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カテゴリー「MRJ」の32件の記事

2017年12月31日 (日)

キネマ航空CEO GTF はターボ・ファン・ジェットかダクテッド・ターボ・プロップか、を考えるの巻(その 5 の 2 )「ファンだって奥は深いのだ !(その 1) 」

さて、ターボ・ファン・ジェットのファンは、ファンを覆うカウリングの中に仕込まれたデフューザーによる断熱圧縮による流入空気の速度の低下に加えてプロペラの理論解析の結果をファン・ブレードに反映させて発展していった、という論旨を進めていました。

ほかにかまけていた当CEO はまずその復習から。

考察のベースとしたプロペラの推力係数 AF の式 2017.07.19 の記事 では許容推力を大きくするにはブレードの数 B を増やすほかに翼弦長 b を大きくすることでも得られることが示されている。

 プロペラの実験結果からの研究 2017.07.19 の記事 ではブレード翅数が少ないほうがブレード間の相互の流れによる圧力干渉が減少する傾向が当てはまる可能性がある。

 ターボ・ファンにおいては空気の粘性を考慮してもチップの翼弦長を増すことでチップとダクトの隙間を通ってファンの後方(高圧部)から前方(低圧部)に漏れる空気を押さえるシール長さを伸ばす効果で翼端渦を減らせると考えられる。

 すなわち、誘導抵抗の低減には翼弦を狭くして得られるアスペクト比より、ファンの先端(チップ)とダクトの隙間を小さくすることとシール部の長さを大きくすることで翼端渦の発生は抑えられる。

 もちろんシール部に生じる空気の粘性抵抗とのトレード・オフではありますが翼端渦による誘導抵抗と比べればはるかに改善されると考えられる。

 既述 2017.08.6 の記事 のロールス・ロイスの画像の右半分にある幅広翼弦(Wide-chord fan)のブレードであります。この写真からはブレードの翅数は32枚から22枚に減少しています。この画像のキャプションではこれらにより +4% の効率向上があったと書かれています。

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     カウリングのないターボ・プロップのブレード先端の翼端渦による誘導抵抗については、ターボ・ファンを囲む結構な投影面積と奥行きの長さすなわち面積のあるカウリングの摩擦抵抗を含む形状抵抗に加えてファンの翼端とダクトの隙間に発生する粘性抵抗を合わせた比較となる。

    またカウリングの吸音、遮音による静粛性の効果がターボ・プロップからプロップ・ファンへの翼型や翼平面の形状変更で同等の効果が得られるかについては疑問がのこる。これらはカウリング内のダクトのデフューザー効果を含めて別の機会に考えてみる。

 同じ教科書 2017.7.22 の記事  からは通常の単回転プロペラとコントラ(二重反転)・プロペラの比較ではブレード数が多いほどパワー吸収能力は10~27%程度向上する。ただし、最大効率付近から速度比が小さくなると通常の単回転プロペラとの差はなくなる。(以上は単回転プロペラ 3 翅とコントラ・プロペラ 3x3 の 6 翅との比較だが同じプロペラ直径での比較かどうかの明記はない)

 理屈上はファン直径の縮小も考えられるコントラ・ターボ・ファン方式もあるが今のところ実現はしていない。駆動するギヤボックスの純構造的な問題の次に解決することになるファン同士の空力干渉やそれによる振動問題が解決されていないのだろう。

 構造からみればファンの可変ピッチ・ブレード化もある。
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 これらに着目してファン・ブレードのワイド・コード化に先行したのが英国で、先行した計画を統合して開発された ロールス・ロイス RB211 をベースに具現化されていくことになる。

 当初の RB211 は(当時としては高)バイパス比 5 を採用し、前より低高二段の圧縮段(コンプレッサーと駆動するタービンの2セット)からなる二軸と先頭のファンと駆動する最後尾のタービンをつなぐもう一軸の三軸式を採用していた。

 この時点では、高バイパス比化、つまりファン直径の増加によるブレードに掛かる遠心力の処理の問題があったはずである。

 遠心力は次式で表される。 F = mrω2
 F
: 遠心力(N) m : 回転する質量(ブレード)(kg) r : 回転軸から回転部の重心までの長さ(m)。「腕」の長さともいう ω: 回転速度(radian/sec または s-1

 バイパス比を大きくしたことにより r は必然的に大きくなる。材料が同じなら m も同様となる。遠心力は否応なく大きくなる。

 遠心力を受け持つ駆動軸( RB211 では第三の軸)に取り付けるブレードの基部はワイド・コード化で長く(強度を増すことが)できるのではあるが、これはブレード部の材料が同じなら質量 m が大きくなるので鼬(ネズミではなくイタチ)ごっこになる。

 もちろんファンの基本性能はブレードの面積に比例するのでワイド・ブレード化により面積は同じでもブレード数を減らしブレードの剛性を増やすことができ、ミッドスパン・ナスバーと呼ぶ制振補強の環も廃止はできる。 

 一方では、高バイパス比化でファン直径が大きくなった分だけは重くなり「腕」の長さは長くなる。

 ちなみに、二軸式の低圧段駆動タービン軸と同一ファン駆動タービン回転数より三軸式の低圧段タービンの後方にある三軸目のファン駆動タービンの回転数のほうが低い。また各軸の回転方向による相対回転数の関係などは別の機会に。

 それやこれやでロールスロイスは三軸化に加えてファン・ブレード材質の軽量化で一点突破を図る。チタンから炭素繊維への転換でありました。

 新材料は塵、霧、雨、霰、雹などの風食の試験に続く最終段階で行われる必須の項目である鳥の吸い込み(バード・ストライク)試験において、ファン・ブレードが致命的な飛散をしてしまう。(最大出力時にブレード一枚が根元で破損しても破片がカウリングで止められ運航を続けられる出力の確保が要求されている)

 開発費の膨張の結果、ロールスロイスは資金ショートしてしまい国有化の憂き目にあい税金の投入となる。

 いっぽう、この当時の米国の航空業界はボーイング、マクドネル・ダグラス、ロッキードの競争の頂点にありエンジンを採用するのは ロッキード L-1011 トライスター であった。

 米国議会はロッキードに対する梃入れとして資金の供与をおこなう背後支援を可決しロールス・ロイスはこれによって開発の命脈を保てた。

 つまりは国家の、しかも一国ではできない後見が必要な開発費の確保が必要となることを暗示させる。

 エンジン・メーカーは機種やサイズにより部品メーカーを含めたグローバルな買収と開発費を確保し国の保護政策を利用しやすくする合従連衡によって開発・製造の現地合弁メーカーを設立していくことになる。日本の部品メーカーもこの中に組み込まれて行くことになりました。

 高バイパス比、ワイド・コード化、ミッドスパン・ナスバーの廃止によるクリーンなブレード翼面のフロント・ファンの完成は1984年のロールス・ロイス製の RB211-K35E4 によってでした。

 そのブレードは炭素繊維ではなく、チタンによる前後の薄い外皮(翼面)を熱間鍛造で成形し、化学切削(ケミカルミーニング)により 空間を作りその中にさらに薄いチタンのリボンで作られたハニカム構造を包み込んで拡散溶接をする工法でした。

 このハニカム構造は後にウォーレン・ガーターと呼ばれるチタンの桁構造によりさらに軽量化された。

 炭素繊維によるブレードはGEによる GE90 に始まります。これは炭素繊維の前縁にチタンのカバーを接着補強する構造で、風食にはウレタン・コーティングを施しています。

 来年はボンバルディエのエアバス・グループ入り、MRJ のキャンセルの予測、エンブラエルのボーイング傘下入りなどの話と一緒に、次回はブレード前縁のクネクネのお話に入ります。先は長いなー。

2017年11月30日 (木)

キネマ航空CEO GTF はターボ・ファン・ジェットかダクテッド・ターボ・プロップか、を考えるの巻(その 5 の 1 の補足 )

Pw4084_4168_4000pw さて、前回より RRGE が進めたファン・ブレードのワイド・コード化の発展を見てきました。

 もちろん、右写真のようにプラット・アンド・ホイットニー(P&W )も同様の開発は行っていました。

 右から左へ進んだことは言うまでもありません

ベースとなったエンジンは右より PW4000 系で始まり、PW4166 を経て ボーイング 777 に採用された、PW4084 で完成します。


2017年8月 6日 (日)

キネマ航空CEO GTF はターボ・ファン・ジェットかダクテッド・ターボ・プロップか、を考えるの巻(その 5 の 1 )「ファンの奥は深いのか ? 」

おことわり

冷房のない部屋で書いています。校正と校閲の不完全で後日訂正があるかもしれませんがとりあえず公開します。ご指摘をいただければ優先的に対処いたします・・・暑い !

ファンの外観は先々回 2017/7/19 の当オフィスの記事で ボーイング 747 の初期と現在のエンジンの写真とカッタウェイ図で並べている。ほかにないかと探していたらエアバス A350 XWB に採用されている ロールス・ロイス トレント XWB 84k を分析した次のサイトを見つけた。

参考)  ロールス・ロイス トレント XWB 84k とは、

Rollstrentxwb
      画像は https://3dprint.com/45820/rolls-royce-largest-3d-printed/ より。
      左画像の
手前が エアバス A350XWB-1000。このほかに 900 , 800 が設定され、それぞれに RR Torrent XRB 97k , 84k , 75k - 79k が対応する。なお -800 の計画は中止された。
      
型番の k は離昇推力の単位 1000lbf。ファン直径 3m、 ブレード枚数 22、バイパス比 9.6 : 1。
      A350XWBeXtra Wide Body のイメージ・キャッチだがエンジンでは同機専用ということ。

さて、今回の本題の参考にしたサイトは、

LEEHAM NEWS AND COMMENT に連載された、Bjorn's corner; Turbofan engine challenges; Part  2 
     このコーナーでは Part 1 ~7 で、当CEO が意識して避けている新しい燃焼技術についても突っ込んで解説している。英文だが技術用語を頼りにぜひご一読を!

