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2017年3月18日 (土)

キネマ航空CEO そこのあなた、MRJ を買ってみませんか ? の巻

買う方も大変だけど売る方はもっと大変なんですよ。

新規参入の三菱航空機MAC)は最大のライバルと目しているエンブラエルが抱えたレガシー製品のラインアップ・リニューアルの隙間を狙って開発を進めています。

リージョナル・ジェットという言葉に対する発想の結果は、いずれに吉と出るか凶と出るか・・・

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2016 年に廃止あるいは緩和されるはずだった希望的観測が外れてしまい、『スコープ・クローズ Scope Clause (範囲条項)』と呼ばれる協定が、アメリカの大手航空会社と所属するパイロット組合との間で再度で結ばれました。

『スコープ・クローズ』の目的は、大手航空会社のパイロット組合に所属しているパイロットが従事している業務への安全性の確保ですが、本質は航空会社が大型航空機を所有する LCC などのリージョナル(地方)航空会社へ運行を委託することで、組合員の職域の縮小や減給のスパイラルに陥る機会を予防することにあります。(大手と言えども組合とことを構えるのは安全性の企業イメージからも得策ではないようです)

このため大手航空会社や系列会社が運行する航空機の乗客数や機体の大きさを制限する条項を含む協定が結ばれました。

合意された概要は、シート数 76 席最大離陸重量 86,000 lb39 t)以下、となっています。

継続期間や条項の詳細は大手航空会社によって差はあるようですが、詳細は こちら で。

当然のことながら、佳境に入っている競合各社のリージョナル・ジェット・ライナーの開発と売り込みには影響が出てきます。

もちろん、MRJ-90 にも影響が及びます。三菱航空機MAC)はデリバリーを遅らせて米国の非関税障壁(?)に対抗する 600kg の軽量化を図っていると推測されます。

外人部隊を投入しながら始めた主な設計変更は電気配線(銅線)の見直しのようです。

MAC 社長のブリーフィングではかなり初歩的な設計上の問題のようでした。電線は通し方を変えて短くし、元になる細い銅線の直径をさらに細くしたり、撚線から一本抜くだけでもかなり軽くなります。

銅の密度は 8.92 g/cm3 で、鉄(同 7.87 g/cm3 )より重いんですよ。ついでに純アルミは 2.70 g/cm3 です。ざっと一辺 40.7 cm の立方体相当の銅をダイエットすればいいのですが電線だけでどうだろう ? か。
別途装備品にもティア1(総括仕入先)を通して減量要求が広がっているのだろうな。

もう一方のシート数の制限は運行会社のオプション(ファースト・クラス・シートを増やすとか、シート間隔を広げるとかの)選択の範疇に入り、製造会社が直接に決めることではありません。

しかし、先行して開発した機体のサイズと運行会社のニーズとの適合性では、製造会社は別機種の開発しか打つ手がありません。問題はチーズもといニーズ・パイのボリュームと切り分けた取り分です。

エンブラエルE175-E2 は今のところ仕様上では落伍したようですが協定の見直しを視野に 2020 年あたりをめどに検討は継続するつもりのようです。開発中断中の MRJ-70 は再開する理屈上の優位性はありそうだが・・・どんなものだか。

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下表は MRJ の売りのひとつである P&Wギヤード・ターボファンGTF)のピュアパワー・エンジンを採用している主要 3 機種を選び、ブラン・ニュー(白紙から始めた新設計)の三菱 MRJ-90、-70 を、既存の機体をブラッシュアップしてエンジンを換装したエアバス A320エンブラエル E190175 と比較してあります。(前回までの単位から馴染みやすい MKS 単位に換算してあります)

Performance_benchmark_geared_turbof

(4)のMOTW がその最大離陸重量で MRJ-90STD) は 600 kg ほど重い。軽自動車 1 台よりちょっと軽いぐらいに相当します。MRJ-70STD) はスコープ・クローズの対象外。

格上のA320neo は脇に置き、E190-E2E175-E2 は対象となります。ただし原型の E190 と E175 も対象となってる。

はっきりと言えば、エンブラエルは北米の市場では『スコープ・クローズ』の土俵をはじめから放棄して(MRJ フリークの心情からは「あきらめ」て)おり、三菱航空機とは異なる経営計画と開発方針で進めています。(本当に「あきらめ」たのかどうか)

このあたりから比較してみよう。

今回は概要から先に展開します。(上にある表をポップアップさせておくことをお勧めします)

(15)で示す MRJ-90STD最大着陸重量MLW)(3)と最大離陸重量MTOW)(4)の比は競合機のエンブラエル E190-E2 の 0.87 に対し 0.96 と 0.09 ポイントほど大きい。 MRJ-70STD E175-E2 でも同様であります。

仮にこの比が 1 なら MTOW で離陸直後にそのまま着陸できる。比が 1 に近い MRJ は初発便から短距離運行を行うコンセプトだろうけど、どこの市場を目指したのだろう。
(初発便 : 燃料給油後に最初に離陸するフライトです・・・当CEO の定義です)

MRJ は簡単にいえばベンチマーク機に比べ相対的に重く(適正な設計なら = 頑丈に)できている。ただ、一般的には MLW/MTOW 比はクラスが下がるほど大きくなるようである。

細部の考察に入る前に旅客機を含む輸送機に重要な重量諸元の定義を見ておきましょう。

--------------航空機の主要な重量------------

(1)運航重量Operating Weight): 

入手できる航空機の資料から空虚重量Empty Weight)が消えているようです。その代わりになるのがこの値です。

運行重量
  = 離陸重量
-(乗客とその手荷物 + 乗客への提供品 + 貨物)の重量-(搭載燃料・滑油・作動油)の重量
  = 空虚重量 + (排出不能の燃料・滑油・作動油 + 緊急時対応等で常備の運航装備品 + 乗務員とその手荷物)の重量

軍用機の場合は重量と訳すらしい。式中で引くものでは乗客ではなく搭乗員、貨物ではなく爆弾、ミサイル、弾薬、(チャフやデコイも含まれるのかなー ? )などの消耗品といいかえることになる(閑話休題)

基準になる離陸重量を最大の MTOWMax. Take-off Weight)(4)とした場合の運行重量が 最大運行重量 MOW Max. Operating Weight)となる。ただし MOTW は滑走路長、気温、空港の高度などで変わるが MOW は変わらない。

ここで乗客や貨物に関係する重量と燃料重量とのトレード・オフ(どちらかを減らしいっぽうを増やすことだが大抵は乗客か貨物を減らすこと)になる。これには次の無燃料重量が関係してくる。

(2)無燃料重量Zero-fuel Weight):

ざっくり定義すると、(エンジン始動前の) 離陸重量 - 主翼内の燃料重量 となる。

航空機の構造は左右の主翼の中を通る数本の主桁と呼ばれる揚力を受け持つ強度部材が(特に旅客機では)胴体横にふくらむバルジの中にある頑丈な籠型の構造物に取り付けられている。この結合部分を翼根と呼びます。

もちろん胴体もこの籠型構造物に結合されている。

飛行中の航空機にかかる「主翼」に生じる「上向きの揚力」と「胴体」に働く「下向きの重量」は、翼根を介してつり合っている。

エンジン搭載のレイアウトではMRJ などの小型機以上になるとエンジンはポッド(覆い)に包まれてパイロン(支柱)に吊られて主翼の主桁に取り付けられます。これが錘となって揚力による主翼の撓み(曲げと捩じり)を押さえています。

-余談ながら、
加えて、レシプロ機では主翼に取り付けられていた主脚も胴体のバルジ内の構造物に取り付けられることになりました。着陸時の衝撃を主翼で分担しないようにして軽量化された撓み翼にするためです。

-また余談ながら、
これがデ・ハビランド コメット DH.106 のようなエンジンの胴体横の翼内埋め込み、その外側の主翼に主脚がある形式が輸送機で主流になれなかった理由です。

-またまた余談ながら、
こうしたエンジンや主脚のレイアウトの限界では、一クラス下のビジネス・ジェットではデファクト・スタンダードとなったリヤ・マウンテッド・エンジンのダグラス DC90-10 (全長31.82m 90人)をストレッチでマグダネル・ダグラス MD90 (46.50m 172人)にまで引き伸ばすと「なんだかなー」となるようで最終型 MD95 の構想はボーイング 717-200 (37.81m 117人)に引き継がれシュリンクされて生産の終焉を迎えました。
(閑話休題)


さて、ほとんどの燃料は主翼の桁(スパー)の間に設けられた燃料タンクに搭載されており、主翼を上に曲げようとする揚力は(エンジンを含む)主翼の重さと燃料の重さで減殺されて翼根に伝わる。 しかし飛行時間と共に燃料は消費されて主翼側の重さは軽くなる。

双発機では四発機に比べ片発停止時の推力バランスの崩れを抑えるため翼根側へ寄せており主翼内の燃料の影響がさらに大きくなります。

いっぽうの胴体側の重量は(胴体内燃料タンクがなければ)変化しない。主翼の曲げを打ち消していた翼内の燃料重量がなくなると翼根にかかる力(正確には曲げモーメント)が大きくなります。(無くなった燃料の重量分だけ揚力も減少するので言葉ほど単純ではないのだけれど)

限界を超えると、金属疲労が設計寿命より早く進み、さらに、突風に遭遇すると主翼の迎え角が大きく(すなわち揚力が大きく)なって主翼が付け根(翼根)で折れることもある。

このため、飛行前の重量確認では最大離陸重量MTOW)と同時に胴体に載せた重量によって決まる最大無燃料重量MZFW)の制限内にあることを確認しなければならない。

燃料タンクが空になる事故は、当キネマ航空 009便 で上映中の『フライト 236 "Piche, Entre Ciel et Terre"』で取り上げたエアバス330 の「アゾレス・グライダー」や『フリーフォール "FLIGHT 174"』 のボーイング767 で発生した「ギムリー・グライダー」に当たります。どちらも胴体内にも燃料タンクがある機体でした。いずれも実話がベースです。もちろん MZFW をオーバーしてはいませんでした。

(3)最大着陸重量MLW

基本は、主脚などの降着装置や翼根の構造が耐えられる衝撃荷重係数によって決まる機体の重量。

もう一つは、着陸復航時の操縦性が保証できる機体重量。

最終的には滑走路長や標高、気温など空港の諸条件によって決まることになる。

(4)最大離陸重量MTOW

最大乗客重量(持ち込み荷物を含む) + 運行に必要な燃料や食事等の提供品の最大重量 + 所定の装備品重量 + 乗務員重量(持ち込み荷物を含む) + 機体空虚重量

もちろん最終的には滑走路長や標高、気温など空港の諸条件によって決まる。

(5)最大乗客数Mono-class Passengers

輸送機、特に旅客機においては持ち込み荷物を含めてペイ・ロード(有償重量)だがこの数字が機体の格(Class)を決めるといっていい。

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さて機種名称(記号)の構成は、一般的に最大乗客数と航続距離の組合せで示されます。

最大乗客数を増減するためには基準機種の胴体のストレッチ(延長)やシュリンク(短縮)で客室長の変更を伴うので機種の記号を変える。例) A318 - A319 - A320(基準機種) - A321A320 ファミリーE170 - E175 - E190 - E195E ジェット・ファミリーなど。

増設タンクの仕様等の変更は航続距離を示す記号を付ける。例) -STD (Standard Range 標準型)、 -ER (Extended Range 拡張型)、- LR (Long Range 長距離型)、- AR (Advanced Range 延長強化型)など。MRJ には -ER-LR がある。

A320neo シリーズや E2 シリーズでは航続距離の仕様を示す資料がないため、表では STD と判断して現行機種の(STD)タイプと並べている。

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ではもう一度、MLW/MTOW を並べなおすと、エアバスエンブラエル( )内は現行エンジン仕様、MRJ では STD(ER/LR)を示す。

A320neo E190-E2 E170-E2 MRJ-90STD MJR-70STD
0.850.85 0.870.90 0.890.91 0.960.93/0.88 0.980.93/0.90

MRJSTD タイプを直接のライバルとするエンブラエル-E2STD)は、現行エンジン仕様に対して 0.03 ないし 0.02 ポイントを小さくなっている。

直接 MRJ と比べると 0.09ポイント小さくしている。E2 と同じ値になるのは MRJ-90ER  MRJ-70LR だが(もちろん『スコープ・クローズ』の MTOW 制限には適合しません)、まだ 0.01 ポイント小さい。(具体的には航続距離はエンブラエルの方が長い)

