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2012年10月の5件の記事

2012年10月29日 (月)

キネマ航空CEO プロペラの勉強をする

プロペラと共に航空機の動力発生メカニズムであるジェット・エンジンのモーメンタム(運動量)理論による推進効率について 「MRJ」 のカテゴリーの中に連載を始めました。ご期待ください。(2012.12.05 追記) / 同カテゴリーにプロペラの翼素理論の入門編とセスナ172を対象とした翼素理論による推進効率の検証を行っています。(2016.06.22 追記) / 翼素理論と運動量理論 のグラフによる比較検証を行いました。(2016.08.29 追記)

Twisted_stream_2  プロペラで後方に送り出された空気はよじれながら、そしてプロペラの径よりも小さくなる収縮流となって後方に流れ去る。航空機は上昇気流に頼ることなくこの空気流によって水平に飛行したり上昇したりもできる。

 これまでの固定翼機のベンチマーク比較では力の釣り合いのみを考えていた。

 この場合に使った数値の単位はSI単位系(物理単位系)の質量(kg)、長さ(m)、時間(sまたはsec)と力(kN)に加えて重力単位系(工学単位系:カタログに使われるのはこちら)の重さ(kgf)や力(kgf)と整合させるための重力加速度(m/s2)を使うことでこと足りる。

 前回の「固定翼機のオスプレイはどうよ?について考える(その3)」のオスプレイのフライング・モードの図のように固定翼機では機体が浮いているにはプロペラに「十分な推力があれば」という仮定で話を進めることができる。さらに沈下を伴なう滑空ということを考えれば自重で「十分な推力」を得ることができる。

 ところが回転翼機の場合は先のモード図の中央のようにローターの推力(T)が揚力(L)と前進力(F)の両方を受け持つ。

 オスプレイのローター・ブレードの寸法は長さ4.90m、弦長は基部で0.871m、先端部で0.669mであり、ブレード一枚の面積は3.77m2なので、これがエンジン一基あたり3枚、それが二基ということで22.6m2となる。

 垂直離陸(VTO)時の最大離陸重量での翼面荷重に換算すると1055kgf/m2、空虚重量では665kgf/m2となる。固定翼機の1.44から1.67倍、ざっと1.5倍の翼面荷重は固定翼機の速度に相当するブレードの回転速度で得られる揚力で補償されている。

 つまりヘリコプターの釣り合いは前提としてオートローテーションを含めてローターが回転していることが必須である。

 言い換えるとローターやプロペラの推力(T)は力(kNまたはkgf)と同時に特に回転翼機では仕事率(kW=kNm/s)として時間を含めて考えなければならないことを示している。

 さて回転するローターやプロペラのブレードは翼型の断面形状であり固定翼機の主翼と同じ原理が適用できる。

 しかしブレードが切る対気速度が断面位置の半径で変わるということは長いブレードの全長にわたって一定のねじれ角の翼として設計するとブレードの外周に向けて速度(半径)の二乗に比例して揚力が増加する。

(正確にはプロペラの回転速度とともにプロペラの回転面が進む速度(速さと方向)が関係する。詳しくは後ほど数式で・・・)

 結果としてブレードにかかるモーメントは増加するので強度を増やし、ひいては重量を増してしまう。

(またまた余談ながら、ヘリコのローターのばあいは遠心力と揚力をバランスさせ、駆動軸とはヒンジ〈蝶番〉でつないで揚力による曲げモーメントを消している・・・この説明は別の日に掲載)

 さらには長ーくて速度の速いブレード端に生ずる大きな圧力差による誘導抵抗で効率は悪くなる。

 そこで速度の遅い付根寄りの迎え角を大きくして先端に向って迎え角を小さくするいわゆる捻り下げが行なわれて、ブレードの全長にわたって揚力の大きさを平均させるようにしている。

 これらを前提に推力を計算する方法が「翼素理論」と呼ばれる。いうまでもなくこの論理や理屈はCEOの手にあまる。ホントは頭が付いていかないだけ・・・だけどね。(興味のある方は ここ から始まる連続 4 回の連載をご参照ください)

つまりは固定翼機の翼面荷重と回転翼機のブレード翼面荷重を比較するのは容易ではない。回転翼機のばあいはローター回転面(ローター・ディスク)面積荷重で考えることになる。

 そこで同じ事象を扱う結果オーライの強い味方「運動量モーメンタム理論」がある。

 こちらは(質量はあるが大きさがない)質点を扱う、
ニュートンの運動の第二法則
  「運動量(kg・m/s)の時間変化率は力に等しい」
ベルヌーイの定理
  
「非粘性・非圧縮性流体の定常な流れの流線上ではエネルギーが保存される」
の、二つの理論で定量的に解くことができる。

Momentum_theory_2 まず「ニュートンの運動の第二法則」から 「プロペラで作られる推力(kN = kg・m/s2) はプロペラを通る質量流量(kg/sec)に速度の変化量(m/sec)を掛けた値である」と定義される。

 m(kg/sec):流量質量
 ρ(kg/m3):空気密度
 A(m2):プロペラ回転面の面積
 V(m/sec):プロペラの進行速度
 ⊿v(m/sec):プロペラ回転面通過時の流速増分
 v'(m/sec):プロペラ後方での流速増分

 として、プロペラ回転面を通る質量流量は、
  m = ρA(V+⊿v)

 

 続いて推力Tは、質量流量と加えられた速度の積なので
  T = m(V+v'-V)=ρA(V+⊿v)v' ・・・(a)

 

