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カテゴリー「オスプレイ」の37件の記事

2015年8月 1日 (土)

キネマ航空CEOの 「シングルとタンデムのあいだに」 の巻 その 3

さて、タイトルの元歌(1969 作詞 なかにし礼)では「夜と朝の間に ひとりの私・・・」で始まるのですが結びにリフレインされる「・・・お前も静かに眠れ」の忠告を聴いて眠ってたほうがよかったのかも・・・年齢のわりに睡眠不足がこたえる熱さですね。

ちなみにテール・ローターに傾斜をつける方式は、1974年に初飛行したシコルスキー H-60 ブラックホークなどの一連の軍用機からはじまりました。日本では三菱 SH-60J がこの流れにあります。現在では民生用の派生機種を含め大型機種に採用されています。

この方式はブラッシュ・アップも進み、その中の シコルスキー S-92 ヘリバス は大統領専用機となるマリーン・ワンの候補となっているようです。

シコルスキー以外の追従者は、アグスタウエストランド AW139ボーイング/シコルスキー RAH-66 コマンチ があります。後者はフェネストロンですが2004年に開発契約はキャンセルされました。

前者は770機(2014)販売、日本も40機前後導入されている。ただ、海外では2002年からの12年間に17件の事故が報告されている。民生用途として多いのか少ないのか不明ですが日本では発生していないことは明記しておかなければなりますまい。

その中のいくつかは地上での破損例もあり、以下に述べることが直接の原因とは思えませんがコンピュータに支援されたマン・マシン系に不整合な部分が残されているようにも思えます。

本題に戻り、我ながら、面倒なことに首を突っ込んじゃいました。前回を読んでないと(あるいは読んでても)分かりにくいかもしれない回です。結論は下のほうの二番目の破線の下からはじまります。

Ch53_hovering_balance

まず左上の上面図からシングル・ローター・ヘリコに必須のテール・ローターによるトルク反力の釣合計算から始めます。(厳密には立体座標の中でローター間の上下左右の位置関係もあるが今回は省略して限定された状態での釣り合いです)

前回の式(a)よりメイン・ローターのトルク反力を求めます。RM = 75PM/(2πnM) から
テール・ローターの軸の位置にかかる力は J = RM/C=75PM/(2πnM)/C となります。
テール・ローターは θ だけ傾斜しており J に釣り合う力はローターの推力 LT の水平分力LTHであり LT の垂直分力 LTV = LTH tanθはメイン・ローターを助ける浮揚力となります。

つぎに左下の左側面図と右の後面図から、
同様にテール・ローターにかかるトルク反力は RT = -75PT/(2πnT) となります。
回転方向が反時計回りのため力の方向は(-)とします。
このトルク反力を打ち消すためにメイン・ローターの中心では K = RT/C=-75PT/(2πnT)/Cの力が必要です。
PT = ηTFγPM としていましたから K = -75 ηTFγPM/(2πnT)/C となります。
さらにテール・ローターは傾いているので水平方向と垂直方向の分力(それぞれ KHKV )に分解します。

これらの LTH、LTV、KH、KV にメインローターの揚力 LMV とヘリコの自重 W を加えた五つの力の釣合を求めることになります。水平分力の KH はメイン・ローターを傾けて釣合わすのですが今回は数値計算を省略します。

----------------------(釣合計算)------------------------

テール・ローターがメイン・ローターのトルク反力を打ち消す力は、
LTH = 75 /(2πnM)・ηGB・(1-kE )PE /(1+γ)/C
テール・ローターを傾けることで寄与する浮揚力は、
LTV = 75/(2πnM)・ηGB ・(1-kE )PE /(1+γ)/C・tanθ

テール・ローターのトルク反力はメイン・ローターが打ち消します。ところが傾いているために、分力が生じます。(通常のヘリコでは KH ではSinθ= 0KV では cosθ= 1 となります)
水平方向に
KH = -75/(2πnT)・ηTF ・ηGB ・( 1 - kE )PE ・γ/(1+γ)/C・sinθ
垂直方向に
KV = -75/(2πnT)・ηTF ・ηGB ・(1 - kE )PE ・γ/(1+γ)/C・cosθ
KH
は機体を右にスリップさせますからメイン・ローターはサイクリック・ピッチ操作でローター・チップ・パスを左に傾けて打消しています。
KV はメインローターの浮揚力を減らす方向にはたらかせています。逆のほうが良いはずなのに、なぜか・・・は置いておいて。

ようやくテール・ローターを傾けた効果の検証に入ります。
・ 力の釣合から
LMV + KV + LTV = W
・ 重心まわりのモーメントの釣合から
LMV + KV = ( 1/e - 1)・LTV           e = E/C
KV の向きはメイン・ローターの浮揚力に対して(-)ですからシングル・ローター機のメイン・ローターはツイン・ローターやコ・アキシャル・ローターより働き者のようです。

なぜテール・ローターのトルク反力を機首を下げる方向に働かせるのか、固定翼機と同様の機首下げの感覚を付与するためか、エンジンの出力を少し大きくして安定化しておくのか、考えても理由はよく分かりません・・・(テール・ロータのトルク反力が上向きになる方向に回転している機体はロビンソン R-22 やミル Mi-8 などに見られるがほとんどが下向きのようだ・・・酣燈社 世界航空機年鑑の図面や写真等より)

さてふたつの式を LMV + KV でつないで整理すると W - LTV =  ( 1/e - 1)・LTV より      
E = (LTV/W)・C = 75/ (2πnM)・ηGB(1-kE)/(1+γ)・PE/W・tanθ

テール・ローターを傾けて得られる重心許容範囲の拡大効果は両ローターの軸間距離には関係なく荷重当り馬力に比例しエンジンの回転数に反比例するといえます。
θ= 90°にすればこの数式がタンデム・ローター機に応用できるかというと、できません。そもそも横方向の分力 LTV 自体がなくなります。この場合は RM = RT として釣り合っています。すなわち90°に近づくにつれてテール・ローターの直径も回転数もメイン・ローターに近づいていきます。

伝達効率は 2014年10月の記事のオスプレイで出てきた例で、 ηGB , ηTF0.96 程度と推定できます。

次に前後のローターへの動力分配比γ は前々回のチヌーク vs ヘイローの比較プレゼンより10-15%とあったが、実際のテール・ローターにかかっている馬力は傾斜しているため 1/cos20°= 1.064 ほど大きくなり、γ= 0.11-0.16 と修正すべきでしょう。今は中間のγ= 0.13 程度に仮定しておきましょう。

残っている数値は計算時の条件として前々回の諸元表から、 W は最大離陸重量、P は最大出力を使用します。

W = 33,300kgf
nM = 179/60 = 2.98/s
PE = 4,380 x 3 / 1.014 = 12,959 PS 

補機駆動馬力については強引な推定をせざるを得ません。入手できた中の小という分類に入るヘリコでは運転時の出力の5%程度としている。主な補機はギヤ・ボックスなどの効率による発熱の冷却であり動力に関係しています。

大型になると空調、軍用途になると発電機の追加や油圧ポンプの大型化などが考えられますが5%といえど648PSとなりますから十分賄えると考えられます。で、この値を採用しておきます。
kE = 0.05

以上で計算は可能です。

E = 1.36m

さて、ヘリコの釣合は、機体重量と馬力の関係は最大値の場合には釣り合っているとしていいのですが、重量が変わった場合に釣り合う馬力は理論値では重量の(3/2)乗に比例しています。 PPL=0/PE = (WPL=0/W)1.5 として計算すれば推測できます。

・・・で、有償重量(ペイロード)を 0 として見ましょう。先々回の諸元一覧表より

WPL=0 = 19,700kgf 
PPL=0 = (19,700/33,300)1.512,956 =5,895PS

E = 0.41m  

-------------------------(結論)--------------------------

一見、スーパースタリオンの重心許容範囲は最大負荷時にはチヌーク並にあり、軽負荷時はシングル・ローター並みに小さくなるということですが、全く無意味とは思いませんけれど(重荷重を搭載してホバーリングしている、高速で飛行している、つまり高出力をつかっておれば傾斜テール・ローターの効果は出ています)これが素晴らしい性能かというといささか疑問があります。

CH-53E のローターシステムを簡単にまとめると重心許容範囲の拡大というより掃海用浮舟を牽引するために仮想重心を後方に移すメカニズムだと言えます。

たとえば普通のシングル・ローター機でロープを機体の前につないでエンジンの出力を上げると前につんのめり、後ろにつなぐと機首を無理やり上げることになる。問題は重心の位置ではなく、どこにロープをつなぐかです。

つまり、メイン・ローター、テール・ローター、重力に加えて牽引ロープからの力を含めた四つの力(空気抵抗などは無視)の釣合の範囲を広げる目的でテール・ローターの推力を傾斜させ、巨大なスポンソンに搭載した大量の燃料は隔壁の間を移送されて基本的なトリムを取って使われると考えられる特殊な機体といえます。(巨大な燃料タンクは航続距離を伸ばすことに異論はありません)

