 6 : 1 7 : 1 8 : 1 9: 1 10 : 1 11 : 1 12 : 1
VJ/VTF 1.00 1.41 1.73 2.00 2.24 2.45 2.65 2.83 3.00 3.16 3.32 3.46 3.61

     (BPR 0 : 1 はピュア・ターボ・ジェットを指しています。)

 BPR 0:1を除く表の値に一般的なジェットライナーの最高速 VTF = M 0.8 を掛けるとその エンジンの BPR でコア・エンジンに必要な単体エンジンに要求されるジェット・ブラストの速度が出ます。

 例えば BPR が 8:1の場合は M 2.4 となります。もちろん伝達効率 100% の運動量理論上で、の結果ですからファン側に翼素理論を適用すればもっと上回るはずです。
(「すりゃーいいじゃないか」、と言われても 当CEOには無理 なのよね)

 参考までに、 M 1.00 で飛べるターボ・エンジンをコア・ジェットにする BPR 12 : 1 のターボ・ファンの場合の VTF はこの表の逆比となり、 M 0.277 で飛ぶことになっちゃいます。

 本筋の(4')式に戻ってバイパス比 q をパラメータとして、ターボ・ファンのファンとコア・ジェットの流速比 s が変化する場合の VJ/VTF を計算してみます。

Incriment_of_vj_vs_vtf_table_rev1 ここでは計算結果の整理に、次式を用いて各 BPR ごとに VJ/VTFs = x の値から VJ/VTFs = 1(上記の表)を引いた差分を⊿VJ/VTF として表示します。

   ⊿VJ/VTFs = x = VJ/VTFs = x - VJ/VTFs = 1

 目的はこれにより BPR の系列ごとに s の影響を分かりやすく相対化するためです。

 左のアイコン・レベルまで縮小した差分表は左ボタン(ワン)クリックでポップアップします。

 小数点以下の第 3 位を四捨五入してあります。 差が0.005未満で差分が 0 となる範囲は広い。 これではよく分からないのでグラフ化してみましょう。

Incriment_of_vj_vs_vtf_graph

 (すみません)グラフ内に書きそこなったけれど横軸が s = VF / VC )です。縦軸は s の増減で変化するコアとなるターボ・ジェットが単体で増減する⊿VJ/VTF の値です。

 s < 1VF < VCs = 1VF = VCs > 1VF > VC

 s = 1VJ/VTF が最低値となることはこのグラフからでも間違いない。
つまり採用したコア・エンジンがターボ・ファンとして働く最大の仕事の元となる速度 VTF が得られる比 [VTF/VJ ]のポイントです。(くどいようですがモーメンタム(運動量)理論で、です)

 s > 1 の側、つまりファンによる流速のほうがジェット・ブラストの流速より速い側ではバイパス比 q が大きくなるほど VJ/VTF の変化の傾斜が小さくなることが分かる。
BPR の増加によるベースとなる出力の増加に比べて s の変化による出力の増加が小さくなる範囲です)

 ついでに、s < 1 の側、つまりファンによる流速のほうがジェット・ブラストの流速より遅い側では q0:1で示したピュア・ターボの状態を除きバイパス比 q とは関係なく VJ/VTF は撚った縄の状態で急激に傾斜がきつくなっている。 

 比を変数として扱ったグラフの視覚的な理解には注意が必要です▼「1 」を挟んでグラフの左側では「0」に近づき、右では「∞」に及ぶ▼比は逆立ちできる▼逆立ちしたら左の「0.5」は右では「2」▼左の「0」は右の「∞」に相当している▼s' = 1/s として s' を横軸にすると別の様相が見えるはず▼やってみてね。(閑話休題)

 さて、ターボ・ファンやターボ・プロップにおいてはアイドリング時から 100%以上の過負荷運転時において常に一定のバイパス比 q を維持しているとも思えないのだが、これは後に回して、・・・

 相当バイパス比(Equiv. BPR)が  50-100:1 と言われるターボプロップでは VJ/VTF の増分の傾斜はもっと緩やかになり VF > VC となる速度差をつけることは効果が大きいのではないだろうか。

 では、現在の GTF で計画されているターボ・ファン最大の BPR 12.5:1で実施されば効果はどうか、と問われると、いささか心もとないのだが差分表からは s = 1.25 辺りまではコア・エンジンに対してほとんど影響なくファンの流速を早められそうなのだが・・・

 漠然とではありますが、亜音速の上限を棲み処(か)とするターボ・ファンの原理から言えばジェット・ブラストの流速を遅くすることでファンによる質量の多い冷気の流速を多少は速くすることができそうであります。

 バイパス比 qs に連動して変化することはないと仮定すれば仕事 WTF の向上も多少の期待が持てるのでは、とも思えてきます。

 つまり、ジェット・ブラストのエネルギーをファンにさらに分割し、ファンには空回りせずに仕事をしてくれる容量があるならばです。

 計算式を構成する複数の要因の関係は、現在の技術ではファンの推力係数および入力係数と燃料投入量で変わる出力(飛行速度)を介した成り行きで決まってしまうので特定の速度域ではすでに使われている既知の技術かもしれません。

 ターボ・プロップではプロペラに可変ピッチ機構が採用されてプロペラ側からでも係数を変える制御ができる。ターボ・エンジンでは低圧段圧縮機の静止翼の迎え角を可変にして出力を制御する技術もあるけど・・・こちらは微妙な制御に使えるのかな。

 まあ、このグラフも見方を変えれば二つの流速を常に等しくするようなピン・ポイントの制御をするほどのものではない、と消極的な見方もできそうですね。

 とは言え、条件付きではありますが高バイパス比になるほど僅かな燃料の持ち出しで仕事 WTF の向上の可能性があるのでは、と推測も可能です。

 もっともその前に、前回考察した N1N2 回転数の増加による燃焼効率の改善のほうが必須の条件と考えられます。

 それらをひっくるめてバイパス比は大きいほうが運用上の余裕度はありそうです。 まずはターボ・ファンの吐出する二つの流れの速度比 s はどれくらい大きくあるいは小さくできるのだろう。

 次回からは別の方向から考えることにしてみる・・・か。

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