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カテゴリー「MRJ」の36件の記事

2018年6月22日 (金)

キネマ航空CEO GTF はターボ・プロップではないがダクテッド・プロップファンに近づいているのかもしれないの巻

自力更生もとい校正中(できるのか?)及び一部工事中で公開しています。

まず、前置きから、

 2018年2月までに公表された欧州航空安全庁(EASA)から認証を受けているプラット・アンド・ホイットニー(P&W)のギヤード・ターボファン(GTF) の型式は次表となります。

 残念ながら三菱MRJ が採用する17Klbf と 15Klbfクラスは今のところありません。

  Class(klbf)   BOMBARDIER    EMBRAER  AIRBUS IRKT
19   PW1519G   PW1919G
21   PW1521G   PW1921G
  PW1521G-3
22   PW1922G   PW1122G-JM
23   PW1923G
24   PW1524G   PW1124G-JM
  PW1524G-3   PW1124G1-JM
25   PW1525G
  PW1525G-3
27   PW1127G-JM
  PW1127GA-JM 
  PW1127G1-JM
30   PW1130G-JM
31   PW1431G-JM   
33   PW1133G-JM
  PW1133GA-JM

   型式記号 PW●〇□□G-XY
    PW は新世代ターボファン・エンジンの民間用呼称(旧世代ではJT を使用していた)
    
G) はGTFを示す
    ● はエンジンのコンセプトを示す新しいブランドである「ピュアパワー」を「1」で示しているようだ。 
 
   〇 は仕向先コード・・・詳細は こちらこちら
    □□ はKlbf 単位の離昇推力値。ファン径やバイパス比にも関連・・・詳細は
こちらこちら
 
   -XY) は細分化された仕様のコード

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さて、ここから本題です。

 GTF はこれまで考察してきた(運動量理論で、ではありますが)ファンのモーメンタムフローとコアジェットのブラストの速度が等しい場合に推進効率が最大になるというターボファンの原則から離れているのではないか・・・の思考の始まりです。

 表では、三菱MRJ がライバルとする在来機とその延長上でブラッシュアップが行われた新型機の新旧エンジンの比較ができるエアバスエンブラエルから下位クラスを選び比較を行いました。
ボンバルディエ C シリーズもありますが GTF エンジンはエアバスエンブラエルと同じクラスなので手抜きします。

 注目する個所は生データとしてバイパス比、ファン直径、N1 回転数、N2 回転数、減速ギヤ比、計算結果としてファンのチップの周速の相対比較です。

 なお、三菱MRJ-90 MRJ-75エンブラエルE175-E2 が採用する予定の 17Klbf と 15Klbsクラスのエンジンは詳細なデータが公表されていません。このため回転数は一つ上の19Klbf クラスの値を使用しました。

 また減速ギヤ比はそのまま使用するとチップ周速がマッハ(以下 M ) 0.87 となるようですので当CEO が以前に写真から解析した 2.8230 を使い M 0.95 としました。

 理由は基本的にファンの揚力(推進力)は速度(回転数)の二乗に比例しているからです。

 これでも低すぎるようですのでファンを駆動する減速ギヤ・ボックスへの入力となる低圧段圧縮段の回転数 N1 はもっと高いのかもしれません。 では高圧圧縮段の N2 はどうでしょう。

 また、従来型に採用されていたエンジンの N1N2 との比較も興味をそそられます。

で、結論はどうした ! ですって?
まずはクリックで下表を別窓で開いて値の吟味から・・・。

New_generation_vs_conventional_turb まず、最下段の高度12,000mに於けるブレードのチップ・スピードは認証されている GTF では M 1.2~1.14 を示しています。

 これに対し既存のターボファンでは M 1.60~1.51 であります。GTF は明らかにチップ・スピードの低下を狙っている。

 さらに、新世代の LEAP でも GTF には及びませんが M 1.60 から M 1.37 に低下させています。

 その一方では仮定値を使い赤字で示した MRJ では M 0.95 ですが音速以下にする理由があるのでしょうか・・・疑問が生じます。

 チップ・スピードはファンの直径と回転数で決まる。その回転数は低圧段圧縮機の回転数 N1 で決まる。

 エアバス A320neo で見る GTFN1 は 10,047rpm でありギヤの減速比を換算したファンの回転数は 3,281rpm となります。

 従来型の A320ceo のエンジン CMF56 のファンに直結する低圧段圧縮段の回転数 N1 である  5,200rpm との比較では、 A320neo のファン回転数は減速機により 63% に低下しますが、低圧段圧縮機の回転数は193% にまで増加しています。

 次に A320neo の (GTF ではない) LEAP エンジンの N1 は 3,856rpm で、これがファンの回転数になります。その結果、ファン回転数と低圧圧縮段回転数は逆に 74% に低下しています。

 A320ceoCMF56) を 1 とした比率に直すと 1.93 、0.74、 1 となります。

 では、高圧圧縮段の回転数 N2 を比べてみましょう。A320neoGTF)、A320neo(LEAP)、A320ceo の順に、 22,300rpm、19,391rpm、15,183rpm と増加しています。

 A320ceoCMF56) を 1 とした比率に直すと 1.47 、1.23、 1 となります。この解釈は後に回して推力も比較してみましょう。

 まずその前に、推力をの単位をそろえるため CMF56 の [daN](デカニュートン) を [Klbf](キロポンド)に換算します。換算係数は 2.2481/1000で求まる。

 したがい、GTF の型式記号に使われる公称推力である離陸時推力(Take-Off Thrust )10,453daN は 23.499Klbf となります。
(すみません。表では力の単位 [Klbf] のはずが [Klb] となっています。読み替えてくださいね)

 A320neoA320ceo に対して 3.5Klbf (1,588kgf)の推力マージンを得たようです。 A320ceoCMF56) を 1 とした比率に直すと 1.15 、1.15、 1 となります。

 エンブラエル E190-E2GTF) と E190CMF56) との比較では推力を除き同様の結果がでます。計算してみてください。

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・ N1N2 回転数から想像される結論

 GTF では N1N2 共に、LEAP では N1 は低下しているが N2 は、増加している。 とりもなおさず圧縮機の駆動に噴流エネルギーを割いて圧縮性能を向上させている。言いかえればジェット・ブラストの速度エネルギーは落としている。

 見方を変えればファンのモーメンタム・フローとジェット・ブラストを等しくすることで得られる推進効率の最大化から離れて、エンジンのサイズをシュリンクさせて同等の出力を得る意図がある可能性がある。もっと言えば燃焼効率を含めて改善している。

 ほぼ同等の推力を持つ両エンジンの高低両圧縮機の段数の合計は GTF の 11 段に対し LEAP では13 段を必要とする。その差は高圧段側の 2 段であります。

 それらの圧縮段を駆動するタービンの段数の合計では各々 5 段と 9 段だが、低圧段に対しては 3 段と 7 段である。 その差の 4 段分が LEAP では GTF のギヤボックスの減速比に相当することになる。

 ちなみにファンを駆動する力はトルク(軸力)だが回転を伴っている。 したがい(駆)動力として時間を含んだ次式が成立する。
   P = 2πNT/60
     P:動力([W = kg・m/s3])、N:回転数([rpm = 1/s])、T:トルク([N・m = kg・m/s2])

 この式で示されるように、動力を一定とすると「回転数」と「軸力」の積は一定となる。

 GTF ではタービンの出力は高回転数で取り出し減速機で回転数を落としトルクを大きくする。 LEAP では低回転で取り出した高トルクをそのままファンに伝える。

 ファンの回転数は ファン・ブレードの容量N1 タービンの出力(動力)の関係で決まります。 いまのところプロペラのようにファン・ブレードのピッチ角は変えられないのでスロットル(正確にはパワー)レバーで N1 回転数を変えることになります。

 ただし、GTF では減速ギヤによる効率の低下を伴います。

 同等の出力を持つ GTFLEAP の比較ではバイパス比とチップスピードでは GTF のほうが優れているようだ。

 両エンジンとも公称値では従来型より優れていることは間違いなさそうだ。

 ただし、GTF では減速ギヤ・ボックスの信頼性やその減速ギヤで得られるコア・エンジンの、より高速となる N1N2 回転数による振動や潤滑の問題などは未知数と言えそうだ。

・ チップスピードから想像される結論

 GTF ではファンのチップ・スピードで限界のある N1 回転数を大きくしながらファンの回転数を落としてバイパス・レシオに直結するファン直径を大きくすることが可能になります。

 ファンの空気の進入角度はカウリング内のデヒューザー効果で低下することは既述(受売りだけど)済です。 いずれにせよ空気の合成進入速度は音速を超えており、後日追記するつもりです。

 MRJ に使用される 17Klbf および 15Klbf クラスに仮採用した 19Klbf クラスの N1 回転数と写真より計算した減速比の組み合わせのチップ・スピードは M 0.95 であり通常のファンの設計速度より低すぎるように思える。

 GTF のラインアップでは出力の低い、言いかえれば、ファン径の小さいタイプでは N1N2 回転数を大きくするようだ。 仮に19Klbf クラスの チップ・スピードより低い M 1.1 に合わせると 12,284rpm となる。

 この結論は、低圧段圧縮機が 1 段少ない 2 段で構成される最低位のクラスの諸元が発表されるのを待つしかない。

・ 以上からの総合所見

 基本的に GTF はダクテッド・プロップファンに向かっていると言えなくもなさそうだ。

 次のテーマはターボファンの効率優先の原則(バイパス比を大きくするとコアエンジンの出力も大きくする必要がある)を変えてもコア・エンジンの総エネルギーを低減できる可能性があるのかどうか・・・です。

 なお、EASATCDS には燃焼温度のデータもあります。熱力学のほうからの考察は機会があれば・・・ということで・・・。

2018年5月31日 (木)

キネマ航空CEO レシプロ・エンジンの BPR を考え、ついでに零戦の排気管も考えるの巻

 ターボファンでは高バイパス比化が進み、現在のバイパス比(BPR)は 8 :1 前後、 P&WGTF では エアバA320neo シリーズの中で 12.5 :1 がアナウンスされています。

 前回のウィキペディア(英文)の記事ではターボプロップ・エンジンの BPR50-100 :1 となっていました。

 ではレシプロ・エンジンの BPR は、というお遊びの回です。

 結論から言うと、機体はボーイング 377 ストラトクルーザー、エンジンは ワスプ・メイジャー R-4360 の組み合わせの BPR300 :1 程度に相当します。

 だからどうした、は終わりのほうに・・・過程を読んでから、考えてから、にしてくださいね。

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 レシプロの航空機用ですからシリンダー・ヘッド部とピストンに挟まれて燃焼する空気とプロペラで推力を出す空気がありますから以下の数字が分かれば計算はできます。
 まあ、当らずと言えども遠からずと言ったところですけど・・・

 まず、必要なのはエンジンの排気量、回転数(測定基準がいくつかある)それに過給機(ターボチャージャー)の性能。これで燃焼に関係する(つまりコアエンジンの)時間当たりの空気量すなわち流量がでる。

 次に、プロペラの直径と飛行速度(巡行時とか最高速時とか)でプロペラを通過する流量が出る。面倒なのはエンジン回転数と飛行速度との関係だがまあ後から常識的に判断することにして・・・

 首題の計算には関係ないがおまけでエンジンと一体のクランクシャフトとプロペラ軸の間にある減速機のギヤ比も上げておく。

 対象とするエンジンには正統派レシプロの究極形といえるエンジンを選びました。

 プロペラ メーカー/形式 ハミルトン・スタンダード/定速式
  直径/翅数 17ft(5.1816m)/ 4

 エンジン メーカー/型式 P&W / ワスプ・メイジャー R-4360-B6
      構成 空冷星型4列7気筒(28気筒)/過給/減速比 2.667
      排気量 4,362.5in3 71.489L(0.071489m3)
      公称回転数(100%) 3,990rpm
      許容最大回転数   4,300rpm
 過給機 メーカー/型式 ゼネラル・エレクトリック/CHM2(ターボチャージャー)
               n.a. / n.a. (遠心式スーパーチャージャー)
       総合加給圧 n.a.