安定して牽引するためにはメイン・ローターが回転している逆立ちした円錐の頂点から牽引する船の舳先に結んだ線上にかかる力が(ロープの重さを含め)釣り合えばよい。そのためには重心の余裕が後方にあることは都合がよい。実際にCH-53E には牽引ロープと機体をつなぐブーム(支柱)がメイン・ローター後方の天井に格納装備されています。

さてこのメカニズムに伴う副作用はいくつかあります。

まずヨー(首ふり)運動をする場合に左ならテール・ローターのピッチ(つまりは必要な馬力)を大きくし、右なら小さくすることで行います。したがい上向きの分力も増減し、右向きならお尻は上がり、左なら下がる副作用がついてまわります。

これにはテール・ローターのトルク反力(K)も関係しメイン・ローターのチップ・パス・プレーンの傾斜や動力の増減ひいてはエンジンの出力の調整も関係しています。テール・ローターの馬力は増えればメイン・ローターの馬力が減り、チップ・パス・プレーンが傾けば実質浮揚力も減ってきます。

以上は静的安定からの予測ですが力の変化は三軸三方向の振動現象をともない動的安定性という分野になります。

この振動現象を発散(拡大)させないで収斂(安定)させる動安定の確保はコンピュータによるエンジン出力の制御に加えてメイン・ローターのピッチにチップ・パス・プレーン(つまりスウォッシュ・プレート)の制御を含めてマン・マシン・システムの中で人間を排除して行われることになりました(自動化の本質です)

構造的にはテール・ローターにもサイクリック・ピッチ・コントロールを追加して上に向かう分力を制御すればより良い。サイクリック・ピッチそのものよりローターの傾きを調整(フラッピング)できればよい。

(ここではホバーリングについて話を進めていますが、ほとんどのヘリコのテール・ローターには前進飛行にメイン・ローターと同様に生じる上下の半分の速度差による不釣り合いを吸収する成り行きのフラッピングのメカニズムがあります)

前々前回に CH-53Eのリンクで示した図面ではテール・ローターはフラッピング動作をしているようです。こちらのリンクの テール・ローター部の写真 には取付け部にアクチュエータらしきものがあります。

ローターのジャイロ効果を見込んで上下の首ふりができる方向にあり、可能なのかもしれないが詳細はわかりません。

AW139 のテール・ローターの細部は こちら のずっと下のほう。

航続半径はさて置いて、スーパースタリオンが存在する理由は艦載機として運用できる舟艇を曳航または牽引できるトラクター・ヘリコがほしいの一言でしょう。
(この機能だけに限ればタンデムのほうが優れている)

CH-53E に採用された傾斜テール・ローターは軍用の技術的な産物と言えそうです。海軍には比較的甘い米議会はさらに大型化した CH-53K キングスタリオン の就役を承認するのでしょうかね。シコルスキーも正念場を迎えたようです。

ただ、4回前に示した比較図のようにシングル・ローターの実用ヘリコの大きさでは圧倒的にロシアに負けていますから国家威信をかけてヤンキー魂で踏ん張るのかも・・・そんな余裕あるのかな。

さて欧州では三発のシングル・ローターで開発年次が古いせいかテール・ローターを直立させている(常識的な)多用途機のアグスタ・ウェストランドAW 101 を同様の目的で改造しており、日本の海上自衛隊もスーパースタリオンの代替機としてこちらを採用をしました。(初飛行1987、就役2000 ローター径(枚数)18.6(5)/4.0(4)m 最大離陸/有効積載重量15,600/5,443kgf )

なんでもかでも、アメリカの最新最高の機種で揃えたい日本の自衛隊としては英断でしたね。

併せて、日本にいる民生用途のアグスタウエストランド AW139 の運用には細心の整備と操縦技術で無事故の就役を全うされることを祈念いたします。

2015年7月29日 (水)

キネマ航空CEOの 「シングルとタンデムのあいだに」 の巻 その 2

(承前)
シングルとタンデムの相違は(その 1 )の6番目の図の説明のように許容重心位置の範囲にあります。

H54e_work_space1abホバーリング状態で考えると考えやすい。

ローター・ブレードの先端が描く円をピッチ・パス・プレーンと呼びその円の面積(ローター・デスク・エリア)が固定翼機の主翼面積と飛行速度にあたる。

このときブレードは機体の重さで下からあおられた番傘のように反り返っている。

無風状態のホバーリングではローター・デスク・エリアが水平となった状態であり、成り行きでその中心軸の真下に機体部分の重心がくる。

このときの中心軸はローターの機械的な駆動軸と必ずしも一致はしない。

この辺りはローターを制御するスウォッシュ・プレートとコレクティング・ピッチ・コントロールの回をご参考に・・・(ずいぶん前になるなあ)

シングル・ローターの機体の静止姿勢は重心位置による成り行きで一義的に決まるのですね。左図はCH-53A-D 以前のタイプに相当します。(テール・ローターはメイン・ロ-ターに直交しておりトルク反力を打消して正常に機能している状態です。)

そこでシコルスキー社は考えました。(閃いたのかな) Ch53_hovering_balance

メイン・ローターのトルク反力を打消すテール・ローターの推力を上向きにしてやれば、力は小さくても梃子の原理でメイン・ローターの揚力をカバーして重心位置の許容範囲も広げられるのではないか !

それを実行に移したのが CH-53E でした。

シコルスキーのエンジニアが選んだのは20°でありました。三角関数(tan 20°)からはメイン・ローターのトルク反力に対抗する力の36.4%の力を揚力に回せそうです。

もちろん、増加するテール・ローターの仕事量はエンジンから供給してもらいます。いっぽうメイン・ローターの仕事量はその分減少します。機体の重さは同じですからね。

これらの力の釣合いを求めるには二つのアプローチがあります。

ひとつはエンジン出力から始まる二つのローターの推力からはじめる方法。これにはローター(プロペラ)効率という係数が独立して必要となる。

もうひとつは、とにかく自重に釣合ってホバーリングしているのだからメイン・ローターのトルク反力と釣合うテール・ローターに働く力の影響を中心に進める方法がある。

後者は発電機、油圧ポンプ、冷却ファン駆動、などなどプロペラ効率を含めてすべてをひとつの仮定で(まあ常識的な値に)収めることができるので今回はこちらで進めます。

まず、図中の用語から、( )内は単位

・ 動力回り
 PM
:メイン・ローター出力、PT:テール・ローター出力 (PS)
 NM:メイン・ローター回転数、:テール・ローター回転数 (rpm)
 RM:メイン・ローター・トルク反力、RT:テール・ローター・トルク反力 (kgf )
 (添字の M はメイン、T はテール)

・ 力と自重
 J:メイン・ローター・トルク反力(テール・ローターで釣合う) (kgf)
 K:テール・ローター・トルク反力(メイン・ローター・ローターで釣合う) (kgf)
 LM:メイン・ローター揚力、LMV:メイン・ローター垂直分力、LMH:同水平分力 (kgf)
 LT:テール・ローター揚力、LTV:テール・ローター垂直分力、LTH:同水平分力 (kgf)
 (添字の M はメイン、T はテール、V は垂直方向、H は水平方向)
 W:機体重量 (kgf)

・ 寸法関係
 C: ローター軸間距離 (m)
 E: メイン・ローター中心から重心までの距離 (m)
  θ: テール・ローター傾斜角 (deg)

各ローターのトルク反力は次式で計算できる。
 T=75P/(n) (kgf ‐m)・・・(a)
   P=(1/75)(2πn) T (PS) :仏式馬力の覚え方は角速度(1/s)にトルク(kgf-m)を掛けて75で割る。
 n = N/60 (1/s) 分単位を秒単位に換算
 P = (1/1.04) x shp 英国馬力(Hp)を仏式馬力(PS)にする換算式
 (アメリカの公称馬力は英国馬力を採用して軸馬力shaft horse power(shp)で記載し国際標準(ISO)単位のKwを併記するようだ。ちなみに日本は仏式馬力がJIS化されている)

-------------------------------------

ここから前半に述べた仮定の話になります。

まず、上図にはないエンジン出力 PE と図にある二つのローターに分岐された出力 PMPT との関係です。

PE は、まず補機類を駆動する PACC が差っ引かれてローターの回転数に合わせるギヤ・ボックスに入ります。ここで歯車の噛合損失などでさらに低下します。ここでは伝達効率ηGB という考え方を使います。つまり、二つのローターに利用可能な出力は P( M+T ) =ηGB ( PE - PACCと乗じて使います。

PACC といえども PE の一部なので kE = PACC/PE として P( M+T ) =ηGB ( 1 - kE )PE としておきます。

さらにここでテール・ローターに分岐され PT となるのですが、ギヤボックスからの伝達には等速ジョイントを備えたドライブ・シャフトを経てテール・ローターの向きに方向を変えるトランスファ・ギヤ・ボックスを通るためここでも伝達効率ηTF が生じます。

ここで γ= PT / PM テール・ローターの動力分担比を導入しておきます。ただ、ηTF がこの分担比の中に含まれているかどうかははっきりしません。しかし参考書の文意からすると含まれているようで、テール・ローターの実質馬力を PT とすると γ= (1/ηTF)PT / PM となります。

以上を整理しておくと

P( M+T ) =ηGB ( 1 - kE )PE = { PM + PT /ηTF } = (1 + γ) PM より
PM = ηGB( 1 - kE )PE /  (1 +γ)
PT = ηTF・γ/ (1 +γ)ηGB( 1 - kE )PE   

推定もしくは仮定が必要なとなるηGB ηTF γ についてはこのカテゴリーで何度かそれらしい数値を上げてきています。

補機類 PACC の消費動力は不明ですがどこかの文献から探してなんとかすることにして、PE から図の釣合式の計算に必要な PM  と PT が推定できます。

つまり必要なローター推力からローター効率を介してでなくても「浮いて釣合っているという条件だけ」でホバーリングに必要な馬力は推定できます。

次回は図の釣合式を整理して重心許容範囲となる e もしくはを E 計算して前回のチヌークと比べてみましょう。

ローター推力を計算せずに最大馬力で本当に浮くのか、ですって ? ・・・エンジンには、時間制限はあるけど最大馬力よりさらに大きい離昇馬力という強い味方があります。まずは信じましょ !