 いっぽう、その推力はプロペラ前後の圧力差からも求められる。
 P0(kg/m2):大気圧
 P1:プロペラ回転面通過前の圧力
 P2:同通過後の圧力より
  T = (P2-P1)A

 つぎに、一連の流線は連続しており、プロペラの回転面をさかいにして、その前後で「ベルヌーイの定理」による二つの式が成立する。
  P0+ρV2/2 = P1+ρ(V+⊿v)2/2
  P2+ρ(V+⊿v)2/2 = P0+ρ(V+v')2/2
 より
  P2-P1 = ρv'(V+v'/2)

したがい、

  T = ρAv'(V+v'/2) ・・・(b

 (a)(b)両式より、
  v' =2 ⊿v

 よって、プロペラが作り出す推力は

  T = 2ρA⊿v(V+⊿v)

 この推力は重力(機体重量)や抵抗と釣り合っていますから⊿v を計算できます。しかも無風状態でホバリングしているヘリコなら機体重量だけです。

 さて、面積と速度の二乗に比例するのは固定翼機の揚力と同じだけど面積の中央部には推力には関係しないスピナーやヘリコでいえばただの棒の部分がかなりの面積を占めており、この公式はおかしいのでは、との疑問はもっともです。

 でも、それをいいだせば固定翼機の翼面積には翼型には似てもいない胴体部分の相当面積も含まれています。工学には「これでいいのだ」があるのです。

Hovering_4  つぎに回転翼機ではローターの回転面を水平にして揚力を得ています。

また回転面を少し傾けることで前後左右に移動します。

ホバリング時はV=0より
 Th = 2ρA⊿v2 = W

ここで示す W の単位は(N)です。
航空機のスペックなどで表記されている(Kg)ではありません。しかも、この場合の正確な単位の表記はキログラム・フォース(kgf)です。

N(ニュートン)換算には重力加速度 g (9.80665m/sec2)が用いられます。

ただ、同じ地球上でも両極と赤道、エベレスト山頂と日本海溝では重力加速度は異なります。

普通 9.8m/sec2 が使われます。
さて、 g を掛けるのか、割るのか、そして、質量の単位をもつρに対してか、力の単位である W に使うのか・・・ハムレットでなくても、工学では、それが問題です。

Air_flow_2 また回転翼機が一定速で水平飛行をしているときは、

TLF = 2ρA⊿v√{(Vsinβ)2+(Vcosβ+⊿v)2}

 β(deg):ローター回転面の傾斜角

 回転翼機ではローター回転面の傾斜角をローターの回転軸からの傾き、もしくは機体の傾斜を含めて鉛直線からの傾きとしています。

 しかし、ここではオスプレイは固定翼モード時のローター回転軸の姿勢である0度を基準として傾斜角を示しているようなのでそれにあわせました。

  なおオスプレイの回転翼機モードのナセルの傾斜角は機軸に対して85度以上とされています。なお回転翼モードでのナセル傾斜は後方の97.5度まで回転できるようです。

 したがいオスプレイの遷移モードは0度を越え85度未満となります。この分割で各モード間にまたがるグレー・ゾーンの処理を含めてフライ・バイ・ワイヤーのソフトウェア・プログラムのモードとパイロットが対応する操作マニュアルが変わると考えられます。

 その操作マニュアルにはパイロットが判断する速度や操縦操作の制限事項が細かに規制されているはずですが軍用機として実戦時のマニューバーを優先させるためコンピュータのソフトウェアによる補助は最小限になっていると思われます。

 日本政府の見解ではオスプレイは「機材としてのマン・マシン・システムについては概念的に完璧である」ということのようですが、パイロットが課せられる各モードの「ソフトウェアを含むマン・マシン・システムの信頼性」と「そのインター・フェースに適合できる人間」についてのヒューマン・エンジニアリングには手が出せないようです。

 軍用機の性格上ソフトウェアのソース・コードや詳細なマニュアルが公開されるはずもなく森本防衛大臣も苦しいですね。ただし、だから危険だ、と短絡するのもどうかと考えます。(閑話休題)

 さてこのプロペラの出力(P:kW = kN/sec)は空気の速度変化(⊿v:m/sec)と推力(T:kN)の積となります。
  Pi = T⊿v

 ここで添え字 i をつけたのは、これらの推力のもととなる⊿vはプロペラの翼面が作る誘導速度であるためです。誘導(Induce)と定義されますが翼の場合は吹きおろし(Blowdown)に相当し誘導抵抗とは異なります。

厳密にはエンジンの馬力がプロペラを介して推力という出力に変わるときにはプロペラ効率と呼ぶ係数が必要になります。この係数はプロペラの進む速さも関係します。プロペラの消費馬力が100%推力に変わるのではないことは頭にとどめておいてください。

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 ところでプロペラからずーっと離れた後流の端っこは大気圧であるのに関わらずその理論では2⊿vの速度増分をもっているのはなぜか?プロペラから離れた位置というとどれくらいなのか?など疑問に思われませんでしたか?