  このエンジンを採用した航空機は軍/民、生産/試作のみを合わせると25機種以上あるがここでは量産された民間機から、と言ってもフランスのシュド・エスト SE.2010 アルマニャック はわずか 8 機のため・・・残ったのは、

 機体  メーカー/型式 ボーイング/モデル 377 ストラトクルーザー 就航期間1947-1961年(56機)
      最高速度/高度    326knots(603km/h)/25400ft(7620m)
      最大巡航速度/高度 295knots(547km/h)/n.a.
      巡航速度/高度    262knots(483km/h)/25400ft(7620m)

 なお、R-4360 系のエンジンを使う最大の機体はコンベア B-36 、プッシャー・タイプのプロペラ直径は 19ft(5.7912m) です。6基を装備しますがこれでも足らずアフターバーナー付ターボジェットのゼネラル・エレクトリック J79 を 4基を追加装備しました。お役目は戦略空軍の花形として写真や映画で活躍しました。
 中には空中発進戦闘偵察機の母機(これはやってみた)や、計画倒れの原子力推進化計画や、で就役期間は 1945-1959年(384機) の13 年間でした。

 また、B-29 を改設計した後継機の B-50R-4360 系に換装されます。プロペラ直径はモデル377 と同じ 17ft でした。就役は1947-1965年(371機)の17 年間ですが爆撃機としては 1955 年までの7 年間で余生は偵察機、空中給油機として過ごしました。
 モデル377 の兄貴分のモデル367C-97 スラストフレイター 輸送機で就役期間は1947-1978年(60機)30年間ですが、空中給油型の KC-97 などをふくめれば888機でした。この中からエアロスペースラインズ社で改造されたスーパーグッピーなどのグッピー・シリーズが生まれます・・・(閑話休題)

 さて、回転数の(とりあえずの)定義をしておきます。

 公称回転数(100%)は最大連続出力としてさしあたり最大巡航速度時の回転数。

 では巡行時の回転数はというと公称回転数の 90% の 3,590rpm としておきます。出力は、回転数 X 軸力(トルク)に比例しており、大まかに 100% 時の出力の 75% の出力で巡航していると思われます。トルクは 83.3% にまで低下しています。

 許容最大回転数は公称回転数の 108% に相当します。離昇出力時の使用時間を決められた回転数としてのなのか、最高速度時なのか、はたまた緩降下時などの過回転禁止の限界回転数なのかはっきりしません。とりあえず最高速時の回転数としておきます。
Tu-114 の回 と設定が違うが機速自体も違うので・・・気になれば再計算をお願いします)

 これらより排気量にエンジンの回転数を掛けて物理単位[m3/s]に直してエンジン( 1基)を通過する単位時間当たりの空気流量を計算する。

  最高速度 X 許容最大回転数(108%) 5.124m3/s
  最大巡航速度 X 公称回転数(100%) 4.754m3/s
  巡航速度 X 巡航回転数( 90%)     4.274m3/s

 次に、プロペラの回転面積に各速度を掛けて同様に物理単位[m3/s]に直してプロペラ( 1基)を通過する単位時間当たりの空気流量を計算する。   

  最高速度時    3,532m3/s
  最大巡航速度時 3,204m3/s
  巡航速度時    2,830m3/s

 これらより、

 レシプロエンジンのバイパス比 = (プロペラ通過空気量 / エンジン通過空気量) -

 となるが加給されたエンジンではそうは問屋が卸さない。

 バイパス比は重量比(理論的には質量比)なのでを通過する空気量に該当する高度での過給後の比重(密度)を体積に換算した係数を乗じてやる必要がある。

  さて、計算を始めますがバイパス比の定義からはかなりトリッキーな計算になります。眉に唾を付けて考えながら読んでくださいね。先ずその前に・・・

 細かく言えば断熱圧縮なのでポアソンの法則で高度の影響を補正して、となるが今回は物理や工学の便覧にある標準大気の表を使って地上(海面高度 SL)の大気密度(kg/m3)を 1 とした高度7,600mの密度の比 ρ76000 = 0.449631 が得られる。同様に圧力比 P7600/P0 = 0.372639 もある。
 (ついでに温度は地上の 15℃ に対して -34.341℃ となっている。気温差では絶対値で -50℃であります。各々に7,700m の値もあるので20mの差を比例配分で補正できるがそこまでしてもねー。 )

 過給機の性能は今でも大気圧との差圧をブースト圧として示されている。おそらく測定しやすいからだろう。

 しかしバイパス比は質量比を扱っているので密度比の逆比 = 1/0.449631 = 2.224 が海面高度で無過給エンジンが吸入する空気量に相当する充填比となる。
 (一般に航空エンジンの性能には測定した高度は付記されていません。巡航高度での充填空気量を無過給時の海面高度と同じにした理由は単に比較しやすいからです。ちなみに同機の上昇限度は9,800m です )

 したがい先の式は、次の式となる。

 レシプロのバイパス比 = プロペラ通過空気量 / (充填比 X エンジン通過空気量) -

 厳密には分子と分母に計算する高度の密度を乗じて質量にするが消去されている。
 (この式から燃焼系で圧縮される空気量が大きいほど BPR を小さくできる理屈が説明できる)

 高度がらみでは過給比も高度に関係する。高度7,600mでの充填比が2.224の場合、過給機による増加分は 1.774( = 2.224 - 0.4496) となる。

 過給機の性能は高度(気温と圧力)の変化でも変わらないとすると海面高度での充填比は 2.774( = 1.774 + 1.000) となり過充填でノッキングを発生させるなどでシリンダーなどエンジンの強度や寿命上では望ましくない。

 したがい、低空ではウェイスト・ゲート・バルブで排気をバイパスさせてタービンの性能を下げる機構が設けられる。せっかくある過給機だから地表付近でも多少の過給はされているはずだが詳細は不明。

 いっぽう、高高度では過給された空気の一部ははエンジンに入らず機内の与圧のために使われるのはジェットエンジンと同じであります。(もちろん計算では無視しています)

 さて、断熱圧縮と言いながら無視してきた圧縮されて体積を減らすことで派生した高熱の空気は高空の低温によって冷却器で冷やされて、酸素を含む質量の構成比は同じままでさらに体積を減じてシリンダー内の吸気容積空間に充填され、さらに圧縮されます。

 いっぽう高温の空気は機内与圧にも使われます。何しろ外気温は -35℃ ですからね

 これで空気が薄く氷点下の高空でもエンジンは地上と同様に多量の燃料を燃やせ、搭乗員も薄着で、乗客も私服のままで搭乗できることになりました。

 ということでボーイング 377 ストラトクルーザーBPR は、

  最高速度時    308.9 : 1
  最大巡航速度時 302.0 : 1
  巡航速度時    295.7 : 1

となります。どうです ? 結構大きいでしょう !

 ちなみに過給なし(自然吸気)で海面高度を最高速で飛びぬけた(現実にはあり得ませんが)とすると充填比は 1 となり計算上の BPR は 689.3 :1 となります。

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 結論として、

1. BPR (バイパス比)は飛行速度域が低いほうが大きい
  (コア・エンジンとなるレシプロの排気やターボ・ジェットのジェット・ブラストの貢献度の差を含めてです)
2.逆に言えば BPR は速度域が高いほど小さくなる
3.速度域を高くするには出力の大きいエンジンが必要になる
4.超音速機のエンジンはアフターバーナー兼用の低 BPR のターボファンである
5.亜音速上限域のターボファンの高 BPR 化は常用速度域の低下を内包している

 ・・・の五段論法が成立するとも言えそうだ。

 その五段論法の使い方は、
 当キネマエアラインズフライト 003 で上映中の 「キャッチ 22」で !! (コマーシャル)

 プロペラにしてもターボ・ファンにしても仕事は「質量」X「速度」であります。
「速度」を一定とする条件では「質量」の増加は本質的に回転部分の直径(すなわち面積)を大きくすることでしか増やせない。もちろんコア・エンジンの強化が必然となる。

 同じ飛行速度で BPR を大きくするターボファンの仕事効率の向上には燃焼効率の向上と機体とのマッチングが重要であることは何度も述べている。

(以下の零戦の排気管の追記で出稿完了です)

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 過去に栄光を求めるのか、何が何でも日本が一番なのか、一部の航空マニアはいろんな疑似科学や神懸かり理論を編み出すようです。 以下、軍用機編です。

 三菱零式 21型から 32型の集合排気管から 52型ではカウルから飛び出して真後ろに向かう単排気管に変えました。 この改良で排気のジェット推進効果により最高速が著しく向上したという説はいささか「贔屓の引き倒し」のようです。

 戦闘機で、(水平時で示す)最高速度が必要なのは逃げる相手を後ろから追撃する場合です。 本当に必要なのは進攻時や帰投時の通勤時間を短くするより速い巡航速度です。
(スロットルの最大開度は最高速度より上昇性能で必要です。 速度も上昇性能もスロットル開度で制御する出力に関係してはいるけれど、最高速度が速ければ上昇性能も優れているとは限らない・・・閑話休題)

 さて、プロペラの推進効率は最高速度に近づくと低下するにしても、レシプロエンジンの相当バイパス比から見て推進力にかかわるエンジン排気の質量はプロペラに比べてかなり小さい。 ここはぜひ零戦各型の BPR による推力と排気推力を計算してみてください。

 必要な追加データ項目は 2本の集合排気管と 14 本?? ある単排気管の①断面積と②排気温度から計算する排気の体積から得られる速度と機速の差です。 ②排気温度は類推値からお好きな温度を選びシャルルの法則で計算すればいいと思います。
 当CEOの掲げるエンジンは「フン詰まり No !」理論の展開です。 吸気と排気の温度は理想気体温度への統一が必須です。 排気速度が最高速より速ければ効果はともかく貢献はあると言えるかもしれません。

 単排気管の効果があるとしたら川崎キ‐100 五式戦のように星型エンジンのカウリングを通る冷却風の制御フラップと胴体の段差による気流の乱れ(剥離流)をまんべんなく整流する(実際には吹き飛す)ことで得られる胴体表面の摩擦抵抗を減らす効果でしょう。 しかし、星型エンジンではフォッケウルフ Fw190-A の先例があり日本の発明とはいえないコンセプトです。

 なお、偶数の多気筒エンジンの排気管 2本を一組として点火時期の位相差と長さを選んで集合させる設計では単排気管としての末端となる集合部で発生する反射波による排気圧の脈動がエンジン側の排気口に伝わりシリンダー内の排気の掃気効率や混合気の充填効率を高める効果があります。 4行程エンジンと言っても排気と吸気の行程はオーバーラップして筒抜けになる時間があるからです。

 14気筒の「」エンジンでは7本の集合排気管が外観上の単排気管を構成することになります。完全な単排気管なら 14本の排気管が必要だがそんなに多くはなさそう、しかも 7本以上はあるようだ。
(右6左5説があるが、写真や図面によって数が違うように見える)

 どうも排気干渉の積極的な利用はしてはいないようだ。 しかし管の取り回しのための集合排気管が数本あるようです。 (例えば外観の排気管が11本ならそのうち内の3本は集合排気管と言った具合に)

 まあ、戦闘機の機動中にはスロットルの開度を大きく急激に変化させるので全域に効果があるわけでもないのだろう。そのうえ複列14気筒星型エンジンの前後列のシリンダーの排気管をクランクの位相差25.7.....(=360÷14)度の倍数と4の倍数の点火時期を組み合わせてうまく慣性偶力の打消して脈動効果が出せるのかどうか、などの疑問もある。

 21型のような左右で 2本の集合排気管の場合、排気管(鉄ニッケル合金)の取り回しで重くなります。短い単排気管の採用は軽量化に確実に効果があった。

 ちなみにFw-190-A ではエンジン BMW 801 D-2 14気筒の排気管を機体の左右に 4本ずつを一列に並べて開口し、下方に 4本(は同様に) + 2本(は左右斜め後方に向けて)が並べられている完全な単排気管です。

 上側に開口していないのはコックピット内に排気が進入したり、消耗品の潤滑油が燃え残って煤や油が風防ガラスを汚すのを防いでいます。 (52型では一番上の排気管は左右とも斜め下方に向けている)

 外観上ではその排気管の列はきっちりと胴体に埋め込まれれている。その結果、52型より長くなる排気管もあるが技術原理に関しては真面目ですね。

  また、液冷V12エンジン(ロールス・ロイスマーリングリフォンの一部)の単排気管に見られる魚の尻鰭状に潰して拡張する排気管には噴射速度をマッハ1以上に大きくするラバール・ノズル効果(知っているだけでもすごいことだが)があるのかも知れない説もあった。 ただし、マッハ1を超えるには排気圧力が4気圧以上は必要だけど・・・これも計算してみてね。
(正確には前後の2気筒を連結した左右各3本の集合排気管。V12 のクランク軸が見つからなかったので一般的な点火順序からでは排気脈動効果を利用していないと思われる)

 これはノズルの最狭部で亜音速から超音速に変わる現象なのでベルヌーイの定理は使えないけど計算式はWeb上にあります。(ロケットでは実際に使われているけど・・・レシプロ・エンジンではどうだろう?)