そこで MTOW  を最大(モノクラス)乗客数で割ってみる(8)。この数字が乗客の払うチケット代金となり航空会社が存続を続ける回転資金の源となる。

エンブラエル E190-E2  の 493 kg/人に対しMRJ-90STD は 430 kg/人となる。(以下 STD 等の表示なき場合は MRJ-90STD

これ(8)を巡航飛行時間(7)で割って乗客 1 人を 1 時間 とばす(9)には E190-E2 の 78.8 kg/人・時間 に対し MRJ-90STD は 167.5 kg/人・時間 となります。で・・・この差は航続距離の差ですが、主たる要因は MTOW を構成する乗客数と搭載燃料の差であります。

巡航飛行時間(7)は、各機種を問わず巡航速度は同列の M 0.78 として、巡航高度 40,000 ft (12,000m) の音速 295 m/s (1,062km/h)より算出した速度で標準巡航距離(6)を割った値。

では乗客数が近い E175-E2 はというと 110.6 kg/人・時間 となります。差は少し詰まったとはいえますが、MRJ-90STD との差は歴然です。もっと言えば機体重量の絡んだ数値は小型機になるほど不利になる原則に沿っています。

MRJ-90E190-E2 の航続距離の比は 1: 2.44、MRJ-70E175-E2 では 1 : 2.02 であります。

単純には MRJSTD) は -E2 の飛行時間の間に必要なアイドルタイム(後述)を無視すればざっと2~2.4倍の乗客の回転が見込める・・・とはならない。

乗客の回転では -E2 だって同じ飛行距離で着陸すればいいのであります。その上、燃料の補給回数は MRJ-90STD の半分でいい。・・・しかし、

ここで最初の MLW/MTOW の比の問題に返ります。この比が小さい -E2 は初発便の着陸空港が MRJ のそれより遠くなければ機体重量が MLW最大着陸重量)以下にならない。

したがい、-E2 の初発便は(特に日本の場合、新幹線との競合の影響が小さい)遠距離の空港に飛び、以降は自由に空港を選ぶホッピング・オペレーション(蛙飛び運行)を行うことができ、MRJ-90STD より多い無給油運行回数で乗客の回転が可能となる運用の柔軟性が期待できる。

そう上手くはいかないかもしれないが、初発便が常に満席の MTOW で離陸するわけでもないだろうから、次の給油空港のスケジュールに合わせて燃料搭載量を調整して無給油運行をおこなえばよい。

三菱航空機は標準仕様(STD)のほかに燃料タンクの容量を増やした航続距離延長型(ER)、長距離型(LR)も公表しておりシリーズでカバーしているとはいえる。しかし、最大乗客数の差は変わらない。

エアバスエンブラエルGTF に換装するにあたって MLW/MTOW を変えずに航続距離を拡大しており、明らかに三菱航空機とは異なる設計思想があることは間違いない。

エンブラエルは現行エンジンの E1xx の航続距離延長仕様を E1xx-E2STD として設定しているようだ。( MLW/MTOW 比はクラスの限界に近く見えるが、延長型は設定していると考えられる)

当然ながら両社の設計意図はエンジンのためだけで決めたのではない。もちろんエコロジーやエコノミーの ECO のためだけでもない。航空会社に使われる、ひいては売れる機体を作るためであります。

これまでに分かったことは、MRJ-90 のクラス上となる A320neoMRJ フリークがほぼ対等とする若干上位の機種 E190-E2 と下位機種となる E175-E2MRJ-70 とはほぼ同位)も標準仕様として原型機に対して航続距離の増加を与えています。

まず機体のコンセプトまたは構想を整理してまとめてみます。

MTOW は満席の乗客と最長航続距離にある空港までの飛行となる航空会社にとっては究極の(仮の)理想(着陸時の余裕燃料は 0 の極限の)運行重量と言えます。

航空会社が試算する航空券の価格は MOTW をベースに、乗客単価が決められて燃料などの変動費の支払いや、広義の固定費となる機体購入費や定期メインテナンス費などの金利等々を含む機材費用など負債の返済、従業員の給与に回り、最後の残りが航空ビジネスによる利潤の元となる指標になります。

機体購入費では新規機体開発メーカーには機体の重量に開発費の上乗せがあり、既存の機体を改良するメーカーは、より有利となる。

加えて小型機の機体価格が機体重量に比例して直線的に安くなることはないし、公称価格で買うこともない。同じ仕様でも購入価格はディール(交渉)によって変わる。

小型機ビジネスは作る方も運行する方も甘くないようです。

で、乗客が購入する航空券の価格(乗客単価)は各航空会社の予測や実績による決算期間の平均搭乗率で割られて高くなります。(空港使用料や離着陸料などの経費は航空券に上乗せとして取り合えず省略。 競争相手との値引き競争に対抗する事前上乗せ分も必要でしょうがこれも省略)

さて話を戻して、

(8)の一人運ぶための重さは工学的には単純で、小型機ほど重くなる。
小型機の場合は(9)で示す乗客一人を一時間飛行させるための重量ではさらに顕著になる。

ただし機種間で(8)を比較するには飛行時間が違うことを考えなければならない。
(10)は A-320neo の飛行時間を 1 とした比較機の比である。MRJ-90STDA320neo の 3 倍となる。

したがい MRJ-90STD では同じ時間に 3 倍の乗客を運ぶことができるので A320neo の 1 フライト 7.8 時間 の 195 人に対して MRJ-90STD では 3 フライトで 280 人の乗客が航空会社の経営を分担することになる。

もちろん、現実には乗客や貨物の入替、清掃などの時間が必要であり、そんなにうまくは回らないし常に満席でもないだろうが、差が詰まることは間違いない。LCC はいかにリージョナル・ジェット・ライナーでこれを活用するかにかかっている。

その一方では繰り返される離陸上昇区間の大きな燃料消費などの変動費はかさむことになる。

この表で目立つところは E190-E2E175-E2一人当たりの最大離陸重量(4)が  A320MRJ-90STD-70STD と比べると異様に大きくなっています。

特に E190-E2E190 で新旧として比べるとさらにはっきりします。

ところがマン・アワー当りの最大離陸重量(9)ではそれほど目立たない。

その理由は、エンブレアは機種の更新に当たって GTF を採用すると同時に航続距離を大幅に延ばして標準仕様としたようです。

言い換えれば燃料搭載量を増やして標準仕様としたことになります。

MRJ でも航続距離を伸ばした ER/LR 仕様がある、とはいっても最大乗客数は少ない。

ここから推測されるエンブレアの戦略はすでにお判りでしょう。

当CEOの考察ではエンブレアは(特に海外市場の)ユーザーの意向を採用しており燃費の改善は実燃費ではなく離着陸を繰り返す場合の運用上の利便性に振り向けたと考えられます。

エンブラエル三菱が開発を遅らせた『スコープ・クローズ』適合機の MRJ-70 に対抗するには E175-E2 の改造では不可能なことで次の見直し機会となる 2020 年までの時間に賭けました。

三菱が仕掛けた格下の新規参入機である MRJ90 に対しては航続距離、言い換えれば一給油で行う運行時間の延長で シート数の多い E190-E2 を計画してこれまでの実績を梃子にして『スコープ・クローズ』の対象外での競争で対抗しています。

離陸上昇と下降着陸を繰り返すリージョナル・ジェットライナーにとっては巡航燃費のファクターは別の意味で利用できると考えているようです。

さらに言えばエアバスA318 で中型機から下りてこようとしていたが、今のところ成功していない小型機と中型機の隙間でボンバルディアが手掛けているクラスを狙っているとも言えます。

いずれにせよ GTF エンジンの応用には明らかに彼我に大きな差があります。いずれに吉と出るか凶と出るかの時間が今も経過していきます。

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なお、 MZFW/MTOW の比(14)(最大無燃料重量/最大離陸重量)も小型になるほど大きくなるようですが、MLW/MTOW の比(15)に対して一律で約 0.04 乃至 0.05 ポイントほどの差で小さくなるようです。
-E2 については MOWMZFL も公表されていないようですので現行エンジン機種の数値です)

MRJSTDタイプもこの値の 0.05 ポイント差に準じています(ERLR タイプも同様です)。

MOW/MTOW の比(13)(最大運行重量/最大離陸重量)の傾向は資料が少ないため明確ではありません。

以上は公表された数値から出てくる工学的な比較と類推であります。MRJ は適正に設計されておれば頑丈に、しかし相対的には重くできているようです。これが小型化の宿命、かもしれません。

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環境を頭に置いたリージョナル・ジェット・ライナーの企画のモチベーションは将来の原油価格の高騰と新興国(当時は BRICs)の短距離旅客輸送の需要が大きく拡大する海外の予測だった。

少なくとも二酸化炭素削減のエコロジーは原油価格のエコノミーと結びついていた。

航空機ファンとして MRJ の成功を祈りたいが 20 世紀末に立てた予測も 20 年経っている。経済産業省が丸投げした具体化事業を三菱航空機が筋道をきちんと整理する時代が近づいてきている、とは言える。

2017年2月 7日 (火)

キネマ航空CEO GTFを あっさりまとめちゃうの巻(その 2)

さて、また同じ表です
(左クリックで別窓に拡大されます)

Comparison_of_geared_turbofan_jet_l

先回は上下に機体やエンジンの基本項目を並べました。今回は左右に並べたメーカー毎の新旧機種の比較をまとめて次回に続ける計画です。

まず左のグループから順に見ていきます。

エアバス

   A320neo-271NA320neo-252NA320 で比較を行います。
 neo ネオNew Engine Option (新エンジン選択)搭載機の頭文字。
選択できるエンジンは次の 2 種類です。
   P&W PW1127
 言わずと知れたプラット・アンド・ホイットニーの PurePower  ギヤード・ターボファン・エンジンで末尾の 27 は離昇時公称推力27Klb を示します。
   CMF インターナショナル LEAP-1A26
 型式名のリープ はアメリカの GE とフランスの国営コングロマリットのサフラン・グループの中核スネクマととの合弁(50:50)会社により、GEGE90 から開発された GEnX エンジン がベースの Leading Edge Aviation Propulsion (先端航空機推進)エンジンの頭文字です。

 続く -1 は最初の生産仕様、A はエアバス(したがい B はボーイング 737 )向けとなる。

 次に続く 26 は連続最大公称推力の 26Klb を示します。推力の定義を揃えると同じ(カタログ)値になっています。CMF の方が P&W より奥ゆかしい表現ですかね。

 LEAP はこれまでに書いてきたように構成部品の材質や構造の変更による燃焼効率の改善とファンの形状の大幅な変更による推進効率の向上などの PurePower と同等の改良を注ぎ込んで達成できる、減速機なしで可能な、限界を追求したエンジンと言えます。

 いっぽう、これまでのエンジン搭載機は A320ceoCurrent Engine Option セオ (現行、正確には旧来)エンジン選択型と定義するようです。

   A320ceo に限って言えば、
 CMF56-5 系と IAE V2500 及び V2527 系を採用していました。
 IAE は、P&W(米32.5%)、RR(英 32.5)、MTU(独12)、JAEC(日26)の4ヶ国4社の合弁企業です。(メーカーの選別で日本はどうなるのかが気になりますが主要な部品レベルではどのエンジン・メーカーであっても食い込んでいます。生産量の増減の影響はありそうですがね)

 さて neo では P&W を採用しますから IAE は外されることになります。いっぽうでは自国フランスの資本の入る CMF で前記のように対抗できそうなエンジンを開発することになりました。これが航空機産業を育成する国策でしょうかね。

 で、LEAP-1A を採用した A320neo のデリバリーは始まったのですが、ライバルとなるボーイング737MAX 向けのバイパス比が 2 ポイント小さく、低圧段タービンが 2列少ないが推力設定は 1 ランク高い LEAP-1B28 の燃費は目標未達となっているようです。

  基本的には低圧タービン段数を増やしてファン径を大きくすれば良いのでしょうが 737MAX では地上高が足りるのだろうか ・・・

 CMF56 系エンジンを一社選定している今でも外形をオムスビ型にしたカウリングで横揺れ接地角(機体が傾いてどちらかの車輪が接地したときに傾いた側のエンジンが接地するまでの余裕角度)を稼いでいるのに・・・PurePower に変更したところでファン径は必然的に大きくなる。

 短足のボーイング 737 はついに雪隠詰めになるのか ?? ・・・ エンジン仕様策定時に仕掛けたフランス側の遠望深慮(正しくは深謀遠慮らしい)の経済政策かも ・・・ ?