プロペラ(ローター)効率といってもエンジンが賄っていることには変わりはありません。

以下、(その3)に続くのココロだー

 

2015年7月15日 (水)

キネマ航空CEOの 「シングルとタンデムのあいだに」 の巻 その 1

(承前)・・・で、”あいだ”に入る前に”シングルとタンデム”の直接対決です。

出所はボーイング・ロータークラフト・システムズが2000年代の後半にインド空軍に提出したパワーポイントによるチヌーク売り込みのプレゼン資料・・・ミーリ、今では(カーモフと合併して)ロシアン・ヘリコプターズの Mi-26 vs CH-47 つまりはインド空軍の現行機種であるハローでは軽いので)ヘイローチヌークとの優劣です。

突っこみどころ満載の内容は軍高官と同席する技術スタッフ相手の発言を引き出すコミュニケーション・テクニック・・・かな?色付き、実寸は こちら のサイトから。

18_ch47vs_mi261.改良された搭載能力

以下の(内は当CEO の感想で元の説明文ではありません)

シングルローターではテールローターに使われる10-15%のエンジン出力がツインローターでは搭載能力に上昇限界高度さらに飛行コントロールに使える。

(ことばでは正しいのだがヘイロー の10-15%の矢印の向きはおかしい。

前々回の 同一縮尺による比較 で示すように ヘイローチヌーク の二回り以上大きいがここではキャビンの大きさはほぼ同じになっている・・・)

2.風の方向に関わる運行能力

チヌークは、
A.45ノット(風速では23m/s)の横風や追い風での作業で制限される(流される)ことはない。

ヘイローは、
B.強い横風でのホバー作業は制限される。
C.比較的弱い追い風でもホバー作業や操縦は危険。

チヌークには他と比べられないホバーや着陸時の安定性の存在を示唆している。

3.強化された着陸進入能力

運航基準をいっているのか操縦方法を言っているのかよく分からないがチヌークのほうが高高度からホバーできて垂直下降に入れるということらしい。ヘイローは最終段階でも前進速度が必要??)

(ホバー能力自体は積載能力の優劣も関係する。ヘイローの最大離陸重量はチヌークの2倍以上ある)

4.より小さいローター・ブレード

小径のローターのほうが狭い地形での離着陸が容易。チヌークは後部ドアや右のサイドドアで人員や貨物の搬入搬出が効率よくできる。

(この図ではローター・ブレード長の縮尺率は同じのようだ。

地上ではチヌークの前後のローターには高低差があり、どう見てもフロント側は斜面との間隔はほとんどないようだけどね)

5.より大きい後部の積載・搬出作業能力

シングル・ローターのテール・ブームが邪魔になる。テール・ローターが回転していると危険である。タンデム・ローターが回転していても作業の邪魔にならない。

チヌークの作業写真ではローターを止めており、一言でいえばトラックがよりカーゴドアに近寄れる程度の差。

ちなみに図のトラックの車高ではチヌークだって積載できない。写真を使った錯覚誘発を意図してる・・・?)

6.重心の許容範囲

チヌーク は二か所のリフトで 4ft (1.2m)
ヘイロー では一か所のリフトなので 2 ft (0.6m)

 - 積載の柔軟性
 - 速やかな搭載作業
 - 吊り下げやロープ作業への影響が少ない

(これはその通り。タンデムヘリコの存在理由そのもの)

7.ダウンウォッシュの大きさ

チヌーク 60 MPH(26.8m/s)
ヘイロー 88 MPH(39.3m/s)

スリング作業の地上要員の安全性とリスクといった言葉の使い分けがされている。

(これは3.と表裏の関係であり固定翼機の翼面荷重に相当するローター回転面荷重の比較に他ならない。

チヌークの場合は各ローターに2分された荷重と小さいローター回転面積との関係になる)

8.チヌークの高高度におけるあらゆる地形対応能力

基本は上昇限度の違いと後部の貨物扉の形状の違いによる半着地状態の運用性のアピール。

(インドは世界有数の高山地帯を中国との間に抱えている)

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2012年の記事では、売り込みが功を奏したのか、IAF (Indian Air Foece)は航空機調達を従来のソ連偏重からアメリカへも広げつつあるようです。

もちろん冷戦後の新興プレイヤーとしての天秤の支点を探りながらですが・・・

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以上は用途を含めた機種選択権のあるユーザーに対するプレゼンでの優劣比較といえます。

技術的な比較となれば積載能力が同等の、たとえば、C-53 シリーズの中からえらばれた機種が対象になります。でもペンタゴンからプレゼン資料が漏れてくることはないでしょうね。

axlegeeksのサイトが行っているヘリコ・フリークが投票するCH-53K vs CH-47D/F比較アンケートでは 3 : 4.3チヌークが優勢のようです(本記事出稿日現在)。なお、CH-53K キングスタリオンはまだ就役していません。新設計の価格は高騰していくようですね。

2015年7月12日 (日)

キネマ航空CEOの 「あんた、ヘリコのなんなのさ」 の巻 その 2

あんた、ヘリコのなんなのさ」 って「なんなのさ?」 と問い返されましたが・・・宇崎竜童氏の曲(1975)もさることながら阿木燿子さんの歌詞が断片的によみがえったようです。

たぶんヘリコと固定翼機の良いとこどりとしたと言われるオスプレイに聞いてみたい潜在意識だと思います。燿子さんの詩をなぞれば「あんた、ヘリコに惚れてるね」で終わるのですが。

で、今回も歌謡曲のもじりで、「シングルとタンデムのあいだに」ですけど、その間にあるのはCH-53E です。

(承前)
さて 、シコルスキーCH-54  CH-53D  シースタリオン のベースとなり、さらに CH-53E  スーパースタリオンに変わります。スーパーになってからもすでにアラフォーの齢(よわい)を重ねておりますね。

ある意味ではシコルスキーの軍需部門の存続にために米海軍によって維持されてきた機体ともいえます。スーパースタリオンからキングスタリオン CH-53K へのサイズアップも行われるようですがどうなることか・・・

さて、リンクを張ったCH-53E の三面図を前回の系統図の側面と比べてみてください。系統図のほうはスポンソン(胴体側面の張り出し部)の大きいMH-53E と呼ばれる機雷掃海用途の機種です。スポンソンは多くの場合ガソリンタンクや引き込み式主輪の格納スペースになります。

ちなみに気密式のガソリンタンクが大半を占めるスポンソンは密閉式の機体とあいまって着水時のフロートとして機能しています。

往年のボーイング314や一連のドルニエなど翼端にフロートのない飛行艇を思い出します。どちらかに傾く翼端フロートがない分、水上ではどっしりと安定感があります。その代り空中ではいかにも鈍重に見えてしまいますね。見た目ですけど。

さて、CH-53D の図面と比較するとCH-53E はメインローターの直径が 22m から 24m と 2m 拡大されブレード数も 6 枚から 7 枚に増えています。

またテールローターのブレード数は 4 枚と変わりませんがその直径は 4.9m から 1.2m 拡大されて 6.1m になりました。そしてブレードの干渉を避けるためにテイルブームを含む胴体は 1.9m 延長されました。

CH-53E は先行していたCH-53D を含めて通常では垂直に立つテールローターの回転面が進行方向に向かって左に 20°傾斜している点がヘリコに関わる最大に特徴となっています。

テールローターはヨーのコントロールに使われますがCH-53E では機体に対しプッシャー・タイプの配置です。

CH-53E では、他用途(武装侵攻、掃海、空中給油、兵站輸送等)に応じたエンジンの出力の増強に加えて駆動系の冗長設計としてエンジンを 2発 から 3発 への変更が要求されました。3,925shp x 2 から 4,380shp x 3 へ、言ってみれば大出力/大量燃料消費をともない民間用途からはなれていきました。

その前にフェザー、フラップ、ラグのヒンジを七組持った複雑なローターヘッドや入力に見合ったギヤボックスとその陰にあるNo.2エンジンの冷却など基本レイアウトのバランスが崩れているようにも感じられます。

CH-53 系列は米国の軍用呼称ですが民間型はS-65 となります。ただし、社内記号でもあり輸出仕様にも使われており純民間機仕様の生産機数は分かりませんでした。

ちなみにマリーン・ワンと呼ばれる歴代の米大統領機仕様のヘリコはシコルスキー社から選ばれていましたがCH-53 系列から選ばれることはありませんでした。

さて、本題のCH-53Eで採用された20°傾斜したテールローターのはなし、「シングルとタンデムのあいだに」は次回に・・・乞うご期待 !