 答えはベルヌーイの定理の成立条件の定義(非XX、非○○)の中にあります。つまり、理論の前提となった空気は実際には存在しないからです。

 またプロペラ後流は収縮流だそうだがどのくらいプロペラから離れたあたりで最少径になるのか?それはどこまで続くのか?などなど考え出すととまりませんね。

 これはベルヌーイの定理で説明はできます。この定理は、目で見ることができるベンチュリー管と呼ばれるような断面積が変化するチューブのなかだけで流速が変化するだけではなく、プロペラ後流自身の速度による動圧が周囲の大気圧という静圧に押されて自ら流路面積を変えるのです。一般的には流管(あるいは流束)と呼ばれます。

 ちなみに風車の場合の後流は拡張流となります。風車の回転に使われて減少した運動量、すなわち速度が減ったためです。-⊿v として式を作れば解けますね。

 そういえば、ひところ戦闘機フリークのあいだで同じ系統のエンジンをつかった三菱「雷電」の紡錘形と中島「鍾馗」の直線的な後ろ向きの楔形の胴体形状について設計者のセンスの比較がされていたことがありました。

 つまり「三菱の設計はプロペラがなければ中島の設計より抵抗が少ない」と皮肉めいた揶揄で話題となりました。工学では飛行機(この場合は兵器)として有用であればどちらもありですが、いっぽうでは生産性や整備性、さらには調達費の問題が問われるのも工学です。

その前に「『理論は仮定で成り立っている理屈』、を学んでいる」と自覚しておくことも大切ですね。
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 それらはさておき、次回から以上の式を使ってオスプレイとそのベンチマークを順番に比較検証して行きましょう。交互機体(一発変換で出てきた)、もとい、乞うご期待。

2012年10月18日 (木)

キネマ航空CEO 固定翼機のオスプレイはどうよ?について考える(その3)

(承前)

・アスペクト比=翼幅の二乗/翼面積(10月20日に一部加筆追記しました)
 
V22_osprey_flying_mode_kai  本題に入る前に飛行中のオスプレイの釣り合いについてクリックで拡大できる図で概観しておきます。

 なお日本では単に遷移モードと呼ぶモード変換を米国では回転翼機から固定翼機への移行をコンバージョン・モード、固定翼機から回転翼機へはトランシジョン・モードと呼び分けているようだ。

 アスペクト比は飛行機の性能に関係する計算式のなかでは推力(T)に釣り合う機体の全抵抗(D)の中に現れる。図では右端のFixed-wing mode を参照しながらお付き合い下さい。

 全抵抗は次のように表される。

D = 0.5ρV2S(CDp + CDi) = Dp + Di

 括弧内の係数Cの添え字 D は Drag(抵抗)から。p は parasite(寄生している)からくるが日本語では形状抵抗とよばれる。この形状をしていると(イヤでも)くっ付いて生じる抵抗という意味だが日本語では形状(profile)抵抗(drag)係数と読んでいる。日本人て真面目なのですね。

 その形状抵抗(Dp)は前面投影面積に比例する圧力抵抗と機体表面の面積に比例する摩擦抵抗の和である。それがなぜ翼面積(S)に比例するのかというと翼面積でそれぞれの実面積を割った値をそれぞれの抵抗係数に掛けることで換算修正しており、その機体固有の形状抵抗係数となっているからである。

 したがい実機と精密なプラモデルでは同じ形状抵抗係数となる。ただし空気の分子の大きさは変わらないため粘性の影響を補正するレイノルズ係数を一致させておかないと同じ扱いはできない。(閑話休題)

 もうひとつの Di や CDi の i は induce(誘導する)からきておりこれはそのまま誘導抵抗及び誘導抵抗係数と訳されている。現実の翼には長さ(翼幅)があり両端では上下の圧力差で渦ができる。この翼端に発生する渦をつくるための抵抗を揚力から誘導された抵抗とその係数を指している。

  CDi = CL2/πAe

 この式のAがアスペクト比。e は空力効率(efficiency factor)で翼の平面形によって決まる。楕円翼では1、スカイバンやシェルパの矩形翼では0.8ぐらいになる。グレイハウンドの先端の丸いテーパー翼はその間にある。またCLは次式のなかの揚力係数。

  L=0.5ρg CLS V2より

 一定速で水平飛行の全抵抗(D)は揚力の式で L(Lift)=W(Weight) となる縦方向の釣り合いを使って CL2を消去すると

  D=(0.5ρSCDp)V2+( W2/0.5ρSπAe)/V2 = Dp + Di

 模式的に書くと次の図のようになる。

Photo  形状抵抗は速度(V)の二乗に比例し速度とともに増加する。

誘導抵抗は速度の二乗に反比例しておリ低速ほど大きく速度とともに減少する。

 また機体重量(W)が大きいほど大きく、アスペクト比(A)や翼面積(S)が小さいほど大きい。

 アスペクト比は「翼幅の二乗÷翼面積」で計算される。その翼面積は「翼幅X平均翼弦長」である。

 アスペクト比を書き直すと「翼幅÷平均翼弦長」となる。

 すなわちアスペクト比が大きいほど、翼面積が同じでも翼が細長くなり、誘導抵抗は小さくなる。 

 その結果、全抵抗(D)は離陸時が最大になる。

 何しろ誘導抵抗は機速(V)自体が小さく、フラップを出すことで翼面積(S)は大きくなり(翼面荷重は減るが)実効アスペクト比は小さくなる。

 誘導抵抗の部分をA=b2/Sを使ってさらに書き直すと( W2/0.5ρb2πe)/V2となり翼の形状としては横幅(b)と平面形状の係数(e)のみが関係している。

 また形状抵抗はフラップを出すことで翼の抵抗が増え、おまけに車輪も下ろしており、辛うじて飛んでいるといえる。(閑話休題)

 いずれにせよオスプレイはジェット戦闘機並みのアスペクト比である。

 ここでオールド・フリークならP-80、T-33のシューティング・スター・シスターズ、L-1049Gスーパー・コンステレーションなどの一連のロッキード機を思い出すであろう。それなりのアスペクト比を持ちながらなぜ高速になれば形状抵抗にしかならない翼端燃料タンクを採用したのか?