同記事から借用した左下図は、 トレント XWB 84k (2010)を含む ロールス・ロイス トレント 600 (1988)から始まる トレント シリーズ の基礎となった RB211 (1969)のファンとブレードの変遷であります。

まず、左右に分割合成された画像のエンジンの型式は、
  左がたぶん ボーイング 747 向けの トレント RB211-524 (1973)
  右は ボーイング 757 クラス向けに開発された トレント RB211-535 (1984)。

     なお、『トレント』の名は RB211 で三代目だが、初代の トレント RB.50 (1945) は技術的に完成した最初のターボプロップ・エンジンで、のちのロールス・ロイス ダート (1947)となる。日本航空機製造 YS-11 (1962)にも採用された。
     二代目の RB.203 トレント (1967)はスリー・スプール(3軸)形式を最初に採用した低バイパス比の軍用ターボ・ファンで 3軸構成では RB211 に多少の関連がある。こちらは三菱 T-2 / F-1 (1971/1975)にも双発として採用された。 (閑話休題)

RrfanbladeevolutionCfmblades

次に右(上)の画像は CMF インターナショナル
ブレードの変遷が並べられています。

右から ・・・
  CMF56-5B (1991)で エアバス A320 系へ、
  CMF56-7B (1995)で ボーイング 737-600 以降へ。そして、
  CMF LEAP (2013)は エアバス A320neo ボーイング 737MAX
                
中国商用飛機有限公司 C919 へ向けられます。

実年代ではなく技術世代の比較とすれば、
  RB211-524 vs CMF56-5B
  RB211-535 vs CMF56-7B
  RR トレント XWB (最上部の右側画像参照)vs CMF LEAP (-56)
となります。

Ge90ちなみに CMF インターナショナルGE アビエーション(米) と サフラン エアクラフト エンジンズ(仏)傘下のスネクマ との合弁会社です。

エアバス A320ボーイング 737 向けエンジンの開発と生産に特化して設立されたました。

GE アビエーション 本体の最新エンジンは ボーイング 787 向けの GEnx ですがファン・ブレードは ボーイング 777 向けの GE90 を継承しているようです。

右上は以前に掲載していた GE90 の画像の再掲です。 CMF LEAP (-56) とのビミョーな違いは次回に回します。

-------------ここから本題----------------

これらの画像から分かる形状の変遷は次のようにまとめられる。

 新旧いずれのファン・ブレードもレシプロ・エンジンのプロペラのブレード間のような隙間はない。

 初期のファン・ブレードは翼弦が狭く枚数が多い。

 ブレード長さの中央部に “Clappered”「鼻付き」と説明される突起がある。
これは正面写真の左半分の中央付近に見えるリング状のミッドスパン・スナバー(Mid span snubber)と呼ばれる中央部制止環もしくは連結部材を取り付ける個所であります。

     なぜ必要か?というとブレードに発生する振動対策であります。
     特にジェット・エンジン本体や取り付けられた補機などの回転や振動に加えてブレードに働く揚力と抗力で発生する空力振動に誘発される共振という現象です。
     この共振という現象は理論上は無限大のピークを持ち構造を破壊する元凶であります。
     もちろん共振周波数を避けるブレードの材質や形状で工夫を凝らした緩衝メカニズムを機能させてピークの減衰を図りますが、皆無にはできません。
     まして近接するブレードの数々が勝手に振動や共振を始めたら収拾がつかなくなります。
     このため、ブレードの中央部にミッドスパン・スナバーを取り付けてブレードを一つの振動体にまとめる構造であります。
     ミッドスパン・スナバーを二つ使った例は P&W JT-9 (1966) を先々回の画像でご覧いただきました。

 そしてこの時代、ブレードが細くその枚数は多い。その理由は、・・・

 空力的な知見から 2017.07.19 の記事 のプロペラの推力係数 AF の式で示されたようにファンが許容できる(念のため構造の強度ではありません)推力を示す係数はブレードの数 B に比例して大きくなる。

     前出の教科書ではブレード翅数 B を増やすと空力干渉を起こしプロペラ効率が落ちる指摘がある。
     しかし、ジェット・エンジンでは効率以前の問題として、できれば干渉さえ利用して、ファンの正面面積をブレードで覆うことでその高出力を許容吸収することになります。
     初期のターボ・プロップのコア・エンジンの出力はレシプロの少し上となる程度に設定されてプロペラもレシプロの経験の延長上となるパドル・タイプに設計されていた。
     
しかし、現在ではブレードの形状を洗練させて翅数を増やし、さらにはプロップ・ファンと称してコア・エンジンの高出力化を図っている。

 (承前)さらに誘導抵抗の低減には翼弦を狭くしてアスペクト比を大きくとることも考えたのかもしれない。(当CEO としては後者のアスペクト比との関連には多少の疑問がありますけど・・・)

 別の視点からは、ターボ・ファンの回転数は低圧圧縮段の回転数 N1 と同じでレシプロに比べると格段に大きいことによる構造の強度限界があります。

 すなわちファン・ブレードの質量に比例し、回転数の二乗に比例する遠心力の影響であります。 加えて、レシプロの出力より格段に大きいジェット・エンジンの駆動力をファンで変換した推力も加わります。

 これらを総合すると、この当時にあったファン・ブレードの形状の決め手は材質の質量(正確には密度)に原因があると考察できます。

 遠心力は N1 で回転するシャフトに結合(嵌合)されるブレードの基部に引っ張りの力として、もう一つの推力は前方に向かう曲げモーメントとして働きます。

     曲げモーメントは中立点から前縁に向かって圧縮、後縁に向かっては引張として作用します。前縁では遠心力を緩和し後縁では加重されます。これらの力を合成すると材料強度としては最も弱い剪断方向の力となります。
     
これらのブレード基部にかかる力(kg)は基部の面積(m2)で割られて負荷応力(kg/m2)となり材料の許容応力(kg/m2)と比較され安全率を加味した基部嵌合部の面積(m2)ひいては長さ(m)が求められます。

 いずれが、卵か、ニワトリか、になりますが、上記の理由をバランスさせた基部の長さか、ブレード基部の構造上の寸法制限か、あるいはその両方か、で基部の寸法が決まります。

 ブレードの形状や構造の一義的な目的はブレード1 枚の質量をいかに軽くするかになります。この時代にはブレードの幅を細くして枚数を増やす案が採用されました。

 この当時のブレードの材質は無垢のチタンの板から削りだされていました。これから先は軽く強い材料の開発がファンの形状の変化を伴う技術競争となります。

あー暑い

画像の多用でスペースをとりました。次回(その 5 の 2 )「ファンだって奥は深いのだ ! 」 につづきます。

2017年7月22日 (土)

キネマ航空CEO GTF はターボ・ファン・ジェットかダクテッド・ターボ・プロップか、を考えるの巻(その 4 )「プロペラだって奥は深い」

前回のプロペラの話を、② 「飛行機設計論」山名正夫、中口 博 著 から、もう少し・・・

プロペラの容量を導く作動係数 AF は 1 翅 2 翅と数えるブレードの数 B に比例していた。 1 翅のブレードで構成される航空機用プロペラはまずない。(自然界ではオートローテーションするカエデやモミジの種子がある・・・秋の林でご覧あれ。当CEO の前振り)

推進効率は同一翼型を使った  2 翅と 3 翅のプロペラの間ではほとんど差がない。4 翅と 6 翅では 2 翅のプロペラよりもそれぞれ 1~2%、3~4% 低くなる。

(当CEOの閑話開題)     日本では 2000馬力の ハ-43 に 6 翅プロペラを採用した海軍航空技術廠が主導した前翼型の震電(1945)がある。
 日本のウィキペディアでは執筆者が注記でおよそ二億年前に現れた前脚には小、後脚には大の幕翼を持った爬虫類シャロヴィプテリクスまで持ち出して震電の形態的な合理性を援護するなどで名機扱いであります。同じWEBのプラットフォームでもお国柄は出ますね。贔屓の引き倒しだけど。もちろん自然界の名機は自然淘汰されたようです。

     さて、震電は5 翅で計画したのだが冶具の手配ができず 3 翅の冶具を改造して間に合わせた、と何かで読んだ記憶がある。この時代の 2000馬力では 4 翅プロペラで十分だったようだが効率の低下などは考えなかったのかな。前出のウィキでは翼弦長を広げた 4 翅のプロペラに換装する計画があったそうだ。

     イギリスでは 4 翅プロペラで対応していた2000馬力の ロールス・ロイス マーリン に変えて2300馬力の グリフォン を導入したときに 5 翅のプロペラを装備した機体があった。
     簡単に製作できる 6 翅プロペラではなく 5 翅を採用したのは効率の低下をあいだを取った 2~3% に抑える意図があったのか、単に重量低減を図ったのか・・・

     後期から末期にかけてのスピットファイア/シーファイアで実験されたり採用されたりしたが最終的にはトルク反力を打ち消す前後 3 x 3 翅のコントラ・プロペラで最終量産型となった。

     トルク反力の増加に伴い外方引込式で間隔の狭い主輪とテール・ドラッガーによる地上で取り扱いの弊害への対策でもあったようだが、ジェット・エンジンと首輪式への転換の時代の入口までよく引っ張ったものだ。 (閑話休題)

双回転(コントラ・)プロペラの場合は前後のプロペラに同じパワーを吸収させるため最大効率の付近では後方プロペラのピッチ角を前方より 1~2°大きくする必要がある。
     これは前方プロペラで加速された後流に合わせて後方のプロペラのピッチを大きくするという理屈と考えられる。
     いっぽうでは
効率が問われるプロペラの進行速度/後流速度の比 0~1 の間の任意の範囲の効率をふくらませて全体効率のかさ上げを図るために後方プロペラのピッチ角を(相対的にだろうが)小さくする場合もあるようだ。

     もちろんどちらの場合も前後のプロペラには可変ピッチが採用されるのだろう。   (以上当CEO 注記)

単回転(通常の)プロペラとのパワー吸収能力の比較では最大効率付近ではほとんど差がない。しかし v/nD が小さいところでは双回転プロペラのほうが大きく、4 翅と 6 翅 ( 2 x 2 翅 、3 x 3 翅 だろう。当CEO注記) それぞれ 5~17%、10~27% 程度である。

単回転プロペラと双回転プロペラとで一定のピッチ角についてプロペラ効率 ηP を比較すると双回転プロペラのほうが 0~6% 程度高く、その差はピッチ角が大きいほど(進行速度が速いほど? 当CEO 注記)大きくなる。

この辺りまでは第二次世界大戦の軍用機を眺める場合の基礎知識としてお役立てください。

当CEO の興味はプロペラで最も気になるのは先端速度と音速との関係です。

正確な意味は「速さ」ではなく、ベルヌーイの定理でもクッタ・ジューコフスキーの揚力や抵抗の式でも無視している「空気の圧縮性」の影響です。つまり、超音速機の主翼と同じ現象です。

同じ教科書で示された厚翼(クラーク Y )と大雑把には先端が鋭い薄翼(NACA 1 系)のグラフを読み比べてみます。

横軸は共通のプロペラ先端の速度を M (マッハ)、
縦軸はパワー係数の比 CP/(CP)M=0 とプロペラ効率の比 ηP/(ηP)M=0
の二種類のグラフです。
なお、縦軸の X/(X )M=0M = 0 時の、ではなく、空気の圧縮性がほとんどない低速での(X)で示すパワー係数またはプロペラ効率をそれぞれの値を基準とした比、と理解してください。推進効率のグラフで使った速度比ではありません。