 従来の航空機メーカーのエンジン選定方式は複数(と言っても大体は2社)の競合関係を用意するが、ライバル関係にあるエンジン・メーカーの間でも増え続ける開発費の捻出にコンソーシアムを組み始めた。

 少し遅れて機体メーカーもエンジン開発費の一部負担と引き換えにリスクを抱えながらもエンジンを一社に限定をして対抗を始めた。

 そこで、エアバスは逆張りに出て一機種に(自国資本の入る新規の一社を加えた)二社のエンジン選択制を採用し、併せてライバル機のエンジンのシェアも自国の企業で頂くか、あわよくば宿敵の機体構造の限界を露呈させるか、・・・のゲームに出たとも言えなくはない・・・

 遠く先のエンジン技術の動向を見据え(遠望し)、航空機の製造では(深慮の上の)生き残りを賭けたビジネス世界を垣間見せているのかもしれません。

 一社限定とはいえ大きな航空機メーカーでは抱えているクラスの異なる機種のラインごとに分けて設定し、二社以上のエンジンメーカーとの緊張した関係を築ける。 航空機メーカーだってエンジンメーカーが潰れては困るのです。

 日本の機体メーカーには絶対に真似のできない、ビジネス展開ができます。日本の航空機産業の生きる道は完成品ではなく部品で同様の関係を作り上げることにに尽きるように思えます。 

エンブラエル

 機体の新旧の関係は、
   E190-E2 には E190-100
   E175-E2 には E175-200
 エンジンはそれぞれに、
   P&W PW1919GE CF34-10E
   P&W PW1715GE CF34-8E
 エンブラエルは GE から離れる決断をしたようです。もっとも GELEAP エンジンのラインアップはベースのエンジンが示すように小型のリージョナル・ジェットには向いていないようです。

 エンブラエルは当然のことながらエアバスの ceo に相当する型式は用意するでしょうね。安いリビルト・エンジンにレトロ・フィットができる新設計(新から旧への互換性を保った設計手法)の機体を組合せて、という商売も可能かもしれません。

三菱航空機 (MAC)

 機体はブランニューで比較するベースはありません。
   MRJ-90 はパッセンジャー・レベルでは、ほぼ E175-E2 と同格
   MRJ-70 は実現すれば世界最小の新鋭リージョナル・ジェット・ライナーに !
 エンジンには特徴があります。機体の順に並べてエンブラエルと比較
   P&W PW1917 はエンブラエルでは E190-E2E175-E2 の中間の出力
   P&W PW1715 はエンブラエルでは E175-E2 と同じ出力

併せて当オフィスの関連記事をご参照ください。
 キネマ航空 CEO GTF の GB(Gear Box)の減速比に迫ってみる。 
 
キネマ航空CEO MRJが採用したP&Wのギヤード・ターボファン・ジェットを読み解くの巻   

次回(その3)では、(その1)の横軸と今回(その2)の縦軸のマトリックスにある数字を読み解こうと考えています。

えっ、見えてきた ? 急がなきゃ

2017年1月31日 (火)

キネマ航空CEO GTFを あっさりまとめちゃうの巻(その 1) と、年頭のご挨拶 2017

「明けまして何がめでたい初日の出、明日の日の出とどこが違うぞ」
と言いながらも、世の中の移り変わりが様変わりとなる、もう 4 年は見届けたい年の明けですね。

キネマ航空はいつもと変わらず瞑想だか迷走だか分からぬ飛行で運行を継続いたします。

2017年1月のタイム・スタンプを押すために出筆のまま無校正、無校閲での公開になります。後日修正があればごめんなさい。(出筆者が一人でやってます)

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さて下表(左クリックで別窓に拡大されます)は、新機体、新エンジンの組合せで計画された MAC MRJ と 既存の機体の改造とプラット&ホイットニーのピュアパワーエンジン(いわゆるギヤードターボファンジェット)を組み合わせた機種とを比較した表です。

Comparison_of_geared_turbofan_jet_l

本来なら MRJ と同じく新機体、新エンジンの組合せであるボンバルディア C シリーズイルクート MS-21 シリーズも加えるところだがおなじクラスの エアバス A320neo にて代表させる。また表では標準的な機種を用いている。

使用した数値は、
機種においては Wikipedia(英語版)、
エンジンでは、EASA TYPE CERTIFICATE DATA SHEET (EASA European Aviation Safety Agency)
から抽出した。

表は上下方向に三つに分けられています。

上段:旅客機としての機体の代表値
    乗員乗客数と最大離陸荷重(Wiki から)

下段:ターボファンジェットライナーの性能(Wikiから)
    機種に関係なく巡航速度 0.78、最高速度 0.82、上昇限度は 40,000±1,000フィート。
    (この中で団栗の背競べ的な差はあるのかもしれないが)

中段:エンジンの特性値(EASAから)
    エンジンの構成 左より 
       ファン - (G ギヤボックス) - 低圧圧縮機 - 高圧圧縮機 -
         (A)アニュラー型燃焼室 - 高圧タービン-低圧タービン 
    (ファンは低圧圧縮段の一部でもあるが中には低圧圧縮機のない型式もある)
    の段数を示す。

    バイパス比、
    ファン直径
    最大離陸時推力、
    N1 (低圧タービン回転数)
    N2 (高圧タービン回転数)
    ギヤ比
    ファン回転数= N1 回転数 × ギヤ比、ギヤがなければ N1 回転数

    まずエアバスA320neo に使われる公称27Klbクラスのピュアパワーエンジンのギア比は、以前に当ブログで写真から計算した 96/34 = 2.8235 ではなく 3.0625 (= 98/32または 49/16 の倍数) となっていました。
(歯数は推定。歯厚は厚くなっているはず)

キネマ航空 CEO GTF の GB(Gear Box)の減速比に迫ってみる。

    減速比を大きくするのはファンの直径に直結するファン先端の速度と関係して回転数を押さえるためと推定されます。

    次の問題は、EASA のデータシートにはエンブラエルMRJ が採用する 15、17、19 Klb クラスの資料はまだ登録されていないようです。他の資料も探したのですが見当たりません。

    そこで、当CEO の独断(赤字のイタリック体 )で回転数は 27klb クラスと同じ値、ギヤ比は写真からのギヤ比を採用しています。

    なぜなら N2 回転数の増加に見られるようにターボエンジンの性能向上は、より希薄な混合気をより圧縮して高速で燃やすことにつきます。

    燃焼による運動エネルギーが高速になった分だけ高回転、低トルクを取り出し減速機で低回転、高トルクに変換してファンの先端が高速にならないように回すことで効率を稼ぐのが目的になります。
(このあたりは、自動車の変速機と同じで、車速に合わせて燃焼効率の良いエンジン回転数をなるべく一定に保つ機能と同じですね)

キネマ航空CEO 航空エンジンのお仕事の効率を運動量理論で考える(ターボ・ジェットの巻)

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余談ながら、なぜ A320neo に搭載された PW1127 の減速比は P&W の公表したギヤボックス写真の歯数と整合しないのか?

P&Wは考えた(多分ですよ・・・)

伝達するトルクが大きくなり強度上歯厚も厚くしなければならない。歯厚を厚くすると歯車の直径が大きくなる。歯車箱も大きくなり重そうに見える・・・

展示するにはちょっと・・・格好が悪いなー。ここはシリーズの中の小さい方を・・・

(P&Wの広報担当者様・・・間違っていたらごめんなさい・・・閑話休題)

この問題は次回からの乱暴な考察で突っ込んでみます。

2016年10月24日 (月)

キネマ航空 CEO GTF の GB(Gear Box)の減速比に迫ってみる。

2016/11/13 一部赤字にて修正しました。確認不十分をお詫びいたします。

一般に 3 と言われている減速比の検証です。合っているかどうかは終わりの方に・・・

ギヤード・ターボ・ファンのギヤ・ボックスの構造もオスプレイのプロップローターのヘッド並みに登場する機会が少ない。

これは、シアトル・タイムズの記事のイラストでギヤ・ボックスの構造が何となくわかる。

しかし、エンジン本体のカット・アウェイ・ドローイングは、ごく初期のP&W プレス・リリースらしく、スプールの構成は 1-G-3-6-1-3 で、現在公表されている 1-G-3-8-2-3 の配置とは異なっている。

Mainqimg9c768bb245a528c0b5a4b6a6746

P&W ピュアパワー・シリーズは三つのファン直径(56、73、81インチ)、三つのバイパス比(9:1、12:1、12.5:1)で構成されており、おそらく三つのコア・エンジンを持つと思われる。

                                            P&W PW1000ファミリー

 静止出力 klb   15●17●19●21、22、23、24、25●27、28●●31●33●35
 ファン直径 in 56 ○  ○ 
           73        ○  ○ ○ ○ ○ ○ 
           81                  ○     ○  ○    ○  ○  ○
 バイパス比  9:1 ○  ○
         12:1             ○  ○ ○ ○ ○ ○
        12.5:1                 ◎     ◎          ◎  ◎
                ●:欠番   ◎:エアバス発注仕様
      この疑似テーブルはファイアフォックスとサファリでは正常に表示されません
      RSSのフィードでも同様です

      スマホ、タブレットでの確認、致しません!

したがい、常識的には三種類ないし二種類のギヤ・ボックスが設定されていると考えられるのだが、そのあたりは定かではない。

それにしても、エアバスは主導するフランスの天邪鬼ぶりが表れている。これは次々回あたりのネタになりそう。

内部構造のわかるギヤボックスの画像はWEB 上にいくつもあるが使い回しのようだ。通覧した画像からはどの直径のファンを駆動するのかは判らない。

Pw1000gpurepower_enginepwgtffandriv

A ギア・ボックスを内側を見たところ

・中央にサン・ギヤ(太陽歯車)Zs : 34 枚
・外側にリング・ギヤ(内歯車)Zr : 96 枚
・中間にプラネタリー・ギヤ(遊星歯車)Zp : 31 枚
 軸を支えるキャリヤの反対側にも軸を共用して同じ歯数の遊星歯車があり歯車の歯に掛かる力を半分にする
 キャリアの両側に捩れの角度は同じだが方向が逆のハスバ歯車を採用して噛み合う歯数を増やして騒音を抑え、噛み合った歯に掛かる応力を減少させて強度や寿命を向上さている。併せて、ハスバ歯車で生じる軸方向の力の向きを対向させてケースに掛かる力を打ち消している
 歯車列の設計では噛み合う歯数の最小公倍数を最大にするのがポイント。遊星歯車に 31 という素数を使ってきちんと守ってますね

Pw_1000gpurepower_fan_drive_gear_sy

B

ACD と同じ型式サイズのギヤボックスかどうかは不明

内歯車の突び出し具合からすると上の写真の反対側から見たところ

5本の(うち1本は外されている)パイプはプラネタリー・ギヤの軸を支えているベアリングの潤滑油の配管だろう

細かい話は最後の「閑話は続くよどこまでも」で・・・

Pw1000gpurepower_enginepwgtffandr_2

C

WEB上では、他にもいくつかの写真があるのだがほとんどが同じ写真かそれに回転や反転、背景を消す処理を加えた画像だった

これと下の画像 D は、A と同じ展示モデルを別の機会に別の方向から写したようだ

D

C の鏡面対称だが歯車の位置や回転角度が微妙に違う

なお、ここに掲げた歯数を数えられる 3 枚の画像の歯数は同じでした

Mroeng_2014_gallery07_s

さて、遊星歯車列としては一番単純な形式である。機能させるためには三つある歯車の回転軸に入力軸、出力軸、固定軸を割り当てなければならない。

減速機として働かせるには次の二つの方法がある。
遊星歯車について詳しくは知るには こちら で)

・太陽歯車を入力軸にして、内歯車を固定軸に、遊星歯車のキャリヤを出力軸にして正回転を取り出す。
・太陽歯車を入力軸にして、遊星歯車のキャリヤを固定軸に、内歯車を出力軸にして逆回転を取り出す。

ほかにも、二軸を入力軸、一軸を出力軸にすることもできるが出力が減少する動力循環になることもある。イラストを見る限りではそれほど複雑な構造は採用していない。

余談となるが、入力軸を一軸、出力軸を二軸にする構造もある。自動車では傘歯車で構成される差動装置(デファレンシャル)として必須な構造です。これはコントラ・プロペラで採用される機構となります。ジェット・エンジンではもっと単純な構造もあります。ヒントは以下の説明のなかに・・・今のところ成功していないけど。

ここで、MRJ エンブラエルが採用する二段の低圧圧縮段を持つ PWxx15PWxx17 タイプのカット・アウェイ図を参照する。スプールの構成は 1-G-2-8-2-3 です。

Pw12xx_sファンは正面から見て反時計回りです。(これは、実物の写真からも確定できる)

いっぽう、ファンを駆動する低圧タービンは時計回りであることよりギヤ・ボックスの機能は出力軸にあるファンが逆転する後者の構成であることがわかる。

(減速比は前者の設定の方が大きくできる。後者を選んだのは軸を支持する構造の簡便さからと考えられる)

ちなみに、高圧段は反時計回りなので、高低圧段の二軸で構成されたスプールは逆回転タイプです。
既出の 三段低圧圧縮段の図からも同様の結論になります。というより高圧段圧縮機以降は同じ画像の右半分は使い回しのようだ)

さて、このギヤード・ターボ・ファンのギヤ・ボックスの構造では、遊星歯車は遊び(中間)歯車としての逆転機能なので(遊星が公転する厳密な)遊星歯車機構ではありませんがパッケージとしては同軸でコンパクトにまとめることができます。

で、バディとなる三種類あるファンの径はどれだか、はっきりしないものの、
   減速比 = - (内歯車の歯数)/(太陽歯車の歯数) = - 96/34 = - 2.823

(-)は逆回転を示します。四捨五入で (-) 3 ですが技術情報としてはどうなんでしょうね ?