 そういえば川崎 キ-61 飛燕はラジエータの熱交換によるジェット推進効果がある、という説もあった記憶が・・・それはまたいずれ。

 (以上、読者に丸投げの閑話休題)

2018年4月29日 (日)

キネマ航空CEO GTF はターボ・ファン・ジェットかダクテッド・ターボ・プロップか、を考えるの巻 (その 2) 」

2018.06.10 加筆終  キネマ航空CEO

 ターボファン・エンジンの可能性の復習から始めます。 前回の数式編 を少し整理してみました。

まず基本となる物理量は、下図を参考に、

Elements_of_turbo_fan_jet_propulusi  ・ターボジェット・エンジン(Turbo Jet Engine
   m  : 吸気と排気の流量単位質量 (kg)
   V1 : 吸気速度 (m/s)
   VJ : 排気速度 (m/s) VJ ≧ V1 
 ・ターボファン・ジェット・エンジン(Turbofan Jet Engine
   (q+1)m  : 吸気と排気の流量単位質量 (kg)
   q   : (ファン)バイパス比 (qm : mm = 1 とした質量比を表す無次元数) 
   V1 : 吸気速度 (m/s)
   VTF: 排気速度 (m/s)
  ・・コア・エンジン(Core Engine)             ・・ファン(Fan
   m  : 吸気と排気の流量質量 (kg)        qm  : ファン吸気と排気の流量質量 (kg)
   V1 : 吸気速度 (m/s)                         V1 : ファン吸気速度 (m/s)
   VC : 排気速度 (m/s)                         VF : ファン排気速度 (m/s)

 以上の物理量から運動量理論によるラム圧抵抗、エンジン発生エネルギー、実効エネルギー、機械仕事が求められる。

TURBO-JET TURBO-FAN
CORE FAN
Ram Pressure Drag KDJ = (1/2)mV12 KDTF = KDC+KDF = (1/2)(q+1)mV12
KDC = (1/2)mV12 KDF = (1/2)qmV12
Propulsion Energy
by Engine
KJ = (1/2)mVJ2 KTF = (1/2)(q+1)mVTF2 = KC+KF
KC = (1/2)mVC2
VC Detail below
KF = (1/2)qmVF2
VF Detail below
Available Propulsion
Energy
KJA = KJ-KDJ KTFA = KTF-KDTF
Mechanical Work WJ = mV1(VJ-V1) WTF = (q+1)mV1(VTF-V1)
= WC+WF
WC = mV1(VC-V1) WF = qmV1(VF-V1)

 ターボファンのコアエンジンは表のターボジェットと同じエネルギーを持つとする。そのエネルギーから k (0≦k≦1) をファンに分割する。
 ただし分割に伴う損失ψ0≦ψ≦1)が発生し実際に分割されるのは (k/ψ)となり、コアエンジンに残るエネルギーは{1-(k/ψ)}となる。したがい、KCKFKJ との比となり

 C = (1-k)KJ = (1/2){1-(k/ψ)}mVJ2 = (1/2)mVC2   より   VC/VJ = √{1-(k/ψ)} (1)
 KF = kKJ = (1/2)(k/ψ)mVJ = (1/2)qmVF2               より   VF/VJ = √{(k/ψ)/q}  (2)
    ψは分割による損失(効率)比

 ターボファン・ジェット・エンジンに求めるものは仕事 WTF の増加割合である。元の式にコアとファンの速度を埋め込むとコア単独での速度でまとめられる。

 WTF = (q+1)mV1(VTF-V1) = mV1 [ [ √{1-(k/ψ)}+ √{(k/ψ)q} ]VJ -(q+1)V1 ] ]
 これより、
 VTF = [ [ √{1-(k/ψ)}+ √{(k/ψ)q} ]/(q+1) ]VJ
 分割損失ψ厳密にはファンの回転や進行速度にかかわる翼素理論の効率も含まれるのだが以降の考察にはψ= 1 として運動量理論で話を進めます。
前回の誘導ではψの使い方が異なっていましたが最終的にはψ= 1 としており結果に差はありません。

 VTF = [{√(1-k)+ √(kq) }/(q+1)]VJ

 分子は 0≦k≦1q≧1 は平方根のため VJ≧VTF となる。VTFkq の関数であるが kq の関数でもある。
  A = {√(1-k)+ √(kq) }/(q+1) と置き dA/dk = 0 と微分して A の極値(最大値)を求めると VC = VF つまりコア・エンジンのジェット・ブラストとファンのモーメンタム・フローの速度が等しい場合となりファンが受け取るエネルギーの割合は k = q/(q+1) なのだが計算過程は省略します。ちなみにコアエンジンに残るエネルギーの割合は 1-k = 1/(q+1) であります(元の式ではk( k/ψ) と置き換える必要があります)

 したがい、ターボファン・ジェットのエネルギー速度 VTF とコア・エンジン単体のジェットブラスト VJ の比は、

 VTF/VJ = 1/√(q+1) (3)

 実際にはファンによる仕事は翼素理論でなければ厳密性を欠くが運動量理論で定性的な考察にとどめます
 機会があれば翼素理論とも組み合わせたい。これまでのプロペラの解析から最高効率を示す速度比は0.8辺りにあるようにコアジェットのブラストの限界速度比1をファンの最適効率速度比(巡行の 0.8 または最高速の 0.9 ?)の辺りに近づける? などで・・・。
 回転数で制御されているエンジンのエネルギーは、ジェットライナーでは差が小さい巡行時と最高速時の速度のおかげでエネルギーのギャップはファンブレードの設計で 吸収できる のではないか、との前提ですが・・・つまり kψの関係の見直しです。運用最高速を超える限界超過速度の余裕は頭打ちとなります。しかし緩降下すれば音速越えも・・・さて、どんなもんだか。

・少し「見える化」を

Vcvfparvj_by_k_rev(1)、(2)式を一つに重ねたグラフ。
(1)式を表す右下がりの VC/VJ はコアエンジンの出力が分割されでジェットブラストが 0 に近づいていく様子を示している。
(2)式は受取ったエネルギーをファンがモーメンタム・フローに変える場合のバイパス比(BPR)の影響を示す右上がりの VF/VJ
二つの交点が VC=VF となってターボファン・ジェットが最も効率よく運転できる点となる。

BPR 0.5(-0.9) は超音速機に使われるバイパス比だが、いざとなればここに燃料を吹き込みアフターバーナーとなる。
BPR 1(-4)は初期の第一、第二世代のターボファン・エンジンのバイパス比。実際は BPR 3-4 は一気飛び越えて、
BPR 5(-7)は第三、第四世代に相当する。ここでミッドスパンの廃止、ワイドコード化や材質と製法の変更が行われました。「MRJ」のカテゴリーの中で 3回に亘って掲載中です。
BPR 8 を超えると第五世代となる。GTF はこの辺りに含まれ、最大バイパス比となる BPR 12.5 が公表されている。

 エネルギーの分割比が釣り合うのはコアエンジンの性能もあるがファンの動力吸収性能できまる。バイパス比が大きくなるとコアエンジンのジェットブラスト(VC/VJ )側の変化が急になり安定性は悪くなりそうである。コンピュータの支援が必須となるだろう。

Q_vs_vtf_vj_ratio

(3)式のグラフ化。
或るターボ・ジェットのジェットブラストの速度と同じエネルギーを持つコア・エンジンです。

別の見方ではマッハ 1 で飛べるコア・エンジンを使ったターボファンのバイパス比を変えた場合の飛行速度の比として読むこともできます。
例えばバイパス比が 8 の場合の速度比は 0.33 であるからこのターボファンでマッハ 1 の飛行にはマッハ3で飛べるのコア・エンジンが必要になる。(もちろん機体の空気抵抗は変わらぬ仮定が前提です)

 仕事効率の最大化のためにジェットブラストとファンのモーメンタムフローを等しくする前提のターボファンでバイパス比 q を大きくしていくと VTF/VJ の変化は小さくなる。

 バイパス比 q の増加は √(q+1)に比例して増えるファン直径 D の増加(すなわちカウリングの直径)によって得られるのだが翼の下に吊り下げるにしても翼の上や胴体に載せるにしても実用上の限界があることは想像できる。

 この辺りがターボプロップとの境目かもしれない。航空機の技術史からは今でもファンの最大直径はプロペラの最大直径を越えられない。

・おまけ

  前回のグラフではコアエンジンに残るエネルギーの割合を k としていた。
しかし今回はファンが受け取る割合を k としています。

  したがい、コアエンジンから見た 前回のグラフ編 にある同様のグラフで示す横軸 q は今回のグラフでは縦軸 (1-k) として計算した結果と等価です。

  加えて、前回に示したターボファンのバイパス比による仕事効率の上限は限界速度(理論上の最高速)の低下とのトレード・オフで 100% 以上になる結果は変わりません。

  低下する限界速度の回復には、もちろんコアエンジンの強化が必要になります。

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 ここまでの結論としてGTF(ギヤード・ターボファン・ジェット)も以上の原則の中にあることは間違いない。つまり、亜音速域の上限を効率よく飛ぶための GTF はターボプロップではない。

 構造的に言えばターボファンでは先頭の(低圧段)コンプレッサー駆動軸と同じ(回転数の)タービンで駆動されている。

 バイパス比を増加拡大していくにはファンの直径の増加を伴いブレードの先端速度、根元にかかる遠心力、曲げモーメント等々で回転数に制限が出てくる。

 GTF ではコンプレッサーの回転数を変えずにギヤボックスでファンの回転数を減速することで、もろもろの空力的、構造的問題の解決を図ったと想像できる。

 しかし「コンプレッサーの回転数を変えずに・・・」と断定するのは間違いでむしろ早くするのだろう。この辺りからは次回以降にします。予習には この回 の後段をご参照ください。

 ギヤボックスを持つターボプロップのプロペラの駆動軸は現在ではコンプレッサーの駆動タービンと切り離されたフリーパワー・タービンで駆動されている。

 ターボプロップでもターボファンでも回転数はプロペラやファンの負荷とエンジンの出力でと釣り合っている。したがいエンジンの出力の調整で負荷をコントロールできる。

 いっぽうプロペラやファンからは、というとターボファンではまだ実現していないがブレードのピッチを可変とすることで負荷を制御してエンジンの最適回転数に合わせることができる。

 米国系の大型二軸二段のターボファンのコアエンジンでは軸流式コンプレッサーのステーター(静止ベーン)を可変式として圧縮性を制御している。英国のロールス・ロイスは三軸三段のコンプレッサーとして可変式静止ベーンを廃止している。(閑話休題)

 ではそのブレードが暴走したら、例えば吹っ飛んだら、負荷を失ったタービンは暴走を始める。燃料の自動シャットダウン・バルブがあるとは思うがどこにあるのだろう。

 ターボプロップの推力の大半はプロペラの回転力の負荷(ブレードの揚抗比)によるもので上記のような運動量理論で強引に説明するには無理があるので以下を・・・

 ここまでの考察ではファンにも運動量理論を適用している。しかし現実のファンを効率よく働かせる速度比は 0.6から0.9のあいだでピークは0.8あたり、最大効率は0.85ていどとなる。

  (アンダクテッド・)ターボプロップのTu-95 ではターボファンの最高速度であるこの辺りまで迫っているようだ。

 デフューザー効果によって空気のファンへの進入速度の低下を見込んでいる(ダクテッド・)ターボファンで得られる翼素理論を運動量理論に近づける効率改善の効果と、高バイパス比化が主眼のGTF のコアエンジンに現われるファンを駆動する回転数 N1 の増加にともない増加する背圧にともなうジェットブラスト速度の低下、燃焼効率の変化などとの関係となるのだが・・・

 高バイパス比にするにはファン直径の大径化かコアエンジンの小径化か、となる。しかし一般的には前者となる。したがい実用上の限界がある。

 高バイパス比の根底にあるのはブレードの形状からくる空気機械としての動力吸収性能の向上が初めにありき、として総括されるはずだ・・・と迷路に入り込んだようだ。

 超音速から亜音速への速度域の低下を伴ったターボジェットからターボプロップへの開発で見られた劇的な効率改善は、その中間(亜音速の上限)の速度域で固定されたターボファンでは見られないであろう。

 しいて言えるのは、固定ピッチから可変ピッチへ変わったプロペラの変化がダクテッド・ファンにも採用される。 つまりは構造的にはフリータービンでなくてもダクテッド・ターボプロップファンになる時がジェットエンジンの究極形と考えられる。

 そのあと、現在の延長となる大気圏を飛ぶ飛翔体ではターボジェットが動力源として使用されるであろうが、技術的には速度域の増加をともなう(目指す)別のブレークスルーに向かうであろう。そこまでの技術が人類に必要かどうかは疑問ではあるけれど。 

以下はご参考に・・・

ターボプロップについて日米ウィキペディアからの抜粋と比較

 排気口から噴出する際に生じる反動はエンジン全体が生む推力のおおよそ10%~25%を構成する。

 今日の多くのターボプロップエンジンは、圧縮機駆動用タービン軸とプロペラ駆動用タービン軸が別な2軸構成となっているため、圧縮機駆動用タービンの速度に影響されることなくプロペラを回転させることが可能となっている。
 それぞれのタービン軸が最適な回転数で回転できることにより、排気口のジェット噴射に残っているエネルギーはプロペラ推力を含めた総出力の10%以下にまで減少する。

ジェットやモーメンタム・フローでの「推力」は速度の関数、「出力」は速度の二乗の関数なので的外れではないようだが混乱を招く併記となりそうだ。

 Consequently, the exhaust jet typically produces around or less than 10% of the total thrust.
 A higher proportion of the thrust comes from the propeller at low speeds and less at higher speeds.
 Turboprops can have bypass ratios up to 50-100 although the propulsion airflow is less clearly defined for propellers than for fans.

