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2019年12月24日 (火)

「マックとミー、レガシー・ビジネス始めるってよ」の巻 (3 の 3.2)「翼はクリーンなだけじゃダメなのか!」

ジェットライナーの先陣を受け持った デ・ハビランド DH.106 コメット は就航直後の離着陸時にいくつかの事故を起こしている。
デハビランドには DH.88 コメット もある。 扱いにくい機体のようだけど、キネマ航空 009 便 の「グレート・エアレース」に赤と黒の 2 機登場します。 DH.98 モスキート の叔母さんに当るのかな 。

例によって公開校正と校閲中です
お気づきの点のご連絡をお待ちしております
キネマ航空CEO 拝
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副題に「翼はクリーンなだけじゃダメなのか!」とぶち上げてみても、当CEO にはまず翼型の復習が必要です。 まず翼は、以下の用語であらわされ・・・

Airfoil-w-aoa05

翼型翼上面翼下面に内接する円の直径(翼厚)とその中心の軌跡である矢高線(キャンバー・ライン)の関係で決まる。 その横軸基準座標となるのが翼弦線翼弦長である。 矢高線翼弦長に直角な翼厚の断面寸法の中央を結んだ線で意義する場合もある。 微妙な違いだが後者のほうがデジタル思考には馴染みやすい。

縦軸座標で示される翼厚矢高の位置は翼弦長を 100% とした前縁からのパーセンテージで表される。 例えば、層流翼型最大翼厚位置は通常翼型の 25–30% に対して 40-50% の位置にある・・・など。 また、矢高翼厚の縦軸方向の寸法も翼弦長に対するパーセンテージで表される。 なお、最大翼厚位置最大矢高位置は必ずしも一致しない。

パーセンテージで表記されると最大矢高最大翼厚の位置と翼厚が分れば大体の翼型性能は推定できる。 N.A.C.A.あるいはNASA翼型の命名はこの方式で分類されている・・・ただし超々音速翼型については各自で調べてください。

翼弦長は、前縁を構成する中心のある円弧上の一点と、点である後縁との間の長さ、である(らしい)。 しかし、前縁半径の中心と翼弦線の関係が判然としない。 

翼弦長の定義を、点である「後縁」と「後縁」 を中心とした円弧と「前縁」となる円弧の接点を結んだ直線、(要するに翼型の最大長さ)だとすると矢高線の一部は翼弦線と重なり参考書の図面とは異なることになる。 おそらく翼弦線前縁半径の中心位置とには矢高線前縁へ滑らかに結ぶオフセットがあるのだろうがこんなことに拘ずらわっていても仕方がないのだろうなー。

とにもかくにも、矢高線が完全に翼弦線に重なる(直線になる)と翼面は上下対称となり対称翼型と呼ばれる。 特徴は迎角(以下 α )が 0° では揚力係数(以下 CL )も 0 となり迎角が増えると CL は直線的に増える。 α 軸に対するこの勾配を揚力勾配と呼び、失速角 αst と呼ぶある角度で頭打ちとなり、最大揚力係数 CL max を示し、さらに α を増すと CL は低下していく。

ちなみに迎角 α は翼の進行方向と翼弦線のなす角度であって機体との関係を示すものではありません。 図中の(取付角)は下方のフラップの図と関連します。

4412この関係は左の性能図のように、矢高のある翼型にも引き継がれる。 翼型性能は、矢高が大きくても揚力勾配は変わらないが、大きいほど α = 0° の CL が大きくなり CL max も大きくなる。同時に CL max 時の迎角 αst は小さくなる。
)例示した翼型 NSCA 4414 はコメットに使用された規格ではありません。

なお、翼厚比(= 最大翼厚/翼弦長)の増加でも同様の傾向があるがここでは踏み込まない。

その一方で、引き換えに抵抗係数 CD は増加する。 CL = 0 の迎角(零揚力角と呼ぶ。グラフでは -3.8°)あたりで最低値を示す逆放物線状を示すが失速角 αst 付近で直線状に急激な増加を示しています。

しかしこの、性能曲線図の縦軸(無次元数)で示す CDCL の数値は一桁違っており直感的な認識は難しいので縦軸のスケールを統一して書き直したのが下図であります。(今回の論旨には関係のない h/c につきましては当キネマエアラインズの運営する ミュージアム にてご参照ください)

H_per_c

グラフで突出しているのは、揚力 L [N] と抗力 D [N] の比 である 揚抗比 L/D Ratio [-]であります。 したがい、
   Lift to Drag Ratio = L / DCL / CD  (グラフでは CL/CDi
つまり、翼は 1 の抗力に逆らう力で最大で 21 倍強の揚力を出せることを表しています。 逆らう力は、エンジンの推力と引力による機体の重量、すなわち重力であります。

このグラフでは最大揚抗比( L/D max )を得る迎角(以下、AOA : Angle Of Attack )は 2 ° 弱であります。 ついでに L/D max のときの CL は 0.1 程度です。
一方で CL max の場合は、AOA は 22° 強、 CL は 1.65 です。この角度と係数の差を覚えておいてください ね!

航空機の運航でもっとも飛行時間の割合が大きい水平巡行時の迎角は胴体、エンジン、尾翼などを引っくるめた機体の抗力が最小となる姿勢の基準線に対して最大揚抗比を得る角度( AOA ) が理論上では最適の主翼の取付角となります。

・・・あくまで理論上で、でありますので、工学上の理屈で違う場合もあります。 それは後ほどですが次回となります。

なお、実際の AOA は操縦による機体の人為的姿勢に加えて、自然風による上昇や下降の気流などの外乱でも変化します。

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さて、翼を持つ飛行機の宿命は、地上の停止状態から加速し浮揚し決められた高度を通過(ここまでが離陸行程)し、つづいて、上昇-巡航-下降 と通常の飛行と呼べる航程を経て、決められた降下角度に乗って減速し決められた高度を通過(ここから着陸行程)しながら、滑走路上で浮揚、接地、制動をして停止状態、に戻る、その中で「浮揚する」という二回の空中を低速で漂う時間から逃げられないことにあります。

飛行機が「飛行機」に変身するのは、まさに離陸時は「浮揚」した瞬間、着陸時は接地した瞬間の速度が境い目であります。

その時の機速は CL max を使い失速速度 Vst として揚力の式を変形して求めることができる。
Vst = { (2/ρg)・(W/S)/( CL max ) }1/2
     ρ 空気密度 [Kg / m3] g は重力加速度 [m / s2 ] W/S は翼面荷重 [Kgf/m2 ]
ちなみに、g は重さにおける質量(物理)と重量(工学)の単位変換常数(9.8)。
      ρg とすると物理単位[Kg / m3]から工学単位 [Kgf / m3] へ、
      W/g では工学単位[Kgf]から物理単位 [kg] へ、の変換となる。

空気密度 ρ は気温・湿度・気圧、ひいては高度で変化する。
重力加速度 g は場所により厳密には異なるが常数として扱う。
翼面荷重W/S は離陸荷重時と着陸荷重時では燃料が燃焼し排出されて後者が軽くなる。

つまり、人間が手を出せる「翼を持つ飛行機を速やかに飛行機たらしめる」方法の一つは最大揚力係数 CL max をいかに大きくするかであります。 もう一つは失速速度 Vst を越えるまで速やかに加速する強力なエンジンの性能ですが、これは後ほど・・・ 

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翼型の形状で最大揚力係数 CL max を大きくするには矢高(キャンバー)を大きくすれば良いことは先に述べた。 それをメカニズムで実現する一番単純な方法として矢高線の途中で機械的に折り曲げるシンプル・フラップがある。 

Airfoil-w-aoa5-flap45

揚力の基準となる迎角はフラップ下げ翼弦線となるが、機体に対する見做し取付角が大きく取れるので機体が水平でも翼にとっては大きな迎角となり、ひいては大きな揚力係数を得ることができる。

すなわち、より低速で浮揚することができる。 厳密にいえば、翼弦長が短くなり翼面積 S が小さくなる。 この対策は第二世代以降のクリーンじゃない翼となって対策が行われる。
Flap-effect_b

左のグラフは、フラップの下げ角による揚力係数の変化を模式的に表している。

揚力に付随する抵抗係数も示すべきだが具体的に比較表記できるような情報はなかった。

とはいえ、揚力が増えれば抵抗も増えることは想像できる。 揚抗比は小さくなりピークは左によることになる。

とにかく CL max が大きくなれば、浮揚速度となる Vst を遅くできる。 増えた CD はエンジンの離昇出力で賄うことになる。 

単純なフラップを採用していた コメット DH.106 の離陸時の事故の遠因はエンジンの出力不足にもあった。 したがい、抵抗係数を少しでも小さくするためフラップの下げ角を小さくすることになる。

いっぽう、着陸時には下げ角を最大にした大きな抵抗係数と揚力係数を利用してより低い Vst を享受でき、しかも機体を滑走路に平行にして浮揚できることになる。

しかし、災いもあるようで地面効果と相まってなかなか接地できないという人為的な事故もあったようだ。 

これも第二世代ではスポイラーというあまりクリーンじゃないメカニズムが採用される。 当CEO はスポイラーよりお尻が左右に開くエアブレーキのほうが好きなんだけどねー。 アメリカで乗った フォッカー フェローシップ は下降時には脚を下さずに開いていたようだったけど。

後縁側のフラップで揚力勾配を変えずに CL max を増やし零揚力角 α0 をマイナス側に移動させ失速角 αst を小さくする手段を手に入れた。

そして、 α0 も 変えずに CL max を増やすには、ということでは(前縁)スラットがあった。

Slat-effect-rev1

スラットは、前縁を少し前下方にずらして、翼の下面で塞き止められた高圧を上翼面側に逃がす流路を開ける機構であります。 

高圧側から低圧側に狭い通路を通って流れるので高速で流れる翼上面の流速より早く、粘性で翼面に引きずられて相対的に速度の遅い上翼面の境界層に運動エネルギーを補充することで剥離を抑えて、失速角 αst を増して CL max を増加させる。

右のグラフのように、基本となった翼型の α0 も揚力勾配を変えずに CL max を増加させるのだが、図にはないけれど副作用として CD も増加する。

スラット自体は第二次大戦前には知られていた。 有名なところでは STOL 性能が要求される前線の偵察もしくは指揮連絡用途の フィーゼラー Fi 156 シュトルヒ(初飛行 1936)がある・・・と、書くと 日本国際航空工業 三式指揮連絡機 キ ‐ 76(同 1941)を挙げとかないと納まらない人もいるようだ。 

いずれも主脚の可動ストロークの長いテール・ドラッガーで主翼のほぼ全長にわたる固定式の前縁スラットを備えていた。

前縁スラットの機能を活かすには翼の迎角を大きくすることになる。したがい、機体の姿勢も上向きになり滑走路の視認性など不都合が生じる。

一般的には、前縁スラットは後縁フラップと併用してフラップ下げ時の見做し取付角を小さくすることで機体の姿勢の上向き角を小さく CL max をさらに増す手法ともいえます。

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以上、第一世代のジェットライナーが採用していた高揚力装置の概要を調べてみた。 

これらから、低速時の離着陸で頻発した デハビランド DH.106 コメット のアクシデントやインシデントなど問題を読み解いてみる予定だけど長くなったので一度インターミッション(休憩)に入らせていただきます。 

再開までの間は、当CEO オフィスが運航する キネマ・エアラインズ でお楽しみください。 

なお、前縁スラットの機能を後縁にあるフラップに応用するとシンプル・フラップに対してスロッテッド・フラップとなり性能は向上します。 コメットの後縁フラップはどちらだったんだろう。調べることは多いなー。

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翼型性能の補足 (重要な閑話休題)

現実の揚力勾配はアスペクト比、翼の平面形状、胴体との干渉などで傾斜が緩やかになり、揚抗比や CL max は風洞実験で作成された性能図より低下します。

当CEO は、「飛行機を知るには平面図、特に下面図を見るのが正しい見方で側面図で『カッコいい』は邪道だ」、言われた記憶があります。 邪道こそ「マニア」のような気もするのですが。

2019年11月13日 (水)

「マックとミー、レガシー・ビジネス始めるってよ」の巻 (3 の 3.1)

「マックとミー、レガシー・ビジネス始めるってよ」の巻(3 の 3)の 第五回 に相当します
例によって数回の連載になりそうです

第一回から第四回までは こちら です

-----------------------------第五回--------------------------------

まず、胴体後部の左右にパイロンを介して双発のジェットエンジンを装備するフランスのシュド・カラベル SE 201 の妹たちの話に分け入って行くと、彼女たちは二つのカテゴリーに分かれる。

一つは乗客が数十人から100席前後の小型ジェット・ライナーと呼ばれるクラスであり、もう一つは乗客が数人ないし十数人のビジネス・ジェットと呼ばれるクラスとなる。

まずは前者、
すなわち既存の(名のある)航空機製造会社が手掛けた商用機から振り返る。

なお、対象は双発に限らず全てのエンジンが後部に集中している機体とします。
したがって、尾部に第2エンジンを備えた 3 発機ではありますが、
老舗の ダグラス DC-10、から始まる MD-11
対抗する新興 ロッキード L-1011
胴体前方の左右に各1発の三発機で可変後退翼の、
アニメ・マニア受けしそうな爆撃機 マーチン XB-51
等は、対象から外します。
除外理由は飛行体としてのレイアウト上の差なのですがいずれ別稿で・・・
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胴体後部にエンジンを集中搭載したジェット旅客機
Jetliner with Tail Mounted Engines

 注記 出所「ジェット旅客機 エアライン イカロスMOOK」 2006.10 pp80 - 81
     年.月 は(色分けした)各機種の運航開始年と最終デリバリー年を示す
     ソ連・中国の機種は英語版Wikipediaの運航開始年と生産終了年で示す
     括弧内は( )エンジン総数 [ ] は通算生産機数(主にWikpediaから)

年 代 フランス イギリス アメリカ オランダ ソビエト/
中国
1958.6 カラベル (2)        
1962 カラベル [279]        
1964.2     727 (3)    
1964.3   トライデント (3)      
1964.4   VC-10 (4)      
1965.4   BAC1-11 (2)      
1965.12     DC-9 (2)    
1967.9         Il-62 (4)
1967   VC-10 [64]      
1968.9         Yak-40 (3)
1968.11       F-28 (2)  
1970.9         Tu-134 (2)
1972.2         Tu-154 (3)
1974.3         Il-62M (4)
1976   トライデント [117]      
1976   BAC1-11 [244]      
1976   ルーマニア
ROMBAC

1-11 (2)
     
1980.10     MD-80 (2)    
1980.12         Yak-42 (3)
1981         Yak-40 [1,011]
1983     727 [1,832]    
1987       F-28 [241]
 
1988.3       F-100 (2)
 
1989         Tu-134 [852]
1993   ROMBAC
1-11 [11?]
     
1995.3       F-70 (2)  
1995.4     MD-90 (2)    
1995         Il-62 /M
[94/193]
1997       F-100 [283]  
1998       F-70 [47]  
1999.10     717 (2)    
2000     DC9-MD90
[2,283]
   
