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2021年2月20日 (土)

ミッドウェーの「運命の5分間」の後先き・・・数学的背景編 1 海図と座標の巻

例によって公開校正校閲中です。

     意あって言葉足らずで何の面白みもない回ですが・・・

合戦の記録には陸戦の場合はそれなりの基準となるランドマークがある。しかし海洋戦航空戦となると戦後になって双方の記録を突き合せないと実態は分らない。

   1948年に米側はNWC(米国国防大学)が戦後に行った日本側を聴取した記録と突き合わせた “The Battle of Midway - Strategic and Tactical Analysis” を機密文書として作成している。(機密解除 1991.5.30)
   1949年に日本側ではミッドウェー作戦の機動部隊参謀長草鹿龍之介少将(当時)が文芸春秋誌に寄稿した「運命の海戦 日本海軍の敗北を決した五分間」で作り上げた物語が1951年の「ミッドウェー」淵田、奥宮著でワンフレーズの「運命の五分間」となって引用され今も残っている。
   1971年に刊行された日本側の唯一の公式戦史である「戦史叢書 ミッドウェー海戦」防衛庁防衛研究所 戦史室著 の付図第三「ミッドウェー部隊会戦図(六月五日)」では「資料の関係から正確を期しがたい、特に第一機動部隊及び敵発見状況において然り」と記されている。

   その結果先に敵空母艦隊の上空を通過したと判断される将校偵察員機長の筑摩一号機の雲上飛行をフェードアウトさせて、後から発見した下士官偵察員機長の利根四号機の索敵積極性にフォーカスを当てさせることになる・・・

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ミッドウェー海戦をテーマにするからには利根四号機の位置と時間の飛行軌跡の謎を外すわけにはいきません。それと同時に特に四号機を発艦させて索敵報告を中継する第八戦隊旗艦利根にも目配りが必要ですがその前に幾つかの科学(といっても幾何学ですが)の知識が必要になる。

1.海図と座標

2020.11.02の当オフィスの記事にミッドウェイ海戦の時代にも長波の発信位置の方位(Bearing)はループアンテナで分かるとしている。

二ヶ所に既知の固定受信局があれば未知の発信場所が、あるいは二ヶ所の既知の固定発信局があれば受信した場所において「三角測量の要領で未知の発信位置や受信位置が分かる」と書いているが正確には球面幾何学によってであります。

例えば北極点から輻射した長波を赤道上の二ヶ所の受信局で受信し磁偏差と羅針儀の自差を修正して方位は0度と算出したところで基線となる赤道に対する角度はいずれも90度であり三角形の内角の和を180度とする三角法は成立しない。

「発信地点は北極点」と推測し断定できるあなたは地球が球体であることを知っているからであります。

また、どちらか一方の極点で電波を輻射すれば1/(7.5X2)秒後にもう一方の極点に集まる計算にもなります。

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完全球体と仮定した地球表面の球面座標の基準は太陽が最も高く上がる地点を結んだ輪を緯度0度の赤道として、赤道と平行に北側に輪切りにした円周を北緯と呼び赤道円の中心からの角度で表し90度すなわち半径0の点となる位置を北極点、同様に南側を南緯と南極点とする。

赤道円の中心に直行する直線を(南北の極点を通る自転軸となる)地軸とし、球体の断面で最も大きい円(大円)となる赤道の周囲を360度に分割して赤道に直角に交差し両極を通る大円を経(度)線と呼び、経度0度の円をロンドンのグリニッジ天文台を通るグリニッジ子午線とした。(現在では同天文台は移設されている)

グリニッジ子午線から東廻りを東経、西廻りを西経と呼び双方が重なる180度の経線をおおまかに日付変更線としている。また東経と西経の合計が180度となる経線は一つの大円を分け合っている。
    余談だがミッドウェー海空戦は日付変更線を挟んで始まりました。日本の機動部隊は日付変更線を越えて攻撃の前日に壊滅したことになります。

