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2020年12月の2件の記事

2020年12月 8日 (火)

ミッドウェーの「運命の5分間」の後先き・・・スマート、ステディ & サイレント・ネイビィで零式水偵の士官偵察員になってみる、の巻

前回の#10による偵察機搭乗員の作業教本に続いて#11の士官搭乗員教育教範から少し俯瞰的な見方をしてみる回です。

そして、今回の副題はラシキモノについて考える、の巻であります。

参考にした#11は偵察業務に限らず更に広範囲に亘っている。ミッドウェイでの敗北後に作成され書き取られた士官教育用の軍極秘扱い資料です。

なお偵察関連の項目を抽出と文中の(省略)も当CEOが行い、引用部の誤記、誤字脱字は当CEOの責任であります。 

対象は前回とは異なり士官の教育用であります。いずれにせよ士官の義務は上官に対しての報告責任であり多くは下士官兵に対する期待と言うより教育と命令の心得であります。要するに中間管理職のマニュアルでありますね。

しかし、ミッドウェイにおける航空艦隊第八戦隊の航空参謀や艦橋要員は全く読まなかったのか、忘れたのか、と言う個所がたくさん出てくる。

当時の一艦の航空業務の運用を取り仕切っていたのは飛行実務を経験した士官の飛行長であった。 艦隊や戦隊付の佐官クラスの航空参謀も多くは飛行長を経験していたが少なくとも空母では偵察士官から新補されることはまずなかったし、なったとしても水上偵察機を運用する戦艦、巡洋艦であったようだ。

当CEOが気になった個所に付けた赤字は飛行長や航空参謀が何をしなかったかの疑問であります。

例えば、航空講義二、計画(ニ) 索敵機ノ索敵線到達時刻ハ、一般ニ軽視サレ勝ナリ。注意ヲ要ス

扇状の七本の索敵線の4本目(すなわち中央)を飛ぶ利根四号機の射出が30分遅れたのは対潜哨戒機の発進を優先した第八戦隊旗艦利根の司令部が判断した、「され勝ちな軽視であった」が、後年の評価では「遅れたために発見できた」となっている。

ちなみに僚艦筑摩利根四号機の北側の二本の索敵線零式水偵各一機をほぼ定時に発進させて、その後に九五水偵一機を対潜哨戒に出している。

ただ、利根四号機の北隣の哨戒線を飛ぶ士官機長の機は敵艦載機との遭遇報告を怠り、加えて雲上を飛び敵艦隊の上を越えて見逃し、その北側の一機は天候不良とエンジンの不調で引き返している。(むしろ、組織論としては無線傍聴の監視だけにとどめた米海軍の判断はどの職責の士官が進言し指揮官が命令を下せたのか、のほうが重要)

前回まとめた偵察員須知(心得) 二、敵発見時ノ処置では、(ニ) 敵機発見ノ場合(イ)隠密避航ニ努メ時刻、機種、機数、位置、針路、飛行高度、携行兵器ノ種類ナドヲ報告ス。 (ロ)艦上機ナリヤ陸上機ナリヤ、マタ水上機ナリヤ飛行艇ナリヤノ区別ヲ確認ス (ハ)艦上機ナル時ハソノ機ノ行動半径内ニ敵空母ノ存在スル公算アリ、水上機ナル時ハ付近ニ水上艦艇アルベク、陸上機モシクハ飛行艇ナル時ハ付近ノ島嶼ニ基地アルコト確実ナリ

(敵の手の内で行ったともいわれる)奇襲による真珠湾の成功後のインド洋遠征で経験する遭遇戦を深めることもなく、初めて行った本来の敵主力との遭遇戦となった珊瑚海の戦闘も分析されないまま「気の緩み」とされる怠慢は末端の士官にもあったようだ。

同様に利根四号機の報告した発見位置のズレについては索敵命令を出した機動部隊司令部、発進を命じた第八戦隊司令部の幕僚の実務上の怠慢と記録されるべき失態でありました。

先の航空講義 の 二、計画、に続く 三、実施、では (イ) 索敵機飛行中、幕僚ハ予メ準備セル索敵図ニ予定時間ヲ記入シ、索敵線及飛行時間ニ依リ概位ヲ判知スルヲ可トス

さらに、利根四号機の積極性については、兵術参考綴、偵察課題、では
A 1、先ズ敵発見ノ第一電ヲ打ツ 敵機動部隊見ユ
 地点イロハ一 ・・・時・・・分、次ニ、適当ナル位置ニ避退シ、隠密ニ敵ニ接触シ、敵兵力、針路、速力、天候ヲ確認、味方指揮官ニ第二電ヲ発ス。例:敵機動部隊見ユ B・・・C・・・D・・・T・・・ 針路300 速力二十節、附近上空ニ断雲アリ、雲量4、視界10
 
2、味方攻撃隊発進、攻撃隊ノ現場到着前45分ヨリ、味方攻撃隊ノ無線誘導ヲ開始ス。

利根四号機の積極性に関しては、「隠密に接触を再開できる位置まで待避する」が間違った行動をしているとは言えない。強いて言えば戦闘詳報に記録された信文には天候がないようだ。本当になかったのか?