2003         Yak-42 [185]
2006     717 [156]    
2013         Tu154 [1,026]
2015.11         中国
ARJ21 (2)
As off 2019         ARJ21[19/135]

   (年表の『年代』は10年単位での色分けしている)

 ROMBAC 1-11 はルーマニア製の BAC 1-11
 ARJ21中国商用飛機公司が製造するノックダウン生産の経験がある MD-80 系の改設計機種。 ウクライナのアントノフの協力による主翼の刷新、アビオニクス関連では欧米諸社の支援などによる。
 MD-8090 等はマクダネル・ダグラス社での DC-9 系の呼称。
 717ボーイング傘下での MD-95 の呼称

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長女となるシュド・アビアシオンカラベルは就航から製造終了までを短期間に終えたがアメリカを含む諸外国に食い込み、中短距離ジェットライナーがビジネスになることを証明した。 

フランスで次に計画されたのはリア・マウントではなく申し訳程度のパイロンにエンジン・ポッドを主翼にぶら下げて先行していたボーイング 737 よりはわずかに大型でパイロンの存在がわかる マルセル・ダッソーメルキュールであった。

試作と生産の合計12機がフランスの国内航空会社のみで運用されただけで結果的には失敗機に入るのだが、後に 737 の唯一のライバルとなっているフランスが主導したエアバス A-320 の原型ともいえる。

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イギリスはテール・マウンテッド・エンジン・シスターズのステージ・ショウとなった。 上の表では機名の通称と就航年を示したが以下ではメーカー名を添えて(開発開始 - 初飛行)年を示します。

3 発 の トライデント (1958 - 1962.1 )は、デ・ハビランド DH.121 として計画されたが 1962 年に ホーカー・シドレー に吸収されて HS.121 として初飛行した。

開発時点ではユーザーとなる航空会社より同じコンセプトのボーイング 727 (1956 - 1963.2 )との共同開発も提案されたが自国エンジンのこだわりから成立しなかったようだ。 正面図で見ると胴体の断面構造とそれにつながる翼根の構造は 727 に分がありそうだ。

4 発 の ビッカース VC-10 (1957 - 1962.7)はソビエトが(諜報組織によって非合法な手段で入手した資料をもとに) イリューシン Il - 62 (1962 - 1963.1)をほぼ 1 年(足らず)のタイムラグで追従し従姉妹より長生きだった。

この当時、英国ではマルクス主義のシンパは高等教育を受けた知識層にも浸透していたため、重要な情報の漏洩が続き、軟派の I. フレミング(の 007 こと J.ボンド)や、現在にも続く硬派の J. ル・カレ(の G.スマイリーe.t.c)などスパイ小説の傑作を生む背景となった時代でありました。
VC-10 にも Il 62 にも関係ないが、ル・カレは「寒い国から帰ってきたスパイ(1963)」が有名。 映画では「寒い国から帰ったスパイ(1965)、「寒い国」は東ドイツだけど西側の飛行機しか出てこなかったような記憶が・・(閑話休題)

いずれにせよ、4 発エンジンの配置では、アメリカが進める揚力で主翼の強度部材に生じる曲げモーメントや回転モーメントに対し、主翼にぶら下げる分散配置でエンジンの重量をバランスウェイトにすることで軽減して、主桁のたわみ構造など構造重量の軽量化に寄与するコンセプトがデファクト・スタンダードとなる。

その前に、後部4発の配置は、この時代から始まる燃費の向上や騒音など環境性能との引き換えにエンジン外径の増加を招く高バイパス比化がなされていくターボファン・ジェットの装着には決定的に不利なレイアウトだった。

さて、・・・

発 の BAC 1-11(1956 - 1963)は、あまり聞いたことのない ハンチング・エアクラフトH-107 として計画されたのだが、同様の計画を進めていたビッカース社と他の2社(ブリストルイングリッシュ・エレクトリック)とともに合併し、1960年に BACブリティッシュ・エアクラフト・コーポレーション)となり型式名は BAC 1 と新会社名を名乗ることになる。 なお、 - 11イレブン)がくっ付いたのは名門ビッカースの開発していた同様の機体が VC-11 だったから、かなぁ??

ハンチング・エアクラフトHunting Aircraft)は、戦前から練習機など小型機を手掛けていたメーカーだった パーシバル・エアクラフト が源流。 1954年に燃料油脂事業のハンチング・グループに入り、ハンチング - パーシバル・エアクラフトを経て1957年に パーシバル の名は消えた。 1960年には BAC に吸収されて、ハンチング ‐ パーシバル 時代のジェット練習機 ジェット・プロヴォスト T-1T-5 にまで発展させている。

戦前のパーシバル・プロクター(1939)は、当キネマ航空 フライト 003 で上映中の「マッケンジー脱出作戦」に登場している。 ちなみに、パーシバル 時代の機名には初期はカモメの仲間から、プロクターあたりから教職者や聖職者の役職名を用いている。(閑話休題)

さて、この BAC 1-11バック・ワン・イレブン)は英国製の商用機としてはまあ成功したと言っていいのだが、試作機の試験期間にディープ・ストールと呼ばれるT字尾翼機特有の墜落事故を起こすことになる。

イギリス編はここで終わるのだが年表で見るように1960年代に就航させた3機種は1970年代には開発費を十分に回収することなく生産を終えている。

もちろん機体の運航は続いているが1977年には航空機産業の国営化にともない BACスコティッシュ・アビエーション ホーカー・シドレー・グループ とあわせて BAe (ブリティッシュ・エアロスペース)に統合された。

なお、BAC の時代にフランスのアエロスパシャルとの国家間共同開発によるコンコルド(フランス名では コンコード)を完成させている。

BAe は国営企業として銃器、弾薬、軍用車両会社に加えて自動車のローバー・グループなどを傘下に収めたが民生部門は順次分離や売却を進めて1999年には、航空・宇宙・海洋、国防、情報・セキュリティに特化した BAE システムズとなった。 

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さて、オランダもテールが左右に展開するエア・ブレーキのフォッカー F-28 の系譜が踏ん張ったが、中距離ジェットライナーでは 727 と DC-9 でアメリカが覇者となり、やがては大型機を真似たのだが主翼の下に中途半端にくっ付けた双発の 737 が取って代わって肥大化して行く。

ソビエトは、独自性を注ぎ込んだとしても、はじめは英国、次には米国のコピー、中身を伴わない物まね、と言われようが、閉鎖された東側経済の中では西側に対抗できていた。

そして中国はソビエトの技術協力もしくはコピーのコピーによる勉強の時代だったといったところだろう。 このあたりの経緯は省略する。 

その中で特記できるのはソビエトの Yak-40 である。

このころのイギリスは多彩な計画機を模索しており、その中の情報をこっそりいただいた可能性も考えられるが、乗客数30人程度の高速性能はほどほどにして扱いやすい直線翼と冗長性を兼ねた運航の安定性で採用した3発テールマウントに加えて APU (補助動力装置)やエアステアカラベル 727にも見られた備え付けのタラップ)を備えたコンセプトはノーマンズランドであるタイガやツンドラの中に点在する極寒地の地方空港を結ぶインフラとして考えうる機能をきちんと備えていたといえる。

本機は、当キネマ航空 フライト 006 で上映中の「 747 エア・ターゲット」に登場している。 ただ、同じ後部 3 発のダッソー・ファルコン 50 のスタンドインで、ですけどね・・・(キネマ航空のコマーシャルでした)

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カラベルが目指した、ミッドレンジ(中距離)・ジェットライナーからリージョナル(地域的)・ジェットへ、つまり汎用から目的限定への可能性を示唆したのは Yak-40 であったと言える・・・まあ、一部の航空マニアや専門家からは否定されるかもしれないけれど・・・

日本の航空機フリークは零戦を持ち出すまでもなく自国の技術を神聖化する傾向が強いが、技術の「要」は、使えたかどうか(の過去)、ではなく、使えるかどうか(の未来)、であるだろう。

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以上の年表は第一世代のジェットライナーの一角を構成する一形態の機種をまとめています。 一つの世代の航空機は、ほぼ20年周期でその世代の盛衰を経て、ある企業は消滅し、ある企業は次世代機種の進空とそれに準じた既存機種の更新で生きながらえるようです。 

英国で見ると 1960 年代に製造が始まり 1970 年代で航空機産業自体が合従連衡のなかで民生用途の製造業種としての一生を終えている。 そして産業自体が国有化という手法で集約されることになる。

以降の英国で開発製造されたジェットライナーは低騒音と STOL 性能に特化した(都市空港向け)高翼4発(1973年 ホーカー・シドレー 時代に計画された HS.146 がベース)の BAe 146 (1978 - 1981 -2001 には BAE の時代となっており アブロ RJ として生産終了 )のみであります。こちらは、20 年間で 387 [221/166]機を市場に送り出した。

アブロ社が復活したわけではなく暖簾としての名跡利用でした。 あの アブロ 683 ランカスター698 バルカン などで英国人にとっては勝利した戦争記憶に残るメーカーでした

きしくも英国が航空機産業をあげてジェットライナーによる空への覇権を目指す挑戦とその限界を露呈した時代を、日本はコンベンショナルな低翼のターボプロップ双発の YS-11 で共にしていたことになる。

YS-11 の初飛行は 1962年、生産終了は 1973年、ほぼ半分の10年間で終わった生産機数は 182機でした。 上の年表に入れ込んでみてね。

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需要が見込めるから開発されるリージョナルジェットとは言え、
技術史を語るには、

本来ならば、大洋を超える大型ジェットライナーの覇権争い、
さらには
国有化から外れた中小の航空機メーカーや国策支援を取り付けたライバル企業など
各国の思惑によるターボプロップ機の開発競争に続いて目論む
ジェットライナーへの参入へも視線を配るべきだが

天邪鬼の当CEO は、

次回は「翼はクリーンじゃダメなのか!」と題して英米の技術競争のなかに
分け入ってみよう。

 

2019年8月 4日 (日)

「マックとミー、レガシー・ビジネス始めるってよ」の巻 (3 の 3)

(3 の 2)から続く。

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キネマ・エアラインズのお客様と当CEO オフィスにご来訪を頂いております皆様に、暑中のお見舞いとご健勝祈願のご挨拶をお送り申し上げます。

なお、合わせましてエアコンなしで営業中の当キネマ航空 CEO オフィスより、継続中の記事の分割掲載のご案内をお知らせ致します。

弊社CEO はこのところ、歳とともに生来の暑がりがひどくなり、おまけに怠け癖も再発して、従来のように一気呵成に書き上げる気力も失せたようであります。

このため少しずつでも書き継ぐように説得いたし、ようやく第一回分の出稿にこぎつけました。 ぜひ、ご継読を賜れますようお願い申し上げます。 

よって、追加出稿があり次第、下記に追記にてご案内いたします。 ご寛容の上、何卒宜しくお願い致します。 

                             2019/08/04 キネマ航空  広報担当 敬白


第一回 出稿 2019/08/04
第二回 出稿 2019/08/05
第三回 出稿 2019/09/30 
第四回 2019/10/13 Latest !!
第五回 以降は(3.1)と項を改めて継続します

「アー!しっかり仕事をしてくださいね! せめて予定ぐらいは・・・」
「うるさい !! CEO ファースト、社員は居らんからお客様 セカンドじゃ !!」
「政治家ども!有権者ファーストなら、裏金歓迎
大口献金セカンドぐらいはハッキリせい !!

-----------------------------第一回--------------------------------

先々回(3 の 1)で MRJ90 もとい、 M90 をふくむ三菱・スペースジェット M100 シリーズ が世界最小胴体径の商業機シリーズになったと書いたが次の指摘があった。

エンブラエル ERJ 145 シリーズ(乗員/乗客 2+1/37-50 胴体径 7'6"/2.29m 座席配列 1+2)は2003年に哈爾浜航空工業集団(当時)との合弁によるコンプリート・ノックダウンで中国に移管し2016年に生産を終了した模様。 

しかし、本国ブラジルでは派生機種のビジネスジェット エンブラエル レガシー 600 シリーズ、加えて輸出市場を含み10か国で運用中の軍用途としての ERJ シリーズの保守と受注体制を保持している。
すなわち、ボーイング傘下の位置付けは不明だが商業機としてのステータスは維持しているようだ。

詰まるところ、MSJ M100 シリーズ (乗員/乗客 2+2/69-88 胴体径 9'8.5"/2.96m 座席配列 2+2 )に相対する ERJ 145 シリーズ(胴体径 2.29m 座席配列 1+2)となる。

室内幅ではないがクラスの標準的な通路幅18”(0.457m)を差し引いた配分は 0.625m/席 対 0.611m/席 の比較ともなる(正確には、胴体外殻構造物寸法 = 胴体幅 - 室内幅、を含んでいる)
M100 シリーズは座席をヘリングボーン式に配置してシート幅に余裕を持たせるそうだ。

したがい、当CEOオフィス の記事は、座席配置 2 + 2 とした定義では、と書き換えなければならないようだ。

もちろん「大は小を兼ねる」とも「小よく大を制す」ともいえる。
新規開発の工業製品の宿命としてチーフ・エンジニアの見識とカスタマーの要求という時代の錯綜(ニーズとシーズのタイムラグ)の中で決まる商品価値でもある。 評価の確定している製品では企業運営のマネージメントの識見でもある。

いずれにせよ M100シリーズ についてもサポートサービスの契約を交わしている ボーイング(-ボンバルディア・グループ)は MAC の背後を押さえる航空ビジネス全般の比較論点が明確なカードをすでに押さえていると言える。

これに対して MHI-MAC チーム は座席配置 2 + 2 での最小胴体径商業機であった ボンバルディア CRJ シリーズ の事業を継承した。 この辺りから考えてみたい。

-----------------------------第ニ回--------------------------------

その前にリージョナル・ジェットの基本構造について考えておく。

一般的に三次元の相似形状の均質な物体は基準となる長さを倍尺で 2 倍すると面積は二乗で 4 倍、重量の指標となる体積は三乗で 8 倍となるので2 倍に拡大した航空機の翼面荷重は 2 倍となる。
すなわち、飛行機ファンにはお馴染みの二乗三乗則 である。

つまり翼面積をさらに 2 倍するか速度を 2 の平方根の 1,414 倍にしないと同じ滑走路長で離陸できない。 
翼面積を拡張すれば自重は増えその分エンジンの出力を上げればさらに増えるので離陸滑走距離と離陸速度のバランスで折り合わせることになる。

では、縮尺して長さを半分 1/2 倍にすると面積は 1/4 倍、質量は 1/8 倍したがい翼面荷重は 1/2 倍となる。

原型となるジェットライナーより出遅れた小型のリージョナル・ジェットは原型より有利になるかと言えば、そうはならない。

縮尺を 1/2 にして翼面荷重が 1/2 になっても、推力の元となるジェット・エンジンの空気取入口面積(レシプロエンジンならプロペラ回転面積)は 1/4 倍であり滑走距離は伸びるし最高速度も低下する。