地球の座標の原点は赤道とグリニッジ子午線の交点であり南北の緯線と東西の経線の度分秒を組み合わせた四通りの表現で地球表面(ひいては地図)の位置の座標が示される。

以上の定義から隣接する例えば10度間隔の緯線間の円弧の距離は一定であるが10度間隔で隣接する経線間の円弧の距離は赤道上では緯線間の円弧の距離と等しいが赤道を離れた経線間の円弧の距離は緯度の関数となって短くなり極点では0、文字通り点になる。

ただし、以上の説明は当CEOがこれから行うミッドウェイ海戦図を読み解くツールとして使う前提の定義であり、現在の国際標準となる定義は地球を楕円回転体とした定義(GRS80IRMなど)で行われています。

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いずれにせよ、航海用海図は、緯度を横軸、経度を縦軸にした直交座標系のメルカトル図法が使われる。

メルカトル図法は正角円筒図法と呼ばれ、球体では緯度で減少し点となる経線間の距離を地図上では赤道上の寸法に固定した横軸と増加させた経線間の寸法に応じて地図上の緯線間の寸法を極点に近づくほど増加する縦軸で示す直角座標であり、地図上のどの地点でも羅針儀の自差、偏差を修正した真方位針路を記入できる正角図法として使用できる。

航海用海図(航洋図)で最も重要な項目は不動の方位(True Bearing)と自らの方向(Heading Corse)あるいは目標に対する方角(Bearing)さらには目標の針路(Course)であり次に距離、加えて水深、地形、標高と続くが少なくとも大海の航海においては前二者は必須であります。

なお、後者の水深と地形、標高など陸地が載っている精密な沿岸図は水路特殊図と呼ばれます。もちろん航海用海図にも岩礁、暗礁、浅瀬などの障害物は載っています。一般的には航海用海図海図と呼びます。

メルカトル図を航法の指標に使用する場合の長短は次のような表裏になる。

長所 1.地図上の方位を正しく表示できる
 短所 1.地図上の長さが緯度が高くなるほど地図上の南北の寸法が長く90度では無限遠となり実用の限界が80度程度となる。
長所 2.羅針儀、速度、クロノグラフで容易な推測航行が可能となる。
     この時代には電波による東京時間の時報が輻射されておりクロノグラフの時間整合にも使われていた
      艦隊の作戦は現地時間ではなく東京時間で行われていた
 短所 2.地図上の二点間の最短距離を結ぶ大圏航法ができない。定時天測による進路の更正が必須である
長所 3.狭い範囲であれば方位、距離ともに 短所 1.は軽減され人間の感覚に合っている
 短所 3.島嶼のない大洋では緯線と経線の間隔の比(アスペクトレシオ)に基づく方眼紙の白紙海図が必要となる
      南北の移動を含む航海には、複数のそれぞれ主要な一点を基準にした間隔の異なる緯線が入った複数の白紙海図の準備が必要になる
       この場合基準となる経線間隔の縮尺を統一しておけば地図の連結はやりやすい
長所 4.航跡や針路の作図に必要な道具は、海図台に海図を固定する重錘、三角定規セット、デバイダー、分度器 、(作図用)コンパス、加えて鉛筆、消しゴム、程度である
     なお、正規の海図では航行する海域の経緯線と分度器の代わりになる磁偏差を見込んだ方位円を数か所に印刷してあるので三角定規を組み合わせた平行移動で任意の角度の線が引ける
      全くの白紙に長い経緯線が引ける直角が保証された海図台とT定規はあったのかなかったのかは不明
 短所 4.球面上の円をメルカトル図に描くと極側に伸び極側に窄(すぼ)まった卵型になる。
      コンパスで描く大きな円では高緯度になるほど南北方向の誤差の補正が面倒になる

現在のGPS航法ではこれらの問題は解決されているがGPS(全地球測位衛星またはシステム)のどこかが機能を失えばこの長短問題に直面する。たとえば全ディスプレイの電源を喪失する程度ででも・・・