2015年7月 5日 (日)

キネマ航空CEOの 「あんた、ヘリコのなんなのさ」 の巻 その 1

久しぶりに読み返すと、CH-47 チヌークのドライブ・トレーンから入ることになっていたのですが、すでに書いていたことをまとめるだけなので省略します。だいたいこんな図になるはずでした。Drive_shaft2また以前に予告していた救難用ヘリコに使われるローター直径15~20mクラスの準大型ヘリコとの比較も後回しとして、今回は現在運航されている大型ヘリコをベンチマークとして検証してみます。

さて、そのサイド・バイ・サイドオスプレイのライバルには現役として活動中の米のタンデム・ツインチヌークシングル・ロータースーパー・スタリオンの2機種。それにロシアン・シングルのヘイローの1機種としました。(表は左クリックでポップアップします)
H-53Eのローター回転速度の誤記を訂正しました。(2015.7.9)

Spec_of_super_helico
オスプレイを除きローターの直径が20mを越えています。チヌークの場合は合計面積からの直径換算で(1.4倍して)25.9mとなりクリアしています。

EUではローター径で20mを越える大型機はないので当CEOの独断と偏見でエントリーからはずしました。

オスプレイの等価径は16.4mなので準大型機となるこのクラスと同じなんですけどね。

主な寸法諸元は下記の図面から得ました。

・ ベル ボーイング V-22 オスプレイ (1)(2) 
・ ボーイング CH-47  チヌーク


・ シコルスキー CH-53E スーパースタリオン
      (参考) CH-53D シースタリオン
・ ミル Mi-26 ヘイロー (1)(2)

いずれも、現在運用されている大型ヘリコの型式別の代表です。

オスプレイはサイド・バイ・サイドかつコンバージョン型の代表、チヌークはタンデム型の代表です(いずれもライバルはいない)

スーパースタリオンはシングルローター型でかつトライ・エンジン、加えて傾斜テール・ローターでの最強のエントリー。同じくシングル・ローターのヘイロー(NATOのコード・ネーム)は軍用中型輸送機ロッキード C-130 ハーキュリーズに匹敵するビッグ・リフター。(いずれもヘリコの基本構造のデファクト・タイプだが、いまのところ追随機はない)

オスプレイはというと開発に16年を掛けていることになる。あとは生産機数がどこまで伸びるかに興味が移る。(日本は奇特にもその間の開発費用の分担をするつもりのようだ)

これらの大型ヘリコの開発はかなり古い。比較的新しいスーパースタリオンも、前身のシースタリオンで見ると1960年代で半世紀前の基本コンセプトといえる。生産数は突出したチヌークを除き300機あたりが需要の限界のようである。

Huge_helico_of_the_world_rev

上図(図上の左クリックでポップアップ)はそれぞれの大型ヘリコの開発年次とサイズを並べたもの。(ピクセル単位で縮尺をそろえた寄せ集めです)

1950年代に入ってヘリコのタービン・エンジン化や双発エンジンの出力を統合するギア・ボックスの開発が進んできました。

ソビエトがミルMi-6 で先行していたのは、軍用途もありますが、冬季には人を拒む未開のツンドラやタイガ地帯では交通網の整備や維持がむつかしく国土経営には大型ヘリコは必須の運輸インフラとなりえるからでした。

1986年のチェルノブイリ原子力発電所の事故ではインフラの一端を担った Mi-6Mi-8Mi-26 などの大型ヘリコの一部は発電所上空での鎮静化作業で浴びた放射能汚染のために現地で廃棄処分となっている。いっぽうではそれらの機の搭乗員の被爆やそれに伴う被害については日本国内ではほとんど報道されていないようだ。ちなみに Mi-8 のローター径も20m越えの大型機です。

クレーンヘリコと呼ばれるカテゴリーに入るミルMi-10 では資材と同時に要員の輸送のための客室を備えていました。

ちなみに当キネマ航空のエアポート・ツアーで上映している「エアジャック 907 」では Mi-10K がクレーン作業用の格納式ゴンドラを下げた状態で背景に登場します。

映画の舞台はギリシャとトルコの係争地である1990年代のキプロスですが、こちらのコラムに書いたギリシャの歴史は基本的に今と変わらぬ指導者不在なのか国民不在なのか分からぬ混乱です。軍政のなごりが今も跡を曳いているいるのですかね。

(といったことでキプロスの現在はギリシャのデフォルト騒ぎに巻き込まれえらい目に会っていますので書き換えが必要なのだけど当CEO は今のところ手をつけられない。その辺は斟酌して読んでくださいね)

さて、クレーンヘリコではアメリカはシコルスキーCH-54 で追随しました。形態としては頭と背骨と尻尾だけでお腹にあたるキャビンはコンテナにして必要ならば背骨に取り付けるという徹底した軽量化が図られました。吊り下げ作業のオペレーターが乗るゴンドラは鰓(えら)のあたりに後ろ向き固定されて(上は背骨が幅広のひさしとなっているが)下方視界は良い。

アメリカは広いといっても中緯度の気候であり空港などのインフラの整備はソビエトより格段に有利であります。したがい超大型の輸送ヘリコの必要も需要もほとんどないといえます。

大型のクレーンヘリコとしては送電線の鉄塔の設置やファイヤーファイター(消火ヘリコ)などに退役したCH-54 が使われているようです。 追記:加えて1992年には型式認証を含めた製造権を引き継いだエリクソン エアクレーン社による改造および新造機も同社により運用され販売及びレンタルとメインテナンスが継続されている。民間型の型式名を継承して今ではS-64F になっているようです。

民間の輸送で超大型の回転翼機が必要となれば Mi-26 、固定翼機であればアントノフ An-225 ムリア をチャーターしたほうが経済的でもあります。日本にも飛んできたことがありました。(閑話休題)

で・・・この CH-54 CH-53 シースタリオンの原型となります。

(つづく)

ご参考
その他のヘリコのサイズと比較したい方は こちら 。
helico scale comparison で画像検索して飛びつくと Google では遮断される危険なサイトがあります。ご注意を ! !

2014年10月23日 (木)

キネマ航空CEO オスプレイとチヌークのエンジンを比較する

チヌークの観察に入る前に、オスプレイで使ったエンジンの馬力などのスペックは正しいのか、をチヌークと併記して比較検証をしてみます。 

オスプレイの場合はメーカーのロールス・ロイスのサイトにはたいしたデータがなく、駆動系のスケルトン図に添えられていたデータを採用し、チヌークではメーカーのサイトのデータを使用しました。

とりあえずは以下の表のようになります。

オスプレイの軸馬力(Shaft Horsepower )と離昇(Takeoff )馬力は、チヌークでは中間(Intermediate )最大馬力と最大(Maximum )馬力に相当しているようです。

オスプレイのツー・エンジン・オペレーションで使われた 5,223 hp は、チヌークの連続最大(Max. Continuous )馬力に当たり、シングル・エンジン・オペレーションの遷移モードで使われる 6,838 hp はチヌークでは不測時対応(Contingency )出力に相当するようです。

ただし比較するといっても、高度や温度、湿度などの空気密度に関係する諸条件が異なっているので絶対値の比較にはなりません。

また、連続出力を越えた出力には運転時間の制限が必要ですがオスプレイでも同じ条件で設定されているのかどうかも、はっきりしていません。

結論から言えばここに示したデータにも、(メーカーの測定方法や公表方法に加えて、時期の差、受け取ったメディア側の数値の丸めや背景の省略、等々で)いろんな数値があり、どれが正しいのかは、わからない・・・が正解のようです。

Engine for OSPREY for CHINOOK
Exterior View Ae_1107c T55l714
Type Rolls-Royce
T-406
Haneywell
T55-L-714A
Specifications
Contingency 5,069 shp (2 min) SL,59 F
4,000 shp 4,000 ft/95 F
Takeoff 6,380 shp (SL,103 F)
Maximum 4,867 shp (10 min) SL,59 F
3,750 shp 4,000 ft/95 F
Shaft Horsepower 6,150 shp
Intermediate 4,527 shp SL,59 F
3,350 shp 4,000 ft/95 F
Max. Continuous 4,168 shp SL,59 F
3,000 shp 4,000 ft/95 F
OEI 3,584 shp (SL, 90 F)
One Engine Inoperative Cruise (20k, 0.55 Mn)
Length 77.1 in (1,958 mm) 47.1 in (1,196.3 mm)*
Width 28.8 in (732 mm) 24.25 in (615.9 mm) Dia.
Height 34.9 in (886 mm)
Weight 971 lbs/440 kg (dry) 830 lb/377 kg*
*w/o tailpipe
Max Turbine Temp 2,200 F
Power Turbine Speed
15,000 rpm (V-22 hover)
12,750 rpm (V-22 cruise)
(N1) 18,720 rpm
(N2) 15,333 rpm
Attitudes
Pitch +110, -90
Roll 55
Applications Osprey CH-47 Chinook
Bell 309