2017/02/17 追記 ファン径 81inch のギヤボックスの減速比は 3.0625 であることが確認できました。詳細は こちら

「閑話は続くよ、どこまでも」・・・

先の画像 B はギヤ・ボックスを後方から見ている。中ほどの穴の中に見える歯車状のスプライン(軸)は遊星キャリヤをコア・エンジンの筐体に固定された中空軸に勘合させる。
(スプライン:軸の回転を直線で伝える歯車状の軸と穴からなる軸接手)

その中空軸の中を低速タービンから伸びた駆動軸が貫通し太陽歯車を駆動する。

大きな内歯車状のスプライン(穴)は内歯車と一緒に回転するギヤ・ボックスの(多分潤滑)構造を構成する壁面の勘合部と思われる。

ファンの駆動は画像 CD で見られる外周にあるスプライン(軸)で勘合するケースが遊星歯車機構を外側から覆い、最上段のカット・アウェイ図に示されている「GEARBOX」と吹き出されたイラストのケース先端部にあるボスにファンのハブを取り付けておこなう。

結論から言えば、P&W が開発したギヤード・ターボファン・エンジンである ピュアパワー のギヤ・ボックスの構成は、1970 代から実績を重ねている静止推力が 7klbf 級の基本レイアウトを踏襲している。

そのロール・モデルは、小型ビジネス・ジェットに向けて ギャレット・エアリサーチ TFE731 として開発・量産化され成功し、ライカミング、アライドシグナルを経て現在はハネウェル ALF 502/LF507 と変遷しながら継続している。

実用化されたギヤード・ターボ・ファンの系譜は上記になるがギヤ・ボックスの変遷はいくつかあることが分かってきました。このため以下を見え消しとして詳しいことが分かり次第訂正いたします。ご迷惑をおかけして申し訳ありません。

 こちらの遊星歯車は捩じれ角の小さいハスバ歯車を 1 列 4 個で構成されているが、ピュアパワーは捩じれ角の大きい対抗するハスバ歯車を 5 x 2 列 10 個で高出力に対応している。

ごく初期のギヤード・ターボ・ファンの詳しい構造図は見つからなかったが技術史としてはターボ・ジェットの創生期から考えられており、遊星歯車を使った二種類の減速機にそれぞれ取り組んだ開発の先行例は数多くある。

(閑話休題・・・やっとね! )

次回はこのギヤ比がどう貢献するのについて考える。

2016年10月19日 (水)

キネマ航空CEO ターボ・ファン・ジェット・エンジンの効率を考える(グラフ編 + 下の方で、ギヤード・ターボ・ファンの疑問編の始まり)

 「数式編」とほぼ同時公開です。こちらにも目を通してからお読みください。
 また、例によって公開後の校正、校閲中です。ご意見等お寄せください。
                                              キネマ航空 CEO 拝

 前回、長々と続けた「数式編」も解析した数式が結論では全体像は見えてはきません。そこで見える化です。

 ターボ・ファン・エンジンの効率の変化を縦軸にエンジンが空気(質量)を送り出す速度とエンジン自体に進行速度の比を横軸にとり、バイパス比をパラメーターにして整理したグラフ化です。

 ただ、グラフの元にした数式は次の仮定に基づいています。定量的な解析ではなく定性的な解析です。ご留意ください。

     1.ファンとジェットの作り出す空気の速度は速度比に関係なく等しく、ファンとジェットが送り出す空気の質量流量比はバイパス比と同じ値で一定とする。
     2.ファンには翼素理論ではなく運動量理論を適用している。これについてはプロペラ効率の成り立ちを検証した 1234 回を通読して想像で補ってください。
     3.ダクテッド・ファンは低速側ではプロペラの効率以上に膨らみを増し、高速側の効率のピークの伸びはブレード先端の誘導抵抗が抑えられてターボ・ジェットのそれに近づいていると考えられる。
     4.結果的に空気機械としての効率が1のダクテッド・ターボ・ファン・ジェットはターボ・ジェットの運動量理論と等価であると仮定している。

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 添付したグラフは二つありますグラフ上でダブル・クリックすると拡大ポップ・アップします

 いずれも、パラメーターとなるバイパス比は 0:1 のターボ・エンジンからギヤード・ターボ・ファンの PW1000 シリーズの最大値 12:1 までをグラフ化で比較してあります。

 使った数式は 式(10)。この式で q = 0 とすれば 式(1) になります。ただし、面倒くさいので式中の伝達効率やファンの駆動効率などの効率はψ = 1 として無視しています。

Vs_spd_ratio_with_same_max_spd Vs_spd_ratio_with_same_core_eng

 まず、左のグラフ・・・前回の式(10)をそのままグラフ化した悪い表示例
                                 
グラフ上でダブル・クリックすると拡大ポップ・アップします

 速度比 1 で効率が 1 を示す一番下のカーブがターボ・ジェットのエンジンです。

 確かに、一般的な説明のようにバイパス比が大きくなるほど効率が良くなっています。

 そしてバイパス比が大きくなるほど効率向上の割合は小さくなってゆきます。

 それはそれで良いのですが・・・

 あなたが、このグラフを以上のように言葉で要約してしまうと、誰かに向かって、グラフ化による目くらまし効果をそのまま表現して大きな誤解を与える発信をしてしまいます。

 まず、効率が 1 以上になるのは前回の数式編で説明したように(吐出速度に比例する)仕事を(速度の二乗に比例する)エネルギーで割った値です。

 エネルギーを分割して使用するターボ・ファン・エンジンでは吐出空気の質量流量は増加しますが引き換えに吐出速度は低下します。

 速度の低下は、「エネルギーを分割したあとのコア・エンジンとファンの推進力の合計は(それぞれに割り当てられた分割比の平方根に比例する)速度と(バイパス比に比例する)空気の質量との積の和に比例して増加している」という物理的な原理に従うためです。

 グラフの横軸は、コア・エンジンがターボ・ジェットとして吐出する空気の速度でエンジンの進行速度を割った値です。その値が 1 となる進行速度がそのエンジンが出せる理想の限界速度です。

 すなわちバイパス比が 1 以上のターボ・ファン・エンジンの吐出速度との比が 1 ではエネルギーを分割する前のコア・エンジンが単体で出せる速度は左のグラフ上では速度比 1 以上となります。

 すなわち、このグラフのコア・エンジンはバイパス比 0 のエンジンとは全く別物をそれぞれのコア・エンジンとして計算した値を誤った速度比の軸上に重ねています。

  高バイパス比化されたターボ・ファン・エンジンは、エンジンを構成する新材質の採用による回転部分の軽量化や耐熱性材質による燃焼室以後の高温部の改善でより完全燃焼に近づけてより高温の(高エネルギーの)空気を扱えるようなった結果で得られた向上部分が大きい。

 いっぽうでは、効率の分母となるエネルギー自体を大きくした結果(すなわち燃料投入量の増加の見返り)でもあります。

 したがい、高バイパス比の効率を、バイパス比 0 のエンジンと速度比の上で同列にしたグラフて比較するのはいかがなものかと言わざるをえません。 この辺りは、前回の式(9’)を参照してください。

 次に、右のグラフ・・・前回の式(10)を注記で補正してグラフ化した妥当な表示例
                                 
グラフ上でダブル・クリックすると拡大ポップ・アップします

  ターボ・ファン化されたエンジンのコア・エンジンはバイパス比 0 のターボ・ジェットと同じ運動エネルギーを出している場合のグラフです。

 左のグラフとの違いはターボ・ジェットの限界速度とバイパス比によって変わるターボ・ファンの限界速度との比をターボ・ジェットの速度比に反映して整理してあります。

 そして、各バイパス比の効率曲線上の点はターボ・ジェット(バイパス比 0 )の速度比の点に対応してプロットされています。

 ターボ・ファン・エンジンはターボ・プロップ・エンジンと違いジェット・ライナーに搭載する場合の仕様は巡航速度で M 0.8 、最高速度で M 0.9 辺りに設定されている。

 ターボ・ファンのバイパス比 12 は限界速度比が 0.3 を切っていますからベースとしたコア・エンジンの限界速度を M 1.0 とするとその 3.5 倍の速度、M 3.5 が出せるターボ・ジェット・エンジンをコア・エンジンに採用しなければならない。

 式(9’)に示すように、速度の二乗に比例するエネルギーに換算すると 12 倍の(バイパス比に相当する)エネルギーが必要となります。

 またグラフからは、バイパス比を 8:1 以上に大きくしても特別に効率が良くなるとも言えない。しかし、要求されるエネルギーの比は速度比の二乗ので割ることになるのだが、速度比が 0 に近づくほどエネルギーの絶対値は不利になる。

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 推進仕事効率の向上は余剰エネルギーがあって初めて可能になるのです。

 ターボ・ファン・エンジンの高バイパス化による推進効率の向上は亜音速域の上限での効率向上です。高バイパス比化によって燃料消費の絶対量が必ず大きく改善されるとは言い切れません。

 少なくとも高バイパス比のエンジンを採用する機体は亜音速の上限域で余剰エネルギーの大きいターボ・ジェットをコア・エンジンとして採用できる大きさや運行経済的な余裕がある仕様でないと成立は難しいと考えられる。

 最先端のターボ・ファン・エンジンの大きさは、耐熱材料や複合樹脂材料の進展でファンやタービン・ブレードの翼型の改良とコンピュータ制御による燃焼化学の面からも(出力/タービン直径の比を指標とする)小型化ができており、制限条件はバイパス比に直結するファンの直径のみになっている。

 機体の仕様からは最高速度や巡航速度を押さえた仕様も選択肢となるのだが MRJ は機体の形状抵抗を下げて速度低下をカバーするため細い胴体で対応しようとしている。

 高バイパス比エンジンの顧客がボーイングエアバスに限られる大型機向けでは機体に合わせてエンジンが開発されるオートクチュールで生産ができる。

 しかし、リージョナル・ジェット・ライナーのようにメーカー数がそれなりにあり計画される機体のバリエーションや生産数が多ければプレタポルテとして全メーカーのラインアップに合わせて細分化したコア・エンジンの仕様を並べておく必要がある。

 P&W は、これまでのエンジン・メーカー同士のエンジン型式別のコンソーシアムといったパイの分配から一歩抜け出すためにライカミングで開発されビジネス・ジェットで実績のあるプラネタリー・ギヤ・ボックス(遊星歯車箱)を一つ加えて、生産数の見込めるリージョナル・ジェット枠の総取りを狙っているともいえる。

 そう上手く行くのかどうか、ターボ・ファンの来し方行く末を概観すると、

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 ターボ・ファン・エンジンは、ターボ・ジェット・エンジンに有り余るエネルギーがありながら、音速を越える機体の設計技術が追いつかない(費用対効果を問われるジェット・ライナーや輸送機にとっては現在も続いている)時代に超音速機がふさわしいターボ機械を亜音速機に応用する用途で大きな飛躍を遂げました。

 現在は、その亜音速の上限の中で性能向上の技術革新競争が行われている時代です。言い換えれば論理的な限界に迫りつつある時代とも言えます。

 革新技術も突き詰めると、注ぎ込む技術の利害得失を経済的損得に置き変えてトレード・オフした結果で推測される数パーセントの向上率に、あてもなくコストを注ぎ込むことになる時代となったような感覚に襲われます。

 あとで述べるプロップ・ファンにしてもコントラ・ダクテッド・ファンにしてもバイパス比の束縛からは逃げられない。

 航空エンジンにはレシプロからジェットへのパラダイム変換がありました。

 その直前のレシプロ・エンジンの苦闘の時代も偲ばれます。ラジアル・エンジンの四列化、ターボ・コンバウンド化などのギミックの限界に挑んだ時代に重なるのかもしれません。