小型になるほどエンジン本体とそれに関係する機体の構造部品は系統的に二乗三乗則 から外れて機体重量は相対的に重くなってゆく。

大型機では主に主翼の剛性を低下させる撓み翼とぶら下げたエンジンポットを揚力や空力回転モーメントのカウンターバランスウェイトにして構造重量の低減が行われて二乗三乗則 に近づけることができたが小型機ではそうそう うまくはゆかない。

リージョナルジェットでは主翼をできるだけクリーンにして性能を高めてそれを維持できる剛性を持つ主翼構造を採用することになる。
さらに言ってしまえばボーディング・ブリッジなどない(当時は大空港にもなかった)ドサ回りの地方空港巡りをする機体なので移動式のタラップなど使わず乗降できる機体内蔵タラップ(エアステア)も必須であった。

次回はこうした要件で開発されたリージョナル・ジェット前史を振り返ってみたい。

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どーせ、シュド・カラベルから始まるんでしょ。 でも、この調子で三回目もお願いしますよ。
いちいち五月蠅い ! じゃが外せんじゃろな。
それに予定は未定じゃない!不明のままじゃ !!
このクソ暑いさなかにエアコンのない CEO オフィスに来る客はいないじゃろが。

そりゃそうだけど、増便もしていない 本業 のほうは大丈夫ですかねー。
確かに心配じゃが雑用が多すぎるわい。
そう言や キネマ航空博物館 も展示を増やさないとな。

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「そうこうしている内に残暑お見舞いになっちゃったな」
「残暑 残暑 何残暑 酷残暑 なんちゃって !」

「昭和中期じゃあるまいし『なんざんしょ こくざんしょ』なんて誰も笑えませんよ」
「少しは涼しくなるかと思ったんじゃが、『昭和も遠くなりにけり』、かのぉ」

-----------------------------第三回--------------------------------

いわゆるリージョナル・ジェットの先駆けといわれるシュド SE 210 カラベルデ・ハビランド DH106 コメットの胴体部を基本にしていることはよく知られている。 そこで、両機種の年代記を一覧にしてみる。 まずコメット(二代目)の出自から・・・

年 . 月 デ・ハビランド DH106 コメット シュド SE 210 カラベル
1943.2 コメット(二代目)の名は戦時下のブラバゾン委員会が戦後の航空機産業に向けて策定したプラン4のジェット輸送機の中に概案  
1946.9 当初は郵便機として計画されたが旅客機に仕様変更  
1949.7 初飛行  
1951.1 BOACコメット Mk.1 就航 仏航空局の国産短中距離ジェット旅客機要求仕様を公開
1952.3   シュド・エストの双発リアマウント案 SNACASE X-210 を選定
1952.5   政府の開発援助を得てSE-210 となる SE は シュド・エスト から
1952.10 BOAC Mk. I #9 ローマ・チャンピーノ空港離陸時オーバーランにより全損 軽傷者 2 名  
1953.2   SE-210 試作機製造開始、まずは購入したコメット I の胴体からコックピットを分離するところから
1953.3 カナダ太平洋航空向け Mk. IA #2 のフェリー中にパキスタン・カラチ空港離陸時オーバーラン火災全損
BOACの運航要員 5名、D.H. のエンジニア 6名 全員死亡
 
1953.5 BOAC783 Mk. I #8 カルカッタ空港離陸時、落雷(未断定)により墜落、乗員乗客 43 名全員死亡  
1953.6   フランス UTA航空コメット Mk.IA 通算#19 ダカール空港でオーバーラン(機体損傷のみ)
1953.8   エール・フランスコメット Mk.I の運航開始
1954.1.10 BOAC781 Mk. I #3 イタリア西部の地中海上空で爆発
耐空証明取り消し
BOAC は全機の運航停止し本国へ廻航したが異常は発見できず燃料系電気系の強化と煙感知器追加と乗員訓練を実施
 
1954.3 耐空証明を再発行  
1954.4.8 SAA(南アフリカ航空)201 Mk. I #? イタリア西部の地中海上空で爆発
9 日、耐空証明の再取消し
BOAC からのリース機であった SAA201 の機体は深海にあるため BOAC781 の残骸を回収して原因追及

エール・フランスコメット Mk.1 の運航を停止、以降の再開はなかった

1954.4 チャーチル首相の指示による国を挙げた事故調査結果の検証となる水槽に沈めた実機の胴体に対する繰返し加圧実験などの設備建造を開始  
1954.5.29 水槽の完成  
1954.6.24 客室中央部外郭板の窓枠取付部の角から亀裂が発生し、短時間で胴体の断面形状を形成するフレーム(構造部材)に達するとフレームに沿って上下に伸展し胴体を輪切り状態にしてゆく疲労破壊の開始点を確認  
1954.8.28 回収された前部胴体の上部にあった自動方向探知機取付部に同様の亀裂があり疲労破壊の仮説は実証された  
1954.10 最終事故報告書に向けての審問を開始  
1955.2 機体設計上の欠陥による金属疲労と断定
破壊の進展の追求から設計、構造、材質、試験法など未知であった工学上の知見を得る
 
1955.5   シュド・エスト SE-210 初飛行
1957.3   シュド・エストシュド・ウエスト の合併で シュド・アビアシオン に社名を変更
1958.8   シュド・カラベル I (1.4m のストレッチ)就航
1958.9 最終型式となる コメット Mk.IV のデリバリー開始  
1959 ホーカー・シドレー による買収で
デ・ハビランド は消滅
 
1964 ホーカー・シドレー・コメット Mk.IV で生産終了  
1972   シュド・カラベル 12 で生産終了
生産機数 162 (内 Mk.IV74 279
運用終了 1982年まで民間で運用されていた
1967年より2011年まで英空軍が派生機種の対潜哨戒機 BAE ニムロッド を 運用
21世紀初頭 まで運用されたようだ

 カラベルはコメットの就航と同じ年に開発が始まり1972年に製造を終了したがその生産数は1.7倍であった。 

 おそらくシュド・エストの設計案に国外の胴体とエンジンの選定が含まれていたのだろう。 シュド・エストの細部設計はコメット Mk.I の路線就航の翌年となる設計案選定(1952.3)から始まり初飛行まで38か月(3年2か月)かかった。

 カラベルの機体がコメットをベースにして開発されたのは、英連邦以外で海外からの筆頭発注元だったエール・フランスのコックピット共通化への意向が強かったことと英国の見返り販売政策がかみ合ったこともあった。 

 また、要求仕様書にあった自国で開発したジェット・エンジンである スネクマ アターの出力と運用実績の不足から採用を見送り、ロールス・ロイス エイヴォン を採用するなど、工学に関係する機体やエンジンは輸入であろうと実績を優先させて採用する官民の国家プロジェクトの運営に注目したい。

 その代わり、それを統合する後部胴体マウントの双発エンジンのコンセプトは多くのフォローワーを生み莫大な特許収入を得ることになる。

 後部3発エンジンもここから生まれたと言ってもよいだろう。 さらに、多分、特許料は支払ったと思うが、何を考えたのか英国の ヴィッカース VC-10 それに続くソビエト連邦の イリューシン IL-62 などの四発胴体後部マウントでは、米国で台頭した技術を決定的に見誤ってしまっていた。 この辺りは次回に回すことにして・・・(閑話休題)

 さて、カラベルは、設計開始の翌年にインドでの コメットMk.I の原因不明の墜落。 さらにその翌年、地中海上空での連続空中爆発に対処を迫られることになる。 

 大がかりな実験を伴う英国の最終報告書はカラベルの初飛行の3か月前であったが、英仏間で原因の推定は共有されており、実験開始の段階での知見・・・すなわち、約1年前の、

「与圧による機体の膨張の繰り返しによる客室窓枠角部を取り付ける外板の開口部の角の丸みが小さいため応力集中係数が大きくなり、疲労破壊から始まる亀裂の連鎖が高空の室内外の気圧差によって胴体被殻の強度限界を越えて爆発した」というストーリィ(実機を使った実験の前提仮説)で改設計を始めていたと考えられる。

 そして、カラベル I の胴体を英国と同様の水槽に沈めて繰り返し加圧実験を実施している。

 具体的な対策には外観部品となる窓枠の角部の丸みを大きくして外殻を構成する外板の厚さを増す方法が取られた。 一連の事故と対策はWEB上にあるので閲覧できます。 

 カラベルの窓は角を丸めた三角形状の独特な窓を採用した。 少なくとも応力集中を起こす個所は一つ少ないという論理的結論なのか、いかにもフランスらしい美的感覚であります。

 コメットは角の丸みの大きい長方形で横長の窓を採用した。 中にはイギリスらしくラグビーボール状の窓もある。 これなら応力集中部は2個所となっている。 まあ競争しているわけでもないだろうが飛行機で見るお国柄は楽しい。

 それと同時に、顔のよく似た二つの機種はそれぞれの政府の指導と強固な意思のもとに計画されビジネスとは別に工学的な貢献を果たしたといえる。

 ひるがえって、一国だけの技術で航空機の機体とエンジンを創ることのできる国は数少ない時代の中で、ゼロ戦 にしか結び付けられない国民的幻想に支えられた、「我が日本の悲願の国産機を ! 」の政府機関の立案と構想、を民間に丸投げされたMRJミツビシ・リージョナル・ジェット)いや MSJミツビシ・スペース・ジェットが問われるのは、『ビジネスだけを目的とした』のか、になるのであろう。

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何とか第四回につなげたのう
次回はリージョナル・ジェットの先陣を担った CRJ に迫りたいが
それまでの歴史で前置きが長くなりそうじゃから第五回から独立させるかのう ? !

どうぞ、ご自由に ! でも、お客様ファーストの CEO でお願いしますよ !!

-----------------------------第四回--------------------------------

先行する英国のコメットとそれを追う仏国のカラベルの主要諸元の変化の追跡です。

機体名称 デ・ハビランド DH106 コメット シュド SE 210 カラベル
機体型式 Mk.I Mk.IVc I 12
生産機数 11 28 20 12
初飛行 1949 1959 1958 1970
乗員/乗客 4 /36 4/79 2-3/90 2-3/128-131
航続距離(km) 2,415 6,900 1,650 3,200
巡行速度
(km/h)
725 840 746 810
最大離陸重量
(kgf)
47,620 73,480 43,500 58,000
全長(m) 28 33.99 32.01 36.24
全翼幅(m) 35.05 35.05 34.30 34.30
翼面積(m2 187.2 197.0 146.7 146.7
アスペクト比 6.54 6.21 8.02 8.02
翼面荷重
(Kgf/m2
254.4 373.0 296.5 395.4
エンジン型式 ハルフォード H2
ゴウスト 50
RR エイボン
Mk.524
RR エイボン
Mk.522
P&W
JT8D-9
最大推力(kN) 22.2 46.7 46.75 64.50
搭載数 x4 x4 x2 x2
推力重量比 0.190 0.313 0.219 0.227

各々の機種には型式の変遷があり、表記は初号機と最終生産機の型式
その間にはより優れた性能を示す型式もあるが省略した

注 1) カラベル I の(翼面積)の値は推定。 
注 2) 推力重量比は物理単位 [kN ] 、工学単位 [kgf] を整合させるため次式を用いる。
    推力重量比 =(最大推力 kN x 搭載数)/(最大離陸重量 kgf x 0.0098)

翼について両機を比較するとアスペクト比に大きな差がある。 コメットの全翼長(ウイング・スパン)を変えずに翼弦長(コード・レングス)を長くして翼面積を拡大しているようだ。

翼面荷重については、初期と後期においては両機とも似たような変化をだどっている。胴体を伸ばして座席数、航続距離の維持または増加のための燃料槽の増設で最大離陸重量(MTOW)の増加を招き、離陸速度や巡行速度などの維持のためにはエンジンの推力増加も必要になる。

推力重量比(スラスト ウェイト レシオ Thrust Weight Ratio を短縮した TWR だが)当面「推重比」と呼ぶことにして、この値がエンジンと機体の適合性の指標になる。

この比は無次元であるが、基本となる推力(スラスト)の単位は物理単位で m kg の質量に α m/s2 の 加速度を乗じた数字で表した力 αm の単位[N (= kgm/s2)]であります。

いっぽうの機体の重量(ウエイト)は工学単位(と、言ってもお肉屋さんでキロ・グラムまたはグラム当たりでハウ・マッチ、と使われる単位と同じ)の、重量またはバネばかりを引っ張ったり押したりする「力」を示す単位[kgf]であります。

中でも、重量としての [kgf] を簡単に言えば、その物体の質量 m に地球上の重力加速度 g を乗じた値を重量計で測った値であり、無重力になれば 0 kgf になる単位でもあります。

地球上と言っても量る場所によって重力加速度は異なる。 肉の値段も変わる。 そこで、1kgf = 9.8N と換算の定義をしています。 面倒くさいですね。

つまり、 物理学単位の 1 N1 kg の質量に 1 m/s2 の加速度を与える力と定義されています。

「つまり」の二乗でとどのつまり、地表では 1 kg の質量に 9.8 m/s2= 1 Gの重力加速度がかかっており 9.8 N の力で手のひらを押し、これを 1 kgf (キログラム・フォースの略)と工学単位の力で呼ぶのだが、この力をお肉屋さんの秤で測れば、単に 1 kg の重さ、と呼ばれていることになる。 繰り返すと9.8ニュートン(N)= 1重量キログラム (kgf) であります。

中には丁寧に 1 kgw または 1 キログラム1 キログラム・ウェイトまたは 1 キログラム・じゅう)と呼び分けている理工学部出身のお肉屋さんもいる・・・のかなあ ?! 。 (”お久しぶりね”の閑話休題)

したがい、本題の kN 単位に換算して算出した「推重比」は「そのエンジンの総推力がその機体に与えた加速度と重力加速度との比」、通常X G と呼ばれる値を示している、といえます。

「とどのつまり」が煮詰まって、推重比1 G を超えれば機体を垂直に持ち上げることができ、ヘリコVTOL には必須の条件であります。 が、1 G 以下でも加速はでき、翼面積と速度の二乗の積に比例する揚力で飛び上がれる。 もちろん離陸速度に到達でき、かつそのための滑走路長があれば、の話であります。

以上を頭の隅っこに入れて欧州のジェット・ライナーの創成期の推重比から振り返ると一般的な離陸時の機体の加速度は 0.2 G 前後、コメット IV では 0.3 G を超えたようである。

なお、飛行機の加速度が大きければすべてよし!というわけではない、中にいるのは人間です。 人間は宇宙へ重力加速度から抜け出すために犬や猿で実験をしていました。 そういえば同じ脊椎動物なのに雉がいなかったのはどうしてだろう。  