まず、厚翼のクラークY 型で翼厚比(h/b.7R = 0.092 のグラフでは、容量係数比は M = 0.5 までは 1.0 ですが、ここより放物線状に増加を始めて M = 0.85 でデータはおわり 1.95~1.21 を示しています。

またプロペラ効率比では M = 0.65 辺りまで 1.0 ですがここより放物線状に下降を始めて M = 0.88 辺りでデータは切れて 0.95~0.83 を示しています。

次に、NACA 1 系 では翼厚比が二種類あげられていますが薄いほうの(h/b.7R = 0.026 のデータでは、容量係数比は M = 0.8 までは 1.0 ですがここより放物線状に増加を始めて M = 1.18 辺りでデータはおわり 1.25~1.18 を示しています。

またプロペラ効率比では M = 0.85 辺りまで 1.0 ですがここより M = 0.9 で 1.2 のピークを示して下降を始め M = 1.18 データは切れて 0.95~0.83 を示しています。

ということで、翼型を選べばプロペラの先端速度が音速を超えてもマッハ 1.2 辺りまではエンジンの出力さえあれば機能する、という先々回の、
キネマ航空CEO GTF はターボ・ファン・ジェットかダクテッド・ターボ・プロップか、を考えるの巻(その 2 )「プロペラで出せる最大速度の推定とその検証」
Tu-114Tu-95 のスペックを使った計算結果からの推測値マッハ 1.1 は正しいと言えます。

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ところで、この教科書の発行年の 1968 年より Tu-95 が初飛行した 1956 年のほうがずっと 早い。そんな中で、この教科書のデータの出所はアメリカのようだ。

アメリカは高速ターボ・プロップの研究もやったようだが、選択肢の中からの集中を行ってターボ・ジェットによる亜音速の大型戦略爆撃機(B-47 初飛行 1947 年、B-52 同 1952 年)の開発に専念したらしい。

機体の構成では米ソどちらも後退翼を採用し、どちらもナチス・ドイツの基礎研究を有り難く、かどうか、いただいたのだが)亜音速の上限を狙うという計画はお互いに並べたけれど、ソビエトは航続距離の必要な機種には燃料消費の激しいピュア・ターボ・ジェットの技術では燃料消費の少ないターボ・プロップでしか対抗できなかったという技術競争の結果でありました。

差はさりながら、1950年代後半から1960年代の前半にかけてのソビエトも、高速回転大容量の逆転差動機付き減速ギヤボックスの設計製造技術や低回転でのターボ燃焼技術では相応の技術を持っており、アメリカと対抗する戦力(外交プレゼンス)は持てた、といっていいのだろう。

ターボ・ファン・ジェットの実用化により性能的には遅れを取ることになったが、ライバルの B-52 (ターボ・ファン化 1960 年) と同じく、いわゆる枯れた信頼性のある総合技術として現役でありつづけ、偵察機型はときどき日本の周りを巡回だか徘徊だか、をしている。

どこかで爆弾をばらまくよりはましかも、ね。

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参考にした「飛行機設計論」のプロペラの章はまだまだ続くがここで一旦終わり。

さあ、次回からファンの(プロペラよりは小さいが)直径は大きく、その回転数は(プロペラよりかなり)速い。

しかしダクトに包まれたデフューザー効果で機速よりはるかに小さい進行速度でファンに進入する空気を処理するターボ・ファンのファンのココロだー。

2017年7月19日 (水)

キネマ航空CEO GTF はターボ・ファン・ジェットかダクテッド・ターボ・プロップか、を考えるの巻(その 3 )「プロペラの容量を最大にするには」

または「民間航空機の製造が国力をけん引する時代は終わった ?!」 の巻

(承前)プロペラやファンなどの回転する空力機械の直径は装着する構造物から制限を受ける、というところで終わっていました。

今回は、「限られた直径」 で 「最大の仕事」をさせる には、「最大の効率」を引き出す には、の巻です。

まず、下記の二冊の教科書を組み合わせたほぼ丸写しから・・・
① 「航空工学概論」田中幸正 地人書館 新訂2版 (1974)
② 「飛行機設計論」山名正夫、中口 博  養賢堂 (1968)

プロペラの概要設計をするために二つの重要な数式があります。
     スラスト(推力)係数 CT = T/ρn2D4 、T (N:Kgm/s2
     パワー(入力)係数 CP = P/ρn3D5 、P = S (HP)/75 (Kgm2/s3
T 推力、P 入力、n プロペラ回転数、D プロペラ直径、S 入力(吸収)馬力、ρ空気密度

 これらの係数は実験値から計算される無次元数です。計画機に必要なプロペラの寸法あるいはエンジンの出力といった基本的な推進装置の諸元を決定するための検討を類似または相当するする翼型のプロペラでえられた係数を使っておこないます。

     もちろんこれらの係数や式だけではなにもできませんが重要なファクターになります。

     今回必要なのはパワー係数の式なのですがここで少し関連した余談を・・・
     これらの式はプロペラの回転で発生したスラストと、そのために必要だったパワーの実測値から求められます。

     したがい、実際のプロペラ効率式は ηP = T/P = (CT/CP)・(V/nD) となります。
     ηP はプロペラの指標となる (V/nD) の関数であり、先回のプロペラによる最大速度の推算に使った「 V/nD = 2.6ηP = 0.85 の最大値になる」 につながります。

     いっぽう当ブログでたびたび出てきた運動量理論による効率式 η= 2/( 1 + VJ/V1 は理論効率とよばれてその最大値はη= 1です。
     
具体的には、キネマ航空CEO 翼素理論と運動量理論の推進効率をグラフにする  (2016.06.22) を参照ください。言うまでもなく η>ηP です。

さて、プロペラが吸収できる(扱える)パワーはパワー係数の式から、 P = CPρn3D5 となる。式中の n はエンジンから、D は機体の構成から、と概念設計で決まってくる。

したがい、パワーを大きくするには CP を大きくすることになる。

  CPAF (activity factor)で表される作動係数に比例する。同様に、 CT CP と並行的に変化しており推進効率ηP AF に大きな差がなければ変化は少ない。AF は(プロペラでは) 80~150 程度が使われる。その AF は次式の積分で求められる。

AF = B・(105/16)0.21.0 (b/D)・(r/R)3d(r/R)
B
翼の枚数、r 直径 D 内の任意の半径、b 任意の半径 r の翼幅

 図はある AF において r が 20% から 100% まで変化する場合の最適になる翼幅 b を模式的に示している。すなわち b = f (r/R) の関数として解いた例。Paddle_shaped_blade_for_propeller_2

比喩では三味線か琵琶のバチ状が適切なのだがパドル型ブレードと呼ぶことにする。

航空機の創成期のライト・フライヤーにも見られ、現在に至るプロペラの変化の一つであり、パワー係数を大きくする必要に迫られる軍用機で理論化されターボ・プロップ機で定着した。

ただし、実用面では製造上あるいは強度上、先端の空力処理等々の理由でパドル(櫂)というより付け根の翼弦を大きくして並行部を長くとったオール(艪)状になっている。

さらに音速の影響を避けるためかプロップ・ファンと呼ぶブレードの先端に後退角を付けて尖らせた三角翼状になりつつある。

この形状は黎明期のブレリオなどのプロペラでも見られる。もちろん性能もあるのだろうがこちらは美的感覚から発生したのだろう。

より高速を狙うプロップ・ファンはブレード全体を回転方向と逆にさらに大きな後退角を付けて翼弦長を増やす(ブレード面積を稼ぐ)スキュードタイプと呼ばれブレード中央部の翼弦を大きく、ブレード枚数は 4枚より数を増している。

このタイプでは四発機の エアバス A400M では直径 5.3m の 8 翅で両翼の回転方向を変えている。巡航速度は最高速度と同じ 781km/h (9000mでM 0.71 に相当)を出せる。

同じく四発機の アントノフ AH-70 では直径 4.5m の 8 翅 X 6 翅 で構成されたコントラ・プロペラで最高速度は 780km/h で 750km/hの巡航ができるようだ。 (どちらも高度不明)

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本題に戻るとパドル・タイプのブレードはターボファン・ジェットのファンにも関係する。下はパドル・タイプのファン・ブレードの変化であります。画像上の左クリックで拡大します。

P&W JT-9
(1966)
GE Genx
(2006)
Jt9d

Jt9d_cutaway_high
Genx2benginewi


Genx

         JT9D-3A
最大推力    45.8klbf
バイパス比   5:1
ファン直径    92.3in

         GenX-2B         GenX-1B (ref)
        58.5kldf           66.5klbf
       8.6:1              9.6:1
        105in              111in

いずれも ボーイング 747 に搭載された代表的なエンジンです。左列は初期型 -100 型に向けて開発された プラットアンドホイットニー JT90D-3A 系、右列は多分最終型となる -8 型に搭載された ゼネラルエレクトリック GenX-2 系の写真とカッタウェイ図です。
蛇足ですが当CEOは写真を眺めるよりテクニカル・ドローイングを味わうのが好きなのであります。

ここで目立つファンの形状や直径の変化が性能の向上に役立ったのは確かですが根本は燃焼、冷却、潤滑、振動、材料、製造等々、要するに関係する技術者の努力の積み重ねの結果が総合されてファンが設計されたのであります。

さて、ヤード・ポンドからのキログラム・メートルへ換算が面倒なので GenX-2B の向上率で比較すると、ファン直径 14% の拡大でバイパス比 69%、最大推力 28% の向上を見ております。

もちろん燃料消費、騒音、環境物質排出量の比較も必要ですが、数値の向上と合わせて現在の基準は満たしているとしてここでは省略します。

注目すべきは四発機の 747-8 に使われた GenX-2B 系列は双発機の ボーイング 787 に搭載された GenX-1B 系列、より下位の仕様であります。(なお、掲示した画像は -1B-2B のどちらなのか分かりません。悪しからず !)