・・・搭載燃料を増やすのもさることながら翼端板効果で翼端渦を緩和し誘導抵抗を減らし航続距離を伸ばすため・・・とすればオスプレイの翼端のナセルもその効果があるのでは・・・

 翼端板の効果はいくつかの実験式が提案されている。手元のあるのはアスペクト比に⊿Aを加えて補正する式である。

  ⊿A=1.9Ah/b
     hは翼端版の高さ、bは(翼端槽を含む)スパン

  ⊿A=1.1A(2Se/S)
     Seは翼端板の面積、Sは翼面積

 オスプレイのナセルの寸法を図面などから推測するとh=1.85m b=15.2m Se=8.3m2 S=35.49m2であり、アスペクト比(A=5.44)の増分はそれぞれ1.26と2.8程度となる。ただし通常の翼端板の形状では両者はほぼ近似するようなのでオスプレイのナセルのように大きいと適用はできないようだ。

 かりに適用したとしても6.7から8.2の平均値で7.45程度であり、かろうじてセスナあたりの軽飛行機並みの値にはなる。

 ちなみにセスナ182のアスペクト比は7.5でほぼ同じだが最大離陸重量での翼面荷重は82.6kg/m2でオスプレイの11%程度である。

 とはいいながら、オスプレイにも工夫はある。回転翼機のローターを兼ねる直径の大きなプロペラはティルト・ローター機ということで最大径の制限を受けているけれど効率は良い。

 これはプロペラも翼型をしており同様に誘導抵抗が存在する。アスペクト比が大きい、すなわち直径が大きいほうが小さくなる。しかしヘリコのローターよりは径が小さいことに着目しておく必要がある。

 そのプロペラとしての回転面の内側半分は主翼のほぼ全長をカバーしており機速より速いプロペラ後流が主翼の揚力に寄与している。

 また

Mv22_osprey_proprotor_rotation  また回転翼機としてローターの反力を打ち消すために互いに逆回転をしている。具体的には固定翼機モードでは(後方より見て)左のプロペラは反時計回り、右は時計回りとしている。

 参考までにヘリコプター・モードでは上方から見て左のローターは反時計回り、左は時計回りと同じ回転方向となる。

 そのプロペラもしくはローターは回転しながら空気を後方に押し出すために後流は回転方向と同じ方向に捩れている。

その結果、両翼端の翼端渦を打ち消す効果で誘導抗力の低下が期待できる。

 また主翼の全長に亘って下面を押し上げる流れとなり揚力にも寄与していると考えられる。

 正確に言えば迎え角を増加させる効果があり遷移モードでの影響を考察することになる

 結論として固定翼機のオスプレイはその形態や機能からくる工夫は凝らされているがエンジンまかせ、力まかせの固定翼機であることは否めない。

 エンジンの信頼性にも関係するがアスペクト比や翼面荷重からは滑空性能は低く、その分緊急時の対応時間に余裕が少ないようで、あまり低空を飛びまわってもらいたくない機体ではあるようだ。

 固定翼機モードのオスプレイが行なうエンジン出力喪失時の最悪の運用では駆動系の損傷でなければいずれかいっぽうのエンジンで両翼のプロップ・ローターを駆動できる。

 すなわち、停止したエンジン側のプロップ・ローターのフェザーリングによる重力滑空ではなく、確率上では一方は残るはずのエンジンで動力滑空(自力で高度を上げることはできないが水平飛行はかろうじてできる状態)をして滑空比もしくは飛行可能時間を稼ぐ数世代前の民間の双発機の安全基準で設計された仕様ではなかろうか。

 いまのところ民間機と軍用機の要求仕様には違いがあるという政治や行政上の次元に踏込んだ技術論評はされていないようだ。少なくとも固定翼機モードから回転翼機モードに変換してオート・ローテーションがどうのという問題ではない。

 滑空比の比較もできるが妥当な形状抵抗係数などのデータを設定できれば、いずれ機会があれば、とします。(詳細検討は遷移モードの項でやってみます)

 構造的には両翼端に逆回転をする同じ機能のパワー・ユニット・ナセルが必須となる。タービンが逆回転する(少なくとも鏡面対称形のタービン・ブレードが必要な)エンジンを載せているのか、どちらかのトランスミッションに逆転用歯車を入れているのか定かではないが整備保守の工数や部品の管理が複雑になる。

 第二次大戦のころに大馬力のレシプロ・エンジンのトルク反力を嫌ってわざわざ逆回転するエンジンを作って開発された軍用双発機があったが生産型は標準のエンジンを装備して垂直尾翼を僅かにひねって取り付けることで解決していた。(閑話休題)

 民間機としては基本的に市街地で行なうティルト・ローター機のVTOL運用が前提であろうが少なくとも固定翼機の運用コストで考えると過大な期待をしないほうがよさそうだ。

 安定性、操縦性といった部分は外から判断するのは難しい。機体のピッチ変化や地面効果、さらにはフラップの開閉により主翼を通過した気流の吹き降ろし角の変化が水平尾翼に影響し安定性を損なうことがある。

 オスプレイやグレイハウンドは水平尾翼を主翼より上に配置しており影響は小さそう。シェルパは主翼より下方にあるが主翼から離れている。スカイバンが限界なのかもしれない。

 その他、回転翼機として要求される構造が固定翼機にどのような影響を与えるかについてはいずれ回転翼機の項で比較してみたい。

 おまけとして軍用については次のような漫画的な妄想が消えない。

 対空防御兵装をもたないオスプレイ自慢の高速侵攻に随伴してエスコートする米軍の航空機はどれだろう。防衛する側は小型ビジネス・ジェット相当の機体に太目の鋼製ワイヤーかチェーンの末端に翼をつけて吹き流しながらフラップを下げて速度を調整してオスプレイの編隊の上空を追い抜けば小火器の弾丸の貫通には強いが衝撃には弱いあの大きなプロップ・ローターを簡単に粉砕してしまうのでは・・・