では、この時代の終わりに台頭してきたアメリカの代表機種の基礎となるボーイング 707-120 と比較すると、翼幅 39.88 m、アスペクト比 7.1 より翼面積は 224.0 m2翼面荷重は 511.3 kgf/m2 と数値はやや大きいが、推重比は乾燥状態で 0.175 G 水噴射で 0.201 G だった。(ちなみに開発開始は 1952 年コメットのそれより 6 年後、初飛行は 1958.11 で、コメットより 9 年、カラベルより 3 年遅れていた)

推重比は四発機の コメット I と大差ないが航空ビジネスの基本仕様となる乗員/乗客は 3/179 名、最高速度 997 km/h、航続距離 7,480 kmと卓越していた。

ここでちょっとだけこだわれば、ただ一機だけ製作されて後年の世界の大型ジェットライナーのデファクト・スタンダードに成長する原型となった 367-80 通称  - 80ダッシュ エイティ)の設計開始も 1952 年、初飛行は 1954 年。 それぞれ、コメットの原型の初飛行の 3 年後、5 年後と出遅れていた。

この -80B- 52 とペアで行動する空中給油機 KC - 135 (運用開始 1957)になり、続けて輸送機 C 135 (物資輸送では地上作業や空中投下には不向きで短命だった)から電子戦や電子偵察用途の EC -135RC -135 (のちの民間旅客機から改造のテストベッド ? になった)などへ KC - 135 とともに一部が改装されました。

その一方で、少し時間をさかのぼれば、民間機の 377 ストラト・クルーザー で失敗していたボーイングは、軍用途として先行していた航続距離の長い核兵器搭載型戦略爆撃機 B - 47B -52 の経験と両爆撃機のビジネス利益を原資とする民間機の自社開発に向けての決断があった。 ちなみに、何度か出てきた1952 年B - 52 が初飛行をした年でもありました。

707 はエアライナー向けに胴体直径を - 80 より少し( 0.15 m)太くして(主翼基部にかけての翼弦長の変化が大きいなど細部の違いはいくつかある)開発を始めたのだが、並行して進められていた  - 80 より初飛行が遅れたのは軍と民の要求仕様の差とも、もともと仕様が分かれたのは軍用と民需を同じ製造ラインで組み立てることを空軍が嫌ったためとも、と言われている。

ただ、時系列で振り返れば 707 の開発にはコメットが残したレガシーに負うところもあった、といえる。

さて、この当時は、まだ燃料消費量がどうの、という時代ではありませんでした。 アメリカは長大な滑走路を持つ空港の展開を含めてジェットライナーのシステムを視野に入れていたとも、それを実行できる覇権を握っていたともいえる、航空の時代の幕開けでした。

詰まるところ、この時代はジェット・エンジンの黎明の時代でもありました。 ここで上げた民間機で機種で次の時代を担うターボファン・ジェットを採用していたのは カラベル 12ボーイング 707-120 でありました。

同じく軍用途では B-52 H から 1960 年にターボファンに改装され、バディのほうは KC-135 E として 1982 年から換装が始まります。

そうそう、フランス政府が自国で開発したジェット・エンジンの スネクマ・アター を断念したのは その推力が 2,722 Kgf だったことにあります。 双発時の推重比にすると 0.125 となります。 したがい、仏航空局のコンペには 5 発機の提案もあったそうな。

ちなみにアターの 3 発案では推重比は 0.187 となりますからコメット Mk. I と同等になりますが、信頼性の面で RR エイボン Mk. 522 双発の採用を決断しました。 意地を通して 3 発で開発を進めたらビジネス・ジェットのデファクト・スタンダードの栄誉を逃したことになったはずです。 フランスらしい合理性の追求と言えなくもないでしょうかね・・・

米国の空の覇権の独占に先んじようと先行していた英国のジェット爆撃機の開発は、当 キネマ航空 010 便 で上映中の「クイーン・コング "Queen Kong"(1976)」にて・・・

米英の旅客機の比較については 当 キネマエアラインズ 900便 で上映中の「予期せぬ出来事 "V.I.P.s"(1963)」のコラムをご参照ください。 また、ボーイング 707 につきましても 同 008便 の「ボーイング・ボーイング "Boeing Boeing"(1965)」にて上映中です。
ご搭乗をお待ちしています。 (キネマエアラインズ のコマーシャルでした)

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なお、フランスはコメットの胴体をそのまま使って角を丸めた三角形の窓枠に変えたのではありませんでした。

英国に胴体ごと無理やり買わされたのかどうかは不明だが、欲しいのはコクピットを収めた機種部であった。 コックピット後端の隔壁部で切り離し、変形した円錐台状の接続部を間に挟んで自前の胴体直径 2.97m (コメットは 3.12m )に滑らかにつなげていた。

カラベルは、のちの型式でこの接続部を使ってコックピットを拡張をしており、機首の形状は初期に比べてわずかに変わっている。

デ・ハビランドは先頭を切ってジェットライナーのコックピットを開発しコメットに取り入れた。 結果としては、計器視認性や操作性は満足できたけれど、飛行関連の計器盤を窓に近づけて前方視界を確保するため操縦席を絞られた機首に押し込めたので狭苦しく、のちにパイロットからのクレームが出ることになる。 また、これまでの計器盤の標準色であった艶消ブラックから艶消グレーに変更するなどの先進性も持ち込んでいた。

いっぽう、カラベルでは飛行関連の計器の配置を幾分変えているが、この当時はエンジン関係の計器はフライト・エンジニア席にあった。 フランスはこちらのノウハウを評価したのだろう。 もちろん艶消しグレーも採用していた。

さらに、ストレッチされたカラベルではコメットの場合と同様に垂直尾翼からつづくドーサルフィンとも言えない背の低い補強材が重心付近まで伸びているなど、どちらの主導かはわからぬが共通したコンセプトを共有している。

胴体直径は違っていても購入した胴体の基本構造はしっかりと参考にしているようだ。

カラベルは、後部胴体マウントのエンジン配置に伴いのちのダッソー・ファルコンにも続く水平尾翼と垂直尾翼の構成を十字型にしたこと、 その尾翼に後退翼(垂直尾翼は三角翼だったが)を採用したことがコメットとの大きな違いであった。

この時代は、エンジニアの発想を実現させる努力と工夫が相互に検証と補完がなされて後世に多くの遺産を残す、あるいは残せる時代であって、「真似した、された」からだけでは当を得た批評とは言えない。

しかし、事故との引き替えで安全を構築する時代など終わったはずの手法で開発されたエアバスのフライバイワイヤ、そのあとを追うボーイングに見られる 737 N(ext) G(eneration) から続く 737 Max などの暖簾商売のなかに人間の作為(プログラムに組み込まれたアルゴリズム)が危険を招く時代に、入っている、あるいは戻っている、とも思えてくる。

さて、次回は大陸を結ぶ大型ジェットライナーは誰かに任せて中小型の単距離ジェットライナーでリージョナルジェットの前史に迫りたい。

このあたりから鋭意執筆中です。
別稿の第五回に続きます。
ご期待ください!

2019年7月13日 (土)

「マックとミー、レガシー・ビジネス始めるってよ」の巻 (3 の 2)

公開 校閲 校正 中です。不明な点はご連絡ください。
公開 校閲 は 2019.07.15-20:00 に
終了しました。

(3 の 1)から続く

さて、下表は2019年3月に公表された CRJ シリーズ生産状況です。

Bombaldier-crjsiries-status-report-2019_
*印の引き渡し済機数のうち3機は2019会計年度(1 - 12)中に引渡し可能な機数

前回の買収資産のアナウンスの中に債権 1億8千万米ドルがあった。 この表にまとめた CRJ 900 の引渡し済み機数のうちの 3機は 2019会計年度内に引渡しを完遂することで支払われる契約金額とすれば、1機あたり 6,000万米ドルの売掛金になると思われる。

いっぽう、債務として 2億米ドルを継承した。 これを CRJ 900 の未納51機に対する解約金とすると 1機あたり 392万米ドルとなる。 1機当たりの対完成機単価比では 6.5%なのだがどんなもんだか。

ほかの可能性としては次年度支払いの税金とかレイオフした従業員に対する継続保証義務にかかわる費用などが考えられるがこれもどんなもんだか・・・要するに分からない。

なお、英語版Wikipedia では CRJ 900 1機当たり 4,650万米ドル(2017)となっている。  この時点ではバージョンアップ仕様の CRJ 900NexGenNex t Gen eration)に代わっていたはず。

Wikipedia の数字はベア・ユニット・プライスで、売上金とのおよそ 30%の差額はオプション追加や特注の塗装、艤装に掛かる費用なのかもしれない。 いっぽう、2017年の価格に対する 1機当たりの債務の割合は 8.43%となり先払い契約金と契約期間の金利を含めた違約金として(契約次第ではあるが契約金の前渡しは25%が一般的らしい。先方からの解約ならこの程度で)妥当なのかもしれない。 「・・・かもしれない」ばかりで・・・益々分からない。

物価変動に合わせて値上げを認める買い手もいないだろう。 貨幣単位の明確な英語版Wikipedia の値から 1機当たり売掛単価で換算するとレートは 0.775となりカナダドルの米ドル為替レートに近似している。 アナウンスされた買収金額と付随する債権、債務の単位は米ドルとなっているがカナダの財務諸表から引き写したカナダ・ドルの可能性もある。 こちらはまあ偶然だろう。

ちなみにスペースジェット M90 は2016年(MRJ90)時の価格で 4,730米ドルとなっている。

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MHI と MACCRJ シリーズと呼ばれる事故による全損機を含む 1,953機(*2019年度内に納入する3機を含む)と未納機 51機、計 2004機を継承する。

うち、 CRJ をベースに派生したチャレンジャー800/850 の 33機は、室内空間と内装の豪華さが求められる顧客の規模やステータスを示す(企業/個人用途)コーポレート/クルーザー・ジェット 仕様のようだ。

よくわからないのは、ボンバルディア(旧カナデア)にはジェットライナーCRJ シリーズ のベースとなった ビジネス/パーソナルジェットチャレンジャー シリーズ。 上級シリーズとして CRJ シリーズと同じ胴体断面の カンパニー/プライベート・ジェットグローバル・エクスプレス シリーズがある。 民生用のほかに軍用途に改装された機体も多い。

さらにチャレンジャー 300/350(初飛行 2001)と呼ぶ、別系統の新規開発機種で高速、長距離、低燃料消費を目指すビジネス・ジェットも量産化されている。

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さらに、最初の一滴であったチャレンジャー 600 の基本設計となるリアスター 600 を提案したのは リアジェット ファミリーゲイツ・ラバー社に売却したあとのリア社であった。

リア社そしてゲイツ・リア社の礎となった リアジェット ファミリーボンバルディア・エアロスペース傘下に入っており、現行モデルのリアジェット 70/75 の生産設備を伴う工場はアメリカ合衆国ウィチタにある。 同様に軍用途も多く日本でも採用されている。 なお、チャレンジャー の一部が製造されたこともある。

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一方では航空事業の売却処分も進んでいる。

 ・C シリーズエアバス に売却済(2019)、エアバス A220 と改名(2018)
  (CRJ シリーズスペースジェット、それに E-Jet E2 の下位シリーズより太い胴体で、
  P&Wピュアパワーエンジンを採用 )
 ・カナデアから継承した CL-415 飛行艇は製造権をバイキングエア に売却(2016)
 ・デハビランド・カナダから継承したターボプロップの Q シリーズ も同社に
  製造設備を含め売却(2019)

など航空機部門の事業解体と整理を進めている。

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軍用途の絡むチャレンジャーグローバル・エクスプレスリアジェット の3系統、加えてチャレンジャー 300 系統の小型機部門がどのように分割売却されるのか、継続されるのか、ウィチタ工場を含めて定かではない。

MHIグローバル・エクスプレス シリーズ では初期に機体の設計、製造の一部を分担したことがあった。 しかし、MRJ の事業化の発表の前月(2008.2)に製造契約を破棄した。

表向きはボーイング 787 の開発、製造に注力するためとされるがボンバルディアからの訴訟の背景とも考えられ、これも買収に伴う今後のレガシーの一部になるのかもしれない。

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話しは変わるが、

アビオニクスやコンピュータ支援による飛行を越えて、機体の空力設計やエンジン仕様に合わせて制御するコンピュータに組み込まれたプログラム・フライトという電子化はイノベーションというよりパラダイムの変換というほうが正しいようで、既存の機体を引きずる開発での対応は技術的にも難しいと思われボンバルディアの経営への圧迫もあるようだ。

上手く風に乗ったのはエンジンと機体の * 新規並行開発のホンダジェットであります。 注)* 新規並行開発 : 開発時期は重なっているけれど実質はエンジン先行の開発。

またボーイングは機体構造を一新して第三世代となる 737 Next Generation 世代(初飛行1997.2)の代表的な型式の -800 からターボファンエンジンのバイパス比を大幅に拡大した第4世代の -MAX 8 (同2016.1)への転換ではその陥穽に陥ったように思える

両世代の初飛行から就航までの期間は前者で 10か月、後者では 16か月を要しているが、それでも運航停止に陥っている。

ちなみに第一世代の 737 オリジナル と呼ばれる -100(初飛行 1967.4)と第二世代のクラシックと呼ばれる -300(同 1984.2)への転換でもバイパス比の増加が行われた。 就航までの期間は前者で 10か月、後者でも 10か月以内であった。

さて 、表に戻って CRJ のレガシーについて考えてみる。

以下、近日リリースの(3 / 3)につづく

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2019年7月 9日 (火)

「マックとミー、レガシー・ビジネス始めるってよ」の巻 (3 の 1)

公開 校閲 校正 中です。不明な点はご連絡ください。
校閲修正追加のお知らせ
CRJ の最初の一滴はゲイツ・リアジェット社が立てたリアスター 600 の構想を買い取った・・・は誤りで本文中に赤字で訂正をいたしました。 ご迷惑をおかけいたしました 

マックと言ってもハンバーガーではなく、PC でもなく、ダグラス でもない。 けれど、飛行機には関係がある、(M)ミツビシ・(A)エアクラフト・(C)コーポレーションであり、ミーはケイの(古いね!)バディ、じゃなくてMAC の親会社(M)ミツビシ・(H)ヘビー・(I)インダストリーズ・リミテッドの MHI であります。

2019年6月のパリ-ルブルジェ国際航空宇宙サロン(パリ航空ショー)では FAA の認証取得の途上にある MRJ90 の受注は得られなかったが MAC から次のアナウンスがあった。

営業機種(ブランド)名をミツビシ リージョナル ジェットMRJ)からミツビシ スペースジェットに変更する。

これにより納期を2020年を予定している MRJ90(乗客数 76-92)はミツビシ スペースジェット M90 、開発中の MRJ70(同 65-88)を ミツビシ スペースジェット M100 とする。

変更の理由は「リージョナル」の語感が【狭苦しい】客室を連想させるので「スペーシャス広々としている】」としている。(実機を【…ている】と思わせたいらしい・・・当CEO の見解)

M100 は アメリカのスコープ・クローズ協定くぐりのロングテールとなりそうな機種として2023年にデリバリーを始めるとしている。

なお M100 は胴体のストレッチ・ファミリーで M90 クラス以上もカバーする計画なので M100 でもつじつまはあっているようだ。

サロンでは M100 の室内のモックアップを公開しており北米の某航空会社から 15機の MoU(法的な拘束力のない覚書)を取り交わしたと公表した。(当ブログのビジネス・リストの変更は行いません)

また会期中の 6月25日に、カナダの輸送用機器のコングロマリットであるボンバルディアBBD)傘下のボンバルディア・エアロスペース社の小型航空機「CRJ」事業を買収する交渉を開始したと公表していた親会社の三菱重工業(MHI)が 同事業の買収合意を公表しました。

購入金額 5億5千万米ドル(キャッシュ)で事業に付随する約2億米ドルの債務と約1臆8千万米ドルの債権を継承する契約になる。
ちなみにMHIMAC の累積債務を解消する増資を引受て帳簿上の2019年3月期の決算を黒字に転換させている)

通信社の記事による買収目的は買い替え需要の顧客名簿と整備・保守・修理や改修のノウハウ、および MAC 対するボンバルディエから提訴された業務妨害訴訟の取り下げも含む、とされている。

と、いうことで、普通名詞となった「リージョナル ジェット」の先鞭をつけて30年にわたって牽引してきた CRJ シリーズはたぶん受注残を除き製造ビジネスはクローズされるようだ。

かくして、MRJ いやスペースジェット M シリーズは世界最小直径の胴体を持つエアライン向けジェットライナーとなったのでありました。 焦ったんだろうなー「リージョナル」から「スペース」だなんて。

でも形容詞の「スペーシャス」ならともかく「スペースジェット」と形容名詞にして続けたら、なんだか変だ。

航空機産業の社名の中に使われる「エアロスペース(航空宇宙)」の宇宙【スペース】で空気を燃やすターボファン・「ジェット」かい? まあ、「ジェット」の第一義は【噴流】であり宇宙でも使える! と、いうのだろうけど、下々では空席【スペース】あります「ジェット」・ライナーにならないか?
乗るほうはいいが航空会社は勘弁してほしいんじゃないかなー?