言いかえれば、一時代を作った栄光の 747 は、もはや時代の最上位のエンジンを必要としなくなった。

あるいは上位のエンジンを採用した双発で最大の容量を持たせた機体での運航コストに利点がある時代になった、といえます。

現在の最上位のエンジンと言えば双発の ボーイング 777-200 が採用した GE90-110B であります。ファン直径は 128 in で、GenX-1B 比で 15% も大きい。ちなみにバイパス比 9:1(-6%)、最大推力 115.5klbf(74%)であります。

747 の傾向と同様に、四発機の エアバス A380 では、例えば ロールスロイス Trent 970 は、ファン直径 116in で GE90-110B 比では -9%、バイパス比 8.7:1(-3%)、最大推力 84.2klbf(-27%)と 1 ランク下であります。

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強いて言えば、エンジンの出力(推力)が小さければ騒音レベルも小さくなる。また、騒音源が二倍になると騒音レベルも二倍になる、というわけではない。したがい、四発機にメリットがないわけではない、とも言えます。

いっぽうでは、亜音速上限でほぼ同じ速度で飛ぶ四発機の乗客数から始まる機体サイズで積算される運航重量のベースは双発機のそれより大きくなる。(もちろん機体の前面投影面積や全表面面積に比例する抵抗の絶対値も大きくなる)

したがい、四発機の燃料消費は双発機より出力の小さいエンジン一基の消費は小さくても合計では双発機より大きくなることは避けられない。

おまけに搭乗客数が増えれば持ち込み荷物も燃料も増える。もちろん実売座席価格で決まるのだが、通常は乗客が少ない場合にある損益均衡点が乗客が少ない場合に加えて多すぎる場合の 2 点がありそうな気もしてくる。

当CEO としては ANA は原価償却費を抑えるイニシャルコストの買いたたきで A380 を 3 機導入すると信じたい。株は持ってないけどね。    (閑話休題)

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こうした現在のバイパス比競争の延長線上に設計される最上位の、さらに上位となる将来のエンジンを採用して乗客数を増加させる双発のジェット・ライナーが生まれるのかどうかの興味があります。

また現在の最上位のエンジンでパッセンジャー数の更なる記録を目指す四発機の企画があらわれるのか、こちらは疑問がありながらも興味はのこる。

少なくとも「より早く、より遠く、より多く」を目指した航空機は、単純で軽量な構造で始まったターボジェット・エンジンにファンを追加することで「より早く」が加速されました。

しかし、最高速度をマッハ 0.9 を限界にする民間機では、「より遠く、より多く」が要求する機体サイズと機種選択の主導権を握った航空輸送業界が望む「運行採算性(より安くより安全に)」の両方をバランスさせた性能がほぼ限界に達しており、新規の材料を使いこなすエンジン細部のブラッシュ・アップや構造の複雑化という膨大な開発経費で競う時代になったようだ。
(エンジン・ビジネスは機体数より製造数が二倍、四倍と多くても機体メーカーから買いたたかれる立場となった)

加えて、さらには国家の面子(メンツ)が絡む航空機製造ビジネスでは完成機の性能で技術力を競った国際市場産業のありようは曲がり角に来ており、まず小型民間機のカテゴリーから人口と国土を抱える国の地場産業化による参入が始まる。

日本が 20世紀に描いていた完成機で示す栄光の時代の(と言っても栄光のシンボルは零戦しかなく、アメリカへの恨み節で描かれた)再現の夢は過ぎ去っていくようだ。

ただ、部品産業のオンリー・ワンの夢が残されている。この地味だがリスクのある事業に国の政策が起動するのかどうか・・・

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さて、肝心のダクテッド・ファンのブレードの話がおろそかになった。例えばブレードの枚数が減ったのはなぜか? などは次回のココロだー。

2017年7月11日 (火)

キネマ航空CEO GTF はターボ・ファン・ジェットかダクテッド・ターボ・プロップか、を考えるの巻(その 2 )「プロペラで出せる最大速度の推定とその検証」

公開後の校閲、校正中です。ご意見をお寄せください。 キネマ航空CEO

ほんとにプロペラの先端が音速を超えてはいけないの?」について考える、の巻

プロペラで出せる最高速度、についての理論的な推測には次のようなものがあります。

『     プロペラの付け根から r の距離にある翼素に入ってくる空気の合成風速 q は、
q = √(V 2 + Ω2r 2) で与えられる。

     Ωは角速度で、Ω= 2πn (rad/s)、 n (1/s)は毎秒回転数。N (rpm)の毎分回転数を使えば、
Ω= πN/30 (rad/s=1/s)・・・q (m/s)、r (m)。 ・・・小文字の薄字は当CEO の補足を示す個所

     したがい、同一進行速度 V に対して qr = R = (D/2)、すなわちプロペラの翼端(tip)で最大になる。

     そして V が大きくなると翼端の合成風速 q も大きくなり、qV より先に音速に近づき、 空気の圧縮性の影響で揚力は小さくなって抵抗は増して揚抗比 L/D は小さくなる。
     したがって推力も小さくなることが想像できよう。

     つぎにプロペラ機の達しうる限界の速度 V を求めてみる。いろいろなプロペラの実験結果から V/nD = 2.6 で効率は最大になり、効率ηは 0.85 程度の値となることが得られた。

     つぎに先端速度(tip speed)を音速 340m/s の 0.9 倍と考えπnD = 340 x 0.9 ≒ 300m/s とすると、V = 2.6 x nD = 2.6 x (300/π) = 250m/s = 900km/h となる。

     ゆえにプロペラ機の達しうる最大の速度は、おおよそ900km/hである。     

以上は、「航空工学概論」田中幸正 地人書館 新訂2版 (1974) より。 同書の注記によると「プロペラ設計工作法」佐貫亦男 富士出版 (1934) からの引用のようだ・・・けど・・・

後年の佐貫亦男氏と比べると歯切れがわるい。前段で説明したせっかくの合成風速 q の式が使われていない。というより使いようがないのだが。

さて、最速のプロペラ機のタイトルはソビエトのツポレフ Tu-114 クリート で 1960 年 4 月に5000km の周回コースを高度 8000m で平均時速 870km/h の記録が現在も保持されている。

Kuznetsov_mk12左表は同機と同じ クズネツォフ NK-12 をベースにしたターボプロップ・エンジンを採用した代表的機種のプロペラと性能の一部を並べています。

数値では Tu-95 爆撃機のほうが高速が出るようですがウェブ上にはもっと低い値もあり、さらには速度(高度を含む)に併記されたマッハ数との整合性がないようです。

まず速度は対地速度なのか、対気速度なのか・・・など不明な点が多い。

ここでは測定方法が付記された Tu-114 の値を対地速度として採用することにします。

ということで、以下の計算は民間機の公証実験値としている Tu-114 を代表機種としておきます。
参考として Tu-95 も同一条件として( )で示します。

飛行速度をマッハ数に換算するための最高速度測定時の高度 8000m (7620m )における音速は 308.105m/s( 310.128m/s)です。なお海面高度(SL)の音速は 340.294m/s です。

まず、最高時速 V (km/h)を 3600/1000 で割って秒速(m/s)にしてそれぞれの音速で割るとそれぞれの高度におけるマッハ数は 0.785 (0.829)となる。

これらの数値からするとターボプロップ機の最高速度は現在のターボファンを採用したジェットライナーの運行高度より低いものの、ほぼ同等近くにまで到達できていた。

次にその状態のプロペラの先端速度を求めてみる。半径 r = 5.6/2 = 2.8m は共通する。

回転数 n は得られる資料のなかに最大連続Max. continuous回転数があれば迷うことはないのだが、入手できたのは 100%回転数最大許容Max. permissible回転数だった。

ここでは前者を最大連続回転数後者を時間制限のある離陸時許容最大回転数として進めることにします。

100%回転数を使って Ω= 3.14/30 x 800 = 83.78rad/s。Ωr = 234.6m/s。相当する高度のマッハ数に直すと 0.762 (0.756)となる。

最大許容回転数を使うと Ω= 3.14/30 x 1091 = 114.2rad/s。Ωr = 319.7m/s。相当高度のマッハ数に直すと 1.04 (1.03)となる。まあ ≒ マッハ 1 であります。
同じ速度でも海面高度では、0.94 (0.94)になります。プロペラ先端速度をマッハ 1 ととして機速 V を計算するとマッハ 0.34(115.6m/s = 416km/h)となります。もちろんこの速度を出すエネルギーは機体を加速させ高度を得るために使われます。

さらに先端速度をマッハ 1 に保って機体を加速させるにはプロペラのブレードのピッチ角を大きくするのもさることながらエンジンの回転数を速度の二乗に比例する抵抗による負荷で自動的に、あるいは人為的に低下させることになります。

元に戻って、100%出力回転数で最大速度を出している場合のプロペラ先端の合成風速は
q = √(0.7852 + 0.7622)= 1.10、 ( 1.12 )。
この場合の臨界マッハ数 1 に到達するのはプロペラ半径の 80% 辺りとなります。

参考までに、最大許容回転数による最高速度でのプロペラ先端の合成風速は q = √(0.782 + 1.042)= 1.30、( 1.32 )となります。同様に臨界マッハ数になるのはプロペラ半径の 60% 付近となります。

付け加えると、 クズネツォフ NK-12 のプロペラはコントラ・プロペラなので後方のプロペラには上記に用いた前方のプロペラより速い合成風速になりますがこの解析は省略。

Tu-114 の最高速度からの計算ではプロペラの先端速度はマッハ 1 を超える 1.10 だが、何かの数字の丸め誤差範囲とするには微妙なところで、考察としてつぎのケースが考えられる。
  1.使用した資料があやしい。
  2.最高速などの数値にいわゆる「盛り」があった。
  3.運用上ではこの程度の音速超過は可能である。

さて余談ながら、冒頭のプロペラの効率による推測式となった V/nD = 2.6 説からの補足を試みると V/nD = 308/(13.3x5.6)= 4.45 となる。

むしろ最大許容回転数による V/nD = 242/(18.2x5.6)= 2.37 のほうが佐貫説に近い。しかし、先に計算したようにプロペラ半径の 60% 以上で遷音速域となるようではプロペラとしてはさすがに成立しないだろう。

後出しだが佐貫氏の予測は、結果はオーライ、論理的には間違いと言っていいようだ。

なお、プロペラの無次元係数は次式のようにリード角φとして書き直せる。
tanφ= V/2πnD = (1/2π)・(V/nD) と組み合わせると別の視界が開くかもしれないが今後必要が生じたらその時に・・・

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この程度の解析はすでに先人が行っているかもしれないが、今回の結論として、

考察 3.を採用し、プロペラの先端速度はマッハ 1 を10 % 程度超えても、プロペラとして機能するようだ、としておきます。

例えば先端部の翼型(エア・フォイル)の厚さは薄く空気を切り裂くことで揚力ではなくパドル抗力に釣り合う反力による推進機械として機能するなどが考えられる。
ロッキード F-104 は地上では安全のためにサックをつけなければならないほどに尖った前縁の薄い翼厚のカミソリ翼で超音速飛行をしていました。もちろん亜音速では前縁と後縁を折り曲げてキャンバーを付けていました。

この場合、負圧が抑えられて翼型の周りにあり揚力の元となるという循環流(ほんとにあるのかいな)に起因するとされる翼端渦による誘導抵抗も低減できそうだが・・・

工学史としては、グレン・カーチスがライト兄弟の執拗な機体の形状に対するパテント侵害の攻撃を受けて「強力なエンジンがあればテーブルだって空を飛ぶ」と言い放った黎明期の名言が成立する限界にソビエトの技術者が挑んでそれなりの成果を出したようだ。

もちろん、亜音速域ではターボ・プロップと(ダクテッド・)ターボ・ファンの棲み分けがなされるのだが・・・

さて、次回はプロペラ(は主脚の長さで決まるし)やファン(だってダクトの中だもの)が、限られた直径で吸収できる仕事を最大にするには、のこころだー!