 え?引っ掛けたビジネス・ジェットはどうなるのかって?・・・ショックがあった瞬間に大きなハサミでワイヤーを切っちゃうのです。なんならワイヤーの巻き取りウィンチごと投棄してもいい。一機70億円のオスプレイと比べれば安いものです。

 最新鋭の兵器には意外とプリミティブ(幼稚)な弱点がある。ベル・ボーイングのエンジニアはともかく、米軍の評価チームではこんなことも考えているとは思うのだが、長いもののなかにいたら言えないかもね。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

固定翼機の項(その3)で終わり。
回転翼機に入る前にプロペラ/ローターの理屈をもう少し勉強する必要がありそうだ。

2012年10月13日 (土)

キネマ航空CEO 固定翼機のオスプレイはどうよ?について考える(その2)

(承前)
オスプレイは固定翼機と比較しても輸送機とすればかなりの能力を持っているといえそうである。もちろんその性能に見合ったエンジンを搭載していることは間違いない。このことは民間機とすれば大きな減点要素になるであろう。

さて固定翼機の比較に使用する指標としては次の三つが上げられる。

                           V-22           C-2A                C-23(S-330)    SC.7
                      オスプレイ    グレイハウンド    シェルパ          スカイバン
出力荷重(kg/kw)
 最大離陸重量時  11.97           13.47        21.86             15.86
 空虚重量時          6.16             7.72                  13.72              9.32
翼面荷重(kg/m2
 最大離陸重量時   729.36          377.57                273.82            161.45
 空虚重量時          398.14          216.39               171.60             94.85
アスペクト比           5.44             9.24                  12.24              11.14

・出力荷重=重量/総出力
 自動車でいうところの馬力荷重で加速力や登坂性能の指標となり小さいほど優れている。航空機では加速のほかに上昇率、上昇限度、最高速度などの指標にもなる。

ただし性能は自動車ではタイヤの摩擦係数、飛行機では推進装置の効率や機体抵抗に関係する諸元で大きく変わる。とはいえ類似する機体どうしではそれなりの比較ができる。なお、この指標自体は航空機ではあまり使われていない。

 航空機の性能を実測する場合の基準重量には規定はあるようだ。しかし注記のない限り公表された軍用機の性能の公称値の多くは空虚重量に必要最少限度の燃料を搭載して測定したものと思っていてもまちがいない。また計算値のままの可能性もなきにしもあらずであろう。

 なお外国では逆数の総出力/重量(Power to Weight:kw/kg)が使われる。こちらだと感覚的には素直に値が大きいほうが優れていることになる。軽いほうが優れているとする日本人の感覚は繊細だと言って良いのかどうか・・・(閑話休題)

軍用に開発された機種は民間用途に比べると先の推測どおりパワーはかなり大きい。特にオスプレイはそうだが、これはヘリコプター・モードのためと思われる。このあたりは回転翼機の章で比較してみる。

・翼面荷重=重量/翼面積
 一般にこれが大きいと最高速度が大きいといわれる。しかしあくまでその速度を出せるエンジンの出力があってのこと。実質は飛行機を浮かす最低限の速度の目安である。小さいほど低速で飛べる。またエンジンの高空性能に依存するが上昇限度を高くできる指標となる。

 水平に一定速で飛行しているとすると揚力(L)=機体重量(W)であり揚力の式を変形すると機速(V)は、
  V=√{(W/S)/(0.5ρgCL)}
ここで翼面積(S)、したがい翼面荷重(W/S)の関数となります。この式は翼面荷重が「大きいほどスピードが速い」ではなく「大きいほど速く飛ばないと高度を維持できない」ですね。

空気密度(ρ)と重力加速度(g)は飛行条件が同じなら定数であり、パイロットが操作できるのは揚力係数(CL)です。現在の高度でより速く飛ぶには揚力係数を小さくして(具体的には操縦桿を押したりトリム・タブを操作して水平尾翼のモーメントで機首を下げて主翼の迎え角を小さくして)出力を上げることで可能になります。

また翼面荷重は飛行時間とともに燃料を消費して小さくなるので高度を維持して同じ速度で飛ぶには揚力係数を小さくしていくことになります。

なにもしなければ機体は徐々に上昇して空気密度が減少し高度と速度で釣り合いながら変化して行きます。ジェットライナーでは(管制承認は必要ですが)行程の半ばで高度を上げて空気密度を下げることで一定速を維持することも可能ですね。

高度が上がると空気抵抗も小さくなるので燃料消費とのトレード・オフで迎え角を少し下げて巡航速度を上げたりの選択もできます。

空気が薄くなるとエンジンの性能は低下するはずですがジェット・エンジンでは高速で回転しているコンプレッサー段で空気が圧縮されて(吸入空気密度が上がる過給をされて)いるので性能への影響はほとんどないのですね。(閑話休題)

固定翼機を浮揚させる速度を具体的に計算する条件はフラップなどの高揚力装置は使わないでかつ機体は極端な迎え角をとらずほぼ水平で浮揚している状態とします。

フラップなどの高揚力装置を作動させると揚力を高める効果と同時に抵抗も大きくなります。すなわち安定して飛行できる速度までの加速が苦しくなります。オスプレイの動画を見ても固定翼機モードに達した時点ではフラッペロンの角度は0度となっているようです。