以下長くなるがメルカトル図の簡易的な概念を述べておきます。

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まず、地図を使うのは人間であります。地球の表面にいる人間は今も昔も感覚的には緯度、経度の値には関係なく己の見える範囲を方向と距離で理解します。

その中で、方向は絶対不変の基準が必要であり主に北半球にいる人たちによって北極星が見つけられ、続いて赤道の定義が定まります。

そして方向と距離に整合性を持たせる角度を使った緯度と経度の球面座標の定義に至ります。

地図を作ることは三次元の角度と長さを平面として人間の感覚に整合性を持たせた二次元の長さと方向に変換して作図することになります。

もちろん完全ではなくても狭い範囲に限れば実用になる整合性を保つ地図としてであります。まず基準になる角度はさておき長さの定義はメートル法の制定時に地球の北極点から赤道までの距離を10,000kmとしたので完全球体としての半径は有効数字を三桁に丸めて6,370kmとなる。

航海や航空の運航に使われる現在の浬または海里(ノーチカルマイルまたはシーマイル)は緯度1分(1/60度)に相当する距離として1,852mと定義されている。浬単位の時速はノット(節)となる。
・・・詳しくは後述する「視程と高度」の回で

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完全球体の最大直径を大円と呼びます。地球では緯度の基準となる赤道円もこれにあたる。

したがい0度の赤道円と平行に球面上に描かれる赤道円の中心から等角度で引かれる90本の緯度円の直径は大円より小さくなり最後の90度では直径0の点すなわち極点となります。

いっぽう赤道を360度で分割した360の点から赤道に直角に立てた経線円は南北の極点を通り一周して大円を描き360のそれぞれの点に戻ります。

以下の添字の注記
 Eq  / Equator    赤道
 Lon / Longitude 経度
 Lat / Latitude    緯度

完全球体の地球の経線円の半径は赤道円の半径と等しい大円でありその半径を R、緯度角を ΘLatとします。

緯度角 ΘLat 上の緯度円の半径は RLat = RcosΘLat と小さくなる。この円も赤道上の経線の分割数と同じ数で分割されています。

三次元の球面の大円に平行な断面(緯度)円の円周の長さを計算するにはその直径 D の円周長を LC とすると LC=πD となります。

円周率 π(パイ) は無次元の無理数であり実用上は十進法の有理数である360度を使った単位が馴染みやすい。そこで角度の定義を変えたラジアンと呼ぶ単位が設定されました。

先の式の π に相当する部分は360度の値に相当しています。したがい円周は LC = πD = (π/360)・360D より、度とラジアンの単位換算値を π/360 とすれば、
半径 R(= D/2) で挟まれた角度 Θ の円周上の距離 LΘ = (π/360)・Θ 2R と置き換え、Θ 度を θ ラジアンに換算するには θ = (π/180) Θ となります。したがい、

  L = θR  

面倒だけど角度の単位を度とラジアンに使い分けるのは三角関数表が有理数である十進法の度(deg)で表示されていること、ラジアン(rad)の基となる π は無限小数で表される無理数ですが円周の一部である円弧の長さの計算が容易になると言った利点あります。

以上で、メルカトル図法の簡易的な考察に入れます。

まず人間が地図に求める原初的な感覚は平面上の方向と距離であり特に緯度が大きくなるほど狭くなる経線を使う座標はそれほど役に立たない。そこで、

1.直交座標の横軸となる経線の間隔は、赤道上の距離をそのまま用いる。すなわち、地図上の真北の方位はどの位置でも0度であることが保たれている

2.縦軸となる緯線間の距離は、赤道上の距離を緯度によって変化する経線間の距離で割った倍率を乗じた拡大をして角度上の近似をする。

すなわち、平面のメルカトル図では、東西方向の Θ の距離はどことっても赤道上の長さで統一され、南北方向の Θ の距離は一定の法則で拡大された寸法で作図された縦長の長方形となる。