写真の状態は、実装時に必要なテール・パイプ(軍用では必須のIR サプレッサー赤外線減衰排気管)や前方のコンプレッサーの吸気口の前にある遠心式防塵フィルターは付いていません。これらは性能測定時にも装着されてないと思われます。

写真では左側(エンジン前方)にある円筒状の部分は回転しません。オスプレイではプロップ・ローター・ギヤボックスに連結する支柱、チヌークではエンジン・ギヤボックスの台座です。駆動(出力)軸は中央の穴の奥にあります。

用語を補足すると SL (Sea Level)は海面高度、shp (Shaft Horsepower) は軸馬力、OEI は単発運行不能(One Engine Inoperative )馬力。F は温度の単位で華氏(Fahrenheit)表示。

OEI は双発以上の機体が単発で飛行する場合、飛行を維持できなくなる馬力らしい。オスプレイの場合、(たぶん定格)軸出力の60%に相当するようだ。

ただし、付随する数値の単位がよく分からない。0.55Mn(ノーチカルマイル ? )は許容飛行距離で1km程度か・・・20kが ft 単位の高度とすると6,000mとなり・・・降下角80.5度のオートローテーションではない飛行状態で緊急着陸できる出力・・・となるが・・・(この解釈は今のところ閑話どころか当てずっぽ、です)

チヌークのパワー・タービン・スピードの(N1) はコンプレッサー・タービン、(N2) はパワー・タービンの回転数です。左側のオスプレイの表記とは関係ありません。ターボシャフト・エンジンの排気側タービンは分離されている2軸構成ですので一つのエンジンに二つの回転スピードがあります。(ターボファン・エンジンのN1、N2 の関係は後日出てきます)

オスプレイも同じですが N1 はわかりませんでした。出力回転数は、巡航(クルーズ)時にはホバーリング時の82%まで低めています。

言いかえれれば機速に合成されるローターの回転数も82%低下しており、ブレード先端の合成対気速度も低くなりますから、パワーレバー全開時より高速で飛行できることになります。プロップローター径の大きさからすると固定翼機モードでも同様と考えられます。

オスプレイらしいスペックは姿勢(Attitudes)の項目で、ヘリコ・モードで20°弱の機首上げ、固定翼機モードで90°の機首下げ、どちらのモードか判らないが左右のロールでは55°の傾斜での運転を保証するようです。

これらは、自動車では一部のエンジンで採用されているドライ・サンプ方式と呼ばれる潤滑オイルの回収と循環配分の構造に関係しています。ただし実機で加速度がかかった状態での試験によるものか、どれくらいの時間を耐えうるのかなどは、ここではわかりません。

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オスプレイのエンジンはアリソン・エンジン社で開発されました。その時の呼称はAE 1107C-リバティでした。

1995年には会社ごとロールス・ロイス社に買収されて公式名称も変更されていますが社内名称はAE 1107Cが使われているようです。

GM から始まるアリソンの社名は消えました。GM・アリソン時代のレシプロ・エンジンでは液冷V12気筒の V-1710 がロッキード P-38 などに採用されていました。

いっぽうのチヌークのエンジンはライカミング社のT55-L-7シリーズからはじまります。テキストロン・ライカミングを経てライカミング部門はアライドシグナル社に売却され、そのアライドシグナル社はハネウェルと合併したうえで、企業規模は小さいが軍民の市場に通りの良いハネウェルと名前を替えたのでハネウェル・エアロスペース社になりました。

現在のハネウェル社はコングロマリットで、軍民にまたがる多角企業となりエンジン部門はその一部門です。エンジン部門の歴史だけでも実際はシグナル・オイル時代のギャレット・タービン・エンジン社の買収も絡んでもっと複雑です。

アライド社は化学品や染料、シグナル社は石油会社で創業しました。その源流のなかにアメリカの中小の航空エンジン・メーカーの二社が組み込まれていった歴史であります。

ハネウェルは石油産業向けのプロセス制御機器やシステムで創業しました。タービンの開発そのものには直接の関係はなかったようですが行きがかりでエンジンにその名を冠することになりました。

あ ! ハネウェル製となったライカミングの空冷水平対向4気筒、6気筒の軽飛行機用エンジンでは昔の名前ででているのかなあ・・・ライバルのコンチネンタルはテレダイン・コンチネンタルになっているけど・・・中国政府系企業の傘下になっています。

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さて、簡単にまとめれば以上のように公表されたスペックは、比較するにもあてにならないと言うことになります。でも企業の変遷の歴史は面白い。

コングロマリットといえば日本では三菱といわれますが、企業のダイナミックさ、ではアメリカには及びませんね。

さて、チヌークの観察にはどの値を採用すべきか・・・それが問題だー!

2014年10月 8日 (水)

キネマ航空CEO シングル・エンジン・オペレーションのオスプレイの駆動系を観察する

さて、いよいよ片肺飛行です。といっても固定翼機のプロペラと違ってヘリコではすべてのローターが翼ですから回転し続けなければ揚力はつくれず、舵も利きません。ヘリコ・モードのオスプレイも同じです。

今回は、チヌークとは決定的に異なるスラスト・ベクター機としてのオスプレイの駆動系の設計意図について観察します。

1eng前回の ツー・エンジン・オペレーション と同じような図ですが、#2(右) ENGINE の回転数は 0 rpm 、つまりエンジンは停止しています。

各部位の略号は、その 前回 に記憶していただいたので省略して細部を見ていきます。

PRGB のギヤ・レシオは自動車のトランスミッションと違って、変えようがない。PRTR を効率よく使う回転数も変わらない・・・ので ENGINE の回転数はツー・エンジン・オペレーションと変わらない。したがい PMDS ICDS の回転数もそれぞれに同じである。

ジェット・エンジンは基本的に回転数は一定で、負荷に応じて燃やす燃料の量を変えて出力(hp)を調整している。出力を下げるため燃料を少なくする場合は最大回転数のパーセントで回転数を管理する)

オスプレイも、シングル・エンジン・オペレーションでは、同じ回転数のままで ENGINE 出力を、 6,200 hp として、定格出力 5,223 hp118.7 %977 hp )の連続緊急出力にしている。

では、この緊急出力はどう伝わるのか・・・書き直した下の図に移ります。赤い字の #2 (右) ENGINE が駆動系から切り離されて、動力の流れを示す矢印が#2 (右) PRTR に流れています。

Single_engine_operation_rev1b
この図のスプラグ・クラッチの位置については 前々回の機能説明 に沿った説明用です。本当にこの位置にあるのかどうかは不明です。詳細は次回に。

#1 (左) PRTR への出力と PMDS への出力を合計すると 6,038 hp で、 #1 PRGB の効率は 0.97 となる。ツー・ローター・オペレーションで計算した値より 1 %ほどよい効率となっている。

同様に計算した #2 (右) PRGB の効率は 0.96 となっている。この値はツー・エンジン・オペレーションの効率と同じである。

#1 (左)と異なるが、このあたりは計算誤差(たとえば kw から hp などの換算時)として 0.96 に統一しても問題はないだろう。

左右のローターの消費動力は同じなので左の PMDS #1 の出力と右の PMDS #2 の入力差の 947 hpTAGB #1, 2 / ICDS x 2 /MWGB の効率損失と各 ACC の消費動力となる。

MWGB への入力は、前回のツー・エンジン・オペレーションでは左右の ENGINE からの合計で、0.96 x 2 x 511- A ) hp だった。

今回のシングル・エンジン・オペレーションでは、 MWGB の入力は、喪失した側の PRTR に向かう動力から分岐される。

したがい、この図から MWGB への入力を計算すると、{ 0.96 x ( 3,550 - A ) - (2,603 + A ) / 0.96 } hp となる。

式中、 0.96 は、仮のTAGB の伝達効率、 A は、TAGB に付属する ACC の消費動力。(詳しくは一番下から二番目の章立てを読んでね)

二つエンジン・オペレーションでの式を計算して(かなり大胆に)丸めて並べると、 ( 981 - 2 x A ) hp( 697 - 2 x A ) hp になる。 両式の差は、284 hp で、シングル・エンジン・オペレーションのほうが小さい。

シングル・エンジン・オペレーションでは、 MWBG に直接入力される APU の出力 300 hp で補完されて (997 - 2 x A ) で不足分がカバーされる・・・と考えられる。

また、シングル・エンジン・オペレーションの遷移モードでは PMDS4,350 hp の出力が伝達されている。これにローターの出力を加えると 6,838 hp となり、連続緊急出力よりさらに 800 hp 多くなっている。