関係者から指摘される利根四号機の積極性には、敵ラシキモノの多用が入るのだろう。ラシキモノとはなんだ!と赤城艦橋で参謀が息巻き「艦種知ラセ」と第二電を要求する電令を打つことになる。

この用語は実際に無線暗号(短縮記号)で存在する。

今回追加した参考図書 、
 #14 太平洋戦争敗戦の深層に迫る 加藤 卓雄 2014 文芸社

で、加藤氏は「敵ラシキモノ見ユ」では偵察報告としては意気が上がらない。敵ラシキモノのような曖昧な語句ではなく日本海海戦の端緒を開いた信濃丸のように敵艦見ユ・・・と打つべきだったと書いている。

たしかに今回取り上げた兵術参考綴の第二報の例文には具体的に「機動部隊見ユ B・・・C・・・D・・・T・・・ 針路300 速力二十節 附近上空ニ断雲アリ、雲量4、視界10」。

ちなみに、・・・は隻数、B:バトルシップ(戦艦)、C:クルーザー(巡洋艦)、D:ではなく d:デストロイヤー(駆逐艦)、T:トランスポート(輸送船)、記載はないが、A:エアクラフト キャリアー(航空母艦)と、使用記号としては意外とそのままだった。

 #14 によるとラシキモノは訓練演習時に使われた用語らしい。

ラシキモノは曖昧な語句、というより商船相手ではともかくとして、演習や訓練で発見すべき敵は(畏れ多くも)天皇陛下の艦(ふね)であり「敵と言えども味方である」と曖昧化する忖度をした信文用語を作り、下士官兵に対しては説明せずに打電をさせていた、と当CEOは解釈する。
飛行士(または機長)から通信士に対して口頭で指示命令する信文である「ラ シ キ モ ノ」をそのまま一字づづ打っているわけではない。ニ、三文字に記号化されている。さらに言えば解読時に機械的に付け加えられた可能性も残ってはいる。(閑話休題)

偵察員教育において、実戦では敵艦見ユ ・・・を用いる、と教えていなかった結果に直面し、海軍組織が作り出した「記号の曖昧さ」に拘泥する赤城艦橋の高級参謀右往左往の図、が見えてくる。

本来ならば、味方の別動部隊が索敵線の方向にいるはずがないことを知る南雲司令部の高級参謀が判断すべき事の軽重の問題と言える。

さて、航空講義 二、計画 には、 (ホ) 偵察機ノ帰着後ノ報告ハ、必ズ天候視界ノ状況ヲモ併セ聴取スルヲ要ス、とある。

後年の書籍では利根で「聴取を行った結果、異状は無かった」とまとめられているが、特段の被害を受けていない利根艦橋に残される資料からではなく後のインタビューによる記事である。

それこそ偵察機の行動基準位置となる利根の艦位は正しかったのか? 無線封鎖の中で艦隊の位置としてKdB(機動部隊)内で共有されていた位置から発進したのか?

さらに、当CEOを悩ます謎の一つに、「なぜ敵艦隊の位置を発進時の艦の位置を基準とせず、ミッドウェー島としたのか」、がある。戦務講義では、(三) 敵情報告2b.航空機ノ敵艦位報告ハ、味方部隊トノ関係位置ヲ以 、とされている。しかし、戦闘詳報では後続した偵察機も航空機に対しては前者、敵艦船に対しては後者で交信しているようだ。

ミッドウェーは既に味方部隊の駐屯地としていたのかもしれない。 全ては敵艦隊よりミッドウェー島攻略を優先する「機動部隊司令部の参謀の心理的な都合による命令」があったためと考えられる。

その結果として、機動部隊の参謀や司令官が本来持つべき大局観、直感による平面を俯瞰する(下世話に言えば岡目八目の)認識を妨げていた。

その中を、日本海軍は、自分達で描いた奇襲戦遭遇戦後者が、山本連合艦隊指令長官の思惑であったが、後述する奉勅命令に縛られて文書化した作戦指導できなかった)を同時に進行させて、陸軍参謀本部命令大陸令第六百二十四號による一木支隊2000名、後段で述べる大海指による海軍陸戦隊2500名、設営部隊2600名を擁する輸送船団で西からミッドウェーに接近している陸海軍の協力による上陸部隊の上陸占領駐屯海軍軍令部総長が畏れ多くも奉じる奉勅命令「大海令第十八號」がこれであり、敵艦隊撃滅命令などはなく「細項ニ関シテハ軍令部総長ヲシテ指示セシム」とあるのみ)を支援する奇襲戦の成功を大前提とする中での遭遇戦という概案(シノプシス)を作成した。

すなわち奉勅命令により永野海軍軍令部総長が作戦要領の最後の一行に潜り込ませて反撃してくるかも知れない敵艦隊の撃滅を命令した 「大海指第九十四號」を受けて聯合艦隊が作成した「機密聯合艦隊命令作第十二號」という図上演習では統括官である宇垣連合艦隊参謀長の一声で赤城の被弾数を覆した台本(シナリオ)を演じながら、日本海軍の暗号を解読して待ち伏せていた米陸海軍が繰り出すミッドウェー島TF16TF17という三方からの絶え間ない航空勢力の多彩な攻撃法のアドリブに翻弄されていた。

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 余談ながら図上演習では敵空母群の先制攻撃(攻撃方法は不明)を受けて赤城加賀の被弾判定は9発であったが赤城は3発に変更されて被害は沈没から損害軽微へ覆されて状況は継続された。

 実際の戦場での被弾は至近弾1、命中弾2だった。 そして、残る7発には余る、甲板や格納庫にあった魚雷や爆弾の誘爆、燃料の引火による爆発と延焼であった。

 この演習で赤軍(米軍)の指揮を担当したのは戦艦日向艦長の松田大佐であった。 赤軍は状況開始に合わせて空母部隊を「作第十二號」で想定している反撃のためにハワイからの出撃ではなく先制攻撃の状況を取った。 

図上演習でも青軍(日本の機動部隊)の索敵は失敗していたのか?・・・演習の経過は防衛庁戦史室の倉庫に眠っていると思うのだが・・・青軍は奇襲のために索敵をやっていなかったのか?

