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2014年3月 9日 (日)

キネマ航空CEO セトリング・ウィズ・パワーについて考える。(その1)

2014/03/21 ボルテックス・リングに陥るまでの迎え角についての図面を差し替えました。詳細につきましては同日リリースの『キネマ航空CEO セトリング・ウィズ・パワーについて考える。(その1の補足)』をご参照ください。

2014/03/25 このページの下方の数行を赤字にて修正と加筆を行いました。

航空機が空中で遭遇する、とくに離着陸時の低速飛行においては致命的なダメージを与えかねないウィンド・シェアやウィンド・ガストは自然が空を飛ぶものに与える試練である。

Us1a

動力回転翼機はその試練を自ら作り出すことになる。

左の写真は海上自衛隊の広報サイトから借用した救難飛行艇 川崎 US-1A の離水です。

何となく理解できている、プロペラ後方に機体の速度より早い空気流(プロペラ後流)が筒状に流れていることが、プロペラの先端から翼端渦と呼ばれる渦が放出されて、らせん状に空気流を包みながら流れていることで可視化されています。

肉眼では一瞬であろうが、写真はプロペラが回転することで生じる負圧が空気の湿度や温度などの条件で発生させる水蒸気を画像に固定してみせてくれる。もちろん、この渦やプロペラ後流は目に見えなくても存在している。

ちなみに US-1A の低速時に現れる「左傾左旋」の性向は、このよじれたプロペラ後流による。US-2 ではエンジンの取り付け角度を変えることで打ち消している。(閑話休題)

V22_with_vapor

さて、水蒸気の『らせん』は、オスプレイにも発生するようである。画像検索エンジンで『rotor vapor trail 』を検索するとヘリコに発生する例もヒットする。

つまり、この現象はヘリコにもついてまわる。

したがい、大雑把にまとめると動力回転翼機では自らが作るローターの下降流のなかに機体を降下させたり、編隊を組む僚機の下降流の中に飛び込む場合が考えられる。

これはセトリング・ウィズ・パワーSettling with Power : 動力による沈降)とかボルテックス・リング・ステートVoltex Ring State : 輪状渦状態)と呼ばれる現象または状態に陥る危険を示している。(訳語は当CEO独断です。)

セトリング・ウィズ・パワーの始まりから説明した図は(どこかにあるのだろうけど)見かけないので当CEOが3枚+1の図を作成してみました。すべて正しいかどうかは詳しい専門家のコメントに任せますが、キネマは虚実の皮膜を描くから面白いのであります。

1_hovering__2

・ ホバリングおよび緩降下の状態では・・・

図中、オスプレイのイラストは必要ありませんが、カテゴリーがそうなので主役を張っています。

これはすべてのヘリコのメインローターでのお話です。

原理はまったく異なるけれど、でんじろう先生が広めた 空気砲 をイメージしておくのもよい。周囲が静止した空気の中に空気の流れができ、(『らせん』ではありませんが)周囲の空気を巻き込む渦の輪が見えるところでは同じです。

さて、ローターは下降流をつくります。その下降流はローターの翼端にできる翼端渦を、らせん状に曳きながら下方に向かい進んでいきます。

同時に下降流はらせん状の渦に多少のエネルギーを供給しながら下方に送り、機体を支えています。

2_hirate_decent_2

・ 高速垂直降下では・・・

パイロットの基本操作としてはコレクティブ・ピッチ・レバーでローター・ブレードの迎え角を小さくして下降流を少なくすることでローター(機体)は自分の作った、らせん状になっている渦の輪の間隔を圧縮しながら降下をしていきます。

さて、渦には強制渦と自由渦があります。ローター・ブレードの先端で作られた負圧で作られるのが強制渦です。

その強制渦に周囲の空気が巻き込まれて作られるのが自由渦です。

写真に映るのは強制渦とその近傍と考えられます。実際は白い蒸気の見えなくなった部分にも渦は存在しています。

このイラストも実際には下になるほど自由渦として太くしたほうがいいのかもしれません。

自然界の低気圧や台風では、中央のわずかな部分が強制渦ですが周囲のほとんどは自由渦です。ローターに発生する渦は局部的に発生するつむじ風か積乱雲に吸い上げられる竜巻に相当するかもしれません。

さて、同じ方向にまわる台風などの自然界の渦は接近しても合体することはありません。
(映画「パーフェクト・ストーム」(2000)でも合体していなかった・・・ヘリコ映画でもあるがほとんどがCGなのが残念 ・・・閑話休題)

では、「ヘリコの場合のように強制的に接近させれた渦がどうなるのか?」については知見が見当たりません。

ヘリコのパイロットがこのような状態に陥った場合、「渦は合体してより大きなエネルギーを持った渦になる」としたほうがはなしは簡単ですが、ここでは「合体しない」として、はなしを進めます。

で、機体の降下速度に下方に向かう渦の回転速度も加わり、迎え角が減りローターの揚力は小さくなります。(後ほど図解)