標準的な定数として、ρ 空気密度:0.3125kg/m3、 g 重力加速度:9.8m/s2(質量を重量に換算する定数)、CL 揚力係数:0.6(迎え角によって異なるが水平飛行ではこのあたりが使われる)を使用すると先の浮揚速度の式を時速に変換すると V=3.76√(W/S) km/h となる。

                            V-22            C-2A                C-23(S-330)     SC.7
                            オスプレイ     グレイハウンド    シェルパ          スカイバン
浮揚速度(km/h)
 最大離陸重量時   101.4             73.0                  62.1                47.7
 空虚重量時          74.9              55.3                  49.2                36.6

空虚重量で飛ぶことはありません。それに近い状態での飛行はあるはずですので計算してみました。
いずれにせよ現実にはこれら数字は具体的な意味はありません。

たとえば15度バンクしたとすると揚力は翼の平面に直角に働きますが重力の方向は変わりません。したがい機体重量と釣り合う揚力の分力はCOS15゜(=0.966)倍に減少します。揚力は速度の二乗に比例していますからその逆数の平方根、約1.017倍のスピードが得られないと高度は維持できません。

また旋回を始めると遠心力と重力の合力に等しい揚力が必要になります。ようするに、この浮揚速度での操舵は非常に危険です。

さてカタログではオスプレイの固定翼機と回転翼機の両モードの飛行が可能な速度範囲は148-222km/hとなっています。

どうやら固定翼機としての浮揚速度の2倍の範囲で遷移モードを完了させるようです。おそらく離着陸時重量から得られる浮揚速度の1.5倍前後が固定翼機モード開始の機速となると思われます。

いずれにせよ低速時の航空機にとっては外乱に対して厳しい条件下の飛行になります。たとえば風速10メートルの突風というと10m/sのことですから航空機に対しては36km/hの突風に相当します。

気象用語では風速ではなく相等風力(開けた平らな土地で地上10mの高さでの10分間の平均風速が使われます。外乱となる突風すなわち瞬間風速は相当風力の1.5ないし2倍以上になることもあります。このあたりは遷移モードの回に検討してみます。

オスプレイはベンチマークの固定翼機よりかなりの高速で飛行する必要があります。ではでその浮揚速度以下を固定翼モードで飛行する場合はというと滑空着陸時となります。

この場合はほぼ翼の全長にあるフラッペロンを下げて揚力係数CLと抵抗係数CDを大きくします。つまり揚力を保持してする速度を下げるのですが接地速度はベンチマーク機よりかなり大きいと推定できます。

テストはされているとは思いますが気になる点は最初に接地するのは長大なプロップ・ローターです。これは機体重心より前にありますから先端が接地した時点で機体はつんのめり機首から地面に突っ込むことになると考えられます。このためかどうか開発過程で機首周りの対衝撃強度の設計変更があったようです。

場外着陸時の横方向への加害要因はベンチマーク機の翼幅と比べると大差ないと思われます。またプロップ・ローターは機体への衝撃緩和のために破損をしやすくしていると考えられます。

通常の滑空着陸の手順ではプロップ・ローターは抵抗を減らすためフェザーリングで回転していない、もしくは低回転でと想像できますが動力滑空で回転させている場合にはプロップ・ローターの破片が飛散する範囲はプロペラが接地することはない高翼型のベンチマーク機よりかなり広いと思われます。

(アスペクト比に続く)

2012年10月11日 (木)

キネマ航空CEO 固定翼機のオスプレイはどうよ?について考える(その1)

飛行機がわれわれを惹きつけるのは「より速く、より遠く、より高く」を目指して「より美しく」に集約される。しかしビジネスや軍事の実用用途では「浮揚して何ぼ、運べて何ぼ」が付きまとう。

航空機を「美しい」と思えるには感覚的な審美眼もあるが航空機が好きというファンはその感覚から来るものが何かを知った上でのことであろう。

では以上の項目をほぼ極限までに合理的に設計した航空機は?と問われればボーイング B-29 と応えても多くの人たちは首肯されるであろう。ただその美しさには禍々しい意図と実力が秘められていたことも事実である。

さて「浮かんで運ぶ」ためには構造物としての重量(空虚重量 Empty Weight)とその構造物重量に含まれるエンジンで離陸可能な重量(最大離陸重量:MTOW = Maximum Take-Off Weight)の二つの値が重要なカタログ・データとなる。

この MTOW は飛行場の海抜高度や気温、気圧によって変わる空気密度と使用する滑走路長の関係で機長や運行責任者がそのつど決める。その MTOW に合わせるために大雑把には次の式を満足させる必要がある。

(許容最大離陸重量-空虚重量-乗員重量) ≧ (有償貨客重量+付帯重量)+(必要燃料重量*+運行に必要な重量*)

特に * 印は飛行距離もしくは時間で決まる値に所定の余裕を加えた数字になる。さらに両辺が等しい場合は右辺の二つの( )はトレード・オフの関係がある。貨物を増すには燃料を減らして航続距離を減らしたり、目的地の空港が遠ければ旅客数を減らすことで上の式を満足させる必要がある。

それはともかくカタログ・データから、積載/空虚重量比(=最大離陸重量/空虚重量)を求めると次表のようになる。機体の構造重量の何倍なら一般的な飛行場から「浮かんで運べる」か、つまり実用できるのか、の指標となる。

                        V-22           C-2A              C-23 (S-330)       SC.7 
                        オスプレイ   グレイハウンド  シェルパ             スカイバン
空虚重量(kg)       15,032        14,130             7,276                  3,331
最大離陸重量(kg)
  STO / CTO       27,443       24,655             11,610                5,670
  VTO                  23,859          -                    -                       -
------------------------------------------------------------------
積載/空虚重量比
  STO / CTO        1.83          1.74                 1.60                    1.70
  VTO                  1.59            -                     -                        -