 史実の連合艦隊の偵察計画ではハワイ軍港監視に派遣する二式大型飛行艇と潜水艦が会合し燃料を補給するフレンチフリゲート環礁に敵の水上機母艦が進出しており計画を中止、潜水艦隊による2~3段の警戒線の参加隻数は故障で減り展開が遅れていたので敵の特命部隊(タスクフォース)は既に北側をすり抜けており現実に近い状況の図上演習となった。

 そして、図上演習の総括は連合艦隊参謀長宇垣中将からの指摘も機動部隊参謀長草鹿少将からの回答も「このような状況にならぬようにする」であった。

 草鹿参謀長は少佐を任官して二年間(1926/12-1928/12)に航空関係の座学教官と「航空偵察の研究」を行っていた飛行実務はその間の半年ほどの偵察員としての経験であった。 宇垣中将との同じような問答の中では「偵察を巌にする」と答えてはいる。

 しかし、少佐時代の経験から14年半ほど経過したミッドウェー(1942/6)での参謀長である少将の彼は、吉岡次席航空参謀の立案した索敵計画をそのまま承認した源田航空参謀に対する指導はなく攻撃優先の驕りに染まっていた。

  半年前の真珠湾の経験は草鹿少将の14年余の時間を飲み込んでいた。

 なお、日向には試験的にレーダーが配備されていたがミッドウェー作戦に並行する囮を兼ねた同様の作戦であるアリューシャン作戦に回されていた。 電波管制が厳しかったミッドウェー作戦に加わっていても活躍できたかどうか。

 電波管制は全艦隊に及び、後方と言えども出陣していた傍聴情報が集まる連合艦隊旗艦大和においても司令長官の幕僚は前線部隊と共有しようとはせず山本長官でさえこれを是正しなかった。

 余談を重ねるとミッドウェー作戦の総括は、その後の作戦でミッドウェー環礁の占領に予定されていた陸上要員はガダルカナルから沖縄へと転戦、補充されてほとんどの将兵が戦、病、餓死を迎え、アリューシャン方面ではアッツ島の玉砕、その引き替えのキスカ島の全将兵撤退、アリューシャン列島のアクタン島の沼地に不時着転倒して米軍に鹵獲されたほぼ無傷の零戦1機であった

・・・以上、長々と続けた米陸軍航空部隊ドゥリットル中佐が率いた16機のB-25から長く延びた影の中の叙事的閑話を休題します。

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さらに、もう一つ、(ミッドウェーからの敵攻撃下で)第一電となった1942年6月5日東京時間 04:28 の利根四号機よりKdB司令長官に宛てた信文『敵ラシキモノ一〇隻見ユ ミッドウェー ヨリノ方位一〇度二四〇浬針路一五〇度速力二〇以上』は、一言一句この通りの文章で打たれたのかを考察しておく必要がある。

#14では、日露戦争において信濃丸から発信されたバルチック艦隊発見の第一報は『敵ノ艦隊二〇三地点ニ見ユ、時ニ午前四時四五分』だった。著者が言う通りの引き締まった名文である。

この時代に全文暗号だったかどうかは分らないが、「敵ノ」「ニ見ユ、」時ニなどの助詞は受信側で付け加えられたのではないかと思われる。

少なくとも地点の「二〇三」では地図上を区切った格子の暗号が用いられている。兵術参考綴第一電の例文においても地点は「イロハ一」で示されていた。 作戦詳報においては南雲機動部隊司令長官から山本連合艦隊司令長官に宛てた信文の地点は「トシリ一二四」 や「ΦΦ」 などの記号暗号で発信されている。

利根四号機の第一電の信文もこれと同じく「敵」「場所」「時間」を暗号で発信し、受信した第八戦隊(8S)の旗艦利根の電信員が聞き取りした信文から報告用の受信用紙に平文に書き直し(上官の添削や8S参謀の承認を受けて)、双方の発光信号員を経由して赤城KdB司令長官に転送報告したはずである。

ここでの問題は、果たして利根もしくは赤城で「(信文の)暗号記号から(平文の)角座標」に書き直したかどうか、あるいは戦中戦後を問わず出典の原本を編纂する時点で現在見る平文処理を行ったのではないか、の可能性が残る。ここでは機動部隊が信文と平文の「使い分け」を行っていたとして進めている。

#14の著者が指摘する利根四号機の信文というより平文が締まらないのは、敵襲下の緊張で機械的に処理したのかも知れないが利根の通信士官や8S司令部の参謀には明治の軍人ほどの文才がなかったようだ。

さて、地図を格子状に区切って番号を振る暗号方式は、ミッドウェーの「運命の5分間」の後先き・・・スマート、ステディ & サイレント・ネイビィ (第ニの疑問 の手掛り)について考えるの巻 の中で #8 からのキャプチャー画像で触れている。

ただし、画像自体は考証的には戦後になって米海軍から海上自衛隊にノースアメリカン SNJ-5/6 練習機 と一緒に貸与された航空図板のようで日本海軍も、と遡推するには多少ならず疑念はあるけれど格子には番号が振られていた。

端的に言えば、日露戦争の事例で示すように洋上で動く敵(Moving Target)をピンポイントの位置で示してもあまり意味はない。 第二電で送られる敵針、敵速、雲量、視界が索敵と攻撃に向かう偵察機や攻撃編隊が展開するために必要な場所を区画で示す情報のほうが実用になる。

纏めると利根四号機がミッドウェーで使用した信文も、8SKdBの各旗艦である利根赤城の艦橋で参謀が周囲に屯(たむろ)する海図台にある地図に対応する記号(場所)で送られた。

四号機の所属艦である利根の通信室で起こした解読文からKdB司令部が要求するミッドウェー島基点からの角座標(角度と距離)の平文に直し、参謀は手直しせず承認して(意気の上がらぬ)平文をそのまま最終宛先であるKdB司令官の座乗する赤城に発光信号で転送するという艦隊の階位職制とその命令に従った手順が踏まれていたと考えられる。
入電時は敵の攻撃下で無線封鎖継続中だった。KdBが無線封鎖を解いたのは利根四号機に向けた05:00の「艦種シラセ」から

戦務講義では、(三) 2d.急ヲ要スル報告ハ、其ノ上級指揮官ニ報告スルト同時ニ、最高指揮官ニ報告ス の通りにKdB司令長官宛に発信されているが#0の淵田氏の記述からは指定された最高位の受信者が座乘する赤城が独自に解読した様子はない。

仮説として、暗号から始まるミッドウェーからの距離と角度の間違いとそれを増幅した(今のところあくまでだが)可能性は、利根四号機のほかにも、利根艦橋利根赤城間ノ通信赤城艦橋、の中にもある。