さらに機体の高度が下がると密接したいくつかの渦を通過することになります。このときローターに対する迎え角となる渦の接線速度は急激に変化してローターはバタバタと暴れ始めます。

(このときの操縦はサイクリック・ピッチ・レバーが利くあいだに機体を前傾し急降下で下降流の渦のそとに脱出する操作が基本です)

しかし、ここでパイロットはコレクティブ・ピッチ・レバーでブレードのピッチを上げ上昇しようとした、とします。

3_voltex_ring_state

・ ボルテックス・リングに入っちゃった・・・確かに動力沈降だな・・・

このときのブレードの『はたらき』については別図で概観します。

結果的にピッチを上げて得られた揚力と同時に、その揚力に比例して生ずる翼端渦はブレードに対する下降流となってしまい、ピッチ上げで増やした迎え角を減殺して揚力自体を減少させます。

いくらエンジンの出力を上げても高度を維持することには使われず(Settling with Power)、ドーナッツ型の渦(Voltex Ring)を再生産するだけとなります。

この状態では、元の下降流や、らせん渦輪とは切り離されています。

ローターの内側にもボルテックス・リングがあります。これはブレードの内側の周速が遅く筒抜けなっていることによるものです。これはオスプレイのようにカフスによってスピナーにつながっているブレードでも同じです。

次にローター・ブレードの翼型から見ていきましょう。図の翼型はヘリコ、ましてやオスプレイの翼型でもありません。

説明に使う揚力(Lift)や抗力(Drag)は特定の翼型を使用してはいません。あくまで迎え角(Attak Angle)が増えれば揚力が増え、最上図の迎え角が最大揚抗比を示すとして作図してあります。

図を見るときの基礎知識として『迎え角』とは翼型の前後を結んだ直線(翼弦)と風がくる方向とがなす角度であります。そして揚力は風がくる方向と直角、抗力は風と同じ方向に向かっています。(つまり揚力は翼弦に対して直角にはたらくのではない)

したがい、迎え角は翼が機体に取り付けられた角度とは同じこともあるが本質的に違います。揚力とか抗力という言葉は、翼型の性能を定義し易くするための便法です。

このため翼に対する揚力と抗力は、機体の前進速度に上昇または下降の風速との合成によって迎え角の変化に相当して変わり、機体に対する揚力と抗力はさらに大きく変わります。

以下、うまく説明できていればいいが・・・

41_airofoil_in_voltex_ring ・ 正常なホバリング状態
NORMAL OPERATION

ローターの周速が流速となって適正な迎え角を持って翼型に向かっている。

ここでピッチ(機体に対する迎え角)を小さくして揚力を抑えて機体が降下を始める。

・ 下降流の影響を受け始める
Into DOWN WASH

降下速度を大きくしすぎて下降流のなかに入る。

下降流とブレードの周速の合成流速によって流速に対する翼型の迎え角が減少し(図では 0 度)揚力は減りさらに下降を始める。

下降速度が速くなれば迎え角は負の側となりやがては負の揚力(下向きの力)になる。

ほっておけば重力ばかりではなくローターの力でどんどん下方に加速することになる。

そこで慌てて・・・

・ (誤った)修正行動
CORRECTIVE ACTION

パイロットはその直前にコレクティブ・ピッチ・レバーを引いて迎え角を増加させて揚力は増えるが、同時に増えた揚力(翼型上下の圧力差)で翼端渦を強化させてローターの回転面に『らせん』状ではなく『リング』状の渦の輪を作ってしまう。(なんだかホラー小説か映画みたい・・・閑話休題)

合わせて抗力も増加してエンジンの出力は渦の輪を太く強化させることで消費させられる

・ ボルテックス・リング内に陥る
VOLTEX RING State

ボルテックス・リングの下降流が大きくなり合成流速による迎え角も減少し(図では 0 度)揚力も減る。

同じ 0 度の迎え角でも機体に対する迎え角が大きいため実質的な揚力はさらに小さくなる

つまり、エンジンは快調でローターも渦の中で回ってはいるが、機体は降下より速い速度で沈降をつづけることになる。

この状態でエンジンの出力を絞り、コレクティブ・ピッチ・レバー押す(戻す)とブレードは負の迎え角となる場合もあります。図の説明を延長するとボルテックス・リングからストンと抜け出せそうです。

次回のヘリコの降下角選定チャートに示すように垂直降下(水平速度ゼロ)の場合の危険域は薄いので十分に高度がある場合はセトリング・ウィズ・パワーからの脱出手順になります。

しかし、抜け出すときに機体やブレードの姿勢が水平のままとは限りません。脱出はこれに続く機首下げの急降下によるオートローテーションに似た回復操作の技量があれば、に加えて、運がよければ、の世界のようです。

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そうならない為にパイロットが認識しておくべき搭乗機の挙動性能がある・・・・は、次回(その2)のこころだー!

「・・・で、接近したけど合体しないローター端の渦はどうなったのか!! 」ですって?
多分ボルテックス・リングができるときにその渦に呑み込まれちゃったのでしょう。

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