 今のところジェット・エンジンをベースにしたベターメントによる努力は続くでしょうがジェット・エンジンに代わるパラダイムの展望は見えていません。

 余談ながら、お時間がありましたら、また当オフィスにご来訪ください。次の記事をお勧めします。

 キネマ航空 011便拾遺 その3 『アビエイター』編 P&W ワスプ・メジャーとCWC ターボ・コンパウンドについて

 次回は、いよいよギヤード・ターボ・ファン・ジェットに取り掛かります。今年中には終わらせたいのだけど。

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 おまけのグラフ・・・エネルギーk=1を分割し分担するコア・エンジンk)とファン1-kをバイパス比qの関係で示してみた・・・ついでにターボ・ファン・ジェットの技術動向もまとめてみた。グラフ上でダブル・クリックすると拡大ポップ・アップします

 すなわち、前回の 式(8)で示した、決まった大きさのエネルギーを使って 1 基のターボ・ファンとして最大の仕事をする、エネルギーの分割比(q)とバイパス比(k)の関係です。Pwr_split_ratio_vs_bypass_ratio ターボ・ファン・エンジンの高バイパス比 8-12 ではコア・エンジンのエネルギー分割比は 0.1 前後にまで下がる(ファンでは 0.9 前後まで上がる)。

 ちなみに、ターボ・プロップでは 0.2 前後だからバイパス比換算では 4.0 前後相当となる。

 ターボ・ファンではダクトのデフューザー効果ファンの径を使って高バイパス比に到達できる。その一面ではファンの径は大きくなり、ファンを収容するダクトなどを構成するカウリングの形状抵抗が増える。

 ターボ・プロップフリー・タービンターボ・シャフト・エンジンでエネルギー分割比を小さくするにはコントラ(二重反転式)・プロペラなど先端の周速を押さえた高い効率で動力転換(吸収)が可能な空気機械が必要になる。この場合のエンジンの形状抵抗となるカウリングコア・エンジンを包む径でたりる。

 その外径を小さくする空力機械であるファンの工学的アプローチが、コントラ・ターボ・プロップのブレード翼型を大きく変えたアンダクテッド・ファン・エンジンまたはプロップ・ファン・エンジンである。

 プロップ・ファンアンダクテッド・ファンのブレードは既に(ダクテッド・ターボ・ファンで使われている前進角と後退角を組合わせた幅広の翼弦長を持つ薄肉のブレードがベースになる。

 しかし、その先端形状はターボ・ファンの先端とダクトとの隙間を長く取ってラビリンス効果による翼端渦を押さえる逆テーパー型ではなく、誘導抵抗を減らすために先端が細く尖った、平面に展開すると三角翼型が場合によっては三日月翼が基本になると思われる。

 いっぽう、現実の問題では、ダクトの有無で周囲に発散させる高周波による騒音のレベルに大きな差がある。

 ターボ・ファンでは、さらにコントラ・ファンでファン径のひいてはカウリング径のサイズ・ダウンで形状抵抗の低減を図ることになる。

4 . ギヤード・ターボ・ファン・ジェットへの疑問 ----------------------------------

 我々が、なんにも疑わずにいるバイパス比の数値の持つ意味は、次のケースが考えられる。

 A.公称バイパス比は 8 : 1 であるが理論バイパス比では 9 : 1 なのかもしれない。
 B.公称バイパス比は理論値の 9 : 1 だが、実効バイパス比は 8 : 1 なのかもしれない。
 
 (B.は偽装ともいえるが狭い世界の中だからね)

   プラット & ホイットニーは、「いずれにせよ、実効バイパス比は理論値より小さい。したがってギヤード・ターボ・ファン・エンジンであるピュアパワー© によって、実効バイパス比を理論バイパス比に近づける技術成果である」と主張しているとも考えられる。

 では、そもそも、バイパス比とは何なのか ? となると、言葉の一人歩きのままです。したがい、当CEO の解析(ご託)も「群盲、象を撫でる」の域にとどまったままでの評論であることは自認しています。

 しかし、バイパス比が持っている物理量の原則は変わらない。

 コア・ジェットとファンの吐出速度を等しくしたターボ・ファン・エンジンの効率の 式        
     ηtf
= 2/[1+{Vj/√(q/ψ+ 1)}/V1 ]・・・(10)

を動力分割比 k で表せば、
     ηtf = 2/[1+{√(k)}・(Vj/V1)]・・・(10’)

 両式から推進効率を決めるのは動力分割メカニズムの伝達効率に加えてバイパス比とファンの効率であるという当たり前の結論です。

 燃費効率の改善のためにバイパス比の増加を図るギヤード・ターボ・ファン・エンジンに必要なギヤ・ボックスの伝達効率分は悪化することは明らかです。

 そして、結果として得られるファン回転数の低下とバイパス比の増加によるファン直径の拡大によって得られるファン効率との相殺はどうなるのか。

 公称バイパス比では理論値と実効値が使い分けられていたり、いっぽうを隠したりするなどの業界のダブル・スタンダードがあるのか。(P&Wピュアパワー・エンジンではファン径の拡大などしないでバイパス比の公称値を大きくしたのか)

 ターボ・ファン・エンジンを採用する機体の速度には亜音速の上限という天井がある。
 式(9’)に示すようにバイパス比の安易な拡大はコア・エンジンの出力の増加につながり推進効率の分母をかさ上げしてしまい、絶対値として燃料効率の向上につながるのか。

 つながるからエンジン・メーカーは製造し、機体メーカーや航空会社は採用するのだろうが、大出力を受け持つギヤ・ボックスの信頼性が確立するには時間がかかる・・・。

(続く)

2016年10月18日 (火)

キネマ航空CEO ターボ・ファン・ジェット・エンジンの効率を考える(数式編)

 「グラフ編」は近日公開予定です。こちらにも目をお通しください。
 また、例によって公開後の校正、校閲中です。ご意見等お寄せください。
                                              キネマ航空 CEO 拝

 今回は数式ばかりですが、言葉の説明では舌足らずになるところに一歩踏み込みました。

 ターボ・ファンはバイパス比を大きくすることで得るところもあれば、失うところもある、ピン・ポイントで出力を選ぶ技術であることがわかります。

 この視点からは、P&W のギヤード・ターボ・ファン・ジェット・エンジンのブランド名であるピュアパワーの出力設定のライン・アップの多さも頷けます。

 ピュア・パワーは静止推力15klb(6.54 t) から 35klb(15.26 t) の間を 12 の型式でカバーしています。中には1klb(436kgf)刻みの設定もあります。

  では、お楽しみ、いや、たまには、お苦しみください。
 MAC がこだわった MRJ
エンジン選択が正しかったのかどうかの検証の過程です。

                                              キネマ航空 CEO 拝

0 . はじめに  --------------------------------------

 ターボ・ファン・ジェットのファンもデフューザーの中で断熱圧縮にかかわっている。ターボ・ファンを熱力学で説明するには専門家の専門書か解説を頼ることになる。

 それらはWEB上にあるので、ここではエネルギー保存則や力に仕事といった同じ物理学の中の運動力学で挑戦する。したがい、ターボ・ファン・エンジンの工学的な成り立ちは分かりやすいはずだ。

 ただ、ファンの項では翼素理論ではなく、運動量(モーメンタム)理論を使って行うので定量・定性的な現実とは少し外れた値を誘導することになる。

 空力機械であるファンは翼素理論でないと現実と整合しないことはプロペラ効率の成り立ちを検証した 123、特に 4 回を通して得た知見の通りだが、ダクテッド・ファンに応用できる手持ちの資料は概説しかない。

 次に、今回の計算では、いくつか使う係数、例えば動力分割比 k や バイパス比の係数 q は現実の翼素理論ではエンジンの進行速度に加えてファン設計仕様で変化するはずだが、計算に使用される対象の速度域で一定値とする。

 以下の本文はエンジン出力(エネルギー)の分割と合成を初歩的な説明の順序にそって展開しています。結論として示すターボ・ファン・ジェットの効率などの数式は(本文中にも出てくる)物理学の定義や法則による数式を使いこなせば分割比 k など使わずにもっとスマートに解けます。挑戦してみてください。

 1 . ターボ・ジェット ----------------------------------------(復習です)

 ターボ・ファン・ジェット・エンジンの中心にあるのはターボ・ジェット・エンジンでコア・エンジンと呼ばれる。

Turbo_jet_try4 コア・エンジンは、ツー・スプール形式で、1-2-C-1-1 ので構成です。 C は燃焼室の形式でキャン・タイプ。デフューザーもどきのインレットも付け足しました。

 ターボ・ジェットの働きは速度 V1 で進入してくる質量 m の空気を同じ質量のまま(実際には燃料の質量も加わる)、速度 Vj で噴射して推進力として利用できる有効運動エネルギー Kj を生み出す内燃機関です。
     Kj = (1/2)・m・(Vj2-V12) ・・・(a)

 書き直すと、
     Kj = (1/2)・m・Vj2 - (1/2)mV12 = KE - Kd

      KE = (1/2)・m・Vj2
         ターボ・ジェット・エンジンの燃焼で得られる燃焼エネルギーから圧縮機を駆動するタービンで使われるエネルギーを除いたエンジンとしての正味の運動エネルギー。
      (実用上はオイル・ポンプ、発電機、抽気などに使われるエネルギーも差し引いた後の推進力に使えるエネルギー)
      簡単にいえば KE V1 = 0 の状態です。 V1 ≠ 0 の場合でも気圧や気温が同一の運転状態では(多少強引ですがKE は一定とする。
      Kd = (1/2)・m・V12
         
ジェット・エンジンに寄生するラム圧抵抗です。速度 V1 でデフューザー内に侵入してくる空気により発生するラム圧抵抗を押し返すために使われるエンジンの運動エネルギーとなる。(エンジンのカウリングなどの外側に生じる形状抵抗は機体の形状抵抗の一部となります)

 結果として、ターボ・ジェット・エンジンで利用できるエネルギーは、KE から Kd を差し引いた 式(a) となる。

  そして、ターボ・ジェット・エンジンの推進力 Fj は、
     Fj = m・ (Vj - V1) ・・・(b)

 ターボ・ジェット・エンジンの仕事 Wj は、
     Wj = V1・ Fj
       = m・
V1 ・(Vj-V1) ・・・(c)

 繰り返しになるが式中にある Vj は熱力学を使わなければ求まりません。エンジンのスペックには静止時の流量質量が掲載されている場合もあります。

 KjWj いずれの式からも、このエンジンが出せる理論上の限界速度は Vj - V1 = 0 となる V1 V1jmax です。

 ここでいう限界速度 V1jmax は水平飛行(地球は丸いので正確には等高度飛行です。)による機体の最高速度 Vmax ではありません。

 機体の Vmax は、V1jmax より小さくなります。 Vmax は、機体の全抵抗とエンジンの全推進力がつり合う速度です。

 で、ターボ・ジェット・エンジンの運動量理論による効率は、
     η= Wj / Kj = 2/(1 + V1/Vj)・・・(1)

 でした。計算過程は2016年5月22日の記事を参照ください。

2 .ターボ・ファン・ジェット ----------------------------------------

  1.ターボ・ジェットコア・エンジンとしたターボ・ファン・ジェットでは、Turbo_fan_jet_try4 ツー・スプール・エンジンですが構成は 1- (G) -1-2-C-1-2 です。ファンを駆動するため低圧段タービンを 1 段増やしました。

 ファンの後ろの (G) はギヤード・ファンの場合のギヤ・ボックスです。模式図ではスピナーか低圧段コンプレッサーのハブの中にある(はず)。

 以下の解析ではエネルギー保存則が成立し、一部の損失は無視し、表現可能な効率(例えば、ファンの効率やギヤ・ボックスの伝達損失など)は式に組み込むことにします。

 なお、ギヤード・ターボ・ファンに必要なギヤ・ボックスの減速比は、運動量理論では性能に直接に関係することはありません。

 2-1 コア・ジェット ----------------------------------------

 モデルとなったターボ・ファン・ジェット・エンジンでは、コア・エンジン本体の出力エネルギー KE はベースとなったターボ・ジェット・エンジンと変わらない前提です。

 したがい、KE = (1/2)mVj2 の一部がターボ・ファンを駆動するエネルギー KE となり、残りがターボ・ジェットとして使用できるコア・エンジンの出力エネルギー KEc となる。
    KE = KEc + KEf =λ・(1/2)・mVj2

 最適に設計してあるベースのコア・エンジンに低圧段を 1 段追加するなどで、出力分割に伴う効率λ(≦ 1)の低下があるのだがここではλ≒ 1 として無視します。
    KE = (1/2)・m・Vj2 