 While the power turbine may be integral with the gas generator section, many turboprops today feature a free power turbine on a separate coaxial shaft.
 This enables the propeller to rotate freely, independent of compressor speed.
 Residual thrust on a turboshaft is avoided by further expansion in the turbine system and/or truncating and turning the exhaust 180 degrees, to produce two opposing jets.
 Apart from the above, there is very little difference between a turboprop and a turboshaft.

排気の推力は10%前後もしくはそれより低い、となっている。
ターボプロップのバイパス比を50-100と表記しているなど写真を見ればなるほどねとなる。
同時にプロペラの推進力はファンに比べると明確な定義ではない、としている。

加えてプロペラとファンの性能の差やフリーパワー・タービンを採用するターボプロップとターボシャフトの構造上の微細な差を示唆するなど読者の興味の引き方をよく考えた文章といえそうだ。

 評論はいいから、お前はどうだ?!、と問われても困るけど・・・『他山の石』としておかしなところがあればご連絡ください。

 

2018年3月 9日 (金)

キネマ航空CEO 「MRJ のビジネス・アップテートを行う。と、同時に日本の航空機製造行政の失敗を考えて、『他山の石』も考えてみる」 の巻

 本文の中ほどで A320neoGTF エンジントラブルの記事に、その原因と対応を青字の追記で行いました。(2018 04 04)
また「他山の石」も考えてみる、を追々記しました。(2018 04 10)      キネマ航空CEO

 残念なニュースですが 2018/1/26 付けのロイター東京の発信によると

三菱航空機は、アメリカのスィフト航空が買収したニュー・イースタン航空との間で2014年に交わした MRJ90 の確定発注分20機と覚書による20機計40機の契約破棄交渉の結果を正式に合意した」と発表した。 
三菱航空機のコメントは、開発遅延や性能上の理由ではなく顧客側の事情によるものである」としている。

・・・ということで比較表を差し替えます。

 なお、以前から継続的に差し替えている表には香港のリース会社 ANIグループホールディングスとの間の MRJ-90 覚書契約 5機(2011)の破棄については掲載していません。 同様に当ブログに最初にアップした時点の前にキャンセルされていたエンブラレルボンバルディア分も掲載していません。

 で、ニュー・イースタン航空の解約では覚書分は違約対象にはならず、契約20機の先払い分は違約金といっても遅延見込み分の交渉で値切られたと思われます。

Mrj90_business_update_jan_2018rev2

 さて、三菱航空機の開発遅延のあとにさまざまなな逆風が MRJ に吹いている。

 曰く、米国の航空会社労使間のスコープ・クローズ協定の継続。
 曰く、ボンバルディアの資金繰りの破たんに続くエアバス傘下への系列化。同じくボンバルディアに対するボーイングのダンピング関税率強化の圧力(が却下された)。
 曰く、ボーイングエンブラエルに対する系列化交渉の開始。

 簡単に言えば小型機メーカーは米国と欧州の大型機メーカー二極のラインアップの一角に組み込まれてしまい三菱航空機が目指す小型機メーカーの三極化の夢は潰え去ろうとしている。

 既存の小型機メーカーの隙間を狙った三菱航空機の機体は存在意義を失うかもしれない。そうなれば、MRJ は、かつての MU-2MU-300 と同様に機体製造権の売却となるが、売却先は欧米ではなく中国、インドなどの国土面積と人口を抱えた航空新興国となるだろう。

 加えてギヤード・ターボファン・ジェット・エンジン(P&W ピュアパワー)自体にも影が差してきている情報もある。(下方に出典へのリンクあり)

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 つまりは日本の航空機製造行政の問題を検証する過程に入ったと考えられる。当オフィスのカテゴリー「MRJ」の記事から振り返ってみると、「新開発の機体と新開発のエンジンの組み合わせを並行して進める意味はあったのか?」に立ち返ることになります。

 MRJ の機体の空力設計は胴体の先端を通る軸線が客室胴体の軸線から著しく下がったコックピット周りの形状である。これは空力設計というよりむしろ全長に占める客室長の拡大といえる。あるいは全長の短縮、延いては軽量化のコンセプトと見たほうが良い。

 航空機で一番無駄な部位は操縦室いわゆるコックピットである。操縦席はパイロットの座高に合わせて上下にヒップポイントを調節できパイロットの目の高さをほぼ同じ位置に設定できるようになっており、足の長さに合わせてフットペダルを前後させる。

 その目の位置を基準に胴体を切り抜いた透明のウィンドシールドの窓枠を通した視野角度が規定されている。

 なかでも機軸に対して上下にはそれぞれ17°の視界が要求されている。下方視界には着陸時の誘導灯の視認性から侵入角度と機首上げの角度を加味して下方には20°が要求される。(中型機以上の側面に特徴の出る水平方向視界角度との関係もあるが別の機会に)

 次にウィンドシールドはバードストライクや雹や噴石などに対する強度から透明で厚みのある積層樹脂ガラスが使われる。

 したがいウィンドシールドを傾ければ空気抵抗を少なくできるがその厚みのために屈折によるひずみが出てくる。

 また明暗差による反射(映り込み)も大きくなる。 かつては前傾したウィンドシールドの航空機(ヴァルティ V-1Aボーイング モデル 247 など)もあり、現在では大型船のブリッジに採用されている。

 結局のところ現在の旅客機の機首の形状はウィンドシールドの傾斜角を決めるクリアな視界を確保するための材質や構成で決まる屈折率や反射を防ぐコーティングに関係する性能の進歩で決まるようだ。三菱 キ-46 のⅡ型、Ⅲ型の機首形状のすったもんだが思い起こされる)

 ウィンドシールドの傾斜角が決まれば胴体の先端はその延長線に沿って、機首に装着する小型化されたレーダー・アンテナを収容する軸の傾いた楕円錐が収束するまでの形状が決まる。

以上の設計思想は、デハビランド・コメットブリストル ブラバゾンなど第二次大戦後の英国系の大型機にも行き着ける。

 つまり、特に小型の中心線の明確な円筒状の胴体の輸送機、旅客機の機首の(それも尖った)先端は円筒から楕円円錐に絞られながら胴体の中心(水平)軸よりかなり下側で、胴体の円周下面とほぼ同じ高さで収束する理屈であり空力設計は二次的な要素になる。

 くどいようだが航空機の空力設計で最も邪魔なものは操縦席であります。上記の機首形状は高翼タイプのターボプロップではあるがデハビランド カナダダッシュ 8(開発開始1979)あたりから顕著になり、今では低翼の小型機のリージョナル・ジェットの標準となって中型機にも影響している。

 つまり現在の機体の空力設計や構造設計は外国メーカーではこの時代からの積み重ねがあり日本は YS-11 の幕引き(1971)と同時に並行して構想を固めて試作機の開発が必要だった。

 少なくとも同様(真似をしたとは言わないよ)の機首形状のコンセプトを使いながらシートの薄さと斜めの室内配置(日本では特許ではなく実用新案程度のアイデアもしくはギミック)に加えて飛行中のピッチトリムに(運行条件によっては良いほうにも)影響の出やすい後部胴体貨物室の採用で得られた胴体の細さに燃費と環境性能を賭ける現在のMRJ の形にはならなかったと思われる。

 さらに、MRJ の燃費と環境性能の重要な要素である新開発のエンジンでは、MRJ と同系統のギヤード・ファン(GTF)である P&W "ピュアパワー" PW1127 を採用していたエアバス A320 NEO シリーズでは、デリバリーをダブル・キャストであった GTF ではない CMF インターナショナル LEAP-1A26 を採用しているキャリヤーに当面は絞り、ビジネスでは手堅く従来のエンジンを採用した A320 CEO を継続していく方針を続ける。

 エンジンと機体の関係は GTF 用として完成している機体に LEAP を載せれば良いといったお手軽な問題ではない。エンジンなしの機体がずらりと並ぶことになる。

 まさか MRJ でそうなっても「我日本ではァ 川崎 キ‐61 三式戦 飛燕 からァ キ‐100 五式戦 へェ- エンジン換装のォー経験があーる ! 」なんて言い出すアナクロ・ファンはいないと思うが・・・(閑話休題)

 「EASA  GTF A320neo」 で検索すればいくつもの記事が出てくる。主な情報は以下の URLで確認できる。
Airbus stops accepting PW1100G engines for A320neo aircraft  atwonline.com Feb.10, 2018 (Mar.14,2018 現在、全文はログインが必要。検索ポータル・サイトのキャッシュでは読める。お早めに)
A320neo Pratt & Whitney GTF engine issue - Airbus airbus.com Feb. 9. 2018
Emergency Airworthiness Directive AD No.: 2018-0041-E European Aviation Safety Agency (EASA) Feb. 09, 2018

 P&W の見解は A320neo に採用されている暖気時間の長い P&W PW1127 エンジンのみのトラブルであって初期デリバリー後に設計変更して納入されたエンジンの高圧コンプレッサーにあるナイフエッジ・シールにクラックが入り飛行中の再始動ができなくなる現象であり旧仕様に戻した構造にすれば解決する。
 したがい、航空安全機関である EASA や FAA の査定では双発のエンジンの内の一基を旧構造エンジンに戻した(換装した)状態で洋上飛行を除いた運行は行える・・・としている。(ETOPS に関係します・・・ ご参考は こちら

 また、本件は、ボンバルディアエンブラエル三菱の機体に採用される出力では低位の P&W ピュアパワー  (GTF )エンジンには影響しない。・・・とのことであります。
 Pratt & Whitney’s Indian trouble Leeham News.com Mar. 14. 2018 の一部を要約して追記・・・2019 04 04
 この記事では上記の状態でも A320neo の運航を許可しない国もあるとのことです。多くのコメントがついています。ご一読を。
 ピュアパワーを採用した日本の某社の A320neo は旧仕様のエンジンで受領して飛んでいるのかもしれない。

 記事を読む限りではギヤボックスそのものに発生したのではないようだがエンジン全体の捩り振動系として見れば無関係とも言い切れないだろう。

 新エンジンの信頼性は水物であるジンクスは生きており、機体メーカーが信頼性を実証するリスクテイカーとなる。

 ターボファン・ジェットの型式は出力によってかなり細分化されており、同じ設計思想、同じ部品の共用のエンジンといっても機体と運行状況とのマッチングでは良くも悪くも 独立したエンジン型式 である。

 MRJ の一クラス上(PW**17クラスに対してPW**19クラス)の GTF を採用してすでに完成機のデリバリーを始めたボンバルディエ CS100エアバス傘下に入るのだがどうなるのだろう。LEAP エンジンはスネクマ(仏)とのG E インターナショナルの合弁企業)

 同じ系統(PW**19)の ピュアパワー ・エンジンを採用するデリバリー間近のエンブラエル E190-E2 シリーズは当面は先行するボンバルディエを注視となるが、関係が深くなるのは米国のボーイングP&W となる。

 さて,A320 NEO に発生した開発時から 顕在していた事象 の重症化らしき)エンジン・トラブルの原因はさておき、バイパス比を上げるための GTF にどれだけの効果があるのか、よくわからないということがある。(過去の当ブログの記事をご参照)

 GTF の理論的な可能性について諮問を受けたJAXA宇宙航空研究開発機構:内閣府・総務省・文部科学省・経済産業省が共同所管する国立研究開発法人)や METI(経済産業省)の技官やスタッフはどのような指針を出したのだろう。

 少なくとも亜音速輸送機のカテゴリーではアンダクテッド・ターボプロップファンはターボファン・ジェットに対抗できないようだ。

 ギヤの追加でダクテッド・プロップファンとして燃焼効率の改善が見込めるのか、見込めるならギヤはなくても良いのではないか、ギヤ・ボックスの重量で可変ピッチ・ファンにしたほうが空気機械として優れるのではないか、の案がクローズアップされる。