戦闘詳報にある偵察機からの報告の位置は敵艦隊に対する基点はミッドウェーから、遭遇した航空機に対しては発進した艦の位置からが基点となっていることを思い出してほしい。何よりの問題はなぜこのような面倒な命令としたのか、でもある。

それを言い出せば、積極性の有無は、戦務講義よって生ずる評価に対する毀誉褒貶の基準となるのは、第一章 一、戦務ノ意義 軍隊ヲ指揮統率シ之ガ行動生存ヲ処理スル等作戦実施ニ必用ナル諸用務 二、戦務実施ノ要訣(ハ)諸法規準則ニ通暁シアルコト(二)文章ハ簡明達意 四、報告及通報  (イ) 報告  (一)報告スベキ事項 。中でも利根四号機に対しては(二)報告ノ種類 一部略 1.上級士官ガ知ラント欲スル事項(所命事項)2.上級士官ノ参考トナル事項 辺りからとなる。

要するにミッドウェーに関わった日本海軍の中には偵察機の行動全般に直接留意する余裕のある偵察士官も情報参謀もいなかった。

いない場合において責任を持つ者はだれか。 少なくとも偵察機の追跡は海図台で索敵線を引いたあるいは引かせたどちらの司令部か知らぬが航空参謀、次席参謀が持つべき責任と言えそうである。

参考にした書籍の偵察関連項目でも偵察専任の将校が書いたとも思えない文章もある。(さすがに海陸軍とは書いてないが)陸海軍の仲が悪かったことも読み取れる。

そんな、こんなを考えながら、できれば#10と共に参考元の書籍#11でお読みください。なお、筆記された時期はいずれもミッドウェー海戦以降となっている。

特に敵艦船発見時の行動指針については微妙に違っている。前者は空母に対するミッドウェーの戦訓の強調、また、前者を下士官兵用とすれば後者(以下の抜粋資料)はそこそこ緩い将校用とも読める。

で、ネービーかぶれらしくTBC 、"To Be Continued." 次回に続く。「高度何米で飛びゃいいんだ!の巻」を予定


海軍飛行学生・戦務講義 昭和19年7月
一、戦務ノ意義
 軍隊ヲ指揮統率シ之ガ行動生存ヲ処理スル等作戦実施ニ必用ナル諸用務
二、戦務実施ノ要訣
(イ)兵術上ノ知識ヲ有スルコト
(ロ)将来起ルベキ諸状況、諸作業ヲ予察又ハ想定シ周到ナル準備腹案ヲ定メ置クコト
(ハ)諸法規準則ニ通暁シアルコト
(二)文章ハ簡明達意
(ホ)小サナコトモ忠実ニ処理シ、厄介視セザルコト
(ヘ)諸般ノ事務ヲ整理シオクコト
三、令達(省略)
四、報告及通報
 (イ) 報告
 (一)報告スベキ事項
 (二)報告ノ種類
   内容による区分(5種省略)
   精粗による区分(2種省略)
   期間による区分(3種省略)
  1.上級士官ガ知ラント欲スル事項(所命事項)
  2.上級士官ノ参考トナル事項
 (三)敵情報告
   1、具備スベキ要件
(兵力、場所、時刻、動静、天象、海上所見)
   2、敵情報告上留意スベキ事項
 a.自己ノ機(艦)位、不正確ノトキ其ノ旨明示(特ニ敵ニ対スルトキ)
 b.航空機ノ敵艦位報告ハ、味方部隊トノ関係位置ヲ以(テ追記)
 
   c.捜索偵察等ニ於ケル敵情報告ハ、特ニ迅速ヲ旨トシ、初メテ敵ヲ発見セル時、又ハ敵情変化アリシ時ハ直チニ報告ス
 d.急ヲ要スル報告ハ、其ノ上級指揮官ニ報告スルト同時ニ、最高指揮官ニ報告ス
 e. 戦闘概報ハ、上級指揮官ガ戦闘直後ノ処置、並ニ爾後ノ作戦ニ対スル方策ヲ決定スルニ必用ナルヲ以テ、戦闘中止若ハ終了後特ニ迅速ニ報告スルヲ要ス
 (四)一般報告ノ記載又ハ陳述順序(省略)
(ロ)通報(省略)
五、作戦計画(省略)
六、戦策戦則(省略)
七、警戒(省略)
八、捜索、偵察
  捜索「所在未知ノ敵ヲ探索スルヲ謂フ」
  偵察「所在既知ノ敵情又ハ局地ノ情況ヲ探明スルヲ謂フ」
  (一) 捜索ノタメ部隊ヲ出発派遣スル令示スベキ事項
    1、敵情
    2、捜索目標
    3、其ノ任務ニ従事スルベキ期間、帰投、又ハ集合地点、及時刻
    4、主隊母艦(出発艦)ノ行動要スレバ友軍(特ニ潜水艦)ノ行動
  (二)艦戦ニ依ル捜索法(省略)
  (三)航空機二依ル捜索法
     (航空戦要務ニテ研究)
九、監視(省略)
十、封鎖(省略)
十一、船舶護衛(省略)