 コア・エンジンの推力となるエネルギー KEc は、エネルギー分割比を k= KEc/KE 0 ≦ k ≦ 1)とすると、
    KEc = k・KE = (1/2)・k・m・Vj2 = (1/2)・m・Vc2 ・・・(2)
      Vcターボ・ジェットとして働くコア・エンジンの噴流速度

 ファンの性能もプロペラの推進力と駆動力の関係があり、ファンの翼型と迎え角により推進力も駆動するトルク抵抗も変わるので厳密には k = (一定) とは言えない(先々回のプロペラの翼素理論の初歩の回を参照)。しかし、これも無視して一定とします。

 式(2)
より、
     Vc/Vj = √(k)・・・(3)

【重要】
 
例えば、k = 0.5 、すなわち、コア・エンジンはエネルギーの50%( Kc /KE = 0.5を分割してファンを駆動してもコア・ジェット・エンジンが噴出するジェットの速度は Vc/Vj = √(0.5)= 0.707Vc は30%の低下で済む。
 分割されたエネルギーでファンを駆動して同じ質量の空気を同じ速度を送り出せば、同じ推進力が得られる。
 したがい、ターボ・ファンでは二倍してエネルギーを分割する前のコア・エンジンの1.414倍の推進力が得られることになる。 この状態は、ある条件下でバイパス比 2 : 1 に相当することを後ほど証明します。

 コア・ジェットの有効運動エネルギー Kc はターボ・ジェットと同じラム圧抵抗エネルギー Kdc を差し引いた、
     Kc =  KEc - Kdc = (1/2)・m・(Vc2 - V12 )
         = (1/2)・m・(k・Vj2 - V12)・・・(d)

 仕事の式は、
     Wc = m・V1・(Vc-V1) = m・V1・(√(k)・Vj - V1) ・・・(e)  

 2-2 ファン ----------------------------------------

 ファンを駆動するため、コア・ジェットから分割された運動エネルギーは、
     KEf = (1 - k)・KE = (1/2)・(1-k)・m・Vj2

 ファンが後流に与える運動エネルギーは、
     Kf =ψKEf = (1/2)ψ・(1-k)・m・Vj2 = (1/2) q・m Vf2・・・(4)
      
     ψ:
ファンの効率(ギヤード・ターボ・ファンではギヤ・ボックスの効率も含む) 
      q :
バイパス・レシオq : 1) q
     Vf
ファンの後流の速度 

 したがい、
     V/Vj = √{(ψ/q)・(1-k)} ・・・(5)

 ファンの有効運動エネルギーは、
     Kf = q・m・( Vf2-V12)/2 = (1/2)・q・m・[{(ψ/q)・(1-k)}・Vj2 - V12]・・・(f)

 ファンが実行できる仕事は、
     W = q・m・V1 (Vf -V1) = q・m・V1 [√{(ψ/q)・(1-k)}・Vj - V1]・・・(g)

 以上のようにターボ・ファンの運動エネルギーも推進仕事もファンのないコア・ジェットを単体で作動させた噴流速度 Vj をパラメーターとして表記できる。

 2-3 ターボ・ファン ----------------------------------------

 ターボ・ファン・ジェット・エンジンとしての仕事は、
     Wtf = Wc + W
        = m・V1 (Vc - V1) + q・mV1 (V -V1)
        = m・V1{( Vc + qVf ) - (1+q) V1}
        = m・V1・ [(√k + √{(ψ/q)・(1-k) })・Vj - (q+1)・V1] ・・・(h)

 この式で、 Wtf = 0 にする[ ] 内の V1 が、コア・エンジンを純ターボ・ジェット・エンジンとして作動させた場合の限界速度 V1jmax に対して、同じエンジンでバイパス比を q : 1 、エネルギー分配比 k で構成されたターボ・ファン・ジェットの限界速度は V1tfmax となる。
 したがい、 V1 = V1tfmax と書き換えられて

     V1tfmax/Vj1max = [ √k + √{ψ・q・ (1-k) }] / (q+1)・・・(6)

-------------------------------------------

 ターボ・ファン・ジェットの qk の関係を設定する方法として、コア・エンジンのジェットの限界速度 Vc とファン後流の限界速度 Vf を等しくさせる方法を例にとる。

 Vf Vc は、Vj をパラメーターにした式(3)(5)から、

     Vf/Vc = (Vf/Vj )/(Vc/Vj) =  √{(ψ/q)・(1-k)} / √k = √{(ψ/q)・(1/k - 1)}

     Vf/Vc = 1 あるいは Vf = Vc = Vtf より、
     k = 1/(q/ψ+ 1)・・・(8)

 この方法は d(Wtf)/dk = 0 で得られる極値(この場合はWtf  の最大値)を示す qk の関係式と同じになります。
 すなわち 式(8) はターボ・ファン・エンジンの仕事の最大値を得るバイパス比 q と動力分割比 k の関係式になります。

    したがい、
     Vtf/Vj = [ 1/√{ (q/ψ+ 1)} +q/√{(q /ψ+ 1) } ]/ (1+q)
          = 1/(q/ψ+ 1) ・・・(9)

 2-4 ターボ・ファン・ジェットの運動量理論による物理量 -----------------------

 さて、Vf = Vc = Vtf としたので、ターボ・ジェット・エンジンの有効推進力 Fj は、
     Fj = (q+1)・m・(Vtf -V1)
       =
 (q+1)・m・[ {Vj /√(q/ψ+ 1)} - V1]

 そして、ターボ・ファン・エンジンで得られる有効仕事は、
     Wtf = Wc + W
        = m・V1 ・(Vc - V1) + q・mV1 (V -V1)

        = (q+1)・m・V1・(Vtf -V1)
        =
(q+1)・m・V1・[ {Vj /√(q/ψ+ 1)}- V1] ・・・(i)

 ターボ・ファン・ジェットのコア・ジェットで得られる有効エネルギーの総量は、ターボ・ジェットと同じ Kj = (1/2)・m・(Vj2-V12) なのだが、ここでは
     Ktf = (1/2)・(q+1)・m・(Vtf2-V12 )
        = (1/2)・(q+1)・m・[ {Vj /√(q/ψ+ 1) }2-V12 ]・・・( j )

とする。

 2-5 ターボ・ファン・ジェットの運動量理論による効率 -------------------------

 したがい、ターボ・ファン・エンジンの推進効率は、
     ηtf = Wtf/Ktf
        =2・V1・(Vtf - V1)/(Vtf2-V12

        =2/(1+Vtf/V1)
        =2/[1+
{Vj/√(q/ψ+ 1)}/V1 ]・・・(10)

 この運動量理論による推進効率の式の誘導は、同じ出力エネルギーを出せるコア・エンジンでのバイパス比をパラメーターにしています。

 したがい、この式で使われる Vj /√(q/ψ+ 1) は速度エネルギーとしての値であり、コア・エンジンの噴流とファンの後流を合わせた(定義は先述の)排気速度の Vtf に相当します。

 すなわち、式(10)では V1/Vj = 1 のときのηtf の値は V1/Vtf = 1 のときに相当ししています。

したがい、式(10)は、式(9)Vtf/Vj  = 1/√(q/ψ+ 1) より 0 ≦ V1/Vj ≦1/(q/ψ+ 1)} の範囲に限定されます。

---------------------------------------

 さて、 式(9) を変形すると、
      Vj = {√(q/ψ+ 1)}・Vtf 

 エンジンの出力となるエネルギー(E)は速度の二乗に比例するので、
     EVj2 = (q/ψ+ 1)Vtf2 ・・・(9’)

【重要】
 ターボ・ファン・ジェット・ライナーの巡航速度は M 0.8 前後でほぼ一定の値に設定される。したがい、バイパス比を大きくすると (q/ψ+ 1) に比例してコア・エンジンの出力も 大きくならざるを得ない。当然、必要燃料消費も増える。

 では、なぜバイパス比を大きくするのか、「亜音速域の推進効率を向上させるため」、に尽きるのだが・・・

---------------------------------------

 ながながと「数式編」にお付き合いいただきありがとうございました。

 「ターボ・ファンのバイパス比を大きくすればジェット・ライナーの性能が向上する」という説明を鵜呑みにするのは工学知識上は危険です。

 繰り返すと、仕事や力の元になるエネルギーは速度の二乗に比例するが力は速度に比例するという物理法則では、エネルギーを 2 等分に分割しても速度は√(1/2) = 0.707 も残っている。

 したがい、力や仕事になる速度として実質上は 2 x 0.707 = 1.414 倍の力や仕事として使えることになります。もちろん、いっぽうでは 2 x (1/√2)2 = 1 というエネルギー保存則は不変です。

 「ジェット噴射の空気の温度(すなわち速度)の低下と引き換えにファンで大量の(低温で重い)空気を吐出して推進力を大きくする」という、熱力学と空気力学の工学的応用で(推進)力が増加し結果として(仕事と運動エネルギーの比である)効率が向上するのです。

 次回は ターボ・ジェットの効率の式(1) とターボ・ファンの効率の 式(10) をバイパス比をパラメーターにしてグラフ上に重ねて見える化を試みます。

 そのなかで、上限速度が決まっているターボ・ファン・ジェット・ライナーではバイパス比を増加させるための見返りをコア・エンジンに要求してきます。 せっかくですから、式(9’) も記憶しておいてください。

 次回はの予定はそのあたりに注目した「グラフ編」です。ご期待ください。

2016年9月11日 (日)

キネマ航空CEO ギヤード・ターボ・ファンの前に亜音速ジェット・エンジンのデフューザーを考える、の巻

 ギヤード・ターボ・ファン・ジェット・エンジンはバイパス比を大きくしてエンジンを通過する空気の質量を増やすという目論みの一つです。

 大きなバイパス比は、ファンの直径をさらに大きくすれば得られます。しかし、ファンの直径を大きくするとブレードに生じる遠心力は大きくなります。

Ge90 右の写真 はニューヨーク近代美術館アーキテクチャー & デザインコレクションの展示品である炭素繊維複合材で作られた GE-90 のファンブレードです。

 前縁と後縁に白く見えるところは金属、黒い部分は金属より軽く金属より強い炭素繊維です。

 ライティングは、先端近くの瘤状の起伏や後縁部分の反り返りなどを浮きあがらせています。

 いずれにせよ、これまでのブレードの翼型とはかけ離れた極めて複雑な形状をしています。

 コンピュータを使った流体解析や構造解析の成果ですが、それですべてが可能になるわけではありません。

 製品化には材料開発や製造技術の革新を並行して進める工業力の存在が背後にあります。そこには携わるエンジニア達の冒険心も・・・推進させる経営者の功名心も・・・

 製品はそれぞれの技術の集積した試作品で設計意図を検証する膨大な実験に支えられている。そして製造に移ったあとにも、実験できなかった、あるいはしなかった、その結果も発生します。

 その結果を解明をする使命が技術者を待っていますし経営者とともに生じた責任を負うことになります。
(閑話休題)

 さて、ファンの直径をあまり変えずに通過する空気質量を増すには、コントラ(二重反転)・ファンを採用することで解決できます。追加する機械構造は普通は遊星歯車機構を使った逆転装置と回転方向を逆にしたファン一つです。

 P&W はコントラ・ファンと同じような歯車機構をつかうならシングル・ファンの減速機としてファン・ブレードの先端のスピードを落とした方が直径が大きくなってもエンジンのバランスとしては優れていると考えたようです。

 もちろん、通常のターボ・ファンとの比較を含めて遊星歯車による減速ギヤボックスで生じる弊害と比較した結果としての結論です。

 (閑話開題・・・)ただし、工学のつらいところは、その理論通りに作っても理論を設計に展開する思考の通りになるとは限らないこと・・・さらには問題を解決しても市場で受け入れられるかどうか、に全てがかかります。

 ギヤード・ターボ・ファン・ジェット・エンジンで成功したのはライカミングで開発されハネウェル・エアロスペースで生産された ALF 502/507 (1980)です。

 出力は 7 Klbf (31 kN)クラスでした。これは、現在生産に移行しているP&W PW1000 シリーズの最下位となる仕様の出力が 17Klbf ですからその半分以下の出力でした。

 採用した大型機は BAe 146 シリーズ(1978-2001 387 機)です。成功した機種と言っていいと思います。乗客数は 70-82、85-100、100-112 の三クラスありましたから現在のリージョナル・ジェットに相当し、また、そのように使用されています。

 ただし、そのためには四発機にする必要がありました。双発機のエンジンに換算すると一基あたり 14 Klbf となります。

 都市に囲まれた飛行場で運行するためのSTOL性と静粛性は極めて優れていましたが、出力の比較からも想像できるように巡航速度と飛行高度は現在開発されているリージョナル・ジェットよりかなり劣ります。