 簡単に言えば GTF のファンへのタービン出力回転数はターボファンのそれよりも高速で回っている。減速してトルクを大きくして負荷が大きいファンを駆動して高バイパス比のエンジンにするためです。

 つまりは高速回転のタービンでコアジェットの噴出速度は遅くなる。そのため燃料と空気が燃焼室を通過する時間が長くなる。結果として燃焼が改善される。

 ターボファン・ジェットでは原理的に、コアジェットの噴射速度(ジェット・ブラスト)とファン後流(モーメンタム・フロー)の速度が等しい時に推進効率は最大になる。

 と同時に 当オフィスで解析した ように ターボファン・ジェットのバイパス比を大きくすればコア・ジェットの出力(燃料消費)も大きくしなければならなくなる。

 いっぽう、ターボプロップではプロペラ後流(モーメンタム・フロー)の速度のほうがコア・エンジンの排気速度(ジェット・ブラスト)よりずっと速い。しかし、いまのところターボプロップではターボファンの速度域までカバーはできていない。

 この二律背反解決するために可変ピッチを採用する高バイパス比のダクテッド・プロップファンで巡航速度を亜音速(一応マッハ0.8以上)にまで向上させる案にロールスロイスが挑戦している。すなわち可変ピッチによってプロップファンの負荷を機速に合わせて調整できるエンジンにする。
 (ただし、現行のターボファンの設計ではカウリング内のデフューザー効果によりファンが処理する流速はほぼ一定でありプロペラのような幅広い進入流速の変化はない。・・・当ブログ内既述済、受売りだけどね。
 可変ピッチのダクテッド・ファンもしくはプロップファンの有効性にも疑問がある
とはいえ、二軸のターボ・ジェットの圧縮機の静止ベーンには可変ピッチが採用されている)

 果たして GTF でこの案に対抗可能なのかどうか、当CEO は、これらの検討をこれまでの解析と同様に力学だけで展開しようとしているのだが手こずっています。いずれそのうちになんとか・・・

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 とにもかくにもYS-11 の幕引きを図るために1971年に通産省が行った「次のない航空機産業」の指導方針で今日の開発遅延も含めて民間航空機参入の命運は決まったと言えそうだ。

 日本の、特に民間で開発した航空機の運命は国外に製造権の売却となるようだ。売るにしても、これさえあれば日本にも世界にも通用するFAA の型式証明を取ってからだろう。しかし残った売却先は中国かロシア、なるべくならインドとなるのだろうか。

 政府は開発を中止する権限も放棄した民間主導(つまり丸投げ)プロジェクトのようだがキャンセルが続かないような外交努力も必要だろう。

 通産省を引き継いだ経済産業省は2002年に海外から発信された需要予測に合わせた計画を急ぎ、具体化能力を蓄えさせていない航空機製造三菱に丸投げした結果として、世界情勢への裏張りを行わせた原子力発電東芝と同様に国の根幹企業の力を削ぐ頭の痛い問題が始まる。(後者は国内での再稼働に安全性を示す免罪符にしたかったのかもしれないが)

 ちなみに川崎重工業はライバルとなる エンブラエル E2-Jet シリーズの母体となる E-Jet シリーズの開発には(胴体ではないが)当初から協力をしていた。
 KRJ として担当しても、うまくいったかどうかは分からぬが、経産省は「永遠の」の三菱の名前が欲しかったのだろうかな・・・(百田 尚樹さんも罪なお人やねー、あっ!この当時は、まだ書いてなかったか)

 ちなみにエンブラエル E-Jet シリーズの直接の母体となった ERJ-145 シリーズは、ターボプロップの EMB120 (1974 開発着手、1985 就航、所要期間 11年) をベースにして 1989年に開発が着手された。

 デリバリーは1996年だった。試験飛行の 1年を含み、デリバリーまでに7年を費やした。
(初期の機首形状は旧態然なのだがシリーズの後半のモデルでは新しい形状に代わっている。また、これらのシリーズの生産は中国に移管されて、2017年にも生産がおこなわれているようです)

 E-Jet シリーズになると、1999年に開発着手、試験飛行2003年、デリバリーは2004年と、都合5年でビジネスに移った。

 E2-Jet シリーズでは、2013年に開発を公表、2016年に試験飛行開始、2018年にデリバリー開始予定。うまくいけば公称開発期間5年間となる。

 通産省、経済産業省は 他山の石」の意味 を知っていたのか、三菱はあるいは日本人は意味を誤解していないか、を考える機会にもなる。

 正確には「他山の石を以て玉を攻むべし」 は 「たざんのいしをもってたまをおさむべし」とも読む。
 「石」は取るに足らぬ「他人」のもの、「玉」は貴重な「己自身」のもの。下世話に言えば「人のふり見て我がふり直せ」だが・・・前半だけが知識で残っているのでは・・・?。

 特に官僚の無謬性を掲げるからには、他国の失敗例はもちろん、成功例ならなおさら、であります・・・

 まあ、国会に招致しても、当時は「エンブラエルごとき」が「名機ゼロ戦の三菱」を差し置いて成功するとは思ってもいなかった、と答弁するのであろうが・・・
 当時はまだ戦前の設計者が巾を利かせていたし、第ニ次「零戦」ブームの申し子たちが行政の内部にもいたのかもね・・・今でも、三次・四次・・・と続くブームの後継者はネット上に若者からいいお歳の評論家までいっぱいいるようだ。なお、物心のついた当CEO は第二次のちょっと後で古本を漁って経験しておりますですね。
 ちなみに第一次ブームは1940年半ばから1941年末にかけて日中戦争からパールハーバー奇襲にかけての海軍関係者の内輪の間で、ですね。

 WEBや書籍で、(何歳からかは分からぬが)いいお歳を召した航空ライターから(何歳までかも判らぬが)初々しい航空ファンまでが息巻いている「世界一の零戦を作った日本人(三菱)だから世界に通用するMRJができる(最近は、ねばならぬ!に変わってきたようだ)」、「(ここはひとつ外国の所為にして)零戦の復活を恐れたアメリカが日本の航空産業を潰した7年間のためだ。間違いない!」は間違いだと言い切れる。

  現実は、YS-11(誰もが認めざるを得ない)商業上の、(運用者から指摘されている)技術上の失敗も含めて即時に次の政策を決められなかった官僚機構(予算の獲得組織)が機能しなかったことが原因であります。

  つまり息巻いている人たちやその親や爺さん(この当時、婆さんは当該官僚にはなっていなかったはず)たちの世代の責任であります。

  既に十数年を掛けた MRJ の知見が「零戦」の呪縛から離れて生かされる機会が作られることを願ってやまない。

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 基本的に日本の民間企業は江戸時代の鎖国ように、プレイヤーが交代しても変化のない均質な仕組みが続き、躓いても不変の延長線上の見込みを、という思い込みの環境で営々と継続することでしか経営できないようだ。

 同時に国家経営においてもしかりといえそうだ。奇しくも 1971年で終わる一ドル360円だった時代のように・・・

 日本の心は素晴らしい、縄文時代はよかった、など、ほとんど形而上のややこしい本(多少は読んでますが)で心を慰めるより山本七平氏の広がった、しかも尖(と)んがった世界の中での日本人論を読み直す時代となったはずなのだが何人の政治家や経営者や教育者が読んでいるのだろう。

 何の力もない下々が読んで心を慰めることにはならないし、溜まった鬱憤を晴らしても世の中は変わらないのだがそれでも政治にかかわるヒントにはなる。

2017年12月31日 (日)

キネマ航空CEO GTF はターボ・ファン・ジェットかダクテッド・ターボ・プロップか、を考えるの巻(その 5 の 2 )「ファンだって奥は深いのだ !(その 1) 」

さて、ターボ・ファン・ジェットのファンは、ファンを覆うカウリングの中に仕込まれたデフューザーによる断熱圧縮による流入空気の速度の低下に加えてプロペラの理論解析の結果をファン・ブレードに反映させて発展していった、という論旨を進めていました。

ほかにかまけていた当CEO はまずその復習から。

考察のベースとしたプロペラの推力係数 AF の式 2017.07.19 の記事 では許容推力を大きくするにはブレードの数 B を増やすほかに翼弦長 b を大きくすることでも得られることが示されている。

 プロペラの実験結果からの研究 2017.07.19 の記事 ではブレード翅数が少ないほうがブレード間の相互の流れによる圧力干渉が減少する傾向が当てはまる可能性がある。

 ターボ・ファンにおいては空気の粘性を考慮してもチップの翼弦長を増すことでチップとダクトの隙間を通ってファンの後方(高圧部)から前方(低圧部)に漏れる空気を押さえるシール長さを伸ばす効果で翼端渦を減らせると考えられる。

 すなわち、誘導抵抗の低減には翼弦を狭くして得られるアスペクト比より、ファンの先端(チップ)とダクトの隙間を小さくすることとシール部の長さを大きくすることで翼端渦の発生は抑えられる。

 もちろんシール部に生じる空気の粘性抵抗とのトレード・オフではありますが翼端渦による誘導抵抗と比べればはるかに改善されると考えられる。

 既述 2017.08.6 の記事 のロールス・ロイスの画像の右半分にある幅広翼弦(Wide-chord fan)のブレードであります。この写真からはブレードの翅数は32枚から22枚に減少しています。この画像のキャプションではこれらにより +4% の効率向上があったと書かれています。

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     カウリングのないターボ・プロップのブレード先端の翼端渦による誘導抵抗については、ターボ・ファンを囲む結構な投影面積と奥行きの長さすなわち面積のあるカウリングの摩擦抵抗を含む形状抵抗に加えてファンの翼端とダクトの隙間に発生する粘性抵抗を合わせた比較となる。

    またカウリングの吸音、遮音による静粛性の効果がターボ・プロップからプロップ・ファンへの翼型や翼平面の形状変更で同等の効果が得られるかについては疑問がのこる。これらはカウリング内のダクトのデフューザー効果を含めて別の機会に考えてみる。

 同じ教科書 2017.7.22 の記事  からは通常の単回転プロペラとコントラ(二重反転)・プロペラの比較ではブレード数が多いほどパワー吸収能力は10~27%程度向上する。ただし、最大効率付近から速度比が小さくなると通常の単回転プロペラとの差はなくなる。(以上は単回転プロペラ 3 翅とコントラ・プロペラ 3x3 の 6 翅との比較だが同じプロペラ直径での比較かどうかの明記はない)

 理屈上はファン直径の縮小も考えられるコントラ・ターボ・ファン方式もあるが今のところ実現はしていない。駆動するギヤボックスの純構造的な問題の次に解決することになるファン同士の空力干渉やそれによる振動問題が解決されていないのだろう。

 構造からみればファンの可変ピッチ・ブレード化もある。
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 これらに着目してファン・ブレードのワイド・コード化に先行したのが英国で、先行した計画を統合して開発された ロールス・ロイス RB211 をベースに具現化されていくことになる。

 当初の RB211 は(当時としては高)バイパス比 5 を採用し、前より低高二段の圧縮段(コンプレッサーと駆動するタービンの2セット)からなる二軸と先頭のファンと駆動する最後尾のタービンをつなぐもう一軸の三軸式を採用していた。

 この時点では、高バイパス比化、つまりファン直径の増加によるブレードに掛かる遠心力の処理の問題があったはずである。

 遠心力は次式で表される。 F = mrω2
 F
: 遠心力(N) m : 回転する質量(ブレード)(kg) r : 回転軸から回転部の重心までの長さ(m)。「腕」の長さともいう ω: 回転速度(radian/sec または s-1

 バイパス比を大きくしたことにより r は必然的に大きくなる。材料が同じなら m も同様となる。遠心力は否応なく大きくなる。

 遠心力を受け持つ駆動軸( RB211 では第三の軸)に取り付けるブレードの基部はワイド・コード化で長く(強度を増すことが)できるのではあるが、これはブレード部の材料が同じなら質量 m が大きくなるので鼬(ネズミではなくイタチ)ごっこになる。

 もちろんファンの基本性能はブレードの面積に比例するのでワイド・ブレード化により面積は同じでもブレード数を減らしブレードの剛性を増やすことができ、ミッドスパン・ナスバーと呼ぶ制振補強の環も廃止はできる。 

 一方では、高バイパス比化でファン直径が大きくなった分だけは重くなり「腕」の長さは長くなる。

 ちなみに、二軸式の低圧段駆動タービン軸と同一ファン駆動タービン回転数より三軸式の低圧段タービンの後方にある三軸目のファン駆動タービンの回転数のほうが低い。また各軸の回転方向による相対回転数の関係などは別の機会に。