海軍飛行学生・航空講義
偵察関係
一、一般関係事項
 (イ) 偵察関係事項ハ、航空戦教範ニ詳細ニ亘リ示サレアルヲ以テ、熟読吟味シ麾下部隊現状ニ照応シ版衆ヲ樹立シオルヲ可トス
 (ロ) 戦策ニ於テ、指揮官ノ偵察ニ関スル意図ヲ明示スルヲ要ス
 (ハ) 横空ニ於ケル、偵察関係研究資料ヲ適時参照スルヲ可トス
 (ニ) 偵察関係兵器ノ研究試作ハ、多種多様ナルモ実施配給ハ相当ニ遅延スルモノト考フルヲ可トス
 (ホ) 偵察員ハ、如何ナル教育ヲ受ケタルモノナリヤ、部下ノ経歴ヲ予メ知リオク要アリ
二、計 画
 (イ) 現地二於テ、天候状況ハ予メ、数回ノ天候偵察ノ結果ヲ総合シ、確実ニ補足シ置クヲ要ス
 (ロ) 偵察機ノ使用回数ハ、長期ニ亘ル時ハ莫大トナルヲ以テ、搭乗員ノ疲労ヲ考慮スルヲ要ス
連続一週間ノ使用ハ一般ニ限度トス
 (ハ) 陸攻隊ハ、索敵ニ追テ一般ニ高々度ニテ飛行セントスル傾向アリ。飛行高度ヲ厳守セシムル要アリ
 (ニ) 索敵機ノ索敵線到達時刻ハ、一般ニ軽視サレ勝ナリ。注意ヲ要ス
 (ホ) 重要ナル時期、重要トナル方面ニハ、有能ナル搭乗員ヲ使用スルヲ可トス
 (ヘ) 索敵機ガ敵索敵機ト遭遇シ空戦ヲ行ナフコトアリ。兵装ハ充実セシムル要アリ
 (ト) 重要ナル索敵ハ、対機ニテ使用スルヲ可トス
三、実 施
 (イ) 索敵機飛行中、幕僚ハ予メ準備セル索敵図ニ予定時間ヲ記入シ、索敵線及飛行時間ニ依リ概位ヲ判知スルヲ可トス
 (ロ) 偵察員ノ敵艦型報告ハ、極メテ不正確ナルモノアリ。予メ艦型ノ特徴ヲ見ル順序ヲ示シオクヲ可トス
 (ハ) fc搭乗員ガ、比較的正確ナル敵情ヲ携スコトアリ。fc隊ニモ敵情報告ヲ提出セヒムルヲ可トス 補注) fc 戦闘機
   (ニ) 偵察機ノ電報不達アルヲ以テ、隣接索敵機ニ中継セシムル如ク強調スルヲ可トス
 (ホ) 偵察機ノ帰着後ノ報告ハ、必ズ天候視界ノ状況ヲモ併セ聴取スルヲ要ス
 (ヘ) 偵察機ハ、一般ニ帰投時ノ味方識別不正確ナリ。励行セシムル要アリ
 (ト) 索敵線ノ欠如シタル場合ノ報告ハ、予メ規約ヲ定メ報告セシムル如クスルヲ可トス
四、戦果判定
 (イ) 攻撃隊ノ戦果判定ハ、一般ニ過大ナルヲ以テ、攻撃後偵察機ヲ以テ写真偵察ヲ実施セシムルヲ可トス
 (ロ) 航空隊司令ノ戦果報告ガ他隊ノ偵察報告ト差異アル場合、ソノ状況ヲ明記スル要アリ
五、写真
 (イ) 写真材料ハ、保存ノ命数ニ限度アリ。注意スル要アリ
 (ロ) 各航空隊ニテ撮影セル写真ハ、如何ナルモノモ提出スル如クスルヲ可トス
 (ハ) 陸軍機ノ写真偵察ニ利用スベキモノアリ
 (ニ) 敵基地ノ写真ハ各基地毎ニ暦日順ニ整理シ保存スルヲ可トス
 (ホ) 戦闘詳報ニ要スル写真ハ、注意セザレバ繫忙ノ為省略スル向キ多シ
 (ヘ) 写真判読ハ、画面ノ拡大、用紙ノ粗密支線ノ多寡ニ依リ難易アリ。注意ノ要アリ
六、陸軍トノ協同
 (イ) 陸海軍協同スル場合、陸軍機ノ艦戦ニ対スル偵察報告ハ、極メテ不正確ナルモノアリ。一応海軍機ニテ確ムル要アリ
 (ロ) 陸軍機ヲ洋上ニ誘導スル場合、彼等ハ海軍機ニ近接セズ、恰モ単独ニテ滲出スルガ如キ行動ヲトルヲ以テ、予メ被誘導隊指揮官ト面接セシメ、詳細打合セヲナサシムルヲ可トス
七、其ノ他
 偵察機隊ハ、一般ニ少数ナル為補給、給養、円滑ナラザルコトアリ。司令部ニテ眼ヲカケル必用アルコトアリ

兵術参考綴
谷田部、霞浦、神池、各航空隊により多岐にわたり作成され
編纂された海軍航空の包括資料の中から偵察関係のみ抽出
写真偵察用飛行機ノ所要性能
の6項目と航空写真機ノ所要性能6項目からなる要求仕様。(詳細は省略)
偵察課題
A1、先ズ敵発見ノ第一電ヲ打ツ 敵機動部隊見ユ
 地点イロハ一 ・・・時・・・分
次ニ適当ナル位置ニ避退シ、隠密ニ敵ニ接触シ、敵兵力、針路、速力、天候ヲ確認。味方指揮官ニ第二電ヲ発ス
 例:敵機動部隊見ユ B・・・C・・・D・・・T・・・ 針路300 速力二十節
附近上空ニ断雲アリ、雲量4、視界10
 2、味方攻撃隊発進
攻撃隊ノ現場到着前45分ヨリ、味方攻撃隊ノ無線誘導ヲ開始ス(夜間ニアリテハ、10分前ニ吊光投弾、照明弾)
 3、戦後、戦果ノ確認
 4、帰投
B、 局地偵察ハ、敵ノ兵力、隊形、動静、防備警戒、軍需品及軍事工業ノ状況、地形、水路、天象、地象ヲ偵知スルヲ目的トスルモノニシテ、之等ノ偵察目標ハ、作戦目的ニ応ジ、自ラ軽重ヲ生ズルモノナリ
 1、任務ノ十分ナル了解
 2、重点ノ研究
 3、我軍、敵軍ノ研究
 4、地象、天象ノ研究
 5、偵察法、偵察時期、進入路、退出路、帰投時刻及地点協同法
通信連絡法ノ変化ニ即応スル対策等、任務遂行上ニ必要ナル事項ノ周密ナル腹案
一般ニ広漠ナル敵根拠地ヲ、隠密タルト強行タルト問ワズ、短時間ニ偵察スル為ニハ、自ラ防者ノ立場ニ立チテ、偵察地点ノ防備施設ヲ策画シ、之ガ研究ニ努メ其ノ心ヲ以テ総テノ微細ナル事象ニ対シテモ、周密ナル観察ヲ払フヲ要すルモノニシテ、平常根拠地施設ニ対スル兵術眼ヲ養フ
 実施
 1、偽行動ヲトリテ、我軍ノ企画ヲ察知セラレザル如ク行動スルヲ可トシ、侵入、退避ニ当リテハ、我航空基地ノ位置ヲ察知セシメザル為、敵ノ視界ヲ去ルマデ偽航路ヲトルヲ可トス
 2、進入ニ当リテハ、適当ナル進入路ノ撰定、視界差ノ活用、天象、地象ノ利用、無線封止等機宜ノ手段ヲ講ジ、過早ニ敵ニ発見セラレザル如ク注意スルヲ要ス
 3、航空路ハ前二項ヲ考慮スルト共ニ、主目標ニ到達シテ任務ヲ達成シ得ル為、予メ地勢ニ依リ、敵ノ防禦施設ヲ研究シ、敵ノ監視ト防禦ノ最モ薄弱ナル地点ヲ撰定スルヲ要シ、尚状況ノ変化ニ応ズル為、数個ヲ決定シ置クヲ要ス
 4、写真偵察ノ活用ニ努メ、特ニ隠密ヲ要スル場合ハ視界限度ヨリノ赤外写真ヲ以テスルヲ有利トスルコトアリ
   5、重複偵察ヲ決行スル場合ニハ、時々時刻方法等ヲ変更シ、的ヲシテ対策ヲ施シ能ワザル如ク考慮スルヲ要ス
 6、隠密偵察ハ敵ノ意表ニ出デ高々度ヲ以テ侵入シ、下降ヲ以テ敵ニ近迫シ、視認及音響ニ依リ敵ニ発見セラレザル様考慮スルヲ要ス

