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2021年6月28日 (月)

ミッドウェーの「運命の5分間」の後先き・・・タスクフォース索敵行 四 「大日本帝国海軍の地図には艦隊派と航空派があった?」の巻

艦隊派航空派といっても海の航海士、空の航法士と呼ばれる地図を扱う職種職務に携わる潜在的な(当CEOが考える)派閥ですが結論は最後にあります。艦隊派については何度か繰り返しており今回はほとんどが航空派と呼ぶ所以を裏付けようとする計算式の誘導と計算結果であります。

下図は80年ほど前の海戦における航空偵察の模式図です。航空機は愛知零式三座水上偵察機、航空母艦はヨークタウンから始まるUSS CV-5シリーズで、それぞれの正面図をシルエット化してみました。

基本的に海面にある物体は水平線(Horizon)の手前にあれば大きさは兎も角として視認可能な範囲となる。いっぽうでは水平線を越えた物体でもそれなりの高さがあれば水平線越しに視認できる。図では空母の飛行甲板が水平線から露出しておれば視程内にあるとして描いています。

実際の視程は靄、霞、霧、雲、雨、雪、波浪・・・薄明、薄暮、昼、夜、月明による明暗、さらには温度、湿度による逃げ水、蜃気楼などの空気の屈折現象に左右される。これらの影響は個別に考えるしかないが理想的な視程そのものは平面幾何学で解ける。

その計算式を導くための下図には大きな誇張がある。水偵と空母の相対的な大きさもそうだが地球の縮尺は更に大きいどころか、大きすぎる!

実際に水偵に搭乗した感覚を脳内体験をする場合に図と計算式を眺めたあとの頭の片隅に留めて置いてくださいね。

Distance-on-earth_rev5
ちなみに Diagonal angle は伏角のこと。伏角が地球の中心から引いた水平線と視点の間の角度と同じなのは直角三角形を分割した直角三角形との相似則で証明される(証明手順は省略)。水平線迄の距離に関係し後ほど出てきます。

図は零式水偵を主体とした視点からの視程外となる海面や空間を網掛けしています。理論上は機を中心とした円の範囲の海面が見え、いっぽう水平線を越えた遥かかなたの月、日、星のほかに艦影と見まがう雲も見える。いっぽう視程内にある雲より上を飛べば海面に投影した範囲は見えない。

偵察実務ではランバートの等面積極投影図法が関係する。この投影された図をより具体的に説明するとコックピットの搭乗員の眼の位置で焚いた強力なフラッシュの閃光で海面に生じた窓枠と機体さらに雲などの影で覆われた範囲のこと。この範囲の中にいる対象物は搭乗員には当然見えない。

図には描けなかったが偵察機の能力は邪魔な雲よりもランバートの等面積極投影図法による偵察機の機体形状の影にも大きく左右される。

ミッドウェーに投入された彼我の索敵機を比較すると、伏角の邪魔をするコックピットの下にある上反角の付いた主翼と双フロートで構成された零式水偵の機体と日本の艦隊に張り付いていたコンソリーデッドPBY-5飛行艇の機体の上に支柱で取り付けたパラソル翼(おまけに主翼にぶら下がった翼端浮舟は引込式)に胴体より外にのり出せる大きな両サイドのバブルキャノピーなど構造の差に加えて搭乗員3人に対する7乃至9人の員数差などの設計仕様の差がある。

それらの運用の巧拙を際立たせる大型機を運用できる不動不沈の基地をめぐる攻守の舞台装置、さらに作戦に投入する機数や反復回数によって勝敗に直結する先手を選ぶ確率の帰趨が定まったともいえる。

さて、重力に直立する人間が存在する空間すなわち航空機も艦船もそれぞれの位置で海面に対しては直角すなわち鉛直の向きに正立している。水平線はある高さの視点から球体である海面に引いた接線の接点なので観測する状態では下方に存在するので視線を下げる伏角がある。

では我々は水平線に丸い地球の丸さ(円弧)を感じることができるか・・・通常の飛行高度ではできません。水平線が見えたとしても伏角は一定なので一周見渡しても等伏角等距離にある円周であり、上に向かって丸く見えたとするのは錯覚であります。

航空士の現実は北を基準とした方向とその方向の大円(球体の最大直径となる円または円周)の上を水平線に囲まれた円形の視界の真ん中で船より早いスピードで移動していくという球面上とは言え平面上の移動とさして変わらない。

これは航海士の地図とは異なることを先回の天測による位置を基準にする直角座標のメルカトル図での距離の測り方との比較で理解いただけるはずです。

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「伏角?航空機ではバンク(傾斜)すれば水平線は上(仰角)にもなる!」・・・のは単に人間側の都合であり幾何学上の視点は変わらない。

図から想像できる問題点は視点から水平線まで直線距離と視点から鉛直に海面に下した点から水平線までの弧の長さ(地図上の距離に相当)にどれくらいの誤差が生じるのか・・・です。結論を言えばミッドウェー海戦時代の交戦海空域の広さでは両者の差は全く無視できます。

視認可能な(すなわち一直線上にある)水平線の手前と向こう側にある距離を算出する同じ方程式を媒介するのはそれぞれの水平線と視点あるいは目標点からの伏角であり、それぞれの角度は視点と対象の高さで決まります。

参考まで以下の表は図の二式水偵から見た水平線の片側のみで計算しています。

表は左より「伏角」を度分単位で五分間隔を示している。

Rev2

続いて「円弧長」は地球上では角度1分の円弧長を1海里と定義しており1度を60海里とするが旧海軍で使用する高度の単位に合わせてメートルに換算して海里と併記してある。