                       CH-46         CH-47 
                       シーナイト     チヌーク
空虚重量(kg)      7,048           10,185
最大離陸重量(kg)
  STO                 n.a.             n.a.
  VTO                11,023        22,680
-----------------------------------------
積載/空虚重量比
  STO                  n.a.             n.a.
  VTO                 1.56            2.23

CTO:Conventional Take Off(通常離陸)
STO:Short Take Off(短距離離陸), VTO:Vertical Take Off(垂直離陸)

略号の末尾にL(and Landing)をつければ離陸時と同じ方式で着陸も可能な機体を示す(CTOLなど)。
オスプレイは積載量が少なければVTOLが可能だが多ければSTOVL(Short Take Off and Vertical Landing)あるいはSTOL(Short Take Off and Landing)で運用される。
なおヘリコプターはVTOLで運用できるがVTOL機とは呼ばない。 
                           
さてオスプレイの例に見られるように積載重量費比は短距離滑走離陸(STO)時のほうが垂直離陸(VTO)時より大きい。このため車輪のついたヘリコでは滑走離陸を行なう場合が多い。

これは浮揚力が大きくなり相対的に抵抗が小さくなる地面効果を利用した滑走による加速で得られた速度すなわち横方向の運動エネルギーを縦方向の位置のエネルギーに変換することで上昇し高度を稼ぐ工学上の理由がある。

しかしベンチマークにした両ヘリコプターの最大離陸重量はどちらの離陸方式でなのかはカタログデータでは判然としない。シーナイトの場合はオスプレイの垂直離陸時に相当するがチヌークではオスプレイの滑走離陸時の値さえも凌駕している。

面白いのはショートS-330(C-23シェルパ)である。固定翼機のベンチマークとしたグレイハウンドやベースとなったスカイバンの値より小さくヘリコプターのシーナイト並みになっている。

なぜそのS-330が米軍の軍用輸送機のシェルパとなったのか?その理由は、たとえば、NATOの基地間でおこなうジェットエンジンの輸送などで重量そのものより貨物室のスペースとくに正方形の断面が必要であった、と考えられる。

このようにカタログ値も加工をして比較すればお目当ての航空機の工学的な個性を浮き出させると同時にカタログ・データの比較もそれなりに難しいことが理解できる。(続く)
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2012年10月 5日 (金)

キネマ航空CEO まずオスプレイの輸送機としてのベンチマークを考える

すこし時間が空きましたがオスプレイの話に戻ります。

要約は2012年7月11日の記事のとおりです。ただし数回続ける予定の本稿はオスプレイは、安全な、あるいは危険な、航空機であることを論証するつもりはありません。オスプレイはどんな航空機なのか、をすこしずらした視点で探ってみるだけです。しかしそのなかで技術上の革新性とそれに伴なう何らかの危険性を浮き彫りにすることになるかもしれません。
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オスプレイはティルト・ローターによるV/STOLが可能な回転翼機からの転換型固定翼機ではあるがその用途は輸送機である。輸送機としての計画諸元のベンチマークとなるのはどのような機体であろうか?

固定翼機としての外観上の特徴としては双垂直尾翼がプロペラ後流の中にある形態から双胴(ツイン・ビーム)タイプの輸送機に空力的な原型を求めることができる。ただしこれらは中型輸送機であり全長が20m以下の小型輸送機に限ると意外と少ない。

米軍機のなかに求めるとグラマンC-2 グレイハウンドが上げられる。原型はE-2 ホークアイ艦上早期警戒機であるが後部ローディングドアの開口面積を確保するため水平尾翼と垂直尾翼を装着するテール・ユニットを胴体上面より一段高くするなどの変更がありオスプレイと類似するコンセプトが認められる。

グレイハウンドの4枚の垂直尾翼はホークアイから継承している。しかし水平尾翼をV字から水平に変えている。これは空母の格納庫への収容で全高を抑えるためもあろうが垂直尾翼は4枚ともプロペラ後流のなかにあり空力上の効果を無視しているとはおもえない。

オスプレイとの基本的な相違は胴体断面の形状が円形を基本しており高翼配置の主翼の桁は天井上部の円弧で囲われた無効積載スペースを利用していることである。

オスプレイの配置はほぼ正方形の胴体の上に主翼桁を置いている。格納駐機時にはプロップローターを折りたたんで主翼を胴体の上で時計回りに回転させ占有面積を4分の1にするためといえなくもないがこれは副次的な結果である。

貨物を効率よく搭載するには四角な胴体断面とその胴体を主桁が貫通しないように直方体の胴体の上部に主翼の桁を乗せる。あるいは主桁に胴体をぶら下げる。次に主脚を胴体からすこし離して配置する。さらに後部には胴体断面と同じ大きさの開口部をもつローディング・ドアを設ける。

すなわちショート・スカイバンやそのストレッチ・タイプであるショート330あたりもレイアウト上のベンチマークになる。

V22_plane_mode ショート330はC-23 シェルパとして軍用輸送機として採用された。スカイバンの一体式の後部ドアは胴体後端に支点を置いた胴体内側はね上げ式だったがシェルパでは二分割されて、その後ろ部分は内部はね上げ式、前部分はローディング・ランプとして使えてグレイハウンドやオスプレイと同様の構造になっている。

オスプレイとスカイバンやシェルパとの大きな相違は脚の処理にある。オスプレイは引き込み式首脚にくわえて主脚を大きなバルジの中に引き込む。これはより高速飛行時の抵抗軽減と同時にバルジ自体が燃料や装備品の収容スペースとなる。