三、対潜哨戒ニ際シ留意スベキ事項
  参考部分のみ
 4.天象、地象ノ利用
 (イ)太陽ノ高度低キトキハ太陽側ヨリ接近スル潜水艦ハ見エ難シ
 (ロ)風波アル時ハ、風上側ヨリ来ルコト多シ
 5.潜水艦ノ視認距離
   潜水艦ラシキ物認ム 15浬
   潜水艦ナルヲ認ム 10浬
   司令塔発見 6浬
   潜望鏡発見 3000~5000米  
 (ハ)透視高度
    晴天ノ場合、高度1000米以下ニ於テハ其ノ大小ニ依リ透視ノ難易ニ差異ナキモ、霧、靄、又ハ空気ノ混濁セル場合等ニ於テハ低高度ニ占位スルヲ有利トスルモ、大体ノ標準ヲ示セバ次ノ如シ
 日本近海 500米
 南洋方面 900米
四、教育訓練
  一、行動力ノ増進
   操縦・・・計器飛行
   (イ)高々度飛行
   (ロ)計器飛行
   偵察・・・航法
  二、電探、磁探、方位測定儀ノ使用法ニ熟達スルコト
  三、下士官兵ハ、成績調査ニヨリ技倆ノ向上ヲ図ル
  四、見張訓練・・・操縦員モ分担・・・眼鏡ノ携行
  五、偵察員ノ射撃訓練
  六、戦務訓練・・・暗号書ノ使用法
  七、天文航法・・・地上ニテコレガ基礎ヲカタム
  八、写真関係ノ教育・・・局地偵察法
  九、艦型識別、局地図示法
 一〇、偵察員ガ操縦員ニ要求スル点ノ研究
 一一、経験及戦術・・・先輩ノ失敗
 一二、下士官ノ勤務ヲヨクシルコト
士官ハ士官ラシク部下ヲ受撫スベシ
 一三、一部ノ長タルモノハ公務第一
 一四、初級士官トシテ躾ヲヨクセシム
 一五、下士官兵ノ経歴ヲヨクシルコト
通信法
 通信機器、使用周波数等(省略)
艦型識別教育訓練法
商船の種類、特徴を説明文で、艦種の識別は略図等を多用して教育する手法(省略)

     

 

2020年12月 5日 (土)

ミッドウェーの「運命の5分間」の後先き・・・スマート、ステディ & サイレント・ネイビィで零式水偵の偵察員になってみる、の巻

参考にした #10 のコンテンツの中に「特別企画 偵察員マニュアル」が含まれていたので関係ありそうな個所を抽出している。詳細は参考書籍にて確認ください。

こうした資料は各教育隊や航空隊で独自で作られており、一部が手書きで残されているようです。参考ではひらがなに変換されているが当時はカタカナ表記のはずなので再変換しておきました。

後記には「相当部分を省略した」とあり、そこから偵察と航法の部分の興味を引いた部分を抽出しました。そこからさらに、気象予報士試験のテキストに使えそうなほど充実している気象学や対潜水艦爆撃概要などを省略しています。

 