2017年6月30日 (金)

キネマ航空CEO GTF はターボ・ファン・ジェットかダクテッド・ターボ・プロップか、を考えるの巻(その 1 )

小中型の双発ジェットライナーで先行するP&WGTFピュアパワー」シリーズは、(同等の推力を持つ従来型ターボ・ファン・ジェットに対して)燃料消費 -12~-15%、騒音 -15~-20%、加えて炭酸ガス排出量、窒素酸化物排出量の低減が見込まれている。

燃料消費は単純に、燃料使用量が同じ推力を出すベンチマークのエンジンより少なければよい。

それには、少ない燃料で、より多くの空気を、より高温にできれば良いのだがその温度に耐えられるエンジンを設計する理論展開の支柱となる構造工学材料工学の密接な開発協力が必要となる。

次に燃料の有効利用の面では圧縮された空気が含む酸素を余すところなく使い切る(理論空燃比の)燃料を燃焼室に投入し均等に空気と混合させて完全燃焼させる構造と制御のシステム工学が必要になる。

これで炭酸ガス排出量の削減が燃焼工学と呼ばれる分野で達成できることになる。しかし「理論空燃比」だの「均等に混合」だの、と言っても近づけることはできるが完全燃焼を実行させることはむつかしい。

理論空燃比」というのは簡単だが、燃料一つとっても炭素と水素、おまけに水の含有割合も含めた分子構成は微妙に違う。高度によって変わる大気においても我々が見上げると必ずあるとはいえないコントレールのように空気中の酸素や温度や湿度の割合は常に一定とはいいがたい。

先行機の排気を吸い込むことだってあれば、飛行姿勢でファンやコンプレッサーに均等に空気が吸い込まれるとは限らない。

さて、一般論として酸素より燃料が多ければ、不完全燃焼で一酸化炭素や分解された炭素(煤)などの有害物質を生成して燃焼温度は下がり燃料消費は多くなる。逆に燃料が少なければ完全燃焼どころか余った酸素が窒素と化合して窒素酸化物などの環境物質を生成する。

これらはセンサーとアクチュエーターを駆使しておこなうフィードバックフィードフォワードさらにファジーなどの制御理論が応用されて完全燃焼に近づけるのだが、あらゆる状況でその瞬間、瞬間のただ一つの理論ではない適正空燃比に対してどの程度の誤差範囲に収めるかのコンピュータ制御システムで構成されたブレイトン・サイクルである。

ついでに言えば自動車のオットー・サイクルのエンジンでも同様であり触媒処理システムを追加することで環境規制値を下回っているが、航空機のエンジンには装着はできないだろう。

騒音については排気音の音圧と回転速度に関連する高周波音の低減である。

自動車ではマフラー(消音機)が必須であるが航空機でこれに相当するのが、吸音遮蔽筒となる(ダクテッド・)ターボ・ファンとそのダクトに発生する形状抵抗を避けてファンの回転数を落とし(飛行速度も落としてだが)ブレードの形状に工夫を加えたターボ・プロップファンと呼ばれる構造である。

CEO がこれらの燃焼工学を論ずるにはいささか手ごわすぎるので、ここは初歩的な物理学と工学でGTF に迫ってみる・・・ことにする。そこで連載を振り返ると・・・

キネマ航空CEO ターボ・ファン・ジェット・エンジンの効率を考える(数式編) 2016.10.18 で始まり

キネマ航空CEO ターボ・ファン・ジェット・エンジンの効率を考える(グラフ編 + 下の方で、ギヤード・ターボ・ファンの疑問編の始まり) 2016.10.19 でまとめた考察を振り返ります。

ターボジェット(コア・エンジン)の噴射速度の二乗に比例する運動エネルギーを、速度に比例する仕事をするファンの駆動に振り向けることでコア・エンジンの排気噴出速度(温度)の低下と引き換えにしてファンの反作用としての仕事となる空気の質量流量を増加させられることを説明しました。

この時ターボ・ファン・ジェットの仕事効率はターボ・ジェット(コア・エンジン)の排気速度とファンの作る送風速度が等しい時に最大になることを示しました。

ジェット・ライナーに採用されるターボ・ファン・ジェットの最高速は亜音速の高域、遷音速の下、マッハ 0.7 から 0.9 の間で設計されており、ほとんどがマッハ0.8強の横並びで使用されている。

また、その速度条件を保てばバイパス比を大きくするとコア・エンジンで発生する運動エネルギーも大きくなる。結局、大きなコア・エンジンが必要で燃料の消費は増えるが仕事効率では向上するのだろう。しかし、やみくもにバイパス比を増やしても限界がありそうだ。

現行の同じ型式のターボ・ファン・ジェットでも推力の細分化(適正化)で機体に合わせている。バイパス比をさらに大きくしたGTFの「ピュアパワー」でも同様である。

この考察は、運動量理論で導いたのであるが、ファンはプロペラと同じく空力機械であり翼素理論からの思考が必要になる、で終わっています。そこで・・・先行する、

キネマ航空CEO 航空エンジンのお仕事の効率を翼素理論で考える(プロペラの巻 その 1 ) 2016.05.30 から始まる回で翼素理論について勉強した結果を・・・

キネマ航空CEO 翼素理論と運動量理論の推進効率をグラフにする 2016.06.22 でまとめた。

なお運動量理論は・・・

キネマ航空CEO 航空エンジンのお仕事の効率を運動量理論で考える(ターボ・ジェットの巻) 2016.05.22 では、運動エネルギー = 仕事 + 損失エネルギー が同じ単位で成立し、仕事効率は損失エネルギーをいかに回収するか、であることを示しています。

これらに別の知見を加えて、翼素理論からファン(プロペラ)の限界を押さえて、ターボ・ファン・ジェットはコア・エンジンとファンによる空気流量速度を等しくする動力分割比でいいのかどうか、「ファンの推力を優先しているがターボ・プロップではない」形式の可能性を探ることが必要のようです。

つまり、コア・ジェットの推力に頼らない『ダクテッド・プロップファン』だけでマッハ0.8級のフライトを効率よく行えるのかどうか、それにGTF がどのように関係できるのかを考えるのがこれから数回のテーマとなります。

とはいえ、まだ机上の検証も済ませていないのでうまく進むかどうかは自信がないが、一か月間キネマ航空CEO オフィスを放置したお詫びとしてとりあえずの予告です。

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なお、P&W の「ピュアパワー」シリーズが最初に量産されたGTF だったわけではありません。以下 2016年9月11日の記事からの抜粋とバイパス比などの補追を挿入しました。

 ジェットライナーに採用されたGTF として成功したのはライカミングで開発されアライド・シグナルハネウェル・エアロスペースへと、企業買収が重ねられて生産された ALF 502/507 (1980)です。

 この大元をたどればギャレット・エアリサーチで開発、量産化された TFE731 (1972)で3.5 Klbf(15 kN)クラス、バイパス比 2.8 : 1 で した。こちらは買収先(現在はハネウェル・エアロスペース)の製品としてビジネス・ジェットで大成功を収めることになります。

 発展型の ALF 502/507 の出力は倍の 7 Klbf (31 kN)クラスでバイパス比 5.7 : 1 でした。 とは言え、現在生産に移行しているP&W PW1000 シリーズの最下位となる仕様の出力が 17Klbf 、バイパス比 9 : 1 ですから、これはその半分以下の出力でした。

 採用した中型機は BAe 146 シリーズ(1978-2001 387 機)です。成功した機種と言っていいと思います。乗客数は 70-82、85-100、100-112 の三クラスありましたから現在のリージョナル・ジェットに相当し、また、そのように使用されています。

 ただし、そのためには四発機にする必要がありました。双発機のエンジンに換算すると一基あたり 14 Klbf となります。

 都市に囲まれた飛行場で運行するためのSTOL性と静粛性は極めて優れていましたが、出力の比較からも想像できるように巡航速度と飛行高度は現在就航しているリージョナル・ジェットよりかなり劣ります。

2017年3月18日 (土)

キネマ航空CEO そこのあなた、MRJ を買ってみませんか ? の巻

航空機を買うのは航空会社ばかりではなくリース会社だって買うのです。買う方も大変だけど売る方はもっと大変なんですよ。

新規参入の三菱航空機MAC)は最大のライバルと目しているエンブラエルが抱えたレガシー製品のラインアップ・リニューアルの隙間を狙って開発を進めています。

リージョナル・ジェットという言葉に対する発想の結果は、いずれに吉と出るか凶と出るか・・・本稿の結論は、

   『環境を頭に置いたリージョナル・ジェット・ライナーの企画のモチベーションは将来の原油価格の高騰と新興国(当時は BRICs)の短距離旅客輸送の需要が大きく拡大する海外の予測だった。

   しかし、先に挙げた需要の大半を占める BRC もベンチマーク用に買ってくれるかもしれないが自前の航空機の導入を計ることは間違いない。さて、I が選ぶのは。

   航空機ファンとして MRJ の成功を祈りたいが 20 世紀末に立てた予測も 20 年経っている。少なくとも二酸化炭素削減のエコロジーは原油価格のエコノミーと結びついていた。

   経済産業省が丸投げした具体化事業を三菱航空機が民間企業として筋道をきちんと整理する時代が近づいてきている、とは言える。』

以下、カタログ・データから比較計算して見えてくるライバルとなるエンブラエルの開発意図の逆張りをしたMRJのコンセプトです。

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2016 年に廃止あるいは緩和されるはずだった希望的観測が外れてしまい、『スコープ・クローズ Scope Clause (範囲条項)』と呼ばれる協定が、アメリカの大手航空会社と所属するパイロット組合との間で再度で結ばれました。

『スコープ・クローズ』の目的は、大手航空会社のパイロット組合に所属しているパイロットが従事している業務への安全性の確保ですが、本質は航空会社が大型航空機を所有する LCC などのリージョナル(地方)航空会社へ運行を委託することで、組合員の職域の縮小や減給のスパイラルに陥る機会を予防することにあります。(大手と言えども組合とことを構えるのは安全性の企業イメージからも得策ではないようです)