いっぽうのシェルパでは首輪を引き込み式にしたが主脚にフェアリングをつけた程度で済ませ、原型のスカイバンではタイヤむき出しの固定脚である。このあたりが飛行機の設計速度や軍用、民間の用途の差もさることながら設計者の割り切りかたでもある。

以上のベンチマーク3機種をほぼ同一縮尺で並べた固定翼機モードの添付図をクリックして別窓に拡大できます。

なおオスプレイは空軍タイプのCV-22で示す。識別点は機種左側に飛び出した小型のレドームです。

オスプレイの主翼面積は極端に小さく翼面荷重も高そうであり高速機であることを思わせる。というより速く飛ばなきゃ落ちてしまう機体といったほうが正しい。

同様にオスプレイの水平尾翼の面積はグレイハウンドに比べるとかなり小さいのは極低速飛行域では回転翼機モードで飛行するため固定翼機としての安定翼や舵の効果はほとんど必要がない、もしくは(速度の二乗で利く)効果がないためと推定できる。

次に回転翼機モードのベンチマークとなるとほとんど見あたらない。サイド・バイ・サイド・ローターのヘリコプターは何度か試作はされているがこれといって成功した機種はない。そこでタンデム・ローターの機体との比較になる。

ベンチマークとしてH-46 シーナイトとH-47 チヌークをほぼ同一縮尺で並べた回転翼機モードの添付図をクリックして別窓に拡大できます。V22_helicopter_mode

オスプレイの開発は「タンデム・ローター・ヘリコでパイアゼッキの流れを汲むバートルとそれを吸収合併したボーイング・ローター・クラフト社」と「主翼と一緒にエンジンとローターを傾斜させるティルト・ウィングから始まり主翼は固定したままエンジン-減速機-ローターのユニットを翼端に付けたティルト・ローターに取り組んでいたベル・ヘリコプター・テキストロン社」の共同で行なわれた。

また技術的な解析や支援はNASAが行なっていることも忘れてはならない。

機体の重量を支えるサイドバイサイドのローターの回転面の中心を結んだ線から大きくはみだしている機体の部分にある重量に関係する動安定はタンデムローターの場合と大きく異なるであろうことは後日の同じカテゴリーのコラムの中で書いておりますのでご参照ください。

少なくとも、「チヌークを横向きにとばしているヘリコプターだから安全だ!」ではない。

ちなみにベル社は今でこそヘリコプター・メーカーとして知られるが固定翼機も手がけていた歴史がありVTOLのできる固定翼機にはある種の執念があるようだ。

さて本稿のテーマである輸送機であるオスプレイのカーゴ・スペース(貨物室寸法)をベンチ・マークと比較してみる。

例によって寄せ集めの数値なので細かな整合性はとれていない。
数値は運行上の実用寸法で( )内は貨物室の実寸法。
また / は幅では天井/床、高さでは両側部/中央部の寸法を示す。
n.a.はNot available(未入手)。

                 V-22            C-2A                         C-23(S-330)     SC.7 
                 オスプレイ    グレイハウンド               シェルパ           スカイバン
幅(m)          1.74(1.80)     1.43/2.11(1.57/2.24)    1.78(1.88)          1.78(1.88) 
長さ(m)        6.34(7.37)     1.71/6.54(8.38)           8.38(8.48*)        5.57*(5.67) 
高さ(m)        1.67(1.83)     1.60/**(0.84/1.65)      1.82(1.98)          1.82(1.98) 
---------------------------------------------------------------
床面積(m2)  11.0(13.3)     16.3(18.7)                   14.9(15.9*)         9.91*(10.6) 
容積(m3)     18.4(24.3)     24.4**(28.6)                27.3(31.6*)        18.0*(21.1) 
* 推定 ** 高さに台形状の断面部分があり床面積と容積は整合していない

                 CH-46         CH-47
                 シーナイト       チヌーク
幅(m)          n.a.(1.83)        n.a.(2.29)
長さ(m)        n.a.(7.37)        n.a.(9.30)
高さ(m)        n.a.(1.83)        n.a.(1.98)
------------------------------------------
床面積(m2)   n.a.(13.5)        n.a.(21.3)
容積(m3)      n.a.(24.7)        n.a.(42.2)

オスプレイは米軍最大のタンデム・ヘリコCH-47チヌークの代替ではなくCH-46シーナイトに合わせた搭載スペースで設計されている。

固定翼機でみればスカイバンと同等なカーゴ・スペースであることがわかる。またグレイハウンドとシェルパはほぼ同等のカーゴ容積を持つがグレイハウンドは荷室の高さが低く幅で稼いでいる。

はからずもほぼ同じ容積の貨物室をもつオスプレイとスカイバン、グレイハウンドとシェルパの軍用と民間機ベースの機体の比較をする機会ともなる。

つぎにこれだけのカーゴ・スペースを運用するための機体設計諸元と性能の比較をスプレッドシートで添付する。V22_bench_mark

例によって寄せ集めのデータであり整合性を問われるとつらいところがある。

なお、軍用機としての輸送機には兵站貨物ばかりではなく戦闘要員輸送の側面もあるが基本的には同じ離陸重量内の差であり本稿では言及しない。

さて、以上の諸元や性能から「固定翼機モード」「回転翼機モード」「遷移モード」について3回にわたって考察してみようという趣向です。

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【お願い】
以上及び今後の記事に使用している数値、数式その他に疑問や異論があればお寄せ下さい。適宜修正、訂正を行なうことにやぶさかではありません。

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