さすがパンピー乗客にやさしい殿様商売の「みつびし」だね。 山田さーん、座布団全部持ってって!

(それにしても認証型式などに使う短縮記号はどうするんだろう、 MS-M100 or MSJ-M100
マニアなら、『いやあ、「マイクロ(M)ソフト(S)」じゃなくて「MSJ」の「ミツビシ・スーパー・ジェット」ですよ! ほら、あの「ゼロ」の「ミツビシ」の』、となるのかもね)

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さて MAC が引き継ぐボンバルディアの CRJ 事業のレガシーはアメリカのリア・ジェット社が商標(リアジェット)を含めたビジネスをゲイツラバー社に売却したあとのリア社が立案した リアスター 600 の基本構想を買い取ったカナデア社で開発されたチャレンジャー 600 (初飛行1978)から始まります。
この後、カナデアゲイツ・リアジェットボンバルディアに買収され、カナデアは消えますが商標の威力でボンバルディア・リアジェットとなります。

ビジネス・ジェットとしてはタラップを併用するドア採用したオーソドックスな構成と構造で、胴体後部の双発ターボファンとT字尾翼でありましたが、ライバルより一回り太い胴体を採用した室内は高い天井の中央通路とその両側に豪華な1列の座席を配置できる乗員2名/客席数最大19名のビジネス/プライベート・ジェットでありました。

余談ながら、当キネマ・エアラインズの Flight 002 で上映中の「華麗なる賭け」と併映のリメイク「トーマス・クラウン・アフェア」にチャレンジャー 604 が登場します。 皆様のご搭乗をお待ちしています。(以上、当キネマ航空のコマーシャル)

この胴体の中に中央通路と頭上に荷物入れのある片側2列の4列座席を配置する小改造と胴体を延長(当然翼面積も拡大)をして操縦2名/客室2-1名の乗員と乗客50名の CRJ100 が1991年に初飛行した。 

なお、 CRJCanadair Regional Jet の頭文字でありました。 でも、この当時カナデアはすでにボンバルディアの傘下に入っていました。
ちなみにエンブラエルERJEmbraer Regional Jet からでした。  MRJ は手堅い命名だったんだね。

そして、ERJ は認証名などには残るが、初号機から、ファミリー名と機種名を E-JetE(基準座席数ベース) に変えた。 MRJ もとい! ミツビシ スペースジェット M シリーズのライバルとなるリニューアル・モデルは E-Jet E2 E-E2 となりブランドの歴史を手堅く直感的に展開している。 MAC に座布団一枚返してもいいかな。(閑話休題)

さて、下表は2019年3月に公表された CRJ シリーズの生産状況です。

近日リリースの(3 の 2)へ続く 

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2018年7月20日 (金)

キネマ航空CEO 『GTF のまとめにかかる』の巻(その 2) と 夏季特集 2 題

公開校正および校閲中です。 キネマ航空CEO (2018/07/20)

 「キネマ航空CEO 『GTF のまとめにかかる』の巻(その 2)」 は、末尾に
 キネマ航空CEO 『GTF をまとめちゃった』の巻を挿入して全三巻で終わりとします。

 巻末に夏季特集として『Honda HF120 とそのライバルたち』 と 『ロールス・ロイスの高バイパス比化について』、 の 2 本を追加しました。後者に訂正加筆を行いました。2018.08.25

 ずいぶん長くなりましたのでクーラーを効かせた部屋でゆっくりとお読みください。

 当CEO は 上記の作業 を除き夏休みに入ります。なお、コメントはお受けいたします。
 皆様もご健勝でお過ごしくださいますよう。
 秋口に当オフィスでまたお会いいたしましょう。

 なお当オフィスが運営する KINEMA AIRLINS はオン・デマンドで終日運行しています。
 皆様の ご搭乗 をお待ちしております。

                                       キネマ航空 CEO  敬白

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(承前)
キネマ航空CEO 『GTF のまとめにかかる』の巻(その 2)

 ターボ・ファンの使命は亜音速の上限を効率よく運行する航空機に最適化または特化したエンジンであります。

 いくらバイパス比を大きくしても低速域ではプロペラの推進効率にはかなわない。

 そこに高速になるほどダクトの抵抗が大きくなるターボ・ファンほどの高速を求めなければターボ・プロップの出番がある・・・のであるが、それはまた別の機会に。

 まず、前回のようにファンとジェットの独立した効率の数値あるいはグラフがあれば、ターボ・ファンの効率の試算は四則演算(加減乗除)の法則で、できる。

 中でも主要なのは加算であります。 ジェット・ブラストの速度比 1 (効率のピーク)をファンの速度比 1 より小さくすることで低速側の効率を改善できそうです。

 下のグラフ上ではグリーンの点線がそれです。 (左クリックでポップアップします)

 どうせやるなら、ブルーの点線で示すファンの効率のピークとなる速度比にまでずらせばいいじゃないか、 と言われても、そうもできない理由もあるのです。

Turbofan_w_staggered_speed

 ターボ・ファンの性能はファンの性能で決まる。そのファンの限界速度はマッハM0.9 程度であります。 つまりファンの効率曲線の速度比 1M 0.9 と読み替えるのです。
 限界速度とはファン、プロペラ、ジェット・ブラストとそれを搭載した機体の速度が一致した状態を示す速度。 現実の最高速度は限界速度より(ちょっと)低く、機体の抵抗と推進力が釣り合う速度です。

 その限界速度を実際に出せるのか、となると重力による緩降下で、あとは機体強度次第の引き起しとなります。 ファンで出せる(地球に沿った)水平速度はせいぜい M 0.8 から M 0.9 の間となる。

 同様に効率のピークを使う巡航速度は M 0.72 あたりを中心にほぼフラットな部分が使え、パイロットは追い風、向かい風でのエンジンの運転状態で対地速度を選べます。 だめなら高度を変えて風の影響を加減することになります。

あっ! ファンの効率曲線はダクトの効果を見込んでいないプロペラの効率曲線です。 もちろんこのグラフのままでの解釈ですから前回に示した「脳内補正手順」を忖度してくださいね。

 となればコア・エンジンとなるジェットの限界速度比「1」をファンの限界速度比の「0.9」にずらせばよい。

 計算はグラフ上の Pure Turbo Jet で基準とした速度比にずらした後の速度比「0.9」をとって係数として乗じて効率はそのままに横にずらすだけです。

 これは 前々回 のターボ・ファンにある二種類の流れ速度の食い違い比(Staggered Speed Ratio 正式の用語じゃない)はファン側の流速を大きくとるので s = 1.1111(=1/0.9) に相当します。グラフでは同じ用語なのに定義が異なりますがご容赦ください。

 前々回の考察ではこの程度の s 値だとコア・エンジンに対する出力の影響はほとんど無視できる・・・詳しくは前々回へのリンクでジャンプしてご確認を。

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 上掲のグラフでは今回の計算結果を実線で、前回の計算結果は破線で示している。

 新しいジェットの効率曲線とファンの効率曲線の交点がずれて、その新しい交点を境に前回と同じ結果がでている。 なんてたって足し算だからね。

 特徴は低速側で改善されてはいるが「どれだけー!」といった程度であり、高速側ではまあね」といった程度の向上が見られる

 さて、グラフ上でターボ・ファンの速度比 0.9 (= M 0.81) を越えたジェット・ブラストはどうなるのか、気になりませんか。

 機体に反力を与えているので速度は維持できますが加速には寄与できません。 あとはファンの性能次第であります。

 さて、前回の結論、「ファンの流速を速くする食い違い速度比は高バイパス比がのほうが安定して作動する範囲が広くなるとはいえそうだ」だった。

 つまりこの程度の食い違い速度はコンベンショナルなターボ・ファンでも技術的に、あるいは機速の速度比によってはバイパス比 q の変動も含めて必然的に生じて、使われているかもしれない。

 ここで本題に立ち返ると、ここまでのニュートン物理の解析と検討は GTF とはまったく何の因果関係も意図的な関連性もない。

 あるのは高バイパス比化はコア・エンジンの高出力化を伴う・・・であります。

 以下、風が吹けば桶屋が儲かる論法で高出力化のための高圧縮・希薄燃焼(リーンバーン)の新世代ターボ・ファン・エンジンが 「GTF」 と 「Non-GTF」 へ分岐する展開を並べて今回のお題に決着をつける。

・ 「GTF」の場合
 ▼バイパス比を大きくするにはファンの直径を大きくする
 ▼ファンの直径が大きくなればより多くのエネルギーの投入が必要
 ▼まず、ファンにつながる低圧段圧縮機を駆動する低圧段駆動タービンの回転数 N1 を大きくする
 ▼回転数を大きくすればより熱エネルギーを回収してより大きい回転エネルギーに変換できる
 ▼より大きな熱エネルギーが回収されるとジェット・ブラストの温度が下がる
 ▼温度が下がるとジェット・ブラストのエネルギーは減少する
 ▼エネルギーが減少すると推力となる流速が下がる。(音速以下にする)

 上記の流れは、▼で分岐される。

 ▼高回転になった N1の回転エネルギーはより高バイパス比のファンを駆動できる
 ▼高バイパス比のファンは直径が大きくなる
 ▼大きくなったファン直径は先端の速度がより超音速になる
 ▼せめて普通の遷音速レベルにするには減速機(Gear Box)を入れてファンの回転数を下げることになる。

 これが 「GTF」 の流れであります。

 ちなみにファンの回転数は何で決まるかというとエンジン側の軸駆動力とファンに掛かる回転抵抗のバランス(釣合い)で決まります。

 効率グラフの 1 未満での釣合いは、ファンはしっかり軸駆動力を受け止めて(吸収して)いますが (1 - 効率)の部分はファンが推進力に変換できていない状態になります。

 動力を吸収できないファンは入力容量が不足している状態で、抑えが利かないファンの回転は(もちろんコア・エンジンの回転も)暴走してしまいます。

 いずれにせよファンの直径がいくら大きくてもファンの諸容量、諸性能がターボ・ファンの性能を左右しています。

 GTFこの釣合いの整合性に関係するのが間に挿入したギヤボックスに設定された減速比 であります。その GTF のデメリットは重くなる、発熱損失が加わる(効率が落ちる)、故障の可能性が増える、騒音源が増える、などがあります。 ギヤボックスはなければないほうが良いのではありますが・・・

 さて、この流れの分岐点はもう一つあります。 むしろ、こちらの▼ほうが重要です。

 ▼ファンに分割したエネルギーである増加した低圧タービン回転数 N1 は上流の低圧段圧縮機の仕事にもつかえる
 ▼低圧段(N1)で圧縮を強化して高圧段(N2)でもさらに圧縮して燃焼効率の改善をする
 ▼燃焼効率の改善ためには高圧段(N2)の回転数も増加させている

 この条件から代替案を得ると・・・

・ 「Non-GTF」 の場合
 簡単に言えば高圧段タービンの回転数 N2 を速くして低圧段タービンの回転数 N1 を低くするバランスの中で燃焼効率を改善させる、のであります。

 ▼バイパス比を大きくするにはファンの直径を大きくする
 ▼そのエネルギーは高圧段圧縮機の駆動回転数となる高圧段タービンの回転数 N2 を速くして燃焼効率を改善する
 ▼改善された燃焼効率は N2 回転数にも使われ圧縮を強化する(これは GTF も同じ)
 ▼N2 回転数を速くすることで N1 回転数に渡す流速(温度)を下げる
 ▼ファンを駆動する N1 回転数はかなう限り小さくする。
 ▼ N1 回転数をかなう限り小さくしてもファン直径に制限ができバイパス比が制限されるその回転数とファン直径のバランスと限界に挑戦する

・ 新世代ターボ・ファン・エンジンで公表されている最大バイパス比は GTF の「P&W PurePower」で 12.5 :1Non-GTF の 「CMF LEAP」で 11 :1 であります。

・  CMF (GE-スネクマ) は「LEAP」で MRJ が採用する下位のクラスには参入する気配はない。そこでエンブラエルの新旧で比較すると GTF の「P&W PurePower」で 12 :1、と 9 :1、これに対する CMF の従来型では  5.4 :1、と 5.1 :1 であります。

・ ちなみに MRJ が採用する出力の異なる 2 種類の GTF はいずれも 9 :1であります。なお MRJ のエンジンの選び方にはエンブラエルとは異なる特徴があります。「MRJ」のカテゴリーの中に詳述してあります。

 ▼ ニュートン力学で機械効率を解析する限りではバイパス比が大きくなるとほとんど仕事効率は変わらない。
 少なくともバイパス比 8:112:1 とでは 1% の差があるかないかである。
 ▼ バイパス比 4:18:1 で比較するとかろうじて 1% あるかな、といったところであります。