つぎに「観測点高度」は水平線が見える伏角から、その高度から水平線までの「直線長」をメートル単位で算出している。

右端の「差分」は直線長から円弧長を引いた値を円弧長で割った百分率。
本来は常に正となるが伏角1度35分強で負から正へ記号が変わっているのは海里からメートルへの換算値が五桁目(小数点以下一桁目)での切り上げによる。

海面上の距離と直線距離の誤差は、伏角4度すなわち成層圏の高度15,543mからでも誤差は0.14%にすぎない。

当CEOはそれより低い高度1万米の窓から360キロメートル彼方にある水平線を見る機会はありませんでした。

地球はでかいのであります。

 

表から零式水偵の巡行高度2000mの視程は約86海里、半径160kmの円となる。海軍航空教範の服務規程では一般的な偵察高度は50mから250mとされており視程は伏角では大雑把に15分から30分となるので距離にすると15から30海里、メートル法半径では27から56kmの円内が視界となる。

ミッドウェーでの偵察機進出距離は300海里(大円上で5度相当)、左90度の側程60海里(同1度相当)でした。

ちなみに隣接する索敵線の間隔は23度でありました。進出距離に比例して相互の間隔が広がります。

進出距離の先端の間隔は先のラジアンの公式から120海里となり各側程は60海里なので差の60海里は双方の索敵線を30海里の視程が得られる伏角30分(ほぼ高度250m)で飛べば進出距離300海里の半径内は時間差はあるが一応のカバーができることになります。

全行程を高度250mで飛行できると判断したのかどうか、機動部隊の航空乙参謀が起案し同甲参謀、参謀長、司令長官と上申され索敵担当戦隊の各司令部に発光信号による命令が発せられたのは第一機動部隊の空母が全滅した前々日6月3日午後3時30分(東京時間)であります。

7本中東側4本の索敵線を命令された第8戦隊司令部は同4時40分に指揮下の巡洋艦利根筑摩の艦長に各艦2機の索敵線担当割当を命令、機動部隊司令部に復申した。その直後から両艦の飛行長より搭乗員総員12名の人選と担当する索敵線の命令が作成され各艦長に上申される。

二日後・・・雲下に敵機動部隊がいたと後日指摘される第5索敵線を飛んだのは一機のみの士官搭乗機である筑摩1号機、その北を飛ぶ第6索敵線筑摩4号機は視界不良で中断し引き返している。筑摩1号機の南を飛ぶ利根4号機は微妙な空間を飛行していた。残る利根1号機4号機の南側を飛び飛行艇との遭遇を報告するなど全航程を飛び帰艦している。この辺りは後で述べる機会がある。

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以下は次回に行う個人的な図上演習の要点のまとめです。

この時代の目視航空偵察の範囲は極めて限られている。言い換えれば時間軸の偵察情報は極めて限定されている。

索敵機の偵察用途には双眼鏡は必須だが、基本航法では羅針儀、偏流測定器、速度計、高度計、航空時計、航法計算盤、図板、航法地図、筆記用具である。

航空機の航法地図に最も重要な基点は出発位置と時間でありここより方向と速度すなわちベクトルの値を偏流その他の影響の修正をして一定時間ごとに算出した角度と距離を点と直線で航法地図に落とし込む。

この当時の偵察など比較的狭い範囲で運用する航空機で使う地図は基点さえ明確であれば経線緯線の座標系から切り離して北を上にする直角座標系の方眼紙のほうが距離と方向を簡単かつ明瞭に作図できる。・・・これが航空派地図の所以である。

いっぽう艦隊行動では航空機より速度は遅いが広範囲にわたって統一性のある地図を相互に共有する必要があり角度を優先するメルカトル図法の(経線間の間隔を一定とし緯線間は不等間隔とする天測座標に適した)地図を必要とする。・・・艦隊派地図の要件です。

ミッドウェーの場合、航空派がメルカトル図法の原理を理解して使っていたのか・・・記録をさがしたががよくわからない。艦隊派はメルカトル図を使用していたと考えられるのだが戦史の挿入地図では疑問も残る・・・これは次回以降に送る。

また、航空派(方眼地図)と艦隊派(メルカトル海図)の整合性には、切りの良い緯度経度の点1ヶ所と経緯環1度を(60進法の素因数に準じて)等分割した正方眼区画*1)に付与した記号を共有するだけでよいのだが・・・
*1)縦横軸とも同じ海里の長さに統一した正方形で表した正方眼白地図。

例えば索敵機発進予定位置の近くの度単位の切りのいい交点を航空と艦隊の基点として共有する・・・これに関わる問題はほとんどが下士官兵で構成される偵察員への基本的な推測航法の過程を記録する正方眼地図に起点(出発点)設定することから始まる航跡作成の教育と報告あるいは回収した方眼地図の情報をメルカトル海図に書き直す作業の統括をする発進艦の航海参謀から始まる指揮権継承順位の下にいる参謀と士官の能力の問題が存在するが・・・戦史やそれを元本にした戦記物では全ての問題を下士官兵搭乗員に帰しているのだが・・・。

戦史に残る機動部隊内で交信された敵艦隊に関する情報をなぜミッドウェーを基点としたのか、山本連合艦隊(GF)司令部の命令なのか、GFの傍受におもねった南雲機動部隊(KdB)司令部の独断なのか、戦史叢書では公式にKdBからGFへ宛てた敵味方の位置情報には座標点と範囲を記号化した暗号が使われている。

こうした旧海軍の航空偵察情報取扱いの手法は今のところ市中では分析もされず詳細な内規も手に入らない。

 

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