 それやこれやでロールスロイスは三軸化に加えてファン・ブレード材質の軽量化で一点突破を図る。チタンから炭素繊維への転換でありました。

 新材料は塵、霧、雨、霰、雹などの風食の試験に続く最終段階で行われる必須の項目である鳥の吸い込み(バード・ストライク)試験において、ファン・ブレードが致命的な飛散をしてしまう。(最大出力時にブレード一枚が根元で破損しても破片がカウリングで止められ運航を続けられる出力の確保が要求されている)

 開発費の膨張の結果、ロールスロイスは資金ショートしてしまい国有化の憂き目にあい税金の投入となる。

 いっぽう、この当時の米国の航空業界はボーイング、マクドネル・ダグラス、ロッキードの競争の頂点にありエンジンを採用するのは ロッキード L-1011 トライスター であった。

 米国議会はロッキードに対する梃入れとして資金の供与をおこなう背後支援を可決しロールス・ロイスはこれによって開発の命脈を保てた。

 つまりは国家の、しかも一国ではできない後見が必要な開発費の確保が必要となることを暗示させる。

 エンジン・メーカーは機種やサイズにより部品メーカーを含めたグローバルな買収と開発費を確保し国の保護政策を利用しやすくする合従連衡によって開発・製造の現地合弁メーカーを設立していくことになる。日本の部品メーカーもこの中に組み込まれて行くことになりました。

 高バイパス比、ワイド・コード化、ミッドスパン・ナスバーの廃止によるクリーンなブレード翼面のフロント・ファンの完成は1984年のロールス・ロイス製の RB211-K35E4 によってでした。

 そのブレードは炭素繊維ではなく、チタンによる前後の薄い外皮(翼面)を熱間鍛造で成形し、化学切削(ケミカルミーニング)により 空間を作りその中にさらに薄いチタンのリボンで作られたハニカム構造を包み込んで拡散溶接をする工法でした。

 このハニカム構造は後にウォーレン・ガーターと呼ばれるチタンの桁構造によりさらに軽量化された。

 炭素繊維によるブレードはGEによる GE90 に始まります。これは炭素繊維の前縁にチタンのカバーを接着補強する構造で、風食にはウレタン・コーティングを施しています。

 来年はボンバルディエのエアバス・グループ入り、MRJ のキャンセルの予測、エンブラエルのボーイング傘下入りなどの話と一緒に、次回はブレード前縁のクネクネのお話に入ります。先は長いなー。

2017年11月30日 (木)

キネマ航空CEO GTF はターボ・ファン・ジェットかダクテッド・ターボ・プロップか、を考えるの巻(その 5 の 1 の補足 )

Pw4084_4168_4000pw さて、前回より RRGE が進めたファン・ブレードのワイド・コード化の発展を見てきました。

 もちろん、右写真のようにプラット・アンド・ホイットニー(P&W )も同様の開発は行っていました。

 右から左へ進んだことは言うまでもありません

ベースとなったエンジンは右より PW4000 系で始まり、PW4166 を経て ボーイング 777 に採用された、PW4084 で完成します。


2017年8月 6日 (日)

キネマ航空CEO GTF はターボ・ファン・ジェットかダクテッド・ターボ・プロップか、を考えるの巻(その 5 の 1 )「ファンの奥は深いのか ? 」

おことわり

冷房のない部屋で書いています。校正と校閲の不完全で後日訂正があるかもしれませんがとりあえず公開します。ご指摘をいただければ優先的に対処いたします・・・暑い !

ファンの外観は先々回 2017/7/19 の当オフィスの記事で ボーイング 747 の初期と現在のエンジンの写真とカッタウェイ図で並べている。ほかにないかと探していたらエアバス A350 XWB に採用されている ロールス・ロイス トレント XWB 84k を分析した次のサイトを見つけた。

参考)  ロールス・ロイス トレント XWB 84k とは、

Rollstrentxwb
      画像は https://3dprint.com/45820/rolls-royce-largest-3d-printed/ より。
      左画像の
手前が エアバス A350XWB-1000。このほかに 900 , 800 が設定され、それぞれに RR Torrent XRB 97k , 84k , 75k - 79k が対応する。なお -800 の計画は中止された。
      
型番の k は離昇推力の単位 1000lbf。ファン直径 3m、 ブレード枚数 22、バイパス比 9.6 : 1。
      A350XWBeXtra Wide Body のイメージ・キャッチだがエンジンでは同機専用ということ。

さて、今回の本題の参考にしたサイトは、

LEEHAM NEWS AND COMMENT に連載された、Bjorn's corner; Turbofan engine challenges; Part  2 
     このコーナーでは Part 1 ~7 で、当CEO が意識して避けている新しい燃焼技術についても突っ込んで解説している。英文だが技術用語を頼りにぜひご一読を!

同記事から借用した左下図は、 トレント XWB 84k (2010)を含む ロールス・ロイス トレント 600 (1988)から始まる トレント シリーズ の基礎となった RB211 (1969)のファンとブレードの変遷であります。

まず、左右に分割合成された画像のエンジンの型式は、
  左がたぶん ボーイング 747 向けの トレント RB211-524 (1973)
  右は ボーイング 757 クラス向けに開発された トレント RB211-535 (1984)。

     なお、『トレント』の名は RB211 で三代目だが、初代の トレント RB.50 (1945) は技術的に完成した最初のターボプロップ・エンジンで、のちのロールス・ロイス ダート (1947)となる。日本航空機製造 YS-11 (1962)にも採用された。
     二代目の RB.203 トレント (1967)はスリー・スプール(3軸)形式を最初に採用した低バイパス比の軍用ターボ・ファンで 3軸構成では RB211 に多少の関連がある。こちらは三菱 T-2 / F-1 (1971/1975)にも双発として採用された。 (閑話休題)

RrfanbladeevolutionCfmblades

次に右(上)の画像は CMF インターナショナル
ブレードの変遷が並べられています。

右から ・・・
  CMF56-5B (1991)で エアバス A320 系へ、
  CMF56-7B (1995)で ボーイング 737-600 以降へ。そして、
  CMF LEAP (2013)は エアバス A320neo ボーイング 737MAX
                
中国商用飛機有限公司 C919 へ向けられます。

実年代ではなく技術世代の比較とすれば、
  RB211-524 vs CMF56-5B
  RB211-535 vs CMF56-7B
  RR トレント XWB (最上部の右側画像参照)vs CMF LEAP (-56)
となります。

Ge90ちなみに CMF インターナショナルGE アビエーション(米) と サフラン エアクラフト エンジンズ(仏)傘下のスネクマ との合弁会社です。

エアバス A320ボーイング 737 向けエンジンの開発と生産に特化して設立されたました。

GE アビエーション 本体の最新エンジンは ボーイング 787 向けの GEnx ですがファン・ブレードは ボーイング 777 向けの GE90 を継承しているようです。

右上は以前に掲載していた GE90 の画像の再掲です。 CMF LEAP (-56) とのビミョーな違いは次回に回します。

-------------ここから本題----------------

これらの画像から分かる形状の変遷は次のようにまとめられる。

 新旧いずれのファン・ブレードもレシプロ・エンジンのプロペラのブレード間のような隙間はない。

 初期のファン・ブレードは翼弦が狭く枚数が多い。

 ブレード長さの中央部に “Clappered”「鼻付き」と説明される突起がある。
これは正面写真の左半分の中央付近に見えるリング状のミッドスパン・スナバー(Mid span snubber)と呼ばれる中央部制止環もしくは連結部材を取り付ける個所であります。

     なぜ必要か?というとブレードに発生する振動対策であります。
     特にジェット・エンジン本体や取り付けられた補機などの回転や振動に加えてブレードに働く揚力と抗力で発生する空力振動に誘発される共振という現象です。
     この共振という現象は理論上は無限大のピークを持ち構造を破壊する元凶であります。
     もちろん共振周波数を避けるブレードの材質や形状で工夫を凝らした緩衝メカニズムを機能させてピークの減衰を図りますが、皆無にはできません。
     まして近接するブレードの数々が勝手に振動や共振を始めたら収拾がつかなくなります。
     このため、ブレードの中央部にミッドスパン・スナバーを取り付けてブレードを一つの振動体にまとめる構造であります。
     ミッドスパン・スナバーを二つ使った例は P&W JT-9 (1966) を先々回の画像でご覧いただきました。

 そしてこの時代、ブレードが細くその枚数は多い。その理由は、・・・

 空力的な知見から 2017.07.19 の記事 のプロペラの推力係数 AF の式で示されたようにファンが許容できる(念のため構造の強度ではありません)推力を示す係数はブレードの数 B に比例して大きくなる。

     前出の教科書ではブレード翅数 B を増やすと空力干渉を起こしプロペラ効率が落ちる指摘がある。
     しかし、ジェット・エンジンでは効率以前の問題として、できれば干渉さえ利用して、ファンの正面面積をブレードで覆うことでその高出力を許容吸収することになります。
     初期のターボ・プロップのコア・エンジンの出力はレシプロの少し上となる程度に設定されてプロペラもレシプロの経験の延長上となるパドル・タイプに設計されていた。
     
しかし、現在ではブレードの形状を洗練させて翅数を増やし、さらにはプロップ・ファンと称してコア・エンジンの高出力化を図っている。

 (承前)さらに誘導抵抗の低減には翼弦を狭くしてアスペクト比を大きくとることも考えたのかもしれない。(当CEO としては後者のアスペクト比との関連には多少の疑問がありますけど・・・)

 別の視点からは、ターボ・ファンの回転数は低圧圧縮段の回転数 N1 と同じでレシプロに比べると格段に大きいことによる構造の強度限界があります。

 すなわちファン・ブレードの質量に比例し、回転数の二乗に比例する遠心力の影響であります。 加えて、レシプロの出力より格段に大きいジェット・エンジンの駆動力をファンで変換した推力も加わります。

 これらを総合すると、この当時にあったファン・ブレードの形状の決め手は材質の質量(正確には密度)に原因があると考察できます。

 遠心力は N1 で回転するシャフトに結合(嵌合)されるブレードの基部に引っ張りの力として、もう一つの推力は前方に向かう曲げモーメントとして働きます。

     曲げモーメントは中立点から前縁に向かって圧縮、後縁に向かっては引張として作用します。前縁では遠心力を緩和し後縁では加重されます。これらの力を合成すると材料強度としては最も弱い剪断方向の力となります。
     
これらのブレード基部にかかる力(kg)は基部の面積(m2)で割られて負荷応力(kg/m2)となり材料の許容応力(kg/m2)と比較され安全率を加味した基部嵌合部の面積(m2)ひいては長さ(m)が求められます。

 いずれが、卵か、ニワトリか、になりますが、上記の理由をバランスさせた基部の長さか、ブレード基部の構造上の寸法制限か、あるいはその両方か、で基部の寸法が決まります。

 ブレードの形状や構造の一義的な目的はブレード1 枚の質量をいかに軽くするかになります。この時代にはブレードの幅を細くして枚数を増やす案が採用されました。

 この当時のブレードの材質は無垢のチタンの板から削りだされていました。これから先は軽く強い材料の開発がファンの形状の変化を伴う技術競争となります。

あー暑い

画像の多用でスペースをとりました。次回(その 5 の 2 )「ファンだって奥は深いのだ ! 」 につづきます。

2017年7月22日 (土)

キネマ航空CEO GTF はターボ・ファン・ジェットかダクテッド・ターボ・プロップか、を考えるの巻(その 4 )「プロペラだって奥は深い」

前回のプロペラの話を、② 「飛行機設計論」山名正夫、中口 博 著 から、もう少し・・・

プロペラの容量を導く作動係数 AF は 1 翅 2 翅と数えるブレードの数 B に比例していた。 1 翅のブレードで構成される航空機用プロペラはまずない。(自然界ではオートローテーションするカエデやモミジの種子がある・・・秋の林でご覧あれ。当CEO の前振り)

推進効率は同一翼型を使った  2 翅と 3 翅のプロペラの間ではほとんど差がない。4 翅と 6 翅では 2 翅のプロペラよりもそれぞれ 1~2%、3~4% 低くなる。

(当CEOの閑話開題)     日本では 2000馬力の ハ-43 に 6 翅プロペラを採用した海軍航空技術廠が主導した前翼型の震電(1945)がある。
 日本のウィキペディアでは執筆者が注記でおよそ二億年前に現れた前脚には小、後脚には大の幕翼を持った爬虫類シャロヴィプテリクスまで持ち出して震電の形態的な合理性を援護するなどで名機扱いであります。同じWEBのプラットフォームでもお国柄は出ますね。贔屓の引き倒しだけど。もちろん自然界の名機は自然淘汰されたようです。