PRGB の効率 0.96 を使ってエンジン出力に戻すと 7,050 hp となる。この値は定格出力135 %となり短時間緊急出力として運用するようだが、どのように使われるのかよく分からないが・・・

その状況を、元の図から得られる情報だけで考えると、シングル・エンジン・オペレーションで、左右のナセルを固定翼機モードから回転翼機モードへティルトさせる動力を作るため MWGB に連結された ACC が一時的に必要とする入力を確保するためのようだ。

短時間緊急出力時MWGB 入力を計算すると、{ 0.96 x ( 4,350 - A ) - (2,603 + A ) / 0.96 } hp 、の計算結果を丸めて ( 1,465 - 2 x A ) hp となる。

この値はツー・エンジン・オペレーション時に APU の出力 300 hp を加算した場合の (1,281 - 2 x A ) hp と等価と考えられる。

(短時間といっても、何しろジャイロ効果で動こうとしない PRTR を無理やり起こし、かつ反力による機体のピッチ挙動<固定翼機モードへは上げ、ヘリコ・モードへは下げ>を抑えながらだから・・・それなりの時間はかかるけど・・さらにつけ加えればティルトによるトルク反力は水平尾翼の揚力の制御で釣合わされる。つまり低速では行えない。)

試乗記(全てではないけれど)を読んでもはっきりしないが、ツー・エンジン・オペレーションで最大積載状態の離陸をする場合は、始動時のまま APU の運転を続けている可能性がある。

いっぽう、軽積載の離陸や燃料消費後に機体重量が軽くなった状況での着陸であれば APU を使わなくても ENGINE(s) の余力でナセルをチルトできるのでは・・・と考えられる・・・)

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これらから、ツー・エンジン・オペレーションのオスプレイの固定翼機モードの飛行では APU を使用していない・・・

しかし、エンジン一基の出力を失ったシングル・エンジン・オペレーションで、同じ状況の飛行をする場合には APU を作動させている。

その理由は高高度飛行時に必要な MWGB から駆動される機内環境機器に必要な動力を得るためと考えられる。したがい、低高度では、 APU は必要ない・・・と思われる。

135 % の短時間緊急出力を使うシングル・エンジン・オペレーションでの遷移飛行は、着陸進入降下時に固定翼モードから回転翼モードへの転換をおこなって、緩角度進入(Shallow Approach)による接地をおこなうためと考えられる。

すなわち、最悪でも PRTR のブレード先端が地面(願わくば滑走路)に接触しないような、ある角度(不明)以上の遷移モード、あるいは回転翼機モードにまでナセルをティルト・アップするためと考えられる。

同時に、遷移モードではフラップ(正確にはフラッペロン)を適切な角度に下げてキャンバを増やした主翼にプロペラ後流を当て、揚力を向上させる、固定翼機でいうバック・サイトでの揚力、を確保する。(バック・サイト : 高揚力装置と大動力に頼って低速側でおこなう飛行域。新明和 US-1、US-2 の離着水時に行われている)

・・・と同時に傾斜したローターとして得られる推力の上向き分力を揚力として使うためと考えられる。

いい換えると、オスプレイは、翼面荷重がどうのといわれるが基本的にヘリコ・モードより固定翼機モードのほうが効率よく飛行できる。

遷移モードの飛行制限速度の範囲は機体重量により 148-222 km/h となっている。シングル・エンジン・オペレーションでもこの速度は出せる。

類似の固定翼機と比べると速い着陸速度になるが遷移モードでの滑走着陸のほうが選ばれると考えられる。

いずれにせよオスプレイAPU はスラスト・ベクタリング機の緊急時のシステムに組み込まれており、遷移モードにおいての対応は固定翼機の緊急着陸と同じ扱いと思われる。これらの作動がコンピュータ制御で行われるのかどうかは定かではない

さて、回転翼機モードでの緊急時の状況もこれらの数字から推定は可能だがそれは別の機会に。

ちなみに、シングル・エンジン・オペレーションで使われる二つの緊急時出力(定格の 120 %135 % )をツー・エンジン・オペレーションに適用すると、それぞれ ( 2,819 - 2 x A ) hp ( 4,355 - 2 x A ) hp になり MWGB 入力とすると過大すぎる。

この場合は、 PRTR 側に供給されて軍用機として(時間制限のある)機動に使われる可能性が高い。
(ただしヘリコプターの離着陸を観察していればわかるが、オスプレイといえども低速の VTOLでは軍事的に有効な力まかせの機動といえるような効果は出せないと考えられる)

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さて、 TAGB で駆動される ACC の消費馬力 A hp は、あらゆる飛行モードでいつも同じ値とは考えられない。参考資料もなく、変数 A のままにしておきます。

TAGB の効率も PRGB で算出した 0.96 を使ったが実際は効率の悪い傘歯車を使っており、もっと低い(0.9 前後 ? の)はず・・・です。

しかし、 ACC の消費馬力 A hp など未知数のままので、便宜上 PRGB と同じ値にしました。(効率は 1 としてもよかったのだけど、どんな機械にも損失があることを示しておきたかった・・・混乱させたなら、ゴメンナサイ)

APU の出力から推測すると、 始動時には、揚力を発生させないブレードのピッチで PRTR が一定速度の回転(空転)をしていると仮定すれば・・・

オスプレイ一機の MWGB 分を含めたすべての ACC の駆動馬力と PRGB を含むすべてのギヤボックスの発熱に相当する損失馬力の合計は最大で 300 hp と考えられる。

二つのエンジンが停止すれば、これがオートローテーションに入るべき PRTR にかかる抵抗になるはずなんだけど・・・

ACC から供給される操縦に必要な動力は搭載している蓄電池や蓄圧機でカバーできるかもしれないし・・・
二つの ENGINE 出力を失っても APU は生きている可能性が高いと思われ・・・
不用不急の発電機、油圧、空気圧のポンプなどの ACC は回路を切断または調整されて抵抗を最小限にした空回り状態にすると考えられ・・・

つまり、 300 hp がそのまま PRTR の回転抵抗になるとは考えにくい。

と、なれば APU は、 PRTR の回転を続けさせる補助動力にもなる・・・
そうなれば、セミ-オートローテーションができる・・・可能性も残されている。

もちろん、これらのマシン・サイドのシステムの作動がコンピュータ制御で行われるのかどうかは定かではない。

ただ、オート・ローテーションを継続させがたい形状の PRTR ではあるが、それで騒がれた割には、そうなる前にカバーする手順は設計的にはいろいろと考えられているようだ・・・が、専門誌も新聞も技術的な調査報道はしていない。(あるようだと、ご面倒ながらコメントで知見をご教示ください)

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次回は、チヌークの、ツーも、シングルも、オペレーション全部ひっくるめて観察してオスプレイの疑問点を振り返るのココロだー! 

でも資料があるかな ? なければ寄せ集めからの独断だ !

2014年10月 2日 (木)

キネマ航空CEO ツー・エンジン・オペレーション時のオスプレイの駆動系を観察する

ICDS の馬力と MWGB の入力の計算式を見直しました・・・2014.10.03

(承前)
・・・ではどんな具合にオスプレイの動力が機体の中をめぐっているのか?
(いつもにも増して長くなりますが、末尾にクイズが二問あります。最後まで読んでね ! )

2engWEBではUS パテントの図面に、誰かが回転数と伝達馬力を書き込んでくれている。

お行儀悪いがそのまま使わせていただくことにする。ただし、もう少し見やすい(はずの)ブロック図に書きなおして下方に置いてあります。

観察する前に、まず、短縮記号のおさらいをしておきます。

ENGINE : (短縮されてないけど)エンジンです/
PRTRProprotor プロップローター/固定翼機のプロペラとヘリコプターのローターの合成語。
PRGBProprotor Gear Box プロップローター・ギヤボックス/ENGINE の出力を PRTR の回転数やTAGBの入力回転数にまで減速する歯車箱
PMDSPylon Mounted Drive Shaft パイロン・マウンテッド・ドライブシャフト/支柱(Pyron)の中を通って PRGB から TAGB へ動力を伝えるシャフト。
TAGBTilt-Axis Gear Box  ティルト・アクシス・ギヤボックス/PRGB から PMDS へ分岐された動力をさらに減速して主翼の方向に変える歯車箱。 PRTR を傾ける(ティルトする)中心軸となる
ICDS Interconnecting Drive Shaft インターコネクティング・ドライブシャフト/ 相互接続用駆動軸。図では Segmented drive shaft が使われている。こちらだと、分割式駆動軸
MWGBMid Wing Gear Box ミッドウィング・ギヤボックス/翼の中央でICDSを通って左右のエンジンからくる動力をACCを駆動する回転数にまで減速させる歯車箱。もう一つは、ICDSを連結する機能、いい換えればローターの回転を同期させる機能の一部
APUAuxiliary Power Unit オグジリアリイ・パワー・ユニット/補助動力装置。オスプレイでは MWGB に接続している。詳細は、後ほど MWGB といっしょに・・・