これにより、距離を含む斜めの針路は地図上でも経線を越えて引くことができる。

経線間の寸法と緯度の関係は、緯度を Θ 度とすると緯度円の半径は
 RΘ = REqcos Θ : 例えば Θ = 0 度 RΘ = REqcos 0 =  REq

θ ラジアンの赤道上の 円弧長は LEq = θREq 、半径 RΘ に変わった緯度円においても θ は変わらないので緯度 Θ の緯度円上の経線間の距離は LΘ = θREq cos Θ より赤道上の長さとの比を k とすると
 k = LΘ / θREq= cos Θ ≦ 1

ところがメルカトル図では変化する経線間の寸法 L'Lon を赤道上の寸法と同じとしており
 L'Lon = θREq = LΘ /cos Θ = LΘ / k 

いっぽう角度 θ による大円上の緯線間の距離は LLat = θREq で一定だけれどメルカトル図上の緯線間の寸法は Θ の関数として拡大されて
 L'Lat = θREq / k 

メルカトル図上で長方形で表される緯線間の寸法と経線間の寸法対経線上の寸法の比であるアスペクト比は、Photo_20210213210701
 kAS = L'Lat / L'Lon
    = (θREq/k)/(θREq)

    = 1/k
    = 1/cosΘ ≧ 1

左表は緯度による距離のアスペクト比の変化を1度、5度、10度間隔の平均値を示しています。

メルカトル図法は方位を優先し狭い範囲ではある程度の距離の整合性を持った汎用性を生かした作図法であります。

度の下位単位である60進法の分、秒でも同様の緯度と経度のアスペクト比は変化している。

航海は、ある一点で設定した針路と速度で一定時間航行したら天測を行い、地図上の航路はその二点を直線で結ぶか、あるいは途中で変針した地点の推測位置から新しい天測地点を結び、新しい地点からの針路の更新を繰り返しながら航海を続けることになる。

ちなみに、ミッドウェー島は北緯28度西経177度にある。航空艦隊間の海空戦はここより北に北緯31度までの範囲で行われた。

並行して行われたアリューシャン作戦は北緯51度から53度の範囲で行われた。

後書きへ続く


 

 

 

 

 

 

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以上はあくまで簡易的な解説であり詳細は以下のリンクを参照してください。

海図—その図法と縮尺 
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjca1963/3/3/3_3_19/_pdf
Googleマップの投影法
https://user.numazu-ct.ac.jp/~tsato/tsato/document/mapcenter460/

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次回は南雲部隊が飛ばした利根四号機の航跡をたどる前に発進した艦の位置を海図上で追跡してみる。

・・・海図台は大型の艦では必ずしも艦橋のガラス張りの指令所ではなく脇の小部屋にあったようだ。

当時の海図台が写った映画や画像を漁ったが見つからなかった。記憶では「戦艦シュペー号の最後(1956)」や「太平洋奇跡の作戦 キスカ(1965)」にはあったはずだが・・・

確実にあるのは「ビスマルク号を撃沈せよ!(1960)」。
     ロンドンの地下にある海軍作戦指揮所には壁一面の北海から地中海までの広範囲な海図、大きな海図台には英国の周囲の海図があり、索敵艦を要所に貼り付け、地中海、北太平洋で船団護衛で展開していた空母や戦艦を引き抜き艦隊を編制をして迎撃態勢を整える場面、
     命を受けたフッドの艦橋では薄明にビスマルクと会敵する時間から針路と速度を決める場面、
     プリンスオブウェールズが艦橋にビスマルクの砲弾の直撃を受けたあと伝声管を伝わり甲板下の航跡記録室の海図の上に血が滴り落ちる等々の英国らしい印象的な場面に登場しています。

ミッドウェーにおいても参加艦船の海図台上の地図はメルカトル図であることは間違いない。
     いっぽうで課題となるのは航空図板に使う航空図は何だったのだろうか・・・。

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