 当CEO も一度乗ったことがあります。高翼機ですので高空から見る都市の夜景はそれは素晴らしいものでした。当CEO にはこちらがリージョナル・ジェットの王道のように思えますけれど・・・(開題に戻って閑話を休題)

 さて、P&W のギヤード・ターボ・ファン・ジェットでも通常のターボ・ファン・ジェットのカウルの中に設けられたデフューザーを継承します。

 すなわち、デフューザーでファンに吸い込まれる空気の流れの速度を機速より低い速度に落として静圧を上げるメカニズムを多少の物理知識で解析して理解を深めて置く必要がありそうです。

Defuser_analysis_1

 上図はターボ・ファン・エンジンのつもりです。ターボ・ファンの面倒なところは、エンジンの最後部で推力として得られる、コア・ジェットの流速 vj とファンによる流速 vf が異なっているところです。

 とりあえずは vj >vf ですね。逆転して vj <vf となるとターボ・プロップ・エンジンの範疇に入ります。ギヤード・ターボ・ファンはターボ・ファンと同じコア・エンジンの出力のままで vj ≒ vf に近づけていく技術と考えられます。

 コア・エンジンの出口では燃焼による熱が加わるのでシャルルの法則が適用されて話が面倒くさくなります。

 ただ、(ギヤード・)ターボ・ファン・ジェットでも通過する質量流量は入口と出口で等しいと定義します。

 当CEOが得意なエンジンの「フン詰まり、No!」理論です。これも厳密には圧縮空気を空調システムに抽気したり、流れの中に噴射された燃料の質量と噴射のベクトルを無視した理論ですけどね。

 エンジンのコア部分とファン部分を通る空気の質量流量の比を、コア部分を 1 としたバイパス比( 1 : k )としてあらわします。したがい、エンジン入口の質量流量は( 1 + k )に比例しています。

 ターボ・ファン・ジェットは回転するファンやコンプレッサーが一定の質量流量だけを通す関所(壁)となって機体のスピードが速くなると空気が狭い入り口から広い断面積のデフューザーと呼ばれる空間に押し込まれます。

 この空間で気体の速度は下がり静圧が大きくなり、続々と押し込まれてくる空気で圧縮されて体積は小さく密度は大きくなります。いわゆる断熱圧縮です。自転車の空気入れで頑張ると空気入れの下側が熱くなります。(断熱圧縮による発熱については こちら

 頑張れば頑張るほど空気入れも使っている人間も熱くなります。人間に相当するのはジェット・エンジン自身です。機体の速度に変わったエンジンのエネルギーの一部がラム圧抵抗とつり合いジェット・エンジンの発生するエネルギーからこれを差っ引いた残りがジェット・エンジンの出力となるエネルギーです。

 圧縮による発熱は断熱圧縮と呼ばれ、ポアソンの法則で pVγ= c ( 一定 constante フランス語) 、p 圧力、V 体積、γ 比熱比、から計算されます。γ= 1 だとボイルの法則になります。比熱比γ は気体元素の構成比よって変わります。

 これにシャルルの法則 V/T = k (一定 konstante ドイツ語)で 、T 絶対温度 が加わって、二つの式を使って、温度()、圧力(p)、体積(V)という気体のあらゆる状態を公式で示すことができる。

 さらに、もう一つ重要な要素である質量(m)はそれぞれの定数の中に要素として含まれています。すなわち気体を構成する元素によって各定数の値が異なります。

 ジェット・エンジンの理屈はボイルシャルルの法則ではなくポアソンシャルルの法則で始まります。

 ここから始める熱力学は、エントロピーとエンタルピーを扱い、機械工学に比べるとかなり特殊な分野となります。 

 なので、頭の固くなった当CEO は、圧縮性があろうが、なかろうが、ジェット・エンジンが吸込み、吐き出す空気の単位時間当たりの通過質量は等しい、という例の「フン詰まり、ノー!」理論から、なぜジェット・エンジンは速度が大きくなるとエンジン前端の開口部の面積より狭い面積の空気しか吸い込めないのかを探ってみる。

 密度 ρ0(kg/m3 )の標準大気の中を速度 v0 (m/s)飛ぶ機体に装着された、ジェット・エンジンのデフューザーに入るはるか前方にある(のだけど)目には見えない分離流管の断面積  A0 (m2) を流れる空気の質量流量 m (kg/s)は m =ρ0 A0 v0 となります。

 質量流量 m はジェット・エンジンが処理できる能力なので気圧や温度が一定であれば一定である。したがい分離流管の面積は、A0 = m/(ρ0 v0 )となる。

 速度が v0 = 0 なら分離流管の面積は A0 = ∞、 v0 = ∞ なら A0 = 0 に変化します。  

 ジェット・エンジンの性能で決まる m が大きくなれば  A0 も大きくなる。 A0 が∞だと吸入口の真横より後ろからも吸っている。特に地上で全開運転中のターボ・ファン・ジェット・エンジンのそばには近よらないのが賢明です。

 どうやら、計算式では分離流管の断面積はデフューザーの有無とは関係なく速度に反比例して変化するようです。

 繰り返しになりますが、ここから先のデフューザーの中はポワソンの法則シャルルの法則を基に解析することになります。・・・で、当CEO はここでギブアップ(お手上げ)では悔しいのでホールドアップ(継続する、つまりほっておくことに)にします。

 なお、普通のプロペラ機の速度では分離流管がプロペラ直径より小さくなることはなさそうです。 v0 = 0 ではジェット・エンジンのような大量の質量を処理してはいません。つまりはエンジンが発生できるエネルギーの差で同じ計算式でも現象の見え方の範囲は違ってきます。

 ところで、回っているプロペラに近づきたくなりませんか? 回っているプロペラの隙間を通り抜けられると思っているわけでもないのですがね。

 当CEO はホームの横を特に貨物列車が駆け抜けていると飛び乗れそうな錯覚に陥ります。また視野いっぱいに広がる速い川の流れを見つめていると飛び込みたくなる衝動(引き込まれそうな誘惑)と戦っている自分を意識します。後者はその衝動か誘惑に負ける前に足腰腹筋が弱くなってるローカ現象を自覚して一層危険だな、と急流には近づかないようにしています(閑話休題)

 締まりのない回になりましたが、プロペラ後流の収縮流はこれで理解できるはずです。プロペラで加速された分離流管の初速増分の ⊿V は後方では 2⊿V になっています。

 次回は、「なぜターボ・ファン・ジェットは効率がいいのか?」に迫りたいのだが、「ファンで大量の冷気を送り出すから」としか書いていない参考書ばかり、で。

2016年9月 2日 (金)

キネマ航空CEO ターボ・ファンのダクトを真面目に考える、の巻

承前、( 前回 からの続きです)

 今度は エンジンの実体断面図ではなく、模式図A )からはじめます。

Defuser_1

 まず、模式図で目につくところは、前回の断面図と同じく・・・

   1.*(注) ダクトの入口がファンの直径より小さい。
   2.**(注)カウリング(以下 カウル)の上下で断面の形が異なる。

があげられます。

  1.では入口の内側にある入口の面積より断面積が大きい空間は、動圧を静圧に変えるデフューザーと呼ばれる機能が想像できます。
  2.図 A は M (マッハ)数で断面が変わることを上下に描き分けてジェット・ライナーがカバーする広い飛行速度域のため***(注)亜音速域においても飛行速度によってエンジン全体を成形するカウルとしての最適形状が変わることが示されています。

 しかし前回の実体断面図でもカウル上下の断面形状は異なっています。これについて終わりから 7 つ目のセンテンス当たりから始まります

 ジェット・エンジンは吸気口から周辺の空気を吸い込みます。図中でカウルから伸びている破線の内側の空気がファンやコンプレッサーによって吸い込まれる、吸込み負圧の影響が及ぶ範囲を示しています。

 分離流管と呼ぶようです。管と呼ぶからには外側の限界を決める特定の(ゼロではない)吸込み速度の測定か計算の基準があるのでしょうが、詳細は不明です。

 当CEO は技術用語としては『分離流管』より「流れの場」、あるいは「ベクトル場の強さ」を示す『流束』または『流束管』の方が適当ではないかと思うのだが、それはさて置き・・・

 破線で示された各々の分離流管に付けられた M 0 (マッハ数)によってカウルの進行速度(機体の値と同じ)が変化すると吸い込む範囲である分離流管が狭まる変化を示しています。 

 M 0 = 0 といってもエンジンはアイドリング状態ではありません。
パイロットがブレーキを踏んでスラスト・レバーを押し、定格回転で安定した静止状態を指します。しかし、これではタイヤがずるずると滑ってしまうかも知れないので、むしろ地上の試験装置に固定されている状態といった方が適切ですね。

 以下、どこまで正確に表されているかわかりませんが、
 M 0 = 0.5 でほぼカウルの開口直径より大きくダクト内側の直径とほぼ同じ。
 M 0 = 0.8 ではカウルの開口径より小さくなっています。

 つまりターボ・ジェット・エンジンでは自分が持つコンプレッサーによる吸い込み能力(単位時間当たりの質量流量キャパシティ)に限界があるようです。

 結果として速度が遅ければ開口部の後ろから回り込みながら空気を吸い込み、飛行速度が速くなってラム圧が加わりコア・エンジンのコンプレッサーやファンが吸い込めなくなった空気はカウルの外側を流れることになる。

 そこで模式図A )から一歩踏み込んだ次の作動機能図B )に移りましょう。

Intake_effect
 この図では、左より順次機体速度が速くなっています。その場合にカウル(ひいては機体)に働く力の方向(ベクトル)を示しています。

 図中の「速い、遅い」の定義はカウルの周囲を流れる機速とエンジンの吸込み速度の相対比較です。

 物体の周りの流体に速度差があれば物体に揚力が働く原理が設計に使われています。

 カウルの形状と内外の速度差による揚力でエンジンの推力を助ける方向の分力が得られるようです。

 揚力の方向が変わっています。カウルの断面翼型に向かう相対的な迎え角によって揚力 0 の場合もあります。涙ぐましい努力の積み重ねですね。

 次の疑問はカウルの中の流速は、ほぼ一定の M 0.5 になっていることです。参考書によっては M 0.4~0.45 と記述してある例もあります。

 さて、そのため機速による押し込み(ラム圧)による単位時間当たり質量流量の増加分とのバランスをとる機能を受け持つ部品がカウルの内側にあるダクト(デフューザー)となります。

 いうまでもなく亜音速の場合です。
超音速ではカウリングの入り口や内部に発生するショック・ウェーブを減衰させる全く別の構造のカウルとダクト(デフュザー)が必要になります。

 デフューザーの構造は簡単にいえば、カウルの入口直径より中の(ダクトの)直径の方を大きく設計します。

 ここでベルヌーイの定理を定性的に当てはめると単位時間当たりの質量(流量)はカウルの内側(ダクト)の断面積が入口より大きくなると流速が遅くなり静圧が大きくなることがわかる。 

 デフューザーの効果で流速が遅くなれば プロペラの翼素理論の展開 で考察したプロペラ(加えてファンやコンプレッサーのブレード)の先端速度と音速の関係を緩和する効果があります。

 その効果に付随して、ジェットエンジンが持つ本来の機能としての回転機械が要求する回転軸に対して点対称として空気を均等なベクトルでファンやコンプレッサーのブレードやベーンに進入させる機能が要求されます。

 例えば。地上滑走時にはダクト開口部のすぐ下に地面があり、離着陸の進入時には機首の方向と進行方向が大きく異なる、などなど分離流管が非対称になることは避けられ状態で、吸い込んだ空気の圧や速度の変動によって渦や振動が発生しファンやコンプレッサーに悪影響を与えないようにする機能です。

 航空マニアは 1984 年にボーイング 737 のエンジンが P&W JT8D-9 からファンの直径がより大きい CFMインターナショナル CFM56-3B へ変更されたときに、その解決法としてコンピューターの数値計算(もちろん膨大な実験結果を伴う)による形状決定を目の当たりにします。

 手っ取り速くは、当キネマ航空の 空港ツアー で見られるキャプチャー画像をご参照ください。ほぼ正面からの絵面ですので、できれば Web で側面からの写真も参照してください。変更によりエンジンは前方に伸びています。このあたりも見どころです。

CFMインターナショナルGEスネクマの米仏合弁事業。前回の IAE と同様に特定のエンジンを生産販売に特化した企業)

 ちなみに 図 A では、下側のカウルに「負圧による自動吸込み扉をつけることもある」と書かれています。実際に、ごく初期のボーイング 707、747 に採用された写真があります。カウル下側ではなくほぼ全周に渡っていますが作動時の乱れた流れがファンの騒音を増加させることが分かり廃止されたようです。