さて、書き直した図です。エンジン二基で運用しておりますから #2 (右)エンジン側は機軸に対して対称なので省略しています。2_engine_operations_rev1まず、Gear Ratio(ギヤレシオ)は、ギヤボックスの入力回転数÷出力回転数の比( i = n in / nout )で表わされます。

hp はヤード・ポンド法により英馬力を示します。また、ps(日本ではPSと表記)はキログラム・メートル法による仏馬力です。
ps = 2π x (n / 60 )x T / 75 で計算され n : 毎分回転数(1/sec)、T : トルク(kgfm)です。これを英馬力にするには hp≒ps/0.986 となります。

hpps より1.4 %大きくなりますが実質では同じです。 pshp に整合するように係数がきめられました。 ps は 10進法ですので仏馬力のほうに合理性があります。

仏馬力 ps の単位に注目すると[ kgfm/sec ]ですから 1 秒間に、何 kgf の重量を 1m 動かせるか、または 1 kgf の重量を 何 m 動かせるか、を表しますので『仕事量』と呼びます。

いずれにせよ hp (仕事量)はギヤボックスの効率を 1 ( =100%つまり損失ゼロ) とすると前後の仕事量は不変で入力馬力も出力馬力も同じです。
(ギヤボックスを通ったエンジンの出力は、回転数はギヤ比 i で割り、トルクはギヤ比 i を掛けて ps = 2π x { (n / i ) / 60 x i T / 75 } とになります。)

現実のギヤボックスでは熱に変わる損失が T (トルク)に現れ、出力側の ps (仕事量)は減少します。出力馬力÷入力馬力の比を効率 と呼び η= Tout / Tin = ps out / ps in = hp out / hp in となります。

さて、お気づきでしょうか? PRGB から PRTR への最大出力は 4,570 hp PMDS へは 511hp で、合計 5,081 hp です。エンジンの出力は 5,223 hp ですから差引 142 hp PRGB 内で熱に代わっているようです。入出力の比から PRGB の効率は 0.96 程度となります。(良すぎるように思えますけどね)

PMDS TAGB につながり、軸の向きを90度変えて ICDS に出力を伝えます。 TAGB もギヤボックスですから効率があるはずですが明確ではありません。

さて、ENGINE から TAGB まではティルトするナセル(エンジン覆い)内にあります。 ENGINE 本体はコンプレッサーが吸入する空気を分流して冷却します。

いっぽう、同じナセル内にある 「ナントカ GB 」 とつくギヤボックスは発熱した潤滑油を循環させて冷却するためのオイル・ポンプとオイル・クーラーそのクーラーに空気を送るか吸い出すクーリング・ファンなどが必要です。

これらのポンプやファンを駆動する動力は TAGB に付属する ACC (アクセサリー:補機)を通して取り出します。 TAGB も効率を 0.96 と仮定し、 ACC による動力消費分を A hp と仮定すると ICDS を通って 0.96 x 511- A ) hp MWGB に伝わります。

正確にいうと MWGB には右のエンジンからも同様に伝えられており、倍の 0.96 x 2 x 511- A ) hp MWGB の入力となります。(現実では ICDS などのジョイントでも損失があるのですが無視します)

MWGBには次の図のような ACC が付属しています。 ACC は、発電機 2、空気圧縮機 1 、作動油圧ポンプ 1 、潤滑系オイル・ポンプ 1 、オイル・クーラーのファン 1 で構成されています。

Us5054716s1
さらに MWGB には、入力軸である ICDS につながるローター・ポジショニング・ユニット(電気もしくは油圧モーター)とローター・ブレーキが付いています。

これは同期された左右の PRTR ブレードの先端が作る正三角形の決められた一辺が、格納時に ブレードの折り畳み機構が所定の位置になるように、またブレードを展開した駐機時に地面に平行になるように回転と係止(停止と固定)をする機構のようです。

そして、 APU としてハミルトン・サンドストランド製 T-62T-46-2 APU ターボシャフト・エンジンが接続されています。

APU にはオートマチック・スターター、オートマチック・クラッチ(機械的なスプラグ・クラッチは別にあるはず・・・)、その他もろもろのメカニズム を制御する全自動電子制御装置を装備されています。

オスプレイに装着した状態では不明ですが標準状態の軸出力は吸気温度や高度によって変わります。 300 hp から 225 hp 、回転数は 12,000 rpm 、限界実用高度は 5,334 m となっています。

コックピットに座って、(あなたの自動車の始動マナーと違い、マニュアルのコール・アウトでチェックをしながら)エンジン起動ボタンを押すと、まず APU が起動し、安定した回転をはじめたら電子制御クラッチを作動させ MWGB ICDS PRGB を経由してPRTR を回しはじめます。
APU を起動するにはそれ用の ACC も必要ですがここでは省略。)

しかし、APU の動力はエンジンと PRGB の間にある(はずの)スプラグ・クラッチのために直接 ENGINE を駆動して起動させることはできません。

MWGBACC は、ICDS を経由して停止状態からはじまる起動状態の ENGINETAGB  TAGB などに付属する ACC に代わって電力、油圧、空気圧を供給する ENGINE の始動装置として働きます。
(押し掛けできないオートマ車ではジャンプ・コードで隣の車のバッテリーから電力を供給してスターターを回すようなものです・・・親切で用心深いあなたは自分の車のエンジンを掛けてからコードをつないで上げるでしょ・・・閑話の押し売り)

MWGB のギヤ・レシオは不明だが、PRTRICDS には機械的につながっており、 APU の定格回転数と ICDS の回転数と整合させるとすると APU から ICDS 見たギアレシオは 1.825  ぐらいか・・・逆に ICDS から APU 見れば、逆数の 0.5479 の増速となる。ACC に対するギヤレシオは分かりません)

では、この APU はシングル・エンジン・オペレーション時にはどのように働くのか ?
賢明な読者は APU の出力とエンジンから伝わる MWGBACC への入力が違いすぎることに気がついたはず・・・ですが、すべて次回のこころだー。

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なお、 MWGBAPU の解釈はパテントの図を参考にしており、実際とは異なるかもしれません・・・念のため !

構造的に右エンジンは右ローターだけを駆動するわけではありません 。
実際の動力はICDS を通して(操縦などの人為もあれば風などの自然条件によって変わる)左右のローターの負荷の変動に合わせて、左右のエンジンが相互に動力を融通しあっています。(本文の説明では MWGBACC を駆動するだけの説明になっています。しかし融通される動力が大きくはないことも事実です)

ここで問題。二つ以上のエンジンの出力を合成して一つまたは二つのプロペラを回しているヘリコはたくさんあります。

では、固定翼機の名前を挙げられますか ? ヒント ! ダブル・マンバなんて聞いたことありませんか ? ・・・まだ、まだありますよ・・・成功したとは言えませんが・・・。

さらに一つのエンジンで二つのプロペラ(一軸二重反転式は除く)を回す有名な機体は ? ヒント ! プロペラは互いに逆方向に回転しています。

2014年9月17日 (水)

キネマ航空CEO オスプレイとチヌークの駆動系を比べる。(解答編)本当に同じなの ?

図差し替えのご連絡 2014/09/23

チヌークのアクセサリー(Accesaries)の位置において、「エンジン・トランスミッションから分岐」を「各ギヤボックスからの分岐」に変更し訂正いたします。

オスプレイの翼中央ギヤボックス(MWGB)にアクセサリーを追加いたします。あわせてAPU の動力の流れを変更しました。
理由につきましては、いずれも当CEOの早とちりであり、お詫びいたします。

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前回(2014.09.12 追記09.15)の記事では文章で説明した両機の動力の流れをブロック図で補足しておきます。

Power_flow_revision_2

ね ! 図にすると全く異なることがわかるでしょ。

ただ、チヌークのローターを下に持ってきたのは失敗だった。

二次利用するときはオスプレイと同じように一番上に持ってくるように書き直してね。画面に余裕があれば上から見た実際と同じ配置にもできますよ。(閑話休題)

なお、各ユニットの名称は技術用語ですので、先回の図からそのまま転記し、一部に補足を追加しました。

チヌークAFT は機体後方の、という意味です。
オスプレイの( )内の略号は次回使います。

以下を参考に慣れておいてくださいね。

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オスプレイではプロップローターとエンジンを切り離すSprag Clutch(ワンウエー・クラッチ)の位置がはっきりしません。

ヘリコのワンウェイ・クラッチはオート・ローテーション時に連れ回りをして大きな回転抵抗になるエンジンを切り離すためだが、双発以上のヘリコになると残ったエンジンの負担をなくすためにも必要です。

なにせ、ワンウェイ・クラッチがないと、止まった側のエンジンのタービンをローター回転数の数十倍の回転数で逆駆動することになる。

昔のヘリコではレシプロ・エンジンの回転数が上昇すれば遠心力で滑らかにつながる遠心クラッチが使われていました。エンジンが止まればローターは必然的に慣性で回り続けます。このときの操縦法がオート・ローテーションです。もちろん機械的なスプラグ・クラッチも自動的に同様な機能が働きます。(またの閑話休題)

したがい、オスプレイに、あるとすればPRGB(プロップローター・ギヤボックス)の中でターボプロップの構造と同じ構成の部分、かつPMDS(意訳でエンジンナセル内ドライブシャフト)に分岐する歯車の前にある、と思われます。