海軍第13連合航空隊 偏 偵察員須知 昭和18年10月(第一章 抜粋)
第一章 偵  察
 第一節 飛行索敵
 一、捜索
(一) 捜索実施要領
 (イ)任務ニ対スル事前ノ研究
  (1) 敵情ナラビニ友軍ノ研究
  (2) 本機ノ任務オヨビ海図、航空図、地点図ノ準備
  (3) 行動(行動時間、交代方法、帰投時刻、場所ナド)
  (4) 主隊(母艦、搭載艦)ノ行動予定
  (5) 通信ニ関スル事項
  (6) 故障オヨビ天候ノ異変ナド保安ニ対スル処置
 (ロ)飛行高度ノ選定上考慮スベキ事項
  (1) 敵情ナラビニ隠密ノ程度
  (2) 天候、海上ノ模様ニヨリ視認良好ナル高度
  (3) 航法実施容易ナルコト
  (4) 風向、風力ヲ考慮スルコト
 (ハ)出発時母艦(陸地)ヲ見失イタル距離ヲ測定シ置ケバ、敵発見時 艦船視認判定上ノ好資料タルノミナラズ、帰投時ノ参考トナル
 (ニ)搭乗員ノ見張分担区域ヲ定メ、相互ニ連絡ヲ密ニシ、敵機ニ対スル警戒ヲ厳ニスルト共ニ視界内ノ敵ヲ逸スルコトナキヲ要ス。
偵察員ハ努メテ双眼鏡ヲ利用スベシ
 (ホ)任務途上、航法目標、味方艦船ナドヲ発見セバ図板ニ記入シ置クヲ可トス
 (ヘ)捜索実施中敵ノ一小部隊ヲ発見シタルトキ、コレニトレワレ主任務ノ達成ヲ忘却スベカラズ
 二、敵発見時ノ処置
(一) 敵艦船ヲ認メタル場合
 (イ)時刻ヲ読ミ取リ、目標ノ種別ヲ判定ス
 (ロ)敵ノ方位ヲ測定ス
 (ハ)目測ニヨリ距離ヲ判定ス
 (ニ)我ガ機位ヨリ敵ノ概位ヲ記入ス
 (ホ)敵針敵速ヲ判定ス
 (ヘ)所要ノ報告ヲナシ、爾後ノ行動ニ移ル
 (ト)敵艦位ノ正確ヲ期スルタメ、敵方位線ノ交差点ヲ求ムルヲ可トス
 (チ)要スレバ方位測定電波ヲ輻射ス
  (ニ) 敵機発見ノ場合
 (イ)隠密避航ニ努メ時刻、機種、機数、位置、針路、飛行高度、携行兵器ノ種類ナドヲ報告ス
 (ロ)艦上機ナリヤ陸上機ナリヤ、マタ水上機ナリヤ飛行艇ナリヤノ区別ヲ確認ス
 (ハ)艦上機ナル時ハソノ機ノ行動半径内ニ敵空母ノ存在スル公算アリ、水上機ナル時ハ付近ニ水上艦艇アルベク、陸上機モシクハ飛行艇ナル時ハ付近ノ島嶼ニ基地アルコト確実ナリ
(三) 有力艦船発見ノ場合
 (イ)上空哨戒機ノ有無ニ注意シツツ単独飛行中ナリヤ捜索例ノ一艦ナリヤ敵空母存在セザルヤナド、ソノ付近ヲ捜索ス
 (ロ)艦型識別困難ナル時ハ、速ヤカニ概報ヲ発シタル後サラニ詳報ヲ送信スベシ
 (ハ)偵察ノ結果捜索主目標ニアラザル時ハ、報告シタル後極力敵ノ視認ヲ避ケ予定ノ捜索ヲ続行ス
 (ニ)捜索ノ結果、敵ノ関連部隊ヲ発見セル場合ハ直チニ適当ナル行動ニヨリ速ヤカニ敵兵力ノ配備、主力部隊オヨビ空母ノ所在ナドノ偵知ニ勉ムベシ
(四) 敵大部隊ヲ発見セル場合
 (イ)上空哨戒ノ敵戦闘機ニ注意シツツ天象、地象ヲ利用シ極力隠密裏ニ空母ノ存否オヨビ捜索主目標、艦艇ノ配備ヲ確認ス
 (ロ)空母ノ存否オヨビ艦艇ノ隻数ハ第一報(概報)ニ入レルコト
 (ハ)空母ヲ発見シタル場合ハ甲板上ノ飛行機ノ有無、上空戦闘機ノ数、発着状況オヨビ付近海面ノ天候ナドヲ報告ス
 (ニ)爾後隠密ニ接触ヲ継続スルカアルイハ一時避退シ時々接近シテ敵情ヲ偵察シ所要ノ報告ヲナス
(五) 敵潜水艦発見ノ場合
 (イ)捜索中敵潜水艦ヲ発見シタル場合ハ、速ヤカニコレヲ攻撃スルト共ニ報告ス
 (ロ)爆弾ヲ有セザル場合トイエドモ擬襲ヲ行ナイ、敵ヲ制圧スルハ作戦上有利ナリ

 第ニ節 偵察
 一、偵察飛行中留意スベキ事項
(一) 天象、地象ノ利用
(イ)雲ノ利用
  (1) 断雲アル場合ハ間隙ヲ利用シ偵察ス
  (2) 暗雲ヲ背景トスルカ、アルイハ雲ノ下際ニオイテ隠見シツツ偵察ス
(ロ)太陽オヨビ月ノ利用
  (1) 太陽ハ一般ニコレヲ背ニスルヲ有利トス
  (2) 薄暮、黎明時マタハ太陽ノ高度低キ場合ハ太陽に面スルヲ有利トス
  (3) 夜間ハ月ニ面スルヲ有利トス
(ハ)陸影ハ背景トスルヲ有利トス
(ニ) 高度ノ利用
(三) 敵見張能力ノ虚点ヲ利用ス
艦船ニオケル見張能力ハ一般ニ前方ヨリモ後方粗雑ナルヲ常トス
  (四) 接触中敵情ニ関スル報告事項
(イ)敵主力ノ変針、増減速マタハ分進
(ロ)敵兵力ノ集結(主隊トノ関係位置)
(ハ)敵ノ展開方向
(ニ)敵空母ノ飛行機発着状況
 二、潜水艦発見ノ端緒
(一) 水上状態ニテ遠距離ニ浮上セルトキ
(ニ) 潜望鏡ノ露頂潜航
(三) 潜没海面ニ残セル油紋マタハ航跡
(四) 海上長濤アル場合、艦体ノ露出
 三、敵情報告ノ具備スベキ要件
(一) 時刻
(ニ) 兵力
(三) 場所
(四) 動静
 四、任務報告
(一) 主任務ニ対スル成果
(ニ) 行動経過中特ニ報告スベキ事項
(三) 機体発動機ノ情況、搭乗員異常ノ有無