     さて、震電は5 翅で計画したのだが冶具の手配ができず 3 翅の冶具を改造して間に合わせた、と何かで読んだ記憶がある。この時代の 2000馬力では 4 翅プロペラで十分だったようだが効率の低下などは考えなかったのかな。前出のウィキでは翼弦長を広げた 4 翅のプロペラに換装する計画があったそうだ。

     イギリスでは 4 翅プロペラで対応していた2000馬力の ロールス・ロイス マーリン に変えて2300馬力の グリフォン を導入したときに 5 翅のプロペラを装備した機体があった。
     簡単に製作できる 6 翅プロペラではなく 5 翅を採用したのは効率の低下をあいだを取った 2~3% に抑える意図があったのか、単に重量低減を図ったのか・・・

     後期から末期にかけてのスピットファイア/シーファイアで実験されたり採用されたりしたが最終的にはトルク反力を打ち消す前後 3 x 3 翅のコントラ・プロペラで最終量産型となった。

     トルク反力の増加に伴い外方引込式で間隔の狭い主輪とテール・ドラッガーによる地上で取り扱いの弊害への対策でもあったようだが、ジェット・エンジンと首輪式への転換の時代の入口までよく引っ張ったものだ。 (閑話休題)

双回転(コントラ・)プロペラの場合は前後のプロペラに同じパワーを吸収させるため最大効率の付近では後方プロペラのピッチ角を前方より 1~2°大きくする必要がある。
     これは前方プロペラで加速された後流に合わせて後方のプロペラのピッチを大きくするという理屈と考えられる。
     いっぽうでは
効率が問われるプロペラの進行速度/後流速度の比 0~1 の間の任意の範囲の効率をふくらませて全体効率のかさ上げを図るために後方プロペラのピッチ角を(相対的にだろうが)小さくする場合もあるようだ。

     もちろんどちらの場合も前後のプロペラには可変ピッチが採用されるのだろう。   (以上当CEO 注記)

単回転(通常の)プロペラとのパワー吸収能力の比較では最大効率付近ではほとんど差がない。しかし v/nD が小さいところでは双回転プロペラのほうが大きく、4 翅と 6 翅 ( 2 x 2 翅 、3 x 3 翅 だろう。当CEO注記) それぞれ 5~17%、10~27% 程度である。

単回転プロペラと双回転プロペラとで一定のピッチ角についてプロペラ効率 ηP を比較すると双回転プロペラのほうが 0~6% 程度高く、その差はピッチ角が大きいほど(進行速度が速いほど? 当CEO 注記)大きくなる。

この辺りまでは第二次世界大戦の軍用機を眺める場合の基礎知識としてお役立てください。

当CEO の興味はプロペラで最も気になるのは先端速度と音速との関係です。

正確な意味は「速さ」ではなく、ベルヌーイの定理でもクッタ・ジューコフスキーの揚力や抵抗の式でも無視している「空気の圧縮性」の影響です。つまり、超音速機の主翼と同じ現象です。

同じ教科書で示された厚翼(クラーク Y )と大雑把には先端が鋭い薄翼(NACA 1 系)のグラフを読み比べてみます。

横軸は共通のプロペラ先端の速度を M (マッハ)、
縦軸はパワー係数の比 CP/(CP)M=0 とプロペラ効率の比 ηP/(ηP)M=0
の二種類のグラフです。
なお、縦軸の X/(X )M=0M = 0 時の、ではなく、空気の圧縮性がほとんどない低速での(X)で示すパワー係数またはプロペラ効率をそれぞれの値を基準とした比、と理解してください。推進効率のグラフで使った速度比ではありません。

まず、厚翼のクラークY 型で翼厚比(h/b.7R = 0.092 のグラフでは、容量係数比は M = 0.5 までは 1.0 ですが、ここより放物線状に増加を始めて M = 0.85 でデータはおわり 1.95~1.21 を示しています。

またプロペラ効率比では M = 0.65 辺りまで 1.0 ですがここより放物線状に下降を始めて M = 0.88 辺りでデータは切れて 0.95~0.83 を示しています。

次に、NACA 1 系 では翼厚比が二種類あげられていますが薄いほうの(h/b.7R = 0.026 のデータでは、容量係数比は M = 0.8 までは 1.0 ですがここより放物線状に増加を始めて M = 1.18 辺りでデータはおわり 1.25~1.18 を示しています。

またプロペラ効率比では M = 0.85 辺りまで 1.0 ですがここより M = 0.9 で 1.2 のピークを示して下降を始め M = 1.18 データは切れて 0.95~0.83 を示しています。

ということで、翼型を選べばプロペラの先端速度が音速を超えてもマッハ 1.2 辺りまではエンジンの出力さえあれば機能する、という先々回の、
キネマ航空CEO GTF はターボ・ファン・ジェットかダクテッド・ターボ・プロップか、を考えるの巻(その 2 )「プロペラで出せる最大速度の推定とその検証」
Tu-114Tu-95 のスペックを使った計算結果からの推測値マッハ 1.1 は正しいと言えます。

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ところで、この教科書の発行年の 1968 年より Tu-95 が初飛行した 1956 年のほうがずっと 早い。そんな中で、この教科書のデータの出所はアメリカのようだ。

アメリカは高速ターボ・プロップの研究もやったようだが、選択肢の中からの集中を行ってターボ・ジェットによる亜音速の大型戦略爆撃機(B-47 初飛行 1947 年、B-52 同 1952 年)の開発に専念したらしい。

機体の構成では米ソどちらも後退翼を採用し、どちらもナチス・ドイツの基礎研究を有り難く、かどうか、いただいたのだが)亜音速の上限を狙うという計画はお互いに並べたけれど、ソビエトは航続距離の必要な機種には燃料消費の激しいピュア・ターボ・ジェットの技術では燃料消費の少ないターボ・プロップでしか対抗できなかったという技術競争の結果でありました。

差はさりながら、1950年代後半から1960年代の前半にかけてのソビエトも、高速回転大容量の逆転差動機付き減速ギヤボックスの設計製造技術や低回転でのターボ燃焼技術では相応の技術を持っており、アメリカと対抗する戦力(外交プレゼンス)は持てた、といっていいのだろう。

ターボ・ファン・ジェットの実用化により性能的には遅れを取ることになったが、ライバルの B-52 (ターボ・ファン化 1960 年) と同じく、いわゆる枯れた信頼性のある総合技術として現役でありつづけ、偵察機型はときどき日本の周りを巡回だか徘徊だか、をしている。

どこかで爆弾をばらまくよりはましかも、ね。

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参考にした「飛行機設計論」のプロペラの章はまだまだ続くがここで一旦終わり。

さあ、次回からファンの(プロペラよりは小さいが)直径は大きく、その回転数は(プロペラよりかなり)速い。

しかしダクトに包まれたデフューザー効果で機速よりはるかに小さい進行速度でファンに進入する空気を処理するターボ・ファンのファンのココロだー。

2017年7月19日 (水)

キネマ航空CEO GTF はターボ・ファン・ジェットかダクテッド・ターボ・プロップか、を考えるの巻(その 3 )「プロペラの容量を最大にするには」

または「民間航空機の製造が国力をけん引する時代は終わった ?!」 の巻

(承前)プロペラやファンなどの回転する空力機械の直径は装着する構造物から制限を受ける、というところで終わっていました。

今回は、「限られた直径」 で 「最大の仕事」をさせる には、「最大の効率」を引き出す には、の巻です。

まず、下記の二冊の教科書を組み合わせたほぼ丸写しから・・・
① 「航空工学概論」田中幸正 地人書館 新訂2版 (1974)
② 「飛行機設計論」山名正夫、中口 博  養賢堂 (1968)

プロペラの概要設計をするために二つの重要な数式があります。
     スラスト(推力)係数 CT = T/ρn2D4 、T (N:Kgm/s2
     パワー(入力)係数 CP = P/ρn3D5 、P = S (HP)/75 (Kgm2/s3
T 推力、P 入力、n プロペラ回転数、D プロペラ直径、S 入力(吸収)馬力、ρ空気密度

 これらの係数は実験値から計算される無次元数です。計画機に必要なプロペラの寸法あるいはエンジンの出力といった基本的な推進装置の諸元を決定するための検討を類似または相当するする翼型のプロペラでえられた係数を使っておこないます。

     もちろんこれらの係数や式だけではなにもできませんが重要なファクターになります。

     今回必要なのはパワー係数の式なのですがここで少し関連した余談を・・・
     これらの式はプロペラの回転で発生したスラストと、そのために必要だったパワーの実測値から求められます。

     したがい、実際のプロペラ効率式は ηP = T/P = (CT/CP)・(V/nD) となります。
     ηP はプロペラの指標となる (V/nD) の関数であり、先回のプロペラによる最大速度の推算に使った「 V/nD = 2.6ηP = 0.85 の最大値になる」 につながります。

     いっぽう当ブログでたびたび出てきた運動量理論による効率式 η= 2/( 1 + VJ/V1 は理論効率とよばれてその最大値はη= 1です。
     
具体的には、キネマ航空CEO 翼素理論と運動量理論の推進効率をグラフにする  (2016.06.22) を参照ください。言うまでもなく η>ηP です。

さて、プロペラが吸収できる(扱える)パワーはパワー係数の式から、 P = CPρn3D5 となる。式中の n はエンジンから、D は機体の構成から、と概念設計で決まってくる。

したがい、パワーを大きくするには CP を大きくすることになる。

  CPAF (activity factor)で表される作動係数に比例する。同様に、 CT CP と並行的に変化しており推進効率ηP AF に大きな差がなければ変化は少ない。AF は(プロペラでは) 80~150 程度が使われる。その AF は次式の積分で求められる。

AF = B・(105/16)0.21.0 (b/D)・(r/R)3d(r/R)
B
翼の枚数、r 直径 D 内の任意の半径、b 任意の半径 r の翼幅

 図はある AF において r が 20% から 100% まで変化する場合の最適になる翼幅 b を模式的に示している。すなわち b = f (r/R) の関数として解いた例。Paddle_shaped_blade_for_propeller_2

比喩では三味線か琵琶のバチ状が適切なのだがパドル型ブレードと呼ぶことにする。

航空機の創成期のライト・フライヤーにも見られ、現在に至るプロペラの変化の一つであり、パワー係数を大きくする必要に迫られる軍用機で理論化されターボ・プロップ機で定着した。

ただし、実用面では製造上あるいは強度上、先端の空力処理等々の理由でパドル(櫂)というより付け根の翼弦を大きくして並行部を長くとったオール(艪)状になっている。

さらに音速の影響を避けるためかプロップ・ファンと呼ぶブレードの先端に後退角を付けて尖らせた三角翼状になりつつある。

この形状は黎明期のブレリオなどのプロペラでも見られる。もちろん性能もあるのだろうがこちらは美的感覚から発生したのだろう。

より高速を狙うプロップ・ファンはブレード全体を回転方向と逆にさらに大きな後退角を付けて翼弦長を増やす(ブレード面積を稼ぐ)スキュードタイプと呼ばれブレード中央部の翼弦を大きく、ブレード枚数は 4枚より数を増している。

このタイプでは四発機の エアバス A400M では直径 5.3m の 8 翅で両翼の回転方向を変えている。巡航速度は最高速度と同じ 781km/h (9000mでM 0.71 に相当)を出せる。

同じく四発機の アントノフ AH-70 では直径 4.5m の 8 翅 X 6 翅 で構成されたコントラ・プロペラで最高速度は 780km/h で 750km/hの巡航ができるようだ。 (どちらも高度不明)

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本題に戻るとパドル・タイプのブレードはターボファン・ジェットのファンにも関係する。下はパドル・タイプのファン・ブレードの変化であります。画像上の左クリックで拡大します。

P&W JT-9
(1966)
GE Genx
(2006)
Jt9d

Jt9d_cutaway_high
Genx2benginewi


Genx

         JT9D-3A
最大推力    45.8klbf
バイパス比   5:1
ファン直径    92.3in

         GenX-2B         GenX-1B (ref)
        58.5kldf           66.5klbf
       8.6:1              9.6:1
        105in              111in

いずれも ボーイング 747 に搭載された代表的なエンジンです。左列は初期型 -100 型に向けて開発された プラットアンドホイットニー JT90D-3A 系、右列は多分最終型となる -8 型に搭載された ゼネラルエレクトリック GenX-2 系の写真とカッタウェイ図です。
蛇足ですが当CEOは写真を眺めるよりテクニカル・ドローイングを味わうのが好きなのであります。

ここで目立つファンの形状や直径の変化が性能の向上に役立ったのは確かですが根本は燃焼、冷却、潤滑、振動、材料、製造等々、要するに関係する技術者の努力の積み重ねの結果が総合されてファンが設計されたのであります。

さて、ヤード・ポンドからのキログラム・メートルへ換算が面倒なので GenX-2B の向上率で比較すると、ファン直径 14% の拡大でバイパス比 69%、最大推力 28% の向上を見ております。

もちろん燃料消費、騒音、環境物質排出量の比較も必要ですが、数値の向上と合わせて現在の基準は満たしているとしてここでは省略します。

注目すべきは四発機の 747-8 に使われた GenX-2B 系列は双発機の ボーイング 787 に搭載された GenX-1B 系列、より下位の仕様であります。(なお、掲示した画像は -1B-2B のどちらなのか分かりません。悪しからず !)