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キネマ航空CEO 『GTF をまとめちゃった』 の巻

 『飛行速度を同じとすれば』高バイパス比化はファンを回す追加の燃料投入分だけ出力エネルギーの絶対値は増えている。

 ジェットライナーの『高バイパス比化は機体の重量を含む機体抵抗の絶対値に対応するため』、と考えたほうが理解しやすい。

 ・ 既存の機体によっては増えた分だけエンジンの構造自体をシュリンクさせて投入燃料を減らしエンジンの軽量化もできる。

 ・ エンジン・メーカーはそこまでの個別な忖度はしないが、航空業界の平均的な機体サイズ(クラス)に合わせた出力のラインアップをそろえたシリーズ化を実施せざるを得ない。

 ・ 機体の設計者から見ればシリーズの中のピンポイントでの企画を強いられることにもなる。
(両方やろうとしたのが ホンダ・エアクラフト・カンパニー。 成功してよかった。 エンジンは GE・ホンダ・エアロ・エンジンズ となったが、下記の夏季特集で・・・)

 ・ 新開発のエンジンの選定には機体メーカー側にエンジンに鑑識眼のあるチーフ・エンジニアの存在が必要になる。
(今のところ MRJ-90 で先陣を切る低圧段圧縮機が 3 段から 2 段構成となる 17l bs 以下の GTF については MAC から の具体的な飛行評価は発表されていない) 

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 新世代エンジンでアピールされる燃費性能の向上のポイントは圧縮機とタービンの燃焼系の更新による燃焼効率の改善とデフューザーやノズルと一体のファン効率の改善とを相乗した結果であります。

 PurePowerGTF) と LEAP の違いはファンを駆動する N1 回転数の考え方の差、高・低段圧縮機の回転数 N2N1 の使い分けの考え方の差です。

 GTF の効果については LEAP エンジンのコンセプトがリージョナル・ジェットの下位のクラスにまで影響力を持てるかどうかで見極めることになる。

 つまり、CMFP&W はリージョナル・ジェットの分野で重なる部分を持ちながら棲み分けを模索しているとも言えそうである。

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 では、なぜより小型のビジネス・ジェットで GTF が成功しているのかは簡単であります。

 小型のターボ・ジェットを効率よく安定して作動させるとジェット・ブラストは音速を大きく超える性能が得られる。

 そのエンジンを使うターボ・ファンはジェット・ブラストとファンのモーメンタム・フローの速度を音速以下で等しくさせる技術的である。

 ところがジェット・ブラストを音速以下に下げるにはかなりの高速で N1 回転数を取り出して軸出力に変えてファンにつなげる必要がある。

 そして必然的にファンの先端周速を下げるために減速ギヤ・ボックスを間に入れる必要がある。

 《初歩的な補足》 2018.08.01 追記
   ファンの駆動力として分岐する軸出力は P = 2π・n・T で表し回転数 n を含んでいる  ▼同じ軸出力 P のままでファンを回す軸力(トルク) T を大きくするには回転数 n を小さくすることで可能になる ▼ところが n を小さくするとターボ・エンジンの圧縮機の性能ひいてはエンジン自体の性能が悪化する ▼そこで n を適正に保つ為に間に入れるのがファンの回転数を小さくする減速機で GTF と呼ばれる。
   逆に見れば
▼ 減速機でファンを駆動する n を小さくすることで同じ P でも T を大きくできる ▼結果として大きなファンを回し高バイパス比化が可能になるのだが・・・そうは上手くいかないことを説明したのが当CEO の結論です ▼初期の GTF はこの理屈以前の問題のほうが大きいようです。

 簡単でしょ!減速(機)比は無きゃ無くていいんです。
 ファンが余剰出力を効率よく推力に変えてくれさえすれば。

 初期の GTF はターボ・ファンの創成期に小型のコア・ジェット・エンジンが作れなかったためです。

 現在の GTF 747A380 クラスを双発で飛ばすため ? (これはたぶん無理です)
  (推進力はファンの回転面積に比例するので現行のファン直径の1.41倍の直径が必要。)

 現在の GTF が掲げる旗印は中小型ジェット・ライナーの消費燃料削減と環境対応です。ところが・・・!

 バイパス比の増加は燃料消費の絶対量の増加を伴います。

 GTF は、コア・エンジンの小型化か、機体の大型化か、という二項問題の狭間でエンジン主導の機体を設計することになります。

 また、機体主導で GTF ではない新世代エンジンも選べるか?の問題でもあります。

  従来型を含めた三者択一で選ばざるを得ないのではありますが、この選択が機体の命運を分かつことにもなります。

 でも、先行試作機であっても、コンベンショナル・タイプと言いかえても、従来型は選べないよなぁ、圧力もあるのだろうなぁ。・・・と、当CEO の思う「ゼロの呪い」であります。

 日本だと民間主導とは言え経営陣はともかく、管轄省や外郭団体も口をだすだろうし、先決め丸投げ、だったりして・・・『チーフ・エンジニアはつらいよ』、でありましょうね。

 日本では「チーフ・エンジニア」という見識を問われる職責の権威はないようだ。 ましてや継続して研鑽を積める企業ではない業界ではね。

 一般紙で「チーフ・エンジニア 何某」 と報道されることはまずない。 社内においては重量配分、予算配分の調整役でしかないのかもしれない。

 本田技術研究所が航空機の開発具体化の初期にホンダ・エアクラフト・カンパニーをアメリカで立ち上げたのは経営者の慧眼、見識として、「チーフ・エンジニア」としてプロジェクトをけん引した藤野 道格氏と同格の敬意を払うべきと考えます。

 以上を結論として GTF の巻 の完結です。

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Honda HF120 とそのライバルたち 

  ちなみに Honda HF120 ターボ・ファン・ジェットは GTF ではなく、ファン・ブレードの前縁は新世代エンジンの定番である逆 S 字のワイドコード翼であります。

 バイパス比は 2.9 、ファン直径は公開されていないがエンジン本体の最大直径は 52.8cm となっている。 このバイパス比からは高速性能に優れていると想定できる。

 53cm弱の直径の中にターボ・プロップ・エンジンで採用されることが多い遠心式高圧段圧縮機と反転式の燃焼室を収めているコア・エンジンは極めて小さく、汎用性を目指すことなく自社開発の機体に特化したエンジンのようです。

 GTF 側のベンチマークとしてビジネス・ジェット向けで最も成功しているハネウェル TFE731 ではバイパス比は 2.28から2.8、エンジンの直径は 100cm となっています。
(大きい割にはバイパス比は低い二世代ほど古いコア・エンジン)

 このエンジンは1978年にリリースが開始され、HF120 と同様に高圧段に遠心式圧縮機を採用し反転式燃焼室など全長を詰める小型のジェット・エンジンのデファクトのレイアウトを採用しています。

  しかし、HF120 の事実上の筆頭ライバルは、やはり GTF ではないウィリアムズ FJ44 になる。 外形寸法は若干大きいがシリーズ化は進み 9 型式を数え(ファン直径で52.6cmから64cm、バイパス比 3,28: 1以上)、自家用軽量ジェットや無人機の動力源としてシェアを拡げている。
(バイパス比は 3: 1以上で現在の自家用機市場でのオルタナティブ(更新用)には使い勝手が良いエンジン。ホンダ・ジェットより大きいサイズの機体に合わせている)

 この下位シリーズには FJ33 (ファン直径 43.9cm、バイパス比 3.5: 1)もラインアップされているが採用は今のところ自家用軽量ジェットでは シーラス Vision SF50 の 1機種のみ。

 次に、このクラスで実績がある プラット・アンド・ホイットニー・カナダ PW600 (ファン直径 36.83cm から 44.7cm、バイパス比 1.83 から 2.8)が セスナ サイテーション・マスタング など小型機メーカーに喰い込んでいる。
(ほぼ HF120FJ33 と同等のサイズのエンジン。 三つ巴のライバルとなるか ?)

 Honda HF120 は正確には GE Honda HF120 で製造は GE Honda Aero Engines です。

 GE HF120 に手を伸ばしたのは P&W カナダウィリアムズ・インターナショナルには RR と大手のエンジン・メーカーの息がかかっていることによると考えられる。

 乗っ取るか、乗っ取られるか、それとも Win-Win の関係を築けるか、ホンダは唯一日本で真の航空ビジネスに参入を果たした企業といえるようです。

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ロールス・ロイスの高バイパス比化について

 基本はライバル各社と同じ高温高圧下のリーンバーン技術です。でもターゲットのバイパス比は 15:1 だそうです。

 共通するコンセプトはウルトラ・ファンと呼ぶブレードのチップ側から前進角、後退角・後退角といったいわゆる逆 S 字の前縁をもつ他社と共通する形状のファンを使用して・・・(形状は同じでも材料、工法、などに各社の特徴はあります)

1. 2軸のエンジンでは N1 で回る低圧段の新設計と燃焼系の高温高圧化の新技術を採用(大型のプライベート・ジェット向け)

2. 3軸のエンジン(圧縮段の回転数は前より低・中・高の N1N2N3)では低圧段 N1 を受け持つ軽量化材料の開発と燃焼系の高温高圧化の新技術(N1 回転数の高速化)

3. (2.)の3軸のエンジン(タービン回転数は後ろより低・中・高の N1N2N3)のうち中圧段回転数 N2 とファンの間にギヤ・ボックスを入れた GTF の採用と燃焼系の高温高圧化の新技術に加えて構造的にはよくわからないがファンが低圧段圧縮機回転数 N1 を受け持っているのかもしれない。 RR のサイトにカットアウェイ図のポスターがありダウンロードできます。

遊星ギヤボックスの構造は N1 を太陽歯車 N2 を遊星歯車キャリヤに入力し、リングギヤの合成出力回転数をファン駆動回転数 NF とする動力合成を行っていると思われる。

なお動力循環を避けるため N1N2 の回転方向は同じで NF も同じ方向となる。回転数は N2N1> NF

減速比は P&W より大きくとれるはずで、したがい歯車の負担も大きくなる。

ポスターの歯車は歯丈の低い歯型と特殊な形状の歯筋を採用しているようだ。

 2018.08.26 訂正加筆 

 RR は手堅く両方のコンセプトで段階的に開発を進めるようだ。

 これで、低(中かもしれない圧段圧縮機に可動式静止ベーンを追加すればジェット・ブラストの速度制御も可能になるのかも知れない。

 ここまでくれば既存のジェットエンジン技術のてんこ盛りになるのだが、 MMPMan Money Power:人金力 【ひとかねりょく】 企業評価に使えないかな・・・造語です)は大丈夫かな。

 なお、これらの評価にはエンジンの出口対入り口の圧力比である全圧比Overall Pressure Ratio)が使われるようだ。

 当CEO はとばしてきちゃったな。機会があればね・・・

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 RR に限らず新世代エンジンの課題は構造設計に加えて材料・素材の開発と見極めに掛かっている。

 逆に見れば他の業界(材料、素材、製法 等)の開発力と製造品質管理レベルに掛かっているリスクの多いコンセプトともとれる。

 「エンジン総合メーカーはつらいよ!」だけど、 いまは、蝶よ花よとおだてられているけれど、量産に移ると責任転嫁もされかねない「材料・部品メーカーもつらいよ!」です。

 少なくとも工学にかかわる官民の将来を預かるはずの若い学生諸子は「日本はすごい」のフェイクに近い文脈の報道に迷わされず「すごいのは自分だ」を世界の中で実証してくださるように祈っています。

2018年7月15日 (日)

キネマ航空CEO 『GTF のまとめにかかる』の巻(その 1)

 (承前)

 ターボ・ファンは、『工学的には、本質的に発生の原理が異なる「運動量理論」による流速と「翼素理論」の範疇にある空力機械としてのファンの流速を限りなく音速に近づけることで得られる亜音速の上限をカバーする空力推進技術の相互補完メカニズム』とまとめられる。

 GTF を考えてみると、結局のところ一段の減速比しか無い減速機の追加ではあるがエンジンの回転数を最適化することで燃焼状態を改善する自動車のマニュアル・トランスミッションと同じ機能が使われている。

 推進技術に限らないがエネルギーにかかわるメカニズムの評価には効率の良否(よしあし)が関係する。民生用ならなおさらである。

 当ブログでもターボ・ジェットの運動量理論とファン(プロペラ)の翼素理論の推進効率の解析から 比較の可視化 を行っている。

 その記事から左クリックでポップ・アップできる比較グラフを再掲する。

Efficiency_of_propulsion ターボ・ジェットではどんなエンジンでも同じ数式で同じ曲線になる。

 いっぽう、プロペラでは寸法からは直径、翼型からは揚抗比、エンジンからでは回転数、さらにエンジンの出力と機体で決まる機速等々で大きく変わる。

 グラフの曲線は中(あた)らずとも遠からずといったレベルではあるが一応はどちらも理論から誘導している。しかし、アンダクテッド・プロペラである。

 当CEO は残念ながらターボ・ファン・エンジンのダクトを理論的に解説をした参考書には出会えていない。

 出会っていても断熱圧縮を伴うため、まともな解説はできそうにないので、下の参考書からダクテッド・プロペラの概説を強引に引用して納得してもらうしかない。
(ただし参考書のダクトファンとターボ・ファンのダクトとは設計意図が異なっており、デフューザー効果を伴わないダクテッド・プロペラの範疇に入る) 

飛行機設計論」山名正夫、中口 博  養賢堂 (1968)  pp388 、(5) ダクトファンより引用

・・・筒がない場合に比べて
   (a) 同じ直径のとき静止推力および吸収馬力が大きい
   (b) プロペラ先端と円筒内面との隙間を小さくすると、先端渦による誘導馬力損失が
       少ない
   (c) v/nD の大きな変化に対しプロペラ効率の変化が少ないなどの利点がある。

(以下)理論計算式の展開のあと
・・・ 飛行速度とともに筒の効果が減少する。
・・・ 実際には筒の摩擦抵抗が加わるから v0 (飛行速度)が大きいときには筒の存在がかえって有害となってくる。
・・・ (筒の)前縁推力を出すためには・・・ v0 によって(筒の)最適の形、とくに前縁部の形が違(う)
・・・ もともと、低速時の推力を増すために曳船用の推進装置として考案された
・・・ 筒の形については(参考文献を列記)・・・と続く。
   ( )内は当CEO の加筆。 以上、参考書では V/STOL の章にあります。民生用ドローンの設計者必読かな ?

 以上の所見からは、当CEOが可視化したプロペラのグラフは、速度比 0 から 1 にかけて漸減して 1 になるような係数を乗じる補正が必要と考えられる。

 また、速度比 0 の場合の補正係数はいくつかの実験式や理論計算式で 1 以上であることは間違いない。

 ターボ・ファンのダクトでも同様の補正が必要と考えられるが参考書の数値はそのまま使えそうにない。

 したがいプロペラの効率のカーブは次のような想像力で、しかも読者にもカバーしていただくしかない。

  (イ) 二つの効率の曲線の交点より左側(速度比 0 の側)では速度比 0 の効率は 0 のままで膨らみ逆立ちした放物線が傾いた形になる。
  (ロ) 効率のピーク値はより 1 に近づくかもしれない
(でもダクトの形状抵抗で実装状態では相殺されるかも)。さらにピークは速度比の小さい側に僅かだろうが移動するかもしれない。

 以下、上記の予測される補正はしないで先に挙げたターボ・ファンの効率のグラフを元に下式を使って加工した結果に上記の所見を加味して考察する。いや、してもらう!