このため大手航空会社や系列会社が運行する航空機の乗客数や機体の大きさを制限する条項を含む協定が結ばれました。

合意された概要は、シート数 76 席最大離陸重量 86,000 lb39 t)以下、となっています。

継続期間や条項の詳細は大手航空会社によって差はあるようですが、詳細は こちら で。

当然のことながら、佳境に入っている競合各社のリージョナル・ジェット・ライナーの開発と売り込みには影響が出てきます。

もちろん、MRJ-90 にも影響が及びます。三菱航空機MAC)はデリバリーを遅らせて米国の非関税障壁(?)に対抗する 600kg の軽量化を図っていると推測されます。

外人部隊を投入しながら始めた主な設計変更は電気配線(銅線)の見直しのようです。

MAC 社長のブリーフィングではかなり初歩的な設計上の問題のようでした。電線は通し方を変えて短くし、元になる細い銅線の直径をさらに細くしたり、撚線から一本抜くだけでもかなり軽くなります。

銅の密度は 8.92 g/cm3 で、鉄(同 7.87 g/cm3 )より重いんですよ。ついでに純アルミは 2.70 g/cm3 です。ざっと一辺 40.7 cm の立方体相当の銅をダイエットすればいいのですが電線だけでどうだろう ? か。
別途装備品にもティア1(総括仕入先)を通して減量要求が広がっているのだろうな。

もう一方のシート数の制限は運行会社のオプション(ファースト・クラス・シートを増やすとか、シート間隔を広げるとかの)選択の範疇に入り、製造会社が直接に決めることではありません。

しかし、先行して開発した機体のサイズと運行会社のニーズとの適合性では、製造会社は別機種の開発しか打つ手がありません。問題はチーズもといニーズ・パイのボリュームと切り分けた取り分です。

エンブラエルE175-E2 は今のところ仕様上では落伍したようですが協定の見直しを視野に 2020 年あたりをめどに検討は継続するつもりのようです。『スコープ・クローズ』に該当しない開発中断中の MRJ-70 の STD 仕様の再開をする理屈上の優位性はありそうだが・・・どんなものだか。

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下表は MRJ の売りのひとつである P&Wギヤード・ターボファンGTF)のピュアパワー・エンジンを採用している主要 3 機種を選び、ブラン・ニュー(白紙から始めた新設計)の三菱 MRJ-90、-70 を、既存の機体をブラッシュアップしてエンジンを換装したエアバス A320エンブラエル E190175 と比較してあります。(前回までの単位から馴染みやすい MKS 単位に換算してあります)

Performance_benchmark_geared_turbof

(4)のMOTW がその最大離陸重量で MRJ-90STD) は 600 kg ほど重い。軽自動車 1 台よりちょっと軽いぐらいに相当します。MRJ-70STD) はスコープ・クローズの対象外。

格上のA320neo は脇に置き、E190-E2E175-E2 は対象となります。ただし原型の E190 と E175 も対象となってる。

はっきりと言えば、エンブラエルは北米の市場では『スコープ・クローズ』の土俵をはじめから放棄して(MRJ フリークの心情からは「あきらめ」て)おり、三菱航空機とは異なる経営計画と開発方針で進めています。(本当に「あきらめ」たのかどうか)

このあたりから比較してみよう。

今回は概要から先に展開します。(上にある表をポップアップさせておくことをお勧めします)

(15)で示す MRJ-90STD最大着陸重量MLW)(3)と最大離陸重量MTOW)(4)の比は競合機のエンブラエル E190-E2 の 0.87 に対し 0.96 と 0.09 ポイントほど大きい。 MRJ-70STD E175-E2 でも同様であります。

仮にこの比が 1 なら MTOW で離陸直後にそのまま着陸できる。比が 1 に近い MRJ は初発便から短距離運行を行うコンセプトだろうけど、どこの市場を目指したのだろう。
(初発便 : 燃料給油後に最初に離陸するフライトです・・・当CEO の定義です)

MRJ は簡単にいえばベンチマーク機に比べ相対的に重く(適正な設計なら = 頑丈に)できている。ただ、一般的には MLW/MTOW 比はクラスが下がるほど大きくなるようである。

細部の考察に入る前に旅客機を含む輸送機に重要な重量諸元の定義を見ておきましょう。

--------------航空機の主要な重量------------

(1)運航重量Operating Weight): 

入手できる航空機の資料から空虚重量Empty Weight)が消えているようです。その代わりになるのがこの値です。

運行重量
  = 離陸重量
-(乗客とその手荷物 + 乗客への提供品 + 貨物)の重量-(搭載燃料・滑油・作動油)の重量
  = 空虚重量 + (排出不能の燃料・滑油・作動油 + 緊急時対応等で常備の運航装備品 + 乗務員とその手荷物)の重量

軍用機の場合は重量と訳すらしい。式中で引くものでは乗客ではなく搭乗員、貨物ではなく爆弾、ミサイル、弾薬、(チャフやデコイも含まれるのかなー ? )などの消耗品といいかえることになる(閑話休題)

基準になる離陸重量を最大の MTOWMax. Take-off Weight)(4)とした場合の運行重量が 最大運行重量 MOW Max. Operating Weight)となる。ただし MOTW は滑走路長、気温、空港の高度などで変わりカタログ上の MOW は変わらないが運行上の MOW は連動して変えざるを得ない。

ここで飯の種の乗客や貨物に関係する重量と航続距離に直接影響する燃料重量とのトレード・オフ(どちらかを減らしいっぽうを増やすことだが大抵は乗客か貨物を減らすこと)になる。これには次の無燃料重量が関係してくる。

(2)無燃料重量Zero-fuel Weight):

ざっくり定義すると、(エンジン始動前の) 離陸重量 - 主翼内の燃料重量 となる。

航空機の構造は左右の主翼の中を通る数本の主桁と呼ばれる揚力を受け持つ強度部材が(特に旅客機では)胴体横にふくらむバルジの中にある頑丈な籠型の構造物に取り付けられている。この結合部分を翼根と呼びます。

もちろん胴体もこの籠型構造物に結合されている。

飛行中の航空機にかかる「主翼」に生じる「上向きの揚力」と「胴体」に働く「下向きの重量」は、翼根を介してつり合っている。

エンジン搭載のレイアウトではMRJ などの小型機以上になるとエンジンはポッド(覆い)に包まれてパイロン(支柱)に吊られて主翼の主桁に取り付けられます。これが錘となって揚力による主翼の撓み(曲げと捩じり)を押さえています。

-余談ながら、
加えて、レシプロ機では主翼に取り付けられていた主脚も胴体のバルジ内の構造物に取り付けられることになりました。着陸時の衝撃を主翼で分担しないようにして軽量化された撓み翼にするためです。

-また余談ながら、
これがデ・ハビランド コメット DH.106 のようなエンジンの胴体横の翼内埋め込み、その外側の主翼に主脚がある形式が輸送機で主流になれなかった理由です。

-またまた余談ながら、
こうしたエンジンや主脚のレイアウトの限界では、一クラス下のビジネス・ジェットではデファクト・スタンダードとなったリヤ・マウンテッド・エンジンのダグラス DC9-10 (全長31.82m 90人)をストレッチでマグダネル・ダグラス MD90 (46.50m 172人)にまで引き伸ばすと「なんだかなー」となるようで最終型 MD95 の構想はボーイング 717-200 (37.81m 117人)に引き継がれシュリンクされて生産の終焉を迎えました。
(閑話休題)


さて、ほとんどの燃料は主翼の桁(スパー)の間に設けられた燃料タンクに搭載されており、主翼を上に曲げようとする揚力は(エンジンを含む)主翼の重さと燃料の重さで減殺されて翼根に伝わる。 しかし飛行時間と共に燃料は消費されて主翼側の重さは軽くなる。

双発機では四発機に比べ片発停止時の推力バランスの崩れを抑えるため翼根側へ寄せており主翼内の燃料の影響がさらに大きくなります。

いっぽうの胴体側の重量は(胴体内燃料タンクがなければ)変化しない。主翼の曲げを打ち消していた翼内の燃料重量がなくなると翼根にかかる力(正確には曲げモーメント)が大きくなります。(無くなった燃料の重量分だけ揚力も減少するので言葉ほど単純ではないのだけれど)

限界を超えると、金属疲労が設計寿命より早く進み、さらに、突風に遭遇すると主翼の迎え角が大きく(すなわち揚力が大きく)なって主翼が付け根(翼根)で折れることもある。

このため、飛行前の重量確認では最大離陸重量MTOW)と同時に胴体に載せた重量によって決まる最大無燃料重量MZFW)の制限内にあることを確認しなければならない。

燃料タンクが空になる事故は、当キネマ航空 009便 で上映中の『フライト 236 "Piche, Entre Ciel et Terre"』で取り上げたエアバス330 の「アゾレス・グライダー」や『フリーフォール "FLIGHT 174"』 のボーイング767 で発生した「ギムリー・グライダー」に当たります。どちらも胴体内にも燃料タンクがある機体でした。いずれも実話がベースです。もちろん MZFW をオーバーしてはいませんでした。

(3)最大着陸重量MLW

基本は、主脚などの降着装置や翼根の構造が耐えられる衝撃荷重係数によって決まる機体の重量。

もう一つは、滑走時の制動能力、着陸や復航時の操縦性が保証できる運用上の機体重量。

最終的には滑走路長や標高、気温など空港の諸条件による着陸速度で決まる。

(4)最大離陸重量MTOW

最大乗客重量(持ち込み荷物を含む) + 運行に必要な燃料や食事等の提供品の最大重量 + 所定の装備品重量 + 乗務員重量(持ち込み荷物を含む) + 機体空虚重量

もちろん最終的には滑走路長や標高、気温など空港の諸条件によって決まる。

MLW より大きいのは滑走路の一点に向かい収束させる着陸時に比べ、余裕のある旋回半径で加速と上昇ができる操縦性ですむからと考えられる。したがい、構造上は MOTW より大きい MLW で設計された機体も存在する。

(5)最大乗客数Mono-class Passengers

輸送機、特に旅客機においては持ち込み荷物を含めてペイ・ロード(有償重量)だがこの数字が機体の格(Class)を決めるといっていい。

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さて機種名称(記号)の構成は、一般的に最大乗客数と航続距離の組合せで示されます。

最大乗客数を増減するためには基準機種の胴体のストレッチ(延長)やシュリンク(短縮)で客室長の変更を伴うので機種の記号を変える。例) A318 - A319 - A320(基準機種) - A321A320 ファミリーE170 - E175 - E190 - E195E ジェット・ファミリーなど。