海軍第13連合航空隊 偏 偵察員須知 昭和18年10月(第二章 抜粋)
第ニ章 航  法
 第一節 推測航法
第一項 推測航法ノ基礎的要素

 一、飛行高度
(一) 出発点高度誤差(略)
(ニ) 気圧誤差(略)
(三) 気温誤差(略)
 ニ、機  速
(一) 速度計(略)
 三、偏流角測定
(一) 偏流角測定法(略)
 四、測  風
(一) 測風法(略)
 五、実測測定法
(一) 偵察鏡ニヨル法(略)   
(二) 鏡式偏流測定器ニヨル法(略)
(三) 爆撃照準器ニヨル法ニヨル法(略)
第二項 推測航法実施上ノ要点
 一、実航跡ノ確認ト修正
(一) 実航跡ノ記載
 (イ) 偏流変化セル場合ハ平均編流ヲ以テ流レタリト見ナシテ実航跡ヲ水偵ス
 (ロ) 複雑ナル運動ニ対スル場合
   (1) 風ノ変化ナキ場合(参照図 略)
   (2) 風ノ変化アル場合(参照図 略) 
 二、飛行高度ノ選定
(一) 航法精度ニ重点ヲ置ク場合ハ低高度ヲ可トス
(二) 飛行機ノ性能ヨリ見レバ3000メートル付近ヲ最良トス
  三、気流ノ選定
(一) 乱雲、積乱雲ノ下際、不連続面、夕立雲、スコール、吹雪付近ハ気流不良ナリ
(二) 強風連吹時陸地、島嶼、岬、角ナドノ風下側ハ気流不良ナリ
(三) 雲ノ発生マタハ飛散スル時該断雲付近ノ気流不良ナルコト多シ
(四) 高度3000メートル以上ハ概ネ気流良好ナリ
 四、外力影響ノ観察並ビニ測定
(一) 気流ノ観察中特ニ注意スベキ点
(イ)海上風波ノ変化(略)
(ロ)雲量ノ変化(略)
(ハ)地形ノ変化(略)
(ニ)気温ノ変化(略)
第三項 推測航法ノ適用
 一、夜間航法
(一) 航法目標灯ノ使用(略)
(二) 着水照明炬マタハ発煙投弾ヲ持チウル法(略)
 二、雲上航法(略)
 三、霧中航法(略)
 四、夜間航法
索敵行動中敵ヲ発見セバ直チニソノ方位オヨビ距離ヲ測定シ、ソノ時ノ推測機位ヲ基準トシテ敵ノ位置ヲ図上ニ記入ス
爾後接敵行動ニ移ラバ的針的速ヲ測定シ、敵ノ行動ヲ図上ニ記入ス
接触終ワラバ敵艦ヲ基準トシテ方位距離ヲ測定シ、ソノ時ノ敵ノ位置ヨリ逆ニ自己ノ機位ヲ求ム

 第二節 後続機航法
 一、実施要領
(一) (略)
(ニ) (略)
(三) (略)
(四) (略)
 二、後続機航法実施上ノ注意
(一) 実施上最モ重要ナル事項ハ操偵間ノ緊密ナル連絡ナリ
従ッテ操偵両者ハ常ニ下記事項ニ留意スルヲ要ス
操縦員ヨリ偵察員ニ通知スベキ事項
 (イ)一番機ノ変針
 (ロ)高度ノ変換
 (ハ)速度ノ増減
 (ニ)風向ノ変化
 (ホ)地物ヲ発見セル場合
(ニ) 偵察員ヨリ操縦員ニ通知スベキ事項
 (イ)基準針路
 (ロ)風向、風速
 (ハ)偏流角
 (ニ)実速
 (ホ)機位
 (ヘ)予定到達時刻
 (ト)地物ヲ発見セル場合
(三) 羅針儀ナラビニ速度計ノ示度ハ指針ノ振レニ注意シ、ソノ平均値ヲトリ基準進路マタハ基準速度トスル
(四) (略)
 第三節 会合法
 一、艦船トノ会合法例(図等省略)
 二、計算盤ニヨル作図法(図等省略)
(一) (略)
(ニ) (略)
(三) (略)
(四) (略)
   第四節 速度試験
 一、算   式(略)
 二、速度試験実施上ノ注意(略)
(一) (略)
(ニ) (略)
(三) (略)
(四) (略)
(五) (略)
(六) (略)
 三、航法計算盤ノ利用(略)
(一) (略)
(ニ) (略)
 第五節(不明)
 第六節 無線航法
 一、無線航法実施上考慮スベキ事項
(一) 無線方位測定ニ当リテハ費消時ヲ要スルヲ以ッテ費消時ニ対スル考慮ヲ要ス
(ニ) 方位測定誤差ハ約5度ナルモ時ニ大ナル誤差ヲ偶発スルコトアリ。シカシテ誤差ハ一般ニ距離近キホド大ナリ
(三) 測定方位ノ通報ハ方位測定艦所ヨリ見タル航空機ノ真方位ヲ通報ス。ユエニ航空機ハソノ反方位ニ帰投スルモノトス
(四) 測定間隔ハ通例10分ナイシ20分ヲ可トス
(五) 無線航法ヲ実施スル時トイエドモ常ニ外力ノ影響ヲ考慮シ、正確ナル正確ナル推測航法ヲ実施シアルヲ要ス
(六) 方位測定ニ当タリ反方位ヲ測定スルコトアリ。モシ反方位ノ疑イアル時ハ直チニ測定方位ニホボ直角ニ飛行シ、10分ナイシ15分毎ニ数回方位測定ヲ要求シソノ変化ニヨリ反方位ナルヤ否ヤヲ判定スルヲ可トス。スナワチ航空機ガ母艦ノ東方ニ在リテ北ニ向カウ時ハ方位ハ次第ニ減少スルコト明ナリ、ソノ際通報方位次第ニ増大スル時ハ反方位ナリ(参照図省略)

 

以上、偵察員士官を含む下士官、兵の実務教本からでした。 次回は #11 の士官搭乗員向けの教範の中から偵察関係のみを抽出する予定です。
羅針儀の教本が見つからないのは残念ですが、まあ基本は海技試験の参考書とさして違わないとは思います。

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