 なお、基にするグラフの設定条件は機体の抵抗も含めてファンのモーメンタム・フローとコア・ジェットのジェット・ブラストの速度とが等しいこと、かつ基準としたエネルギーも等しいという前提です。

 ターボ・ファンのバイパス比 q : 1 、推進効率 ηTF 、プロペラの推進効率 ηP 、コア・エンジンの推進効率 ηJ とする。

       ηTF = {q/(q + 1)}* ηP + { 1/(q + 1)}*ηJ = (ηP * q+ ηJ )/(q + 1)

 つまり、一つのエンジンを同じ最高速で飛べるファンとジェットの二つの独立したエンジンにして一つの機体に搭載し、それぞれのエンジンが分担する効率をバイパス比で分割してさらに合計した値です。

 ターボ・プロップとターボ・ジェットの組み合わせでは 川崎 P2-J がありました。
 モーメンタム・フローとのジェット・ブラストの速度とが等しいかどうかは分かりません。
 たしか緊急時加速用補助エンジンのはずでジェット・ブラストのほうが速いと思われる。
 効率は悪いだろうけど民生用ではないからなー。しかもパートタイマーだし。
 そんなにメジャーなブログでもないけど間違っていれば炎上するだろうなー。
Turbofan_w_samespeed

 当たり前のことながら、両効率曲線の交点より右側(高速)では ηJ > ηTF > ηPq が小さいほどターボ・ファンの効率は良い。

 逆に、交点より左側(低速)では ηP > ηTF > ηJ でバイパス比 q が大きいほどターボ・ファンの効率は良い。

 ただ、どちらの場合でも q が大きくなるほど ηTF の差がほとんどなくなる。

 ただし、プロペラのダクトとターボ・ファンのダクトは機能構造が異なりバイパス比  q の関数で効率がよくなる可能性はあるかも知れない。

 あったとしてもエネルギーの分配という面では差は小さいのではないかと思える。

 バイパス比  q といえば速度比によって変化するのではないかとの疑問は当CEO の中でも解消されていない。

 呼称値である q の定義自体は明確だが実態は定かではない。

 当CEO の当面の進行は、個別の型式間の呼称値としての q の影響は型式間の比較の上では類似または近似するとの前提であります。

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 さて、次回は モーメンタム・フロー > ジェット・ブラスト となる速度差の影響は、について考えるのココロだー!

2018年7月11日 (水)

キネマ航空CEO 「高バイパス比化に意味があるの ?」 について考えるの巻(再掲)

・ 式の表現方法を修正後の再掲です。(2018/07/11)
・ 修正についての説明は本件のお詫びの記事に追記いたします。
・ 細部の修正を含めて校正、校閲を継続中です。

キネマ航空CEO 『GTF はターボ・ファン・ジェットかダクテッド・ターボ・プロップか、を考える』 の巻 (その 2)  (2018.04.29)の回をご一読の上お進みください。

 なお、使用した図は こちら から。まず、今回必要な数式部分の復習から始めます。 今回も運動量理論での解析です。

 ターボファンはコアエンジンの持っているターボ・ジェットとしてのエネルギーから
k (0≦k1) の分割比でファンに分割する。

 ただし分割に伴う効率ψ0<ψ<1)が発生し実際に分割されるエネルギーは (k/ψ)となり、コアエンジンに残るエネルギーは分割された割合を除いた{1-(k/ψ)}となる。

 コア・エンジンに残ったエネルギー KC のジェット・ブラストの速度は VC 、質量は m
 ファンが受け取るエネルギー KF  が作るモーメンタム・フローの速度は VF、質量は q・mq はバイパス比)。
 コア・エンジンが単体のターボ・ジェットとして持つエネルギー KJ が発生させるジェット・ブラストは VJ 、質量は m のままでコア・ジェットと同じです。以上を数式に移すと・・・

 J = (1/2)・mVJ2   

 C = {1- (k/ψ)}・KJ = (1/2)・{1-(k/ψ)}・mVJ2 = (1/2)・mVC2  より

 VC/VJ = √{1-(k/ψ)} ・・・  (1)

 KF = (k/ψ)・KJ = (1/2)・(k/ψ)・mVJ2 = (1/2)・q・mVF2  より

 VF/VJ = √{(k/ψ)/q}} ・・・ (2)

 ターボファン・ジェット・エンジンに求めるものはピュア・ターボ・ジェットの出す一定のエネルギー KJ で得ることのできる仕事 WTF の増加であります。

 ターボファンとしての等価速度を VTF と置き、その速度を持つ質量は (q+1)・m となる。

 WTF = (q+1)・m・V1(VTF-V1) = m・V1 ・ (VC - V1 ) + q・m・V1 ・(VF - V1 )
                  = m・V1 ・[ [ √{1-(k/ψ)}+ q・√{(k/ψ)/q} ]・VJ -(q+1)V1 ] ]
より、

 VTF = [ [ √{1- (k/ψ)}+ q・√{(k/ψ)/q}]/(q+1) ]VJ ・・・  (3)

 分子は 0≦k/ψ)≦10 < q のため VJ≧VTF となる。VTFk/ψ)q の関数であるが k/ψ)q の関数でもある。

  [ √{1- (k/ψ)}+ q・√{(k/ψ)/q}]/(q+1)  = A と置き dA/dk = 0 と微分して A の極値(最大値)を求めると VC = VF つまりコア・エンジンのジェット・ブラストとファンのモーメンタム・フローの速度が等しい場合となりファンが受け取るエネルギーの割合は
(k/ψ) = q/(q+1) なのだが計算過程は省略します。

 したがい、ターボファン・ジェットのエネルギー速度 VTF とコア・エンジン単体のジェットブラスト VJ の比は、

 VTF/VJ = 1/√(q+1) ・・・ (a) 

--------------以上が復習--------------

 なお、(a)式は次のように逆比として書き直します。

 VJ/VTF = √(1+q ・・・ (4)

 理由はファンのモーメンタム・フローとコア・エンジンとしてのジェット・ブラストが合成されたターボ・ファンの推進噴流の等価速度 VTF は機体の出せる限界速度に相当します。

 このエンジンが採用された機種もしくはクラスの中ではほぼ一定値ですので既知の基準値として扱えるからです。

 さて、ここからは VCVF の場合の検討です。(2)式を(1)式で割るとファンのモーメンタム・フロー VF とコア・エンジンのジェット・ブラスト VC との速度比 s が求められる。

 s = VF / VC = √[{(k/ψ)/q} /{1- (k/ψ)} ]  より

 (k/ψ) = 1/{1/(qs2 )+ 1}

 を(3)式へ代入し整理すると

 VJ/VTF = (1+q)・√(1+q・s2)/(1+q・s) ・・・ (4'

 ここで、「見える化」をしてみる。

 (4')式は s=1 の場合に VC = VF すなわち速度と引き換えに最大の仕事を引き出せる、ひいてはコア・エンジン単体に要求される推力が最小となる(4)式と同じになります。

 この関係を s=1 でバイパス比 qVJ/VTF の関数としてグラフにしてみました。Vjvsvtf 値を表にすると

BPR 0 : 1 1 : 1 2 : 1 3 : 1 4 : 1 5 : 1 6 : 1 7 : 1 8 : 1 9: 1 10 : 1 11 : 1 12 : 1
VJ/VTF 1.00 1.41 1.73 2.00 2.24 2.45 2.65 2.83 3.00 3.16 3.32 3.46 3.61

     (BPR 0 : 1 はピュア・ターボ・ジェットを指しています。)

 BPR 0:1を除く表の値に一般的なジェットライナーの最高速 VTF = M 0.8 を掛けるとその エンジンの BPR でコア・エンジンに必要な単体エンジンに要求されるジェット・ブラストの速度が出ます。

 例えば BPR が 8:1の場合は M 2.4 となります。もちろん伝達効率 100% の運動量理論上で、の結果ですからファン側に翼素理論を適用すればもっと上回るはずです。
(「すりゃーいいじゃないか」、と言われても 当CEOには無理 なのよね)

 参考までに、 M 1.00 で飛べるターボ・エンジンをコア・ジェットにする BPR 12 : 1 のターボ・ファンの場合の VTF はこの表の逆比となり、 M 0.277 で飛ぶことになっちゃいます。

 本筋の(4')式に戻ってバイパス比 q をパラメータとして、ターボ・ファンのファンとコア・ジェットの流速比 s が変化する場合の VJ/VTF を計算してみます。

Incriment_of_vj_vs_vtf_table_rev1 ここでは計算結果の整理に、次式を用いて各 BPR ごとに VJ/VTFs = x の値から VJ/VTFs = 1(上記の表)を引いた差分を⊿VJ/VTF として表示します。

   ⊿VJ/VTFs = x = VJ/VTFs = x - VJ/VTFs = 1

 目的はこれにより BPR の系列ごとに s の影響を分かりやすく相対化するためです。

 左のアイコン・レベルまで縮小した差分表は左ボタン(ワン)クリックでポップアップします。

 小数点以下の第 3 位を四捨五入してあります。 差が0.005未満で差分が 0 となる範囲は広い。 これではよく分からないのでグラフ化してみましょう。

Incriment_of_vj_vs_vtf_graph

 (すみません)グラフ内に書きそこなったけれど横軸が s = VF / VC )です。縦軸は s の増減で変化するコアとなるターボ・ジェットが単体で増減する⊿VJ/VTF の値です。

 s < 1VF < VCs = 1VF = VCs > 1VF > VC

 s = 1VJ/VTF が最低値となることはこのグラフからでも間違いない。
つまり採用したコア・エンジンがターボ・ファンとして働く最大の仕事の元となる速度 VTF が得られる比 [VTF/VJ ]のポイントです。(くどいようですがモーメンタム(運動量)理論で、です)

 s > 1 の側、つまりファンによる流速のほうがジェット・ブラストの流速より速い側ではバイパス比 q が大きくなるほど VJ/VTF の変化の傾斜が小さくなることが分かる。
BPR の増加によるベースとなる出力の増加に比べて s の変化による出力の増加が小さくなる範囲です)

 ついでに、s < 1 の側、つまりファンによる流速のほうがジェット・ブラストの流速より遅い側では q0:1で示したピュア・ターボの状態を除きバイパス比 q とは関係なく VJ/VTF は撚った縄の状態で急激に傾斜がきつくなっている。 

 比を変数として扱ったグラフの視覚的な理解には注意が必要です▼「1 」を挟んでグラフの左側では「0」に近づき、右では「∞」に及ぶ▼比は逆立ちできる▼逆立ちしたら左の「0.5」は右では「2」▼左の「0」は右の「∞」に相当している▼s' = 1/s として s' を横軸にすると別の様相が見えるはず▼やってみてね。(閑話休題)

 さて、ターボ・ファンやターボ・プロップにおいてはアイドリング時から 100%以上の過負荷運転時において常に一定のバイパス比 q を維持しているとも思えないのだが、これは後に回して、・・・

 相当バイパス比(Equiv. BPR)が  50-100:1 と言われるターボプロップでは VJ/VTF の増分の傾斜はもっと緩やかになり VF > VC となる速度差をつけることは効果が大きいのではないだろうか。

 では、現在の GTF で計画されているターボ・ファン最大の BPR 12.5:1で実施されば効果はどうか、と問われると、いささか心もとないのだが差分表からは s = 1.25 辺りまではコア・エンジンに対してほとんど影響なくファンの流速を早められそうなのだが・・・

 漠然とではありますが、亜音速の上限を棲み処(か)とするターボ・ファンの原理から言えばジェット・ブラストの流速を遅くすることでファンによる質量の多い冷気の流速を多少は速くすることができそうであります。

 バイパス比 qs に連動して変化することはないと仮定すれば仕事 WTF の向上も多少の期待が持てるのでは、とも思えてきます。

 つまり、ジェット・ブラストのエネルギーをファンにさらに分割し、ファンには空回りせずに仕事をしてくれる容量があるならばです。

 計算式を構成する複数の要因の関係は、現在の技術ではファンの推力係数および入力係数と燃料投入量で変わる出力(飛行速度)を介した成り行きで決まってしまうので特定の速度域ではすでに使われている既知の技術かもしれません。

 ターボ・プロップではプロペラに可変ピッチ機構が採用されてプロペラ側からでも係数を変える制御ができる。ターボ・エンジンでは低圧段圧縮機の静止翼の迎え角を可変にして出力を制御する技術もあるけど・・・こちらは微妙な制御に使えるのかな。

 まあ、このグラフも見方を変えれば二つの流速を常に等しくするようなピン・ポイントの制御をするほどのものではない、と消極的な見方もできそうですね。

 とは言え、条件付きではありますが高バイパス比になるほど僅かな燃料の持ち出しで仕事 WTF の向上の可能性があるのでは、と推測も可能です。

 もっともその前に、前回考察した N1N2 回転数の増加による燃焼効率の改善のほうが必須の条件と考えられます。

 それらをひっくるめてバイパス比は大きいほうが運用上の余裕度はありそうです。 まずはターボ・ファンの吐出する二つの流れの速度比 s はどれくらい大きくあるいは小さくできるのだろう。

 次回からは別の方向から考えることにしてみる・・・か。

キネマ航空CEO キネマ航空CEO 「高バイパス比化に意味があるの ?」 について考えるの巻

キネマ航空CEO オフィスからのご連絡

先の、修正記事の再掲に先立ち、主に数式表記の修正内容をお知らせいたします。これに伴う結果等の変更はございません。

当ブログのフォーマットで数式を表記する場合に加減乗除の記号にそれぞれ + 、- 、(・)、 / が使えます。なお、+、- はともかく ×、÷ を使うのはいささか躊躇します。

ただしこれまでは乗算の(・)は省略しておりました。
また変数や定数の定義や計算順序を示すためには限られた数しかない括弧 [ { ( ) } ] を多用せざるを得ません。

また、式によっては [ [ [ { ( ) } ] ] ] と同じ括弧を外側に重ねることになります。例えば、平方根の範囲のについては √[{(A/B)+ C}・(D - E)]などでは横線を伸ばし両端にある括弧を省略する教科書的な表記はできません。

その他の表示に必要なべき乗や添え字はHTMLで対応できます。
例えば・・・例えばエネルギーの表記では・・・

もっとも短くする表記は KJ = mVJ2/2 ですが、これまで KJ = (1/2) mVJ2 としていました。これを、今回より KJ = (1/2)・ m・VJ2 といたしました。