ヘリコのジェット・エンジンをターボ・シャフト・エンジンと呼びますが、基本は固定翼機のターボプロップ・エンジンと同じです。(しいて言えば出力軸の取り回しが異なる場合がある)

共通するのは、減速機を介してプロペラまたはローターを駆動するタービンはコンプレッサーと一体ではない。コンプレッサーを駆動するタービンは別にあるのでコンプレッサーの連れ回りはおこらない。

固定翼機のターボプロップでは・・・ワンウェイ・クラッチは使われていないようです。プロペラは、フル・フェザーリングで停止したタービンを増速する負荷と釣り合ってほぼ停止状態になると考えられます。(またまた閑話休題)

ついでに、(これも閑話か ? )

オスプレイICDS(分割式結合シャフト)は炭素繊維強化プラスチック製。大型トラックなどの自動車の推進軸にも使われている材料です。

チヌークFORWARD/AFT(前後)のシャフトは初期の機体では金属(たぶん鋼管)でできていた。一般的な後輪駆動や四輪駆動の乗用車と同じです。

しかし現在の性能向上型や改装タイプは炭素繊維強化プラスチックに変更されていると思われる。(推測です)

なんとかしてオスプレイの技術上の欠陥を政治的に見つけようとネット・ブラウズをしているかたには申し訳ないが、だから構造的に危険、の技術的根拠にはなりませんですね。

ただ航空機の構成としての利害得失はありそうです。次回はその視点から・・・

2014年9月12日 (金)

キネマ航空CEO オスプレイとチヌークの駆動系を比べる。(質問付)本当に同じなの ?

【先出し解答】 出題より3日経過しましたので追記・・・(2004/09/15 )

図面は こちら

タンデムチヌークでは、正常時は2台のエンジンの出力を結合ギヤボックスにいったんまとめて前後のドライブ・シャフトはそれぞれにエンジン1台分の出力を各々のローターに伝えて駆動します

・・・片側のエンジンがフェールすると正常な側のエンジン出力の半分を前後のローターに伝えます。

サイド・バイ・サイドオスプレイドライブシャフトは通常のフライトでは翼の中央にあるギヤボックスにつながる環境機器(空気を乗員の呼吸用酸素と防火用の窒素に分離など)などを駆動するための発電機、空気圧縮機、作動油圧源など ACC への動力を伝えるのみで、相互のローターへの駆動力はほとんど伝えていません

基本的にエンジンからプロップローター・ギヤボックスを介して直接プロップローターを駆動 しています。

・・・もちろん一方のエンジンがフェールすると残ったもう一方のエンジンの半分の動力をドライブシャフトを介してフェールしたエンジンの側のプロップローターに伝えます。

これは固定翼機モードでも重要な機能です。フェザーリングにしてもカフスを含めたネジリ下げで抵抗の大きいプロップローターを空転させながらの飛行ではそれこそ危険ですからね。

同じ飛行するにしても固定翼機モードの必要動力はヘリコ・モードのそれの5分の1から10分の1ですから、翼面積は小さいとはいえ 浮揚速度 以上(水平飛行および半径の大きい旋回が可能)の速度は維持できると考えられます。

その分、プロップローターを破損させる前提の着地は大変かも。開発時のオスプレイの構造変更は機体の前部と下部のクラッシュ・ゾーンの拡大と補強だったようだ。

以下、次回に続きます。(近日公開)
その前に、下の本文も読んでおいてくださいね。

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涼しくなってきたので、またオスプレイのはなしに戻ります。(キネマ航空の増便をサボっていつまで続くのかねー)

Osprey_fixed_wing_mode Osprey_helico_mode

左の図はオスプレイのヘリコプター・モードの駆動系(ドライブ・システム)の概観図。例により、左クリックでポップアップする・・・はず。

右の図は固定翼機モードで左翼側の詳細を示す図となります。右翼側は直訳すると「翼中央歯車箱 ( Mid Wing Gear Box ) 」をはさんだ鏡面対称となります。

左右のプロップ・ローターをドライブ・シャフトでつなぎ、いっぽうのエンジンが出力を失った場合に片側にエンジンが補完します。(といっても双方のプロップ・ローターの出力は半分になるけど)

そのドライブ・シャフトの両端に設けられたジョイントと呼ばれる一対の継手が出力元、入力先の歯車箱の取り付け誤差を吸収します。

一般的にドライブ・シャフトは、長くなると分割されて、個々のシャフトの共振振動数(危険回転数とも呼ぶ)が自身の回転速度(どちらも、時間あたり何回、で数えます)に重ならないようにします。

分割する理由を大ざっぱにいえば、長い軸は共振振動数が低くなります。弦楽器の音程は、弦が長ければ(重ければ) 低く、短ければ(軽ければ) 高い音が出る、と同じ理屈です。

なにしろ共振現象は減衰させるものがなければ理論上では無限大の大きさになり、構造物を簡単に破壊させてしまいます。

機体やドライブ・シャフトなどの構造物に対して作用すると考えられる振動数や(この場合はドライブ・シャフトの)回転数より高い共振振動数を持つようにそれらの構造物を設計します。(厳密には音のオクターブと同じで最も低い共振振動数の倍数の振動数で共振するのですがここでは踏み込みません)

(とはいえ、ジェット・エンジンのような高速回転に対して、より高い共振振動数を持つ構造物の設計はできないので、ジェットのタービンのような回転体は完全なバランスをとり、滑らかな回転をさせることが必須です。

でも共振振動数を低く設定すれば、外部から加わるゼロから始まる振動数は必ず構造物の共振振動数を通過することになります。したがいその共振点を速やかに通過する運用上の回避が必要です・・・閑話休題)

さて、分割されたシャフトとシャフトの間にもジョイントが必要です。なお、図には明記されていませんがジョイントの側にはシャフトを支持する軸受を設けて、回転するシャフトが暴れないようになっています。(この構造は自動車、特に四輪駆動の乗用車や大型のトラックのドライブ・シャフトで使われています)

航空機も自動車と同じで、ほとんどの部品が専門メーカーの製品の寄せ集めです。オスプレイの分割されたドライブ・シャフトは下図のようにグッドリッチ社のジョイントでつながっています。(グッドリッチといえばアメリカ車のタイヤを思い出されるかもしれませんが、名前込みでミシュランに売却されており、今は航空・宇宙産業のユナイテッド・テクノロジー社の一部門です)

Osprey_drive_shaft

このジョイントは、つないだ軸に角度が付いていても等速で回転速度を伝達できるダイヤフラム式等速ジョイントと呼ばれます。

オスプレイでは主翼の前進角に合わせてシャフトを這わせておりドライブ・シャフトにも前進角が付けられており、少なくとも中央部ではシャフトに角度が付いた状態でジョイント結合をする必要があります。

使われる等速ジョイントの原理は、喫茶店でのデートで出てくる飲み物に 2 本付いてくる、吸い口を曲げられる蛇腹の付いたストローと同じです。

角度をつけていっぽうの端を回してみてください。反対側も同じ速さでまわります。・・・と、とりあえず思ってください。(余談ながら自動車でも等速ジョイントは使われますが形式は異なり、完全な等速での伝達はできません)

もちろんオスプレイのジョイントは蛇腹ストローのように大きくは曲がりません。単体ではせいぜい数度から、きつい角度では複数枚のダイヤフラムを一体化したジョイントが使われます。

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次に、チヌークのドライブ・システムの概念図です。冒頭のオスプレイでは(当CEOが手抜きをしたため)二枚となっていた図が一枚の図に納まっているな、と考えてください。

Drive_shaft1

チヌークの前方ローターを駆動する長いシャフトも分割式シャフトが採用されています。したがいジョイントが必要となります。

しかしオスプレイに使われたグッドリッチのジョイントは採用されていないようです。オスプレイとは違いほぼ一直線上になっており必ずしも等速ジョイントの必要がないのかもしれません。チヌークが開発された時点では信頼性のある等速ジョイントは実用化されていなかったための駆動系の配置と言えます)

なお、いうまでもありませんが、チヌークは、上から見ると前後のローターの回転面が重なっており、しかもフラッピング機能で上下するローターのブレードが互いに干渉しないように、いっぽうのブレードとブレードの間にもういっぽうのブレードが割り込めるようにドライブシャフトで回転角の同期をとる必須の機能があります。

ローターが重なっていないオスプレイではドライブ・シャフトでのローター回転角同期機能は、飛行時に必須というわけではなく、格納時にローターの定位置を決めるために有用な機能といえます。

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「ヘリコプターとしてのオスプレイチヌークの相違は、ローターの配置が主となる進行方向に対して横と縦だけの違いしかない」、と説明されますが「駆動系の設計思想はかなり異なる」といったほうが正しい。

ここでお仕舞としようと思ったけれど、そっけないので次の一文を付け加えておきます。

さて問題です、どこが、どう、異なるかわかりますか ?

近日中に、この続きをもう少し追加します。また来てくださいね。

乞う、ご期待  !

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