増設タンクの仕様等の変更は航続距離を示す記号を付ける。例) -STD (Standard Range 標準型)、 -ER (Extended Range 拡張型)、- LR (Long Range 長距離型)、- AR (Advanced Range 延長強化型)など。MRJ には -ER-LR がある。

A320neo シリーズや E2 シリーズでは航続距離の仕様を示す資料がないため、表では STD と判断して現行機種の(STD)タイプと並べている。

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ではもう一度、MLW/MTOW を並べなおすと、エアバスエンブラエル( )内は現行エンジン仕様、MRJ では STD(ER/LR)を示す。

A320neo E190-E2 E170-E2 MRJ-90STD MJR-70STD
0.850.85 0.870.90 0.890.91 0.960.93/0.88 0.980.93/0.90

MRJSTD タイプを直接のライバルとするエンブラエル-E2STD)は、現行エンジン仕様に対して 0.03 ないし 0.02 ポイントを小さくなっている。

直接 MRJ と比べると 0.09ポイント小さくしている。E2 と同じ値になるのは MRJ-90ER  MRJ-70LR だが(もちろん『スコープ・クローズ』の MTOW 制限には適合しません)、まだ 0.01 ポイント小さい。(具体的には航続距離はエンブラエルの方が長い)

そこで MTOW  を最大(モノクラス)乗客数で割ってみる(8)。この数字が乗客の払うチケット代金となり航空会社が存続を続ける回転資金の源となる。

エンブラエル E190-E2  の 493 kg/人に対しMRJ-90STD は 430 kg/人となる。(以下 STD 等の表示なき場合は MRJ-90STD

これ(8)を巡航飛行時間(7)で割って乗客 1 人を 1 時間 とばす(9)には E190-E2 の 78.8 kg/人・時間 に対し MRJ-90STD は 167.5 kg/人・時間 となります。で・・・この差は航続距離の差ですが、主たる要因は MTOW を構成する乗客数と搭載燃料の差であります。

巡航飛行時間(7)は、各機種を問わず巡航速度は同列の M 0.78 として、巡航高度 40,000 ft (12,000m) の音速 295 m/s (1,062km/h)より算出した速度で標準巡航距離(6)を割った値。

では乗客数が近い E175-E2 はというと 110.6 kg/人・時間 となります。差は少し詰まったとはいえますが、MRJ-90STD との差は歴然です。もっと言えば機体重量の絡んだ数値は小型機になるほど不利になる原則に沿っています。

MRJ-90E190-E2 の航続距離の比は 1: 2.44、MRJ-70E175-E2 では 1 : 2.02 であります。

単純には MRJSTD) は -E2 の飛行時間の間に必要なアイドルタイム(後述)を無視すればざっと2~2.4倍の乗客の回転が見込める・・・とはならない。

乗客の回転では -E2 だって同じ飛行距離で着陸すればいいのであります。その上、燃料の補給回数は MRJ-90STD の半分でいい。・・・しかし、

ここで最初の MLW/MTOW の比の問題に返ります。この比が小さい -E2 は初発便の着陸空港が MRJ のそれより遠くなければ機体重量が MLW最大着陸重量)以下にならない。

したがい、-E2 の初発便は(特に日本の場合、新幹線との競合の影響が小さい)遠距離の空港に飛び、以降は自由に空港を選ぶホッピング・オペレーション(蛙飛び運行)を行うことができ、MRJ-90STD より多い無給油運行回数で乗客の回転が可能となる運用の柔軟性が期待できる。

そう上手くはいかないかもしれないが、初発便が常に満席の MTOW で離陸するわけでもないだろうから、次の給油空港のスケジュールに合わせて燃料搭載量を調整して無給油運行をおこなえばよい。

三菱航空機は標準仕様(STD)のほかに燃料タンクの容量を増やした航続距離延長型(ER)、長距離型(LR)も公表しておりシリーズでカバーしているとはいえる。しかし、最大乗客数の差は変わらない。

エアバスエンブラエルGTF に換装するにあたって MLW/MTOW を変えずに航続距離を拡大しており、明らかに三菱航空機とは異なる設計思想があることは間違いない。

エンブラエルは現行エンジンの E1xx の航続距離延長仕様を E1xx-E2STD として設定しているようだ。( MLW/MTOW 比はクラスの限界に近く見えるが、延長型は設定していると考えられる)

当然ながら両社の設計意図はエンジンのためだけで決めたのではない。もちろんエコロジーやエコノミーの ECO のためだけでもない。航空会社に使われる、ひいては売れる機体を作るためであります。

これまでに分かったことは、MRJ-90 のクラス上となる A320neoMRJ フリークがほぼ対等とする若干上位の機種 E190-E2 と下位機種となる E175-E2MRJ-70 とはほぼ同位)も標準仕様として原型機に対して航続距離の増加を与えています。

まず機体のコンセプトまたは構想を整理してまとめてみます。

MTOW は満席の乗客と最長航続距離にある空港までの飛行となる航空会社にとっては究極の(仮の)理想(着陸時の余裕燃料は 0 の極限の)運行重量と言えます。

航空会社が試算する航空券の価格は MOTW をベースに、乗客単価が決められて燃料などの変動費の支払いや、広義の固定費となる機体購入費や定期メインテナンス費などの金利等々を含む機材費用など負債の返済、従業員の給与に回り、最後の残りが航空ビジネスによる利潤の元となる指標になります。

機体購入費では新規機体開発メーカーには機体の重量に開発費の上乗せがあり、既存の機体を改良するメーカーは、より有利となる。

加えて小型機の機体価格が機体重量に比例して直線的に安くなることはないし、公称価格で買うこともない。同じ仕様でも購入価格はディール(交渉)によって変わる。

小型機ビジネスは作る方も運行する方も甘くないようです。

で、乗客が購入する航空券の価格(乗客単価)は各航空会社の予測や実績による決算期間の平均搭乗率で割られて高くなります。(空港使用料や離着陸料などの経費は航空券に上乗せとして取り合えず省略。 競争相手との値引き競争に対抗する事前上乗せ分も必要でしょうがこれも省略)

さて話を戻して、

(8)の一人運ぶための重さは工学的には単純で、小型機ほど重くなる。
小型機の場合は(9)で示す乗客一人を一時間飛行させるための重量ではさらに顕著になる。

ただし機種間で(8)を比較するには飛行時間が違うことを考えなければならない。
(10)は A-320neo の飛行時間を 1 とした比較機の比である。MRJ-90STDA320neo の 3 倍となる。

したがい MRJ-90STD では同じ時間に 3 倍の乗客を運ぶことができるので A320neo の 1 フライト 7.8 時間 の 195 人に対して MRJ-90STD では 3 フライトで 280 人の乗客が航空会社の経営を分担することになる。

もちろん、現実には乗客や貨物の入替、清掃などの時間が必要であり、そんなにうまくは回らないし常に満席でもないだろうが、差が詰まることは間違いない。LCC はいかにリージョナル・ジェット・ライナーでこれを活用するかにかかっている。

その一方では繰り返される離陸上昇区間の大きな燃料消費などの変動費はかさむことになる。

この表で目立つところは E190-E2E175-E2一人当たりの最大離陸重量(4)が  A320MRJ-90STD-70STD と比べると異様に大きくなっています。

特に E190-E2E190 で新旧として比べるとさらにはっきりします。

ところがマン・アワー当りの最大離陸重量(9)ではそれほど目立たない。

その理由は、エンブレアは機種の更新に当たって GTF を採用すると同時に航続距離を大幅に延ばして標準仕様としたようです。

言い換えれば燃料搭載量を増やして標準仕様としたことになります。

MRJ でも航続距離を伸ばした ER/LR 仕様がある、とはいっても最大乗客数は少ない。

ここから推測されるエンブレアの戦略はすでにお判りでしょう。

当CEOの考察ではエンブレアは(特に海外市場の)ユーザーの意向を採用しており燃費の改善は実燃費ではなく離着陸を繰り返す場合の運用上の利便性に振り向けたと考えられます。

エンブラエル三菱が開発を遅らせた『スコープ・クローズ』適合機の MRJ-70 に対抗するには E175-E2 の改造では不可能なことで次の見直し機会となる 2020 年までの時間に賭けました。

三菱が仕掛けた格下の新規参入機である MRJ90 に対しては航続距離、言い換えれば一給油で行う運行時間の延長で シート数の多い E190-E2 を計画してこれまでの実績を梃子にして『スコープ・クローズ』の対象外での競争で対抗しています。

最高速度や巡航速度は横並びで離陸上昇と下降着陸を繰り返すリージョナル・ジェットライナーにとっては巡航燃費のファクターは別の意味で利用できると考えているようです。

さらに言えばエアバスA318 で中型機から下りてこようとしていたが、今のところ成功していない小型機と中型機の隙間でボンバルディアが手掛けているクラスを狙っているとも言えます。

いずれにせよ GTF エンジンの応用には明らかに彼我に大きな差があります。いずれに吉と出るか凶と出るかの時間が今も経過していきます。

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なお、 MZFW/MTOW の比(14)(最大無燃料重量/最大離陸重量)も小型になるほど大きくなるようですが、MLW/MTOW の比(15)に対して一律で約 0.04 乃至 0.05 ポイントほどの差で小さくなるようです。
-E2 については MOWMZFL も公表されていないようですので現行エンジン機種の数値です)

MRJSTDタイプもこの値の 0.05 ポイント差に準じています(ERLR タイプも同様です)。

MOW/MTOW の比(13)(最大運行重量/最大離陸重量)の傾向は資料が少ないため明確ではありません。

以上は公表された数値から出てくる工学的な比較と類推であります。MRJ は適正に設計されておれば頑丈に、しかし相対的には重くできているようです。これが小型化の宿命、かもしれません。

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環境を頭に置いたリージョナル・ジェット・ライナーの企画のモチベーションは将来の原油価格の高騰と新興国(当時は BRICs)の短距離旅客輸送の需要が大きく拡大する海外の予測だった。

しかし、先に挙げた需要の大半を占める B も R も C もベンチマーク用に買ってくれるかもしれないが自前の航空機の導入を計ることは間違いない。さて、I が選ぶのは?