これより速度を求めると VJ = √[KJ /{(1/2)・m}]となります。 VJ = √(2・KJ /m)でもいいのですがこの辺りは当CEO のこだわりめいたもので余計に混乱させているのかもしれません。

この速度をつかって仕事の式に当てはめると・・・
WJ = m・ V1・( VJ - V1) = m・V1 ・[√[KJ /{(1/2)・m}] - V1] とより分かりにくくしている罠にはまっていしまいました。

加減乗除の記号の入力には全角、半角があり、乗除の記号は同じキーの使い分けで・・・と転記の間違いの言い訳は空しく、すべては当CEO の責任内で生じておりました。

以上を見直し、修正をしましたが表記基準はこれからも継続いたします。
ご迷惑をお掛けし申し訳ございませんでした。今後はより留意を心がけてまいります。

                                        キネマ航空CEO 拝

キネマ航空CEO オフィスからのお詫び

当キネマ航空CEOオフィスへのご訪問をいただきまして、誠にありがとうございます。

2018年7月4日に公開いたしました以下の記事中の誘導式に誤りがありましたので現在非公開としております。

キネマ航空CEO 「高バイパス比化に意味があるの ?」 について考えるの巻

いらっしゃらないとは思いますが、コピーアウト、もしくは ダウンロード されたお客様がおいででしたら、お客様にご迷惑をおかけすることになるかも知れません。
お手元に資料として保存の場合は必ず廃棄のほどお願いいたします。

校閲不行き届きの及ぼす事態に衷心よりよりお詫び申し上げます。

記事自体は近日中に改訂いたしますので今しばらくお待ちくださるようお願いいたします。

また、しばらくの間は検索エンジンからの キャッシュ 等では誤りの部分をご確認いただけると思いますが何卒ご寛容のほど、また当CEO の未熟な点をご指導を戴けますようお願いをいたします。

併せて、当オフィスの本業であります KINEMA AIRLINES へのご愛顧のほど、よろしくお願いいたします。

                                         キネマ航空 CEO 敬白

2018年6月22日 (金)

キネマ航空CEO 『GTF はターボ・プロップではないがダクテッド・プロップファンに近づいているのかもしれない』 の巻

RRの動向の所見を変更しました。(2018/07/18) キネマ航空CEO

まず、前置きから、

 2018年2月までに公表された欧州航空安全庁(EASA)から認証を受けているP&W(プラット・アンド・ホイットニー)の GTF (ギヤード・ターボファン)商品名は PurePower ® (だが以下 GTF で統一) の型式は次表となります。

 残念ながら三菱MRJ が採用する17Klbf と 15Klbfクラスは今のところ見当たりません。

  Class(klbf)   BOMBARDIER    EMBRAER  AIRBUS IRKT
19   PW1519G   PW1919G
21   PW1521G   PW1921G
  PW1521G-3
22   PW1922G   PW1122G-JM
23   PW1923G
24   PW1524G   PW1124G-JM
  PW1524G-3   PW1124G1-JM
25   PW1525G
  PW1525G-3
27   PW1127G-JM
  PW1127GA-JM 
  PW1127G1-JM
30   PW1130G-JM
31   PW1431G-JM   
33   PW1133G-JM
  PW1133GA-JM

   型式記号 PW●〇□□G-XY
    PW  新世代ターボファン・エンジンの民間用呼称(旧世代ではJT を使用していた)
    
G GTFを示す。エアバスの G1GA の詳細は不明
    ● エンジンのコンセプトを示す新しいブランドである「ピュアパワー」を「1」で示しているようだ。 
 
   〇 仕向先コード・・・表にない MITSUBISHI  は「2」 。詳細は こちらこちら
    □□ Klbf 単位の離昇推力値。ファン径やバイパス比にも関連・・・詳細は
こちらこちら
 
   -XY) 細分化された仕様のコード。エアバスはイルクートを仲間にいれて独自化しているようだ

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さて、ここから本題です。

 GTF はこれまで考察してきた(運動量理論で、ではありますが)ファンのモーメンタムフローとコアジェットのブラストの速度が等しい場合に推進効率が最大になるというターボファンの原則から離れているのではないか・・・の思考の始まりです。

 下表では、三菱MRJ がライバルとする新型機とその前身となった在来機に搭載された新旧エンジンの比較ができるエアバスエンブラエルからベンチマークを選び比較を行いました。
ボンバルディエ C シリーズもありますが GTF エンジンはエアバスエンブラエルと同じクラスなので手抜きします。

 注目する個所は生データとしてバイパス比、ファン直径、N1 回転数、N2 回転数、減速ギヤ比、計算結果としてファンのチップの周速の相対比較です。

 なお、三菱 MRJ-90 MRJ-75エンブラエルE175-E2 が採用する予定の 17Klbf と 15Klbsクラスのエンジンは詳細なデータが公表されていません。 このため表中で赤字で示した回転数等は一つ上の19Klbf クラスの値を使用しました。

 また減速ギヤ比をそのまま使用するとチップ周速がマッハ(以下 M ) 0.87 となるので当CEO が以前に 写真から解析 した 2.8230 を使い M 0.95 としました。

 ギヤ比を変えた理由は基本的にファンの推進力(揚力)は回転数(速度)の二乗に比例しているからです。

 これでも低すぎるようですのでファンを駆動する減速ギヤ・ボックスへの入力となる低圧段圧縮段の回転数 N1 はもっと高いのかもしれません。 では高圧圧縮段の N2 はどうでしょう。

 また、従来型に採用されていたエンジンの N1N2 との比較も興味をそそられます。

 で、結論はどうした ! ですって?

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 まずは下表を左クリックで別窓で開いて値の吟味から・・・。

 「結論だけを読んで理解できたと思えるのは思考力の劣化の始まりだ」・・・ある刀自(とじ)の言葉の端に・・・

 「ワンフレーズに共感したり、反発したり、で自分の意見をでっちあげるネット社会の落とし穴」ということらしい・・・

 では、始めます。

New_generation_vs_conventional_turb まず、最下段の高度12,000mに於けるブレードのチップ・スピードは認証されている GTF では M 1.2~1.14 を示しています。

 これに対し既存のターボファンでは M 1.60~1.51 であります。GTF は明らかにチップ・スピードの低下を狙っている。

 さらに、CMF インターナショナル の新世代エンジン LEAP ®  (Leading Edge Aviation Propulsion 先端航空機推進技術)でも GTF には及びませんが M 1.60 から M 1.37 に低下させています。

 その一方では仮定値を使い赤字で示した MRJ では M 0.95 ですが音速以下にする理由があるのでしょうか・・・疑問が生じます。

 プロペラの先端速度が音速を越えている例 キネマ航空CEO GTF はターボ・ファン・ジェットかダクテッド・ターボ・プロップか、を考えるの巻(その 2 )「プロペラで出せる最大速度の推定とその検証」 から始まる三回の連載をご参照ください。

 チップ・スピードはファンの直径と回転数で決まる。その回転数は低圧段圧縮機の回転数 N1 で決まる。

 エアバス A320neo で見る GTFN1 は 10,047rpm でありギヤの減速比を換算したファンの回転数は 3,281rpm となります。

 従来型の A320ceo のエンジン CMF56 のファンに直結する低圧段圧縮段の回転数 N1 である  5,200rpm との比較では、 A320neo のファン回転数は減速機により 63% に低下しますが、低圧段圧縮機の回転数は193% にまで増加しています。

 次に A320neo の (GTF ではない) LEAP エンジンの N1 は 3,856rpm で、これがファンの回転数になります。その結果、ファン回転数と低圧圧縮段回転数は 74% に低下しています。

 A320ceoCMF56) を 1 とした比率に直すと 1.93 、0.74、 1 となります。

 では、高圧圧縮段の回転数 N2 を比べてみましょう。A320neoGTF)、A320neo(LEAP)、A320ceoCMF56) の順に、 22,300rpm、19,391rpm、15,183rpm となっています。

 A320ceoCMF56) を 1 とした比率に直すと 1.47 、1.23、 1 となります。この解釈は後に回して推力も比較してみましょう。

 まずその前に、推力をの単位をそろえるため CMF56 で使われている [daN](デカニュートン) を [Klbf](キロポンド)に換算します。換算係数は 2.2481/1000で求まります。

 したがい、GTF の型式記号に使われる公称推力である離陸時推力(Take-Off Thrust )に相当する値 10,453daN は 23.499Klbf となります。
(すみません。表では力の単位 [Klbf] のはずが [Klb] となっています。読み替えてくださいね)

 A320neoA320ceo に対して 3.5Klbf (1,588kgf)の推力マージンを得たようです。 A320ceoCMF56) を 1 とした比率に直すと 1.15 、1.15、 1 となります。

 エンブラエル E190-E2GTF) と E190CF34-10) との比較では推力を除き同様の結果がでます。計算してみてください。

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・ N1N2 回転数から想像される結論

 GTF では N1N2 共に、LEAP では N1 は低下しているが N2 は、増加している。 とりもなおさず圧縮機の駆動に噴流エネルギーを割いて圧縮性能を向上させている。言いかえればジェット・ブラストの速度エネルギーを落としている。

 見方を変えればファンのモーメンタム・フローとジェット・ブラストを等しくすることで得られる推進効率の最大化から離れて、エンジンのサイズをシュリンクさせて同等の出力を得る意図がある可能性がある。もっと言えば高圧縮比による燃焼効率を含めて改善している。

 ほぼ同等の推力を持つ両エンジンの高低両圧縮機の段数の合計は GTF の 11 段に対し LEAP では13 段を必要とする。その差は高圧段側の 2 段であります。

 それらの圧縮段を駆動するタービンの段数の合計では各々 5 段と 9 段だが、低圧段に対しては 3 段と 7 段である。 その差の 4 段分が LEAP では GTF のギヤボックスの減速比に相当することになる。

 ちなみにファンを駆動する力はトルク(軸力)だが回転を伴っている。 したがい(駆)動力として時間を含んだ次式が成立する。
   P = 2πNT/60
     P:動力([W = kg・m/s3])、N:回転数([rpm = 1/s])、T:トルク([N・m = kg・m/s2])

 この式で示されるように、動力を一定とすると「回転数」と「軸力」の積は一定となる。

 GTF ではタービンの出力は高回転数で取り出し減速機で回転数を落としトルクを大きくする。 LEAP では低回転で取り出した高トルクをそのままファンに伝える。

 ファンの回転数は ファン・ブレードの容量N1 タービンの出力(動力)の関係で決まります。 いまのところプロペラのようにファン・ブレードのピッチ角は変えられないのでスロットル(正確にはパワー)レバーで N1 回転数を変えることになります。

 ただし、GTF では減速ギヤによる効率の低下(動力の損失)を伴います。

 同等の出力を持つ GTFLEAP の比較ではバイパス比とチップスピードでは GTF のほうが優れているようだ。

 とはいえ、両エンジンとも公称値では従来型より優れていることは間違いなさそうだ。

 ただし、GTF では減速ギヤ・ボックスの信頼性やその減速ギヤで得られるコア・エンジン自体の、より高速となる N1N2 回転数による振動や潤滑の問題などは未知数と言えそうだ。

・ チップスピードから想像される結論

 GTF ではファンのチップ・スピードで限界のある N1 回転数を大きくしながらファンの回転数を落としてバイパス・レシオに直結するファン直径を大きくすることが可能になります。

 補足すると N1N2 の回転数が大きくなることは噴流のエネルギーが回転動力として回収されることで噴流の質量流量は同じでも温度が下がり体積は減り、ひいてはジェット・ブラストとして推力になる速度は低下します。

 なお、ファンに向かう空気はカウリング内のデフューザー効果で低下することは (受売りで)既述 です。 いずれにせよ空気の進入速度とファン回転数の合成速度は音速を超えており、後日追記するつもりです。

 MRJ に使用される 17Klbf および 15Klbf クラスに仮採用した 19Klbf クラスの N1 回転数と写真より計算した減速比の組み合わせのチップ・スピードは M 0.95 であり通常のファンの設計速度より低すぎるように思える。

 GTF のラインアップでは出力の低い、言いかえれば、ファン径の小さいタイプでは N1N2 回転数を大きくするようだ。 仮に19Klbf クラスの チップ・スピードより低い M 1.1 に合わせると 12,284rpm となる。

 この結論は、低圧段圧縮機が 1 段少ない 2 段で構成される最低位のクラスの諸元が発表されるのを待つしかない。

・ 以上からの総合所見

 基本的に GTF はダクテッド・プロップファンに向かっていると言えなくもなさそうだ。

 次のテーマはターボファンの効率優先の原則(バイパス比を大きくするとコアエンジンの出力も大きくする必要がある)を変えてもコア・エンジンの総エネルギーを低減できる可能性があるのかどうか・・・です。

 どちらのエンジンも圧縮性能を向上することでコア・エンジン自体をコンパクトに設計することと燃焼性能を向上を両立させることを目指している。

 それには材料の開発を含めた部品の構成と設計が要求され、コンピュータ支援設計が進んでいるとはいえ、膨大な実験での裏付けが必要になる。

 ターボファンとプロップファンの違いは主にブレードの形状であり、プロペラ容量係数などの性能面ではダクトと一体のダーボファンのブレード形状(ワイドコード化)のほうが優れている。

 アンダクテッド・プロップファン(UPF)ではダクトで得られていた騒音や速度などの利点は越えられなかった。

 現在の境目は常用速度域の守備範囲といえます。 とはいえ、ターボ・ファンの巡航速度とターボ・プロップ・ファンの最高速度は近接しています。

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 なお、バイパス比を増加させる LEAPGTF の関係では LEAPN1 ひいてはファンの回転数を下げる限界がある。GTF はギヤボックスによる損失や構造上のリスクがある。

 コア・エンジンのジェット・ブラストの速度を下げること、と、ファンの回転数(本質はチップ速度)を小さくすること、は騒音には効果がでると考えられる。この面では GTF は構造上有利である。

 対抗するロールスロイス トレント XWB ではスリー・スプール(3 軸)構成の低-中‐高圧段で 3 段階の圧縮が可能であり、ファンを回す先頭の低圧段は低回転で回せるはずたが・・・ UrtoraFan ® と呼ぶ 3 軸 + ギヤ・ボックス という構成までを視野に入れている。
 毒を食らわば皿まで、ならぬ、ギヤで重くなるなら可変ピッチまで、かも知れない。

 現実には現行の構造のファンを可変ピッチにするのは難しい。
 加えて、ダクテッド・プロップ・ファン(ターボ・プロップの進化系)ではダクトと二重反転プロップファンとの総合効果の検証など何らかのブレーク・スルーが必要と考えられている。

 BPR を増加させるには 全圧力比OPR)の増加による 圧縮性能の向上希薄燃焼Lean Burn  にあるようだ。

 この二点セットは GTFLEAP でも然り、であります。

 以上、閑話だが重大かな ??

 EASA TCDS には燃焼温度関連のデータもあります。熱力学のほうからの考察は機会があれば・・・ということで・・・。

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