 軍用機ファンですとご存じのはずですが、M = 0 での浮揚が必須のホーカー・シードレー ハリヤーから始まる一連の VTOL 機のカウルには必須の構造として存在します。

 代替機となるロッキード・マーチン F-35B ではM 1.6 クラスの超音速を得るためにシャフト・ドライブの独立したリフト・ファン方式に変わり、VTOL 時にファンの上下に大きくドアが開く方式に変わりました。

 低速時の補助吸込口はリフト・ファンの背後に観音開きの扉が開きます。ガンダムのファンには見慣れた構造かもしれませんが何となくあやしげにも見えてきます。(閑話休題)

 さて、物理学は回転機械に対しては原理的な点対称性を要求しますが、工学は対称性の実現のために高速かつ高度化した数値計算を駆使した非対称で要求に応え始めます。

 当CEO は数値計算などできません。そこで次回は、初歩的な工学として考えてみようかと思っていますが・・・どうなることか。

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 *(注)ダクト
形状は中空のチューブやパイプの親玉だが四角な形状も含み、部品名というより内部の機能や構造を示す名称。
導(・)管または送(・)管と訳されて(・)内に流体の「水」とか「風」などの名詞を入れることが多い。中には流体以外の長いもの、電線や通信線を這わせる「ケーブル・ダクト」もある。

 **(注)カウリング
航空機の空冷エンジンに見られるエンジンを囲む取り外しのできる覆い(カバー)を指すことが多い。流体の整流など、囲む対象の内と外に必要な機能を併せ持つ部品名。

 シュラウド
カウリングと同じような形状になることもあるが、元の意味では対象を覆い隠すもの。工学的には内からの飛散、外からの飛び込みを防ぐ安全機能を持たせた構造物。防音機能にも使われる。固体に限定せず霧や霞などでもこう呼ばれることがある。

 ***(注)ジェットライナーの亜音速域と言えば M 0~0.85 当たりの範囲となります。機速がそれを越えると機体や翼のどこかが音速を越えた遷音速になって商用機として効率の悪い飛行状態を避けるためと考えられます。
 超音速で起こる現象については、当キネマ航空 011便 にご搭乗いただき上映中の『アロー』、『超音ジェット機』をご鑑賞ください。

2016年8月26日 (金)

キネマ航空CEO ターボ・ファンのスカートの中を考える、の巻

【お詫び】 初歩的な確認と校正の不行き届きで、ご迷惑をおかけしております。

次の【正誤表】にファン径の訂正と関連諸元の追記をいたしました。

訂正にはウィキペディア(英語版)とEuropean Aviation Safety Agency Engine Type Certificate Data Sheet EASA.IM.E.002 (2004) その他による資料で補足と確認を行いました。
エンジンの名称は使用した諸元に合わせて初期の型式名に統一しました。
なお、使用した図面と採用した型式名との整合性はつかめませんでした。

【正誤表】
      型式      ファン径 m    バイパス比 推力 Klbf (kN
) 空気質量流量 kg/s 生産開始年
IEA V2500-A    1.557  →  1.587     5.4 :  1       24.8   (110.31)       355         1989
GE  GE90-76B  3.404  →  3.124     8.4 :  1       76.0   (340)         1,350                    1995

これに添って本文と図面を訂正いたしました。
論旨自体の変更はございませんが、ご再読をお待ちしております。(2016/08/31)

                                                                                        キネマ航空CEO 拝

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 「さて、当CEO の当面の興味は、前々回コレオプテールの環形翼の内側のように隠されたダーボ・ファンのダクトの内部です」

   - そりゃ、ついスカートをめくってみたくなるもんだわな。
   - わっ、何ですかいきなり。 技術上、工学上の純粋な興味ですッ!
     ご老体のような芸術的興味じゃありませんよ。
   - スカートだって立派なテクニカル・ターム(技術用語)じゃぞ、お若いの。
     まあ、芸術的興味から技術的、工学的興味に思いをいたすこともある。
     レオめがそうじゃった! もちろん、その逆の思いも “あり” じゃろな。
   - はい、はい。ダ・ヴィンチになにか遺恨でもあるんですか ?

 ターボ・ファンを囲むダクトの中の機能については、簡単な計算式での工学的な説明は難しそうです。 そこで、芸術的、もとい ! まず具体的な図面から・・・

 これがスカートの、ううん!ターボ・ファン・ジェット・エンジンの先頭にある覆いの部分を含めた断面図の画像です。でも、こうした全体図が以外に見つからないんですよ。

 上はゼネラルエレクトリック GE 90-76B (1995)で ボーイング 777 に採用。

 下は  IAE V2500-A1 (1989)で、エアバス A-320マクダネル・ダグラス MD 90 に採用されている。
こちらは P&W(米)、R.R.(英)、Japanese Aero Engines CorporationsJAEC : IHI, MHI, KHI )(日)、 MTU Aero engines(独)の四社合弁による International Aero Engines で開発と販売を行い、各社は出資比率に応じた部品の製造を担当しています。

 この二つを “ほぼ” 同一の縮尺 で並べました。
両者の縮尺をそろえる基準はファン直径ですが両シリーズとも発展過程で GE 903.124m から 3.251m へ、IAE 25001.587m から 1.613m へと直径を拡大しています。

 比較は開発当初の図面として、それぞれに 3.124m と 1.587m を採用したので最新型式とでは相対的に最大で ±4%弱の誤差が考えられる比較図であることはご承知おきください。 Ge90_iae_v2500_rev  パッと見では大きさがずいぶん違います。開発時の推力は、GE 90-76B では 76 Klbf (340 KN)、V2500-A1 の方は 24.8 Klbf (110.31 KN) でした。

 P&W のギヤード・ターボファン・ジェットであるピュアパワー 1000 シリーズに設定された推力は15 - 35 Klbf  です。いっぽう、IAE 2500-E5 では 31.33 Klbf (139.4 KN)に達しています。

 P&W は、ギヤード・ターボファン シリーズがカバーする推力の上限を IAE 2500 に合わせているようです。

 日本の部品三社連合も大変ですね。P&W の思惑通りに現行事業からの脱アライアンスが進めば確実に将来のビジネスの分担比率は低下します。コストダウンの要求(要請と言います)もきつくなるでしょう。現在の事業に食い込んでいても新事業への参入はまさに技術革新の競争です。一口にすべてを手掛ける日の丸総合ジェット・エンジン・メーカーになればいい、といってもさらに高度な金食い虫の技術競争が控えています。

 次に目につくのは、ファンを覆うスカートの長さです。 GE 90 は「ミニ」、IAE V2500 は「ロング」。「ロング」は R.R. などのヨーロッパ系に多かったようです。

 スカートの機能はファンの慣性後流(イナーシャ・フロー)の整流と外を流れる空気の抵抗の低減ですが、同時にジェット・エンジンの高周波音を遮断・吸収する防音構造でもあります。

 簡単にいえば防音効果は長い方が優れている。しかし、エンジン重量は増える。しかも二乗三乗則で増える。

 余談ながら、ファンの空気通路にある、小さな空間が並んだ個所は吸音構造です。

 またまた余談ながらどちらのエンジンもスカートの後ろ半分が軸線に乗って後方にスライドするスラスト・リバーサーを採用しています。図の GE 90 にはその構造が描かれていますが、V2500 では吸音構造にまぎれているようでよくわかりません。V2500 の図そのものが原型の構想図にすぎないのかもしれません。

 さて、ターボファンのスカートの長さは、いろんな組合せのアライアンスの中で新しいエンジンが開発されるようになると R.R. や初期の V2500 に見られるテール・コーンを隠すような「ロング」は短くなり、いっぽう、「ミニ」だった GE 90 は伸びて、「ミディ」が標準となりました。

 現在の傾向は「ミディ」の後端にフリフリ?、ヒラヒラ?、もといギザギザのシェブロン・ノズルをつけて、そこから発生する不規則化した渦流で、コア・ジェットの高温空気とそれを包むファン後流の低温空気の間に混合層を作り低騒音化を図る手法が採用される。渦を作るのだから騒音とともに効率も落ちるだろうな。

 んっ!「ミニ」はなくなったが、ターボ・プロップは「ボトムレス」か ? !

   - やっぱり、小童(こわっぱ)も芸術と工学では逆パターンの口じゃな。
   - レオ様に嫉妬しているご老体もでしょ。

 さて、航空雑誌やウェブの写真では、ターボ・ファン・ジェットのダクトの開口部から想像する軸線と排気口から想像されるエンジンの軸線が一致して見えない違和感があります。

 上記の断面図で、その違和感は開口部の切り方でおこる錯覚ではないことがわかります。

 しかし、本来なら前方に突き出したエンジンへの空気の流入はあらゆる方向に均等な軸対象になるべきはずなのでは ?

 おそらく、このエンジン本体内での軸の交差は、「機体」の軸線(抗力)に対する「主翼」の取付角(揚力)、「主翼」に対する「エンジン」の取付角(推力)の三角関係を、飛行中及び滑走中の機体の姿勢と開口部の迎え角で解いた結果と想像できるのだが・・・

 つまり、エンジンの開口正面は常に機体の進行方向に向いているわけではない。飛行姿勢が変わればエンジンが受けるラム圧の方向も変わる。

 それに加えて次の疑問も浮かんでくる。

 両エンジンともダクト開口部の径より内側(ファン)の径が大きく、デフューザー(動圧を静圧に変える圧力変換装置)を構成しているように見えるのは ??
(逆に静圧を動圧に変える圧力変換装置が、ジェット・エンジンの燃焼室の後ろにある ノズル)

 さらに、スカートを含めたダクト全体の断面形状は翼型を形成し、しかも、なぜか上下で形状が微妙に異なっているのは ???

 これら、疑問とターボ・ファンのスカート(じゃなくてダクトだけどね)の真髄は次回のこころだー

2016年7月13日 (水)

キネマ航空CEO ファンボロー・エアショウでのMRJ90 ビジネス・アップデートを行う

 偶数年の7月に開催されるファンボロー・インターナショナル・エアショウが 11- 17 日にかけて開催されている。その中で航空機ビジネスの記者発表がショウアップされて行われる。

 初日の 11 日に MAC三菱航空機)とロックトンAB の間で結ばれた MRJ 90 の契約が公表された。引き渡しは2020年、発注10機、オプション10機の内容でした。

 下表はその時点でのアップデートです。注目点を黄色でマーク・アップしてあります。前回の記事は こちら

 中日、千秋楽とショウアップされるはずですからその中でさらなる契約が進むといいですね。Mrj90_business_update_jul_2016  ロックトン AB はスウェーデンのリース会社で、現在はかつての国産機 サーブ2000 をヨーロッパのリージョナル・エアラインに貸し出しています。

 スウェーデンは民間機の生産から撤退したのですが、日本にとってはエンブラエルボンバルディアが固めるヨーロッパ市場における橋頭保として活動してくれるかもしれません。またそう願いたいものですね。

 表には同日に発表された上位のライバルになるエンブラエル E190-E2 の契約も追記しておきました。インドネシアのカルスター・アヴィエーションの発注です。

 E190-E2 は今年の5月24日に初飛行を実施しています。

 さて、この表は P&Wギヤード・ターボファン・ジェットを装着した、MRJ90 の座席数に近い機体を選んでいます。したがい、リージョナル・ジェットと称される全機種の比較にはなっていません。

 また、表には載せていない上位機種のエンブラエル E195-E2 シリーズは下位のE190-E2 シリーズと同じ PW**19G エンジン が標準設定のようです。オプションに PW**21G/22G/23G もリストアップしています。

 なお数字は型式公称推力をキロ・ポンド(Klbf)を表しています。( 1Klbf = 453.59 Kgf )。
 ** には、航空機製造メーカーの識別番号が入る。MAC12、エンブラエルは 19 E175-E2 用の 17 が使われている。
 

 いっぽう乗客数ではボンバルディア CS100 の上限あたりから始まります。このため競合機としての表から外しました。

 エンブラエルは、自動車の燃費競争の中で、「車体に対して小さめの排気量にターボ過給をほどこしたエンジンを採用する」、いわゆるエンジンのダウンサイジングに似た技術志向を顕著に打ち出しているようです。

 PW****G エンジン・シリーズのファン径、コンプレッサーの段数、燃料消費、騒音といった基本的なスペックの差異と記号の詳細は こちら です。

 零戦を持ち出したくもありませんが目的に 特化した胴体の MRJ90 の背後を伺うまだ明確でないけれど MRJ70 と同じエンジンで MRJ90 と同じ乗客数を運ぶ計画のエンブラエル E175-E2 の存在から目が離せません。

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 ファンボロー・エアショウは現時点も進行中です。関連する記事がありましたら差し替え等を行う予定です。

より以前の記事一覧

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