言いかえれば、一時代を作った栄光の 747 は、もはや時代の最上位のエンジンを必要としなくなった。

あるいは上位のエンジンを採用した双発で最大の容量を持たせた機体での運航コストに利点がある時代になった、といえます。

現在の最上位のエンジンと言えば双発の ボーイング 777-200 が採用した GE90-110B であります。ファン直径は 128 in で、GenX-1B 比で 15% も大きい。ちなみにバイパス比 9:1(-6%)、最大推力 115.5klbf(74%)であります。

747 の傾向と同様に、四発機の エアバス A380 では、例えば ロールスロイス Trent 970 は、ファン直径 116in で GE90-110B 比では -9%、バイパス比 8.7:1(-3%)、最大推力 84.2klbf(-27%)と 1 ランク下であります。

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強いて言えば、エンジンの出力(推力)が小さければ騒音レベルも小さくなる。また、騒音源が二倍になると騒音レベルも二倍になる、というわけではない。したがい、四発機にメリットがないわけではない、とも言えます。

いっぽうでは、亜音速上限でほぼ同じ速度で飛ぶ四発機の乗客数から始まる機体サイズで積算される運航重量のベースは双発機のそれより大きくなる。(もちろん機体の前面投影面積や全表面面積に比例する抵抗の絶対値も大きくなる)

したがい、四発機の燃料消費は双発機より出力の小さいエンジン一基の消費は小さくても合計では双発機より大きくなることは避けられない。

おまけに搭乗客数が増えれば持ち込み荷物も燃料も増える。もちろん実売座席価格で決まるのだが、通常は乗客が少ない場合にある損益均衡点が乗客が少ない場合に加えて多すぎる場合の 2 点がありそうな気もしてくる。

当CEO としては ANA は原価償却費を抑えるイニシャルコストの買いたたきで A380 を 3 機導入すると信じたい。株は持ってないけどね。    (閑話休題)

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こうした現在のバイパス比競争の延長線上に設計される最上位の、さらに上位となる将来のエンジンを採用して乗客数を増加させる双発のジェット・ライナーが生まれるのかどうかの興味があります。

また現在の最上位のエンジンでパッセンジャー数の更なる記録を目指す四発機の企画があらわれるのか、こちらは疑問がありながらも興味はのこる。

少なくとも「より早く、より遠く、より多く」を目指した航空機は、単純で軽量な構造で始まったターボジェット・エンジンにファンを追加することで「より早く」が加速されました。

しかし、最高速度をマッハ 0.9 を限界にする民間機では、「より遠く、より多く」が要求する機体サイズと機種選択の主導権を握った航空輸送業界が望む「運行採算性(より安くより安全に)」の両方をバランスさせた性能がほぼ限界に達しており、新規の材料を使いこなすエンジン細部のブラッシュ・アップや構造の複雑化という膨大な開発経費で競う時代になったようだ。
(エンジン・ビジネスは機体数より製造数が二倍、四倍と多くても機体メーカーから買いたたかれる立場となった)

加えて、さらには国家の面子(メンツ)が絡む航空機製造ビジネスでは完成機の性能で技術力を競った国際市場産業のありようは曲がり角に来ており、まず小型民間機のカテゴリーから人口と国土を抱える国の地場産業化による参入が始まる。

日本が 20世紀に描いていた完成機で示す栄光の時代の(と言っても栄光のシンボルは零戦しかなく、アメリカへの恨み節で描かれた)再現の夢は過ぎ去っていくようだ。

ただ、部品産業のオンリー・ワンの夢が残されている。この地味だがリスクのある事業に国の政策が起動するのかどうか・・・

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さて、肝心のダクテッド・ファンのブレードの話がおろそかになった。例えばブレードの枚数が減ったのはなぜか? などは次回のココロだー。

2017年7月11日 (火)

キネマ航空CEO GTF はターボ・ファン・ジェットかダクテッド・ターボ・プロップか、を考えるの巻(その 2 )「プロペラで出せる最大速度の推定とその検証」

公開後の校閲、校正中です。ご意見をお寄せください。 キネマ航空CEO

ほんとにプロペラの先端が音速を超えてはいけないの?」について考える、の巻

プロペラで出せる最高速度、についての理論的な推測には次のようなものがあります。

『     プロペラの付け根から r の距離にある翼素に入ってくる空気の合成風速 q は、
q = √(V 2 + Ω2r 2) で与えられる。

     Ωは角速度で、Ω= 2πn (rad/s)、 n (1/s)は毎秒回転数。N (rpm)の毎分回転数を使えば、
Ω= πN/30 (rad/s=1/s)・・・q (m/s)、r (m)。 ・・・小文字の薄字は当CEO の補足を示す個所

     したがい、同一進行速度 V に対して qr = R = (D/2)、すなわちプロペラの翼端(tip)で最大になる。

     そして V が大きくなると翼端の合成風速 q も大きくなり、qV より先に音速に近づき、 空気の圧縮性の影響で揚力は小さくなって抵抗は増して揚抗比 L/D は小さくなる。
     したがって推力も小さくなることが想像できよう。

     つぎにプロペラ機の達しうる限界の速度 V を求めてみる。いろいろなプロペラの実験結果から V/nD = 2.6 で効率は最大になり、効率ηは 0.85 程度の値となることが得られた。

     つぎに先端速度(tip speed)を音速 340m/s の 0.9 倍と考えπnD = 340 x 0.9 ≒ 300m/s とすると、V = 2.6 x nD = 2.6 x (300/π) = 250m/s = 900km/h となる。

     ゆえにプロペラ機の達しうる最大の速度は、おおよそ900km/hである。     

以上は、「航空工学概論」田中幸正 地人書館 新訂2版 (1974) より。 同書の注記によると「プロペラ設計工作法」佐貫亦男 富士出版 (1934) からの引用のようだ・・・けど・・・

後年の佐貫亦男氏と比べると歯切れがわるい。前段で説明したせっかくの合成風速 q の式が使われていない。というより使いようがないのだが。

さて、最速のプロペラ機のタイトルはソビエトのツポレフ Tu-114 クリート で 1960 年 4 月に5000km の周回コースを高度 8000m で平均時速 870km/h の記録が現在も保持されている。

Kuznetsov_mk12左表は同機と同じ クズネツォフ NK-12 をベースにしたターボプロップ・エンジンを採用した代表的機種のプロペラと性能の一部を並べています。

数値では Tu-95 爆撃機のほうが高速が出るようですがウェブ上にはもっと低い値もあり、さらには速度(高度を含む)に併記されたマッハ数との整合性がないようです。

まず速度は対地速度なのか、対気速度なのか・・・など不明な点が多い。

ここでは測定方法が付記された Tu-114 の値を対地速度として採用することにします。

ということで、以下の計算は民間機の公証実験値としている Tu-114 を代表機種としておきます。
参考として Tu-95 も同一条件として( )で示します。

飛行速度をマッハ数に換算するための最高速度測定時の高度 8000m (7620m )における音速は 308.105m/s( 310.128m/s)です。なお海面高度(SL)の音速は 340.294m/s です。

まず、最高時速 V (km/h)を 3600/1000 で割って秒速(m/s)にしてそれぞれの音速で割るとそれぞれの高度におけるマッハ数は 0.785 (0.829)となる。

これらの数値からするとターボプロップ機の最高速度は現在のターボファンを採用したジェットライナーの運行高度より低いものの、ほぼ同等近くにまで到達できていた。

次にその状態のプロペラの先端速度を求めてみる。半径 r = 5.6/2 = 2.8m は共通する。

回転数 n は得られる資料のなかに最大連続Max. continuous回転数があれば迷うことはないのだが、入手できたのは 100%回転数最大許容Max. permissible回転数だった。

ここでは前者を最大連続回転数後者を時間制限のある離陸時許容最大回転数として進めることにします。

100%回転数を使って Ω= 3.14/30 x 800 = 83.78rad/s。Ωr = 234.6m/s。相当する高度のマッハ数に直すと 0.762 (0.756)となる。

最大許容回転数を使うと Ω= 3.14/30 x 1091 = 114.2rad/s。Ωr = 319.7m/s。相当高度のマッハ数に直すと 1.04 (1.03)となる。まあ ≒ マッハ 1 であります。
同じ速度でも海面高度では、0.94 (0.94)になります。プロペラ先端速度をマッハ 1 ととして機速 V を計算するとマッハ 0.34(115.6m/s = 416km/h)となります。もちろんこの速度を出すエネルギーは機体を加速させ高度を得るために使われます。

さらに先端速度をマッハ 1 に保って機体を加速させるにはプロペラのブレードのピッチ角を大きくするのもさることながらエンジンの回転数を速度の二乗に比例する抵抗による負荷で自動的に、あるいは人為的に低下させることになります。

元に戻って、100%出力回転数で最大速度を出している場合のプロペラ先端の合成風速は
q = √(0.7852 + 0.7622)= 1.10、 ( 1.12 )。
この場合の臨界マッハ数 1 に到達するのはプロペラ半径の 80% 辺りとなります。

参考までに、最大許容回転数による最高速度でのプロペラ先端の合成風速は q = √(0.782 + 1.042)= 1.30、( 1.32 )となります。同様に臨界マッハ数になるのはプロペラ半径の 60% 付近となります。

付け加えると、 クズネツォフ NK-12 のプロペラはコントラ・プロペラなので後方のプロペラには上記に用いた前方のプロペラより速い合成風速になりますがこの解析は省略。

Tu-114 の最高速度からの計算ではプロペラの先端速度はマッハ 1 を超える 1.10 だが、何かの数字の丸め誤差範囲とするには微妙なところで、考察としてつぎのケースが考えられる。
  1.使用した資料があやしい。
  2.最高速などの数値にいわゆる「盛り」があった。
  3.運用上ではこの程度の音速超過は可能である。

さて余談ながら、冒頭のプロペラの効率による推測式となった V/nD = 2.6 説からの補足を試みると V/nD = 308/(13.3x5.6)= 4.45 となる。

むしろ最大許容回転数による V/nD = 242/(18.2x5.6)= 2.37 のほうが佐貫説に近い。しかし、先に計算したようにプロペラ半径の 60% 以上で遷音速域となるようではプロペラとしてはさすがに成立しないだろう。

後出しだが佐貫氏の予測は、結果はオーライ、論理的には間違いと言っていいようだ。

なお、プロペラの無次元係数は次式のようにリード角φとして書き直せる。
tanφ= V/2πnD = (1/2π)・(V/nD) と組み合わせると別の視界が開くかもしれないが今後必要が生じたらその時に・・・

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この程度の解析はすでに先人が行っているかもしれないが、今回の結論として、

考察 3.を採用し、プロペラの先端速度はマッハ 1 を10 % 程度超えても、プロペラとして機能するようだ、としておきます。

例えば先端部の翼型(エア・フォイル)の厚さは薄く空気を切り裂くことで揚力ではなくパドル抗力に釣り合う反力による推進機械として機能するなどが考えられる。
ロッキード F-104 は地上では安全のためにサックをつけなければならないほどに尖った前縁の薄い翼厚のカミソリ翼で超音速飛行をしていました。もちろん亜音速では前縁と後縁を折り曲げてキャンバーを付けていました。

この場合、負圧が抑えられて翼型の周りにあり揚力の元となるという循環流(ほんとにあるのかいな)に起因するとされる翼端渦による誘導抵抗も低減できそうだが・・・

工学史としては、グレン・カーチスがライト兄弟の執拗な機体の形状に対するパテント侵害の攻撃を受けて「強力なエンジンがあればテーブルだって空を飛ぶ」と言い放った黎明期の名言が成立する限界にソビエトの技術者が挑んでそれなりの成果を出したようだ。

もちろん、亜音速域ではターボ・プロップと(ダクテッド・)ターボ・ファンの棲み分けがなされるのだが・・・

さて、次回はプロペラ(は主脚の長さで決まるし)やファン(だってダクトの中だもの)が、限られた直径で吸収できる仕事を最大にするには、のこころだー!

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