航空機ファンとして MRJ の成功を祈りたいが 20 世紀末に立てた予測も 20 年経っている。少なくとも二酸化炭素削減のエコロジーは原油価格のエコノミーと結びついていた。

経済産業省が丸投げした具体化事業を三菱航空機が民間企業として筋道をきちんと整理する時代が近づいてきている、とは言える。

2017年2月 7日 (火)

キネマ航空CEO GTFを あっさりまとめちゃうの巻(その 2)

さて、また同じ表です
(左クリックで別窓に拡大されます)

Comparison_of_geared_turbofan_jet_l

先回は上下に機体やエンジンの基本項目を並べました。今回は左右に並べたメーカー毎の新旧機種の比較をまとめて次回に続ける計画です。

まず左のグループから順に見ていきます。

エアバス

   A320neo-271NA320neo-252NA320 で比較を行います。
 neo ネオNew Engine Option (新エンジン選択)搭載機の頭文字。
選択できるエンジンは次の 2 種類です。
   P&W PW1127
 言わずと知れたプラット・アンド・ホイットニーの PurePower  ギヤード・ターボファン・エンジンで末尾の 27 は離昇時公称推力27Klb を示します。
   CMF インターナショナル LEAP-1A26
 型式名のリープ はアメリカの GE とフランスの国営コングロマリットのサフラン・グループの中核スネクマととの合弁(50:50)会社により、GEGE90 から開発された GEnX エンジン がベースの Leading Edge Aviation Propulsion (先端航空機推進)エンジンの頭文字です。

 続く -1 は最初の生産仕様、A はエアバス(したがい B はボーイング 737 )向けとなる。

 次に続く 26 は連続最大公称推力の 26Klb を示します。推力の定義を揃えると同じ(カタログ)値になっています。CMF の方が P&W より奥ゆかしい表現ですかね。

 LEAP はこれまでに書いてきたように構成部品の材質や構造の変更による燃焼効率の改善とファンの形状の大幅な変更による推進効率の向上などの PurePower と同等の改良を注ぎ込んで達成できる、減速機なしで可能な、限界を追求したエンジンと言えます。

 いっぽう、これまでのエンジン搭載機は A320ceoCurrent Engine Option セオ (現行、正確には旧来)エンジン選択型と定義するようです。

   A320ceo に限って言えば、
 CMF56-5 系と IAE V2500 及び V2527 系を採用していました。
 IAE は、P&W(米32.5%)、RR(英 32.5)、MTU(独12)、JAEC(日26)の4ヶ国4社の合弁企業です。(メーカーの選別で日本はどうなるのかが気になりますが主要な部品レベルではどのエンジン・メーカーであっても食い込んでいます。生産量の増減の影響はありそうですがね)

 さて neo では P&W を採用しますから IAE は外されることになります。いっぽうでは自国フランスの資本の入る CMF で前記のように対抗できそうなエンジンを開発することになりました。これが航空機産業を育成する国策でしょうかね。

 で、LEAP-1A を採用した A320neo のデリバリーは始まったのですが、ライバルとなるボーイング737MAX 向けのバイパス比が 2 ポイント小さく、低圧段タービンが 2列少ないが推力設定は 1 ランク高い LEAP-1B28 の燃費は目標未達となっているようです。

  基本的には低圧タービン段数を増やしてファン径を大きくすれば良いのでしょうが 737MAX では地上高が足りるのだろうか ・・・

 CMF56 系エンジンを一社選定している今でも外形をオムスビ型にしたカウリングで横揺れ接地角(機体が傾いてどちらかの車輪が接地したときに傾いた側のエンジンが接地するまでの余裕角度)を稼いでいるのに・・・PurePower に変更したところでファン径は必然的に大きくなる。

 短足のボーイング 737 はついに雪隠詰めになるのか ?? ・・・ エンジン仕様策定時に仕掛けたフランス側の遠望深慮(正しくは深謀遠慮らしい)の経済政策かも ・・・ ?

 従来の航空機メーカーのエンジン選定方式は複数(と言っても大体は2社)の競合関係を用意するが、ライバル関係にあるエンジン・メーカーの間でも増え続ける開発費の捻出にコンソーシアムを組み始めた。

 少し遅れて機体メーカーもエンジン開発費の一部負担と引き換えにリスクを抱えながらもエンジンを一社に限定をして対抗を始めた。

 そこで、エアバスは逆張りに出て一機種に(自国資本の入る新規の一社を加えた)二社のエンジン選択制を採用し、併せてライバル機のエンジンのシェアも自国の企業で頂くか、あわよくば宿敵の機体構造の限界を露呈させるか、・・・のゲームに出たとも言えなくはない・・・

 遠く先のエンジン技術の動向を見据え(遠望し)、航空機の製造では(深慮の上の)生き残りを賭けたビジネス世界を垣間見せているのかもしれません。

 一社限定とはいえ大きな航空機メーカーでは抱えているクラスの異なる機種のラインごとに分けて設定し、二社以上のエンジンメーカーとの緊張した関係を築ける。 航空機メーカーだってエンジンメーカーが潰れては困るのです。

 日本の機体メーカーには絶対に真似のできない、ビジネス展開ができます。日本の航空機産業の生きる道は完成品ではなく部品で同様の関係を作り上げることにに尽きるように思えます。 

エンブラエル

 機体の新旧の関係は、
   E190-E2 には E190-100
   E175-E2 には E175-200
 エンジンはそれぞれに、
   P&W PW1919GE CF34-10E
   P&W PW1715GE CF34-8E
 エンブラエルは GE から離れる決断をしたようです。もっとも GELEAP エンジンのラインアップはベースのエンジンが示すように小型のリージョナル・ジェットには向いていないようです。

 エンブラエルは当然のことながらエアバスの ceo に相当する型式は用意するでしょうね。安いリビルト・エンジンにレトロ・フィットができる新設計(新から旧への互換性を保った設計手法)の機体を組合せて、という商売も可能かもしれません。

三菱航空機 (MAC)

 機体はブランニューで比較するベースはありません。
   MRJ-90 はパッセンジャー・レベルでは、ほぼ E175-E2 と同格
   MRJ-70 は実現すれば世界最小の新鋭リージョナル・ジェット・ライナーに !
 エンジンには特徴があります。機体の順に並べてエンブラエルと比較
   P&W PW1917 はエンブラエルでは E190-E2E175-E2 の中間の出力
   P&W PW1715 はエンブラエルでは E175-E2 と同じ出力

併せて当オフィスの関連記事をご参照ください。
 キネマ航空 CEO GTF の GB(Gear Box)の減速比に迫ってみる。 
 
キネマ航空CEO MRJが採用したP&Wのギヤード・ターボファン・ジェットを読み解くの巻   

次回(その3)では、(その1)の横軸と今回(その2)の縦軸のマトリックスにある数字を読み解こうと考えています。

えっ、見えてきた ? 急がなきゃ

2017年1月31日 (火)

キネマ航空CEO GTFを あっさりまとめちゃうの巻(その 1) と、年頭のご挨拶 2017

「明けまして何がめでたい初日の出、明日の日の出とどこが違うぞ」
と言いながらも、世の中の移り変わりが様変わりとなる、もう 4 年は見届けたい年の明けですね。

キネマ航空はいつもと変わらず瞑想だか迷走だか分からぬ飛行で運行を継続いたします。

2017年1月のタイム・スタンプを押すために出筆のまま無校正、無校閲での公開になります。後日修正があればごめんなさい。(出筆者が一人でやってます)

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さて下表(左クリックで別窓に拡大されます)は、新機体、新エンジンの組合せで計画された MAC MRJ と 既存の機体の改造とプラット&ホイットニーのピュアパワーエンジン(いわゆるギヤードターボファンジェット)を組み合わせた機種とを比較した表です。

Comparison_of_geared_turbofan_jet_l

本来なら MRJ と同じく新機体、新エンジンの組合せであるボンバルディア C シリーズイルクート MS-21 シリーズも加えるところだがおなじクラスの エアバス A320neo にて代表させる。また表では標準的な機種を用いている。

使用した数値は、
機種においては Wikipedia(英語版)、
エンジンでは、EASA TYPE CERTIFICATE DATA SHEET (EASA European Aviation Safety Agency)
から抽出した。

表は上下方向に三つに分けられています。

上段:旅客機としての機体の代表値
    乗員乗客数と最大離陸荷重(Wiki から)

下段:ターボファンジェットライナーの性能(Wikiから)
    機種に関係なく巡航速度 0.78、最高速度 0.82、上昇限度は 40,000±1,000フィート。
    (この中で団栗の背競べ的な差はあるのかもしれないが)

中段:エンジンの特性値(EASAから)
    エンジンの構成 左より 
       ファン - (G ギヤボックス) - 低圧圧縮機 - 高圧圧縮機 -
         (A)アニュラー型燃焼室 - 高圧タービン-低圧タービン 
    (ファンは低圧圧縮段の一部でもあるが中には低圧圧縮機のない型式もある)
    の段数を示す。

    バイパス比、
    ファン直径
    最大離陸時推力、
    N1 (低圧タービン回転数)
    N2 (高圧タービン回転数)
    ギヤ比
    ファン回転数= N1 回転数 × ギヤ比、ギヤがなければ N1 回転数

    まずエアバスA320neo に使われる公称27Klbクラスのピュアパワーエンジンのギア比は、以前に当ブログで写真から計算した 96/34 = 2.8235 ではなく 3.0625 (= 98/32または 49/16 の倍数) となっていました。
(歯数は推定。歯厚は厚くなっているはず)

キネマ航空 CEO GTF の GB(Gear Box)の減速比に迫ってみる。

    減速比を大きくするのはファンの直径に直結するファン先端の速度と関係して回転数を押さえるためと推定されます。

    次の問題は、EASA のデータシートにはエンブラエルMRJ が採用する 15、17、19 Klb クラスの資料はまだ登録されていないようです。他の資料も探したのですが見当たりません。

    そこで、当CEO の独断(赤字のイタリック体 )で回転数は 27klb クラスと同じ値、ギヤ比は写真からのギヤ比を採用しています。

    なぜなら N2 回転数の増加に見られるようにターボエンジンの性能向上は、より希薄な混合気をより圧縮して高速で燃やすことにつきます。

    燃焼による運動エネルギーが高速になった分だけ高回転、低トルクを取り出し減速機で低回転、高トルクに変換してファンの先端が高速にならないように回すことで効率を稼ぐのが目的になります。
(このあたりは、自動車の変速機と同じで、車速に合わせて燃焼効率の良いエンジン回転数をなるべく一定に保つ機能と同じですね)

キネマ航空CEO 航空エンジンのお仕事の効率を運動量理論で考える(ターボ・ジェットの巻)

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余談ながら、なぜ A320neo に搭載された PW1127 の減速比は P&W の公表したギヤボックス写真の歯数と整合しないのか?

P&Wは考えた(多分ですよ・・・)

伝達するトルクが大きくなり強度上歯厚も厚くしなければならない。歯厚を厚くすると歯車の直径が大きくなる。歯車箱も大きくなり重そうに見える・・・

展示するにはちょっと・・・格好が悪いなー。ここはシリーズの中の小さい方を・・・

(P&Wの広報担当者様・・・間違っていたらごめんなさい・・・閑話休題)

この問題は次回からの乱暴な考察で突っ込んでみます。

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